(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367931
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】密封部材を用いた可溶性製品のカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20180723BHJP
A47J 31/36 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A47J31/06 323
A47J31/36 122
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-518887(P2016-518887)
(86)(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公表番号】特表2016-526960(P2016-526960A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014059673
(87)【国際公開番号】WO2014198474
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】MI2013A000975
(32)【優先日】2013年6月13日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508218822
【氏名又は名称】ゴグリオ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】GOGLIO S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ラ ガンバ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ガルバジーニ
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−515601(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/050820(WO,A1)
【文献】
特表2013−511308(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/053655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された水またはその他の抽出流体によって飲料を生成する装置に挿入されることに適した、コーヒーまたは一般の可溶性製品を封じ込めるカートリッジ(1)であって、
水の入力および上記カートリッジからの飲料の出力のそれぞれのための対向する容器本体の基部(11,12)において、密封された容器本体(10)と、
上記飲料の出力のための上記基部(12)の端部に位置する環状フランジ(20)と、
上記環状フランジ(20)と一体化して形成された密封部材(30)と、を備え、
上記密封部材は、U字形の環状シート(31)を含み、
上記環状シート(31)は、上記カートリッジから上記飲料を出力する方向に開口し、上記環状フランジ(20)の残りの部分よりも厚さが薄い基部壁(32)によって上記基部において区切られており、
上記環状シートは、飲料を生成する上記装置の機械的動作中に塑性変形し、当該装置の接触面の凹凸(43,44)に完全に付着し、密封したシールを保証し、
上記環状シート(31)は、上記容器本体(10)に隣接して配置され、
上記環状シート(31)は、当該環状シート(31)の上記基部壁(32)が、上記環状フランジ(20)の端部(21)に比べてより高く、かつ、より内側に位置するように形づくられていることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
上記密封部材の上記基部壁(32)の厚さ(s)は、上記環状シート(31)の深さ(h)の1/8から1/6まで変化することを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
上記基部壁(32)の厚さ(s)は、0.1mmから0.8mmまで変化することを特徴とする請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
上記密封部材(30)は、飲料生成装置の密封された連結端(42)に存在し得る上記凹凸(43,44)を埋め合わせることに適しており、
上記凹凸(43,44)は、上記カートリッジ(1)の上記密封部材(30)と協同して機能することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
上記密封部材(30)の上記基部壁(32)は、飲料抽出過程の間、上記飲料生成装置の接触面の上記凹凸(43,44)を覆うとともに埋めるように塑性変形することに適していることを特徴とする請求項4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
