(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367942
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】測光アッセイのプロゾーン効果の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
G01N33/53 Z
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-533925(P2016-533925)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2016-530514(P2016-530514A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2014067443
(87)【国際公開番号】WO2015022406
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】13180560.8
(32)【優先日】2013年8月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】エベリナ ヘーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク クルツ
(72)【発明者】
【氏名】エロイーザ ロペス−カル
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ルードル
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−204378(JP,A)
【文献】
特開平06−118083(JP,A)
【文献】
特開平10−282099(JP,A)
【文献】
米国特許第06284472(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測光アッセイによるプロゾーン効果(prozone effect)を示しうる試料中の特定の被検体の量を決定する方法であって、前記特定の被検体が前記被検体と被検体特異的アッセイ試薬の相互作用後の反応混合物の光信号の変化から定量され、以下の工程:
a)測定対象試料の前記特定の被検体に関する少なくとも1つの波長及び反応時間での校正曲線を作成し、測定結果を計測機器プラットフォームのデータ管理システムに保存すること、
b)測定対象試料中の前記特定の被検体に関する前記光信号を、前記被検体の決定に使用される前記波長と、少なくとも完全反応時間(complete reaction time)にわたる前記プロゾーン効果の検出に使用される、前記被検体の前記決定に使用される波長と異なるさらなる特定の波長の差が10nmを超え、その結果、同じ波長が前記被検体の決定及びプロゾーン効果の検出に使用される場合と比較して、フック試料と非フック試料との改善された区分がもたらされる、前記分被検体の前記決定に使用される前記波長と、少なくとも前記プロゾーン効果の検出に使用されるさらなる特定の波長で同時に測定すること、
c)前記プロゾーン効果の検出に使用される波長で得られる前記信号を用いることによって反応速度比R
R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100
式中
時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]
及び
時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]を計算すること、
d)前記計算した比の値Rと予め定められた限界値の比較によってプロゾーン効果が前記試料中に存在するか否か判定すること、
e)前記被検体の前記決定に使用した前記波長で得られた前記光信号と前記校正曲線の比較によって前記特定の被検体の量を定量すること、
を含む方法。
【請求項2】
プロゾーン効果が前記試料中に存在しない場合、前記試料中の前記特定の被検体の決定される量が報告できる結果である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらなる波長が補正/ブランキング目的で随意に使用される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロゾーン効果が存在する場合、希釈された試料の前記測定が自動的に反復される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記被検体の決定に使用される波長及び/又はRの計算に使用される波長及び/又は別の波長で測定されるさらなる信号(複数)が、前記反応速度比Rに基づくフック効果の存在を計算及び判定する前に予め定められた限界値との比較によって評価される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応速度が極めて低い試料をプロゾーンチェック(prozone check)から無視し、そのような試料を直接非フック試料として分類するために、ある時間での信号変化に対する予め定められた限界値が定義される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応速度が極めて高い試料が直ちにフック試料として分類されるか否かを決定するために、予め定められた限界値がある時間での信号変化に対して定義される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応速度が極めて高い試料が前記反応速度比Rの前記計算後にフック試料として分類されるか否かを決定するために、予め定められた限界がある時間での信号変化に対して定義される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応時間、校正点、校正モード、及び前記アッセイタイプを含む特有の測定条件が前記測定プロトコールにさらに適用される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
分析前試料希釈処理を適用すること及び/又は被検体再添加によって前記アッセイ手順を変えることなく前記対応する計測機器プラットフォームで市販の分光学的臨床検査を用いてフック効果が検出できる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
決定される前記被検体がアルブミンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
測光アッセイによってプロゾーン効果を示しうる試料中の前記特定の被検体の量を決定するための市販の分光学的臨床検査を用いる計測機器プラットフォームであって、前記計測機器プラットフォームの前記データ管理システムが、最良適合校正曲線を選択するために、請求項1〜11のいずれか1項に記載の前記方法に記載の、反応時間、校正点、校正モード、波長、血清指標のデータを処理できる計測機器プラットフォーム。
【請求項13】
測定用波長、反応時間、校正モード、校正点の数を含む前記測定結果のさらなる補正を行い、互いに相殺しあう請求項12に記載の計測機器プラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロゾーン効果(prozone effect)が存在するか否かの判定と組み合わせた免疫測光アッセイ、免疫比濁アッセイ、又は免疫比ろう(nephelometric immuno)アッセイによって、試料中の特定の被検体の量を決定する方法に関し、特定の被検体は、被検体と被検体特異的アッセイ試薬との相互作用後の反応混合物の光信号の変化から定量される。
【0002】
ホモジニアス免疫アッセイ(Homogeneous immunoassay)は分離工程及び洗浄工程がない手順を特徴とする。その簡易な1段階手順、コスト対効果、及び速度に起因して、ホモジニアス免疫アッセイは臨床検査室で広く受け入れられ、高度に自動化された臨床化学分析装置での臨床診断に日常的に使用されている。
【0003】
しかし、ホモジニアス免疫アッセイは、高い被検体濃度でのアッセイ応答が減少し、被検体の偽低測定値をもたらす現象である高用量(high-dose)フック効果によって制限される。高用量フック効果はプロゾーン効果又は抗原過剰効果とも呼ばれる。多くの被検体に関してこの効果は報告されており、比濁アッセイ及び比ろうアッセイ並びに他の1段階免疫アッセイに影響を及ぼし、抗体の結合部位を飽和して検出可能な抗体−被検体−抗体複合体の形成を妨げる過剰に高濃度の被検体によって引き起こされる。このように、アッセイ応答は抗原濃度の増加に伴って最初は増加し、次いで臨界濃度値に達した後にアッセイ応答は減少し、釣鐘型曲線、いわゆるハイデルベルガー曲線(Heidelberger curve)を生じる。アッセイの開発者及び製造業者は通常、例えば抗体量を増やすことや分析に要する試料体積量を減らすことによってフック効果を減少させるようにあらゆる努力を払う。結論として、高用量フック効果は1段階免疫アッセイの設計につきものの現象であり、洗浄工程を用いて抗原過剰を排除する2段階アッセイ形式では、高用量フック効果は回避される。また、プロゾーン効果は非抗体に基づく結合剤を使用する他の1段階結合アッセイでも観察されことがある。
