特許第6367836号(P6367836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367836
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】T制御性細胞の増殖または枯渇方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20180723BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20180723BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20180723BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20180723BHJP
【FI】
   C07K16/28
   A61K35/12
   A61K35/17 Z
   A61P31/00
   A61P31/04
   A61P31/12
   A61P31/10
   A61P33/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   C12N5/0783ZNA
【請求項の数】20
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-557068(P2015-557068)
(86)(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公表番号】特表2016-509009(P2016-509009A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2014015101
(87)【国際公開番号】WO2014124134
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】61/762,136
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/763,217
(32)【優先日】2013年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100171505
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 由美
(72)【発明者】
【氏名】ファウストマン,デニス,エル.
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/109044(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/122464(WO,A1)
【文献】 特表平08−510470(JP,A)
【文献】 J Immunol.,2013年 2月 1日,Vol.190, No.3,p1076-1084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸130-149内の腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)のエピトープと選択的に結合する単離された非マウス抗体またはその抗原結合フラグメントであって、結合してTNFR2に対してアンタゴニスト作用を有するものである、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記エピトープが配列番号1のアミノ酸135-147を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
記抗体またはその抗原結合フラグメントが、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、ポリクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、Fab、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメント、一価抗体またはその抗原結合フラグメント、キメラ抗体またはその抗原結合フラグメント、単鎖Fv分子、二重特異性単鎖Fv((scFv')2)分子、ドメイン抗体、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、SMIP、ナノボディ、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')2分子、およびタンデムscFv(taFv)フラグメントからなる群より選択される請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが約50nM未満の平衡解離定数(「KD」)を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および薬学的に許容される賦形剤を含有する組成物。
【請求項7】
リンパ球が濃縮された組成物を調製するための方法であって、in vitroで、患者由来のヒト血液または骨髄サンプルから得られた該リンパ球を含むヒト細胞の集団を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させ、それによってリンパ球が濃縮された該組成物を調製することを含んでなり、その際、Tregが該組成物中の細胞の10%未満を構成する、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により調製された組成物であって、リンパ球が濃縮されており、該組成物中のTregが該組成物中の細胞の10%未満を構成する、組成物。
【請求項9】
患者における増殖性疾患または感染性疾患を治療するための、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
患者における増殖性疾患または感染性疾患の治療のための医薬の製造における、請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項11】
患者における増殖性疾患または感染性疾患を治療するための、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
患者における増殖性疾患または感染性疾患の治療のための医薬の製造における、請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記増殖性疾患が、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、視経路および視床下部グリオーマ、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、腱鞘の明細胞肉腫、結腸癌、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、下垂体癌、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織の肉腫、扁平上皮頸部癌、精巣癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、および膣癌からなる群より選択される癌であるか、または、前記増殖性疾患が、脳、肺、乳房、リンパ系、消化管、尿生殖路、咽頭、前立腺、または卵巣の固形腫瘍である、請求項9または11に記載の組成物。
【請求項14】
前記感染性疾患が細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、および寄生虫感染症からなる群より選択される、請求項9または11に記載の組成物。
【請求項15】
患者が哺乳動物である、請求項9、11、13、および14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記増殖性疾患が、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、視経路および視床下部グリオーマ、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、腱鞘の明細胞肉腫、結腸癌、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、下垂体癌、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織の肉腫、扁平上皮頸部癌、精巣癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、および膣癌からなる群より選択される癌であるか、または、前記増殖性疾患が、脳、肺、乳房、リンパ系、消化管、尿生殖路、咽頭、前立腺、または卵巣の固形腫瘍である、請求項10または12に記載の使用。
【請求項18】
前記感染性疾患が細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、および寄生虫感染症からなる群より選択される、請求項10または12に記載の使用。
【請求項19】
患者が哺乳動物である、請求項10、12、17、および18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tregが濃縮された組成物を調製する方法、およびこれらの組成物を用いて免疫学的疾患を治療するための方法に関する。本発明はまた、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を調製するための方法、および増殖性疾患の治療でのこれらの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T制御性細胞(Treg)は、移植、アレルギー、喘息、感染性疾患、移植片対宿主病(GVHD)、および自己免疫において多様な臨床応用性があるTリンパ球の小さなサブセットである。Tregはまた、癌のような症状では免疫寛容にも関与している。臨床応用におけるTregの使用は、血液中でのそれらの希少性およびex vivo(生体外)でそれらを均質な集団に増殖させることの困難性のために、難しい課題となっている。天然に存在するTregは、血液中の全CD4+ T細胞のわずか1〜5%を構成し、それらは活性化されるまでほとんどが休止状態のままである。したがって、基礎生物学において、また、臨床医学的応用のために、それらの役割を研究するのに十分な量のTregを採取することは、ex vivoでTregを増殖させる能力にかかっている。患者への再注入に向けてex vivoでTregを増殖させるために、1ダースを超える数のプロトコルが世界中で開発されてきたが、こうしたプロトコルの全ては、表現型および機能の入り混じったCD4+ T細胞集団からなる不均質な子孫をもたらす。不均質なCD4+ T細胞集団は、それらが炎症性サイトカインを放出することが可能であり、また、多様な、時には拮抗する機能をもった細胞を保有するので、リスクを伴っている。CD4+ T細胞の不均質な集団は、規制当局が不純かつ再現不可能であると見なしているため、臨床試験は第I相試験を超えて進行していない。したがって、重要な研究および臨床上の目標は、他のCD4+ T細胞集団の増殖を刺激することなく、Tregを選択的に増やす方法を見出すことであった。この分野での並行する目標は、Tregを選択的に枯渇させて、リンパ球集団を増殖させる方法を見つけることであった。このようなリンパ球集団は、癌などの増殖性疾患の治療において免疫応答をアップレギュレートするのに有用であろう。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、CD4+CD25hiT制御性細胞(Treg)が濃縮された組成物を特徴とし、該組成物中の細胞の少なくとも60%(例えば、70%、80%、90%、または100%)はTregである。好ましくは、前記組成物は、望ましい免疫調節特性、例えばフォークヘッドボックスP3(FOXP3)タンパク質の発現、を有するTregの均質な集団を含んでいる。前記組成物はまた、少なくとも5×106(例えば、5×107、5×108、5×109、5×1010、5×1011、または5×1012)個のTregを含有する。前記組成物中のTregは、CTLA4、TNFR2、FOXP3、CD62L、Fas、HLA-DR、およびCD45ROからなる群より選択される1種以上のタンパク質の発現について陽性として、かつCD127、CCR5、CCR6、CCR7、CXCR3、IFN-γ、IL10、およびICOSからなる群より選択される1種以上のタンパク質の発現について低いまたは陰性として特徴づけることができる。
【0004】
本発明はまた、上記の組成物のような、CD4+CD25hi Tregが濃縮された組成物を調製するための方法を特徴とする。この方法は、一般に、in vitroでTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)を含むヒト細胞の集団を、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)アゴニストおよび/またはNF-κB活性化剤と(例えば、1つ以上の培養ステップの間に)接触させ、それによってCD4+CD25hi Tregが濃縮された組成物を調製することを含む。ヒト細胞の集団は、患者由来のヒト血液サンプルまたはヒト骨髄サンプルから得ることができる。該サンプルからのヒト細胞の集団は、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞であるか、またはこうした細胞を含み、TNFR2アゴニストおよび/またはNF-κB活性化剤と接触させる前に血液または骨髄サンプルから分離または濃縮することができる。TNFR2アゴニストおよび/またはNF-κB活性化剤は、前記方法に従って、ヒト細胞の集団内に存在するCD4+CD25hiTregの増殖の増加を促進することによって、かつ/またはヒト細胞の集団内に存在するTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)からの(例えば、分化または活性化による)CD4+CD25hiTregの発生を増加させることによって、CD4+CD25hi Tregの濃縮を促進する。上記の方法は、好ましくは、Tregの均質な集団をもたらし、例えば、該組成物中の細胞の少なくとも60%(例えば、70%、80%、90%、または実質的に100%)はTregである。
【0005】
本発明の方法で使用することができるTNFR2アゴニストは、抗体(例えば、モノクローナル抗TNFR2抗体)、ペプチド、小分子、およびタンパク質からなる群より選択される作用剤であり得る。TNFR2のシグナル伝達は下流のNF-κB経路を介して進行し得るので、NF-κB活性化剤は、Tregが濃縮された組成物を調製する目的で、ヒト細胞の集団に接触させるために使用することができる。NF-κB活性化剤は、小分子(例えば、ベツリン酸、トポイソメラーゼ毒VP16、およびドキソルビシン)、ペプチド、タンパク質、ウイルス、および小さい非コードRNAからなる群より選択することができる。
【0006】
TNFR2アゴニストおよび/またはNF-κB活性化剤に加えて、Tregが濃縮された組成物を調製する方法は、ヒト細胞(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)の集団を、インターロイキン-2(IL2)、ラパマイシン、抗CD3(例えば、抗CD3抗体)、および/または抗CD28(例えば、抗CD28抗体)の1つ以上と接触させることを含み得る。in vitroでの増殖の後、上述した本発明の方法は、少なくとも5×106(例えば、5×106、5×107、5×108、5×109、5×1010、5×1011、または5×1012)個のTregを調製することができ、該組成物中の細胞の少なくとも60%(例えば、70%、80%、90%、または実質的に100%)はTregである。
【0007】
本発明はまた、Tregが濃縮された組成物、TNFR2アゴニスト(例えば、モノクローナル抗TNFR2抗体)、およびNF-κB活性化剤のいずれか1つ以上を患者に投与することによって、患者(例えば、ヒト患者)における免疫学的疾患(例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、GVHD、または移植片拒絶反応)、または感染性疾患(例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、および/または寄生虫感染)を治療するための方法を特徴とする。例えば、この治療方法は、Tregが濃縮された組成物を単独で、またはNF-κB活性化剤と組み合わせて、投与することを含むことができる。Tregが濃縮された組成物は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。Tregが濃縮された組成物を調製する1つの方法は、上述した本発明の方法を使用することによるものである。免疫学的疾患の治療方法で使用するためのTNFR2アゴニストおよびNF-κB活性化剤は、上述したもののいずれか1つ以上であり得る。
【0008】
本発明の方法で治療できるアレルギーは、食物アレルギー、季節性アレルギー、ペットアレルギー、蕁麻疹、花粉症、アレルギー性結膜炎、ツタウルシ(poison ivy)アレルギー、オーク(oak)アレルギー、カビアレルギー、薬物アレルギー、ダストアレルギー、化粧品アレルギー、および化学物質アレルギーからなる群より選択することができる。本発明の方法で治療できる自己免疫疾患は、I型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト(CREST)症候群、寒冷凝集素症、クローン病、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、全身性エリテマトーデス(Lupus)、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ならびにウェゲナー肉芽腫症からなる群より選択することができる。
【0009】
上記の治療方法は、少なくとも5×106(例えば、5×106、5×107、5×108、5×109、5×1010、5×1011、または5×1012)個のTregを含有する、Tregが濃縮された組成物を投与することを含み得る。望ましい免疫調節特性を有するTregには、例えばFOXP3を発現するものが含まれる。
【0010】