上記密封部材(30)は、PP、共押出PP/EVOH/PP、PET、PBT、PLA、アルミニウム等から成ることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のカートリッジ(1)と、
上記カートリッジ(1)の上記容器本体(10)を支持することに適し、かつ、上記カートリッジ(1)の密封部材(30)と協同して機能する上記凹凸(43,44)を備えた自由端(42)を有しているベル形状部材(40)を含む飲料抽出装置と、を備えていることを特徴とする飲料生成システム。
【請求項8】
上記凹凸(43)は、上記密封部材(30)と接触する放射状のチャネルを規定するトラフであることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の目的物は、加圧された温水に抽出可能な製品もしくは加圧された温水に可溶性製品、または飲料を調製する他の抽出流体である製品を封じ込めるためのカートリッジ、カプセル、またはポッドであり、例えば、当該製品は、コーヒー、大麦、粉ミルク等の顆粒状または粉末状製品、または、紅茶、カモミール、煎じ出した液等の茶葉製品である。さらに、特に、本発明は、密封部材が設けられる上記カートリッジに関連している。
【0002】
下記では、特定の参照例として、コーヒー粉末を封じ込めているカートリッジについて説明するが、当該カートリッジは、飲料調整を目的として他の可溶性製品を封じ込めることに使用され得るという事実を否定するものではない。
【0003】
上記カートリッジは、例えば、本願の出願人と同一の出願人名義の特許出願PCT/EP2012/069794において説明されている。
【0004】
飲料を調製するために、粉末または顆粒状態の可溶性製品で満たされたカートリッジは、飲料を抽出する装置の特定の室内に挿入され、当該装置内に加圧された温水が注入される。当該温水は、入力側からカートリッジに入り、カートリッジに封じ込められた製品を通過し、飲料を生成するための方法で香りを保持し、カートリッジの出力側から出る。
【0005】
流体についてカートリッジを通過させる種々のシステムがある。例えば、上述の出願PCT/EP2012/069794の目的物であるカートリッジの例では、カートリッジの入力側および/または出力側での機械的手段を用いた調製、または流体の圧力の増加の後でこれらの側に配置された膜の破損を用いた調製が提供されている。ただし、飲料を抽出する上記特定のシステムは、本発明の目的物を構成するものではない。
【0006】
通常、このようなカートリッジは、飲料の出力側にある周縁フランジとともに、カップおよび対向板を有している。上記カップは、円柱形状または先が切り捨てられた円錐形状である。上記周縁フランジは、抽出室のベル形状の部材間に固定されることに適し、カートリッジ本体を支持することに適している。
【0007】
カートリッジの上記周縁フランジにおける抽出室の封止は、カートリッジの外部に液体が流れ出ることと、その結果として生じる抽出室およびカートリッジの内部圧力の減少とを避けるために、完全に堅固でなければならない。このことは、生成された飲料(特にコーヒー)の品質において影響する。
【0008】
しかしながら、抽出装置のライフサイクルの間の使用の結果、ベル形状部材の端に凹凸が生じることがある。また、抽出装置からのカートリッジの取り出しを容易にするために、および/または、カートリッジの周縁フランジ上にて力を分散させることを向上させるために、および抽出室の封止に必要な力を減らすために、ベル形状部材の端に凹凸が意図的に備えられることがある。このようにベル形状部材の端に凹凸が存在することにより、上述した不利益をもたらす流体の漏れが発生し得る。
【0009】
WO2010/084475A2では、可溶性製品(特にコーヒー)を封じ込めるカートリッジについて言及されており、飲料を抽出する時間中にカートリッジのハウジング本体の終端と対照板との間に配置されることに適した端部フランジについて種々の構成が記載されている。上記フランジの上面は、端部フランジ内のハウジング本体の終端における突出を容易にするために、カートリッジの側壁に対して90°よりも小さい角度で傾斜している。いくつかの実施形態では、端部フランジは可変の厚さを有しているが、常に、上記対照板に対して逆さまである、実質的に平らな表面(または窪みのない場合において)を有している。
【0010】
WO2012/118367A1では、飲料を調製する装置に使用するためのカプセルについて記載されている。カプセルは、当該カプセルを封じ込めるための本体の端と、上記装置の対向板との間に配置されることに適した端部フランジを有する。上記フランジには、少なくとも1つの波状起伏を有する密封部材が、端部フランジとともに塞がれた対応するキャビティを形成するように、溶接、接着または他の取付手段によって取り付けられている。上記密封部材は、上記対向板に対して逆さまになっている平らな表面を有する。端部フランジから分離した密封部材を備えることにより、カプセルを製造する処理がより複雑かつ高価となり、カプセルの信頼性に影響を及ぼす。
【0011】
