特許第6367831号(P6367831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367831
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】反応器用の混合装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/00 20060101AFI20180723BHJP
   B01J 8/04 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B01J8/00 A
   B01J8/04 301
   B01J8/04 311Z
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-555720(P2015-555720)
(86)(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公表番号】特表2016-511686(P2016-511686A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2014051908
(87)【国際公開番号】WO2014122073
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年1月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/052222
(32)【優先日】2013年2月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/061505
(32)【優先日】2013年6月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァヒロヴィッチ・エミル
(72)【発明者】
【氏名】リスビェア・ヤレコヴ・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シャーホ・ルイズ・イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ブリクス・ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ボー・ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルム−クリステンセン・オーラヴ
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−524138(JP,A)
【文献】 特開2004−337853(JP,A)
【文献】 特開2004−237283(JP,A)
【文献】 特公昭45−013922(JP,B1)
【文献】 特表2006−505388(JP,A)
【文献】 特開平07−222921(JP,A)
【文献】 特開昭62−114643(JP,A)
【文献】 特開平04−215802(JP,A)
【文献】 特表2014−516304(JP,A)
【文献】 特表平10−502872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0324464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00−4/04
B01J 8/00−8/46
B01J 10/00−10/02
B01J 19/30−19/32
B01J 21/00−38/74
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部において2個の触媒床間に取り付けられた混合装置(01)を備える円筒形状の多床触媒反応器であって、該混合装置は、該反応器の内壁に対応する円形外側リム(02)を有し、該混合装置は、上流触媒床から流体を収集するための収集部(03)内に配置された収集手段と、収集した流体を混合するための混合部(04)内に配置された混合手段と、該混合流体を下流触媒床に排出するための排出部(05)内に配置された排出手段とを備え、該混合装置はドーナツ形状を有し、該収集部、該混合部及び該排出部は、該反応器の円形断面の中心(06)の外側に配置され、
前記収集部、前記混合部及び前記排出部が前記反応器の円形断面領域の中心の三分の一外側に配置され、
前記混合装置が前記収集流体に急冷流体を添加するための急冷入口をさらに備え、該急冷入口が前記収集部内に配置された
多床触媒反応器。
【請求項2】
前記混合装置の外側リムが前記反応器壁の一体化部分である、請求項1に記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項3】
