【実施例】
【0058】
トリプテリジウム・ウィルフォルディHook.fの確認。T.ウィルフォルディの根を、Sanyuan Pharmaceuticals Co. Ltd. (吉林、中国人民共和国)から購入し、そして次の通りに、マカオのマカオ科学技術大学の医学と健康のための応用研究のマカオ研究所(Macau Institute of Applied Researchfor Medicine and Health of Macau University of Science and Technology, Macau)で確認した。T.ウィルフォルディの根皮及び根木部を、同じプロトコルに従って確認した。従って、根皮及び根木部組織を、それぞれ粉末に粉砕し、そして60メッシュ篩に通した。各根又は木部調製のために、0.2gの粉砕された粉末を正確に計量し、そして20mlの酢酸エチルを添加した。サンプルを、45℃で1時間、超音波処理浴を用いて抽出した。その混合物を濾過し、そして残留物を、20mlのメタノールを用いて再懸濁し、続いて、45℃でさらに1時間、超音波処理浴に通した。酢酸エチル抽出物及びメタノール抽出物を合わせ、そしてロータリー・エバポレーターを用いて蒸発乾燥した。固形抽出物を、2mlのメタノールを用いて再構成し、そして0.45μgのフィルターを通して濾過した。
【0059】
HPLC−DAS.高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)処理を、Agilent 1200 Series LC System and Modules (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)により実施した。分析カラムの温度を20℃で設定し、そして検出波長は210nmであった。線形勾配溶出を、アセトニトリル(A)及び0.1%リン酸(v/v)(B)を含む移動相を用いて、1ml/分の流速で実施した。勾配は、40%溶離剤A及び60%溶離剤Bで開始した。勾配は、20分で50%溶解剤B、20分で25%溶離剤B及び10分で20%溶離剤Bまで直線的に変化された。次に、勾配は10分で80%溶離剤Bに戻され、そしてこの%で維持された。T.ウィルフォルディ根皮及び木部組織のためのHPLC−ダイオード−アレイ検出(HPLC−DAD)クロマトグラフィーフィンガープリントは、それぞれ
図1A及び1Bに示される。
【0060】
T.ウィルフォルディ抽出物の調製。T.ウィルフォルディの根木部組織(390.61g)を、ブレンダー中に配置し、そして小断片にブレンドした。ブレンドされた根材料を、2Lの95%エタノールに添加し、1時間、音波処理し、そして次に、95%エタノール中で一晩、浸軟した。その後、材料を真空下で加圧濾過し、そしてエタノールを集めた。加圧濾過の後に残存する残存物を、600mlの95%エタノールにより2度、洗浄し、そして各洗浄サイクル当たり30分間、音波処理した。2回の洗浄からのエタノールを、初期の2Lのエタノールと共に合わせ、そしてその合わせた抽出物を、ロータリー・エバポレーターを用いて蒸発し、そして次に、凍結乾燥した。前記抽出方法の全収量は、16.16gのエタノール抽出された材料であり、これをさらに、シリカゲル60上に、前記蒸発された生成物を吸着し、そしてその吸着された材料を、次の順序の溶媒下で連続的抽出に供することにより分別した:95%エタノール及びクロロホルム。エタノール及びクロロホルム抽出物の化学感作効果を定量化した。水抽出物も調製し、そしてそのCEを決定し、エタノール及びクロロホルム抽出物と比較した。T.ウィルフォルディの水抽出物は、中国の雲南から供給され、そしてJiangyin Tianjiang Pharmaceutical Co., Ltd. (Jiangsu, China)から入手され、そしてACE Pharmaceuticals Ltd. (Hong Kong)から市販されている。
【0061】
抽出物の化学感受性の評価。
【0062】
化学感作効果 (chemosensitizing effect)(CE)は、化合物及び化学療法剤が同時投与される場合、化学療法剤の半最大阻害濃度(IC
50)の必要とされる濃度を、前記化合物が低下させることができる(すなわち、化学感作できる (chemosensitize))程度の尺度である。従って、CEは、CE =IC
50D/IC
50E+Dとして表される。IC
50Dは、化学療法剤のIC
50であり、この剤に対して、試験抽出物(又はCEを有することが疑われる他の化合物)が評価される。IC
50E+Dは、試験抽出物及び化学療法剤の組み合わせのIC
50である。試験抽出物又は化合物のCEは、細胞又は特定の化学療法剤型、又は評価される治療剤の種類又は組み合わせに依存して、変化することができる。
【0063】
しばしば、試験抽出物又は化合物はまた、CEを生成するために必要とされる濃度よりも高い濃度で投与される場合、非特異的に細胞毒性(腫瘍細胞を標的化する化学療法剤とは対照的に)でもあり得る。理想的には、CEを生成するために必要とされる試験化合物の濃度は、そのIC