したがって、本発明の目的は、上述の不利益を排除することであり、抽出室のベル形状の部材の端に偶然生じる凹凸または意図的に備えられた凹凸は別として、飲料の調製中に、抽出室内から流体が漏れないことを保証するカートリッジを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、信頼性が高く、製造するのに単純かつ経済的な、密封部材を含んだカートリッジを提供することである。
【0013】
上述の目的は、本発明に係る、密封部材を含んだカートリッジ、すなわち独立請求項1の構成を有するカートリッジによって達成される。
【0014】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項の対象物を構成する。本質的には、本発明に係るカートリッジは、飲料を調製する抽出装置内に挿入されるために設計され、飲料の出力側に配置された周縁フランジを備えた円柱形状のまたは先が切り捨てられた円錐形状のカップを有し、当該フランジに配置された密封部材が設けられる。密封部材は、カートリッジから飲料が出力する方向に開口した環状シートによって構成される。これにより、環状シートは、抽出室を塞ぐ機械的動作中に変形でき、上記フランジの残りの部分よりも厚さが薄い壁によって基部において区切られ、抽出室は上記凹凸に完全に付着し、凹凸は密封したシールを保証することが可能となる。
【0015】
上記の環状密封シートは、カートリッジと合わせて単体として生成される。環状密封シートは、PP、共押出PP/EVOH/PP、アルミニウム、PET、PBT、PLA、または同様の材料から生成されることが可能である。上記基部壁は、0.1mmから0.8mmまでの厚さとして構成される厚さを有する。
【0016】
水圧シールは、弾性の効果および塑性変形の実現性によって、密封部材の上記の基部壁によって形成される。基部壁は、表面のキャビティまたは種々のタイプの欠陥部と接触する面の全ての凹凸(溝や起伏等)を覆うとともに埋めるものである。
【0017】
密封能力は、硬質なガスケットとして動作する密封シートに印加される圧縮力により影響される。印加される力が大きくなるほど、生じる変形は大きくなるとともに、密封シート材料の能力が向上する。これにより、接触面の凹凸を埋めることが可能となる。
【0018】
上記圧縮力を用いることで、密封シートの基部壁の厚さを減らすことにより設計段階においてより強力な密封性が生じ得、基部壁自体によって柔軟性および塑性変形の実現性が増加する。
【0019】
温度は、密封シートの柔軟性および変形性において基本的な役割を担うということは、留意されるべきである。事実、高温の流体(水)の一部は、抽出室の構成に起因して、カートリッジに入らない一方で、外部表面に流れ出る。これにより、密封シートの基部壁が可塑化する現象が促進され、上記効果が向上する。
【0020】
本発明のさらなる構成は、後述する詳細な説明によってより明確となるであろう。この詳細な説明は、添付の図面に示した代表的な実施形態に、単に制限することに言及されない。
【0021】
図1は、本発明に係るカートリッジの側面の概要を示す斜視図である。
【0022】
図2は、飲料を生成する装置の抽出室に挿入された
図1のカートリッジの一部分を切断した断面図を含む、抽出室を完全に塞ぐ前の側面図である。
【0023】
図3は、
図2におけるAの詳細を示す拡大図である。
【0024】
図4は、
図3の詳細について抽出室が完全に塞がれた状態を示す仮想図である。
【0025】
図5および6は、それぞれ、
図3の平面V−Vに沿って切った略断面図、および
図4の平面VI−VIに沿って切った略断面図である。
【0026】
添付の図面を参照すると、まず、特に
図1において、本発明に係るカートリッジまたはカプセルは、コーヒーまたは一般の可溶性製品を封じ込めるものであり、その全体が参照番号1によって示されている。カートリッジ1は、カップ形状の容器本体10を含んでいる。特に、容器本体10は、
図1の例では、先が切り捨てられた円錐形状である。また、容器本体10は、
図1の上方に配置されている小さい基部11と、
図1の下方に配置された大きい基部12とを有する。
【0027】
上記基部11および12は、飲料が調製される間に流体が通過するのに適し、機械的な手段または動作流体の圧力によって貫通され得る。
【0028】
上述した特許出願PCT/EP2012/069794によると、基部11および12は、容器本体10を密封して塞ぐ膜によって、少なくとも一部分が構成される。
【0029】
カートリッジ1が、飲料を抽出する装置に挿入されると、
図2にて概略的に示すように、小さい基部11は水の入力側を構成し、大きい基部12は飲料の出力側を構成する。
【0030】
もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、水の入力側および飲料の出力側は、図示されている構成に対して反転することも可能であり、同様に、抽出装置は、
図2に示すように垂直軸に関して、または水平軸に関して反転することも可能である。
【0031】
図1に示すように、カートリッジは、さらに、飲料の出力側に、外側が環状である周縁フランジ20を備える。当該周縁フランジ20は、便利となるように、容器本体10に一体化して形成される。
