【発明の効果】
【0010】
本発明は、特にマイクロマニピュレータ装置のための、コンポーネントの目標位置への相対運動を案内するための多関節機器、特にマイクロマニピュレータ装置のためのピボットジョイント機器であって、多関節機器が、少なくとも1つの第1部分と、少なくとも1つの第2部分と、少なくとも1つの第3部分とを有しており、第1部分と第2部分とが、第1相対運動を行うために運動可能であるように互いに結合されており、第2部分と第3部分とが、第2相対運動を行うために運動可能であるように互いに結合されており、多関節機器が、少なくとも1つの第1ストップ・デバイスと少なくとも1つの第2ストップ・デバイスとを有しており、第1ストップ・デバイスを介して、第1相対運動が第1ストップ位置でブロックされ、第1ストップ位置では、第1部分と第2部分とが第1方向で互いに衝突し、第2ストップ・デバイスを介して、第2相対運動が第2ストップ位置でブロックされ、第2ストップ位置では、第2部分と第3部分とが第2方向で互いに衝突し、多関節機器が、少なくとも1つの第1固定デバイスと、少なくとも1つの第2固定デバイスとを有しており、第1部分と第2部分とが、負の第1方向に向けられた解放力に抗して、前記解放力が第1固定力を超えるまで、第1ストップ位置に第1固定デバイスを介して保持され、第2部分と第3部分とが、負の第2方向に向けられた解放力に抗して、前記解放力が第2固定力を超えるまで、前記第2ストップ位置に第2固定デバイスを介して保持され、そして、第1ストップ位置と第2ストップ位置とが両方とも存在する前記目標位置として、組み合わせストップ位置を設定することができる、多関節機器に関する。
【0011】
目標位置の特徴は、第1ストップ位置と第2ストップ位置とが両方とも同時に存在するように多関節機器が構成されることである。目標位置は特に、多関節機器の使用者が第1部分と第2部分との衝突、及び第3部分と第2部分との衝突を手動でもたらすことによって設定される。目標位置は、具体的に言えば構造的に予め決められ、また具体的に言えば修正することができない。その結果として、第1及び/又は第2部分が第1及び/又は第2ストップ位置に配置されていないときに、使用者によって高い精度レベルで何度も目標位置に接近することができる。前記目標位置は特に作業位置として利用することができる。作業位置において、被マニピュレート物体が、多関節機器に取り付けられたマイクロマニピュレーション・ツールによって処理、すなわちマニピュレートされる。
【0012】
人工的又は生物学的な被マニピュレート物体、特に細胞/微生物は通常、顕微鏡又はカメラのレンズ有効範囲内で培養容器内又は小型カバーガラス上に位置している。マイクロマニピュレーション・ツールが装着された本発明による多関節機器は顕微鏡、又はカメラを備えた顕微鏡に取り付けられて、マイクロマニピュレーション装置が形成されるようになっていることが好ましい。前記マイクロマニピュレーション装置の場合、マイクロマニピュレーションのために設計されたマイクロマニピュレーション・ツールの範囲もまた、(ちょうど被マニピュレート物体のように)カメラの顕微鏡のレンズ有効範囲内に位置している。すなわち、2つのストップによって技術的に予め決められた目標位置において、マイクロマニピュレーション・ツールは作業位置に導かれる。
【0013】
本発明による多関節機器は、前記多関節機器に取り付けられたマイクロマニピュレーション・ツールの相対運動を可能にするので、取り付けられたマイクロマニピュレーション・ツールは種々異なる相対位置を成すことができる。このように、物体が、ツール交換に適した相対位置で多関節機器に取り付けられたマイクロマニピュレーション・ツールと対向して位置するようにマニピュレートされることが可能である。このことは、例えば使用者が、多関節機器に締め付けられたマイクロマニピュレーション・ツールを交換するのに有利である。それというのも、前記相対位置では、交換を行う使用者の手が被マニピュレート物体の近くには位置しておらず、前記物体が望まれない形で接触されることはなく、また結果として押し退けられることもないからである。