50よりも有意に低い。それらの濃度間の分散は、試験抽出物又は化合物についての化学感作ユーティリティ指数(CUI)を計算することにより定量化され得る。CUIは、CUI=CE×(IC
50E/Con
E)として表される。IC
50Eは、細胞増殖を50%阻害する抽出物、例えばトリプテリジウム・ウィルフォルディの抽出物又は抽出された化合物の濃度である。Con
Eは、所望するCEを生成するために必要とされる抽出物又は化合物の濃度である。次に、所望するCE及びCUI値を有することが見出された抽出物及び化合物を、インビボで化学感作剤としてのそれらの可能性について試験する。
【0064】
CE及びCUI値を、上記に記載される水、エタノール及びクロロホルム抽出物について個々に得た。それらの分析を、下記実施例5に記載されるスルホローダミンB(SRB)ベースの増殖アッセイを用いて、ドセタキセル耐性前立腺癌系であるPC3−TxR(University of Michigan)と組み合わせて、化学療法剤であるドセタキセルを用いて実施した。前述のすべての抽出物は、所望するCE及びCUI値と関連していた。水、エタノール、及びクロロホルム抽出物のIC
50E+D濃度はそれぞれ、9.3、3.97及び3.8nMであり、そしてCUI値はそれぞれ、17.74、27.39及び17.37であった。その相対的に高いCUI値に基づいて、エタノール抽出物を、下記実施例において記録されるように、さらなる研究のために選択した。その実施例によれば、当該エタノール抽出物はレイ・コン・テン抽出物(LGT−E)と呼ばれる。
【0065】
LGT−Eの液体クロマトグラフィー及び質量分析(LC−MS)分析。上で調製された、LGT−E抽出生成物の500mg/ml原液を、500mgのLGT−E抽出物をエタノールに溶解することにより製造した。原液を、80%アセトニトリル下で500μg/mlに、さらに希釈した。10μlのアリコートを、API 3200 LC/MS/MS システム (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)、及びSIL-20A Prominenceオートサンプラー(Shimadzu, Columbia, MD, USA)を備えた、2つのShimadzu LC-20AD Prominence Liquid Chromatographポンプを用いて、LC−MS/MS分析のために使用した。クロマトグラフィー処理を、S13−C18ガードカートリッジ(12.5×2.1mm, Zorbax, Agilent, Santa Clara, CA, USA)により先行されるZorbax SB C18 カラム(150 × 2.1mm, 5 μm, Zorbax, Agilent, Santa Clara, CA, USA)を用いて、実施した。
【0066】
線形勾配溶出を、アセトニトリル(A)及び0.2%蟻酸含有2mM酢酸アンモニウム(B)を含む移動相を用いて、0.35ml/分の流速で実施した。勾配は、30%溶離剤A及び70%溶離剤Bで3分間、開始し、そして2分で40%溶離Bまで、直線的に変化し、そして2分間、そのままであった。次に、勾配は、1分で95%溶離剤Bに戻り、そしてこの%で6分間、維持した。分析カラム及びオートサンプラーの温度は、両者とも室温に設定された。次に、すべての液体クロマトグラフィー溶離剤を、大気圧化学イオン化(APCI)源中に導入した。質量分析条件は次の通りであった:ガス1、窒素(30psi);ガス2、窒素(30psi);ネブライザー電流(5.0v);源温度、400℃;カーテンガス、窒素(25psi)。LGT−EについてのHPLCクロマトグラムが、
図2に示される。
【0067】
LGT−EのCEを評価するために使用される細胞系。本明細書における実施例に記載されるLGT−Eの化学感作効果の連続した分析は、次のヒト細胞系を利用した:(i)ドセタキセル耐性前立腺癌系DU145-TxR 及びPC3-TxR (Department of Medicine, University of Pittsburgh and Partners Healthcareにより提供されたが、実施例2〜7で使用されたPC3-TxR細胞は、University of Michiganから得られた);(ii)ドセタキセル感受性系PC3及びDU145(ATCC, Manassas, VA, USAから購入された);(iii)ハーセプチン(登録商標)感受性HER2陽性乳菅癌系BT474(Dr. Cui, Cedars-Sinai, Beverly Hills, CAにより提供された);(iv)ハーセプチン(登録商標)耐性HER2陽性乳腺癌系SkBr3(Dr. Xiaojiang Cui, Cedars-Sinai, Beverly Hills, CAにより提供された);及び(v)ドキソルビシン感受性及び耐性骨髄性白血病系K562/Dox(Dr. Kenneth Chan, Ohio State Universityにより提供された)。
【0068】
実施例2