前記収集部、前記混合部及び前記排出部が該反応器の円形断面領域の中心の二分の一外側に配置された、請求項1に記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項4】
前記収集手段、前記混合手段及び前記排出手段が、一方の部を他方の部に水平に分割する又は該反応器の円形断面の中心から一方の部を分割する円弧分割壁(08)を備えるチャネル(07)を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項5】
前記収集手段が前記上流触媒床から前記流体を収集するための1個の入口(09)を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項6】
前記収集部が前記排出部に対して前記反応器の上流軸方向レベルに配置された、請求項1〜のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項7】
前記収集部が前記混合部に対して前記反応器の外側略円形断面領域内に配置され、該混合部が該排出部に対して該反応器の外側略円形断面領域内に配置された、請求項1〜のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項8】
前記収集部、前記混合部及び前記排出部がそれぞれ前記反応器の略円形断面領域の少なくとも120°扇形で配置された、請求項1〜のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項9】
前記排出手段が前記流体の液相のためのこぼし縁部(10)を与える内側円弧分割壁を備える、請求項1〜のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項10】
前記排出手段が前記混合装置からの流体の垂直下方出口を与える半径方向排出ガイドベーン(11)を備える、請求項1〜のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項11】
前記混合装置が前記反応器の触媒床支持体の一体化部分を形成する、請求項1〜10のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項12】
前記混合装置が前記反応器の軸方向に対して1m未満の高さを有する、請求項1〜11のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【請求項13】
上部触媒床と下部触媒床との間において円筒形状の多床触媒反応器内を流れる流体を混合する方法であって、該方法は、該反応器の内壁に相当する円形外側リムを有する、該反応器内におけるドーナツ形混合装置で実施され、前記混合装置が前記収集流体に急冷流体を添加するための急冷入口をさらに備え、該急冷入口が前記収集部内に配置されており、
該方法は、次の工程:
・該反応器の略円形断面領域の120°〜360°扇形の半径方向外側三分の一に配置された該反応器の断面領域内に配置された収集部に対する該上部触媒床からの流体の流れの断面領域を制限して流体を収集し、
・該収集流体を少なくとも一つの接線方向に流し、
・該流体が該反応器の円形断面の中心の外側に配置された混合部に少なくとも一つの接線方向で流れている間に該流体を混合させ、及び
・該流体が該反応器の円形断面の中心の外側に配置された排出部において少なくとも1つの接線方向で流れている間に該流体を該下部触媒床に排出させること
を含む方法。
【請求項14】
前記流体が気相と液相と場合によっては蒸気相とを含む、請求項13に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【請求項15】
前記流体が前記収集部から前記排出部に流れるときに前記反応器に対して軸方向下向き方向に移動する、請求項13または14に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【請求項16】
前記流体が前記収集部から前記排出部に流れるときに前記反応器に対して径方向内側の方向に移動する、請求項13または14に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器の、硫黄及び窒素変換(HDS/HDN)、オレフィン及び芳香族化合物の水素化、金属除去、酸素変換または水素化分解のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、混合装置、特に多床水素化処理反応器を備える反応器に関する。特に、この混合装置は、粒子状触媒材料の垂直方向に重ね合わされた充填床を備える下降流触媒反応器に使用するためのものであり、その際、液体、液体と気体との混合物又は蒸気は、充填床を通って流下するときに処理される。このタイプの反応器は、石油及び化学処理産業において、硫黄及び窒素変換(HDS/HDN);次のものの水素化:オレフィン(HYD)及び芳香族化合物(ヒドロ脱芳香族化:HDA)、金属除去(ヒドロ脱金属化:HDM)、酸素変換(ヒドロ脱酸素化:HDO)及び水素化分解(HC)といった様々な触媒反応を実施するために使用されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