さらに有利な相対位置では、マイクロマニピュレーション・ツールは物体の周囲域から出るように旋回されるので、使用者は通常の手動処理ステップのために物体に安全にアクセスすることができる(例えば培地交換、物体の調節、更なる細胞(特に卵細胞又は精子)の添加、及び/又はカバーガラスの堆積など)。この文脈における「安全に」とは、マイクロマニピュレーション・ツール(例えば先の尖ったガラス毛細管)の望まれない形での接触のリスクがないことである。マイクロマニピュレーション・ツールと望まれない形で接触したならば、使用者は化学的又は生物学的な物質で汚染されるようになるおそれがあり、或いは、通常使用される鋭利なエッジを有するガラス毛細管で痛みを伴う負傷を負うこともある。本発明による多関節機器はこのようなリスクを軽減する。
【0014】
周知のピボットジョイント機器の場合、コンベンショナルなラッチ・デバイスによって目標位置がしばしば定義される。旋回中、ばね式ラッチ・ピンが端部を介して例えば水平方向の旋回平面内で、丸い刻み目内に鉛直方向にスライドし、その場所で実質的に形状嵌合式にラッチングされる。コンベンショナルなラッチ・デバイスの事例では、旋回平面内でロックされるべきコンポーネントはラッチ係止された目標位置内でもまだ最小の水平方向可動性を有していることが本発明の枠組みの中で判っている。これは、ロック装置のフレキシビリティがあまりにも高いことに起因し、すなわち、コンベンショナルな形でロックされたコンポーネントは僅かな荷重下でも動いてしまう。前記最小の可動性は、例えば具体的に言えば細胞生物学的又は微生物学的ワークステーションと一緒に使用されるマイクロマニピュレータの事例においては最適とは言えない。ジョイントの近くにおける最小の可動性は、旋回アームの長さいかんでは、精度に対する要求を満たさない、より大きい位置誤差となる。
【0015】
本発明による多関節機器の場合、目標位置はコンベンショナルなラッチ装置によって定義されるのではなく、請求項1に記載の装置によって定義される。この装置は作業において目標位置でのラッチングに相当する。2つのストップ・デバイスが使用される。これらのストップ・デバイスは、組み合わせた状態で、コンベンショナルなラッチ・デバイスの「ラッチ係止(latching-in)」を模倣するが、しかしかなり高いレベルの精度をもたらす。運動方向における運動をストップによって正確にブロックすることにより、目標位置を正確に定義することができる。本発明は2つのストップ・デバイスを使用することによって、ラッチングの事例のように、「ラッチングされた(latched)」目標位置の2つの方向での離脱を模倣する。
【0016】
本発明の第1の好ましい実施態様において、多関節機器はピボットジョイント機器であり、第1及び第2の相対運動は、第1及び第2の回転軸線A又はBを中心とした回転である。これらの回転軸線は平行にオーバーラップすることができる。この場合、共通回転軸線Aを中心とした回転を、正の回転方向(positive rotational direction)ωで生じさせることができる。この方向は正回転方向(positive direction of rotation)とも呼ばれる。これに相応して、共通回転軸線Aを中心とした回転を、負の回転方向(negative rotational direction)−ωで生じさせることもできる。この方向は負回転方向(negative direction of rotation)とも呼ばれる。しかし、第1及び/又は第2相対運動が円形経路から逸脱した運動経路に沿って延びることも可能であり、また好ましい。本発明の第2の好ましい実施態様では、多関節機器は角柱ジョイント機器である。ここでは第1及び第2の相対運動は、第1及び第2の線形方向A又はBに沿った並進運動である。これらの線形方向は平行にオーバーラップすることができる。
【0017】
第1相対運動は好ましくは第1回転軸線Aを中心とする回転であり、前記第1方向は回転軸線Aを中心とした正回転方向での回転に相当し、そしてこれと同時に、又はこれとは独立して、第2相対運動は好ましくは第2回転軸線Bを中心とする回転であり、前記第2方向は回転軸線Bを中心とした正回転方向での回転に相当する。
【0018】
