(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367923
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】体液採取装置および体液分離と検査システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/15 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
A61B5/15 200
【請求項の数】23
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-509000(P2016-509000)
(86)(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公表番号】特表2016-518923(P2016-518923A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】US2014033927
(87)【国際公開番号】WO2014172239
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/811,918
(32)【優先日】2013年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジー.エリス
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー エム.ウィルキンソン
【審査官】
北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−162582(JP,U)
【文献】
特開2008−302077(JP,A)
【文献】
実開昭52−87183(JP,U)
【文献】
特開2001−324500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15− 5/157
A61M 1/00− 1/38
G01N33/48−33/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分血液試料を受けることに適合する体液採取装置であって、
第1チャンバー入口および第1チャンバー出口を有している第1チャンバーと第2チャンバー入口を有している第2チャンバーとを画成し、前記第1チャンバー出口と前記第2チャンバー入口との間に配置された分離部材を含むハウジングであって、前記第1チャンバー出口が前記分離部材を介して前記第2チャンバー入口と連通し、前記第1チャンバーが前記多成分血液試料を受け取るための適合しているハウジングと、
前記第2チャンバーに関連付けられた作動部材であって、その第1の方向への作動によって、前記多成分血液試料の成分が、前記第1チャンバーから前記分離部材を通り前記第2チャンバーへと引き出されるようにする作動部材と、
前記第2チャンバーと係合して前記第2チャンバーを密閉する弁と、を備え、
前記弁が、前記第2チャンバーが完全に密閉される閉位置と前記第2チャンバーが開放される開位置との間で遷移可能であることを特徴とする体液採取装置。
【請求項2】
前記弁は、前記第2チャンバーから検査装置へと、前記成分の少なくとも一部を閉じた状態で移送するために、前記検査装置の受入口と係合可能であることを特徴とする請求項1に記載の体液採取装置。
【請求項3】
前記成分は血漿成分であることを特徴とする請求項2に記載の体液採取装置。
【請求項4】
前記弁は、前記検査装置の受入口との係合を介して、前記閉位置から前記開位置に遷移することを特徴とする請求項2に記載の体液採取装置。
【請求項5】
前記検査装置は、ポイント・オブ・ケア検査装置を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の体液採取装置。
【請求項6】
前記弁は、ばね荷重式の分配弁であることを特徴とする請求項1に記載の体液採取装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、取り外し可能に係合された管状部材を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の体液採取装置。
【請求項8】
前記作動部材は、少なくとも前記作動部材の一部が前記管状部材内で少なくとも部分的に配置可能であるとともに、着脱可能に前記ハウジングと係合されていることを特徴とする請求項7に記載の体液採取装置。
【請求項9】
