特許第6367870号(P6367870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367870
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】非ハロゲン化難燃性材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20180723BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20180723BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20180723BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20180723BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08K5/52
   C08K3/34
   C08K5/134
   C08K5/3472
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-148123(P2016-148123)
(22)【出願日】2016年7月28日
(62)【分割の表示】特願2014-191650(P2014-191650)の分割
【原出願日】2004年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-196660(P2016-196660A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年8月25日
(31)【優先権主張番号】60/450691
(32)【優先日】2003年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10/696962
(32)【優先日】2003年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】クリス エー.ベンソン
(72)【発明者】
【氏名】ティラク アール.バーマ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス エル.レゾン
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−286612(JP,A)
【文献】 特開2015−014005(JP,A)
【文献】 特表平05−508187(JP,A)
【文献】 特表2003−506548(JP,A)
【文献】 特開平09−278947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08K 5/00−5/59
C08K 3/00−3/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性組成物であって、
この組成物の60〜70wt%の濃度で存在する、1.0のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンホモポリマーベース材料、
この組成物の25〜35wt%の濃度で存在する、ホスフェート塩非ハロゲン化難燃性材料、
この組成物の1wt%の濃度で存在し、金属酸化物及び重金属を含まない、ナノクレーであるクレー材料、及び
抗酸化剤及び/又は金属不活性化剤
を含み、ULテスト条件により試験を行った場合に少なくともV−2の易燃性等級を達成する難燃性組成物。
【請求項2】
前記ホスフェート塩非ハロゲン化難燃性材料が組成物の30wt%〜35wt%の濃度で存在する、請求項1記載の難燃性組成物。
【請求項3】
前記クレーが500nm以下の粒度を有する、請求項1記載の難燃性組成物。
【請求項4】
前記ポリプロピレンホモポリマーベース材料が組成物の68wt%の濃度で存在し、前記ホスフェート塩非ハロゲン化難燃性材料が組成物の30wt%の濃度で存在し、前記クレー材料が組成物の1wt%の濃度で存在する、請求項1記載の難燃性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性材料に関する。詳細には、本発明は、難燃性の相乗効果を高めるため、ハロゲン化化合物以外を用いる難燃性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃剤またはバリヤーとして多くの用途においてシート材料が用いられている。特定の条件もしくは用途に見合うようにこれらの材料をシートもしくは他の形状に加工し、電気もしくは電子デバイスを収納する電気キャビネット用の構造体の一部が形成される。これらの材料は難燃性のみならず電気絶縁性も与える。
【0003】