第1部分は好ましくは、結合部分を有するコンポーネントである。この結合部分を介して第1コンポーネントは、運動可能であるように、特に回転可能であるように、第2部分と結合することができる。加えて、第1部分は好ましくは締め付け部分を有している。この締め付け部分を用いて、外部コンポーネントを第1部分に締め付けることができる。第3部分は好ましくは、結合部分を有するコンポーネントである。この結合部分を介して第3コンポーネントは、運動可能であるように、特に回転可能であるように、第2部分と結合することができる。加えて、第3部分は好ましくは締め付け部分を有している。この締め付け部分を用いて、外部コンポーネントを第3部分に締め付けることができる。外部コンポーネントはマイクロマニピュレータ装置のコンポーネント、特に旋回アーム、モータ・モジュール、特に電動式又は手動式の運動デバイスの電動式及び/又は手動式の可動スライド、支持装置の支持コンポーネントであってよく、或いは更なる多関節機器、特に本発明による多関節機器の一部であってもよい。結合部分は、第1及び第2部分、及び/又は第3及び第2部分がそれぞれ互いに回転可能である、その中心となる回転軸線を画定する軸エレメントを受容するための受容部分であってよい。加えて、結合部分はこのような軸エレメントを有することもできる。
【0019】
軸エレメントが第2部分に固定的に結合されていることが好ましい。第2部分は好ましくは2つの軸エレメントを有する。第1部分及び/又は第3部分が軸エレメントを有することも可能であり、また好ましい。第2部分はこの場合好ましくは、軸エレメントを受容するための少なくとも1つ、特に2つの受容部分を有している。第1及び第2部分、及び/又は第3及び第2部分がそれぞれ互いに相対回転可能である、その中心となる回転軸線を画定することを目的として、軸エレメントが形成される。軸エレメントは円筒形コンポーネントを有することができ、或いは円筒形コンポーネントであってよい。軸エレメントは特に、ほぼ円筒形のピンエレメントであってよい。第2部分の軸エレメントは二軸エレメントであることが好ましい。前記二軸エレメントは2つの軸エレメントを有している。これらの軸エレメントは、特に共通回転軸線A上に平行に配列されていることが好ましい。2つの軸エレメントは結合部分によって結合されている。結合は圧力嵌め、形状嵌合、及び/又は積極的接合によってであってよい。2つの軸エレメントは一体的に結合することもできる。
【0020】
多関節機器は少なくとも1つの第1案内デバイスと少なくとも1つの第2案内デバイスとを有しており、第1相対運動は第1案内デバイスによって案内され、そして第2相対運動は第2案内デバイスによって案内され、特に、第1相対運動は第1運動経路に沿って正又は負の第1方向へ延び、そして特に、第2相対運動は2運動経路に沿って正又は負の第2方向へ延び、特に第1相対運動と第2相対運動とは平行である。
【0021】
第1案内デバイスは、好ましくは第2部分に結合された少なくとも1つの案内部分、及び/又は第1部分に結合された案内部分を有することが好ましい。第2案内デバイスは、好ましくは第2部分に結合された少なくとも1つの案内部分、及び/又は第3部分に結合された案内部分を有することが好ましい。案内部分は別個のコンポーネントであってよく、或いは、第2部分及び/又は第1部分及び/又は第3部分と一体的に形成することができる。案内部分は、回転軸線を画定する軸エレメントであってよい。
【0022】
第1及び/又は第2案内デバイス、及び特に軸エレメントは、第1部分と第2部分、及び/又は第3部分と第2部分との、旋回角度γを成す相対回転を可能にすることを目的として形成されるのが好ましい。旋回角度γは、第1部分と第2部分との相対回転の場合には、第1ストップ位置γ=0から測定され、また第3部分と第2部分との相対回転の事例では、第2ストップ位置γ=0から測定される。第1部分と第2部分との角度γを成す相対回転は好ましくは、0≦γ≦γ1の旋回範囲内で可能である。ここでγ1は、好ましくは正の旋回方向ωの、{60°〜90°;90°〜120°;120°〜180°;180°〜270°}から成るそれぞれの事例における好ましい角度範囲の群から採用される。第3部分と第2部分との角度γを成す相対回転は好ましくは、0≦γ≦γ2の角度範囲内で可能である。ここでγ2は、好ましくは負の旋回方向−ωの、{−60°〜−90°;−90°〜−120°;−120°〜−180°;−180°〜−270°}から成るそれぞれの事例における好ましい角度範囲の群から採用される。したがって、第1部分と第2部分との旋回角度と、第3部分と第2部分との旋回角度とは対向関係にある。γ1の値が負であり、γ2の値が正であることも可能である。