【0032】
また、周縁フランジ20には、以下に詳細に説明するように、密封部材30が設けられている。添付図面に示すように、密封部材30は、周縁フランジ20に一体化して形成されている。
【0033】
本発明によると、密封部材30には、環状シート31が設けられている。当該環状シート31は、カートリッジから飲料を出力する方向に開口しており、かつ、フランジ20側の残りの部分の厚さよりも薄い厚さの基部壁32を有している。
【0034】
より具体的には、環状シート31は、容器本体10に隣接して配置されている。そして、環状シート31は、容器本体10の上記基部壁32がフランジ20の端部21に対してより高く(すなわち、より内側に)位置するように形づくられている。
【0035】
便利なことに、この基部壁32の厚さは、0.1mmから0.8mmまでの間で変化する。また、以下に説明するように、基部壁32の厚さにより、基部壁32には、形成された対照的なパンチの機械的な動作の下で、一定の弾性および塑性変形性が生じる。
【0036】
周縁フランジ20および容器本体10に一体化して形成された薄い壁32は、PP、PET、PBT、PLA、もしくはその他のものの鋳造によって、または共押出PP/EVOH/PPの熱成形、もしくは共押出による他の構成によって得ることができる。
【0037】
図2は、飲料を抽出する装置に挿入されたカートリッジ1を概略的に示し、当該装置について必須の部材、特に、ベル形状の部材すなわち対照的なパンチ40および対向板50が概略的に示されている。
【0038】
ベル形状の部材40は内部室41を有し、内部室41にはカートリッジ1の容器本体10が収容される。一方、周縁フランジ20、特に密封部材30は、部材40の自由端42に接する。
【0039】
図2におけるこの端42は、トラフ43および突起44を交互に有するように、端42の全体にわたって波状に展開して示されている。なお、トラフ43および突起44は、ベル形状の部材40の端42の周縁の一部のみを含むことも可能であり、意図的または意図していない凹凸を構成することも可能である。
【0040】
ベル形状の部材40の上部すなわち裏壁45は、中央孔46を有している。中央孔46は、飲料を生成するための抽出室41内に加圧された流体を送り込むためのものであり、この後、流体(水)が、カートリッジ1に封じ込められた製品を通過する。
【0041】
飲料を生成する処理については、公知であると考えられるためこれ以上説明しない。
【0042】
飲料が生成される間、抽出室41に入った加圧された水は、カートリッジの容器本体10の外壁とベル形状の部材40の内壁との間に形成される隙間47(添付図面では意図的に誇張して示している)にも流れる。そして、隙間47は、上記にて説明した不利益による外部への漏れを引き起こし得る。密封は、周縁フランジ20上で実行されるべきではない。
【0043】
本発明によると、カートリッジの周縁フランジ20上に備えられた密封部材30は、
図3から
図6に示す拡大図から明らかに理解され得るように、実際は、飲料抽出処理の間、流体が外部に漏れることを避けるという目的を有している。
【0044】
図3および
図5は、ベル形状の部材40が対向板50に完全に近づく前の、カートリッジ1の密封部材30によって支えられているベル形状の部材40の他の端42に直交した2つの断面図である。この状態において、加圧された流体は、密封シート31の基部壁32とベル形状の部材40の端42との間に形成され得る放射状のチャネルから流出する傾向にある。
【0045】
しかしながら、
図4および
図6に示すように、ベル形状の部材40が、圧力によって対向板50に対して押しつけられる場合、密封シート31の基部壁32に生じる弾性は、基部壁32が変形し、完全な密封を実現するトラフ43またはベル形状の部材40の下部の端42にある他の凹凸を覆うとともに満たすことを意味する。
【0046】
上述のように、完全な密封を可能にする基部壁32の変形は、基部壁32の厚さを減少されたこと、およびカプセルの外側の表面を流れる高温の温度の流体が存在することにより、実現される。
【0047】
一例において、密封部材30の基部壁32の厚さsは0.2mmである一方、密封シート31の高さhは1.55mmである。
【0048】
もちろん、本発明は、上述した特定の実施形態および添付図面に示した特定の実施形態に限定されない。また、当業者の創作の範囲内において、添付の特許請求の範囲内で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、この実施形態の細部を変形した多くの変形例が作られてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明に係るカートリッジの側面の概要を示す斜視図である。
【
図2】飲料を生成する装置の抽出室に挿入された
図1のカートリッジの一部分を切断した断面図を含む、抽出室を完全に塞ぐ前の側面図である。
【
図4】
図3の詳細について抽出室が完全に塞がれた状態を示す仮想図である。
【
図5】
図3の平面V−Vに沿って切った略断面図である。
【
図6】
図4の平面VI−VIに沿って切った略断面図である。