前記管状部材および前記作動部材は、前記第1チャンバーから前記第2チャンバー内に前記成分の少なくとも一部が通過した後に、前記ハウジングから取り外し可能であることを特徴とする請求項7に記載の体液採取装置。
【請求項10】
前記成分は、血漿成分であることを特徴とする請求項9に記載の体液採取装置。
【請求項11】
前記第2チャンバーと係合して前記第2チャンバーを密閉する弁をさらに備え、前記弁は、前記第2チャンバーが完全に密閉される閉位置と、前記第2チャンバーが開放される開位置との間で遷移可能であり、前記管状部材および前記作動部材が前記ハウジングから取り除かれた後、前記閉位置から前記開位置への遷移が生じることを特徴とする請求項9に記載の体液採取装置。
【請求項12】
多成分血液試料のための体液試料分離検査システムであって、
第1チャンバー入口および第1チャンバー出口を有している第1チャンバーと第2チャンバー入口を有している第2チャンバーとを画成し、前記第1チャンバー出口と前記第2チャンバー入口との間に配置された分離部材を含むハウジングであって、前記第1チャンバーが前記多成分血液試料を受け取るのに適合しているハウジングと、
前記第2チャンバーと係合して前記第2チャンバーを密閉する弁であって、前記第2チャンバーが完全に密閉される閉位置と前記第2チャンバーが開放される開位置との間で遷移可能である弁と、
を含む体液採取分離装置、および、
前記体液採取分離装置の前記弁と係合するのに適合した受入口を有している検査装置であって、前記受入口が前記弁と係合したときに、前記弁が前記閉位置から前記開位置に遷移するようにされた検査装置、
を備えた体液試料分離検査システム。
【請求項13】
前記ハウジングは、それと取り外し可能に係合する管状部材を含み、前記管状部材が前記ハウジングから取り外された後、前記閉位置から前記開位置への前記弁の遷移が生じることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項14】
前記分離部材は、前記多成分血液の成分が前記分離部材を通して前記第2チャンバーに通過することを可能にするように適合していることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項15】
前記成分は、血漿成分であることを特徴とする請求項14に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項16】
前記ハウジングと係合して、前記第1チャンバーの前記第1チャンバー入口を密閉する隔壁をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項17】
前記第2チャンバーから前記検査装置へと、前記多成分血液試料の成分の少なくとも一部が閉じた状態で移送されるようにするために、前記弁は前記検査装置の受入口と係合可能であることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項18】
前記成分は血漿成分であることを特徴とする請求項17に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項19】
前記弁は、ばね荷重式の分配弁であることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項20】
前記ハウジングは、前記第1チャンバーから前記第2チャンバー内に前記成分の少なくとも一部が通過した後に、前記ハウジングから取り外し可能である管状部分を含んでいることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項21】
前記成分は血漿成分であることを特徴とする請求項20に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項22】
前記ハウジングに関連付けられた作動部材をさらに備え、前記作動部材の第1の方向への作動によって、前記多成分血液試料の成分が、前記第1チャンバーから前記分離部材を通り前記第2チャンバーへと引き出されることを特徴とする請求項12に記載の体液試料分離検査システム。
【請求項23】
前記成分は血漿成分であることを特徴とする請求項22に記載の体液試料分離検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管アクセス装置に適合したアセンブリ、装置、システムに関するものである。特に、本開示では、ポイント・オブ・ケア検査に使用するための試料を採取するように適合したアセンブリ、装置、システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