水素化分解は、重質油留分を軽油留分に変換するための処理である。水素化は、水素化処理ユニットの重要な構成要素である水素化処理触媒反応器内で行われる。水素化処理触媒反応器は、単一又は複数の触媒床を有することができる。特定の反応器についていずれの選択肢を選択するかは、供給物を所望の特性を有する生成物に転化させるのに必要な触媒の量に依存する。水素化処理反応の大部分は発熱的であり、供給物が触媒床を通過するときに熱が生じる。必要とされるよりも高い温度に触媒をさらし、その結果として触媒の失活を促進しないように、触媒の必要量は、床間に設置される冷却領域(急冷部)を有する多数の床に分割される。冷却は、「急冷パイプ」を通して冷水素ガスを導入することによって達成される。冷却の他に、急冷領域は、この部からラバー床(lover bed)に出る液相の種/温度の空間的均一性を達成しなければならない。この目的のために、混合チャンバーが該部内に設置される。
【0003】
冷却及び混合段階の後、流体は、下の床の触媒上に均等に分配されなければならない。この目的のために、分配トレイが混合チャンバーの下でかつ下部触媒床の上に設置される。最高分配品質を達成するために、この分配トレイがそれ自体の感度限界内で動作することが確保されなければならない。分配トレイは、トレイ上の液体の深さがトレイの端から端までわずか10mmしか相違しない限りにおいて、必要に応じて動作できる。したがって、混合チャンバーを出る流体の流動パラメータは、様々な手段によって変更され、分配トレイの最高性能のために必要な値にされる場合が多い。
【0004】
上記説明から分かるように、急冷部の現在の構成は、急冷管と、混合チャンバーと、スプラッシュプレートと、ラフカットトレイ(任意)と、分配トレイから構成されている。いくつかのアプローチでは、上部床の触媒を保持する触媒支持グリッド並びに触媒グリッド支持梁は、急冷部の一部とみなされる。
【0005】
これらの構成要素は、それら自体の体積のみならず、これらの構成要素の設置、撤去、メンテナンス及びクリーニングの目的で各構成要素にアクセスするのに必要な空き構成要素間体積によっての多くの反応器空間を占有している。
【0006】
急冷部の高さは、下部床の触媒から上部床の触媒までの距離である。急冷部が占める体積は、「非活動的」反応器容積であり、この体積の減少は、活動的反応器体積の増加を達成すべき場合には最も重要である。急冷部の高さの減少によって節約された空間は、追加の触媒のローディング(改良)又は全反応器高さの減少(新たな反応器)のために使用できる。
【0007】
公知技術のミキサーは、該ミキサーについての効果的な混合及び空間要件の問題に対する解決策を提案している。米国特許第8017095号には、圧力降下を増加させることなく、触媒反応器の高さ制約床間空間内において気体と液体との混合を提供するための手段が記載されている。特に、この装置は、二相系の気相と液相とを混合させる際に既存の混合体積の有効性を改善させる。米国特許第8017095号によれば、この混合装置は、入ってくる廃液に対する高度に弓形の流れ及び触媒反応器の制約床間空間内での高い混合度を生じさせるのに役立つ。
【0008】
設置、撤去及びメンテナンスの要件のみならず、急冷部の全ての構成要素の洗浄のため、構成要素のいずれかに完全にアクセスするのに十分な空間を与えることが重要である。反応器内における作業の複雑さを最小限に抑えるために、この部の構成要素の全ての全ての手動の簡便かつ迅速な開閉を可能にすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8017095号明細書
【特許文献2】米国特許第8017095号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、既知のミキサーよりも、特に垂直方向での反応器空間の占有が少なく、制限された圧力低下で効果的に混合する、改善された効率的なミキサーを提供するための要望が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、冷却、混合及び再分配の点で急冷部の高い効率を与え、反応器体積を最小限でしか占有しないと共に、設置、メンテナンス及びクリーニングに関連する、先に説明した他の全ての要件を完全に満足する。このものは、多くの既存及び新規の反応器ユニットで使用できるであろう。
【0012】
