特許第6367944号(P6367944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367944
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】トランスアミナーゼ及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/10 20060101AFI20180723BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180723BHJP
   C12P 41/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C12N9/10ZNA
   C12N15/54
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P41/00 H
   C12P41/00 J
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-535181(P2016-535181)
(86)(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公表番号】特表2016-537992(P2016-537992A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】CN2014090080
(87)【国際公開番号】WO2015078267
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】201310611503.8
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516156271
【氏名又は名称】▲凱▼菜英医▲薬▼集▲団▼(天津)股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516156282
【氏名又は名称】▲凱▼菜英生命科学技▲術▼(天津)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516156293
【氏名又は名称】天津▲凱▼菜英制▲薬▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516156307
【氏名又は名称】▲凱▼菜英医▲薬▼化学(阜新)技▲術▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516156318
【氏名又は名称】吉林▲凱▼菜英医▲薬▼化学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼ 峰
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲艶▼君
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】李 少▲賀▼
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−503610(JP,A)
【文献】 特開2004−033161(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124639(WO,A1)
【文献】 特開平10−075787(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/081053(WO,A1)
【文献】 特表2012−511930(JP,A)
【文献】 特開平07−289252(JP,A)
【文献】 特表2002−539791(JP,A)
【文献】 特表2009−526531(JP,A)
【文献】 特表2010−502202(JP,A)
【文献】 特表2011−514141(JP,A)
【文献】 Database GenBank,[online],2011年11月21日,ABI75539,[平成29年3月14日検索],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/114737414?sat=18&satkey=1856240
【文献】 Biosci. Biotechnol. Biochem.,2001年,vol.65 no.8,pp.1782-1788
【文献】 BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING,1999年,vol.65 no.2,pp.206-211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が、
a)SEQ ID NO.:4に示すアミノ酸配列、
b)SEQ ID NO.:2に示すアミノ酸配列中の第38位のロイシンをイソロイシンに置換したアミノ酸配列
から選ばれた一つであることを特徴とするトランスアミナーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスアミナーゼの符号化を行うことを特徴とするヌクレオチド。
【請求項3】
SEQ ID NO.:又は25に示すヌクレオチド配列から選ばれたことを特徴とする請求項2に記載のヌクレオチド。
【請求項4】
請求項2または3に記載のヌクレオチドが有効に接続されていることを特徴とする組換えベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の組換えベクターを有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項6】
ケトン系化合物と、請求項1に記載のトランスアミナーゼと、ピリドキサールリン酸と、アミノ基供与体とを、反応系で反応させてキラルアミンを得ることを特徴とするキラルアミンの合成方法。
【請求項7】
上記ケトン系化合物は
【化1】
で、ここで、RとRがそれぞれ独自に、C〜Cアルキル基、C〜C10ナフテン基、C〜C10アリール基又はC〜C10ヘテロアリール基であって、又は、RとRがカルボニル基の炭素と協同にC〜C10複素環基、C〜C10炭素環基又はC〜C10ヘテロアリール基を形成し、C〜C10複素環基とC〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロ原子がそれぞれ独自に、窒素、酸素、硫黄から選ばれる少なくとも1種であって、C〜C10アリール基の中のアリール基、C〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロアリール基、C〜C10炭素環基中の炭素環基又はC〜C10複素環基中の複素環基がそれぞれ独自に、置換されていないか又はハロゲン、アルコキシル基又はアルキル基の中の少なくとも一つの基によって置換されたものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記ケトン系化合物
【化2】

【化3】