【0004】
臨床化学で使用される最新の自動分析装置の大部分には、測定される試料のプロゾーン効果を認識する方法が内蔵されている。試料がプロゾーン効果を示す場合、試料測定結果は分析装置によってフラッグをつけられる。計測機器設定に応じて、そのようなフラッグをつけられた測定結果に対して希釈後の試料の再測定が推奨されるか又は自動的に再測定まで分析装置で行われる。
【背景技術】
【0005】
プロゾーン効果が試料に存在するか否かを判定する方法が幾つかある。
【0006】
試料希釈法は未希釈試料及び希釈後の試料を試験することによってプロゾーン効果の存在を検証する。希釈に関する結果が未希釈試料に関する結果よりも高い場合、未希釈試料はプロゾーン効果を呈する可能性が高い。残念なことには、この方法は労力及び試薬コストを増加させる。
【0007】
抗原再添加法については、さらなる被検体をその測定が完了した後に試料に加え、信号のさらなる変化を解釈する。この方法のプロゾーン効果の検出は正確ではあるけれども、抗原の添加に起因して試薬コストは増加する。くわえて、さらなるピペット操作工程により分析装置上のワークフローが増加し、処理能力の減少につながる。さらに、分析装置上のさらなるスペースが抗原試薬のために必要になる。
【0008】
速度論的方法(kinetic method)は試料測定の間に得られる反応速度データの分析によって抗原過剰の存在を検証する。大抵の場合、反応速度論は被検体濃度に依存する。すなわち低濃度試料は増加する信号を示しうる一方で、高濃度試料は最初にはより急速な信号増加を示し、反応の終わりには大幅に低い信号増加を示しうる。その記述された差を利用してプロゾーン効果の存在を認識できる。
ロシュ社cobas c分析装置に適用されている速度論的方法は反応速度法とも呼ばれる。ここでは、最終試薬の添加後の2つの異なる時間での吸光度の変化の速度が比較される(cobas c操作者マニュアル;cobas c操作者マニュアルトレーニングを参照)。反応終了時の反応速度と反応開始時の反応速度の比は、百分率で表わされ、プロゾーンチェック(prozone check)値PCとして定義される。各アッセイについて、下限と上限の間の範囲として定義され、プロゾーン効果を示す特有のPC範囲がアッセイ設定に保存され、各試料の測定後に得られるPC値と自動的に比較される(「cobas c 311分析装置−COBI CD、背景情報の概要(cobas c 311 Analyzer -COBI CD, Compendium of Background Information)」の
図2、3、及び4を参照)。プロゾーン効果が存在する場合、試料について得られた結果は>Kinとフラッグがつけられる。
【0009】
随意に、最大で2つの異なる限界(
図4の設定の第8及び第9のボックスを参照)は、ロシュ社cobas c分析装置で定義され、試料のプロゾーンチェック値PCを分析する前の進め方を決定する各測定に適用されうる。これらの限界は、ある時間での信号変化を計算することによる被検体の決定に使用される波長で試料から得られる信号の基準値である。これらの限界により、反応速度が極めて低い試料をプロゾーンチェックから無視し、そのような試料を非フック試料として直接分類可能になる。cobas c分析装置で用いられる速度論的方法の欠点は、フック試料と非フック試料の間の区別が必ずしも最適とは限らないため誤ったフラッグをつけること、例えば「フック試料」の代わりに「上側測定範囲超過(upper measuring range exceeded)」とフラッグをつけること(又は逆の場合もまた同様であること)によって、その方法を同じアッセイの別のロットに適用する際に問題が生じることである。
【0010】
この方法のさらなる重要な欠点は、全てのアッセイに適用可能でないこと、例えばアルブミンアッセイに適用できないことである。そのような場合、上記の高価な抗原再添加方法を適用する必要があり、さらなるピペット操作工程によって分析装置のワークフローが増加することになるので処理能力の減少につながる。さらに、分析装置上のさらなるスペースが抗原試薬のために必要となる。簡単な速度論的データ(kinetic data)分析式を用いるプロゾーン検出方法が幾つかある。そのような方法を適用する分析装置は高率の偽プロゾーン警告のため通常スイッチが切られている(Clin. Chem. Lab. Med. 1999)。
【0011】
特開平06ー213893(JP06213893)の速度論的方法では、いずれの計測点もプロゾーンチェックに用いられる。特開平10ー282099(JP10282099)では、測定時間内での2つの測定部(measuring sections)の測定データを互いに比較することによってプロゾーン効果の有無が識別される。
【0012】
特開昭63ー019560(JP63019560)では、プロゾーン効果を検出するために波長λ1とλ2で検出される吸光度の値A(λ1)とA(λ2)の間の比が計算されて予め設定された判別レベルと比較される。
【0013】
特開平04ー204378(JP04204378)は2つの異なる波長ΔA(λ1)及びΔA(λ2)での吸光度の差の比を計算し、その値を予め設定されている基準値と比較するプロゾーン検出方法を記載する。
【0014】
特開平05ー093725(JP05093725)及び特開平06ー094717(JP06094717)の測定を2つの異なる波長で行い、続いて線形回帰式を用いることによって測定値と目標値の間の偏差の比を決定する。プロゾーン効果の検出が偏差に基づいてなされる。
【0015】
欧州特許第1845373号明細書(EP1845373)は、特有の校正曲線を使用して試料中の被検体結合物質を含む被検体の量を決定する方法に関し、その方法ではロゾーン陽性(prozone-positive)試料の被検体の量は異なる校正曲線で決定される。
【0016】
上記の先行技術は高価な試薬を使用し、さらなる測定又は複雑な信号評価手順を必要とする。さらに、幾つかの方法は必ずしも全てのアッセイに適用可能とは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
解決しようとする課題は、コスト効果の高い(理想的にはいかなる試薬を消費する必要なく)、迅速(理想的には試料定量工程と同時に行なわれる検出法によって)、簡易、安全(理想的には偽のプロゾーン警告が無い/少ない)であり、自動化された研究室分析装置で実行できるプロゾーン検出のための方法を提供することである。
【0018】
本発明の方法は、いかなる試薬も必要としないコスト効果の高いやり方を可能にする。プロゾーン検出方法が試料定量工程と同時に行なわれるので迅速で簡易であり、プロゾーン効果が試料に存在するか否かを検出するので安全である。さらに該方法は自動化された研究室分析装置で実行できる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、試料測定の間に得られた速度論的データの分析によってプロゾーン現象を検出するための改良された方法を提供する。本発明の実施形態は従属請求項に与えられる。
【0020】
第1の態様では、測光アッセイによってプロゾーン効果を示しうる試料中の特定の被検体の量を決定する本発明の方法であって、その特定の被検体は被検体と被検体特異的アッセイ試薬の相互作用後の反応混合物の光信号の変化から定量される。
【0021】
最初の工程では、測定対象試料の特定の被検体について少なくとも1つの波長及び反応時間での校正曲線が作成され、計測機器プラットフォームのデータ管理システムに測定結果を保存する。
【0022】
測定対象試料の特定の被検体について、被検体の決定に使用される波長と、少なくとも完全反応時間(complete reaction time)にわたるプロゾーン効果の検出に使用されるさらなる特定の波長で同時に光信号が測定される。このさらなる波長は被検体の決定に使用される波長と異なる。
【0023】
次の工程では、プロゾーン効果の検出に使用される波長で得られる信号を用いることによって反応速度比Rが計算される。
R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100、ここで時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]及び時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]である。
計算された比の値Rと予め定められた限界値の比較によって、プロゾーン効果が試料中に存在するか否かが判定される。
そして、被検体の決定に使用される波長で得られる光信号と校正曲線の比較によって特定の被検体の量が定量される。
【0024】
