特許第6367917号(P6367917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367917ベーンを有するラジアルまたは混流圧縮機ディフューザ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367917
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ベーンを有するラジアルまたは混流圧縮機ディフューザ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20180723BHJP
   F04D 17/10 20060101ALI20180723BHJP
   F04D 23/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F04D29/44 S
   F04D17/10
   F04D23/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-504723(P2016-504723)
(86)(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公表番号】特表2016-514791(P2016-514791A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】FR2014050693
(87)【国際公開番号】WO2014154997
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】1352829
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タルノーウスキー,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ビュロー,ニコラ
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−503999(JP,A)
【文献】 特表2012−505993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 17/10
F04D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流に対向して配置される前縁(11)と、前縁(11)と反対側の後縁(12)と、前縁(11)を後縁(12)に接続する外孤面側壁(13)および内弧面側壁(14)とを含む、エンジン(1)のラジアルまたは混流圧縮機(2)用のディフューザ(5)のベーン(10)にして、
前縁(11)と後縁(12)との間に少なくとも2つの変曲点(I1、I2)を持つキャンバー線(15)を有する輪郭を含む、ベーン(10)であって、
内弧面壁(14)の曲線および外孤面壁(13)の曲線は、
内弧面壁(14)が、前縁(11)と後縁(12)との間に、凹部(14b)によって分離される少なくとも2つの凸部(14a、14c)を含み、
外孤面壁(13)が、前縁(11)と後縁(12)との間に、凸部(13b)によって分離される少なくとも2つの凹部(13a、13c)を含む
ようにキャンバー線(15)の曲線に実質的に従い、
輪郭が、前縁(11)と後縁(12)との間に延在する翼弦(16)を画定し、内弧面壁(14)の凸部(14a、14c)および外孤面壁(13)の凹部(13a、13c)が、前記翼弦(16)の同じ側に少なくとも部分的に延在することを特徴とする、ベーン(10)。
【請求項2】
輪郭が、前縁(11)と後縁(12)との間に延在する翼弦(16)を画定し、前縁(11)と後縁(12)との間のすべての点で、前記翼弦(16)が、キャンバー線(15)から遠くに配置される、請求項1に記載のベーン(10)。
【請求項3】
輪郭が、前縁(11)と後縁(12)との間に延在する翼弦(16)を画定し、変曲点(I1、I2)が、前記翼弦(16)の10%と90%との間に配置される、請求項1または2のいずれか一項に記載のベーン(10)。
【請求項4】
前記変曲点の一番目(I1)が、翼弦(16)の35%と55%との間に配置され、前記変曲点の二番目(I2)が、前記翼弦(16)の55%と65%との間に配置される、請求項3に記載のベーン(10)。
【請求項5】
およそ0°とおよそ45°との間に含まれる迎え角(α)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のベーン(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのベーン(10)を含む、エンジン(1)のラジアルまたは混流圧縮機のディフューザ(5)。