本発明の請求項1に係る新規のミキサー設計は、円筒状の多床接触反応器内において2個の触媒床間に取り付けられた混合装置である。この混合装置は、反応器の内壁に相当する円形外側リムを有し、この混合装置の外側リムは、反応器壁がミキサーの外壁となるように反応器壁の一体化部分か、又は反応器に連結された又は反応器壁の内側に隣接して配置された反応器とは無関係の壁であることができる。この混合装置は、上流触媒床から流体を収集するための収集部に配置された収集手段と、収集された流体を混合するための混合部に配置された混合手段と、下流触媒床に混合流体を排出するための排出部に配置された排出手段とを備える。特に、収集部、混合部及び排出部は、反応器の円形断面の中心の外側に配置される。このように、ミキサーの中心は自由空間であり、これは反応器内部及びミキサー自体の稼働及びメンテナンスのために使用できるが、効果的な混合のための大きな面積及び距離も確保される。というのは、この反応器の断面の最大面積及び円周方向距離は、反応器、すなわちミキサーの断面領域(円)の中心の外側の領域だからである。
【0013】
本発明の実施形態では、混合装置はドーナツ形状を有し、収集部、混合部及び排出部は、外側部分、すなわちドーナツリングに配置されるのに対し、上記実施形態と同様に、中央部は自由空間である。特に、収集部、混合部及び排出部は、反応器の円形断面領域の中心の三分の一外側、好ましくは反応器の円形断面領域の中心の2分の1外側に配置される。このため、大きい面積及び長い距離がミキサーのためにその高さに対して配置されるのみならず、大きな中心自由空間が稼働及びメンテナンスのために確保される。
【0014】
水平3レベル混合
上記本発明の第1態様では、混合装置は、収集手段、混合手段及び排出手段が一方の部を別の部から水平方向に分割する又は一方の部を反応器の円形断面の中心から分割する円弧分割壁を有するチャネルを備えるように構成される。このように、この本発明の第1態様は、水平方向3レベル混合を実行する。ミキサー本体は、ドーナツ状であり、かつ、円弧分割壁によって分割され、これは、実質的に螺旋(内側に螺旋状)を形成し、これがミキサーを3個の連結部:収集、混合及び排出部に分割する。ミキサー上にある触媒床からの気体及び液体流出物は、ミキサーの上部に集められ、そして最大反応器/混合器径で配置された収集チャネルに向けられる。収集された液体及び気体は、収集及び混合チャンバーを接続する開口部に向けられる。気体及び液体が混合チャネルに入った後に、これらのものは、排出チャネルに入る前にミキサー内において円弧運動で移動/回転する。液体及び気体は、この目的のために設計された開口部を通ってミキサーから排出される。気体及び液体相の排出方向は、反応器の中心に向かう。ミキサーを出る気体及び液体の制御流れパターンによって達成される分配トレイ上の均一な圧力プロファイルは、分配トレイ上における液体の均一な動作に寄与し、その結果、トレイの下にある床内の触媒に対して均一なガス及び液体分配を有する。
【0015】
この本発明の第1態様の実施形態では、混合装置の収集手段は、上流触媒床から流体を収集するための1個の入口を有する。そして、さらなる実施形態では、混合装置は、収集流体に急冷流体を添加するための急冷入口をさらに備え、該急冷入口は、収集部内に配置される。所定の実施形態では、急冷入口は、収集チャネルの開口部から約180°に配置されるガス管とすることができる。急冷ガス管は、収集チャネルに挿入でき、例えば、冷水素ガスをミキサーに直接導入することができる。急冷リングは必要ではない。
【0016】
本発明の第1態様のさらなる実施形態では、収集部は、混合部に対して反応器の外側略円形断面領域内に配置され、混合部は、排出部に対して反応器の外側略円形断面領域内に配置される。上記のように、ミキサー、収集、混合及び排出の有効領域は、円周方向距離が最大である円形領域の外側部分に配置され、長い流路を確保し、それによって、効率的な混合及びさらには排出が低圧力損失であっても可能となると同時に、検査及びサービス活動のために自由なミキサーの中央部分が残るが、その全てが本発明の主たる目的及び利点である。
【0017】
垂直3レベル混合
上記本発明の第2態様では、混合装置は、収集部が排出部に対して反応器の上流軸方向レベルで配置されるように構成される。このように、この本発明の第2態様は、垂直3レベル混合を実行するが、それぞれの部は特に別々のレベルでなくてもよい。というのは、各レベル間の境界は徐々に移行することができるからである。この本発明の第2態様の実施形態では、ミキサーはドーナツ形状であり、かつ、螺旋(螺旋状に下降する)によって次の3個の連結部:1)収集、2)混合及び3)排出部に分割される。ミキサー上にある触媒床からの気体及び液体流出物をミキサーの上部に集め、最大反応器直径で配置された収集チャネルに向ける。液体と、プロセスガスと、場合によっては冷却急冷水素ガスとの混合物は、少なくとも1個の開口部を介して混合チャネルに向けられる。気体と液体との混合物は、一実施形態では180°にわたって混合流路を通って移動し、その後混合チャネルの下のレベルで排出チャネルに入る。気体及び液体は、排出チャネルを通って移動し続けるが、この目的で設計されたスロットを通ってミキサーから徐々に放出される。排出された気体は、プラグ流れとしてミキサーの下にあるレベルに入り、液体は、次の2つの方法で放出される:最大ミキサー半径で1)反応器の中心に向けて又は2)開口部から反応器壁に向けて。