随意にさらなる限界が定義され、先に、すなわち反応速度比Rに基づいてフック効果の存在を計算して判定する前に、どのように進めるかを決める各測定に適用されうることが本発明の実施形態である。これらの限界は、被検体の決定に使用される波長、並びに/又はプロゾーン効果の検出に使用される波長、及び/若しくは他の波長で測定される信号の基準値である。そのような限界の例は、反応速度が極めて低い試料をプロゾーンチェックから無視し、そのような試料を直接非フック試料として分類するために、ある時間での信号変化に対して定義されうる。そのような限界のさらなる例は、反応速度が極めて高い試料をフック試料として直ちに分類するか否か、又はその判定を反応速度比Rの計算後に行うか否かを決定するために、ある時間での信号変化に対して定義されうる。
【0025】
本発明のさらなる態様では、測光アッセイによってプロゾーン効果を示しうる試料中の特定の被検体の量を決定するために市販の分光学的臨床検査を用いる計測機器プラットフォームが提供され、計測機器プラットフォームのデータ管理システムは、反応時間、校正点、校正モード、波長のデータを、1回の試料測定から被検体決定及びプロゾーン効果検出を同時に行うために処理できる。
【0026】
本発明の別の態様は、測光アッセイによって、プロゾーン効果を示しうる試料中のアルブミンの量を決定する方法を提供し、その特定の被検体は被検体と本発明に係る被検体特異的アッセイ試薬の相互作用後の反応混合物の光信号の変化から定量される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、試料測定の間に得られた速度論的データの分析によってプロゾーン現象を検出するための改良された方法を提供する。
定義:
【0028】
「分光学的アッセイ」という用語は、「測光アッセイ」とも呼ばれ、当該技術分野において周知である。測光アッセイは免疫比濁アッセイ及び免疫比ろうアッセイを包含する。免疫比濁アッセイ及び免疫比ろうアッセイでは、特定の被検体と被検体特異的な結合相手との凝集に基づく反応混合物の濁度の変化から特定の被検体が定量される。
【0029】
「比濁法及び比ろう法」という用語は、光の透過及び散乱に対するこの濁度の影響を測定することに基づいて溶液の濁りの量、又は濁度を決定する当該技術分野において公知の方法である。液体の濁度は微細懸濁粒子の存在によって生じる。光のビームが濁った試料を通り抜ける場合、その強度は散乱によって減少し、分散された光の量は粒子の濃度、サイズ、及びサイズ分布に依存する。分光光度計は、免疫凝集反応に由来する粒径増加に起因する濁度の増加(すなわち強度透過光の光の減少(the reduction of light in the intensity transmitted light))を測る。
【0030】
この濁度の増加は、被検体によってもたらされる免疫凝集の直接的尺度又は被検体によってもたらされる免疫凝集阻害の直接的尺度である。比ろう法では散乱光も強度が測定され、一方で比濁法では試料を透過した光の強度が測定される。
【0031】
比濁法アッセイは入射ビームが試料を通り抜ける際のその強度の測定を伴う。光ビームは懸濁液を通過するか又は、粒子によって吸収、反射若しくは散乱されうる。結果として、光の強度は懸濁液を透過するにつれて減少する。吸収されない粒子については、散乱に起因する光強度の減少が濁度として表わされる。
【0032】
比ろう法アッセイは、入射ビームが試料を通り抜けるときに、入射ビームとなす規定角度θで散乱される光の測定を指す。比ろう法では、散乱種(scattering species)は急速にサイズを増加させるので、ある時間経った後の散乱光の強度の変化が測定される。固定された抗体−ラテックス複合体の存在下で測定される場合、散乱光は初期抗原濃度に比例する。さらなる説明は、J. A. Molina-Bolivar et al., Journal of Macromolecular Science, Part C-Polymer Review, 45:59-98, 2005に記載される。
【0033】
本発明の方法の免疫アッセイは、微粒子増強(microparticles enhancement)を伴う及び伴わない公知の凝集テスト全てに機能する。本発明内で好ましく使用されるのは、「粒子増強免疫比濁アッセイ」(PETIA)とも呼ばれる「微粒子増強光散乱凝集試験」である。凝集に基づく免疫アッセイは、いずれの分離工程又は洗浄工程を必要としない準ホモジニアス(quasi-homogeneous)免疫アッセイであるという利点を有するので、臨床化学分析装置での血清タンパク質、治療薬物及び乱用薬物の定量のために臨床診断で日常的に用いられる。反応混合物中の特定の被検体と被検体特異的な結合相手の間の光学的検出を高めるために、被検体又は被検体特異的な結合相手は好適な粒子に連結される。それにより、被検体は被検体特異的な結合相手でコーティングされている粒子と反応して凝集する。被検体の量が増加するのに伴って凝集及び複合体のサイズが増大し、さらに光散乱の変化をもたらす。その後、凝集した粒子は比濁法及び比ろう法による測定によって決定される。
【0034】
欧州特許第0898169号明細書(EP0898169)に記載のように、被検体は、被検体に対する反応性が高い少なくとも1つの結合相手を保有する強い光散乱性の粒子と、被検体に対する反応性が低い少なくとも1つの結合相手を保有する弱い光散乱性の粒子の混合物を含む。強い光散乱性の粒子は、弱い光散乱性の粒子より大きいサイズ及び/又はより高い屈折率をもつ。被検体の量を測定するための微粒子増強光散乱免疫アッセイに用いる微粒子試薬は、直径が30〜600nmの微粒子の混合物を含み、被検体に対する反応性が高い少なくとも1つの結合相手を保有する強い光散乱性の粒子及び被検体に対する反応性が低い少なくとも1つの結合相手を保有する弱い光散乱性の粒子を含む。
【0035】
微粒子の材料は、微粒子増強光散乱アッセイに適したいずれの無機、有機、又はポリマー材料であってよい。微粒子の材料は、微粒子増強光散乱アッセイに適したいずれの無機、有機、又はポリマー材料であってよい。そのような材料としては、例えば、セレン、炭素、金;炭素、ケイ素、又はゲルマニウムの窒化物、例えばSi3N4;鉄、チタン、又はケイ素の酸化物、例えばTiO2又はSiO2;例えばポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、エポキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(アルファナフチルメタクリレート)、ポリ(ビニルナフタレン)などのポリマー材料、又はその共重合体、特にスチレンと共重合可能なエチレン性不飽和化合物の共重合体、例えばスチレン(メタ)クリレート共重合体が挙げられる。ポリマー材料から作れられた微粒子、並びにスチレンから重合された内部コア及びスチレンと共重合可能なエチレン性不飽和化合物から共重合によって形成された外側シェルから成るコア‐シェル粒子が特に好適である。粒子に基づくアッセイの大部分はラテックス粒子を採用し、その主な種類はポリスチレンである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「決定すること(determining)」という用語は、比濁法又は比ろう法の測定に基づく測光アッセイの反応混合物の光信号の変化から試料中の特定の被検体を評価、診断、決定(deciding)、同定、評定、定量、又は分類することを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、被検体の絶対量又は前記被検体の相対量及び/若しくは濃度並びに/又はそれに相関しうる及び/若しくはそれに由来しうるいずれの値及び/若しくはパラメーターを包含する。
【0038】
本発明に係る「被検体(analyte)」という用語は、例えば血清タンパク質、治療薬物、及び乱用薬物などのいずれの「インビトロ治療用化合物」を包含する。代表的な被検体としては、抗原、ハプテン、抗体、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、がん細胞マーカー、組織細胞、ウイルス、ビタミン、核酸、農薬、酵素、酵素基質、及び酵素補因子が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「被検体」又は「特定の被検体」は、試料中におけるその存在及び/又は濃度が決定される対象である物質を指す。「被検体」という用語は、それに対する特異的な反応相手(例えば抗体などの被検体を特異的に結合する結合分子若しくは結合物質、又は酵素などの被検体と特異的に反応する分子)があるか、又はそれに対する特異的な反応相手を調製できるいずれの物質が包含される。
【0039】