【請求項7】
請求項6に記載のディフューザ(5)を含む、エンジン(1)のラジアルまたは混流圧縮機(2)。
【請求項8】
請求項7に記載のラジアルまたは混流圧縮機(2)を含む、エンジン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスタービンエンジンに、より詳細にはガスタービンのラジアルまたは混流圧縮機の拡散段に、ならびに結合される圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、ブレード付きまたはブレードのない1つまたは複数の回転ディスク(ロータまたはホイール)と、固定ベーン(ストレートナ段)を持つ1つまたは複数のホイールとを含む。
【0003】
ラジアル(または遠心)圧縮機は、圧縮機の中心軸に対して垂直なガスの流れを実現することができる少なくとも1つのラジアル圧縮機段を有する。これは、半径方向力の影響を受けて、半径方向に加速され、圧縮され、送り出される空気を軸方向に吸い込む半径方向ブレードを持つ少なくとも1つのホイールを含む。この場合、この空気は、ホイールを出るガスを減速することによってその速度の一部を静圧に変換するディフューザ(固定ベーン)で整流される。動作は、ターボ機械の動作のために許容できるサージマージンを維持するように圧縮機の満足のいく水準の安定性を依然として維持しながら最小の全圧力損失で行わなければならない。
【0004】
次に、ガスは、燃焼室の方へ案内される。
【0005】
混流(または軸方向−半径方向)圧縮機は、流体が半径方向のゼロでない角度を形成する圧縮機のホイールを出るように、前記中心軸に対して斜めの少なくとも1つの圧縮段を有する。
【0006】
ラジアル圧縮機のディフューザは、その間でガスが中心から周縁の方へ半径方向または斜めに流れる2つのフランジでできているホイールから成る。ベーンは、ホイール全体に沿ってフランジの間に分配される。これらのベーンは、これらのベーンの前縁と後縁との間にフローカスケードを形成する。
【0007】
しかしながら、ディフューザのベーンによってホイールを出る空気流の偏向により、ベーンの内弧面または外孤面に流体の分離が生じる場合があり、その分離により、これが無視できない場合は流体の、および結果としてポンピングの失速もたらされる場合もある。このポンピング現象は、圧縮機を構成する要素に有害であることが知られており、したがって、人は、できる限りこれを回避しようと努める。
【0008】
通常、ディフューザのベーンは、円弧状の内弧面壁および外孤面壁から成り、準線形直角を含む。この種のベーンの実施例が、図1に示されている。しかしながら、これらのベーンは、拡散能力に関して限界を有する。実際、これらのベーンによる拡散の増加は、圧縮機の等方性の効率の低下、および不安定性の増加を生じる。
【0009】
請求項1のプリアンブルに従うベーンを含むラジアル圧縮機用のディフューザが、文献国際公開第2012/019650号パンフレットに提案された。特に、この文献は、その輪郭が変曲点を有する関数によって定義されるキャンバー線を有するベーンを説明している。このような理由で、キャンバー線は、「S」形状を有し、前縁の領域に低負荷を持つ、ベーンの輪郭に沿って負荷を分散することができ、これは、ベーンの変曲点まで徐々に増加し、そこで最大量になる。しかしながら、この種の「S」輪郭を示すこの種のベーンを使用すると、ディフューザスロート部において(すなわち、流体入口断面において)、断面を制限することが必要である。これは、フローレート/レート特性をより低流量の方へ移す効果を有し、ディフューザの空力チョーク流れを減少させる。
【0010】
また、形状が「S」と同様な輪郭曲線を持つベーンが、文献特開2011−252424号公報に説明されている。特に、この文献のベーンは、曲率線と円周方向輪郭曲線との間に形成される角度が上昇するように構成され、次に低下し、次いで、ベーンの前縁と後縁との間で再び上昇する。ここに、ディフューザのスロート部の断面は、その結果制限されなければならず、これは、ディフューザの安定性を減少させる効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/019650号
【特許文献2】特開2011−252424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、先行技術のラジアルおよび混流圧縮機のディフューザの性能およびサージマージンを改善することである。
【0013】