採血は、患者から少量の血液を採取する一般的な医療手順である。血液試料は一般的に入院、在宅ケア、および緊急治療室のいずれかの患者から、フィンガー・スティック、ヒール・スティック、または静脈穿刺によって採取される。血液試料は、静脈または動脈ラインによって、患者から採取しても良いのである。採取した後、血液試料は、例えば、化学組成、血液学、または凝固などの医学的に有用な情報を得るために分析することができる。
【0003】
血液検査は、疾患、ミネラル含有量、薬剤の有効性、および臓器機能として、患者の生理学的や生化学的状態を決定する。血液検査は、臨床検査機関において、または患者の近くにあるポイント・オブ・ケアで行うことができる。ポイント・オブ・ケアの血液検査の一例は、患者の血糖値の規則的な検査であり、フィンガー・スティックを介した血液の引き抜きおよび診断用カートリッジへの血液の機械的な採取が含まれる。その後、診断用カートリッジは、血液試料を分析し、患者の血糖値を読み取り、臨床医に提供する。血液ガス電解質レベル、リチウムレベル、イオン化カルシウムレベルを分析する他の装置も入手できる。他のいくつかのポイント・オブ・ケア装置は急性冠症候群(ACS)および深部静脈血栓症/肺塞栓症(DVT/PE)のためのマーカーを特定する。
【0004】
ポイント・オブ・ケア検査や診断の急速な進歩にもかかわらず、血液サンプリング技術は比較的かわっていない。血液試料は、しばしば、カテーテルアセンブリまたは針の近位端に取り付けられた真空チューブまたは皮下注射針を使用して抜き取られる。いくつかの例において、臨床医は、挿入されたカテーテルを介して患者から血液を採取するために、カテーテル内に挿入された針と注射器を用い、カテーテルアセンブリから血液を集める。これらの手順は、一般的に、試験に先立って採取した血液試料が引き抜かれる中間装置としての針や真空チューブを利用する。よって、これらの手順は、血液試料を取得、準備および検査する過程で複数の装置を利用する集約的な手法である。それぞれ追加の装置は、検査過程の時間と費用を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポイント・オブ・ケア検査装置は、分析のために研究所に血液試料を送ることなく、血液試料の試験を可能にする。したがって、ポイント・オブ・ケア検査システムでは、簡単、安全、再現性、そして正確な過程を提供する装置を生成するこが望ましいのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、細胞部分と血漿部分を有する多成分血液試料を受けとることに適合する血液採取装置のような、体液採取装置を提供する。血液試料を採取した後、体液採取装置は、細胞部分から血漿部分を分離することができる。分離後、体液採取装置はポイント・オブ・ケア検査装置に血液試料の血漿部分を移送することができる。本開示の体液採取装置はまた、閉鎖サンプリングおよび搬送システムを提供し、血液試料の曝露を減少させ、試料安定剤または防腐剤を血液試料との迅速な混合を提供する。試料安定剤または防腐剤は、抗凝固剤または他の要素などの血液中の特定の要素を保持するような物質、例えば、RNA、たんぱく質分析物など、でも可能である。体液採取装置は、血液検査装置などの、体液採取装置から体液検査装置へ血漿部分の閉鎖移送のために、体液検査装置と係合可能である。体液検査装置は、血液試料を分析および検査結果を取得し、血漿部分を受け取るために適合している。
【0007】
従来のシステムに対する本開示の体液採取装置および体液分離検査システムのいくつかの利点は次のようなものである。すなわち、血液試料の曝露を減少させる閉鎖系であるため、試料安定剤と血液試料との受動的かつ迅速に混合が提供されること、別体の装置へ血液試料を移送することなく、血液試料の分離が促進されること、および、ポイント・オブ・ケア検査装置に純粋な血漿を移送すること、である。本開示の体液採取装置は、遠心分離を行うことなく、閉鎖系において血液採取および血漿の生成との統合を可能にするのである。臨床医は、血液試料を採取および分離した後、さらなる操作を要することなく、ポイント・オブ・ケア検査装置に血漿部分を移送することができる。これは、血液に曝露を生じることなく、ポイント・オブ・ケア検査装置に血漿を採取および転送することを可能にする。また、本開示の体液採取装置は、外部機械なしで、体液採取装置内で血液を処理することによって、処理時間を最小化する。さらに、少量の血液を必要とするのみの検査であるために、採血および血漿分離を排気チューブに関係付けた廃棄を不要とする。