本発明はまた、TNFR2の第1エピトープと選択的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを特徴とし、この第1エピトープは配列番号1の位置48-67を含む。該抗体またはその抗原結合フラグメントは、結合時にTNFR2に対してアンタゴニスト作用を有する。該抗体またはその抗原結合フラグメントはさらに、TNFR2の第2エピトープと結合することができる。第2エピトープは配列番号1の位置135を含む。この第2エピトープは、配列番号1の位置135-147(例えば、配列番号1の位置130-149、配列番号1の位置128-147、または配列番号1の位置135-153)を含むことができる。該抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、ポリクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、Fab、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメント、一価抗体またはその抗原結合フラグメント、キメラ抗体またはその抗原結合フラグメント、単鎖Fv分子、二重特異性単鎖Fv((scFv')2)分子、ドメイン抗体、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、ドメイン抗体、SMIP、ナノボディ、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')2分子、あるいはタンデムscFv(taFv)フラグメントであり得る。該抗体またはその抗原結合フラグメントとTNFR2との結合の平衡解離定数(「KD」)は、約50nM未満(例えば、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、または約700pM未満)であり得る。該抗体またはその抗原結合フラグメントとTNFR2との結合の平衡解離定数(「KD」)は、約10pM〜約50nM(例えば、約20pM〜約30nM、約50pM〜約20nM、約100pM〜約5nM、約150pM〜約1nM、または約200pM〜約800pM)の範囲であり得る。
【0011】
本発明はまた、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を特徴とし、該組成物中の細胞の10%未満(例えば、9%未満、8%未満、7%未満、5%未満、もしくは2%未満、または実質的に皆無)はTregである。この組成物は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。
【0012】
さらに、本発明は、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を調製するための方法を特徴とする。この方法は、一般に、Tregを含むヒト細胞の集団を、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)アンタゴニストおよび/またはNF-κB阻害剤とin vitroで接触させることを含む。TNFR2アンタゴニストおよび/またはNF-κB阻害剤は、Tregの増殖を抑制するために使用され、それによってTregが実質的に枯渇された組成物をもたらす。ヒト細胞の集団は、患者由来のヒト血液サンプルまたはヒト骨髄サンプルから得ることができる。ヒト細胞の集団は、例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞を含むことができ、これらの細胞は、TNFR2アンタゴニストおよび/またはNF-κB阻害剤と接触させる前に血液または骨髄サンプルから分離または濃縮することができる。上記の方法は、リンパ球が濃縮された組成物(例えば、該組成物中の細胞の実質的に100%がリンパ球である)を調製するために使用することができ、この場合に該組成物中の細胞の10%未満(例えば、9%未満、8%未満、7%未満、5%未満、もしくは2%未満、または実質的に皆無)はTregである。
【0013】
リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を調製するための上記方法で使用することができるTNFR2アンタゴニストは、抗体(例えば、モノクローナル抗TNFR2抗体)、ペプチド、小分子、およびタンパク質からなる群より選択される作用剤であり得る。上記方法で使用することができるNF-κB阻害剤は、小分子、ペプチド(例えば、細胞透過性の阻害ペプチド)、タンパク質、ウイルス、および小さい非コードRNAからなる群より選択される作用剤であり得る。例えば、NF-κB阻害剤は、以下からなる群より選択される小分子であり得る:2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY 11-7082、BAY 11-7085、CAPE(カフェ酸フェネチルエステル)、マレイン酸ジエチル、3,4-ジヒドロキシケイ皮酸エチル、ヘレナリン(Helenalin)、グリオトキシン(Gliotoxin)、NF-κB活性化阻害剤II JSH-23、NF-κB活性化阻害剤III、グルココルチコイド受容体モジュレーター、CpdA、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、(R)-MG-132、ロカグラミド(Rocaglamide)、サリチル酸ナトリウム、QNZ、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、アスタキサンチン、(E)-2-フルオロ-4'-メトキシスチルベン、CHS-828、ジスルフィラム(disulfiram)、オルメサルタン(olmesartan)、トリプトリド(triptolide)、ウィサフェリン(withaferin)、セラストロール(celastrol)、タンシノン(tanshinone)IIA、Ro 106-9920、カルダモニン(cardamonin)、BAY 11-7821、PSI、HU 211、ML130、PR 39、ホノキオール(honokiol)、CDI 2858522、アンドログラホリド(andrographolide)、およびジチオカルバメート類。
【0014】
TNFR2アンタゴニストは、TNFR2の第1エピトープと結合するTNFR2アンタゴニスト抗体であり得る。この第1エピトープは配列番号1の位置48-67を含む。該抗体またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2の第2エピトープと結合することができる。第2エピトープは配列番号1の位置135(例えば、配列番号1の位置135-147)を含む。該抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、ポリクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、Fab、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメント、一価抗体またはその抗原結合フラグメント、キメラ抗体またはその抗原結合フラグメント、単鎖Fv分子、二重特異性単鎖Fv((scFv')2)分子、ドメイン抗体、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、ドメイン抗体、SMIP、ナノボディ、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')2分子、あるいはタンデムscFv(taFv)フラグメントであり得る。該抗体またはその抗原結合フラグメントとTNFR2との結合の平衡解離定数(「KD」)は、約50nM未満(例えば、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、または約700pM未満)であり得る。該抗体またはその抗原結合フラグメントとTNFR2との結合の平衡解離定数(「KD」)は、約10pM〜約50nM(例えば、約20pM〜約30nM、約50pM〜約20nM、約100pM〜約5nM、約150pM〜約1nM、または約200pM〜約800pM)の範囲であり得る。
【0015】
本発明は、患者に、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物、TNFR2アンタゴニスト(例えば、モノクローナル抗TNFR2抗体)、またはNF-κB阻害剤のいずれか1つ以上を投与することによって、患者(例えば、ヒト患者)における増殖性疾患(例えば、癌または固形腫瘍)を治療する方法を特徴とする。例えば、増殖性疾患を治療する方法は、リンパ球が濃縮された(かつTregが枯渇された)組成物を単独で、またはNF-κB阻害剤と組み合わせて、投与することを含み得る。リンパ球が濃縮された組成物は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。好ましくは、リンパ球が濃縮された組成物は、上述したような本発明の方法によって調製され得る。増殖性疾患を治療する方法で使用するためのTNFR2アンタゴニストおよびNF-κB阻害剤は、上述したもののいずれか1つ以上であり得る。
【0016】
本発明は、患者に、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物、TNFR2アンタゴニスト(例えば、モノクローナル抗TNFR2抗体)、またはNF-κB阻害剤を投与することによって、患者における感染性疾患(例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、または寄生虫感染)を治療する方法を特徴とする。例えば、感染性疾患を治療する方法は、リンパ球が濃縮された(かつTregが枯渇された)組成物を単独で、またはNF-κB阻害剤と組み合わせて、投与することを含むことができる。リンパ球が濃縮された組成物は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。好ましくは、リンパ球が濃縮された組成物は、上述したような本発明の方法によって調製され得る。感染性疾患を治療する方法で使用するためのTNFR2アンタゴニストおよびNF-κB阻害剤は、上述したもののいずれか1つ以上であり得る。
【0017】
本発明は、本明細書に記載される有効量の抗体またはその抗原結合フラグメントを患者に投与することによって、患者における感染性疾患を治療する方法を特徴とする。本発明はまた、本明細書に記載される有効量の抗体またはその抗原結合フラグメントを患者に投与することによって、患者における増殖性疾患(例えば、癌)を治療する方法を特徴とする。
【0018】
本発明の方法(例えば、リンパ球が濃縮された(かつTregが枯渇された)組成物、TNFR2アンタゴニストおよび/またはNF-κB阻害剤のいずれか1つ以上を投与することによる方法)に従って治療することができる癌は、以下からなる群より選択することができる:急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、視経路および視床下部グリオーマ、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、腱鞘の明細胞肉腫、結腸癌、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、下垂体癌、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織の肉腫、扁平上皮頸部癌、精巣癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、および膣癌。本発明の方法で治療することができる固形腫瘍には、脳、肺、乳房、リンパ系、消化管、尿生殖路、咽頭、前立腺、または卵巣の固形腫瘍が含まれる。
【0019】
定義
用語「約」は、記載された値の±10%である値を意味するために本明細書で使用される。
本明細書で使用する用語「抗体」は、全抗体または全免疫グロブリンと、その抗原結合フラグメントまたは一本鎖を包含する。抗体は、本明細書で使用するとき、哺乳動物(例えば、ヒトまたはマウス)の、ヒト化された、キメラの、組換え体の、合成的に作製された、または自然界で単離されたものであり得る。ヒトを含むほとんどの哺乳動物において、全抗体は、ジスルフィド結合によって接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を有する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3と、CH1とCH2の間のヒンジ領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域はさらに、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が散在する、超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置された3つのCDRと4つのFRから構成される:FR1, CDR1, FR2, CDR2, FR3, CDR3, FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含んでいる。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含めて、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。本発明の抗体には、抗体のすべての既知の形態と、抗体様の特性を有する他のタンパク質骨格が含まれる。例えば、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、一価抗体、キメラ抗体、またはフィブロネクチンもしくはアンキリンリピートなどの抗体様の特性を有するタンパク質骨格であり得る。抗体は、以下のアイソタイプのいずれかを持つことができる:IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2、およびIgAsec)、IgD、またはIgE。
【0020】
本明細書で使用する用語「抗原結合フラグメント」とは、特定の抗原(例えば、CD21受容体)と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって果たされる。抗体フラグメントは、Fab、Fab'2、scFv、SMIP、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、ナノボディ、アプタマー、またはドメイン抗体であり得る。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:(i) VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメントの、Fabフラグメント;(ii) ヒンジ部でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントの、F(ab')2フラグメント;(iii) VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v) VHおよびVLドメインを含むdAb;(vi) VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989);(vii) VHまたはVLドメインからなるdAb;(viii) 単離された相補性決定領域(CDR);および(ix) 必要に応じて合成リンカーによって接合されてもよい、2つ以上の単離されたCDRの組み合わせ。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、合成リンカーによって接合させることができる。この合成リンカーは、VLおよびVH領域が対になって一価分子(単鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする(例えば、Bird et al., Science 242: 423-426, 1988;およびHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883, 1988参照)。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来技術を用いて得られ、フラグメントはインタクトな抗体と同様に有用性についてスクリーニングされる。抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術によって、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断によって作製することができる。
【0021】
用語「キメラ抗体」とは、その可変領域が第1の種に由来し、その定常領域が第2の種に由来する免疫グロブリンまたは抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、遺伝子工学によって、異なる種に属する(例えば、マウスおよびヒト由来の)免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築することができる。
【0022】
本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の両方が、例えば、Kabatら(Sequences of proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, 1991)に記載される、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を持っている、抗体またはそのフラグメントを含むことを意図している。さらに、抗体が定常領域を含む場合、その定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列から誘導される。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかし、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体(すなわち、ヒト化抗体または抗体フラグメント)を含むことを意図していない。
【0023】
用語「ヒト化抗体」とは、実質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体に由来する可変フレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体に由来する相補性決定領域(例えば、少なくとも1つのCDR)とを含む、可変領域を有する少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む任意の抗体または抗体フラグメントを指す。
【0024】
本明細書で使用する用語「TNF-αムテイン」とは、TNFR2を活性化または阻害する能力を保持しながら、1個以上のアミノ酸によってTNF-αのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。例えば、TNF-αムテインは、基準ポリペプチド(TNF-α)のアミノ酸配列に対して90%を超えるが100%未満の配列同一性を有するアミノ酸配列を持つことができる。
【0025】