特に、本発明は、圧縮機の断熱効率低下を制限すること、および流れの安定性を依然として維持しながら圧縮機のホイールによって供給される流れを減速し整流する能力を改善することができるラジアルまたは混流圧縮機用のディフューザを提案する目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ガス流に対向して配置される前縁と、前縁と反対側に配置される後縁と、前縁を後縁に接続する外孤面側壁および内弧面側壁とを含む、ラジアルまたは混流圧縮機用のディフューザ用のベーンを提案する。ベーンの輪郭は、前縁と後縁との間に少なくとも2つの変曲点を有するキャンバー線を含む。そのうえ、内弧面壁の曲線および外孤面壁の曲線は、内弧面壁が、前縁と後縁との間に、凹部によって分離される少なくとも2つの凸部を含み、外孤面壁が、前縁と後縁との間に、凸部によって分離される少なくとも2つの凹部を含むようにキャンバー線の曲線に実質的に従い、輪郭は、前縁と後縁との間に延在する翼弦線を画定し、内弧面壁の凸部および外孤面壁の凹部は、前記翼弦線の同じ側に少なくとも部分的に延在する。
【0015】
また、本発明は、上に説明したような少なくとも1つのベーンを含むディフューザ、ならびにこの種のディフューザを含むラジアルまたは混流圧縮機、およびこの種の混流圧縮機を含むエンジンを提案する。
【0016】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の、および非限定的な実施例として与えられる添付の図面に関して、詳細な説明を読むとより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】先行技術に従うベーン輪郭の実施例を示す図である。
図2】本発明に従うディフューザのベーン輪郭の実施例を示す図である。
図3】翼弦線およびベーン中心線を示す、図2のベーンの詳細図である。
図4】本発明に従うディフューザを含むことができるエンジンの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるラジアルディフューザは、特に、ラジアルまたは混流圧縮機2で使用されるように設計される。
【0019】
図4は、ラジアル圧縮機2を備えるエンジン1の一部断面図である。ガス流Fは、最初に空気入口チャネルに吸い込まれ、次いで、ラジアル圧縮機2のホイール3のブレード3aとそのケーシングとの間で圧縮される。圧縮機2は、軸Xを中心に軸対称性を有する。次いで、圧縮ガス流Fが、ホイール3から半径方向に抜け出る。もし圧縮機2が混流タイプから成っていれば、ガス流は、軸Xの半径方向に対してゼロでない角度で傾斜して抜け出るであろう。
【0020】
圧縮空気は、依然として角運動量を有しながらホイール3を半径方向に出て行き、ディフューザ5の中に進む。ディフューザの役割は、圧縮機2から生じるガスの運動エネルギーの一部をガスの速度を減速することによって静圧に変換すること、およびホイール3を出て行く流れを整流することである。このために、これは、その周囲に沿って配置される複数のベーン10を含み、このベーン10は、前方フランジ5aと後方フランジ5bとの間に延在する。ベーン10の各々は、知られている態様で、ガスの流れに対向して配置される前縁11と、前縁11と反対側の後縁12と、前縁11を後縁12に接続する内弧面側壁13および外孤面側壁14とを有する。
【0021】
前方フランジ5aおよび後方フランジ5bは、平面であってもよい。変形として、フランジ5a、5bのうちの少なくとも1つは、それらの間に画定される空間において、2つのベーン10の間に交互する湾曲を持つ少なくとも1つの領域を含むことができ、その結果、空気流は、適応する先端部および根元部経線を含むことができる。この種の交互する湾曲を有する前方フランジ5aおよび/または後方フランジ5bについてさらに詳しくは出願人による文献仏国特許第2976633号明細書が参照され得る。
【0022】
さらにもう1つの変形によれば、フランジ5a、5bは、適応軸対称形状を有することができる。
【0023】
そのうえ、前方フランジ5aおよび後方フランジ5bは、ディフューザ5において吸い込みおよび吹き出しを可能にするように適応することができる。
【0024】
ディフューザ5のベーン10のうちの少なくとも1つ、好ましくはベーン10すべてが、上流から下流までガス流方向を含める、すなわち、その形状が上流流れに適応するように構成される、収集領域と呼ばれる第1の領域と、その形状が、ディフューザ5を出るより大きな静圧を得て、下流部分、通常、アキシャルディフューザ5の供給を容易にするように、収集領域から生じる流れをより強く整流するように構成される、拡散領域と呼ばれる第2の領域とである。
【0025】
ベーン10は、そのキャンバー線15がその前縁11とその後縁12との間に少なくとも2つの変曲点I1、I2を、すなわち、凹所に少なくとも2つの変化を有する輪郭を含む。
【0026】