公知の材料のあるものは、難燃剤を加える「ベース」材料としてポリプロピレン(ホモポリマーまたはエチレンポリプロピレンコポリマー)を用いている。難燃剤は、例えばハロゲン化有機材料、例えばテトラブロモビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルオキシド、オクタブロモジフェニルオキシド、ペンタブロモジフェニルオキシド、2,4,6-トリブロモフェノール、ポリジブロモフェニレンオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸またはテトラブロモフタレートジオールを含む。ハロゲン化難燃剤は、このハロゲン化有機難燃剤の効果を高めるように相乗剤と組み合わせてもよい。この相乗剤は金属酸化物、例えば酸化アンチモンまたは塩、例えばアンチモン酸ナトリウムであってよい。相乗剤に対するハロゲン化有機難燃剤の比は約2:1〜約3:1の範囲内である。その材料は文献に記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,521,003号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの材料はその目的、例えば難燃性及び電気絶縁性に対してよく機能するが、これらはハロゲン化材料及び金属酸化物を含んでおり、その両方とも環境に対する悪影響のため避けるべきである。しかし、これらの材料は望ましくない成分を有しているが、それにもかかわらず利点、例えば形成能力(押出による)を有しており、これは硬質難燃性構造体への成形もしくは加工が容易となる。その結果、同様の機能を与え、同様の「成形」性を有するが環境に対する影響のない他の材料が求められている。
【0006】
従って、押し出しもしくは成形が容易な難燃性材料に対する要求がある。望ましくは、そのような材料は現在用いられている材料の難燃性を与えるが、環境に危険な材料の量を低減させる。最も望ましくは、そのような難燃性材料は、組成物中のハロゲン化化合物及び金属酸化物を排除する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
難燃性組成物は、ポリマーベース材料、非ハロゲン化難燃性材料及び組成物の約1wt%の濃度で存在する相乗剤、好ましくは粒度が500nm未満であるシリケート、を含む。この相乗剤は金属酸化物を実質的に含まない。本発明の1態様によれば、この相乗剤は重金属を実質的に含まない。この難燃性組成物は、ULテスト条件により試験を行った場合に少なくともV−2の易燃性等級を達成する。
【0008】
本発明の組成物は、公知の現在用いられている材料、例えばハロゲン化材料及び金属酸化物の難燃性を与える。そのような材料の望ましい特性は、押出容易性及び成形性を含む。
【0009】
本発明のこれら及び他の利点は以下の詳細な説明より明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、さまざまな態様を許容するが、以下に好ましい態様を説明し、これは本発明の例示であり、本発明はこの態様に限定されないことは理解されるであろう。
【0011】
本発明の非ハロゲン化難燃性組成物もしくは材料は、ハロゲン化難燃性材料により達成されるよりも容易に難燃性を与えるため、複塩及び微粒子シリケートと共に低メルトフローポリプロピレンを含む。上記の本発明の非ハロゲン化難燃性材料において、ベース材料は低メルトフローポリプロピレンホモポリマーである。
【0012】
当業者に理解されるように、例えば押出法においてシート製品を形成するための材料用に約1.0のメルトフローインデックスが許容される。他の成形法にはメルトフローインデックスが高いことが望ましく(例えば、射出成形には約12.0のインデックス)、ポリプロピレンホモポリマーとエチレン及びプロピレンのコポリマーのブレンドの使用はそのような特性ならびに他の望ましい特性を与えると考えられる。また、そのようなポリマーブレンドは、破壊もしくは引き裂けを起こすことなく、また難燃性を犠牲にすることなく、切り目付け及び曲げを可能にする特性を有する材料を提供する。
【0013】
本発明の難燃性材料において、塩は約30〜約35パーセントの濃度で存在するエチレンジアミンホスフェート及びメラミン難燃剤である。本発明の難燃剤はUnitex Chemical Corporation of Greensboro, North Carolinaより製品番号FRX 44-94Sとして入手可能である。
【0014】
シリケート微粒子は難燃剤に相乗効果を与えることが見出された。すなわち、少量のシリケートは難燃剤(例えば塩)の使用量の低減を可能にする。本発明の難燃性材料において、4級アンモニウム塩により改質された微細な天然モンモリロナイトが用いられる。シリケートもしくはクレーの1例は、Southern Clay Products, Inc. of Gonzales, Texasより商標CLOISITE 20Aとして入手可能である。この材料は、13μm未満の90パーセント粒度、6μm未満の5パーセント粒度及び2μm未満の10パーセント粒度を有する微粒子として提供されている。当業者に知られているように、このクレーは「ナノクレー」と呼ばれる。1態様において、このクレーは500nm未満の粒度を有する。
【0015】