【0018】
ミキサーを出る気体及び液体の制御された流れパターンによって達成される分配トレイ上の均一な圧力プロファイルは、ミキサーの下にある分配トレイ上の液体の均一な動作に寄与し、これは、結果としてトレイの下にある床中における触媒への均一な気体及び液体分配を有する。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、収集部、混合部及び排出部は、それぞれ、反応器の略円形の断面領域の少なくとも120°の扇形で配置される。少なくとも120°は、3つのプロセスのそれぞれが長い経路で効果的に実行されることを確保する。これら3つの経路は、同じ長さのものである必要はなく、特に混合部を、有利には、120°よりも大きい扇形で配置して少量の圧力損失で効果的な混合を確保することができ、また排出部を、有利には、約360°で配置してミキサーの全円内での流体の均一な排出を確保することができる。
【0020】
反応器及び混合器の流体は、気相、液相及び蒸気相の両方を含むことができる。本発明の実施形態では、均一な混合は、ミキサーを排出手段が流体の液相のためのこぼし縁部を提供する内部円弧仕切壁を備えるように構成することによってさらに改善される。これは、気相及び液相の両方がミキサーの円全体及び反応器の全断面領域に沿って均等に分配されるという効果を有する。本発明の別の実施形態では、代わりに、外側こぼし縁部、又は本発明のさらなる実施形態では流体の液相の均一な分布のための内部及び外部こぼし縁部の両方が存在することができる。
【0021】
反応器及びその内部の1個以上ミキサーの構造を最適化するために、1個以上の混合装置は、反応器の触媒床支持体の一体化部分を形成することができる。これは、全体構成の建物高さがミキサー及び支持体の別個の構成と比較して低減できるという利点を有する。また、この構成の材料コストを低減することもできる。したがって、本発明の実施形態では、混合装置は、反応器の軸方向に対して1m未満、好ましくは0.5m未満の高さを有する。
【0022】
本発明の第3態様では、主に円筒形の触媒反応器(主として反応器の輪郭部分のほとんどとして理解される)は、下部触媒床の上に重ねられた上部触媒床を有し、かつ、本発明の上記実施形態のいずれかに係る少なくとも1個の混合装置が設けられる。
【0023】
本発明の第4態様は、反応器の上部触媒と下部触媒床との間の触媒反応器内部を流れる流体を混合する方法である。このプロセスの第1段階において、上部触媒床からの流体の流れの断面領域は、流体を収集するように、反応器の断面領域において、反応器の略円形断面領域の120°〜360°の扇形の半径方向外側3分の1に配置された収集部に制限される。これは、例えば断面領域の中心に配置されたプレートにより、液体が断面領域の中心に流下するのを阻止することによって行われる。
【0024】
その後、収集された流体は、混合部内において円形ミキサーの外側部分に接線方向に流れるように混合装置によって案内される。本発明のさらなる実施形態では、流体は、2つの接線方向に流れるように案内でき、流体は、ミキサーの1個の入口又はミキサーの複数の入口から1又は2つの接線方向に流れ始めることができる。
【0025】
流体は、混合部において円運動で流れ、そうすると同時に、流体は、内容物、蒸気、温度及び速度に関して均質な流体となるように混合される。効率的な混合が達成される。というのは、流体は、混合距離、すなわち外周が最も長いミキサーの円形断面の外側部分で流れるからである。混合装置、すなわち反応器の円形断面の中心部の外側に配置されたものの中央部には混合が存在せず、これは、自由空間として開放されたままである。
【0026】
流体が混合された後に、流体は、さらに混合装置の排出部の上を流れ、そこで、下部触媒床に排出されると共に、その少なくとも一部が少なくとも一つの接線方向に流れる。また、排出部は、反応器の円形断面の中心部の外側に配置され、それによって、排出は、栓流として均一に実行できる。というのは、これは長い円周距離にわたって実行されるからである。
【0027】