本発明のTreg濃縮組成物に関して本明細書で使用する用語「実質的に100%」または「実質的に均質」とは、該組成物中の細胞の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上(例えば、全部)がTregであることを意味する。
本明細書で使用する用語「治療する」とは、疾病に関連する有害な症状を安定化もしくは軽減させる;疾患症状の重症度を低下させる;疾患の進行速度を遅くする;病状の進行を抑制もしくは安定化させる;または望ましい方法で疾患状態に関連する指標(metric)を変更する;ことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、ヒト被験者の小さな二重盲検プラセボ対照試験において、プラセボ(右側のグラフ)と対比して、BCG処置がTNF-αを誘導し(左上のグラフ)、その後まもなく、処置された被験者にTregが現れる(左下のグラフ)ことを示す一連のグラフである。
図1B図1Bは、新鮮なヒト血液から新鮮分離したCD4+細胞において、TNF-αは単独では培養下でFOXP3を誘導しないが(左のグラフ)、IL-2と共にインキュベートしたとき、IL-2単独と比べて、より高いレベルにFOXP3を誘導する(右のグラフ)ことを示す一連のグラフである。データは、14人の被験者(左のパネル)および10人の被験者(右のパネル)からのものである。
図1C図1Cは、IL-2単独の場合よりも、TNF-αおよびIL-2との共インキュベーション後にCD4+CD25hiTregにおいてより多くのFOXP3の細胞内誘導を確認する、一連の代表的なフローサイトメトリーヒストグラムである。フロー図の数値は%である。[*P<0.05または**P<0.01、対応のあるt検定による]。
図2A図2Aは、TNFR2がCD4+CD25hiT細胞上に優先的に発現されることを示す一連のグラフである。
図2B図2Bは、一方のTNFR2抗体がアゴニストとして作用してFOXP3を誘導し、他方のTNFR2抗体がアンタゴニストとして作用してFOXP3+発現を抑制したことを示すグラフである。
図2C図2Cは、シグナル伝達経路のアッセイにおいて、IL-2、TNFR2アゴニストおよびアンタゴニストと共にインキュベートした精製されたCD4+細胞が、特にTNFR2アゴニズムによって優先的に誘導されるシグナル伝達タンパク質TRAF2、TRAF3およびアポトーシス阻害因子cIAP2における、mRNAの相対的下流発現の違いを引き起こすことを示すグラフである。表示されたデータは、4人の被験者からの平均±SEMである。
図2D図2Dは、フローサイトメトリー(左のパネル)およびカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)測定(右のパネル)により測定して、TNFR2アゴニストが6人の被験者からのサンプルにおいて増殖のより大きな増加%を引き出すことを示す一連のグラフであり、典型的な実験からの代表的な結果がCFSE測定(右のパネル)により提示される。バー内の数字は、分裂に入った細胞のパーセントを表す。TNFR2アンタゴニストはCD4+増殖を抑制し(左のパネル)、かつCFSE希釈により測定したとき増殖を阻害した(右のパネル)。*P<0.05または***P<0.01、対応のあるt検定による。
図3A図3Aは、新鮮な血液由来のCD4+細胞からCD4+CD25hi細胞を精製して、96ウェル丸底プレート(2×104細胞/ウェル)で抗CD3抗体、抗CD28抗体、ヒトIL-2、およびラパマイシンと共にインキュベートすることによって16日間増殖させるためのプロトコルを示す概略図である。
図3B図3Bは、CD25hi精製・増殖の前対後のCD4+細胞の代表的なCD25およびFOXP3のフロー図を示し、集団の純度を示唆する、一連のグラフである。
図3C図3Cは、処理グループごとに、精製Tregの細胞数を示すグラフであり、TNFR2アゴニストが他のどのグループよりも多くの増殖を誘導したことを明らかにする。*P<0.05、**P<0.01、対応のあるt検定による。TNFR2アンタゴニストは、処理なしと比べて、増殖を抑制した。図3Cのデータは、10人の被験者からのサンプルである。
図4A図4Aは、全ての処理グループがCD25、FOXP3、CTLA4、TNFR2、CD62L、およびFasなどのTregマーカーについて高度に陽性であり、CD127について陰性であることを示す一連のグラフである。
図4B図4Bは、TNFR2アゴニストで処理されたTregがHLA-DRおよびCD45ROをほぼ均一に発現し、かつICOS、CXCR3、CCR5、CCR6、CCR7、およびCXCR3などのマーカーをほぼ均一に欠くことを示す一連のグラフである。
図4C図4Cは、TNFR2アゴニストで処理されたTregが他のグループよりもTregマーカーのより大きな均一性を有することを示す一連の代表的なフロー図である(t検定により*P<0.05、**P<0.01)。
図5A図5Aは、代表的なケースでは、TNFR2アゴニストで処理されたTregが、全ての希釈率または抑制比で、他のグループと比べて、より強力で用量依存的なCD8+細胞数の抑制を発揮したことを示す一連のグラフである(左のパネル、第3列)。2:1(CD8+レスポンダー対Treg)の抑制指数を用いて、CD8+細胞のTNFR2アゴニスト抑制は、処理なしおよびTNFR2アンタゴニスト処理よりも大きい(右のパネル)。図5A(右のパネル)のデータは5人の被験者からのサンプルであり、図5B(下のパネル)のデータは8人の被験者からのものである。
図5B図5Bは、TNFR2アゴニストで処理されたTregがより低い割合のIFNγ+細胞を産生することを示す一連のグラフである。
図5C図5Cは、PMAとイオノマイシンで24時間刺激した後のより少ない数のT-bet+細胞を示すグラフである。
図6図6は、TNFR2アゴニスト対アンタゴニストを用いた研究結果の概要を示す概略図である。精製および増殖後に、TNFR2アゴニストは、CD8+細胞に対するより高い抑制能力とより低いサイトカイン産生能力を兼ね備え、表現型的により均質なTreg (CD4+ CD25hi FOXP3+ CTLA4+ TNFR2+ CD45RO+ CD62L+ CD127-, HLA-DRhi CCR5- CCR7- CXCR3- ICOS-)を増殖させ、生み出す点で、TNFR2アンタゴニストより優れている。
図7図7は、異なるTNFRアゴニストおよびアンタゴニスト抗体によるFOXP3発現の誘導を示すグラフである。抗TNFR1および抗TNFR2 mAbのスクリーニングは、試験された抗体の全てが、FOXP3+発現を誘導または抑制する訳ではないことを明らかにする。
図8図8は、TNFR2アゴニストまたはアンタゴニストの存在下および非存在下にIL-2と一晩インキュベートした後のCD25+FOXP3-細胞の割合を示すグラフである。処理グループをTNFまたはTNFR2アゴニストの存在下でインキュベートしたとき、有意な増加パーセントが観察された(**; P<0.001)。データは、10人の被験者からのサンプルのものである。
図9A図9Aは、増殖プロトコルを示す概略図である。16日間の増殖後、Treg Expanderビーズを取り出し、細胞計数のために一晩静止させた。
図9B図9Bは、各処理グループによる増殖の程度(magnitude)を示すグラフである(*; p<0.05、対応のあるt検定による)。図9Bのデータは、10人の被験者からのサンプルのものである。
図10A図10Aは、全ての細胞がFas陽性であったことを示す一連のグラフである。
図10B図10Bは、ラパマイシンを用いて増殖させた細胞と比べて、同様の傾向で細胞を増殖させた方法において、いくつかの表面マーカーが多様な発現パターンを示したことを示す一連のグラフである(*; p<0.05、**; p<0.01, 対応のあるt検定により判定)。データは6人の被験者からのものである。
図11A図11Aは、増殖前の新鮮分離したTregの表現型を示すグラフである(N=3, 3人の被験者からのサンプル)。
図11B図11Bは、増殖前のTregマーカーの代表的なフロー図を示す一連のグラフである。
図12図12は、平均蛍光強度(MFI)により測定された細胞表面マーカーの密度を示す一連のグラフである。TregのMFIは、TNFR2アゴニスト増殖細胞とTNFR2アンタゴニスト増殖細胞の間に明確な違いを示している(* p<0.05、** p<0.01、対応のあるt検定により判定)。
図13A図13Aは、増殖したCD4+CD25+細胞の抑制能力がCD8+ Tレスポンダー細胞のCFSE希釈により確定されたことを示すグラフである。典型的な結果のフローサイトメトリー図表および4つの独立した実験から2:1のレスポンダー:Tregに基づいて計算された抑制指数の概要もまた、図13Aに示される。
図13B図13Bは、TNFR2アゴニストにより増殖されたCD4+CD25+細胞が著しく増強された抑制能力を示したことを示す一連のグラフである(N=5)。これらの細胞は最低のサイトカイン産生能力を示した。(PMAとイオノマイシンで24時間刺激した後のIFN、IL-10およびTNF(*; p<0.05、**; p<0.01、対応のあるt検定による))。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、Treg(例えば、CD4+,CD25hiTreg)が濃縮された組成物を調製する方法を特徴とする。本発明はまた、Tregが濃縮された組成物、例えば下記の方法により調製されるTregが濃縮された組成物を用いて、免疫学的疾患および感染性疾患を治療するための方法を特徴とする。本発明はまた、リンパ球が濃縮された(かつTregが枯渇された)組成物を調製する方法、ならびにこの組成物を用いて増殖性疾患を治療する方法を特徴とする。
【0028】
TregおよびTNFR2
T制御性細胞(Treg)は、移植、アレルギー、喘息、感染性疾患、GVHD、および自己免疫において多様な臨床応用性があるTリンパ球の小さなサブセットである。Tregは、異常な免疫反応を抑制するために、それを必要とする患者において使用することができる。Tregはまた、癌などの症状では免疫寛容に関与することが知られている。天然に存在するTregは、血液中の全CD4+ T細胞のわずか1〜5%を構成し、活性化されるまでほとんどが休止状態のままである。ヒトでは、Tregは、CD4+と、高発現のインターロイキン-2(IL-2)受容体α鎖CD25hiとの同時発現によって定義される。Tregはまた、誘導可能なレベルの細胞内転写因子FOXP3を特徴とし、FOXP3の発現はTregを同定するために使用することができる。TNF-αは2種類の受容体、TNFR1およびTNFR2、を有し、これらはそれぞれ異なるシグナル伝達経路を制御している。遍在性の細胞発現を有するTNFR1とは異なり、TNFR2は、より限定された様式で発現され、主にT細胞の亜集団(特に、Treg)、内皮細胞、および神経細胞に制限される。霊長類での研究は、TNFR2特異的リガンドが、TNFR2の限られた細胞分布のため、最小の全身毒性を持つ可能性があることを示唆している。天然に存在するTregは、TNFR1よりも高い密度でTNFR2を発現しているようである。こうした特徴は、TNFR2をTregに対する有利な分子標的にしている。
【0029】
濃縮Treg組成物の調製方法
本発明は、CD4+およびCD25hiとして特徴づけられるTregが濃縮された組成物を調製するために、末梢血サンプルまたは骨髄サンプルなどの、患者(例えば、ヒト)から分離されたサンプル中のTregを増殖させるための方法を特徴とする。Tregの増殖を促進させる方法は、当技術分野で公知であり、例えば、以下に記載されている:Brunstein, C.G. et al., Infusion of ex vivo expanded T regulatory cells in adults transplanted with umbilical cord blood: safety profile and detection kinetics, Blood 117, 1061-1070 (2011); Saas, P. & Perruche, S., (F1000 Immunology, 2012), Tresoldi, E. et al., Stability of human rapamycin-expanded CD4+CD25+ T regulatory cells, Haematologica 96, 1357-1365 (2011); Nadig, S.N. et al., In vivo prevention of transplant arteriosclerosis by ex vivo-expanded human regulatory T cells. Nat Med 16, 809-813 (2010); Battaglia, M., Stabilini, A. & Tresoldi, E., Expanding human T regulatory cells with the mTOR-inhibitor rapamycin, Methods Mol Biol 821, 279-293 (2012); Pahwa, R. et al., Isolation and expansion of human natural T regulatory cells for cellular therapy, Journal of immunological methods 363, 67-79 (2010); Hoffmann, P., Eder, R., Kunz-Schughart, L.A., Andreesen, R. & Edinger, M., Large-scale in vitro expansion of polyclonal human CD4(+)CD25high regulatory T cells, Blood 104, 895-903 (2004); Lin, C.H. & Hunig, T., Efficient expansion of regulatory T cells in vitro and in vivo with a CD28 superagonist, European journal of immunology 33, 626-638 (2003); Lan, Q. et al., Induced FOXP3(+) regulatory T cells: a potential new weapon to treat autoimmune and inflammatory diseases? Journal of molecular cell biology 4, 22-28 (2012); Sagoo, P. et al., Human regulatory T cells with alloantigen specificity are more potent inhibitors of alloimmune skin graft damage than polyclonal regulatory T cells, Science Translational Medicine 83, 1-10 (2011); Edinger, M. & Hoffmann, P., Regulatory T cells in stem cell transplantation: strategies and first clinical experiences, Current opinion in immunology 23, 679-684 (2011); Trzonkowski, P. et al., First-in-man clinical results of the treatment of patients with graft versus host disease with human ex vivo expanded CD4+CD25+CD127-T regulatory cells, Clinical Immunology 133, 22-26 (2009); Di Ianni, M. et al., Tregs prevent GVHD and promote immune reconstitution in HLA-haploidentical transplantation, Blood 117, 3921-3928 (2011); Hippen, K.L. et al, Massive ex vivo expansion of human natural regulatory T cells (T(regs)) with minimal loss of in vivo functional activity. Sci Transl Med 3, 83ra41 (2011); Kim, Y.C. et al., Oligodeoxynucleotides stabilize Helios-expressing Foxp3+ human T regulatory cells during in vitro expansion, Blood 119, 2810-2818 (2012); Bacchetta, R. et al., Interleukin-10 Anergized Donor T Cell Infusion Improves Immune Reconstitution without Severe Graft-Versus-Host-Disease After Haploidentical Hematopoietic Stem Cell Transplantation. ASH Annual Meeting Abstracts 114, 45- (2009); Desreumaux, P. et al., Safety and efficacy of antigen-specific regulatory T-cell therapy for patients with refractory Crohn's disease, Gastroenterology 143, 1207-1217 e1202 (2012); Clerget-Chossat, N. et al., in International Society for Cell Therapy Seattle, Washington, (2012); およびCardenas, P.A., Huang, Y. & Ildstad, S.T., The role of pDC, recipient T(reg) and donor T(reg) in HSC engraftment: Mechanisms of facilitation, Chimerism 2, 65-70 (2011)。これらの刊行物のそれぞれ、およびTregを増殖させるためのそれらの方法は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0030】