好ましい難燃性材料は抗酸化剤も含む。抗酸化剤の例は、ベースポリマー(例えばポリプロピレン)材料の分解を防ぐもしくは遅らせる高分子量、低揮発性材料である。そのような抗酸化剤は高温変色も防ぐもしくは遅らせる。この抗酸化剤はフェノールベース材料、例えばテトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート9-メタン(Great Lakes Chemical Corporation of Indianapolis, Indianaより商品名Anox 20として市販入手可能)である。難燃性材料は金属(例えば銅)不活性化剤、例えば3-(N-サリチルオイル)アミノ-1,2,3-トリアゾール(Amfine Chemical Corporation of Allendale, New Jerseyより商品名CDA-1として市販入手可能)も含んでよい。
【0016】
クレーの使用は所望の材料特性を達成するために必要な難燃剤(例えば塩)の量、すなわち質量パーセント、の低減を促進する。本発明の材料において、ポリプロピレン「ベース」材料は約60〜約70wt%の濃度で存在し、難燃剤(例えば塩)は約25〜約45wt%未満、好ましくは約30〜約35wt%の濃度で存在し、クレーは約1wt%の濃度で存在する。これは、約60パーセントの難燃剤の量を必要とする他の非ハロゲン化システム、及び約45パーセントを必要とするリンベース防炎システムと対照的である。
【実施例】
【0017】
Underwriter's Laboratories(UL)により規定される条件において材料の有効性を決定するため、本発明の難燃性材料の様々な組成物について燃焼テストが行われた(UL等級)。3種の組成物をテストした。第1の組成物(ブレンド2)は35パーセントの濃度で存在する難燃剤(例えばFRX材料)を有しているが、クレー材料は有していなかった。第2の組成物(ブレンド4)は30パーセントの濃度で存在する難燃性材料及び1パーセントの濃度で存在するナノクレーを有していた。第3の組成物(ブレンド5)は30パーセントの濃度で存在する難燃剤及び1パーセントの濃度で存在する炭促進剤を有していた。この炭促進剤はUnitex Chemicalより製品番号5066として市販入手可能である。
【0018】
各組成物は、1パーセントの濃度で存在する抗酸化剤(Anox 20)及び0.30パーセントの濃度で存在する金属不活性化剤(CDA-1)をも含んでいた。材料の残余はポリプロピレンホモポリマーであり、すなわちブレンド2ではポリプロピレンは63.7パーセント存在し、ブレンド4及び5では67.7パーセント存在した。以下の表1は、平板状の、ブレンドの成分を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
上記のように、各ブレンドのサンプルを、UL条件を用いてテストし、クレー混入の有効性及び難燃剤(塩)の低減について調べた。サンプルをクランプから吊り下げ、サンプルの下に第1の燃焼として10秒間炎を置いた。次いで、ULスタンダード94に従い、炎を除き、第2の燃焼として10秒間サンプルの下に炎を置いた。
【0021】
このテストの結果を、サンプルがすぐに消火したことを示すゼロ(0)、サンプルが燃焼し続ける時間を示す時間、またはサンプルが「落下」し、サンプルの下のコットンに火をつけることを示すCIとして示す。用語ABは燃焼時間、すなわちサンプルが示した時間燃焼し続けることを示す。
【0022】
このテストの結果を以下の表2〜4に示す。表2のデータは横方向及び機械方向におけるブレンド2の燃焼性テストを示している。横方向は、シートを押出機から押し出す方向に対して横軸方向にクランプに保持したサンプルについての結果を示している。逆に、機械方向は、シートを押出機から押し出す方向と同じ方向にサンプルを配置した結果を示している。ブレンド2のサンプルは厚さ0.027インチ(0.069cm)、幅0.50インチ(1.27cm)の同じサイズでテストを行った。ブレンド4のサンプルは、2つの異なるサイズ、すなわち厚さ0.027インチ(0.069cm)、幅0.50インチ(1.27cm)(表3A)及び厚さ0.015インチ(0.038cm)、幅0.50インチ(1.27cm)(表3B)でテストを行った。ブレンド5のサンプルは、2つの異なるサイズ、すなわち厚さ0.015インチ(0.038cm)、幅0.50インチ(1.27cm)(表4A)及び厚さ0.057インチ(0.145cm)、幅0.50インチ(1.27cm)(表4B)でテストを行った。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
このデータの結果より明らかなように、35パーセントブレンド(ブレンド2)及び1パーセント濃度のナノクレーを含む30パーセントブレンド(ブレンド4)は、ULV−2易燃性等級(すなわち、垂直試験片においては30秒以内に燃焼が停止し、燃えている粒子が落下した)を達成した。これは、この同じ易燃性テスト結果を達成するのに約45パーセントの量の難燃剤(例えば塩)を必要とする従来公知の難燃性材料において予想外である。