【0008】
本開示の実施形態によれば、多成分試料を受け取り適合した体液採取装置は、第1チャンバー入口と第1チャンバー出口を有している第1チャンバーと、第2チャンバー入口を有している第2チャンバーを画成するハウジングを含んでいる。ハウジングはまた、第1チャンバー出口と第2チャンバー入口との間に配置された分離部材を含んでいる。第1チャンバー出口は分離部材を介して第2チャンバー入口と連通し、第1チャンバーは多成分血液試料を受け取り適合する。装置はまた、第2チャンバーと関連付けられた作動部材を含んでいる。第1の方向への作動部材の動作は、第1チャンバーから分離部材を通り、第2チャンバーへ多成分血液試料の成分を引き寄せる。
【0009】
分離部材は、分離部材を通過し第2チャンバーに成分を許容するのに適合している。その成分は血漿成分でよい。その装置はまた、第1チャンバーの第1チャンバー入口を密閉するハウジングと係合する隔壁を有している。その装置はまた、第2チャンバーを密閉するために、第2チャンバーと係合する弁を有している。その弁は、第2チャンバーが完全に密閉された閉位置と第2チャンバーが開放された開位置との間に、遷移可能である。
【0010】
他の構成では、第2チャンバーから検査装置へと、成分の少なくとも一部が閉じた状態で移送されるようにするために、その弁は検査装置の受入口と係合可能である。その成分は血漿成分でよい。その弁はまた、検査装置の受入口との係合を介して、閉位置から開位置に遷移可能であるものとすることができる。検査装置はポイント・オブ・ケア検査装置であってよい。その弁はばね荷重式の分配弁とすることができる。
【0011】
特定の構成では、ハウジングは、それと係合する管状部材を有しているものとすることができる。作動部材は
少なくとも前記作動部材の一部が管状部材内に少なくとも部分的に
配置可能であってよく、ハウジングと係合可能であってよい。管状部材と作動部材は第1チャンバーから第2チャンバー内に少なくとも一部の成分の通過後、ハウジングから着脱可能である。その成分は血漿成分であってよい。その装置は第2チャンバーを密閉するために、第2チャンバーと係合した弁を有することができる。その弁は第2チャンバーが完全に密閉された閉位置と、第2チャンバーが開放された開位置との間で遷移可能であるものとすることができる。閉位置から開位置への遷移は、管状部材と作動部材がハウジングから取り除かれた後に生じ得る。作動部材はプランジャーを有することができる。ハウジングは試料安定剤を含むことができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、血液試料分離と検査システムのような、多成分血液試料のため体液試料分離と検査システムは、血液採取と分離装置のような体液採取と分離装置を有している。体液採取装置と分離装置は、第1チャンバー入口と第1チャンバー出口を有している第1チャンバーと、第2チャンバー入口を有している第2チャンバーを画成しているハウジングを含んでいる。その装置はまた、第1チャンバー出口と第2チャンバー入口との間に配置された分離部材を含んでいる。第1チャンバーは多成分試料を受け取るのに適合している。そのシステムはまた、第2チャンバーを密閉するために第2チャンバーと係合した弁を含んでいる。その弁は、第2チャンバーが完全に密閉された閉位置と、第2チャンバーが開放される開位置との間に遷移可能である。そのシステムはまた、体液採取分離装置の弁と係合するのに適合した受入口を有している検査装置を含んでいる。その弁は、受入口が弁と係合したときに、閉位置から開位置に遷移可能であるものとすることができる。
【0013】
特定の構成では、ハウジングは、それと取り外し可能に係合する管状部材を含み、ハウジングから取り外された後、閉位置から開位置への弁の遷移が生じる。分離部材は多成分血液試料の成分が分離部材を通して第2チャンバーに通過することを可能にするように適合することができる。その成分は、血漿成分であってよい。必要に応じて、体液試料分離検査システムは、第1チャンバーの第1チャンバー入口を密閉するハウジングと係合された隔壁を含むことができる。第2チャンバーから検査装置へと、成分の少なくとも一部が閉じた状態で移送するために、その弁は、検査装置の受入口と係合可能であってよい。その成分は、血漿成分であってよく、その弁は、ばね荷重式の分配弁であってよい。
【0014】