上記刊行物に記載されているTregの増殖を促進するためのプロトコルは、一般的に、CD4+細胞の集団を含む患者(例えば、ヒト患者)由来の新鮮なサンプル(例えば、血液サンプル)を取得することを含む。CD4+細胞は、Tregの増殖に先立って1以上の工程でさらに精製または濃縮することができる。CD4+細胞は、当技術分野で公知の技術を用いて(例えば、Dynabeads(登録商標)CD4ポジティブ分離キット(Invitrogen社)などの、抗CD4+抗体に結合した磁気ビーズを使用して)、サンプルから分離することができる。培養中、CD4+細胞の増殖を刺激するために、該細胞を1種以上の試薬と接触させることができる。例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、ヒトIL-2、およびラパマイシンの1種以上が添加され得る。しかし、この方法だけでは細胞の不均質な集団をもたらし、その一部は患者に有害でありうる炎症性サイトカインを放出することが可能である。この不均質な集団は免疫学的疾患または感染性疾患の治療には役に立たず、また、Tregは、それを損傷することなしには、この不均質な集団から容易に分離することができない。本発明は、TNFR2アゴニストを使用することによってこれらのプロトコルを改良するものであり、TNFR2アゴニストは、Tregの増殖を優先的に促進し、かつ望ましい形質を備えたTregの均質な集団、例えばFOXP3を発現するTregの亜集団をもたらす。TNFR2アゴニストおよび/またはNF-κB活性化剤は、ヒト細胞の集団内に存在するCD4+CD25hi Tregの増殖の増加を促進することによって、かつ/またはヒト細胞の集団内に存在するTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)からの(例えば、分化または活性化による)CD4+CD25hi Tregの発生を増加させることによって、該方法に従って、CD4+CD25hi Tregの濃縮を促進する。本発明は、本明細書に記載するような免疫学的疾患または感染性疾患の治療のために使用することができる、Tregが濃縮された細胞集団を提供する。
【0031】
TNFR2アゴニストを用いたTregのin vitro増殖
一般的に、本方法は、ヒトのサンプル、例えば血液または骨髄サンプル、からTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)の出発集団を得ることを含む。血液サンプルを使用する場合は、通常3〜4本のチューブの血液(各チューブ中に約2〜10mL)が下記のプロトコルにおいて使用され得る。当業者は、細胞培養プロトコルの規模に応じて使用される血液サンプルの量を調整することができる。
【0032】
一般的に、ビーズマトリックス、例えば磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標)など)に結合された抗CD4および/または抗CD25抗体が、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞を分離するために使用され得る。例えば、CD4+ T細胞は、市販の試薬、例えばDynabeads(登録商標)CD4ポジティブ分離キットを用いて分離することができ、また、CD25+細胞は、市販の試薬、例えばDynabeads CD25および/またはDETACHaBEAD CD4/CD8(Invitrogen社)を用いて分離することができる。CD4+CD25+細胞を出発集団として使用する場合、該細胞は、抗CD4ビーズと抗CD25ビーズの両方を用いて単一工程で、または最初にCD4+細胞を分離し、続いてCD25+細胞を分離するか、その逆による2工程法で、分離することができる。
【0033】
分離されたCD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞は、その後、適切な細胞培養容器、例えば96ウェル丸底プレート(2×104細胞/ウェル)で、抗CD3および/または抗CD28抗体の存在下に、約16日間(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18日間、またはそれ以上の日数)の細胞培養において、増殖させることができる。出発培養物で用いられる細胞の量は、細胞培養容器の容積に依存する。抗CD3および抗CD28抗体は、細胞培養の全期間にわたって、例えば各培養日ごとに、または細胞培養の一部の期間にのみ(培養中の1日または数日間)、存在し得る。典型的には、抗CD3および抗CD28抗体は、市販のDynabead Human Treg Expander (Invitrogen社)の形で、ビーズ対細胞比2:1にて添加され得る。
【0034】
ヒトIL-2および/またはラパマイシンもまた、細胞培養培地に、例えば細胞培養の期間中に1回以上、添加することができる。例えば、ヒトIL-2は、2日ごとに、例えば16日の細胞培養期間の2、4、7、9、11、および14日目に、添加され得る。ラパマイシンは、16日の細胞培養期間の0、2、4、および7日目に添加され得る。ヒトIL-2とラパマイシンは一緒に添加してもよいし、交互に1日おきに添加してもよい。典型的には、ヒトIL-2は細胞培養を開始してから2日後に添加される。ヒトIL-2および/またはラパマイシンはまた、増殖プロトコルの全期間にわたって細胞培養物中にとどまってもよい。細胞培養培地は、培地の半分を新鮮な培地と取り換えることによって、2〜3日ごとに変更することができる;新鮮な培地もまた、ヒトIL-2および/またはラパマイシンを含有してよい。例えば、培地の半分は、2〜3日ごとに、ラパマイシン(7日目まで)およびIL-2を含有する培地に変更され得る。典型的には、ラパマイシンは0.5nM〜100μM(例えば、0.5nM、1nM、10nM、50nM、100nM、200nM、0.5μM、0.75μM、1μM、1.2μM、または2μM)の濃度で用いられ、ヒトIL-2は0.05〜6,000U/ml(例えば、0.05U/ml、1U/ml、2U/ml、10U/ml、20U/ml、50U/ml、100U/ml、150U/ml、200U/ml、250U/ml、または300U/ml)の濃度で用いられ得る。上記のような、細胞培養の過程では、必要に応じて細胞を継代することができる。細胞の継代のためのプロトコルは、当技術分野で公知である。
【0035】
TNFR2アゴニストは、0日目の培養開始時に、または培養開始後の後続の時点で(例えば、少なくとも1日以上(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16日間、またはそれ以上)の培養が細胞をTNFR2アゴニストと接触させることを含むのであれば、培養開始後のいずれかの日に)添加することができる。追加のTNFR2アゴニストは、細胞培養の期間中のいくつかの時点で、例えば7、8、9、10、11、または12日目のうちの1日以上で、添加され得る。典型的には、TNFR2アゴニストは0日目に添加され、追加のTNFR2アゴニストは16日間の細胞培養期間の9日目に添加され得る(例えば、図3A参照)。一般的に使用できるTNFR2アゴニストは、抗TNFR2モノクローナル抗体である。この方法で使用できる追加のTNFR2アゴニストは、以下に記載される。一般に、抗TNFR2抗体は、0.05μg/ml〜500μg/mlの範囲の濃度、または必要ならばそれ以上の濃度(例えば、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、1.5μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、または500μg/ml)で使用することができる。抗TNFR2抗体は、細胞培養期間の終了時に取り除くために、マトリックス、例えば磁気ビーズのようなビーズ、に結合させることができる。
【0036】
細胞を回収し、かつ抗CD3および抗CD28試薬を取り除くには、例えば、Detach-a-bead試薬によりTreg Expanderビーズを除去するか、またはビーズの剥離を可能にする複数ラウンドの増殖を行うことができる。次いで、細胞を適切な培地中で洗浄して、静止させることができる。その後、細胞は、種々のタンパク質マーカーの発現について分析され、適切に保存され、かつ/または以下に記載するような各種疾患の治療方法において使用され得る。
【0037】
in vitro増殖の後、濃縮された組成物中のTregは、該組成物中の細胞の少なくとも60%(例えば、70%、80%、90%、または100%)を構成する。上記の方法は、好ましくは、Tregの均質な集団をもたらし、例えば、該組成物中の細胞の実質的に100%(例えば、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上(例えば、全部))がTregである。
【0038】
上記の方法は、Tregの約2倍(例えば、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、またはそれ以上)の増殖をもたらすことができる。この増殖プロトコルによって調製されたTregは、FOXP3を発現することを特徴とし、例えば、好ましくは、増殖されたTregの集団内の細胞の少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、98%、99%、または実質的に100%)がFOXP3を発現している。また、本発明の方法によって増殖されたTregは、FOXP3を高レベルで発現することが好ましい。Treg集団はまた、IFNγを発現する細胞を低い割合で含有する。Treg集団はまた、CD8+細胞の活性化を抑制するための増強された能力を示す。
【0039】
以前に記載されたTreg増殖プロトコルにおいて、不利な点は、不均質な細胞集団内の増殖されたTregの同定が、Tregの増殖後ソーティング、しばしば複数ラウンドのソーティング、を必要としたことであった。こうしたマルチソーティング法は、Tregの生存能力、機能、および収量に重大かつ有害な影響を及ぼし、そのため、ソーティングされた細胞の治療用途でのその後の使用を制限した。さらに、このソーティングは、細胞表面マーカーを発現しているTregを濃縮できたにすぎず、細胞内マーカーであるFOXP3を発現しているTregを濃縮することはできなかった。本発明は、FOXP3、CD4+、およびCD25hiを発現するTregの実質的に均質な集団を生み出すために、Tリンパ球(例えば、ヒトCD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)であるか、またはTリンパ球を含む、ヒト細胞の集団を、TNFR2アゴニストと接触させることによるTregの増殖を特徴とする。本方法により作られたTregは、治療用途での使用に先立って、増殖後ソーティングを必要としない。これは、以前に記載されたTreg増殖プロトコルに比べて大きな利点である。本発明により調製されたTregはまた、以前に記載されたTreg細胞集団よりも効力があり、それは、それらの均質性、もしくは本方法により作られたTregのサブセット、またはその両方の結果であり得る。本発明による濃縮Treg集団は、免疫調節性Tregの特性と同じような非常に望ましい特性を示す。
【0040】
TNFR2アゴニスト
本発明の方法で使用することができるTNFR2アゴニストには、抗体、ペプチド、小分子、およびタンパク質などの作用剤が含まれる。TNFR2アゴニストは、TNFR2に結合して、TNFR2のシグナル伝達を活性化することができる作用剤である。TNFR2アゴニストは、CD4+ T細胞と接触したとき、FOXP3、TNF、TRAF2、TRAF3、およびcIAP2からなる群より選択されるいずれか1種以上のタンパク質の発現を刺激することができる、任意の作用剤とすることができる。
【0041】
特に、TNFR2アゴニストは、クローンMR2-1 (Cell Sciences社)またはクローンMAB2261 (R&D Systems社)などの、TNFR2に結合するモノクローナル抗体であり得る。TNFR2アゴニストはまた、アゴニストとしてTNFR2にのみ結合するTNF-αムテインであってもよい。TNFR2アゴニストとして使用できるTNF-αムテインには、例えば、以下に記載されるものが含まれる:米国特許出願公開第2008/0176796 A1号; 米国特許第5,486,463号および第5,422,104号; PCT公開番号WO 86/02381; WO 86/04606; およびWO 88/06625; ならびに欧州特許第155,549号; 第168,214号; 第251,037号; 第340,333号; および第486,908号。これらの刊行物の各々は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
さらに、TNFR2アゴニストとして作用することが可能な抗TNFR2抗体は、Gallowayら(Eur. J. Immunol. 22:3045-3048, 1992)、Tartagliaら(J. Biol. Chem. 268:18542-18548, 1993)、Tartagliaら(J. Immunol. 151:4637-4641, 1993)、Smithら(J. Biol. Chem. 269:9898-9905, 1994)、およびAmraniら(Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 15:55-63, 1996)に記載されている; これらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる。
TNFR2アゴニストとして作用することが可能なペプチドには、Laichalkら(Infection & Immunity 66:2822-2826, 1998;参照により本明細書に組み入れられる)に記載される11アミノ酸のTNF受容体アゴニストペプチドを含めることができる。
【0043】
NF-κB経路の活性化は、TNFR2アゴニズムの下流の効果であるので、Treg増殖方法は、Tリンパ球集団(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)を、TNFR2アゴニストに代わるNF-κB経路の1種以上の活性化剤と接触させることを、その代わりに、またはそれに加えて、含むことができる。NF-κB活性化剤は、小分子、ペプチド、タンパク質、ウイルス、または小さい非コードRNAであり得る。例えば、NF-κB活性化剤は、Manuvakhova et al., J. Neurosci. Res. 89: 58-72, 2011(参照により本明細書に組み入れられる)に記載される小分子のいずれかである。あるいは、NF-κB活性化剤はベツリン酸であり得る。NF-κB活性化剤はまた、トポイソメラーゼ毒VP16とすることもできる。さらに、NF-κB活性化剤はドキソルビシンであってもよい。
【0044】
Tregの特性解析
上記の方法によって調製された濃縮組成物中のTregは、CD4+およびCD25hiであり、1つ以上の追加の分子マーカーの存在または非存在によって特徴づけることができる。例えば、本発明の方法によって作られたTregは、FOXP3、CTLA4、TNFR2、CD62L、Fas、HLA-DR、およびCD45ROからなる群より選択される1種以上のタンパク質を発現することができ、これらのマーカーについて「陽性」であると見なされる。あるいはまた、Tregは、CD127、CCR5、CCR6、CCR7、CXCR3、IFN-γ、IL10、およびICOSからなる群より選択される1種以上のタンパク質を発現しないか、少量またはほぼ検出不可能な量で発現することがあり、これらのマーカーについて「陰性」であると見なすことができる。好ましくは、本方法は、Tregの少なくとも90%がHLA-DRを発現しかつTregの5%未満がICOSを発現する、Tregの濃縮された組成物をもたらす。
【0045】
本発明の濃縮Treg組成物を用いた治療
本発明は、Tregが濃縮された組成物を、それを必要とする患者(例えば、ヒト)に投与することによって、さまざまな疾患、例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、GVHD、移植片拒絶反応などの免疫学的疾患および症状、ならびに感染性疾患を治療するための方法を特徴とする。Tregが濃縮された組成物は、上記の方法によって、例えば、Tリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)を含有するヒトサンプル、例えば血液または骨髄サンプルを、TNFR2アゴニスト(例えば、TNFR2アゴニスト抗体)および/またはNF-κB活性化剤と接触させて、Tregが濃縮された組成物(例えば、Tregの実質的に均質な集団)を生み出すことによって、調製することができる。TNFR2アゴニストおよび/またはNF-κB活性化剤は、ヒト細胞の集団内に存在するCD4+CD25hiTregの増殖の増加を促進することによって、かつ/またはヒト細胞の集団内に存在するTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)からの(例えば、分化または活性化による)CD4+CD25hiTregの発生を増加させることによって、本方法に従って、CD4+CD25hi Tregの濃縮を促進する。
【0046】
免疫学的疾患もしくは症状、例えばアレルギー、喘息、自己免疫疾患、GVHD、もしくは移植片拒絶反応のための、または感染性疾患のための治療を必要とする患者には、自身の血液または骨髄から作り出されたTreg(例えば、CD4+CD25hi TregまたはCD4+CD25hiFOXP3+ Treg)の濃縮組成物を、以下のステップを用いて、投与することができる:i)ヒト患者から細胞サンプル、例えば血液または骨髄サンプル、を得るステップ;ii)上記方法において記載したとおりに該サンプルからTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)を分離するステップ;iii)これらの細胞を上記のTreg増殖方法(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞と、IL-2および/またはラパマイシンと組み合わせた抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびTNFR2アゴニストと、の接触および/または培養、ならびに/あるいはCD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞と、NF-κB活性化剤との接触または培養)に供して、Tregが濃縮された組成物(例えば、Tregが該組成物中の細胞の例えば>90%を構成する、Tregの実質的に均質な集団)を調製するステップ;およびiv)上記の疾患を治療するために、濃縮されたTregの増殖後ソーティングを行うことなく(または限られた増殖後ソーティングを行って)、Tregが濃縮された組成物を該患者に導入するステップ。上記治療方法のステップは反復サイクルで行うことができ、その場合、患者に提供される治療サイクルの数は、治療される疾患、疾患の重症度、および/または各治療サイクルの結果(すなわち、病状の変化)によって決定され得る。例えば、血液もしくは骨髄を患者から採取すべき頻度、その血液もしくは骨髄からTregを濃縮すべき頻度、および/または濃縮されたTregを患者に投与すべき頻度を決定するために、効能マーカーの変化および/または臨床転帰の変化を使用することができる。濃縮Treg組成物はまた、後の投与のために(例えば、冷凍)保存することが可能である。