ドセタキセルに対する、ドセタキセル耐性前立腺癌細胞系PC3−TrXの感作に対するLGT−Eの用量−依存性効果。PC3−TxR細胞を、10%ウシ胎児血清により補充されたRPMI1640(Thermo Scientific, Logan, UT)中、3000個の細胞、及びペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)の溶液(Life Technologies Grand Island, NY)を含む培地100μlを、各ウェル中に配置することにより、蓋付きの無菌F−底Cellstar(登録商標)ウェル細胞培養プレート(カタログ番号655180、Greiner Bio-one, Monroe, NCからの購入された)中に配置した。細胞は、配置の時点で第52継代細胞であった。三連ウェルを、試験される各実験条件に割り当て、そしてウェルの播種に続いて、24時間の回復期間を可能にした。回復期間の間、細胞は、37℃及び5%CO
2下でインキュベートされた。
【0069】
適切な量のLGT−E粉末をDMSOに添加し、500mg/mlの原液を形成することにより、LGT−Eを調製した。原液を交互にボルテックスにかけ、そしてLGT−E粉末が溶液になるまで、音波処理した。原液を、RPMI1640培地(Mediatech, Manassas, VA, 又はLife Technologies Grand Island, NY)に希釈し、所望する濃度のLGT−E(例えば、12,25、又は60μg/ml)とした。
【0070】
LGT−Eによる細胞の前処理を、ウェルから培地を吸引し、続いて12又は25μg/mlの何れかの濃度のLGT−E溶液を含むLGT−E溶液50μlを添加し、そして37℃及び5%CO
2の条件下で2時間、細胞をインキュベートすることにより実施した。2時間の前処置期間の最後で、RPMI 1640培地(すなわち、100、33.3、10.0、3.33、1.0、0.333、0.1及び0.001 nM)中、1×10
2〜1×10
-3mMのドセタキセルを含むドセタキセル50μlアリコートを、LGT−E培地の存在下で、前記前処置された細胞に添加した。細胞に添加される直前、ドセキタセルを、原液(DMSO中、105μMのドセタキセル、カタログ番号01885、Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから購入された)から希釈した。ドセタキセルの添加の後、細胞を、前処置段階に使用される同じ温度及び雰囲気条件下で、さらに72時間インキュベートした。
【0071】
72時間のドセタキセル処置期間に続いて、スルホローダミンB(SRB)アッセイを用いて、生存細胞を定量化した。培地を各ウェルから吸引し、そして冷トリクロロ酢酸(TCA)(カタログ番号T6399、Sigma−Aldrichから購入された)の10%溶液により置換し、そして4℃で1時間インキュベートした。TCAインキュベーションの後、TCA溶液を吸引し、そして細胞を、水道水により5度洗浄した。最後の洗浄液を除いた後、プレートを、蓋を除いて、表面が乾燥するまで(1〜2時間を要する)、室温で放置した。次に、スルオローダミンB(SRB)ナトリウム塩(カタログ番号S9012、Sigma−Aldrichから購入された)の0.4%溶液50μlを、各ウェルに添加し、そしてプレートを室温で20〜30分間インキュベートした。その後、ウェルを、10mMのTRIS塩基(カタログ番号161−0719、Bio-Rad Laboratories, Hercules, CAから購入された)中、1%酢酸溶液により5度洗浄した。続いて、プレートを、数時間、又は一晩、乾燥するまで放置した。乾燥されたウェルに残ったSRBを、各ウェルに100μlのSRB可溶化溶液(10mMのTRIS塩基)を添加し、そしてプレートを、緩やかに動く振盪機上に配置するか、又はプレートを、SRBが溶解するまで(約5〜10分を有する)、室温で静止したままにすることにより、溶解した。固定化された生存細胞の数に直接相関する、各ウェル中のSRBの量を、マイクロプレートリーダーにより、565nmの吸光度で分光光度的に決定した。細胞生存率の増加又は減少を、LGT−E前処置細胞と、またドセタキセルにより処置されたが、しかしLGT−Eによっては処置されていない細胞とを比較することにより決定した。
【0072】
この実施例に記載される実験についての結果は、次の通りである:表1及び3は、12及び25μg/mlのLGT−Eによる前処置に関する細胞生存率を報告し;表2及び4は、割り当てられた濃度のドセタキセルのみにより細胞を処置することにより得られた対照データを報告する。
図3は、表1−4のデータをグラフ形で要約する。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
実施例3
ドセタキセルに対する、ドセタキセル耐性前立腺癌系であるDU145−TrXの感作に対するLGT−Eの用量依存効果。実施例2に記載される方法を用いて、ドセタキセル処置されたDU145−TrX細胞に対するLGT−E前処置の化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、50、25又は12.5μg/mlのLGT−Eにより前処置し、その後、1×10
2〜10