【0023】
第1及び第2部分の可能な旋回範囲と、第3及び第2部分の可能な旋回範囲とは同じであってよく、すなわちγ1とγ2とは同じ量であってよく、或いは異なっていてもよい。目標位置は第1部分及び第2部分の角度γ、並びに第3部分及び第2部分の角度γが両方ともゼロである結果として定義される。このような位置において例えばマイクロマニピュレータ装置の場合には、ツール交換を行うことができ(ツール交換位置とも呼ばれる)、或いは、物体又は試料を安全にハンドリングすることもできる(物体ハンドリング位置とも呼ばれる)。このような相対位置は好ましくは保持デバイス、特に、下述する摩擦デバイスによって保持される。
【0024】
最大旋回角度、例えばγ1、及び/又は最小旋回角度、例えばγ2は、第3ストップ位置及び/又は第4ストップ位置によって定義することができる。第3ストップ位置及び/又は第4ストップ位置は、第1及び第2部分の第3ストップ・デバイス、又は第3及び第2部分の第4ストップ・デバイスによって定義することができる。顕微鏡上でマイクロマニピュレータ装置内に本発明による多関節機器を使用するときには、最小及び/又は最大旋回角度を物理的境界によって制限することができる。
【0025】
案内デバイス、特に第1及び/又は第2案内デバイスはそれぞれ、ピボット軸受けデバイス、好ましくは滑り軸受けデバイス又は好ましくはころ軸受けデバイスを有することによって、2つの部分、特に第1及び第2部分、又は第2及び第3部分を、運動可能であるようにサイド・バイ・サイド状に取り付ける。ころ軸受けデバイスは好ましくは、第1及び第2ころ軸受けを備えたアングル型ころ軸受けデバイスを有している。第1及び第2ころ軸受けはばねデバイスによって互いに引っ張られる。前記アングル型ころ軸受けデバイスは、高いレベルの案内精度を達成する。それというのも、ころ軸受けのころエレメント、特にボールがほとんど遊びなしに取り付けられるからである。このことは、特に、高レベルの精度が重要であるようなマイクロマニピュレータ装置とともに多関節機器を使用する場合に有利であることが判っている。ばねデバイスはカップばねであるか、又はこのようなカップばねを有することが好ましい。本発明による多関節機器の場合、カップばねは、第1及び第2ころ軸受けの相対的な固定のために所望の引張力を提供する。その結果、案内のための精度レベルが達成される。加えて、カップばねは、多関節機器がコンパクトに設計されるのを可能にする。このことは、特に設置空間が制約されたマイクロマニピュレータ装置の場合に有利である。
【0026】
第1固定デバイス及び/又は第2固定デバイスはそれぞれ少なくとも1つの磁気エレメント、特に、特に強磁性によって磁気吸引力を形成するために相補性である磁気エレメントを有することが好ましい。1つの固定デバイスは、所望の固定力を発生させるいくつかの磁気エレメント、特に2,3,4,5,6つの磁気エレメント又は別の数のエレメントを有することができる。このような発展形では、ストップ位置を正確に設定すること、そして正確に定義された固定力でストップ位置を再び解放することが可能になる。
【0027】
磁気エレメントは第1及び/又は第2及び/又は第3部分の一体的なコンポーネントであってよい。磁気エレメントは好ましくは永久磁石であるか、又はこのような永久磁石を有している。磁石はカバーエレメントを有することによって、前記第1及び/又は第2ストップ位置において衝撃を負荷されたときに機械的損傷から磁石を保護することが好ましい。永久磁石はサマリウムコバルト合金から製造され、又は前記材料を有することが好ましい。前記材料は、ラボラトリー内で湿潤環境又は化学物質を負荷された環境において特に耐腐食性であることが判っている。しかし他の永久磁石を使用することも可能である。
【0028】
磁気エレメントは電磁石であってもよく、或いはこのような電磁石を有することもできる。
【0029】
多関節機器がピボットジョイント機器であり、或いは回転可能なエレメントを有する場合、第1固定力は第1固定トルクであってよく、第2固定力は第2固定トルクであってよい。