【0047】
好ましくは、Tregは患者自身の血液または骨髄(すなわち、自己細胞)から得られるが、以下の治療方法はまた、上記方法に従って増殖させた、可能な限り最高のHLA適合性を有する同種異系または非血縁ドナー由来のTregの使用を含むことができる。同種異系Tregは、その濃縮Treg組成物を投与される患者と共通する少なくとも4/6のHLAマーカーを優先的に共有している。
【0048】
本発明の濃縮Treg組成物を用いた免疫学的疾患または症状の治療
上記の方法によって調製された濃縮Treg組成物は、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、GVHD、または移植片拒絶反応などの免疫学的疾患もしくは症状に罹患している患者に、該免疫学的疾患または症状を治療するために、投与することができる。
【0049】
1)アレルギー:
本発明の濃縮Treg組成物は、食物アレルギー、季節性アレルギー、ペットアレルギー、蕁麻疹、花粉症、アレルギー性結膜炎、ツタウルシアレルギー、オークアレルギー、カビアレルギー、薬物アレルギー、ダストアレルギー、化粧品アレルギー、および化学物質アレルギーからなる群より選択されるアレルギーなどの、患者における1つ以上のアレルギー症状の治療に使用することができる。Treg組成物の投与および投与量は、本明細書において以下に説明される。
【0050】
2)喘息:
本発明の濃縮Treg組成物は、それを必要とする患者に該組成物を投与することによって喘息を治療するために使用することができる。
【0051】
3)自己免疫疾患:
本発明の濃縮Treg組成物は、以下の疾患からなる群より選択される1つ以上の自己免疫疾患を治療するために使用することができる:I型糖尿病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、全身性エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ならびにウェゲナー肉芽腫症。本発明の方法により治療することができる追加の自己免疫疾患は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,173,129号に開示されている。Treg組成物の投与および投与量は、本明細書において以下に説明される。
【0052】
4)移植片拒絶反応またはGVHD:
本発明の濃縮Treg組成物は、移植した組織がレシピエントの免疫系によって拒絶されるときに生じる移植片拒絶反応もしくはGVHDを軽減または抑制するために、使用することができる。移植片拒絶反応は、慢性の拒絶反応、急性の拒絶反応、または超急性の拒絶反応であり得る。Treg組成物の投与および投与量は、本明細書において以下に説明される。
【0053】
濃縮Treg組成物に加えて、患者に施すことができる他の治療には、当技術分野で公知の技術に従って、例えば、ステロイド治療、抗体ベースの治療、免疫抑制薬、輸血、および骨髄移植などが含まれる。
【0054】
本発明の濃縮Treg組成物を用いた感染性疾患の治療
本発明はまた、Tregが濃縮された組成物を投与することによって、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫のいずれかにより引き起こされた感染性疾患を治療する方法を特徴とする。Tregが濃縮された組成物は、上記の方法により調製することができる。本発明の方法は、例えば、以下のウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を治療するために使用することができる:フラビウイルス(Flaviviridae)科のメンバー(例えば、フラビウイルス(Flavivirus)属、ペスチウイルス(Pestivirus)属、およびヘパシウイルス(Hepacivirus)属のメンバー)[C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス;ダニ媒介性ウイルス、例えばガジェットガリーウイルス、カダムウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、カルシーウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ニュードルフ(Neudoerfl)ウイルス、ソフジン(Sofjin)ウイルス、跳躍病ウイルスおよびネギシウイルス;海鳥のダニ媒介性ウイルス、例えばメアバン(Meaban)ウイルス、ソーマレズリーフ(Saumarez Reef)ウイルス、およびチュレーニー(Tyuleniy)ウイルス;蚊媒介性ウイルス、例えばアロアウイルス、デング熱ウイルス、ケドウゴウ(Kedougou)ウイルス、カシパコア(Cacipacore)ウイルス、コウタンゴ(Koutango)ウイルス、日本脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤウンデ(Yaounde)ウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イルヘウスウイルス、イスラエル七面鳥髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンブス(Tembusu)ウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ブブイ(Bouboui)ウイルス、エッジヒルウイルス、ユグラ(Jugra)ウイルス、サボヤ(Saboya)ウイルス、セピック(Sepik)ウイルス、ウガンダSウイルス、ヴェセルスブロンウイルス、黄熱ウイルス;および媒介節足動物が知られていないウイルス、例えばエンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボーンリッジウイルス、フティアパ(Jutiapa)ウイルス、モドックウイルス、サルビエハ(Sal Vieja)ウイルス、サンペルリタ(San Perlita)ウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カレー島ウイルス、ダカールコウモリウイルス、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、リオブラボーウイルス、タマナコウモリ(Tamana bat)ウイルス、および細胞融合を引き起こす(Cell fusing agent)ウイルスを含む];アレナウイルス(Arenaviridae)科のメンバー[イッピー(Ippy)ウイルス、ラッサウイルス(例えば、Josiah、LP、またはGA391株)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モバラ(Mobala)ウイルス、モペイア(Mopeia)ウイルス、アマパリウイルス、フレキサル(Flexal)ウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス、パラナウイルス、ピチンデウイルス、ピリタル(Pirital)ウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、ホワイトウォーターアロヨウイルス、チャパレウイルス、およびルジョウイルスを含む];ブニヤウイルス(Bunyaviridae)科のメンバー(例えば、ハンタウイルス(Hantavirus)属、ナイロウイルス(Nairovirus)属、オルソブニヤウイルス(Orthobunyavirus)属、およびフレボウイルス(Phlebovirus)属のメンバー)[ハンタンウイルス、シンノンブルウイルス、ジュグベウイルス、ブンヤムウェラウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ラクロスウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、およびクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)ウイルスを含む];フィロウイルス(Filoviridae)科のメンバー[エボラウイルス(例えば、ザイール、スーダン、コートジボワール、レストン、およびウガンダ株)およびマールブルグウイルス(例えば、アンゴラ、Ci67、Musoke、Popp、Ravnおよびビクトリア湖株)を含む];トガウイルス(Togaviridae)科のメンバー(例えば、アルファウイルス(Alphavirus)属のメンバー)[ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビスウイルス、風疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、バーマ(Barmah)森林ウイルス、オニョンニョンウイルス、およびチクングニアウイルスを含む];ポックスウイルス(Poxviridae)科のメンバー(例えば、オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属のメンバー)[痘瘡ウイルス、サル痘ウイルス、およびワクシニアウイルスを含む];ヘルペスウイルス(Herpesviridae)科のメンバー[単純ヘルペスウイルス(HSV;タイプ1、2および6)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、タイプ7および8)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス、およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)を含む];オルトミクソウイルス(Orthomyxoviridae)科のメンバー[インフルエンザウイルス(A、BおよびC)、例えばH5N1鳥インフルエンザウイルスまたはH1N1豚インフルエンザウイルスを含む];コロナウイルス(Coronaviridae)科のメンバー[重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを含む];ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科のメンバー[狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含む];パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科のメンバー[ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ニューカッスル病ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、イヌジステンパーウイルス、センダイウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス(例えば、1、2、3および4)、ライノウイルス、およびムンプスウイルスを含む];ピコルナウイルス(Picornaviridae)科のメンバー[ポリオウイルス、ヒトエンテロウイルス(A、B、CおよびD)、A型肝炎ウイルス、およびコクサッキーウイルスを含む];ヘパドナウイルス(Hepadnaviridae)科のメンバー[B型肝炎ウイルスを含む];パピローマウイルス(Papillamoviridae)科のメンバー[ヒトパピローマウイルスを含む];パルボウイルス(Parvoviridae)科のメンバー[アデノ随伴ウイルスを含む];アストロウイルス(Astroviridae)科のメンバー[アストロウイルスを含む];ポリオーマウイルス(Polyomaviridae)科のメンバー[JCウイルス、BKウイルス、およびSV40ウイルスを含む];カリシウイルス(Calciviridae)科のメンバー[ノーウォークウイルスを含む];レオウイルス(Reoviridae)科のメンバー[ロタウイルスを含む];ならびにレトロウイルス(Retroviridae)科のメンバー[ヒト免疫不全ウイルス(HIV;例えば、1型および2型)、およびヒトTリンパ球向性ウイルスI型およびII型(それぞれ、HTLV-1およびHTLV-2)を含む]。
【0055】
本発明の方法は、細菌感染症を治療するためにも使用することができる。治療しうる細菌感染症の例としては、限定するものではないが、以下に属する細菌によって引き起こされるものが挙げられる:サルモネラ属、ストレプトコッカス属、バチルス属、リステリア属、コリネバクテリウム属、ノカルジア属、ナイセリア属、アクチノバクター属、モラクセラ属、腸内細菌科(Enterobacteriacece)、シュードモナス属、エシェリキア属、クレブシエラ属、セラチア属、エンテロバクター属、プロテウス属、サルモネラ属、シゲラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、ボルデテラ属、レジオネラ属、パスツレラ属、フランシセラ属、ブルセラ属、バルトネラ属、クロストリジウム属、ビブリオ属、カンピロバクター属、およびスタフィロコッカス属。
【0056】
本発明の方法はまた、寄生原虫(例えば、腸内原虫、組織原虫、もしくは血液原虫)、または寄生蠕虫(例えば、線虫、蠕虫、双器綱(adenophorea)、双線綱(secementea)、吸虫(trematode)、吸虫(fluke)(住血吸虫、肝吸虫、腸管吸虫および肺吸虫)、もしくは条虫)によって引き起こされる寄生虫感染症を治療するために使用することができる。代表的な寄生原虫類としては、以下が挙げられる:赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、ネズミクリプトスポリジウム(Cryptosporidium muris)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosomatida gambiense)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosomatida rhodesiense)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosomatida crusi)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、熱帯リーシュマニア、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、膣トリコモナス、およびヒストモナス・メレアグリジス(Histomonas meleagridis)。代表的な寄生蠕虫としては、以下が挙げられる:ヒト鞭虫、回虫、ヒト蟯虫、ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫、糞線虫、バンクロフト糸状虫、メジナ虫、マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫、日本住血吸虫、肝蛭、巨大肝蛭、異形吸虫、ウェステルマン肺吸虫、有鉤条虫、無鉤条虫、矮小条虫、および単包条虫。
【0057】
本発明の方法はまた、真菌感染症を治療するためにも使用することができる。治療しうる真菌感染症の例としては、限定するものではないが、例えば、以下によって引き起こされるものが挙げられる:アスペルギルス属、カンジダ属、マラセジア属、トリコスポロン属、フサリウム属、アクレモニウム属、リゾプス属、ムコール属、ニューモシスチス属、およびアブシディア属。
感染性疾患を治療するための方法でのTreg組成物の投与および投与量は、本明細書において以下に説明される。
【0058】
NF-κB活性化剤を用いた治療
TNFR2のシグナリングはNF-κB経路の活性化を介して伝達されるので、NF-κBシグナル伝達の活性化剤はまた、上記の方法に従って免疫学的疾患または症状および感染性疾患を治療するための濃縮Treg組成物の投与の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用することができる。例えば、上述したNF-κB活性化剤のいずれかを上記の治療方法において使用することが可能である。NF-κB活性化剤は、単独で、または濃縮Treg組成物と組み合わせて使用され得る。
【0059】
Tregが枯渇された濃縮リンパ球組成物の調製方法
本発明はまた、リンパ球が濃縮された(かつTregが枯渇された)組成物をin vitroで調製するための方法を特徴とする。好ましくは、この方法は、組成物中の細胞の10%未満(例えば、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、もしくは0.5%未満、または皆無)がTregである組成物をもたらす。この方法は、抗TNFR2モノクローナル抗体などのTNFR2アンタゴニストがTNFR2アゴニストの代わりに使用されることを除いて、Tregが濃縮された組成物の調製方法に類似する。この方法で使用することができる追加のTNFR2アンタゴニストは、以下に記載される。
【0060】
前記方法は、一般的に、ヒトのサンプル、例えばヒトの血液または骨髄サンプル、からTリンパ球(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞)を分離し、続いて該細胞を抗CD3および抗CD28抗体と共にインキュベートすることによって培養中の該細胞を増殖させることを含む。増殖ステップの間、該細胞をTNFR2アンタゴニストと接触させる。TNFR2アンタゴニストは培養物中のTregの増殖を抑制し、それによってリンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を生じさせる。細胞の増殖中に、ヒトIL-2および/またはラパマイシンを該細胞培養物に任意で添加してもよい。
【0061】
in vitroでのリンパ球の濃縮(およびTregの枯渇)後、この組成物中の細胞の10%未満(例えば、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、5%未満、もしくは2%未満、または実質的に皆無)はTregである。上記の方法は、非Tregリンパ球(例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4+CD8+ T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞など)のおよそ2倍(例えば、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、またはそれ以上)の濃縮をもたらすことができる。濃縮リンパ球集団はまた、樹状細胞、単球、マクロファージ、および好中球を含んでいてもよい。