流体の排出流が円運動で接線方向に移動する間に、このものは半径方向内側、半径方向外側のいずれか又は半径方向内側及び外側の両方で移動すると共に、下にある触媒床に向かって排出部から流れる。排出部は、液相が流れ/こぼれ、混合装置から排出しかつ栓流を形成する気相とブレンドされる液滴を形成することができる縁部を形成する少なくとも1個のこぼし縁部を備えることができる。こぼし縁部は、混合装置からの液相の均一な排出を確保するのに役立つ。
【0028】
触媒反応器内を流れる流体を混合する上記の方法では、流体は、気相と液相と場合によって蒸気相を含むことができる。
【0029】
触媒反応器内を流れる流体を混合する方法の実施形態では、流体は、収集部から排出部に流れるときに、反応器に対して軸方向下向きの方向で移動する。したがって、流体は、収集部から混合部、さらに排出部に流れるときに下方に螺旋運動を行う。
【0030】
触媒反応器内を流れる流体を混合する方法の別の実施形態では、流体は、収集部から排出部に流れるときに、反応器に対して半径方向内側の方向に移動する。したがって、流体は、収集部から混合部、さらに排出部に流れるときに内側に円形螺旋運動を行う。
【0031】
説明した方法のさらに別の実施形態では、流体は、混合装置の収集部から混合部及びさらに排出部に流れるときに、説明した2つの動きの組合せ、すなわち、内側及び下向きに円形螺旋状移動で流れることができる。
【0032】
本発明の特徴
1.内部において2個の触媒床間に取り付けられた混合装置(01)を備える円筒形状の多床触媒反応器であって、該混合装置は、該反応器の内壁に対応する円形外側リム(02)を有し、該混合装置は、
上流触媒床から流体を収集するための収集部(03)内に配置された収集手段と、
収集した流体を混合するための混合部(04)内に配置された混合手段と、
該混合流体を下流触媒床に排出するための排出部(05)内に配置された排出手段と
を備え、該混合装置はドーナツ形状を有し、該収集部、該混合部及び該排出部は、該反応器の円形断面の中心(06)の外側に配置された、多床触媒反応器。
【0033】
2.前記混合装置の外側リムが前記反応器壁の一体化部分である、特徴1に記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0034】
3.前記収集部、前記混合部及び前記排出部が前記反応器の円形断面領域の中心の三分の一外側、好ましくは該反応器の円形断面領域の中心の二分の一外側に配置された、請求項1に記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0035】
4.前記収集手段、前記混合手段及び前記排出手段が、一方の部を他方の部から水平に分割する又は一方の部を該反応器の円形断面の中心から分割する円弧分割壁(08)を備えるチャネル(07)を備える、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0036】
5.前記収集手段が前記上流触媒床から前記流体を収集するための1個の入口(09)を有する、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0037】
6.前記混合装置が前記収集流体に急冷流体を添加するための急冷入口をさらに備え、該急冷入口が前記収集部内に配置された、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0038】
7.前記収集部が前記排出部に対して前記反応器の上流軸方向レベルに配置された、上記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0039】
8.前記収集部が前記混合部に対して前記反応器の外側略円形断面領域内に配置され、該混合部が該排出部に対して該反応器の外側略円形断面領域内に配置された、特徴1〜6のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0040】
9.前記収集部、前記混合部及び前記排出部がそれぞれ前記反応器の略円形断面領域の少なくとも120°扇形で配置された、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0041】
10.前記排出手段が前記流体の液相のためのこぼし縁部(10)を与える内側円弧分割壁を備える、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0042】
11.前記排出手段が前記混合装置からの流体の垂直下方出口を与える半径方向排出ガイドベーン(11)を備える、特徴1〜10のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0043】
12.前記混合装置が前記反応器の触媒床支持体の一体化部分を形成する、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0044】