【0030】
第1固定デバイス及び/又は第2固定デバイスは加えて、第1ストップ位置において第1部分と第2部分とを圧力嵌め及び/又は形状嵌合するための結合デバイス、又は第2ストップ位置において第2部分と第3部分とを圧力嵌め及び/又は形状嵌合するための結合デバイスを有することによって、ストップ位置でこれらの部分を解放可能に固定することができる。結合デバイスは例えばばね式ラッチ結合手段を有することができる。
【0031】
多関節機器は好ましくは、前記第1相対運動に抵抗によって抗することを目的として形成された第1保持デバイスを有しており、前記抵抗を克服するためには少なくとも1つの第1離脱力が必要であり、そして多関節機器は好ましくは、前記第1相対運動に抵抗によって抗することを目的として形成された第2保持デバイスを有しており、前記抵抗を克服するためには少なくとも1つの第2離脱力が必要である。このような保持デバイスを使用して、2つの部分間、特に第1部分と第2部分との間、又は第2部分と第3部分との間に一時的に異なる相対位置を設定することができるので、小さな作用力及び振動に起因する不慮の調節が、設定された相対位置を変えることはない。結果として、多関節機器を用いた作業がより快適且つ安全になる。
【0032】
第1保持デバイスは第1摩擦デバイスを有しており、第1摩擦デバイスは第1相対運動中に第1滑り摩擦をもたらし、そして第1部分及び第2部分の非運動相対位置では第1静摩擦をもたらし、前記滑り摩擦及び静摩擦を克服するために少なくとも前記第1離脱力が必要であり、そして第2保持デバイスは第2摩擦デバイスを有しており、第2摩擦デバイスは第2相対運動中に第2滑り摩擦をもたらし、そして第1部分及び第2部分の非運動相対位置では第2静摩擦をもたらし、前記滑り摩擦及び静摩擦を克服するために少なくとも前記第2離脱力が必要である。摩擦デバイスは、摩擦をもたらす補助エレメントを有することができる。或いは摩擦デバイスは、その案内デバイスが圧力嵌め/中間嵌め、又は極めて僅かなクリアランスの隙間嵌めを有する状態で、2つの摩擦部分を相応に形成することによって補助エレメントなしで済ませることもでき、この場合案内デバイスが具体的に摩擦デバイスを形成する。
【0033】
多関節機器がピボットジョイント機器であるか又は回転可能なエレメントを有する場合、第1離脱力は第1離脱トルクであってよく、第2離脱力は第2離脱トルクであってよい。
【0034】
第1及び第2固定力はそれぞれ、前記第1及び/又は第2離脱力よりも大きい。結果として第1及び第2部分は第1保持デバイスによって保持された相対位置から解放することができ、この場合、第2固定デバイスによって保持された第2ストップ位置が解放されることはない。加えて結果として、第2及び第3部分は第2保持デバイスによって保持された相対位置から解放することができ、この場合、第1固定デバイスによって保持された第1ストップ位置が解放されることはない。第1固定力と第2固定力とは同じ大きさであってよく、或いは互いに異なっていてもよい。
【0035】
第1及び/又は第2摩擦デバイスは好ましくは補助エレメントを有することにより、摩擦を構成又は生成することができる。補助エレメントは、互いに向かって運動する部分の面の間に法線力をもたらすばねエレメントであってよく、或いはこのようなばねエレメントを有することもできる。これらの面の間には摩擦が生じ、これにより法線力が上昇することによって摩擦が高まる。補助エレメントは弾性変形可能であってよく、そして互いに相対運動する部分間、特に第1部分と第2部分との間、及び/又は第2部分と第3部分との間に配置することができる。補助エレメントは弾性変形可能な材料、例えばゴム又は別のエラストマーを有することができる。補助エレメントは好ましくは、流体潤滑剤、特にシリコーングリースから製造された潤滑膜を有することによって、摩擦に起因する補助エレメントの摩耗を低減し、そして摩擦力を調節する。
【0036】
