【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、冷却、混合及び再分配の点で急冷部の高い効率を与え、反応器体積を最小限でしか占有しないと共に、設置、メンテナンス及びクリーニングに関連する、先に説明した他の全ての要件を完全に満足する。このものは、多くの既存及び新規の反応器ユニットで使用できるであろう。
【0012】
本発明の請求項1に係る新規のミキサー設計は、円筒状の多床接触反応器内において2個の触媒床間に取り付けられた混合装置である。この混合装置は、反応器の内壁に相当する円形外側リムを有し、この混合装置の外側リムは、反応器壁がミキサーの外壁となるように反応器壁の一体化部分か、又は反応器に連結された又は反応器壁の内側に隣接して配置された反応器とは無関係の壁であることができる。この混合装置は、上流触媒床から流体を収集するための収集部に配置された収集手段と、収集された流体を混合するための混合部に配置された混合手段と、下流触媒床に混合流体を排出するための排出部に配置された排出手段とを備える。特に、収集部、混合部及び排出部は、反応器の円形断面の中心の外側に配置される。このように、ミキサーの中心は自由空間であり、これは反応器内部及びミキサー自体の稼働及びメンテナンスのために使用できるが、効果的な混合のための大きな面積及び距離も確保される。というのは、この反応器の断面の最大面積及び円周方向距離は、反応器、すなわちミキサーの断面領域(円)の中心の外側の領域だからである。
【0013】
本発明の実施形態では、混合装置はドーナツ形状を有し、収集部、混合部及び排出部は、外側部分、すなわちドーナツリングに配置されるのに対し、上記実施形態と同様に、中央部は自由空間である。特に、収集部、混合部及び排出部は、反応器の円形断面領域の中心の三分の一外側、好ましくは反応器の円形断面領域の中心の2分の1外側に配置される。このため、大きい面積及び長い距離がミキサーのためにその高さに対して配置されるのみならず、大きな中心自由空間が稼働及びメンテナンスのために確保される。
【0014】
水平3レベル混合
上記本発明の第1態様では、混合装置は、収集手段、混合手段及び排出手段が一方の部を別の部から水平方向に分割する又は一方の部を反応器の円形断面の中心から分割する円弧分割壁を有するチャネルを備えるように構成される。このように、この本発明の第1態様は、水平方向3レベル混合を実行する。ミキサー本体は、ドーナツ状であり、かつ、円弧分割壁によって分割され、これは、実質的に螺旋(内側に螺旋状)を形成し、これがミキサーを3個の連結部:収集、混合及び排出部に分割する。ミキサー上にある触媒床からの気体及び液体流出物は、ミキサーの上部に集められ、そして最大反応器/混合器径で配置された収集チャネルに向けられる。収集された液体及び気体は、収集及び混合チャンバーを接続する開口部に向けられる。気体及び液体が混合チャネルに入った後に、これらのものは、排出チャネルに入る前にミキサー内において円弧運動で移動/回転する。液体及び気体は、この目的のために設計された開口部を通ってミキサーから排出される。気体及び液体相の排出方向は、反応器の中心に向かう。ミキサーを出る気体及び液体の制御流れパターンによって達成される分配トレイ上の均一な圧力プロファイルは、分配トレイ上における液体の均一な動作に寄与し、その結果、トレイの下にある床内の触媒に対して均一なガス及び液体分配を有する。
【0015】
この本発明の第1態様の実施形態では、混合装置の収集手段は、上流触媒床から流体を収集するための1個の入口を有する。そして、さらなる実施形態では、混合装置は、収集流体に急冷流体を添加するための急冷入口をさらに備え、該急冷入口は、収集部内に配置される。所定の実施形態では、急冷入口は、収集チャネルの開口部から約180°に配置されるガス管とすることができる。急冷ガス管は、収集チャネルに挿入でき、例えば、冷水素ガスをミキサーに直接導入することができる。急冷リングは必要ではない。
【0016】
本発明の第1態様のさらなる実施形態では、収集部は、混合部に対して反応器の外側略円形断面領域内に配置され、混合部は、排出部に対して反応器の外側略円形断面領域内に配置される。上記のように、ミキサー、収集、混合及び排出の有効領域は、円周方向距離が最大である円形領域の外側部分に配置され、長い流路を確保し、それによって、効率的な混合及びさらには排出が低圧力損失であっても可能となると同時に、検査及びサービス活動のために自由なミキサーの中央部分が残るが、その全てが本発明の主たる目的及び利点である。
【0017】
垂直3レベル混合
上記本発明の第2態様では、混合装置は、収集部が排出部に対して反応器の上流軸方向レベルで配置されるように構成される。このように、この本発明の第2態様は、垂直3レベル混合を実行するが、それぞれの部は特に別々のレベルでなくてもよい。というのは、各レベル間の境界は徐々に移行することができるからである。この本発明の第2態様の実施形態では、ミキサーはドーナツ形状であり、かつ、螺旋(螺旋状に下降する)によって次の3個の連結部:1)収集、2)混合及び3)排出部に分割される。ミキサー上にある触媒床からの気体及び液体流出物をミキサーの上部に集め、最大反応器直径で配置された収集チャネルに向ける。液体と、プロセスガスと、場合によっては冷却急冷水素ガスとの混合物は、少なくとも1個の開口部を介して混合チャネルに向けられる。気体と液体との混合物は、一実施形態では180°にわたって混合流路を通って移動し、その後混合チャネルの下のレベルで排出チャネルに入る。気体及び液体は、排出チャネルを通って移動し続けるが、この目的で設計されたスロットを通ってミキサーから徐々に放出される。排出された気体は、プラグ流れとしてミキサーの下にあるレベルに入り、液体は、次の2つの方法で放出される:最大ミキサー半径で1)反応器の中心に向けて又は2)開口部から反応器壁に向けて。