ハウジングは、第1チャンバーから第2チャンバー内に多成分血液試料の成分の少なくとも一部が通過した後に、ハウジングから取り外し可能である管状部材を含むことができる。その成分は、血漿成分であってよい。そのシステムはまた、ハウジングと関連付けられた作動部材を含むことができる。作動部材の第1の方向への動作よって、その成分が、第1チャンバーから分離部材を通り第2チャンバーへと引き出され得る。その成分は、血漿成分であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による体液採取装置の分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による体液採取装置の斜視図であり、作動部材が第1位置にある状態を示している。
【
図3】本発明の実施形態による体液採取装置の斜視図であり、体液採取装置と非患者針とのインタフェース状態を示している。
【
図4】本発明の実施形態による体液採取装置の斜視図であり、作動部材が第2位置にある状態を示している。
【
図5】本発明の実施形態による管ホルダに係合した体液採取装置の断面図である。
【
図6】本発明の実施形態による
図5の体液採取装置の分離部材の断面図であり、分離部材が血液試料の細胞部分から血漿部分を分離する状態を示している。
【
図7】本発明の実施形態による体液採取装置とポイント・オブ・ケア検査装置の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態による体液採取装置の弁の断面図であり、弁が閉位置にある状態を示している。
【
図9】本発明の実施形態による体液採取装置の弁の断面図であり、弁が開位置にある状態を示している。
【
図10】本発明の別実施形態による体液採取装置の弁の斜視図である。
【
図11】本発明の別実施形態による体液採取装置の弁の断面図であり、弁が閉位置にある状態を示している。
【
図12】本発明の別実施形態による体液採取装置の弁の断面図であり、弁が開位置にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対応する参照文字は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書中に記載の例示は、本発明の例示的な実施形態を示し、このような例示は、いかなる方法においても、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【0017】
以下の説明は、当業者が、発明を実施することを意図して記載された実施形態を作製し使用することを可能にするために提供されるものである。しかしながら、様々な修正物、等価物、変形物、および代替物が、当業者には明らかに容易であろう。このようなありとあらゆる修正物、変形物、等価物、および代替物を、本発明の精神および範囲内に入ることが意図される。
【0018】
以下の説明の目的のために、用語「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「底部」、「横」、「縦」、および、その派生語は、図面内の向きとして本発明に関連付けられている。しかしながら、本発明は、明白に反対のことを特定した場合を除いて、代替的な変形および工程手順をとり得ることを理解するべきである。以下の明細書の添付図面に示され、説明された特定の装置と過程は、単に本発明の例示的な実施形態であることを、理解するべきである。したがって、本明細書に開示された実施形態に関連する特定の寸法と他の物理的特性は、限定的なものとして考慮されるべきではない。
【0019】
様々なポイント・オブ・ケア検査装置は、当該技術分野で知られているものである。このようなポイント・オブ・ケア検査装置は、検査ストリップ、ガラススライド、診断用カートリッジ、または検査と分析のための他の検査デバイスを含むものである。検査ストリップ、ガラススライド、および診断カートリッジは、血液試料を受け取り、ひとつ以上の生理学的および生化学的状態のためにその血液を検査する、ポイント・オブ・ケア検査装置である。分析のために研究所へ試料を送る必要なしに、ベッドサイドで非常に少量の血液を分析するために、カートリッジベース構造を使用する多くのポイント・オブ・ケア装置がある。これは、長い目で見れば時間を節約するものではあるが、非常に規則的な研究所環境に対して一組の異なる課題を生成する。このような検査カートリッジの例としては、Abbot group of companiesが提供するI−STAT(登録商標)検査カートリッジが含む。このようなI−STAT(登録商標)カートリッジなどの検査カートリッジは、化学物質や電解質、血液学、血液ガス濃度、凝固、または心臓マーカーの存在を含む種々の状態を検査するために使用することができる。そのようなカートリッジを用いた試験結果は、臨床医に迅速に提供される。
【0020】