第1摩擦デバイスは好ましくは補助エレメントとして弾性変形可能なリングを有しており、このリングは第1回転軸線Aに対して同軸的に配置されていて、第1滑り摩擦及び第1静摩擦をもたらすために第1部分と第2部分との間にクランプされており、そして第2摩擦デバイスは好ましくは補助エレメントとして弾性変形可能なリングを有しており、このリングは第2回転軸線Bに対して同軸的に配置されていて、第2滑り摩擦及び第2静摩擦をもたらすために第2部分と第3部分との間にクランプされている。回転中にはリングによって、特に均一な摩擦をもたらすことができる。リングは好ましくは案内デバイスの円筒軸エレメントの周りに同軸的に配置される。軸エレメントが第2部分のコンポーネント部分であることが可能である。リングは引張り応力下にあるように軸エレメントの周りに配置されることが好ましい。
【0037】
摩擦デバイスは潤滑剤、例えば鉱物油又はシリコーン油を有することができる。潤滑剤を使用することによって、所望の摩擦を達成し、摩耗を低減又は防止することができる。潤滑剤は補助エレメント、特にリングと、軸エレメントとの間に提供することができ、軸エレメントを第1、第2及び/又は第3部分に配置することが可能である。しかしながら潤滑剤はリングと第1及び/又は第3部分との間に提供することもできる。
【0038】
リングは、第1部分と第2部分との間に加圧下でクランプされ、こうして摩擦を提供するように円形凹部内に配置することができ、円形凹部は好ましくは第1部分と第2部分との間に設けられる。リングは、第2部分と第3部分との間に加圧下でクランプされ、こうして摩擦を提供するように円形凹部内に配置することができ、円形凹部は好ましくは第2部分と第3部分との間に設けられる。円形凹部は好ましくは、スライドするように形成された内面を有することが好ましい。このことの利点は、摩擦によってもたらされるリングの摩耗が低減され、リングの交換頻度が少なくなることである。
【0039】
第1部分及び第3部分は好ましくはそれぞれ、特に溝/舌片ジョイントを用いて更なるコンポーネントを締め付けるための締め付けデバイスを有している。これを目的として、締め付けデバイスは溝を提供することができる。溝は第1及び/又は第3部分に設けられ、且つ/又は一体的に形成される。或いは締め付けデバイスはばねを提供することができる。ばねは第1及び/又は第3部分に設けられ、且つ/又は一体的に形成される。溝は特にT字形であってよい。ばねは特にT字形スライド・ブロック・エレメントを有することができる。T字形スライド・ブロック・エレメントは特に運動可能であるように、第1及び/又は第3部分に設けることができる。
【0040】
多関節機器は好ましくは少なくとも1つの第4部分を有しており、第3部分と第4部分とは、特に第3案内デバイスを用いて、第3相対運動を行うために運動可能であるように互いに結合されている。多関節機器は第3ストップ・デバイスを有しており、第3ストップ・デバイスを介して、第3相対運動が第3ストップ位置でブロックされ、第3ストップ位置では、第3部分と第4部分とが第3方向で互いに衝突し、さらに多関節機器は第3固定デバイスを有しており、第3固定デバイスを介して、第3部分と第4部分とが、負の第3方向に向けられた解放力に抗して、前記解放力が第3固定力を超えるまで、第3ストップ位置に保持され、そして第2ストップ位置と第3ストップ位置とが両方とも存在する第2目標位置として、第2組み合わせストップ位置を設定することができる。2つ以上の目標位置をこのように多関節機器上に定義することもできる。
【0041】
第1相対運動及び第2相対運動は好ましくは、度で測定し得る回転である。組み合わせストップ位置の設定精度qは≦±5×10
-1度であり、好ましくはq≦±10
-2度であり、好ましくはq≦±5×10
-3度であり、そして好ましくはq≦±10
-4度である。この文脈における「精度」という用語は、第1部分と第3部分との組み合わせストップ位置、つまり「目標位置」Zにおける相対位置をZ±qの範囲内で繰り返し設定できることを意味する。同じことが、第1ストップ位置P1±q及び/又は第2ストップ位置P2±qの精度に当てはまることが好ましい。
【0042】