以後、用語「変曲点」は、そこで曲線がその接線と交差する曲線の点を意味するように理解される。そのうえ、ベーン10の輪郭は、ベーン10の断面、すなわちベーン10の外孤面13および内弧面14に対して概ね垂直な平面においてベーン10の断面を意味するように理解される。最後に、輪郭の「キャンバー線15」は、ベーン10の外孤面13および内弧面14から等距離の点すべてを含む想像線に対応するが、「翼弦16」は、その端部として前縁11および後縁12を有するセグメントに対応する。
【0027】
変曲点I1、I2は共に、第1の変曲点I1の上流に延在するベーン10の一部を含む収集領域と、変曲点I2の下流に延在するベーン10の一部を含む拡散領域とを画定する。
【0028】
ディフューザ5の安定性、およびディフューザ5の出力口での静圧を最適化するように、変曲点I1、I2は、翼弦16の10%と90%との間に、好ましくは30%と70%との間に配置されることが好ましい。たとえば、変曲点の一番目I1は、翼弦16の35%と55%との間に配置されることができるが、第2の変曲点I2は、コード16の55%と65%との間に配置される。変曲点I1、I2は、特に、翼弦16の中心に対して対称に配置され得る。
【0029】
変形として、ベーン10の輪郭は、追加の変曲点I1、I2を含むことができる。
【0030】
したがって、キャンバー線15は、前縁11と後縁12との間に少なくとも第1の凹所、第1の凹所と異なる第2の凹所、次いで第3の凹所を連続して有する。変曲点I1、I2が翼弦16の中心に対して対称である場合は、この場合、第2の凹所は、ベーン10の中心に置かれる。
【0031】
一実施形態によれば、内弧面壁14および外孤面壁13は、キャンバー線15の曲線に実質的に従い、したがって、同数の変曲点I1、I2を有する。
【0032】
図2および図3に示される実施形態においては、内弧面壁14および外孤面壁13は、このように2つの変曲点I1、I2を含む。内弧面壁14は、前縁11と第1の変曲点との間に凸部14aを、次いで2つの変曲点I1と変曲点I2との間に凹部14b、次いで、第2の変曲点と後縁12との間に凸部14cを含む。一方、外孤面壁13は、前縁11と第1の変曲点との間に凹部13aを、次いで2つの変曲点I1と変曲点I2との間に凸部13b、次いで、第2の変曲点と後縁12との間に凹部13cを含む。
【0033】
そのうえ、キャンバー線15は、内弧面壁14と翼弦16との間に延在する。換言すれば、前縁11と後縁12との間のすべての点において、キャンバー線15および内弧面壁14は、翼弦16から遠くに延在する。加えて、外孤面壁13の凹領域は、翼弦16を横切り、したがって、前記翼弦16とキャンバー線15の同じ側に少なくとも一部が見出される。
【0034】
キャンバー線15の2つの変曲点I1、I2によって可能にされるこの構成により、前縁11および後縁12は、従来のディフューザ5で普通に遭遇したようなガス流に関して同じ全体的な方向に方向付けられ、それにより、スロート部の断面、すなわち2つの隣接するベーン10の間の流体入口断面を保つことができる。このように、ディフューザ5の安定性は、流れの拡散を改善しながら依然として維持される。
【0035】
(前縁11でのキャンバー線15の接線と翼弦16との間の角度に対応する)迎え角αは、従来のベーン10の迎え角αと実質的に同一であってもよい。たとえば、迎え角αは、およそ0°とおよそ45°との間に含まれ得る。このように、それらの収集領域において従来のディフューザ5のベーン10に形状を実質的に保持することができ、それにより、流れの安定性を保つことができる。そのうえ、第2の変曲点I2の存在により、それによって収集領域の形状を変更することなく、ディフューザ5の効率を増加させるようにそれらの拡散領域においてベーン10の形状を変更することができる。実際、収集領域の形状とは無関係に、目下、後縁12でのキャンバー線15と翼弦16との間の角度を増加させることができ、それにより、ガス流をより強く整流し、それによってディフューザ5の出力口における一定の温度上昇での静圧および全圧力比を増加させ、したがって、サージマージンひいては圧縮機2の安定性を依然として維持しながらディフューザ5の等方性の効率を改善することができる。
【0036】
前述の通り、ベーン10の輪郭のキャンバー線15は、少なくとも2つの変曲点I1、I2を含む。変曲点I1、I2の数は、流れに関して前縁11のおよび後縁12の全体的な方向付けを維持し、したがってスロート部の断面を保つように偶数であり得ることが好ましい。そのうえ、1つの実施形態によれば、前縁11と後縁12との間のすべての点において、キャンバー線15および内弧面壁14が翼弦16から遠くに延在し、外孤面壁13の凹領域が翼弦16を横切るように、対応するキャンバー線15は、ここに内弧面壁14と翼弦16との間で延在する。
図1
図2
図3
図4