【0062】
TNFR2アンタゴニスト
本発明のこの方法で使用することができるTNFR2アンタゴニストは、TNFR2に結合してTNFR2のシグナル伝達を抑制することができる抗体、ペプチド、小分子、およびタンパク質などの作用剤を含むことができる。TNFR2アンタゴニストは、CD4+ T細胞と接触したとき、cIAPの発現を刺激することができるが、TRAF2、TRAF3またはFOXP3の発現を刺激しない作用剤であり得る。
【0063】
TNFR2アンタゴニストは、TNFR2に結合するモノクローナル抗体とすることができる。TNFR2には、TNFR2アンタゴニスト抗体が結合し得るエピトープが2つ存在する。第1エピトープは、配列番号1(ヒトTNFR2のアミノ酸配列)の位置48-67 (QTAQMCCSKCSPGQHAKVFC)を含む。第2エピトープは、配列番号1の位置135(R)(例えば、配列番号1の位置135-153 (RLCAPLRKCRPGF))を含む。例えば、TNFR2アンタゴニスト抗体は、クローンMAB726 (R&D Systems社)またはクローンM1 (BD Biosciences社)のいずれかであり得る。MAB726およびM1はそれぞれ第2エピトープに結合するが、本発明の抗体は第1エピトープまたは両方のエピトープに結合し得る。TNFR2アンタゴニスト抗体またはその抗原結合フラグメントは、約50nM未満(例えば、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、または約700pM未満)のKDでTNFR2に結合することができる。TNFR2アンタゴニスト抗体またはその抗原結合フラグメントは、約10pM〜約50nM(例えば、約20pM〜約30nM、約50pM〜約20nM、約100pM〜約5nM、約150pM〜約1nM、または約200pM〜約800pM)の範囲のKDでTNFR2に結合することができる。TNFR2アンタゴニスト抗体の結合力は、当技術分野で公知の方法(例えば、表面プラズモン共鳴)を用いて測定することができる。例えば、MAB 726は、(表面プラズモン共鳴(Pioneer SensiQ(登録商標), Oklahoma City, OK)により測定して)621pMのKDでTNFR2に結合する。TNFR2アンタゴニストはまた、TNFR2に結合して下流のシグナル伝達を抑制することが可能なTNF-αムテインとすることもできる。
【0064】
TNFR2アンタゴニストは、NF-κB経路の阻害による下流のシグナル伝達を介して機能することができる。したがって、本発明の方法はまた、TNFR2アンタゴニストを使用するのと同じ効果を達成するために、ヒトのサンプル、例えば血液または骨髄サンプルを、NF-κB経路の1種以上の阻害剤と接触させることを含み得る。NF-κB阻害剤は、小分子、ペプチド、タンパク質、ウイルス、または小さな非コードRNAとすることができる。一実施形態では、リンパ球が濃縮された組成物を作り出すために本方法で使用できるNF-κB阻害剤は、以下のいずれか1つ以上であり得る:2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY 11-7082、BAY 11-7085、CAPE(カフェ酸フェネチルエステル)、マレイン酸ジエチル、3,4-ジヒドロキシケイ皮酸エチル、ヘレナリン、グリオトキシン、NF-κB活性化阻害剤II JSH-23、NF-κB活性化阻害剤III、グルココルチコイド受容体モジュレーター、CpdA、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、(R)-MG-132、ロカグラミド、サリチル酸ナトリウム、QNZ、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、アスタキサンチン、(E)-2-フルオロ-4'-メトキシスチルベン、CHS-828、ジスルフィラム、オルメサルタン、トリプトリド、ウィサフェリン、セラストロール、タンシノンIIA、Ro 106-9920、カルダモニン、BAY 11-7821、PSI、HU 211、ML130、PR 39、ホノキオール、CDI 2858522、アンドログラホリド、およびジチオカルバメート類。NF-κB阻害剤はまた、ペプチド阻害剤、例えばMay et al., Science, 2000 Sep 1;289(5484):1550-4およびOrange and May, Cell Mol. Life Sci., 2008 Nov;65(22):3564-91(これらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるような細胞透過性の阻害ペプチドであってもよい。さらなるNF-κB阻害剤は、Gilmore and Herscovitch, Oncogene(2006) 25, 6887-6899; Nam, Mini Rev. Med. Chem., 2006 Aug;6(8):945-51; および米国特許第6,410,516号(これらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる)にも記載されている。
【0065】
Treg枯渇リンパ球濃縮組成物および/またはTNFR2シグナル伝達経路のアンタゴニストを用いた治療方法
本発明は、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、増殖性疾患、例えば癌、を治療するための方法を特徴とする。リンパ球が濃縮された組成物は、上記の方法により、例えば、ヒトのサンプル、例えば血液または骨髄サンプル、から得られた細胞を、TNFR2アンタゴニスト、例えばTNFR2アンタゴニスト抗体、および/またはNF-κB阻害剤と接触させて、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を作ることによって、調製することができる。NF-κB阻害剤は、増殖性疾患、例えば癌、を治療する方法において、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物の代わりに、または該組成物と組み合わせて、使用することができる。本発明はまた、TNFR2アンタゴニスト(例えば、抗TNFR2アンタゴニスト抗体)を含有する組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、増殖性疾患、例えば癌、を治療するための方法を特徴とする。
【0066】
本発明は、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、感染性疾患を治療するための方法を特徴とする。リンパ球が濃縮された組成物は、上記の方法により、例えば、ヒトのサンプル、例えば血液または骨髄サンプル、から得られた細胞を、TNFR2アンタゴニスト、例えばTNFR2アンタゴニスト抗体、および/またはNF-κB阻害剤と接触させて、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を作ることによって、調製することができる。NF-κB阻害剤は、感染性疾患を治療する方法において、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物の代わりに、または該組成物と組み合わせて、使用することができる。本発明はまた、TNFR2アンタゴニスト(例えば、抗TNFR2アンタゴニスト抗体)を含有する組成物を単独で、それを必要とする患者に投与することによって、感染性疾患を治療するための方法を特徴とする。
【0067】
本発明の濃縮リンパ球組成物を用いた増殖性疾患の治療
増殖性疾患(例えば、癌)を治療するために、患者の血液中の非Tregリンパ球を増殖させ、それを患者に投与して戻すことが可能である。濃縮リンパ球組成物は、単独で、または当技術分野で公知の1種以上の抗癌剤と組み合わせて、投与することができる。
【0068】
濃縮リンパ球組成物は次のように調製することができる:i)ヒト患者からサンプル、例えば血液または骨髄サンプル、を取得し、その中に存在する有核細胞(例えば、リンパ球、例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞などのTリンパ球)を分離するステップ;ii)これらの細胞を上記のリンパ球増殖方法に供して、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物(例えば、Tregが該組成物中の細胞の10%未満、好ましくは該組成物中の細胞の5%未満を構成するか、またはTregが該増殖組成物中に存在しない、リンパ球の実質的に均質な集団)を生み出すステップ;およびiii)リンパ球が濃縮された組成物を、リンパ球の増殖後ソーティングを行うことなく、患者に導入するステップ。この治療方法の上記ステップは、反復サイクルで行うことができ、その場合、患者に提供される治療サイクルの数は、治療される増殖性疾患、該疾患の重症度、および/または各治療サイクルの結果、すなわち病状の変化、により決定され得る。例えば、血液もしくは骨髄を患者から採取すべき頻度、その血液からリンパ球を濃縮すべき(かつTregを枯渇すべき)頻度、および濃縮されたリンパ球を患者に投与すべき頻度を決定するために、効能マーカーの変化および/または臨床転帰の変化を使用することができる。濃縮リンパ球組成物はまた、後の使用のために調製して、(例えば、冷凍)保存することが可能である。
【0069】
好ましくは、リンパ球は患者自身の血液または骨髄(すなわち、自己細胞)から得られるが、以下の治療方法はまた、上記方法に従って増殖させた、可能な限り最高のHLA適合性を有する同種異系または非血縁ドナー由来のリンパ球の使用を含むことができる。同種異系リンパ球は、濃縮リンパ球組成物を投与される患者と共通する少なくとも4/6のHLAマーカーを優先的に共有している。
【0070】
本発明による増殖性疾患の治療は、Tregが枯渇された濃縮リンパ球組成物の投与と組み合わせて、NF-κBシグナル伝達経路の阻害を含むことができる。TNFR2のシグナリングはNF-κB経路を介して伝達されるので、本発明による増殖性疾患の治療はまた、NF-κB経路の阻害剤を患者に投与することを含むことができる。例えば、上述したNF-κB阻害剤のいずれかが増殖性疾患の治療のために投与され得る。NF-κB阻害剤は、単独で、またはリンパ球が濃縮された組成物と組み合わせて、投与することができる。NF-κB阻害剤はまた、TNFR2シグナル伝達経路とは無関係に機能することもできる。
【0071】
濃縮リンパ球/Treg枯渇組成物を投与することによって治療することができる増殖性疾患は、以下からなる群より選択される1つ以上の癌を含む:急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、視経路および視床下部グリオーマ、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、腱鞘の明細胞肉腫、結腸癌、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、下垂体癌、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織の肉腫、扁平上皮頸部癌、精巣癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、および膣癌。増殖性疾患はまた、さまざまな器官系の悪性腫瘍(例えば、肉腫、腺癌、および癌腫)を含めた固形腫瘍を含むこともでき、例えば、脳、肺、乳房、リンパ系、消化管(例えば、結腸)および尿生殖路(例えば、腎臓、尿路上皮、または精巣の腫瘍)、咽頭、前立腺、卵巣の固形腫瘍などである。代表的な腺癌には、結腸直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺の非小細胞癌、および小腸の癌が含まれる。
増殖性疾患の治療方法での濃縮リンパ球組成物の投与および投与量は、本明細書において以下に説明される。
【0072】
本発明の濃縮リンパ球組成物を用いた感染性疾患の治療
本発明はまた、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫のいずれかにより引き起こされた感染性疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、リンパ球(例えば、CD8+ T細胞、B細胞、またはナチュラルキラー細胞)が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を投与することを含む。この組成物は、上記の方法により調製することができる。本発明の方法は、例えば、以下のウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を治療するために使用することができる:フラビウイルス科のメンバー(例えば、フラビウイルス属、ペスチウイルス属、およびヘパシウイルス属のメンバー)[C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス;ダニ媒介性ウイルス、例えばガジェットガリーウイルス、カダムウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、カルシーウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ニュードルフウイルス、ソフジンウイルス、跳躍病ウイルスおよびネギシウイルス;海鳥のダニ媒介性ウイルス、例えばメアバンウイルス、ソーマレズリーフウイルス、およびチュレーニーウイルス;蚊媒介性ウイルス、例えばアロアウイルス、デング熱ウイルス、ケドウゴウウイルス、カシパコアウイルス、コウタンゴウイルス、日本脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤウンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イルヘウスウイルス、イスラエル七面鳥髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンブスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ブブイウイルス、エッジヒルウイルス、ユグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ヴェセルスブロンウイルス、黄熱ウイルス;および媒介節足動物が知られていないウイルス、例えばエンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボーンリッジウイルス、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビエハウイルス、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カレー島ウイルス、ダカールコウモリウイルス、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、リオブラボーウイルス、タマナコウモリウイルス、および細胞融合を引き起こすウイルスを含む];アレナウイルス科のメンバー[イッピーウイルス、ラッサウイルス(例えば、Josiah、LP、またはGA391株)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モバラウイルス、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレキサルウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス、パラナウイルス、ピチンデウイルス、ピリタルウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、ホワイトウォーターアロヨウイルス、チャパレウイルス、およびルジョウイルスを含む];ブニヤウイルス科のメンバー(例えば、ハンタウイルス属、ナイロウイルス属、オルソブニヤウイルス属、およびフレボウイルス属のメンバー)[ハンタンウイルス、シンノンブルウイルス、ジュグベウイルス、ブンヤムウェラウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ラクロスウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、およびクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)ウイルスを含む];フィロウイルス科のメンバー[エボラウイルス(例えば、ザイール、スーダン、コートジボワール、レストン、およびウガンダ株)およびマールブルグウイルス(例えば、アンゴラ、Ci67、Musoke、Popp、Ravnおよびビクトリア湖株)を含む];トガウイルス科のメンバー(例えば、アルファウイルス属のメンバー)[ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビスウイルス、風疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、バーマ森林ウイルス、オニョンニョンウイルス、およびチクングニアウイルスを含む];ポックスウイルス科のメンバー(例えば、オルソポックスウイルス属のメンバー)[痘瘡ウイルス、サル痘ウイルス、およびワクシニアウイルスを含む];ヘルペスウイルス科のメンバー[単純ヘルペスウイルス(HSV;タイプ1、2および6)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、タイプ7および8)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス、およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)を含む];オルトミクソウイルス科のメンバー[インフルエンザウイルス(A、BおよびC)、例えばH5N1鳥インフルエンザウイルスまたはH1N1豚インフルエンザウイルスを含む];コロナウイルス科のメンバー[重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを含む];ラブドウイルス科のメンバー[狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含む];パラミクソウイルス科のメンバー[ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ニューカッスル病ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、イヌジステンパーウイルス、センダイウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス(例えば、1、2、3および4)、ライノウイルス、およびムンプスウイルスを含む];ピコルナウイルス科のメンバー[ポリオウイルス、ヒトエンテロウイルス(A、B、CおよびD)、A型肝炎ウイルス、およびコクサッキーウイルスを含む];ヘパドナウイルス科のメンバー[B型肝炎ウイルスを含む];パピローマウイルス科のメンバー[ヒトパピローマウイルスを含む];パルボウイルス科のメンバー[アデノ随伴ウイルスを含む];アストロウイルス科のメンバー[アストロウイルスを含む];ポリオーマウイルス科のメンバー[JCウイルス、BKウイルス、およびSV40ウイルスを含む];カリシウイルス科のメンバー[ノーウォークウイルスを含む];レオウイルス科のメンバー[ロタウイルスを含む];ならびにレトロウイルス科のメンバー[ヒト免疫不全ウイルス(HIV;例えば、1型および2型)、およびヒトTリンパ球向性ウイルスI型およびII型(それぞれ、HTLV-1およびHTLV-2)を含む]。