本発明の枠組みにおける第1ストップ位置の設定「精度」は、以下の測定方法によって割り出すことができる:次の2つの試験をN=10回行う。すなわち、第1試験では、第1部分及び第2部分をストップ位置から正の旋回方向ωに最大旋回角度γだけ偏向させる。前記相対位置から第1及び第2部分をストップ位置に戻す。第1ストップ位置の測定角度偏差ζ1に注目する。10の第1値ζ1をこうして割り出す。第2試験では、第1部分及び第2部分をストップ位置から負の旋回方向−ωに最大又は最小の(量的な)旋回角度−γだけ偏向させる。前記相対位置から第1及び第2部分をストップ位置に戻す。第1ストップ位置の測定角度偏差ζ2に注目する。10の第2値ζ2をこうして割り出す。精度q1は、こうして割り出された20の値ζ1,ζ2の(量的)最大値に相当する。第2ストップ位置の精度q2を同様に割り出す。組み合わせストップ位置、すなわち目標位置の精度としては、第1ストップ位置に対する精度q1と、第2ストップ位置に対する精度q2との2つの値の和を使用することができる。
【0043】
第1部分と第3部分とは構造的に同一のコンポーネントであることが好ましい。これらは第2部分の左側又は右側に配置することができる。結果として、一方では製造者にとって、多関節機器の製造が単純化され、他方では使用者にとって、多関節機器を所望の様式で組み立てることができるようになる。第1及び第2コンポーネントが鏡像対称的に形成されたコンポーネントであることも可能であり、また好ましい。
【0044】
多関節機器は少なくとも1つの第1締め付け手段、特に圧力嵌め及び/又は形状嵌合による結合、例えばねじ結合のための締め付けエレメント、例えば解放可能なねじ、又はロック・エレメントを有することにより、第1部分と第2部分とを解放可能に互いに締め付けることが好ましい。
【0045】
本発明はまた、本発明による多関節機器を有するマイクロマニピュレータ装置に関する。マイクロマニピュレータ装置は好ましくは第1コンポーネント、特に第1アーム・エレメントを有しており、第1アーム・エレメントは多関節機器の前記第1部分であるか、又は多関節機器の第1部分に結合されている。マイクロマニピュレータ装置は好ましくは第2コンポーネント、特に第2アーム・エレメントを有しており、第2アーム・エレメントは多関節機器の前記第3部分であるか、又は多関節機器の第3部分に結合されている。第1及び第2コンポーネントはそれぞれモータ・デバイスのスライドであってよく、或いはこのスライドに結合することもできる。このようなスライドはマイクロマニピュレータ装置の電動式運動デバイス、特に運動デバイスのリニアモータによって電動式に運動可能である。
【0046】
本発明によるマイクロマニピュレータ装置の場合、本発明による多関節機器が、第1コンポーネント、例えばツールを備えたツール・ホルダを、第2コンポーネント、例えば電動式運動デバイスのスライドに運動可能、例えば旋回可能であるように連結することを目的として使用される。前記マイクロマニピュレータ装置を有するマイクロマニピュレーションは、人工的な物体、例えばマイクロ系、ナノ系、及びこれらのコンポーネントのマニピュレーションを可能にする。マイクロマニピュレーションは特に、生物学的物体、例えば生きている細胞又は微生物のマニピュレーションにも関し得る。両利用分野は、マニピュレーションツール、例えば毛細管、プローブ又は電極を所望の作業位置に配置するときに高いレベルの信頼性及び精度を必要とする。このような作業位置では、しばしば顕微鏡的に小さな物体が、機械的にマニピュレートされる。本発明による多関節機器はこれに特に適している。
【0047】
ツールとも呼ばれるマニピュレーション・ツールは毛細管又はアクチュエータ先端、又はマイクロマニピュレーションに適した切削又は溝切りツール、又はマイクロ電極であってよい。ツールはツール・ホルダを指定することもできる。ツール・ホルダは、例えば毛細管又は切削又は溝切りツールを担持する。ツール・ホルダは特に電気的に作動可能なアクチュエータであってもよい。アクチュエータは例えば圧電式に駆動することができる。典型的な方法と関連して、部品は細胞マニピュレーションを行う場合、ツール、例えば毛細管ホルダ内の毛細管を、例えば他の目的で(例えば生物学的細胞のための成長培地を交換するため、物質の添加のため、など)これを解放するために、又はツールを交換するために、細胞処理中の短い間に目標位置から動かす。後で、ツールを目標位置へできる限り正確に戻さなければならない。本発明によるマイクロマニピュレータ装置の本発明による多関節機器は、このような目的に特に適した形で役立つ。
【0048】
