【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題は、請求項1に記載の特徴を有するシングルフロー式の真空ポンプによって解決される。
【0009】
インレット及びアウトレットを有し、ローター及びステーターを有し、その際、二つの支承部がステーター内に回転可能に支承されているシングルフロー式の真空ポンプは、二つの支承部に対して追加的に、一つの軸方向に作用する磁石支承部が設けられている点で際立っている。
【0010】
ターボ分子ポンプは、毎分60,000回転までの回転数で回転する。部分的には、回転数は更に高い。このような高い回転数において、およびシングルフローポンプにおいて、支承部の軸方向力は極めて大きい。ダブルフロー式のポンプにおいては、問題が生じる。というのは、ガスがインレットを介して、例えば右へ左へと導かれるので、ここで軸方向力が大幅に上昇するからであある。
【0011】
シングルフロー式のポンプにおいては、軸方向力が発生する。というのはこれらは補償されない(相殺されない、独語:nicht kompensiert werden)からである。
【0012】
よって本発明は、ローターのステーター内における支承の為に、先行技術に属する二つの支承部、例えばローラー支承部と磁石支承部を設けることを意図する。その上、追加的に、軸方向に作用する磁石支承部が設けられている。この磁石支承部は、ガス分子の搬送方向に対して反対に作用する圧力を及ぼす。これによって、支承部軸方向力成分は、追加的な軸方向に作用する磁石支承部によって、少なくとも部分的に相殺される。
【0013】
軸方向に作用する磁石支承部の装置は、ポンプ過程の最初に、吸引側にも吐出側にも大気圧が存在すること、及び軸方向に作用する磁石支承部が、圧力を調達する必要がなく、また単に、一または複数の支承部(ローターの支承の為にステーター内に設けられている)の予負荷の為の力のみが調達必要される必要があるという更なるメリットを有する。真空ポンプのインレットとアウトレットの間では、磁石支承部が、両方の支承部又は一方の支承部(固定支承部)に予負荷を与える。磁石支承部は、ここでは引き付け合う又は反発しあうよう設けられていることが可能である。ステーター内におけるローターの支承の為の支承部は、有利には、異なる強度を有する軸方向において弾性的なフレーム(独語:Fassung)内に組み込まれている。圧力のもと、必要な軸方向力成分は、ローターの軸方向の移動によって自主的(独立的)に生じる。発明に係る真空ポンプの規定通りの機能の為に、よって、軸方向(可動支承部側及び固定支承部側並びに追加的な磁石支承部の支承)の異なる強度の比率が重要である。
【0014】
ポンプ過程の前に、つまり吸引側と吐出側の間の圧力均衡の常態において、軸方向に作用する磁石支承部は、有利には、固定支承部の軸方向の予負荷の仕事を担う。軸方向に作用する磁石支承部の例えば磁石リング対の間の間隙は最小である。ポンプ過程の間、吸引側と吐出側の間の増加する圧力差によって、磁石支承部は、圧力によって引き起こされる間隙の拡大を行う。最大限期待される圧力差のもと、最も大きな圧力が生じる。この状態において磁石支承部間隙は最大であり、そして磁石支承部軸方向力は最小である。圧力は、完全に固定支承部によって受け止められる。
【0015】
固定支承部収容部の軸方向の強度は、可動支承部収容部の強度及び磁石支承部の強度よりも極めて大きい。ここで、可動支承部の低い軸方向の強度によって、支承部予負荷の比較的小さな変化のみが生じる。
【0016】
運転に起因する部材の熱膨張は、軸方向の支承力成分の上昇に通じる。支承部収容部と磁石支承部の軸方向の強度は、必要な移動経路も熱に起因する長さ変化の影響も最小限であるよう構成されている。
【0017】
本発明の有利な実施形は、追加的な支承部が、軸方向力及び半径方向力をローターに及ぼす支承部として形成されていること、又は追加的な支承部が、もっぱら軸方向においてのみ作用する支承部として形成されていることを意図している。
【0018】
支承部が、軸方向力及び半径方向力をローターに及ぼす支承部として形成されているとき、例えばこれは同軸のリング対を有し、当該リング対において、オフセットによって所定の軸方向力成分が発生させられる。これは、通常ハイブリッド式に支承されたターボ分子ポンプにおいて使用される半径方向支承部である。
【0019】
しかしまた、支承部を軸方向支承部として形成する可能性も存在する。この軸方向支承部においては、磁石リング対が対向配置されている。
【0020】