-3nMのドセタキセルを含む、1:3連続的希釈のドセタキセルのアリコート50μlにより細胞を処置した。DU145−TxR細胞を、第38継代でプレートに配置した。表5、7及び9は、それぞれ、50、25及び12.5μg/mlのLGT−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表6、8及び10は、LGT−Eにより前処置されなかったDU145−TxR細胞から得られた対照データを報告する。
図4は、表5−10のデータを、グラフ形で要約する。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
実施例4
ドセタキセル耐性前立腺癌細胞のドセタキセル感受性に対するドセタキセル感受性前立腺癌細胞のドセタキセル感受性の比較。ドセタキセル耐性細胞系がそれらのそれぞれの親ドセタキセル感受性細胞系よりも、ドセタキセルに対してより耐性である程度を決定するために、ドセタキセル耐性PC3−TxR細胞系、及びPC3−TxRが由来するドセタキセル感受性細胞系PC3の細胞生存率を、LGT−E前処置の不在下でドセタキセル処置に従って比較した。細胞培養条件、ドセタキセル処置、及び細胞生存率分析を、実施例2に記載のようにして実施した。実施例2のように、1×10
2〜1×10
-3nMのドセタキセルを含む、1:3で連続的に希釈されたドセタキセルのアリコート50μlにより、細胞を処置した。PC3−TrX及びPC3細胞を、それぞれ、第52継代及び第11継代でプレートに配置した。表11及び12は、それぞれ、ドセタキセル耐性PC3−TxR細胞及びドセタキセル感受性PC3細胞のドセタキセル処置から得られたデータを示す。
図5は、表11及び12のデータを、グラフ形式で要約する。
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
実施例5
ドセタキセル感受性及びドセタキセル耐性前立腺癌細胞についてのLGT−E IC
50の決定。LGT−E IC
50濃度を、ドセタキセル感受性細胞系PC3及びDU145、及びそれらのドセタキセル耐性亜系について決定した。細胞培養条件及び細胞生存率分析を、実施例2に記載のようにして実施した。実施例2とは異なって、細胞は、100.0、33.3、10.0、3.33、1.0、0.333、0.1又は0.001 μg/mlのLGT−Eの存在下で標準培養条件下での72時間のインキュベーションに供され、そして細胞はドセタキセルにより処置されなかった。PC3及びPC3−TrX細胞を、それぞれ第15継代及び第38継代でプレートに配置し、そしてDU145及びDU145−TrX細胞をそれぞれ、第46継代でプレートに配置した。表13及び14は、それぞれPC3及びPC3−TxR細胞から得られた細胞生存率データを報告する。表15及び16は、それぞれDU145−TrX及びDU145細胞から得られた細胞生存率データを報告する。
図6は、表13〜16のデータを、グラフ形式で要約する。
【0088】
【表13】
【0089】
【表14】
【0090】
【表15】
【0091】
【表16】
【0092】
実施例6
種々の化学療法剤及び癌細胞系により対にされる場合のLGT−EについてのCE値の比較。この比較においては、LGT−E IC
50を、次のものについて決定した:(i)ドセタキセル感受性細胞系PC3及びDU145、並びにそれらのドセタキセル耐性亜系により対にされたドセタキセル;(ii)それぞれ、ドキソルビシン感受性及び耐性骨髄白血病系K562及びK562/Doxにより対にされたドキソルビシン;(iii)ハーセプチン(登録商標)感受性、HER2陽性乳管癌系BT474;及び(iv)ハーセプチン(登録商標)耐性、HER2陽性乳管癌系SkBr3。上記細胞系の細胞培養を、実施例2に記載された通りに実施したが、但し3,000ではなく5,000の細胞を、K562、K562/Dox、BT474、SkBr3系について、ウェル当たりに配置した。
【0093】
LTG−Eと組み合わせて、化学感作について試験される化学療法剤は、ドセタキセル、ダウノルビシン、ハーセプチン(登録商標)及びラパチニブであった。それらの薬物についてのIC
50を決定し、そしてそれらの研究に使用される細胞系の既知薬物感受性を確認するために、細胞系を上で詳述した通りにプレートに配置し、そして表17に示されるようにして、前述の化学療法剤の存在下で72時間培養し、続いて細胞生存率のSRB分析を実施した。表17はまた、各細胞が試験される、連続的に希釈された濃度の薬物も含む。
【0094】
【表17】
【0095】
IC
50濃度を、ドセタキセル、ダウノルビシン、ハーセプチン(登録商標)及びラパチニブについて決定した後、薬物についてのCE値を、実施例2及び4に記載のようにして調製され、プレートに配置され、そして生存性アッセイされた化学療法剤耐性細胞の培養物を、12.5、25及び50μg/mlでのLGT−Eにより前処置することにより決定した。実施例2のように、前処置期間は2時間であった。表18は、化学療法剤についてのCE決定の結果を要約する。
【0096】
【表18】
【0097】
実施例7