13.前記混合装置が前記反応器の軸方向に対して1m未満、好ましくは0.5m未満の高さを有する、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0045】
14.上部触媒床と下部触媒床との間において円筒形状の多床触媒反応器内を流れる流体を混合する方法であって、該方法は、該反応器の内壁に相当する円形外側リムを有する、該反応器内におけるドーナツ形混合装置で実施され、該方法は、次の工程:
・該反応器の略円形断面領域の120°〜360°扇形の半径方向外側三分の一に配置された該反応器の断面領域内に配置された収集部に対する該上部触媒床からの流体の流れの断面領域を制限して流体を収集し、
・該収集流体を少なくとも一つの接線方向に流し、
・該流体が該反応器の円形断面の中心の外側に配置された混合部に少なくとも一つの接線方向で流れている間に該流体を混合させ、及び
・該流体が該反応器の円形断面の中心の外側に配置された排出部において少なくとも1つの接線方向で流れている間に該流体を該下部触媒床に排出させること
を含む方法。
【0046】
15.前記流体が気相と液相と場合によっては蒸気相とを含む、特徴14に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【0047】
16.前記流体が前記収集部から前記排出部に流れるときに前記反応器に対して軸方向下向き方向に移動する、特徴14又は15に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【0048】
17.前記流体が前記収集部から前記排出部に流れるときに前記反応器に対して径方向内側の方向に移動する、特徴14又は15に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【0049】
18.特徴1〜13のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器の、硫黄及び窒素変換(HDS/HDN)、オレフィン及び芳香族化合物の水素化、金属除去、酸素変換及び水素化分解のための使用。
【0050】
本発明を、本発明の実施形態の例を示す図面によりさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明の第1の態様の実施形態に係る混合装置の等角上面図を示す。
図2図2は、本発明の第1の態様の実施形態に係る混合装置の内部部品の等角上面図を示す。
図3図3は、本発明の第2の態様の実施形態に係る混合装置の等角上面図を示す。
図4図4は、本発明の第2の態様の実施形態に係る混合装置の内部部品の等角上面図を示す。
図5図5は、本発明の第2の態様の混合装置の実施形態の直径切断図を示す。
図6図6は、本発明の第2の態様の混合装置の一実施形態に係る排出部の図を示す。
図7図7は、本発明の第2の態様の混合装置の一実施形態に係る排出部の底面図を示す。
図8図8は、本発明の第2の態様の混合装置の一実施形態に係る排出部の直径図を示す。
図9図9は、本発明の第2の態様の混合装置の一実施形態に係る上部流れ原理図を示す。
図10図10は、本発明の第2の態様の混合装置の実施形態の直径切断流れ原理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
位置番号
01.混合装置。
02.円形外側リム。
03.収集部。
04.混合部。
05.排出部。
06.反応器の円形断面の中心。
07.チャネル。
08.円弧分割壁。
09.入口。
10.こぼし縁部。
11.排出ガイドベーン。
【0053】
図面の説明
本発明の2つの態様及び多数の実施形態について、図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【0054】
図1に示す本発明の第1の態様の水平3レベル混合の等角図は、混合装置01の上面図を示す。この混合装置は、該混合装置が設置される円筒状反応器(図示せず)の内側円形壁に対応する円形形状を有する。特に、混合装置の外側リム02は円形である。この実施形態では、混合装置は外壁を有していないが、外側リムが反応器の内壁に合致すると、反応器壁は混合装置の外壁を形成する。外側リムと反応器壁との間の小さな間隙は、例えば溶接によって密閉できる。収集部03は、上述のようにこの実施形態では内側反応器壁である外側壁と円弧分割壁08との間に形成される。収集部は、円形混合装置の360°周囲に最大径に形成される。ここで、上にある触媒床(図示せず)から流れる流体は、混合装置の上部縁によって形成される入口09を通って入ったときに収集される。流体は、断面領域の残りが、この実施形態ではプレートによりブロックされたときに、入口を介して次の下にある触媒床、さらには収集部にのみ流れることができる。本発明の実施形態では、流体の流れに冷却急冷流体を添加するために収集部に急冷入口(図示せず)が配置できる。