【0073】
本発明の方法は、細菌感染症を治療するためにも使用することができる。治療しうる細菌感染症の例としては、限定するものではないが、以下に属する細菌によって引き起こされるものが挙げられる:サルモネラ属、ストレプトコッカス属、バチルス属、リステリア属、コリネバクテリウム属、ノカルジア属、ナイセリア属、アクチノバクター属、モラクセラ属、腸内細菌科、シュードモナス属、エシェリキア属、クレブシエラ属、セラチア属、エンテロバクター属、プロテウス属、サルモネラ属、シゲラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、ボルデテラ属、レジオネラ属、パスツレラ属、フランシセラ属、ブルセラ属、バルトネラ属、クロストリジウム属、ビブリオ属、カンピロバクター属、およびスタフィロコッカス属。
【0074】
本発明の方法はまた、寄生原虫(例えば、腸内原虫、組織原虫、もしくは血液原虫)、または寄生蠕虫(例えば、線虫、蠕虫、双器綱、双線綱、吸虫(trematode)、吸虫(fluke)(住血吸虫、肝吸虫、腸管吸虫および肺吸虫)、もしくは条虫)によって引き起こされる寄生虫感染症を治療するために使用することができる。代表的な寄生原虫類としては、以下が挙げられる:赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、ネズミクリプトスポリジウム、ガンビアトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、メキシコリーシュマニア、ブラジルリーシュマニア、熱帯リーシュマニア、ドノバンリーシュマニア、トキソプラズマ原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、膣トリコモナス、およびヒストモナス・メレアグリジス。代表的な寄生蠕虫としては、以下が挙げられる:ヒト鞭虫、回虫、ヒト蟯虫、ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫、糞線虫、バンクロフト糸状虫、メジナ虫、マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫、日本住血吸虫、肝蛭、巨大肝蛭、異形吸虫、ウェステルマン肺吸虫、有鉤条虫、無鉤条虫、矮小条虫、および単包条虫。
【0075】
本発明の方法はまた、真菌感染症を治療するためにも使用することができる。治療しうる真菌感染症の例としては、限定するものではないが、例えば、以下によって引き起こされるものが挙げられる:アスペルギルス属、カンジダ属、マラセジア属、トリコスポロン属、フサリウム属、アクレモニウム属、リゾプス属、ムコール属、ニューモシスチス属、およびアブシディア属。
感染性疾患の治療方法でのリンパ球濃縮組成物の投与および投与量は、本明細書において以下に説明される。
【0076】
投与量
Tregが濃縮された組成物は、それを必要とする患者に、疾患の重症度および治療中の患者の病状の変化に応じて、日、週、月(例えば、2週ごとに1回以上)、または年に1回以上投与することができる。一般的には、典型的な投与量は、5×105〜5×1012個(例えば、5×105、5×106、5×107、5×108、5×109 、5×1010、5×1011、または5×1012個)のTregを含むことが予想される。疾患指標(disease metrics)、例えば、症状の重症度、症状の変化、治療に対する患者の応答、治療の何かしらの有害作用、および/または任意の追加治療(複数可)の効果などを使用して、治療頻度および投与量、すなわち、患者に投与されるTregの数、を決定することができる。
【0077】
リンパ球が濃縮された(かつTregが枯渇された)組成物は、疾患の重症度および治療中の患者の病状の変化に応じて、日、週、月(例えば、2週ごとに1回以上)、または年に1回以上投与することができる。好ましくは、このリンパ球が濃縮された組成物中の細胞の10%未満(例えば、9%未満、8%未満、7%未満、5%未満、1%未満、または皆無)はTregである。一般的には、典型的な投与量は、濃縮リンパ球組成物中に5×105〜5×1012個(例えば、5×105、5×106、5×107、5×108、5×109 、5×1010、5×1011、または5×1012個)の細胞を含むことが予想される。疾患指標、例えば、症状の重症度、症状の変化、治療に対する患者の応答、治療の何かしらの有害作用、および/または任意の追加治療(複数可)の効果などを使用して、治療頻度および投与量、すなわち、患者に投与されるリンパ球の数、を決定することができる。
【0078】
投与
一般に、本発明の組成物(例えば、Tregが濃縮された組成物またはリンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物)は、医学的に有用な任意の形態で投与され得る。例えば、このような組成物は、化合物類の添加、例えば、アジュバント、防腐剤、担体、賦形剤、希釈剤、抗菌もしくは抗カビ剤、抗炎症剤、および/または抗癌剤の添加を適宜に含んでもよい。本発明の組成物は、静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、経鼻、経頬、リポソーム、脂肪(adiposally)、眼科的、眼内、皮下、髄腔内、経口、または局所的経路で投与することができ、また、それらは選択された投与経路に応じて適宜に製剤化される。
【0079】
本発明の抗体の投与
本発明の抗TNFR2抗体(例えば、抗TNFR2アンタゴニスト抗体)を含有する医薬組成物は、所望の純度を有する抗体を、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって、水溶液剤、凍結乾燥製剤または他の乾燥製剤の形態での貯蔵のために調製される。許容される賦形剤または担体は、投与の様式および経路に基づいて選択される。適切な医薬担体、ならびに医薬製剤中で使用するための医薬必需品は、この分野でよく知られている参考テキストRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第21版, Gennaro編; Lippincott, Williams & Wilkins (2005)、およびUSP/NF(米国薬局方および国民医薬品集)に記載されている。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して毒性のないものであり、以下が含まれる:緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジンおよび他の有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成性の対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)。他の代表的な医薬用添加剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第6版, Roweら編, Pharmaceutical Press (2009)に記載されている。
【0080】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤中に調製することができる。このような適切な担体または賦形剤は、例えば、水、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)もしくは酢酸塩緩衝生理食塩水(ABS)、またはリンゲル液)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびこれらの組み合わせから選択することができる。さらに、必要に応じて、哺乳動物に投与するための組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、または組成物の有効性を高めるpH緩衝剤などを含むことができる。本発明の組成物はまた、許容される塩の製剤に調製することもできる。本発明の組成物の調製に使用することができる他の添加剤には、例えば、必要に応じて、アジュバント、防腐剤、希釈剤、抗菌もしくは抗カビ剤、抗炎症剤、および/または抗癌剤が含まれる。
【0081】
本組成物はまた、治療される特定の症状に必要な2種以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するもの、を含有してもよい。このような分子は、意図した目的に有効な量で組み合わさって適切に存在する。
【0082】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)中に、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、あるいはマクロエマルジョン中に捕捉することができる。このような技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第21版, Gennaro編; Lippincott, Williams & Wilkins (2005)に開示されている。
【0083】
in vivo投与に使用される組成物は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0084】
徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適切な例は、本発明の免疫グロブリンを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態をしている。徐放性マトリックスの例としては、以下が挙げられる:ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)、およびポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日以上にわたる分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い期間タンパク質を放出する。
【0085】
1種以上の抗TNFR2抗体(例えば、抗TNFR2アンタゴニスト抗体)を含有する組成物は、増殖性疾患または感染性疾患の症状の発症前に患者に投与してもよいし、該組成物は、1つ以上(例えば、1、2、3、4、または5つ)の該疾患の症状が現れて増殖性疾患または感染性疾患と診断された後に患者に投与してもよい。抗TNFR2抗体の投与量は患者の健康状態にもよるが、一般的に、1回分の用量あたり抗体約0.1mg〜約400mgの範囲(例えば、1回分の用量あたり1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、またはそれ以上)である。
【0086】
本組成物は、1回以上の用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の用量)で患者に投与することができる。複数回の用量が投与される場合、その用量は同じ投与様式(例えば、静脈内投与)で投与してもよいし、異なる投与様式(例えば、静脈内投与と筋肉内投与)で投与してもよい。患者はまた、異なる時間に異なる用量を投与されてもよい。例えば、治療の過程でより高い初期用量とより低い後続の用量を患者に投与することができ、その逆の場合もあり得る。
【0087】
本組成物は、毎日、毎週、毎月、または毎年ごとに投与することができる。例えば、本組成物の用量を1日2回、週2回、年2回、年3回、または年4回投与してもよい。本組成物の用量は、対象者の臨床症状および/または身体状態(例えば、体重、性別、身長、および増殖性または感染性疾患の重症度)を考慮して、熟練の医師によって決定され得る。本組成物は、静脈内、皮内、非経口、動脈内、皮下、筋肉内、眼窩内、局所的、脳室内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内、頭蓋内、または経口投与により投与することができる。
【0088】
本発明のキット
本発明は、Tregが濃縮された組成物を調製するためのキットを特徴とする。このキットは、TNFR2アゴニスト(例えば、TNFR2アゴニスト抗体)またはNF-κB活性化剤(例えば、先に記載したNF-κB活性化剤の1種以上)、ヒトのサンプル、例えば血液もしくは骨髄サンプルを採取するための試薬および/または器具、該サンプルから血液もしくは骨髄細胞(例えば、CD4+CD25+細胞)を分離するための試薬および/または器具、ならびに該血液もしくは骨髄細胞を培養するための試薬(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、インターロイキン-2、および/またはラパマイシン)を含むことができる。さらに、本発明のキットはまた、本発明の方法を実施するための説明書、例えば、血液もしくは骨髄サンプルを採取して、該サンプルから血液もしくは骨髄細胞を分離するための説明書、血液もしくは骨髄細胞をTNFR2アゴニストと接触させるための説明書、および/または濃縮されたTregを培養し、採取し、かつ/または貯蔵するための説明書を含むこともできる。本発明のキットはまた、Tregの特性解析に使用することができる種々のマーカー遺伝子の発現をアッセイするための試薬および説明書を含み得る。例えば、これらは、FOXP3、CTLA4、TNFR2、CD62L、Fas、HLA-DR、CD45RO、CD127、CCR5、CCR6、CCR7、CXCR3、IFN-γ、IL10、およびICOSの1種以上のmRNAまたはタンパク質レベルを検出するための試薬および説明書を含むことができる。
【0089】
本発明は、リンパ球が濃縮されかつTregが枯渇された組成物を調製するためのキットを特徴とする。このキットは、TNFR2アンタゴニスト(例えば、TNFR2アンタゴニスト抗体)またはNF-κB阻害剤(例えば、先に記載したNF-κB阻害剤の1種以上)、ヒトの血液もしくは骨髄サンプルを採取するための試薬および/または器具、該サンプルから血液もしくは骨髄細胞(例えば、CD4+細胞、CD25+細胞、またはCD4+CD25+細胞などのTリンパ球)を分離するための試薬および/または器具、ならびに該血液細胞を培養するための試薬(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、インターロイキン-2、および/またはラパマイシン)を含むことができる。さらに、本発明のキットはまた、本発明の方法を実施するための説明書、例えば、血液もしくは骨髄サンプルを採取して、該サンプルから血液もしくは骨髄細胞を分離するための説明書、血液細胞をTNFR2アンタゴニストと接触させるための説明書、および/または濃縮されたリンパ球を培養し、採取し、かつ/または貯蔵するための説明書を含むこともできる。本発明のキットはまた、リンパ球の特性解析に使用することができる種々のマーカー遺伝子の発現をアッセイするための試薬および説明書を含み得る。例えば、これらは、FOXP3、TRAF2、TRAF3、およびcIAPの1種以上のmRNAまたはタンパク質レベルを検出するための試薬および説明書を含むことができる。
【0090】
本発明はまた、抗TNFR2抗体(例えば、抗TNFR2アンタゴニスト抗体)、薬学的に許容される担体または賦形剤、および、必要に応じて、本明細書に記載した他の作用剤、を含有する組成物を含むキットを特徴とする;この組成物は、増殖性疾患または感染性疾患を治療するための抗TNFR2抗体の有効量を含有する。キットは、そこに含まれる組成物を実施者(例えば、医師、看護師、または患者)が如何に投与するかを記載した説明書を含むことができる。さらに、キットはまた、追加の成分、例えば先に記載した1種以上の追加の成分、増殖性疾患もしくは感染性疾患に罹患している患者のための説明書または投与スケジュール、および、必要に応じて、該組成物を投与するための器具(例えば、注射器)を含むことができる。
【0091】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものである。それらは、決して、本発明を限定することを意図したものではない。
(実施例)
材料および方法
ヒト被験者およびBCGワクチンによるTNF-α誘導
TNF-αを誘導するために2回のBCGワクチン接種を採用した。BCGの投与は、マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)のヒト研究委員会(Human Studies Committee)およびFDA(NCT00607230)によって承認された。
【0092】
二重盲検プラセボ対照試験では、1人の被験者に1.6〜3.2×106cfuの用量でBCGを注入し、プラセボ被験者には生理食塩水を注入した。BCGまたは生理食塩水の注入は、4週間間隔で2回、皮内投与した。全ての血液サンプルを盲検にし、TNF-αおよびTregのレベルをモニタリングするための研究室に同時に送った。
【0093】
試薬およびフローサイトメトリー
組換えヒトTNF-αをLeinco Technologies社(セントルイス, MO)から購入し、組換えヒトIL-2をSigma-Aldrich社(セントルイス, MO)から購入した。スクリーニング目的のために使用したTNFR1およびTNFR2に対するモノクローナル抗体は、内部の供給源および外部の供給業者(表1)から入手した。外部の供給業者には、R&D Systems社、Hycult-Biotechnology社、BD-Pharmingen社、Accurate社、Abcam社およびSigma社が含まれていた。他の全ての抗体は、BD-Biosciences社から購入した。FOXP3およびCD152の細胞内染色は、FOXP3 Fix/Permバッファーセット(Biolegend社)またはヒトFOXP3バッファーセット(BD Biosciences社)のいずれかを用いて実施した。TNFR2に対するMAB726およびM1抗体の結合力は、Pioneer SensiQ (SensiQ Technologies社, オクラホマシティ, OK)での表面プラズモン共鳴を用いて測定した。
【表1】
【0094】
CD4+細胞の分離、FOXP3の誘導、およびCD4+CD25+細胞の増殖