ドセタキセルに対する、ドセタキセル感受性前立腺癌細胞系DU145の感作に対するLGT−Eの用量−依存性効果。実施例2に記載される方法を用いて、ドセタキセル処置されたDU145に対するLGT−E前処置の化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、50μg/mlのLGT−Eにより前処置し、その後、1×10
2〜1×10
-3nMのドセタキセルを含む、1:3で連続的に希釈された、ドセタキセルの50μlアリコートにより、細胞を処置した。表19は、細胞生存率データを報告する。表20は、LGT−Eにより前処置されなかったDU145細胞から得られた対照データを報告する。
図7は、表19及び20のデータを、グラフ形式で要約する。
【0098】
【表19】
【0099】
【表20】
【0100】
実施例8
ハーセプチン(登録商標)感受性、HER2陽性乳管癌系BT474のLTG−E前処置により提供される、限定された追加のハーセプチン(登録商標)感作。BT474細胞のハーセプチン(登録商標)のために適合されるように、実施例2及び9に記載される細胞培養方法を用いて、ハーセプチン(登録商標)処置されたBT474細胞に対するLTG−E前処置の化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、13μg/mlのLTG−Eにより前処置し、その後、1×10
2〜1×10
-3μMのハーセプチン(登録商標)を含む、1:3で連続的に希釈されたハーセプチン(登録商標)の50μlアリコートにより細胞を処置した。表21は、ハーセプチン(登録商標)処置の前、LTG−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表22は、ハーセプチン(登録商標)処置の前、LTG−Eにより前処置されていない細胞から得られた対照データを報告する。
図8は、表21及び22のデータを、グラフ形式で要約する。
【0101】
【表21】
【0102】
【表22】
【0103】
実施例9
ハーセプチン(登録商標)耐性、HER2陽性乳管癌系BT474/HerのLTG−E前処置により提供されるLET−E−介在性ハーセプチン(登録商標)感作。BT474細胞のハーセプチン(登録商標)のために適合されるように、実施例2及び9に記載される細胞培養方法を用いて、ハーセプチン(登録商標)処置されたBT474/Her細胞に対するLTG−E前処置の化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、13μg/mlのLTG−Eにより前処置し、その後、1×10
2〜1×10
-3μMのハーセプチン(登録商標)を含む、1:3で連続的に希釈されたハーセプチン(登録商標)の50μlアリコートにより細胞を処置した。表23は、ハーセプチン(登録商標)処置の前、LTG−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表24は、ハーセプチン(登録商標)処置の前、LTG−Eにより前処置されていない細胞から得られた対照データを報告する。
図9は、表23及び24のデータを、グラフ形式で要約する。
【0104】
【表23】
【0105】
【表24】
【0106】
実施例10
ラパチニブのIC
50を、ハーセプチン(登録商標)感受性BT474細胞系について決定した。細胞培養条件及び細胞生存率分析を、実施例2に記載のようにして実施したが、但し5000の細胞をウェル当たり配置した。しかしながら、実施例2とは異なって、細胞は、表25に示される濃度(μM)のラパチニブの存在下で標準培養条件下で72時間のインキュベーションに供された。ラパチニブIC
50データがまた、表25に報告され、そして
図10にグラフで表される。
【0107】
【表25】
【0108】
実施例11
ハーセプチン(登録商標)耐性、HER2陽性乳管癌系BT474−TxRのLTG−E前処置により提供されるLET−E−介在性ハーセプチン(登録商標)感作。BT474細胞のハーセプチン(登録商標)のために適合されるように、実施例2及び9に記載される細胞培養方法を用いて、ハーセプチン(登録商標)処置されたBT474−TxR細胞に対するLTG−E前処置の化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、13μg/mlのLTG−Eにより前処置し、その後、1×10
2〜1×10
-3μMのハーセプチン(登録商標)を含む、1:3で連続的に希釈されたハーセプチン(登録商標)の50μlアリコートにより細胞を処置した。表26は、ハーセプチン(登録商標)処置の前、LTG−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表27は、ハーセプチン(登録商標)処置の前、LTG−Eにより前処置されていない細胞から得られた対照データを報告する。
図11は、表26及び27のデータを、グラフ形式で要約する。
【0109】
【表26】
【0110】
【表27】
【0111】
実施例12