【0055】
図2は、本発明の第1の態様である水平3レベル混合に係る混合装置の内部構造を示す。円弧分割壁の多くを見ることができ、これらが実質的に螺旋状内向きの方向に走るように見える。収集部の内部には、混合部04が同じ水平レベルに、ただし外側円形収集部内に形成されている。流体は、収集部から混合部に、円弧分割壁によって形成された螺旋内の開口部を介して流れる。示されるように、円弧分割壁のスロットも収集部から混合部までの追加経路を形成することができる。気体とおそらく液体及び蒸気との混合は、部分的に円弧状分割壁により形成された螺旋内の開口を介してかつ部分的に壁のスロット開口を介して排出部05に入る前に混合装置のほぼ最大直径で約360°にわたって移動するときに混合チャネル内で生じる。排出部では、混合気体及び場合によっては液体と蒸気は、均一な流れでミキサーを出る。こぼし縁部10は、排出部において蒸気リフト原理により液体の一様なレベルを保留する。ガスは液体の液滴を持ち上げ、混合装置のオープンスペース中心部(また、これは反応器06の円形断面の中心でもある)に向かって、さらには下の触媒床(図示せず)に向かって収集部の外にそれを運ぶ。また、排出部は、混合装置の外径に向かって流体の排出を可能にするように構成できる(図示せず)。下の触媒床への流体の分配をさらに均一にするために、当該技術分野で知られているような分配トレイ(図示せず)を、混合装置の下で下流触媒床の上に設置できる。図2から分かるように、円弧状分割壁は、収集、混合及び排出部を形成するチャネル07を形成する。
【0056】
図3では、本発明の第2の態様である垂直3レベル混合が示されている。図示した実施形態では、円弧状分割壁が、チャネルの外壁を形成するように混合装置の最大径で設けられている。したがって、この実施形態では、反応器の内側部分は、混合装置の外壁を形成していないが、ただし、混合装置の円形外側リムの直径が反応器の内壁の直径に対応する。混合装置はドーナツ形状であり、かつ、螺旋状に下降する螺旋によって、3つの接続部、すなわち、収集部、混合部及び排出部(これらの全ては混合装置の最大直径、すなわち反応器上に形成される)に分割される。混合装置の上にある触媒床からの気体並びに場合により液体及び蒸気は、混合装置の上で収集され、そして円弧分割壁によって円弧チャネルとして形成される収集部に向けられる。収集部内には急冷入口(図示せず)を配置することができる。流体混合物は、収集部の端部にある単一の開口を介して混合部に向けられる。
【0057】
図4からよく分かるように、流体は混合部内において180°の円運動で移動し、その際に、気体と、場合によっては流体、急冷液体及び蒸気とが混合されてから、混合部より下のレベルである排出部に入る。気体及び場合により液体は、排出部を通って移動し続けるが、ただし、混合装置/反応器の中心に向かって混合装置から徐々に放出される。こぼし縁部が排出部の全円で水平な液位を確保し、気体は、上記のように混合装置から排出する際にこぼし縁部にわたって液滴を引っ張る。また、混合装置(図示しない)の外径に向かう排出も可能である。
【0058】
本発明の第2の態様である垂直3レベル混合のさらなる実施形態では、排出部は、混合流体が混合装置の中心ではなく下方に向かって排出するような構成を有する。図4を参照して上で説明した実施形態と同様に、この実施形態では、混合流体は、図5から分かるように、180°の円運動で混合部に移動してから、混合部よりも下のレベルである排出部に入る。気体及び場合により液体11は、排出部を通って移動し続けるが、ただし、排出部の底部から下方に向かって混合装置から徐々に放出され、図6図7図8及び図10により明確に示されている排出ガイドベーンによって案内される。この実施形態では、ガイドベーンは、混合装置の機械的強度及び剛性にも寄与する。
【0059】
図9において、混合装置上の流体流れの原理を示している。ミキサー上の反応器部分から、流体は、混合装置の中心がブロックされ、そして混合部に向けられたときに収集部に向かって押し出される。示されたA点を通り、そして混合部に入った流体は、減少した流れ面積のため多相混合に最適なレベルにまで加速される。B点で混合部を離れて、流体は排出部に導入される。図10のB点で示されるように流体流れのために利用可能な断面積の増大のため、この点から流体速度が低下する。流体は、排出部の周りで旋回しているときに混合装置から徐々に排出される。排出は、排出部の底部にある排出ガイドベーン間で行われる。
【符号の説明】
【0060】
01.混合装置
02.円形外側リム
03.収集部
04.混合部
05.排出部
06.反応器の円形断面の中心
07.チャネル
08.円弧分割壁
09.入口
10.こぼし縁部
11.排出ガイドベーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10