本発明の文脈において「特定の被検体」という用語は、測定対象の試料中の、各特定の被検体について濃度の定量ために最適化され、被検体ごとに異なりうる特定の校正曲線並びに特定の波長及び反応時間が各被検体について決定できることを意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「被検体特異的な反応相手」という用語は、特定の被検体と反応して抗原−抗体免疫複合体などの反応複合体を形成できる。典型的な被検体特異的な反応相手としては、結合タンパク質、抗原、抗原断片、抗体、抗体断片、核酸、受容体、及び粒子増強(particle enhanced)結合相手が挙げられるが、これらに限定されない。そのような所与の被検体に特異的な反応相手は商業的供給源から入手してもよく、又は当業者に公知の標準的な手順に従って調製してもよい。被検体特異的な反応相手ペアとしては、例えば、ハプテン:抗体、細胞:抗体、ビオチン:アビジン、ホルモン:受容体、ポリペプチド:抗体、抗体:抗体、オリゴヌクレオチド:相補的DNA又はRNAが挙げられるが、これらに限定されない。「被検体特異的な反応相手」の代わりに、「被検体特異的な結合相手」という用語が同様に使用できる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、外来物質の検知に応答して産生される免疫グロブリンを指し、完全な分子並びにFab、F(ab’)2、及びFvなどのその機能的な断片を包含する。本発明のアッセイで免疫性結合相手として使用できる抗体としては、いずれの種のポリクローナル抗体、いずれの種のモノクローナル抗体(例えばキメラ抗体及び/又は組換え抗体を含む)が挙げられる。量に制限なく一様に産生されるその性質のため、モノクローナル抗体又はその断片が一般に好まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、抗体の抗原結合部位に結合されるその能力を特徴とする。抗体によって認識され、その抗体が結合する抗原の領域は「エピトープ」と呼ばれる。抗原は動物又は人体に導入された際に免疫応答、すなわち抗体産生を誘発できる物質である。ハプテンはタンパク質などの大きな担体に結合した場合にのみ、免疫応答を引き出すことができる低分子である。担体は同様にそれ自体で免疫応答を引き出さないものでありうる。いったん身体がハプテン−担体付加物に対する抗体を生成すると、小分子ハプテンもまた抗体に結合できうる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、血液、すなわち全血、血漿、若しくは血清、又は尿、CSF、唾液から選択される体液の試料、又は分離された細胞の試料、又は各個体の組織若しくは臓器からの試料を指す。体液の試料は周知の技術によって分離できる。組織又は臓器試料はいずれの組織又は臓器から例えば生検によって分離できる。分離された細胞は、体液又は組織若しくは臓器から遠心分離又は細胞選別などの分離技法によって分離できる。好ましくは、細胞試料、組織試料、又は臓器試料の溶解物は、本明細書で言及されるペプチドを発現又は産生するそれらの細胞、組織、又は臓器から分離される。
【0044】
非線形校正は、さまざまな濃度での吸光度が非線形であるが再現可能なプロットを形成する試験に用いられる。少なくとも3つ、最大で6つの標準試料(calibrator)が校正に必要である。典型的な非線形校正タイプはロッドバード関数(rodbard function)である。くわえて、校正曲線がスプラインなどの区分的に定義された補間機能である校正タイプがある。
【0045】
感度、分析感度、検出下限(LDL)、ブランク上限(LOB)、検出限界(LOD)、及び定量限界(LOQ)は、分析方法によって信頼性をもって測定できる被測定物の最小濃度を記載するのに用いる用語である。これらの用語はすべて関連するが、別個の定義を有する(siehe Lit. clin biochem rev 2008, 29, 49)。例えば、「分析感度」という用語は校正曲線の傾きとして定義される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「検出下限」(LDL)という用語は下側測定範囲(lower measuring range)とも呼ばれる。LDLを推定する典型的な方法は、ゼロ標準試料又はブランク試料の反復(replicates)(例えばn=21など)を測定して平均値x及び標準偏差(SD)を決定することからなる。LDLはx+2SD又はx+3SDとして計算される。LDL決定のためのこの方法は、Kaiserによって記載された方法(H. Kaiser, Fresenius Zeitschrift fur analytische Chemie, 1965, 209, Nr. l, pages 1-18)に準ずる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「検出上限」(UDL)という用語は上側測定範囲(upper measuring range)とも呼ばれる。UDLは信頼性をもって決定できる試料中の被検体の最大量である。本発明では、UDLは、方法の線形性を評価し、次いで線形範囲内の最高濃度値をUDLとして選択することによって決定された。一連の試料溶液からの被検体回復率(recovery)(測定値)が試料溶液の被検体(真の値)の実際の濃度に比例する場合、その方法は線形であると言われる(Arch Pathol Lab Med 2004, 128, pages 44-48)。放物線状又はシグモイド状でありうる校正曲線の形状を測定値と真の値の関係を記述する方法の線形性と混同すべきではない。校正曲線は信号と濃度の関係を描く。
【0048】
標準試料の被検体の既知濃度と標準試料の光学密度などの分析測定値(光信号)の相互関係をプロットすることによって予め描かれた少なくとも1つの「校正曲線」(一般に標準曲線又は作業曲線とも呼ばれる)を用いることによって被検体の濃度を決定することは一般的に行われていることである。校正曲線が定量的分析の領域の広い範囲にわたって充分な線形性をもつ場合、校正曲線は定量的分析の決定範囲の上限、下限付近及び中間点にある比較的少数の標準試料を用いて作成できる。しかし実際には、全体として線形ではない校正曲線が多くある。特定の波長の吸光度から作成した比濁法又は比ろう法の校正曲線は、一般に非線形S状校正曲線を有しうる、そこでは、ゼロ付近の濃度では感度が損なわれ、高い方の濃度側では飽和している。S状校正の決定には、多点での校正が必要であり、複数の濃度の標準試料を使用しなければならない。
【0049】
反応混合物の濁度測定に基づく凝集アッセイの校正曲線を作成する際、反応時間のほかに波長の選択が曲線の傾き(分析感度)及び達成可能な上側測定範囲にとって重要な役割を果たす。校正曲線を作成する目的で信号を計算するために1つの波長及び対応する反応時間を選択することは分析感度と上側測定範囲の間の妥協である場合がある。
【0050】
本発明の実施形態は、測定対象試料の特定の被検体ついての少なくとも1つの波長及び反応時間での校正曲線を作成し、測定結果を計測機器プラットフォームのデータ管理システムに保存することである。
【0051】
その後、測定対象試料の特定の被検体に関する光信号は、被検体の決定に使用される波長と、少なくとも完全反応時間にわたるプロゾーン効果の検出に使用されるさらなる特定の波長で同時に測定される。この(又はこれらの)さらなる特定の波長(複数)は被検体の決定に使用される波長と異なる。
【0052】
被検体の決定に使用される波長と、少なくともプロゾーン効果の検出に使用されるさらなる特定の波長の間の差が10nmより大きいことが本発明の実施形態である。好ましくは、この(又はこれらの)さらなる特定の波長(複数)は5nm、10nm、又は20nmの差を示す。特定の状況では、被検体の決定に使用される波長と、少なくともプロゾーン効果の検出に使用されるさらなる特定の波長の間の差が20nmより大きいことすらありうる。
【0053】
本明細書で使用される場合、主波長とも呼ばれる「被検体の決定に使用される波長」という用語、及びプロゾーン効果の検出のための少なくとも1つの波長は、当該技術分野において公知の多波長光度計で発生される波長を指す。一般的な光度計は、分光光度計又は免疫比濁アッセイ用濁度計及び免疫比ろうアッセイ用ネフェロメーターである。これらのアッセイのcobas(登録商標)c計測器での検出は、照射源としてタングステンハロゲンランプ、単色光を発生させる格子、及び検出器としてフォトダイオードアレイ(340〜800nmの12種の波長を発生させる12個のダイオード)をもつ光度計に基づく。光度計、例えばロシュ社の分析装置cobas c(登録商標)311は、同時に300nm〜800±2nmの12種の波長を測定する能力を有する。好ましく使用されるのは、340、376、415、450、480、505、546、570、600、660、700、800±2nmの波長である。本発明の方法は、cobas c 311などの多波長同時測定能を有する自動分析装置に用いられる場合にとりわけ有利である。装置毎に異なりうる、選ばれた分光光度計の構造及び利用可能な波長に応じて、1つ以上の特有の波長が多波長から選択される。好ましくは、測定は規定温度で、好ましくは摂氏20〜40度、最も好ましくは37℃で行われる。
【0054】