【0018】
ミキサーを出る気体及び液体の制御された流れパターンによって達成される分配トレイ上の均一な圧力プロファイルは、ミキサーの下にある分配トレイ上の液体の均一な動作に寄与し、これは、結果としてトレイの下にある床中における触媒への均一な気体及び液体分配を有する。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、収集部、混合部及び排出部は、それぞれ、反応器の略円形の断面領域の少なくとも120°の扇形で配置される。少なくとも120°は、3つのプロセスのそれぞれが長い経路で効果的に実行されることを確保する。これら3つの経路は、同じ長さのものである必要はなく、特に混合部を、有利には、120°よりも大きい扇形で配置して少量の圧力損失で効果的な混合を確保することができ、また排出部を、有利には、約360°で配置してミキサーの全円内での流体の均一な排出を確保することができる。
【0020】
反応器及び混合器の流体は、気相、液相及び蒸気相の両方を含むことができる。本発明の実施形態では、均一な混合は、ミキサーを排出手段が流体の液相のためのこぼし縁部を提供する内部円弧仕切壁を備えるように構成することによってさらに改善される。これは、気相及び液相の両方がミキサーの円全体及び反応器の全断面領域に沿って均等に分配されるという効果を有する。本発明の別の実施形態では、代わりに、外側こぼし縁部、又は本発明のさらなる実施形態では流体の液相の均一な分布のための内部及び外部こぼし縁部の両方が存在することができる。
【0021】
反応器及びその内部の1個以上ミキサーの構造を最適化するために、1個以上の混合装置は、反応器の触媒床支持体の一体化部分を形成することができる。これは、全体構成の建物高さがミキサー及び支持体の別個の構成と比較して低減できるという利点を有する。また、この構成の材料コストを低減することもできる。したがって、本発明の実施形態では、混合装置は、反応器の軸方向に対して1m未満、好ましくは0.5m未満の高さを有する。
【0022】
本発明の第3態様では、主に円筒形の触媒反応器(主として反応器の輪郭部分のほとんどとして理解される)は、下部触媒床の上に重ねられた上部触媒床を有し、かつ、本発明の上記実施形態のいずれかに係る少なくとも1個の混合装置が設けられる。
【0023】
本発明の第4態様は、反応器の上部触媒と下部触媒床との間の触媒反応器内部を流れる流体を混合する方法である。このプロセスの第1段階において、上部触媒床からの流体の流れの断面領域は、流体を収集するように、反応器の断面領域において、反応器の略円形断面領域の120°〜360°の扇形の半径方向外側3分の1に配置された収集部に制限される。これは、例えば断面領域の中心に配置されたプレートにより、液体が断面領域の中心に流下するのを阻止することによって行われる。
【0024】
その後、収集された流体は、混合部内において円形ミキサーの外側部分に接線方向に流れるように混合装置によって案内される。本発明のさらなる実施形態では、流体は、2つの接線方向に流れるように案内でき、流体は、ミキサーの1個の入口又はミキサーの複数の入口から1又は2つの接線方向に流れ始めることができる。
【0025】
流体は、混合部において円運動で流れ、そうすると同時に、流体は、内容物、蒸気、温度及び速度に関して均質な流体となるように混合される。効率的な混合が達成される。というのは、流体は、混合距離、すなわち外周が最も長いミキサーの円形断面の外側部分で流れるからである。混合装置、すなわち反応器の円形断面の中心部の外側に配置されたものの中央部には混合が存在せず、これは、自由空間として開放されたままである。
【0026】
流体が混合された後に、流体は、さらに混合装置の排出部の上を流れ、そこで、下部触媒床に排出されると共に、その少なくとも一部が少なくとも一つの接線方向に流れる。また、排出部は、反応器の円形断面の中心部の外側に配置され、それによって、排出は、栓流として均一に実行できる。というのは、これは長い円周距離にわたって実行されるからである。
【0027】
流体の排出流が円運動で接線方向に移動する間に、このものは半径方向内側、半径方向外側のいずれか又は半径方向内側及び外側の両方で移動すると共に、下にある触媒床に向かって排出部から流れる。排出部は、液相が流れ/こぼれ、混合装置から排出しかつ栓流を形成する気相とブレンドされる液滴を形成することができる縁部を形成する少なくとも1個のこぼし縁部を備えることができる。こぼし縁部は、混合装置からの液相の均一な排出を確保するのに役立つ。
【0028】
触媒反応器内を流れる流体を混合する上記の方法では、流体は、気相と液相と場合によって蒸気相を含むことができる。
【0029】
触媒反応器内を流れる流体を混合する方法の実施形態では、流体は、収集部から排出部に流れるときに、反応器に対して軸方向下向きの方向で移動する。したがって、流体は、収集部から混合部、さらに排出部に流れるときに下方に螺旋運動を行う。
【0030】
触媒反応器内を流れる流体を混合する方法の別の実施形態では、流体は、収集部から排出部に流れるときに、反応器に対して半径方向内側の方向に移動する。したがって、流体は、収集部から混合部、さらに排出部に流れるときに内側に円形螺旋運動を行う。
【0031】
説明した方法のさらに別の実施形態では、流体は、混合装置の収集部から混合部及びさらに排出部に流れるときに、説明した2つの動きの組合せ、すなわち、内側及び下向きに円形螺旋状移動で流れることができる。
【0032】
本発明の特徴