ハーセプチン(登録商標)耐性、HER2陽性乳管癌系BT474−TxRのLTG−E前処置により提供されるLET−E−介在性ラパチニブ感作。BT474細胞のために適合されるように、実施例2及び9に記載される細胞培養方法を用いて、ラパチニブ処置されたBT474−TxR細胞に対するLTG−E前処置の化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、12.5又は25μg/mlのLTG−Eにより前処置し、その後、1×10
2〜1×10
-3μMのラパチニブを含む、1:3で連続的に希釈されたラパチニブの50μlアリコートにより細胞を処置した。表28及び30は、ラパチニブ処置の前、12.5又は25μg/mlのLTG−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表29及び31は、ラパチニブ処置の前、LTG−Eにより前処置されていない細胞から得られた対照データを報告する。
図12は、表28−31のデータを、グラフ形式で要約する。
【0112】
【表28】
【0113】
【表29】
【0114】
【表30】
【0115】
【表31】
【0116】
実施例13
ラパチニブ感受性HER2陽性乳癌系SkBr3のラパチニブ感受性の、そのラパチニブ耐性亜系のそのラパチニブ感受性に対する比較。ラパチニブ耐性細胞系がそれらのそれぞれの親ラパチニブ感受性細胞系よりも、ラパチニブに対してより耐性である程度を決定するために、ラパチニブ耐性SkBr3−TxR細胞系、及びSkBr3−TxRが由来するラパチニブ感受性細胞系SkBr3の細胞生存率を、化学感作前処置段階の不在下でラパチニブ処置に従って比較した。細胞培養条件、及び細胞生存率分析を、実施例2に記載のようにして実施した。実施例2におけるように、細胞を、20、6.7、2、0.7、0.2、0.07又は0.02 μMのラパチニブを含むアリコート50μlにより処置した。表32及び33は、それぞれ、SkBr3及びSkBr3−TxR系におけるラパチニブ用量−応答を示す。
図13は、表32−33のデータを、グラフ形式で要約する。
【0117】
【表32】
【0118】
【表33】
【0119】
実施例14
ハーセプチン(登録商標)及びラパチニブ耐性、HER2陽性乳腺癌系SkBr3−TxRのLTG−E前処置により提供されるLET−E−介在性ラパチニブ感作。実施例2及び9に記載される細胞培養方法を用いて、但し、5000の SkBr3−TxR細胞をプレート当たり配置し、ラパチニブ処置されたSkBr3−TxR細胞に対するLTG−E化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、12.5μg/mlのLTG−Eにより前処置し、その後、20、6.7、2、0.7、0.2、0.07又は0.02 μMのラパチニブを含む、ラパチニブの50μlアリコートにより細胞を処置した。表34は、前処置に関する細胞生存率データを報告する。表35は、ラパチニブ処置の前、LGT−Eにより前処置されていない細胞から得られた対照データを報告する。
図14は、表34及び35のデータを、グラフ形式で要約する。
【0120】
【表34】
【0121】
【表35】
【0122】
実施例15
ダウノルビシン感受性骨髄性白血病系K562におけるダウノルビシンに対する感作のLGT−E介在性上昇は存在しない。実施例2に記載される細胞培養方法を用いて、ダウノルビシン処置されたK562細胞に対するLTG−Eの化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、25μg/mlのLGT−Eにより前処置し、その後、細胞を、30〜1×10
-3μMのダウノルビシンを含む、1:3で連続的に希釈された50μlのアリコートにより処置した。表36は、ダウノルビシン処置の前、LTG−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表37は、ダウノルビシン処置の前、LKGT−Eにより前処置されていない細胞から得られる対照データを報告する。
図15は、表36及び37のデータを、グラフ形式で要約する。
【0123】
【表36】
【0124】
【表37】
【0125】
実施例16
ダウノルビシン耐性骨髄性白血病系K562/Doxにおけるダウノルビシンに対する感作のLGT−E介在性上昇。実施例2に記載される細胞培養方法を用いて、ダウノルビシン処置されたK562/Dox細胞に対するLTG−Eの化学感作効果を研究した。この研究においては、細胞を、25μg/mlのLGT−Eにより前処置し、その後、細胞を、30〜1×10
-3μMのダウノルビシンを含む、1:3で連続的に希釈された50μlのアリコートにより処置した。表38は、ダウノルビシン処置の前、LTG−Eによる前処置に関する細胞生存率データを報告する。表39は、ダウノルビシン処置の前、LKGT−Eにより前処置されていない細胞から得られる対照データを報告する。
図16は、表38及び39のデータを、グラフ形式で要約する。
【0126】
【表38】
【0127】
【表39】
【0128】
実施例17