本発明の実施形態は、補正/ブランキング目的で、第2の波長又はさらなる波長を随意に使用することである。このさらなる波長は、干渉の補正及び光学的ノイズの補償のためのブランク値として決定される。これはバイクロマチック(bichromatic)測定としても知られる(clin. Chem. 1979, 25, 1482-1484)。典型的には、主波長での信号から補正波長での信号を減算する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「光信号」という用語は、反応混合物の吸光度測定を行うことによって得られる信号を記載する。光信号は比濁法アッセイの場合には吸光度値又は比ろう法アッセイについては散乱光信号でありうる。試料中の特定の被検体の光信号は多波長にて反応混合物中で、好ましくは全反応時間にわたる1回の操作実行で同時に測定できる。
【0056】
本発明で使用される「同時に」という用語は、60x秒未満の時間遅れ、例えば10x秒未満の時間遅れ、好ましくは1x秒未満、最も好ましくは、1ミリ秒未満又はさらに0.1xミリ秒未満であることを意味しうる。最も好ましくは、「同時に」という用語は時間遅れが無いことを意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「プロゾーン効果」という用語は、高用量フック効果又は抗原過剰効果とも呼ばれ、高い被検体濃度でのアッセイ応答が減少し、結果として被検体の偽低測定値をもたらす現象である。
【0058】
本発明の実施形態は、プロゾーン効果の検出に使用される波長で得られる信号を用いることによって「反応速度比R」を計算することである。
【0059】
本明細書で使用される場合、「反応速度比R」という用語は、次のように定義される:
R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100
ここで、時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]及び時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]である。
【0060】
計算された比の値Rと予め定められた限界値の比較によって、プロゾーン効果が試料に存在するか否か判定される。本発明に係るフック効果は、分析前試料希釈処理を適用することなく及び/又は被検体再添加によってアッセイ手順を変えることなく対応する計測機器プラットフォーム上で市販の分光学的臨床検査を用いて検出できる。
【0061】
本発明の実施形態は、プロゾーン効果が試料を希釈した後に存在する場合に、試料の測定を自動的に繰り返す。
【0062】
本発明のさらなる実施形態は、試料中にプロゾーン効果が存在しない場合、試料中の特定の被検体の決定された量が報告できる結果であることである。さらに、本発明の実施形態は、さらなる信号(複数)が被検体の決定に使用される波長、並びに/又はRの計算に使用される波長、及び/若しくは別の波長で随意に測定され、反応速度比Rに基づいてフック効果の存在を計算して判定する前に予め定められた限界値と比較することによって評価することである。本発明に係るそのような予め定められた限界値は、反応速度が極めて高い試料を例えばフック試料として直ちに分類するか否かを決定するため、又は反応速度が極めて低い試料をプロゾーンチェックから無視し、そのような試料を直接例えば非フック試料として分類するために、ある時間での信号変化に対して定義されうる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「予め定められた限界」及び「閾値」という用語は、ある時間での定義された信号変化に用いられて反応速度として表わされるか、又はRに関する式で上記されたように定義された反応速度比に用いられる。また予め定められた限界はある時間で取得される吸光度値でもありうる。予め定められた限界はプロゾーン効果を検出する本発明の方法に適用される。予め定められた限界の選択は、非フック試料とフック試料の比較によってアッセイ開発の間に経験的に行われる。
【0064】
本発明のさらなる実施形態は、反応時間、校正点、校正モード、及びアッセイタイプを含む特有の測定条件が、本発明に係る測定プロトコールにさらに適用されることである。
【0065】
本明細書で使用される場合、「反応時間」という用語は、エンドポイントアッセイの場合、該アッセイの信号値の計算のために使用される光信号の第1(又は初期)測定と第2(又は最終)測定との間の時間である。第1(又は初期)測定は最終試薬を反応混合物に加える前又は加えた直後に行なわれる。速度論的測定(kinetic measurements)の場合、反応時間は時間当たりの吸光度変化を表わす値の計算に用いる時間であってもよい。「反応時間」は、完全反応時間と同一か又はそれより短いことがある。完全反応時間は試料及び被検体特異的アッセイ試薬から成る反応混合物を混合した後に反応させる時間である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「完全反応時間」という用語は、特定の被検体を複数の波長で測定する時間である。試料はcobas c(登録商標)計測器で利用可能な12種の異なる波長で同時に測定される。本発明の免疫アッセイ時間の典型的な完全反応時間は1〜20分の間でさまざまである。好ましくは、多波長分光光度計の完全反応時間は好ましくは約10分である。本発明の実施形態は特定の被検体の光信号を完全反応時間の間に測定することである。
【0067】
本明細書で使用される場合、「校正点の数」という用語は、校正曲線を作成するのに用いる試料標準とも呼ばれる標準試料の数である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「校正モード」という用語は、測定された信号[吸光度又は(レートアッセイ(rate assay)については)吸光度の変化の速度]と目的の被検体の濃度の間の有効な関係の決定を指す。そのような信号/濃度関係のグラフ表示が作業曲線とも呼ばれる校正曲線である。分析装置は異なるタイプの数学モデルを用いてこの関係を説明する。これらの数学モデルは校正タイプ又は校正モードと呼ばれる。校正の2つの基本的なモードがあり、線形校正モード及び非線形校正モードである。標準試料濃度に対してプロットされた吸光度読み取り値が直線に載る場合、線形校正が試験に用いられる。線形校正が、2つの標準試料測定に基づく場合、線形2点校正と呼ばれる。校正が2つより多い標準試料に基づく場合、線形多点校正と呼ばれる。典型的には、多点校正が非線形校正に用いられる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「アッセイタイプ」という用語は、分析機器の2つの基本的なタイプの測光アッセイ、すなわちエンドポイントアッセイ及びレートアッセイを指す。測定値は特定の時点で光度計によって取得される。測定値が反応完了後に取得される場合、吸光度(又は濁度)は試料構成成分の濃度の指標である。これらはエンドポイントアッセイと呼ばれる。レートアッセイに関して、反応速度の速度(the rate of the reaction rate)(吸光度の変化の速度)は分析されている試料構成成分の濃度に比例する。測定値は反応が進行しているとき取得される。また、この計測機器で可能なこれら2つの技法の変形形態及びこれら2つの組み合わせも存在する。
【0070】
本発明のさらなる態様は、プロゾーン効果を示しうる試料中のアルブミンの量を測光アッセイによって決定する方法であり、特定の被検体は被検体と被検体特異的アッセイ試薬の相互作用後の反応混合物の光信号の変化から定量される。
少なくとも1つの波長及び反応時間での校正曲線は測定対象試料中のアルブミンについて作成され、測定結果は計測装置プラットフォームのデータ管理システムに保存される。
試料中のアルブミンの光信号は、被検体の決定に使用される波長と、少なくとも完全反応時間にわたるプロゾーン効果の検出に使用されるさらなる特定の波長で同時に測定され決定される。
「反応速度比R」はプロゾーン効果の検出に使用される波長で得られる信号を用いることによって計算される。
R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100
ここで時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]及び
時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]である。
【0071】
計算された比の値Rを予め定められた限界値と比較することによって、プロゾーン効果が試料に存在すると判定された場合、被検体の決定に使用された波長で得られた光信号を校正曲線と比較することによってアルブミンの量が定量される。
【0072】
本発明の実施形態は、場合によっては、アルブミンの決定に使用される波長がプロゾーン効果の検出に使用される波長と同一であることである。その場合、さらなる信号及び基準値などのさらなる限界は、被検体の決定に使用される波長及び/又はプロゾーン効果の検出に使用される波長で測定される。