しかしながら、そのようなポイント・オブ・ケア検査カートリッジに提供されている試料は、現在マニュアルでオープンシステムに採取され、マニュアルの態様でポイント・オブ・ケア検査装置に移送されており、これはしばしば一貫性のない結果をもたらすので、ポイント・オブ・ケア装置の利点を阻害することにつながる。したがって、ポイント・オブ・ケア検査装置に試料を移送するシステムには、より安全で、再現性があり、より正確な結果を提供する必要性が存在しているのである。したがって、本開示のポイント・オブ・ケア採取および移送システムについて説明する。本発明のシステムは、1)より閉鎖型のサンプリングおよび移送システムを組み込むこと、2)試料の開放曝露を最小限に抑えること、3)試料の品質を向上させること、4)使用の全体的な使いやすさを向上させること、および5)採取の時点で試料を分離すること、によって、ポイント・オブ・ケア検査装置の信頼性を向上させるのである。
【0021】
ここで、
図1〜
図12を参照すると、本発明の実施形態にしたがった、血液採取装置のような体液採取装置が図示されており、これは10で示されている。血液採取装置10は、多成分血液試料12を採取して、分離し、ポイント・オブ・ケア検査装置に試料の一部を供給するように構成されている。具体的には、血液採取装置10は、第1部分すなわち細胞部分14と、第2部分すなわち血漿部分16を有する多成分血液試料12を受容するのに適合している。血液試料12を採取したのち、血液採取装置10は、細胞部分14から血漿部分16を分離することができる。分離後、血液採取装置10は、
図7〜
図9と
図12に示すように、ポイント・オブ・ケア検査装置22に血液試料12の血漿部分16を移送することができる。本開示の血液採取装置10はまた、
図6に示されるように、閉鎖分離システムを提供しており、これは血液試料の曝露を減少させるとともに、試料安定剤または防腐剤18と血液試料の迅速な混合を提供する。
【0022】
試料安定剤または防腐剤18は、抗凝固剤または、物質の任意の一つ以上を含むことができることを理解される。それは当技術分野で周知のように、例えばRNA、たんぱく質分析物およびその他の血液試料内の特定の要素を保持するために使用することができる。
【0023】
特に、
図7を参照すると、全体的に20で示された本開示の血液分離および検査システムなどの体液分離および検査システムの例示的な実施形態が示されており、これは、血液採取装置10と、その血液採取装置10と係合可能な血液検査装置22すなわちポイント・オブ・ケア検査装置とを含み、それらの係合によって、血漿部16の一部は、血液採取装置10から血液検査装置22へと、閉じた状態で移送される。血液検査装置22は、血漿部16を受け取って、血液試料の分析および検査結果を得るのに適合している。
【0024】
特に
図1〜
図6を参照すると、体液または血液採取装置10が示され、これは、細胞部分14と血漿部分16を有する多成分血液試料12を受け取るために適合している。血液採取装置10はハウジング30を含み、ハウジング30は、第1チャンバー入口42および第1チャンバー出口44を有する第1チャンバー40
と、第2チャンバー入口52および第2チャンバー出口54を有する第2チャンバー50と、を画成している。ハウジング30は、フィルタ60などの分離部材をさらに含み、これが、第1チャンバー出口44と第2チャンバー入口5
2との間に配置されることで、第1チャンバー出口44が、フィルタ60を介して第2チャンバー入口52と連通するようにねっている。第1チャンバー40は、多成分血液試料12を受容するのに適合している。作動部材70が第2チャンバー50に組み合わされ、
図4および
図5に示すように、第1方向すなわち近位方向「P」への作動部材
70の作動によって、第1チャンバー40からフィルタ60を介して第2チャンバー50へと血漿部が引かれる。作動部材70はピストン機構すなわちプランジャーの形態であってよく、細胞部分14からの血漿部分16の分離プロセスのための原動力を提供するべく、臨床医が使用することができる。
【0025】
一実施形態によれば、血液採取装置10は、Becton,Dickinson and Companyが製造し、一般的に使用されるVacutainer
TMチューブに類似している外観を有することができる。具体的には、血液採取装置10は全体的に32で示されるキャップ部を含み、これもBecton,Dickinson and Company製のHemogard
TMに類似している外観を有するハウジング30を画成している。ハウジング30は、それに係合する管状部材34を有することができる。一実施形態によれば、管状部材34は、Vacutainer