LGT−Eは、インビボでドセタキセルのための効果的化学感作剤である。LGT−Eがドセタキセルのための化学感作剤であることが示された結果に基づいて、インビボ研究を、ドセタキセルの化学療法効果に対する、経口投与されたLGT−Eの有効性を評価するために企画した。このことを目標にして、CD−1マウス(Charles River Laboratories International, Inc. Wilmington, MA)における経口最大許容量(MTD)を、7日間にわたって、100、250、500、750及び1000mg/kgの増大する単一の一度のみの経口用量、及び62.5、125、250又は500mg/kgの毎日の用量を投与することにより決定した。特に、MTDは、(i)非致死的である;(ii)対照動物に比べて10%を越えない体重増加の位相差を引き起こさない;及び(iii)明白な器官機能障害又は副作用を引き起こさない、用量として定義される。単一及び複数回投与アプローチの場合、MTDは約500mg/kgであった。
【0129】
LTG−EについてのMTDの同定に続いて、ドセタキセル(20mg/kg、i.v.)と組み合わせて投与されるLGT−E(500mg/kg、強制経口投与)の抗腫瘍効果を、ドセタキセル処置のみと比較した。より具体的には、それらの研究は、体重15〜20gであり、生後4〜6週であり、そしてHEPA−濾過され空気下でケージに収容された(12時間の明/暗サイクル)6匹の重症複合免疫不全(SCID)雄マウス(Taconic Farms, Inc. Oxnard, CA)を包含した。腫瘍は、PC3及びPC3−TxR細胞をマウス中に皮下注入することにより、マウスにおける形成を引き起こされた。細胞注入を実施するために、まずPC3及びPC3−TxR細胞を、マトリゲル(Matrigel)(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ, U.S.A.)及びRPMI 1640 (Mediatech, Manassas, VA, 又はLife Technologies Grand Island, NY)の1:1混合液に別々に懸濁した。次に、細胞を、注射によりマウスの脇腹中に皮下移植した。細胞の注入に続いて、19日間、一貫して腫瘍増殖を示したマウスを、腫瘍研究に使用した。さらに具体的には、それらの研究は、異種移植片腫瘍が、半楕円体(semiellipoid)についての式、すなわち体積=幅
2×(長さ/2)を用いて計算して、約120mm
3の体積に達した場合に開始された。
【0130】
腫瘍研究は、処置の最初の日に開始し、15日間にわたって、各マウスの腫瘍サイズの変化を測定するために、上記に記載される基本的方法に従って実施された。研究における腫瘍含有マウスを、次の6種のグループにランダム化した:グループ(1)マウスは、PC3細胞腫瘍異種移植変を有し、そしてドセタキセル(20mg/kg、静脈内(IV)、週1度、n=9)によってのみ処置され、グループ(2)マウスは、PC3−TxR細胞腫瘍異種移植変を有し、そしてまったく処置されなかった(n=7)。研究の間にわたってのグループ(1)及び(2)の腫瘍サイズの変化が、
図9Aに示されている。グループ(3)マウスは、PC3−TxR細胞腫瘍異種移植片を有し、そしてドセタキセル(20mg/kg、IV、週1度、n=8)により処置され;グループ(4)マウスは、PC3−TxR細胞腫瘍異種移植片を有し、そしてLTG−E(500mg/kg、強制経口投与(PO)による、毎日、n=8)により処置され;グループ(5)マウスは、PC3−TxR細胞腫瘍異種移植片を有し、そしてドセタキセル(20mg/kg、IV、週1度)及びLTG−E(250mg/kg、PO、毎日)により処置され;そしてグループ(6)マウスは、PC3−TxR細胞腫瘍異種移植片を有し、そしてドセタキセル(20mg/kg、IV、週1度)及びLTG−E(500mg/kg、PO、毎日、n=9)により処置された。この研究の間にわたってのグループ(3−6)の腫瘍サイズの変化が、
図23に示される。
【0131】
この研究の間にわたってのグループ(1)及びグループ(2)の腫瘍サイズの変化が、
図23に示され、これは、PC3及びPC3−TxR細胞の両者がSCIDマウスにおいて首尾よく増殖されたことを示した。研究の間にわたってのグループ(3〜6)の腫瘍サイズの変化が図[]に示される。LGT−E単独では、何れの抗腫瘍効果も示されなかったが、しかしドセタキセルのみのグループに比べて、ドセタキセルの抗腫瘍効果を優位に増強した。
【0132】
参考文献:
Chow M, and Huang Y. "Utilizing Chinese Medicines to Improve Cancer Therapy- Fiction or Reality?" Current Drug Discovery Technologies, 2010.
Huang Y, and Sadee W. (2003). Drug sensitivity and resistance genes in cancer chemotherapy: a chemogenomics approach. Drug Discov Today 8, 356-363.
Huang Y., and Sadee W. (2006). Membrane transporters and channels in chemoresistance and sensitivity of tumor cells. Cancer Lett 239, 168-182 .