1.内部において2個の触媒床間に取り付けられた混合装置(01)を備える円筒形状の多床触媒反応器であって、該混合装置は、該反応器の内壁に対応する円形外側リム(02)を有し、該混合装置は、
上流触媒床から流体を収集するための収集部(03)内に配置された
収集手段と、
収集した流体を混合するための混合部(04)内に配置された混合手段と、
該混合流体を下流触媒床に排出するための排出部(05)内に配置された排出手段と
を備え、該混合装置はドーナツ形状を有し、該収集部、該混合部及び該排出部は、該反応器の円形断面の中心(06)の外側に配置された、多床触媒反応器。
【0033】
2.前記混合装置の外側リムが前記反応器壁の一体化部分である、特徴1に記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0034】
3.前記収集部、前記混合部及び前記排出部が前記反応器の円形断面領域の中心の三分の一外側、好ましくは該反応器の円形断面領域の中心の二分の一外側に配置された、請求項1に記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0035】
4.前記収集手段、前記混合手段及び前記排出手段が、一方の部を他方の部から水平に分割する又は一方の部を該反応器の円形断面の中心から分割する円弧分割壁(08)を備えるチャネル(07)を備える、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0036】
5.前記収集手段が前記上流触媒床から前記流体を収集するための1個の入口(09)を有する、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0037】
6.前記混合装置が前記収集流体に急冷流体を添加するための急冷入口をさらに備え、該急冷入口が前記収集部内に配置された、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0038】
7.前記収集部が前記排出部に対して前記反応器の上流軸方向レベルに配置された、上記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0039】
8.前記収集部が前記混合部に対して前記反応器の外側略円形断面領域内に配置され、該混合部が該排出部に対して該反応器の外側略円形断面領域内に配置された、特徴1〜6のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0040】
9.前記収集部、前記混合部及び前記排出部がそれぞれ前記反応器の略円形断面領域の少なくとも120°扇形で配置された、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0041】
10.前記排出手段が前記流体の液相のためのこぼし縁部(10)を与える内側円弧分割壁を備える、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0042】
11.前記排出手段が前記混合装置からの流体の垂直下方出口を与える半径方向排出ガイドベーン(11)を備える、特徴1〜10のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0043】
12.前記混合装置が前記反応器の触媒床支持体の一体化部分を形成する、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0044】
13.前記混合装置が前記反応器の軸方向に対して1m未満、好ましくは0.5m未満の高さを有する、前記特徴のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器。
【0045】
14.上部触媒床と下部触媒床との間において円筒形状の多床触媒反応器内を流れる流体を混合する方法であって、該方法は、該反応器の内壁に相当する円形外側リムを有する、該反応器内におけるドーナツ形混合装置で実施され、該方法は、次の工程:
・該反応器の略円形断面領域の120°〜360°扇形の半径方向外側三分の一に配置された該反応器の断面領域内に配置された収集部に対する該上部触媒床からの流体の流れの断面領域を制限して流体を収集し、
・該収集流体を少なくとも一つの接線方向に流し、
・該流体が該反応器の円形断面の中心の外側に配置された混合部に少なくとも一つの接線方向で流れている間に該流体を混合させ、及び
・該流体が該反応器の円形断面の中心の外側に配置された排出部において少なくとも1つの接線方向で流れている間に該流体を該下部触媒床に排出させること
を含む方法。
【0046】
15.前記流体が気相と液相と場合によっては蒸気相とを含む、特徴14に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【0047】
16.前記流体が前記収集部から前記排出部に流れるときに前記反応器に対して軸方向下向き方向に移動する、特徴14又は15に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【0048】
17.前記流体が前記収集部から前記排出部に流れるときに前記反応器に対して径方向内側の方向に移動する、特徴14又は15に記載の触媒反応器内を流れる流体を混合する方法。
【0049】
18.特徴1〜13のいずれかに記載の混合装置を備える円筒形状の多床触媒反応器の、硫黄及び窒素変換(HDS/HDN)、オレフィン及び芳香族化合物の水素化、金属除去、酸素変換及び水素化分解のための使用。
【0050】
本発明を、本発明の実施形態の例を示す図面によりさらに例示する。