【0073】
したがって、本発明の実施形態は、随意にさらなる限界が定義され、反応速度比Rに基づいてフック効果の存在を判定するためのRの計算の前にどのように進めるかを決める、アルブミンの量の決定に関連する各測定に適用されうることである。これらの限界は、被検体の決定に使用される波長、及び/又はプロゾーン効果の検出に使用される波長、及び/又は他の波長で測定される信号の基準値である。そのような限界の例は、反応速度が極めて低い試料をプロゾーンチェックから無視し、そのような試料を直接非フック試料として分類するために、ある時間での信号変化に対して定義されうる。そのような限界のさらなる例は、反応速度が極めて高い試料をフック試料として直ちに分類するか否か、又はその判定を反応速度比Rの計算後に行うか否かを決定するために、ある時間での信号変化に対して定義されうる。
【0074】
本発明のさらなる態様は、測光アッセイによってプロゾーン効果を示しうる試料中の特定の被検体の量を決定するための分光光度に基づく臨床検査のための測定プロトコールにさらに適用される特有の測定条件の使用であり、測定用波長、反応時間、校正点、及び校正モードを含む。
【0075】
測光アッセイによってプロゾーン効果を示しうる試料中の特定の被検体の量を決定するための市販の分光学的臨床検査を用いる計測機器プラットフォームであって、その計測機器プラットフォームのデータ管理システムは、最良適合校正曲線を選択するために、反応時間、校正点、校正モード、波長のデータを処理できる。測定用波長、反応時間、校正モード、校正点の数を含む本発明に係る測定結果のさらなる補正を行い、互いに相殺しあう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、フェリチンホモジニアス免疫アッセイのハイデルベルガー曲線及び重要な範囲(文献Clin. Chem. Lab. Med 1999, 37, 471-476からの図)を示す。
【
図2】
図2は、反応速度法を用いたcobas cでのプロゾーンチェックを示す。
【
図3】
図3は、cobas cでのプロゾーンチェック値の計算を示す。
【
図4】
図4は、cobas c 311での反応速度法を用いたプロゾーンチェック用の設定を示す。
【
図5】
図5は、CRP L3試験のフック試料及び非フック試料の間の区別を示す。 a)標準的な方法及び新しい方法の正規化されたPC値(NPCV)を用いるスキーム; b)標準的な方法及び新しい方法、並びに改善要因(improvement factor)IFを用いて得られた結果の概要。
【
図6】
図6は、フェリチンアッセイのフック試料及び非フック試料の間の区別を示す。 a)標準的な方法及び新しい方法の正規化されたPC値(NPCV)を用いるスキーム; b)標準的な方法及び新しい方法、並びに改善要因IFを用いて得られた結果の概要。
【
図7】
図7は、フック試料及び非フック試料の間の区別を示し、a)スキーム:吸光度読み取りは測定波長340nm〜700nmで取得する。計測点8と計測点20の間の信号差を計算する。信号差限界を0.25に設定する。信号差が>0.25を示す全ての試料がフック試料である。信号差が<0.25を示す全ての試料について、プロゾーンチェックを行う。b)スキーム:反応速度法を適用することによってプロゾーンチェック値を計算する(3.3.2.1の設定を参照)。信号を測定波長505nm〜700nmで発生させ、プロゾーンチェック値計算に用いる。定義された限界の外側のPCをもつ試料がフック試料である。
【実施例】
【0077】
実施例1:CRPアッセイのためのプロゾーン検出
1.1 計測機器:
検出ユニットとして多波長分光光度計を備えるロシュ社の(ロシュ・ダイアグノスティックス有限責任会社(GmbH))cobas c311分析装置を実験に使用した。この計測機器は試料及びアッセイ試薬を反応セルに自動的にピペッティングする。最大で3種類の異なる試薬、R1、R2、及びR3を試料に加えることができる。この計測機器は、タングステンハロゲンランプ(12V/50W)を照射源として使用し、12個のフォトダイオードから成るフォトダイオードアレイを用いて12種の異なる波長(340、376、415、450、480、505、546、570、600、660、700、及び800±2nm)で同時に吸光度を測定する。光路長は5.6mmであり、検出器の光学範囲は0.0000〜3.0000吸光度である。各反応セルについて水ブランクを測定し、次いで吸光度の読み取りを、本明細書において全反応時間とも呼ばれる10分の間に57回取得し、各波長での吸光度について合計で57計測点(測光点又はアッセイ点とも呼ばれる)が得られる。これらの計測点のうち少なくとも1つを用いて濃度を計算できる。この計測機器では2つの基本的なタイプの測光アッセイがあり、エンドポイントアッセイ及びレートアッセイである。測定は摂氏37度で行う。
【0078】
1.2 標準方法を用いたCRPアッセイの手順:
ロシュ社のCRP L3試験(CRPL3、カタログ番号04956842)、粒子増強免疫比濁アッセイをこの試験に選択した。ヒトCRPはモノクローナル抗CRP抗体でコーティングされたラテックス粒子と共に凝集する。したがってその凝集体を比濁法的に測定する。全てのロシュ社試験用の試薬はcobas cパックに備わっている。これらのカセットは1〜3つの特製の試薬瓶を含み、詳細な試薬及び他の試験関連情報をもつバーコードラベルを備えている。CRP L3試験にはカセット中で2つの試薬:R1(ウシ血清アルブミンを含むトリスバッファー及び保存剤)並びにR2(グリシンバッファー中の抗CRP(マウス)でコーティングされたラテックス粒子、免疫グロブリン(マウス)、及び保存剤)が使われる。CRP L3試験のパッケージ内添付文書に記載の手順を標準的な方法として使用した。
【0079】
1.2.1 ピペット操作スキーム:
2μLの試料及び150μLアッセイバッファー(R1)を続けて反応セルに加え、その後24μLの希釈剤(水)で希釈したラテックス試薬(R2、48μL)を添加し、反応混合物を混合した。
【0080】
1.2.2 校正曲線の作成条件:
測定には570nmを主波長として、800nmを補正波長として使用した。アッセイタイプは2ポイントエンドアッセイ(two-point-end assay)であった。2ポイントエンドアッセイは試料ブランクを行うエンドポイントアッセイである。ここでは2つの異なる計測点での2つの吸光度読み取りを考慮に入れる。第1の読み取りは通常最終試薬の添加前又は添加直後に取得し、第2の読み取りは最終試薬の添加後にいずれかの時点で取得する。校正曲線のため、つまり濃度計算のための吸光度値は第1の読み取りから第2の読み取りを引くことによって得られる。CRP L3に関して、第1の読み取りは計測点8であり、最終試薬の添加直後を意味し、第2の読み取りは計測点18であり、2.0分の反応時間にあたる。校正曲線の作成には、ロシュ社の6つの標準品(カタログ番号11355279)を2連で、校正タイプとしてスプラインを用いて測定する。これは測定した標準試料の三次多項式によって概算したデータ点間の範囲に適合し、したがってなめらかな校正曲線が得られる。
【0081】
1.2.3 プロゾーン効果の検出条件:
プロゾーン効果の検出には反応速度法を使用する(
図2、3、及び4も参照)。最初に2つの異なる限界が測定に適用される。プロゾーン計測点1(pmp
1)とプロゾーン計測点2(pmp
2)の間の信号差及びプロゾーン計測点3(pmp
3)とプロゾーン計測点4(pmp
4)の間の信号差を計算する。これらの計算した信号(吸光度)差を、予め定められた限界値、(Apmp2−Apmp1)については950及び(Apmp4−Apmp3)については100(
図4及び下表のプロゾーン設定の8列目及び9列目を参照)とそれぞれ比較する。計算した信号差がこれらの限界未満の試料を非フック試料と直接分類する。しかし、試料の計算した信号差がこれらの限界を超える場合、
図3に従ってプロゾーンチェック値PCを計算することによってプロゾーンチェックを行う。すなわちプロゾーンチェック値PCを得るために、反応終了時の反応速度(v(
pmp3,
pmp4)、
図4及び下表のプロゾーン設定の5列目及び6列目参照)と反応開始時の反応速度(v(
pmp1,
pmp2)、
図4及び下表のプロゾーン設定の3列目及び4列目を参照)の百分率で表わされる比を計算する。各アッセイについて、プロゾーン効果を示す下限(
図4及び下表の1列目を参照)と上限(
図4及び下表の2列目を参照)の間の範囲として定義される特有のPC範囲をアッセイ設定に保存し、自動的に各試料の測定後に得られたPC値と比較する。すなわち下限と上限の範囲(4〜15)内のPC値を示す場合、その試料はフック試料としてフラッグをつけられる。CRP L3のプロゾーンチェックのための設定を下表に示す(詳細な説明については
図4も参照)。プロゾーンチェック、さらなる限界、及び被検体定量に使用した波長:570nm(補正波長800nm)。
【0082】
【表1】
【0083】
1.3 本発明に係るCRPアッセイの手順:
これらの実験に使用した試薬は標準的な方法に使用したものと同一であった。項目1.2参照。プロゾーン効果の検出方法を除いて、CRP L3試験のパッケージ内添付文書に記載の手順を用いた。
【0084】
1.3.1 測定条件:
ピペット操作スキームは、項目1.2.1で示した標準的な方法のピペット操作スキームと同一である。校正曲線の作成条件は、項目1.2.2で示した標準的な方法で用いたキャリブレーション条件と同一である。
【0085】
1.3.2 本発明に係るプロゾーン効果の検出条件:
プロゾーン効果の検出にも本発明の方法は反応速度の分析を用いるが、被検体の定量に使用する波長以外の波長を用いる。最初に2つの異なる限界が測定に適用される。波長660nm(補正波長800nm)でのプロゾーン計測点7(pmp7)とプロゾーン計測点8(pmp8)の間の信号差並びにプロゾーン計測点9(pmp9)とプロゾーン計測点10(pmp10)の間の信号差を計算する。これらの計算した信号(吸光度)差を、予め定められた限界値、(Apmp8〜Apmp7)については500及び(Apmp10〜Apmp9)については200(下表の8列目及び9列目を参照)とそれぞれ比較する。計算した信号差がこれらの限界より小さい試料を非フック試料として直接分類する。
【0086】
しかし、試料の計算した信号差がこれらの限界を超える場合は、プロゾーン効果の検出に使用する波長で得られる信号に関する反応速度比Rを計算することによってプロゾーンチェックを行う。
R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100、ここで
時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]及び時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]である。
【0087】
時点4:プロゾーン計測点4pmp4であり、計測点4と同一である;時点3:プロゾーン計測点3pmp3であり、計測点3と同一である;時点2:プロゾーン計測点2pmp2であり、計測点2と同一である;時点1:プロゾーン計測点1pmp1であり、計測点1と同一である;下表第3列〜第6列も参照。
【0088】
各アッセイについて、予め定められた下限(下表の1列目を参照)と予め定められた上限(下表の2列目を参照)の間の範囲として定義され、プロゾーン効果を示す特有の予め定められたR範囲はアッセイ設定に保存され、自動的に各試料の測定後に得られるR値と比較し、試料が下限及び上限(8〜17.2)内側(下表の7列目による)にあるR値を示す場合、その試料はフック試料としてフラグをつけられる。
【0089】
CRP L3のプロゾーンチェックのための設定を下表に示す。
【0090】
プロゾーンチェックのための使用波長:660nm(補正波長800nm);
さらなる限界のための使用波長:660nm(補正波長800nm);
被検体定量のための使用波長:570nm(補正波長800nm)。
【0091】
【表2】
【0092】
随意に、さらなる限界の各々に使用する波長は異なってもよい。その場合、良好な結果は両方のさらなる限界に同一波長を使用することによって得られた。
【0093】
1.4 本発明に係る標準及び方法を用いたCRPアッセイの結果:
結果概要を
図5に示す。新しい方法のCRP試験への適用により、フック試料と非フック試料の間の区別は2.7倍向上する。新しい方法は最小限の導入労力を可能にする。すなわち、その方法の適用は試薬及びそれらの配合を少しも換えることを必要としない。そのcobas c分析装置での適用については、ソフトウェアの入力ウィンドウを手直ししなければならないだけであり、つまり測定波長のさらなる設定及び例えば17ちょうどの代わりに17.2などの小数単位を含む下/上限界値を入力する可能性による拡張のみである。
【0094】
実施例2:フェリチンアッセイのためのプロゾーン検出
2.1 計測機器:項目1.1を参照。
【0095】
2.2 標準方法を用いたフェリチンアッセイの手順:
ロシュ社のFerr4試験(Ferr4、カタログ番号04885317)、粒子増強免疫比濁アッセイをこの試験に選択した。ヒトフェリチンはモノクローナル抗フェリチン抗体でコーティングされたラテックス粒子と共に凝集する。したがってその凝集体を比濁法的に測定する。全てのロシュ社試験用の試薬はcobas cパックに備わっている。これらのカセットは1〜3つの特製の試薬瓶を含み、詳細な試薬及び他の試験関連情報をもつバーコードラベルを備えている。Ferr4試験にはカセット中で2つの試薬:R1(トリスバッファー、pH7.5、免疫グロブリン(ウサギ)、保存剤、安定剤)並びにR3(抗ヒトフェリチン抗体(ウサギ)でコーティングされたラテックス粒子を含有する水性マトリックス、保存剤、安定剤)が使われる。Ferr4試験のパッケージ内添付文書に記載の手順を標準的な方法として使用した。
【0096】
2.2.1 ピペット操作スキーム:
10μLの試料及び80μLアッセイバッファー(R1)を続けて反応セルに加え、その後80μLのラテックス試薬(R3)を添加し、反応混合物を混合した。
【0097】
2.2.2 校正曲線の作成条件:
測定には570nmを主波長として、800nmを補正波長として使用した。アッセイタイプは2ポイントエンドアッセイであった。2ポイントエンドアッセイは試料ブランクを行うエンドポイントアッセイである。ここでは2つの異なる計測点での2つの吸光度読み取りを考慮に入れる。第1の読み取りは通常最終試薬の添加前又は添加直後に取得し、第2の読み取りは最終試薬の添加後にいずれかの時点で取得する。校正曲線のため、つまり濃度計算のための吸光度値は第1の読み取りから第2の読み取りを引くことによって得られる。CRP L3に関して、第1の読み取りは計測点24であり、最終試薬の添加直後を意味し、第2の読み取りは計測点57であり、5.1分の反応時間にあたる。校正曲線の作成には、ロシュ社の6つの標準品(カタログ番号11355279)を2連で、校正タイプとしてスプラインを用いて測定する。これは測定した標準試料の三次多項式によって概算したデータ点間の範囲に適合し、したがってなめらかな校正曲線が得られる。
【0098】
2.2.3 プロゾーン効果の検出条件:
プロゾーン効果の検出には反応速度法を使用する(
図2、3、及び4も参照)。最初に1つの限界が測定に適用される。プロゾーン計測点1(pmp
1)とプロゾーン計測点2(pmp
2)の間の信号差を計算する。この計算した信号(吸光度)差を、(Apmp2〜Apmp1)について1000である予め定められた限界値(
図4及び下表のプロゾーン設定の8列目を参照)と比較する。計算した信号差がこの限界未満の試料を非フック試料と直接分類する。しかし、試料の計算した信号差がこの限界を超える場合、
図3に従ってプロゾーンチェック値PCを計算することによってプロゾーンチェックを行う。すなわちプロゾーンチェック値PCを得るために、反応終了時の反応速度(v(
pmp3,
pmp4)、
図4及び下表のプロゾーン設定の5列目及び6列目参照)と反応開始時の反応速度(v(
pmp1,
pmp2)、
図4及び下表のプロゾーン設定の3列目及び4列目を参照)の百分率で表わされる比を計算する。各アッセイについて、プロゾーン効果を示す下限(
図4及び下表の1列目を参照)と上限(
図4及び下表の2列目を参照)の間の範囲として定義される特有のPC範囲をアッセイ設定に保存し、自動的に各試料の測定後に得られたPC値と比較する。すなわち下限と上限の範囲(0〜10)内のPC値を示す場合、その試料はフック試料としてフラッグをつけられる。Ferr4のプロゾーンチェックのための設定を下表に示す(詳細な説明については
図4も参照)。
プロゾーンチェック、さらなる限界、及び被検体定量に使用した波長:570nm(補正波長800nm)。
【0099】
【表3】
【0100】
2.3 本発明に係るフェリチンアッセイの手順:
これらの実験に使用した試薬は標準的な方法に使用したものと同一であった。項目2.2参照。プロゾーン効果の検出方法を除いて、Ferr4試験のパッケージ内添付文書に記載の手順を用いた。
【0101】
2.3.1 測定条件:
ピペット操作スキームは、項目2.2.1で示した標準的な方法のピペット操作スキームと同一である。校正曲線の作成条件は、項目2.2.2で示した標準的な方法で用いたキャリブレーション条件と同一である。
【0102】
2.3.2 本発明に係るプロゾーン効果の検出条件:
プロゾーン効果の検出にも本発明の方法は反応速度の分析を用いるが、被検体の定量に使用する波長以外の波長を用いる。最初に1つの限界が測定に適用される。波長505nm(補正波長800nm)でのプロゾーン計測点7(pmp7)とプロゾーン計測点8(pmp8)の間の信号差を計算する。この計算した信号(吸光度)差を、(Apmp8〜Apmp7)について1000である予め定められた限界値とそれぞれ比較する(下表の8列目を参照)。計算した信号差がこの限界未満の試料を非フック試料と直接分類する。しかし、試料の計算した信号差がこの限界を超える場合は、プロゾーン効果の検出に使用する波長で得られる信号に関する反応速度比Rを計算することによってプロゾーンチェックを行う。R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100、ここで、時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]及び時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]である。