TMチューブの管状部分と同様の外観を有することができる。
【0026】
図1と
図5に示すように、管状部材34は、着脱自在にハウジング30/キャップ32と係合することができる。一実施形態によれば、第1ねじ接続部38は、管状部材34と、ハウジング30を画成しているキャップ32との間に設けることができる。作動部材70は、管状部材34内に少なくとも部分的に配置することができ、第2ねじ接続部39によって、作動部材70が着脱可能にハウジング30/キャップ32と係合することができる。作動部材70は、ハウジング30/キャップ32内に位置する弁80またはピストン構成に螺着させることができる一方で、管状部材34は、キャップ32の本体に螺着させることができる。第1ねじ接続部38および第2ねじ接続部39は、第1のチャンバー40から第2チャンバー50内へと血漿部分16の少なくとも一部が通過した後、管状部材34および作動部材70をハウジング30/キャップ32から除去することを可能にする。
【0027】
図1〜
図5を続けて参照すると、装置10のキャップ32は、Hemoguard
TM栓に類似するゴム栓36または隔壁を含み、これはハウジング30に係合しえ第1チャンバー40の第1チャンバー入口42を密閉する細胞部分14から血漿部分16を分離するためのハウジング30は、栓36の下に位置し、種々可能なろ過技術のひとつを採用して多成分血液試料12の細胞部分14から血漿部分16を分離している。
【0028】
図3で示されているように、血液採取装置10は、Vacutainer
TMチューブと同じ寸法を有するゴム栓36を有しているので、血液採取装置10は、全体的に90で示される任意の標準的な非患者(NP)針型インタフェースと同様のインタフェースであり得る。NP針インタフェースの例は管ホルダ92であって、フィンガーグリップルアーデバイス(FGLA)が取り付けられたり、ルアーロックアクセスデバイス(LLAD)が取り付けられたり、あるいはブレッドトランスファーデバイス(BTD)が取り付けられたりしているものである。これら全ては、当技術分野で知られており、折り畳み式(collapsible)のゴムスリーブで覆われた針を有する標準NP針インタフェースがある。NP針インタフェースは、全体的に94で示された標準的な針アセンブリ/採血セットに取り付けることができる。
【0029】
特に
図6を参照すると、一設計によれば、フィルタ60は、第1チャンバー40の中に細胞部分14を閉じ込め、第2チャンバー50にフィルタ60を通過する血漿部分16を入れるのに適合している。フィルタ60は、市販の中空繊維膜ろ過器または、市販のトラック−エッヂ(track-edge)フィルタのような平膜ろ過器のいずれであってもよい。膜ろ過器のポアサイズと気孔率は、効率的な方法でクリーンな(すなわち、赤血球細胞がなく、白血球細胞がなく、および遊離血小板がない)血漿16の分離を最適化するために選択することができる。別の実施形態では、フィルタ60は、側方流動膜を含むことができる。他の実施形態では、フィルタ60は、第1チャンバー40内の血液試料12の細胞部分14を閉じ込めることができ、且つ血液試料12の血漿部分16にフィルタ60の通過を許容して第2チャンバー50に入れる任意のフィルタを含むことができる。
【0030】
続けて
図5〜
図6と
図8〜
図9、および
図11〜
図12を参照すると、分配弁80、80a、80bは、第2チャンバー50と係合して第2チャンバー出口54を密閉している。分配弁80、80a、80bは、
図8および
図11に示されるように第2チャンバー50が完全に密閉される閉位置と、
図9および
図12に示されるように第2チャンバー50が開放された開位置との間で遷移可能である。
【0031】
図7〜
図9および
図12に示すように、分配弁80、80a、80bがポイント・オブ・ケア検査装置22などの検査装置の受入口24に係合すると、第2チャンバー50から検査装置22への、少なくとも血漿部16の一部の閉じた状態での移送が生じる。具体的には、分配弁80、80a、80bは、検査装置22の受入口との係合を介して、開位置から閉位置に遷移するように構成することができるのである。管状部材34と作動部材70がハウジング30から取り除かれたのち、閉位置から開位置への、この遷移が発生する。
【0032】
一実施形態によれば、
図8〜
図9に示すように、分配弁80aは、キャップ32が遠位方向「D」に押されたとき、血漿部分16がポイント・オブ・ケア検査装置22に分配される設計を有する自在送出弁(universal delivery valve)とすることができる。キャップに遠位方向力「D」を加えることによって、針カニューレ82などの移送装置がハウジングの第2チャンバー50を密封する密封部材84を貫通し、これを通って血漿部分が検査装置22に流入することができる。