CD4+ T細胞は、Dynal CD4ポジティブ分離キット(Invitrogen社)を用いて分離した。続いて、CD25陽性細胞の抽出を、CD4+分離後にDynabeads CD25およびDETACHaBEAD CD4/CD8 (Invitrogen社)を用いて行った。分離後、2×104個の細胞を96丸底ウェルプレートで培養した。ヒトTreg Expander用のDynabeads(Invitrogen社)(抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体と結合させたDynabeads)をビーズ対細胞比2:1で添加した。所定のウェルに、TNF-α(20ng/ml)、TNFR2 mAb (2.5μg/ml)、ラパマイシン(1μM, EMD Biosciences社, サンディエゴ, CA)を加えた。2日後、この培養物にIL-2 (200U/ml)を加えた。培地の半分を、2〜3日ごとに、ラパマイシン(7日目まで)と100U/mlのIL-2を含有する培地に交換した。9日目に、追加のTNF-αまたはTNFR2 mAbを培地に供給した。16日目に、細胞を回収し、Dynabeads Human Treg Expanderを除去し、洗浄して静止させた。翌日、細胞を分析した。
【0095】
細胞内染色
増殖させたCD4+CD25+細胞を、ホルボールミリステートアセテート(PMA)(2ng/ml)およびイオノマイシン(500ng/ml)(Sigma社)で24時間刺激した。インキュベーションの最後の4時間にはモネンシン(GolgiStop, BD Biosciences社)を添加した。Human FOXP3 Buffer Setを用いて細胞を固定および透過処理し、その後蛍光色素を結合させたIFNγおよびIL-10 mAbで染色した。
【0096】
mRNAの単離
分離したCD4+細胞を、IL-2 (50U/ml)の存在下に、TNFR2 mAb (2.5μg/ml)を含めてまたは含めないでインキュベートした。3時間後、細胞を回収し、RNAqueous-4PCRキット(Ambion社, オースティン, TX)を用いて全RNAを単離した。抽出したRNAは、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied-Biosystems社, フォスターシティ, CA)を用いて逆転写させた。
【0097】
細胞の増殖および抑制アッセイ
CD4増殖実験のために、CD4+細胞を1μMのカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色した。細胞を、抗CD3 mAbを含む96ウェルプレートに2×105個/ウェルの密度でまいた。4日後、細胞を回収して分析した。
【0098】
Treg抑制アッセイのために、自己PBMCをレスポンダーとして使用した。PBMCはFicoll-Paqueを用いて収集し、-80℃で凍結保存し、前日に解凍してからTregと混合し、RPMI 1640および10U/mlのIL-2中で一晩静止させた。翌日、レスポンダー細胞をCFSE (1μM)で染色した。レスポンダー細胞(5×104個の細胞)および増殖されたTregをさまざまな比率で混合し、抗CD3 mAbとIL-2で刺激した。4日後、細胞を回収して分析した。
【0099】
統計分析
全てのデータ分析は、GraphPad Prism-5ソフトウェア(GraphPad Software社, ラホヤ, CA)を用いて、対応のあるスチューデントのt検定により行った。両側p値0.05を有意であると見なした。
【実施例1】
【0100】
ヒトTregの臨床試験の誘導
増殖されていない、天然に存在するヒトTregは不均質であり、血液中にはまれである。Tregの均質な集団は、複数のリガンドの混合物を用いてさえもin vitroで増殖させることが困難である。十分な数のヒトTreg細胞の均質な集団をTNF-αで増やすことを目標にして、本発明者は、最初に、天然TNF-αを用いて誘導することによってTreg濃度の増加を確認または否定しようとした。FDAにより承認された形態のTNF-αが存在せず、また、安定した形態の製造が困難であるため、本発明者は、TNF-αのよく知られた、強力な誘導物質である、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette Guerin (BCG);何十年もの間すでに市場に出回っている結核および膀胱癌のための一般的なワクチン)を投与した。内因性のTNF-αを誘導するこの方法は、異なった細胞効果を示す非天然のモノマー、ダイマーおよびトリマーを形成するTNF-αの製造上の問題を解消した。
【0101】
小さな二重盲検プラセボ対照臨床試験には、2人の被験者が登録された。一方のヒト被験者にはBCG注射(1.6〜3.2×106cfu/注射)を、そしてプラセボ被験者には生理食塩水を、4週間間隔で2回、投与した。両者とも、TNF-αの薬物動態およびTregの誘導を研究するために、20週間にわたり毎週モニタリングした。各注射後、TNF-αは、やや遅れた反応速度を示す二峰方式(bi-modal fashion)でTregを誘導した(図1A、左のパネル)。20週間の観察後に、生理食塩水の注射はTNF-αもTregも誘導しなかった。全CD4+細胞数は、図1Aに示したCD4+CD25hiFOXP3+の割合の変化以外に、BCG投与患者およびプラセボ投与患者において変化はなかった。このin vivo証拠は、内因性TNF-αがTregの数をin vivoで増加させることを確かにするが、TNF-αはTNFR1とTNFR2の両受容体に結合するので、どちらの受容体がTreg効果にとってより中心的であったかは、はっきりしない。
【実施例2】
【0102】
TNFRモノクローナル抗体およびシグナル伝達経路の機能的効果
14人のヒト被験者から新鮮分離したヒトCD4+細胞を、TNF-αとのみ16時間培養した(図1B)。誘導性FOXP3で評価して、Tregの誘導は認められなかったが、IL-2を添加した後にTregの有意な増加が観察された。TNF-αとIL-2の共インキュベーションは、IL-2単独と比べてTregの有意な増加をもたらした(図1B)。IL-2は、マウスではTregの誘導および維持に重要である。共インキュベーションが血液由来のヒト培養細胞中のCD4+CD25hi FOXP3細胞の割合を増加させるという知見は、フローサイトメトリーによって確認された(図1C)。したがって、図1Bおよび図1Cのデータから、TNF-αはin vitroでTregの均質な集団を誘導できることが確認される。
【0103】
新鮮分離したCD4+細胞において、本発明者は、CD25+発現との関連で各TNFRの発現レベルを調べた。CD4+細胞上のTNFR1発現は、CD25+の発現レベルに関係なく、フローサイトメトリーを用いて変化しなかった(図2A、中央のパネル)のに対して、TNFR2はCD4+CD25hiTreg上にほぼ10倍優先的に発現された(図2A、右のパネル)。これにより、TNFR2はTreg上により密に発現されるという以前の研究が確認される。
【0104】
新鮮なヒト血液から採取され、分離されたCD4+細胞での数種のTNFR1およびTNFR2モノクローナル抗体(mAb)のスクリーニングは、TNF-α(これは両方の受容体を介して作用し、大腸菌および酵母系の使用からの製造上の問題が予想される)の研究とは違って、各TNF受容体の選択的研究を可能にした。スクリーニングされたTNFR1またはTNFR2 mAbの大部分は、IL-2の存在により16時間刺激した後に、FOXP3+ Tregを誘導または抑制することができなかった(図7および8)が、本発明者は、FOXP3誘導に対して有意な、かつ逆の効果を有するTNFR2 mAbを2種類見つけた(図2B)。10人の被験者からの新鮮培養した細胞を研究して、一方のTNFR2抗体はCD4+ヒトT細胞においてFOXP3発現を有意に誘導した(これを「TNFR2アゴニスト」とした)のに対して、他方のTNFR2モノクローナルは細胞内FOXP3発現を抑制した(これを「TNFR2アンタゴニスト」とした)(図2B)。こうして、本発明者は、M1およびMAB726をTNFR2アンタゴニストとして同定した。
【0105】
機能的に相反する2種類のTNFR2 mAbを同定したので、本発明者は、分離したCD4+ T細胞に対するそれらの効果を、TNFR2活性化に特異的なシグナル伝達タンパク質の下流mRNA発現を調べることによって、測定した。TNFR2アゴニストまたはアンタゴニストで24時間刺激した後、相対的mRNA発現は有意に異なっていた。TNFR2アゴニストはTNF、TRAF2、TRAF3、cIAP2およびFOXP3の発現を刺激した。これとは対照的に、TNFR2アンタゴニストはcIAP1の発現を刺激したものの、TRAF2、TRAF3またはFOXP3の発現は刺激しなかった(図2C)。
【0106】
TNFR2アゴニストおよびアンタゴニストの効果を、抗CD3またはIL-2と共培養した精製ヒトCD4+ T細胞で検討した。TNFR2アゴニストと組み合わせた抗CD3を用いてCD4+の増殖を調べたところ、最高度の増殖が該アゴニストによって示された。これとは対照的に、TNFR2アンタゴニスト(例えば、M1またはMAB726)は、対照の抗CD3単独と比べてさえも、CD4+の増殖を抑制した(図2D、左端のパネル)。同様の実験結果が、フローサイトメトリーでCD4+増殖を直接測定しかつCFSE希釈によりCD4+増殖を測定することによって、4日後に観察された(図2D、右側の3つのパネル)。したがって、Tregに対するTNFR2アゴニスト処理とTNFR2アンタゴニスト処理の相反する効果が、図2B〜2Dに示されるとおり、実証された。
【0107】
TregでのTNFR2の高発現にもかかわらず、いくらかのTNFR2発現はまた、CD25を中間レベルで発現するにすぎないので真のTregではないCD4+ T細胞、すなわちCD4+CD25mid細胞でも観察可能である。そのため、本発明者は、IL-2単独、IL-2とTNF-α、IL-2とTNFR2アゴニスト、またはIL-2とTNFR2アンタゴニストのCD25mid細胞亜集団に対する一晩のインキュベーションの影響を調べた。IL-2とTNF-αによる刺激のみ、またはIL-2とTNFR2アゴニストのみで、エフェクター細胞と同様のCD25hiFOXP3-細胞の割合の増加が認められた(図8)。しかし、本発明者は、他の3つのグループと比べて、IL-2とTNFR2アンタゴニストによる抑制を観察した。したがって、同じアッセイで検討された、TNFR2アゴニストおよびアンタゴニストは、同じCD25+FOXP3-細胞集団に対して反対の傾向を示した。すなわち、TNFR2アンタゴニスト(例えば、M1またはMAB726)の添加により、CD4+CD25+ T細胞上でのFoxp3の発現が阻害された。
【0108】
本発明者は、新鮮なヒト血液を分離して、CD4+およびCD25hiを共発現している純粋なTregを得た(図3)。これらのTregを精製し、IL-2を加えた抗CD3と抗CD28の標準プロトコルを用いてin vitroで16日間増殖させ(図3A)、その後、細胞計数の前に一晩それらを静止させた。本発明者はラパマイシンを(7日目まで)添加したが、それは、ラパマイシンがCD8+細胞を抑制する最大能力を備えたTregの最多数を選択的に増殖させるためである。この方法は、CD4+CD25hiTregの作製に成功した(図3B)。本発明者は、Tregの増殖を処理グループごとに評価した:処理なし、TNF-α、TNFR2アゴニスト、またはTNFR2アンタゴニストによる処理。TNFR2アゴニストは、処理なしまたはアンタゴニスト処理よりもTregを少なくとも2倍高く増殖させて、他の全てのグループを上回った。アンタゴニスト処理は、その効果が処理なしのそれよりも低かったので、増殖を抑制した。ラパマイシンは増殖を阻害することが知られているので、ラパマイシンを用いない処理の効果を検討したが、アゴニスト処理とアンタゴニスト処理の間に、平均絶対値はより小さいものの、同様の逆の効果が認められた(図9B)。増殖された細胞の収量は、ラパマイシンなしでは少ない傾向にあったが、アゴニストは依然としてTregを増殖させた。
【実施例3】
【0109】
TregのTNFR2アゴニスト増殖および均質性
次に、in vitroで、TNFR2アゴニストにより処理されたTregが、アンタゴニストで処理されたものよりも均質なTreg細胞表面マーカーを保有するかどうかを検討した。14種の細胞表面マーカーについて表現型を比較すると、全ての処理グループが、Tregに特徴的なマーカーであるFOXP3およびCD25を高度に発現した(図4A)。FOXP3の発現レベルは、処理前のレベルと同様であった。しかし、CD25+発現はアゴニスト処理後にはるかに高く、これは、アンタゴニスト効果ではなく増殖効果と考えることができる(データは示さず)。各グループ内の増殖CD25hiTregのほぼ100%がCTLA4、TNFR2、CD62L、Fas陽性であり、CD127陰性であった(図4A)。TNFR2アンタゴニストで処理されたTregもまた、これらのマーカーの発現を維持した。対照的に、HLA-DR、ICOS、CD45ROおよびケモカイン受容体などの、数種の他の表面マーカーは、アゴニスト処理とアンタゴニスト処理の間で異なって発現された(図4Bおよび4C、図10)。同様の結果はラパマイシンなしで増殖されたTregでも観察された(図10)。TNFR2アゴニストにより増殖されたTregは、他のほとんどの比較グループ、特にTNFR2アンタゴニストと比べて、この表現型:CD4+CD25hiFOXP3+CTLA4+TNFR2+CD127-CD62L+Fas+HLA-DR+CD45RO+CCR5-CCR6-CCR7-CXCR3-ICOS-を有する細胞の驚くほど均質な集団をもたらした。細胞あたりの該タンパク質の平均密度の直接的尺度である、平均蛍光強度(MFI)は、ほとんどの表面マーカーについて、TNFR2アゴニスト処理細胞がTNFR2アンタゴニスト処理細胞と比較して反対の発現レベルを示したことを同様に明らかにした(図12)。さらなる研究によって、これらの増殖細胞が表現型の均質性を経時的に維持するかどうかを定義する必要があるが、この従来の増殖プロトコルからの証拠は、それらが他のグループよりも均質であったことを示している。処理前には、Tregマーカーはより不均質であった(図11)。増殖されていない、天然に存在するヒトTregは、不均質な集団である。CD45RO+FOXP3lowT細胞を含む混合Treg集団のin vitro研究では、炎症性サイトカインが産生される。この特定の表現型は、FOXP3+ T細胞の最大50%に見出される。
【0110】
TNFR2アゴニストで処理されたTregにより最もアップレギュレートされたマーカーの1つは、HLA-DRであり、これはCD8+ T細胞に対するより高い抑制活性があると報告されており、エフェクターTregを示唆している。HLA-DRとは対照的に、4つ全てのケモカイン受容体は強くダウンレギュレートされた。ケモカイン受容体の欠如は、炎症部位への移行に失敗する可能性があるが、全ての処理グループで高度に発現された別のホーミング受容体CD62L(図4)は、急性GVHDにおいて病原性T細胞が存在する部位に侵入するのに不可欠である。アゴニストで処理されたTregがCD45RO+およびCCR7-であり、MFIで測定して、Fasの有意に高い発現レベルを示した(図12)という事実は、それらが活性化されたエフェクターTregであるという見解に役立っている。
【実施例4】
【0111】
TNFR2アゴニストで処理されたTregおよびCD8+の抑制
Tregの1つの重要な機能、特に自己免疫における機能は、自己反応性の細胞傷害性CD8+ T細胞の機能を抑制することである。この能力を評価するために、各処理グループからのTregを、抗CD3 mAbおよびIL-2で4日間刺激した後に、CFSE染色した自己PBMCと混合した。レスポンダー細胞である自己CD8+ T細胞は、レスポンダー対Tregの比を観察することによって抑制について試験された。希釈の比率は用量依存性の研究を可能にする。Tregの全てのグループは、CD8+ T細胞に対する抑制機能を示したが、その程度は処理グループごとに変化した(図5A、左のパネル)。TNFR2アゴニストで処理されたTregは、例えば、1:1の比で最強の抑制能力(CD8+細胞の最少数を残すことによる)を示し、その後より高い比で次第に弱くなった。しかし、アンタゴニストで処理された細胞は、弱い抑制能力を示したが、これは処理なしのそれと本質的に何ら変わらなかった。2:1の抑制指数では、TNFR2アゴニスト処理グループは、アンタゴニスト処理グループおよび処理なしグループよりも大きな抑制を示した(図5A、右のパネル)。同様の結果が、ラパマイシンなしで処理されたTregでも観察された(図13A)。これらの結果は、機能性Tregの既知の表現型および増殖能力と一致している。
【実施例5】
【0112】
TNFR2アゴニストで処理されたTregおよびサイトカインの産生
本発明者は、全ての処理グループで、PMAおよびイオノマイシン刺激後に、細胞内IFNγおよびIL-10を産生する能力が比較的限られることを見出した。しかし、TNFR2アゴニストおよびTNF単独で処理されたTregは、IFNγ+細胞の最低割合をもたらした(図5B、左下のパネル)。アンタゴニストで処理されたTregは、アゴニストよりも有意に高いIFNγ産生を示した(図5B、左下のパネル)。ラパマイシンを用いない同様の実験では、TNFR2アゴニスト処理グループは、TNF処理または処理なしとそれぞれ比較して、より低いIFNγを産生しただけでなく、より低いIL-10およびTNF産生をもたらした(図13B)。アゴニストで処理されたTregはまた、最も少ない数のTH1転写因子(T-bet)+ Tregを示し(図5C)、これはより低いIFNγ産生と一致している(図5C)。これらのTregがCD8+ T細胞に対する高い抑制能力を示す理由の一つは、TregがIFNγ産生能を欠くことに起因している可能性がある。
【0113】
他の実施形態
2013年2月7日に出願された米国仮特許出願第61/762,136号、および2013年2月11日に出願された米国仮特許出願第61/763,217号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されているが、当然理解されるように、さらなる改変が可能であり、本出願は、本発明が関係する技術分野における慣習または慣行内に入りかつ本明細書で上述した本質的特徴に適用され得るような本開示からの逸脱を含めて、一般的に本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用、または適応をカバーするものである。
本明細書で言及した全ての刊行物および特許出願は、それぞれ独立した刊行物または特許出願が具体的かつ個別にその全体が参照により組み入れられると示されたのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
他の実施形態は、特許請求の範囲内に入るものである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]