【0103】
時点4:プロゾーン計測点4pmp4であり、計測点4と同一である;時点3:プロゾーン計測点3pmp3であり、計測点3と同一である;時点2:プロゾーン計測点2pmp2であり、計測点2と同一である;時点1:プロゾーン計測点1pmp1であり、計測点1と同一である;下表第3列〜第6列も参照。
【0104】
各アッセイについて、予め定められた下限(下表の1列目を参照)と予め定められた上限(下表の2列目を参照)の間の範囲として定義され、プロゾーン効果を示す特有の予め定められたR範囲はアッセイ設定に保存され、自動的に各試料の測定後に得られるR値と比較し、試料が下限及び上限(−5〜5)の内側(下表の第7列による)にあるR値を示す場合、その試料はフック試料としてフラグをつけられる。
【0105】
FERR4のプロゾーンチェックのための設定を下表に示す。
【0106】
プロゾーンチェックのための使用波長:505nm(補正波長800nm);
さらなる限界のための使用波長:505nm(補正波長800nm);
被検体定量のための使用波長:570nm(補正波長800nm)。
【0107】
【表4】
【0108】
2.4 本発明に係る標準及び方法を用いたフェリチンアッセイの結果:
結果概要を
図6に示す。フェリチン試験の新しい方法の適用により、フック試料と非フック試料の間の区別は1.8倍向上する。新しい方法は最小限の導入労力を可能にする。すなわち、その方法の適用は試薬及びそれらの配合を少しも換えることを必要としない。そのcobas c分析装置での適用については、ソフトウェアの入力ウィンドウを手直ししなければならないだけであり、つまり測定波長のさらなる設定による拡張のみである。
【0109】
実施例3:アルブミンアッセイのためのプロゾーン検出
【0110】
3.1 計測機器:項目1.1を参照。
【0111】
3.2 標準方法を用いたアルブミンアッセイの手順:
ロシュ社のアルブミン試験(ALBT2、カタログ番号04469658)、免疫比濁アッセイをこの試験に選択した。この試験を使って尿試料中のアルブミンを決定する。ヒトアルブミンはポリクローナル抗アルブミン抗体と反応して抗原/抗体複合体を形成する。その凝集体を比濁法で決定する。
【0112】
全てのロシュ社試験用の試薬はcobas cパックに備わっている。これらのカセットは1〜3つの特製の試薬瓶を含み、詳細な試薬及び他の試験関連情報をもつバーコードラベルを備えている。ALBT2試験にはカセット中で3つの試薬:R1(トリスバッファー:50mmol/L、pH8.0、PEG:4.2%、EDTA:2.0mmol/L、保存剤)、R2(ポリクローナル抗ヒトアルブミン抗体(ヒツジ):力価依存、トリスバッファー:100mmol/L、pH7.2、保存剤)、及びR3(希釈血清中のアルブミン(ヒト)、NaCl:150mmol/L、リン酸バッファー:50mmol/L、pH7.0、保存剤)が使われる。試薬R3を使って、抗原再添加法(antigen readdition method)で抗原過剰チェックを行う。ALBT2試験のパッケージ内添付文書に記載の手順を標準的な方法として使用した。
【0113】
3.2.1 ピペット操作スキーム:
6μLの試料及び100μLアッセイバッファー(R1)を続けて反応セルに加えた後、20μLの抗体試薬(R2)を添加し、反応混合物を混合した。その後、20μLの希釈剤(水)で希釈された6μLの試薬R3(抗原過剰チェック)を反応混合物に加えて混ぜた。
【0114】
3.2.2 校正曲線の作成条件:
測定には340nmを主波長として、700nmを補正波長として使用した。アッセイタイプは2ポイントエンドアッセイであった。2ポイントエンドアッセイは試料ブランクを行うエンドポイントアッセイである。ここでは2つの異なる計測点での2つの吸光度読み取りを考慮に入れる。第1の読み取りは通常最終試薬の添加前又は添加直後に取得し、第2の読み取りは最終試薬の添加後にいずれかの時点で取得する。校正曲線のため、つまり濃度計算のための吸光度値は第1の読み取りから第2の読み取りを引くことによって得られる。ALBT2に関して、第1の読み取りは計測点6であり、最終試薬(R2)の添加直前を意味し、第2の読み取りは計測点15であり、1.8分の反応時間にあたる。校正曲線の作成には、ロシュ社の6つの標準品(カタログ番号03121305)を2連で、校正タイプ(ロッドバードフィット関数(Rodbard fit function))としてRCMを用いて測定する。
【0115】
3.2.3 プロゾーン効果の検出条件:
プロゾーン効果の検出には抗原再添加法を用いる。アッセイ完了(計測点23と24の間)後、アルブミン試薬(R3)をアッセイ混合物に加え、信号のさらなる変化を解釈する。典型的には、フック試料については信号が減少し、非フック試料については信号が増加する。被検体定量及び抗原再添加後の信号分析に使用される波長は同一である。
3.3 本発明に係るアルブミンアッセイの手順:
【0116】
これらの実験に使用した試薬は標準的な方法に使用したものと同一であった。項目3.2参照。プロゾーンチェック方法を除いて、ALBT2試験のパッケージ内添付文書に記載の手順を用いた。
【0117】
3.3.1 測定条件:
ピペット操作スキームは、項目3.2.1で示した標準的な方法のピペット操作スキームと同一である。校正曲線の作成条件は、項目3.2.2で示した標準的な方法で用いたキャリブレーション条件と同一である。
3.3.2 本発明に係るプロゾーン効果の検出条件:
【0118】
a)プロゾーン効果の検出にも本発明の方法は反応速度の分析を用いるが、被検体の定量に使用する波長以外の波長を用いる。最初に1つの限界が測定に適用される。波長340nm(補正波長700nm)でのプロゾーン計測点5(pmp5)とプロゾーン計測点6(pmp6)の間の信号差を計算する。この計算した信号(吸光度)差を、(Apmp6〜Apmp5)について2500である予め定められた限界値(下表の10列目を参照)と比較する。計算した信号差がこの限界を超える試料をフック試料と直接分類する。しかし、試料の計算した信号差がこの限界未満の場合は、プロゾーン効果の検出に使用する波長で得られる信号に関する反応速度比Rを計算することによってプロゾーンチェック(主波長505nm、補正波長700nm)を行う:
R=[時間2での反応速度/時間1での反応速度]×100、ここで時間2での反応速度=[信号(時点4)−信号(時点3)]/[時点4−時点3]及び時間1での反応速度=[信号(時点2)−信号(時点1)]/[時点2−時点1]である。
【0119】
時点4:プロゾーン計測点4pmp4であり、計測点4と同一である;時点3:プロゾーン計測点3pmp3であり、計測点3と同一である;時点2:プロゾーン計測点2pmp2であり、計測点2と同一である;時点1:プロゾーン計測点1pmp1であり、計測点1と同一である;下表第3列〜第6列も参照。
【0120】
各アッセイについて、予め定められた下限(下表の1列目を参照)と予め定められた上限(下表の2列目を参照)の間の範囲として定義され、プロゾーン効果を示す特有の予め定められたR範囲はアッセイ設定に保存され、自動的に各試料の測定後に得られるR値と比較し、試料が下限及び上限(−5〜42)の外側(下表の第7列による)にあるR値を示す場合、その試料はフック試料としてフラグをつけられる。
【0121】
アルブミンアッセイのプロゾーンチェックのための設定を下表に示す。
【0122】
プロゾーンチェックのための使用波長:505nm(補正波長700nm);
さらなる限界のための使用波長:340nm(補正波長700nm);
被検体定量のための使用波長:340nm(補正波長700nm)。
【0123】
【表5】
【0124】
3.4 本発明に係る標準及び方法を用いたアルブミンアッセイの結果:
結果概要を
図7に示す。ALBT2試験の新しい方法の適用は、反応速度法を適用することによるフック試料と非フック試料の間の明確な区別を可能にする。結果として、第2の抗原添加を避けることによりコスト及び時間の節約につながる。新しい方法は最小限の導入労力を可能にする。すなわち、その方法の適用は試薬及びそれらの配合を少しも換えることを必要としない。そのcobas c分析装置での適用については、ソフトウェアの入力ウィンドウを手直し及び/又は僅かに変更しなければならないだけであり、つまり測定波長のさらなる設定による拡張のみである。さらなる設定が、反応速度が極めて高い試料をフック試料として直ちに分類するか否か、又はその判定を反応速度比Rの計算後に行うか否かを決定するために、ある時間での信号変化として定義されうる限界(最大限度)に必要である。