【0033】
他の設計によれば、
図10〜
図12に示すように、分配弁80bは、シュレッダー型弁と同様であっても良く、または、キャップ32に、遠位方向「D」に力が加わったときに、血漿がポイント・オブ・ケア検査装置内に分配されるいくつかの設計であっても良いのである。分配弁80bがばね88によって付勢される弁棒86を含むことで、キャップ32に対する遠位方向「D」の力の作用によって、ポイント・オブ・ケア検査装置の受入口24に接触するように、弁棒の端86aの接触が生じる。この力が、弁棒86に作用する圧縮力「C」をもたらすことで、ばね88が圧縮され、
図12に示すように分配弁80bの弁キャップ86bが第2チャンバー50に入り込むことで、血漿部分16がポイント・オブ・ケア検査装置22の受入口24を通って流れ込むことが可能となる。
【0034】
体液採取装置10のハウジング30は、安定剤または防腐剤18を含むことができる。試料安定剤18は、抗凝固剤または、例えばRNA、たんぱく質分析物またはその他の要素などの血液中の特定の要素を保持するように設計された物質である。一実施形態では、試料安定剤の層は第1チャンバー40の壁部分に隣接して、または第1チャンバー入口42内に、配置することができる。他の実施形態では、試料安定剤18は、フィルタ60、または生体試料に接触する血液採取装置10の他の領域に隣接して配置することができる。
【0035】
図3〜
図4を参照すると、装置10の動作は次のようなものである。すなわち、1)最初に、針/ハブ型またはウイングセット型が選択された血液採取セット94が、上述NP針インタフェース90に取り付けられる;2)次に、患者には、血液採取セット94の針96が刺される;3)Vacutainer
TMチューブのような真空チューブを使用する代わりに、本発明の体液採取装置10がホルダ92に挿入され、NP針インタフェース90と接触するようにされる。少量の血液が患者から装置10のハウジング30の第1チャンバー40内へと引き出される;4)その後、装置10は、ホルダ92から取り外される;5)次に、臨床医は、
図4が示すように、管状部材34の端部34aを通って延在している作動部材/プランジャロッド70を引っ張るか、近位力「P」を適用する。この動作によって、第1チャンバー40と第2チャンバー50との間に配設されたフィルタ60を通って多成分血液試料が引かれ、血漿部分16が分離されて、第2チャンバー50内に引き込まれる。6)次に、臨床医は、作動部分/プランジャロッド70をねじることでそこから管状部分34を外し、管状部材34から装置10のキャップ32を分離する。7)最後に、臨床医はキャップ32を使用し、ポイント・オブ・ケア検査装置22のポートまたはウェル24を分配弁80に整列させ、1回以上遠位方向にキャップ部分32を押すことで弁を開放し、第2チャンバー出口54を通して、検査装置22内へと血漿部分16を供給する。
【0036】
従来のシステムに対する本開示の血液採取装置と血液分離および検査システムの利点のいくつかは次のようなものである。すなわち、血液試料曝露を減らす閉鎖系であるため、試料安定剤と血液試料との受動的かつ迅速な混合が提供されること、別体の装置へ血液試料を移送することなく、血液試料の分離が促進されること、および、ポイント・オブ・ケア検査装置に純粋な血漿を移送することができること、である。本開示の採血装置は、遠心分離を行うことなく、閉鎖系において血液採取と血漿の生成との統合を可能にするのである。臨床医は、血液試料を採取および分離した後、さらなる操作を要することなく、ポイント・オブ・ケア検査装置に血漿部分を移送することができる。これは、血液曝露を生じることなく、ポイント・オブ・ケア検査装置に血漿を採取および移送することを可能にする。また、本開示の血液採取装置は、外部機械なしで、血液採取装置内で血液を処理することによって、処理時間を最小化する。さらに、少量の血液を必要とするのみの検査であるために、採血および血漿分離を排気チューブに関係付けた廃棄を不要とする。
【0037】
例示的な設計を有するものとして本開示を説明してきたが、さらに本発明は、本発明の精神および範囲内で変更することができる。したがって本出願は、一般原則を使用した、本発明の任意の変更、用途または適応をカバーすることを意図している。さらに、本出願は、当技術分野で公知または慣行の範囲に入り、および添付の請求の範囲の限定に入るような本開示から発展をカバーすることを意図している。