本発明の別の有利な実施形は、磁石支承部が永久磁石支承部として又は活性な磁石支承部(又は能動的な磁石支承部、独語:aktives Magnetlager)として形成されていることを意図する。永久的に励起されている(独語:permanent erregte)磁石支承部は、これがプライス面で安価に形成されているというメリットを有する。活性な磁石支承部は例えば調整部(独語:Regelung)を設けられていることが可能である。
【0021】
本発明の別の有利な実施形に従い、ステーター内におけるローターの支承の為の二つの支承部の少なくとも一方が、ローラー支承部として形成されている。ローラー支承部は、極めてプライス面で安価に形成されている。少なくとも一方の支承部は、本発明の有利な実施形においては球状支承部として形成されている。
【0022】
本発明の別の有利な実施形に従い、少なくとも一方の支承部は、傾斜球状支承部として、又はグルーブ球状支承部として形成されている。
【0023】
この支承部は、安価な構造のもととても高い信頼性を有する。
【0024】
本発明の他の実施形は、ローターの支承の為の二つの支承部の少なくとも一方が、活性な磁石支承部として、又は空気支承部として形成されていることを意図する。この実施形は、この支承部が、潤滑剤を必要とせず、つまり潤滑剤無しに作動するというメリットを有する。特に、通常、高真空側においてこの支承部は使用される。というのは、この場合、潤滑剤の流出(独語:Ausgasungen)が高真空を汚染する可能性が無いからである。
【0025】
本発明の別の有利な実施形に従い、高真空側に設けられるローラー支承部が潤滑剤無しのローラー支承部として形成されていることが意図されている。流出を防止するために、高真空側のローラー支承部の装置においては、ローラー支承部は潤滑剤無しに選択される。
【0026】
本発明の別の有利な実施形は、潤滑剤潤滑を伴うローラー支承部が潤滑剤リザーバー及び潤滑剤ポンプを有している。
【0027】
長期の運転の為に、潤滑剤リザーバー、例えばオイルを染み込ませたフリースの形式のもの等を設けることは有利である。潤滑剤ポンプは、有利には、ローターとともに回転する円錐体から成る。この円錐体は、潤滑剤リザーバーから支承部に向かって拡張するよう形成されている。この場合、潤滑剤は、遠心力に基づいて自動的にローラー支承部に向かって移動させられる。
【0028】
本発明の別の有利な実施形に従い、真空ポンプの二つの支承部が、可動支承部として及び固定支承部として形成されていること、及び追加的な磁石支承部が、固定支承部に予負荷を与える支承部として形成されていることが意図されている。例えば傾斜球状支承部が設けられているとき、この支承部は予負荷を与えられよう。追加的な磁石支承部は、別の支承部又は別の装置の配置を防止するために、この仕事をになう。
【0029】
本発明の別の有利な実施形は、追加的な磁石支承部が、引き付け合う又は反発しあう磁石支承部として形成されていることを意図する。真空ポンプの構造及び磁石支承部の配置に応じて、磁石支承部の形成は相応に選択されることが可能である。
【0030】
本発明の別の有利な実施形に従い、追加的である活性な磁石支承部は、調整される(調整された、独語:geregeltes)磁石支承部として形成されていることが意図されている。これによって、ポンプ過程の間に発生する圧力に対応し、そして磁石支承部を相応して調整することが可能である。
【0031】
本発明の別の有利な実施形は、固定支承部収容部の軸方向の強度が、可動支承部収容部及び磁石支承部の強度よりも高いことを意図している。すでに説明したように、これは有利である、というのはポンプ過程の間、及び最大限期待されるべき圧力差の間、圧力は完全に固定支承部によって受け止められるので、固定支承部収容部の軸方向の強度は、可動支承部収容部と磁石支承部の強度よりもはるかに高いからである。
【0032】
本発明の好ましい実施形に従い、真空ポンプは、スクリューポンプとして、及び/又は十字ねじポンプとして、及び/又はターボ分子ポンプとして、及び/又は分子ポンプとして、好ましくは少なくとも一つのゲーデポンプ段及び/又はホルベックポンプ段を有して形成されている。これら真空ポンプは、例えば毎分90,000回転まで回転数を有するいわゆる高速回転ポンプである。真空ポンプは、異なる複数のポンプ段のコンビネーションとしても形成されていることが可能である。よって例えば、複数のホルベックポンプ段を有する複数のターボ分子ポンプを一つのポンプ内に組み合わせることをも通常である。
【0033】
二つの支承部に追加的に軸方向に作用する磁石支承部を有する発明に係る実施形は、軸方向の可動性を有する全てのシングルフローポンプにおいて使用可能である。軸方向の間隙は、きわめて小さく形成されていることが可能である。
【0034】
本発明の別の特徴及びメリットは、添付の図面より生じる。当該図中には、発明に係る真空ポンプの複数の実施例が例示的にのみ表されている。