Huang Y, et al. (2004). Membrane transporters and channels: role of the transportome in cancer chemosensitivity and chemoresistance. Cancer Res 64, 4294-4301.
Huang Y, et al. (2005a). Correlating gene expression with chemical scaffolds of cytotoxic agents: ellipticines as substrates and inhibitors of MDR1. Pharmacogenomics J 5,112-125.
Huang Y, et al. (2005b). Cystine-glutamate transporter SLC7 A 11 in cancer chemosensitivity and chemoresistance. Cancer Res 65, 7446-7454.
Makarovskiy, AN et al. (2002). Survival of docetaxel-resistant prostate cancer cells in vitro depends on phenotype alterations and continuity of drug exposure. Cell Mol Life Sci 59,1198-1211.
Pon D, et al. "Harnessing traditional Chinese medicine to improve cancer therapy: issues for future development". Therapeutic Delivery 2010; 1 :335-344.
Salzberg M, et al. (2007). An open-label, noncomparative phase II trial to evaluate the efficacy and safety of docetaxel in combination with gefitinib in patients with hormone-refractory metastatic prostate cancer, Onkologie 30, 355-360.
Seruga B., et al. (2010). Drug resistance in metastatic castration-resistant prostate cancer. Nat Rev Clin Oncol.
Singh A, et al. (2010). Expression of ABCG2 (BCRP) is regulated by Nrf2 in cancer cells that confers side population and chemoresistance phenotype. Mol Cancer Ther 9, 2365-2376.
Sirotnak FM, et al. (2000). Efficacy of cytotoxic agents against human tumor xenografts is markedly enhanced by coadministration ofZD1839 (Iressa), an inhibitor of EGFR tyrosine kinase. Clin Cancer Res 6, 4885-4892.
Wang Z., et al. (2010). Transporter-mediated multidrug resistance and its modulation by Chinese medicines and other herbal products. Curr Drug Discovery Technologies 1 :54-56.
Wang Z., et al. (2011) An Improved Method for Evaluation of Chemosensitizing Effect from Herb-Drug Combination - Example with Tripterygium wilfordii .. Abstract Presented 8th International Conference of Society for Integrative Oncology, Cleveland, November 10-12.
Zhang P, et al. (2010). Loss of Kelch-like ECH-associated protein 1 function in prostate cancer cells causes chemoresistance and radioresistance and promotes tumor growth. Mol Cancer Ther 9, 336-346.