第1及び/又は第2コンポーネントはそれぞれ特に、マイクロマニピュレータ装置のピボット・アーム、又はツールを有する又は有さないツール・ホルダ、電動式運動デバイスのスライド又はモータ駆動式エレメント、保持デバイスのコンポーネント、支持体のコンポーネント、顕微鏡のコンポーネントであってよい。
【0049】
加えて、本発明による多関節機器は、生物学的、医学的、細胞生物学的、又は微生物学的ワークステーションで、特に生きている細胞のマニピュレーションのために、特に微生物学的、細胞生物学的、又は医学的ラボラトリーにおいて使用することが本発明と見なされる。
【0050】
本発明にはまた特に、物体、特に人工的又は生物学的物体、特に生きている細胞又は微生物にマニピュレーションを施す方法の事例において、本発明による多関節機器を利用する方法も関連する。本発明による多関節機器を利用するために、この方法は好ましくは、下記ステップ(a)〜(i)のうちの少なくとも1つのステップを有する。
(a) 特に第1部分又は第3部分を外部コンポーネントeB1、特に本発明によるマイクロマニピュレータ装置の外部コンポーネントeB1に結合することにより、外部コンポーネントeB1に多関節機器を締め付けるステップ。外部構成部分eB1は特に前記多関節機器のための支持デバイスであり、且つ/又は可動エレメント、特に電動式支持デバイスのスライドである。
(b) 特に外部コンポーネントeB2を多関節機器の第1部分又は第3部分に結合することにより、外部コンポーネントeB2を多関節機器に締め付けるステップ。外部コンポーネントeB2を例えば少なくとも1つの結合エレメントによって間接的に、或いは直接的に多関節機器に結合することが可能であり、外部コンポーネントeB2は特に、特に毛細管又はマイクロ切開ツールであり得るマイクロマニピュレーション・ツールのためのツール・ホルダであることが可能である。
(c) 本発明による多関節機器に対して、特に本発明によるマイクロマニピュレータ装置機器に対して所定の距離を置いて物体を位置決めするステップ。
(d) 多関節機器に結合されたマイクロマニピュレーション・ツール、特に毛細管又はマイクロ切開ツールが該物体に対して所望の距離を置いて位置する作業位置として、前記多関節機器の目標位置を設定するステップ。
(e) 第1ストップ位置から出発して、特に目標位置から出発して、前記多関節機器の第1部分と第2部分との間で、該第1部分と該第2部分とが第1相対位置に配置されるまで、第1相対運動、特に回転方向ωの回転運動を行うステップ。
(f) 第2ストップ位置から出発して、特に目標位置から出発して、前記多関節機器の第3部分と第2部分との間で、該第3部分と該第2部分とが第2相対位置に配置されるまで、第2相対運動、特に逆の回転方向−ωへの回転運動を行うステップ。
(g) ステップ(e)に記載の第1相対位置から出発して、又はステップ(f)に記載の第2相対位置から出発して、第1部分及び/又は第3部分の手動処理、特に第1部分又は第3部分に結合されたマイクロマニピュレーション・ツールの除去及び/又は解放を行う(ツール交換)ステップ。前記相対位置はツール交換位置と呼ばれる。
(h) ステップ(e)に記載の第1相対位置から出発して、又はステップ(f)に記載の該第2相対位置から出発して、被マニピュレート物体に処理を施し、特に培地(培養培地、成長培地、又はIVF培地)、緩衝液、溶液、又は油を除去又は添加し、該物体を取り出し、且つ/又は更なる物体(例えば更なる細胞、例えば卵細胞が第1物体であり、次いで第2物体として精子を使用する。或いはその逆もあり)を添加するステップ(物体ハンドリング)。前記位置は物体ハンドリング位置と呼ばれる。
(i) ステップ(f)に記載の第1相対位置から出発して、又はステップ(f)に記載の第2相対位置から出発して、第1及び/又は第2相対位置から多関節機器を手動で戻し旋回させることによって、多関節機器を目標位置(作業位置)へ再位置決めするステップ。
【0051】
図面及び説明とともに、模範的実施態様に関する次の記述から、本発明による多関節機器の更なる好ましい発展形が生み出される。反対のことが記載されない限り、また文脈から反対のことが生じない限り、模範的実施態様の同一のコンポーネントは同一の符号によって実質的に特徴づけられる。