から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記反応系にカオトロピック剤をさらに含有し、上記カオトロピック剤はジメチルスルホキシド又はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
上記ポリエチレングリコールがPEG−400であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記C〜Cアルキル基はC〜C直鎖アルキル基で、C〜C10ヘテロアリール基はピリジン基で、アルコキシル基はC〜Cアルコキシル基で、C〜C10複素環基の中の複素環基はピペリジンで、C〜C10アリール基の中のアリール基、C〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロアリール基、C〜C10炭素環基中の炭素環基又はC〜C10複素環基中の複素環基の置換基はそれぞれ独自に、C〜C直鎖アルキル基、C〜Cアルコキシル基であって、アミノ基供与体はイソプロピルアミン又はD−アラニンであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル化合物の合成分野に関し、具体的に、トランスアミナーゼ及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルアミンは自然界に汎用されており、数多い重要な生物活性分子の構造ユニットで、天然産物やキラル薬物を合成する際の重要な中間体であって、多いキラルアミンは重要なキラル補助剤やキラル選択剤としても用いられる。その故、キラルアミン化合物の製造は重要な経済上の意味を持っている。
【0003】
現在、キラルアミンの製造は主に、化学還元の方法を用いて、プロキラルケトンを利用して光学活性を持つアミンを製造している。Pd/C及びキニーネの触媒作用で、プロキラルケトンと蟻酸及び無機アンモニア/有機第一級アミンとが反応してキラルアミンを生成する。他の研究者は、ルテニウム配合物を触媒として、プロキラルケトンで非対称アミン化還元を行ってキラルアミンを得ている(Renat Kadyrov et al. Highly Enantioselective Hydrogen-Transfer Reductive Amination: Catalytic Asymmetric Synthesis of Primary Amines. Angewandte Chemie International Edition. 2003,42(44)、第5472〜5474頁)。このような反応において金属触媒はかなり重要な要素であって、かつ、金属触媒に対する要求も厳しく、反応は高圧条件で行わなければならなく、操作機器に対する要求も高く、同時に、金属触媒の価格が高く、環境に対する汚染も大きい(Ohkuma T et al. Trans-RuH(eta1-BH4)(binap)(1,2-diamine):a catalyst for asymmetric hydrogenation of simple ketones under base-free conditions. Journal of the American Chemical Society.2002, 124(23)、第6508〜6509頁)。
【0004】
アミノ基転移酵素はトランスアミナーゼとも呼ばれ、一つのアミノ基とカルボニル基とが交換する過程を触媒する。ω−トランスアミナーゼは、トランスアミナーゼの中の一つであるが、若干の差異がある。ω−トランスアミナーゼは第1類の酵素を指し、それにより触媒するアミノ基転移反応における反応物質又は産物がα−アミノ酸を含有しない限り、当該酵素をω−トランスアミナーゼと称することができる。ω−トランスアミナーゼは、ケトン類化合物を原料として、立体選択性のアミノ基転移作用によって、効率的にキラルアミンを生産している。その反応物質が比較的に低価格で、産物の純度が高い特徴を有するので、研究者たちの注目を集めている。それを充分に潜在力を発揮させて、キラルアミンの産業化生産へ普及することを望んであるが、当該酵素の研究及び応用は少ないのが現状である。
【0005】
本分野において、キラルアミン化合物を製造するための需要を満たすように、高度の立体選択性を持つR体触媒活性のω−トランスアミナーゼに対する需要が依然としてある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Renat Kadyrov et al. Highly Enantioselective Hydrogen-Transfer Reductive Amination: Catalytic Asymmetric Synthesis of Primary Amines. Angewandte Chemie International Edition. 2003,42(44)、第5472〜5474頁
【非特許文献2】Ohkuma T et al. Trans-RuH(eta1-BH4)(binap)(1,2-diamine):a catalyst for asymmetric hydrogenation of simple ketones under base-free conditions. Journal of the American Chemical Society.2002, 124(23)、第6508〜6509頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、キラルアミンの産業化生産の需要を満たすように、新規のトランスアミナーゼ及びその応用を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するため、本発明の一態様によると、トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体を提供し、該トランスアミナーゼのアミノ酸配列は以下の配列から選ばれる一つである:a)SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列、b)SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性のアミノ酸配列であって、但し、該アミノ酸配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列により符号化されれたアミノ酸配列ではないアミノ酸配列、c)SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列に一つ又は複数のアミノ酸を置換、欠乏又は添加することで、SEQ ID NO.:2から派生され且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性の蛋白質であって、但し、該アミノ酸配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列により符号化されれたアミノ酸配列ではない蛋白質。ここで、高度の立体選択性とは、その中の一つの立体異性体の含有量が他の一つの少なくとも約1.1倍であることを指す。
【0009】
さらに、上記トランスアミナーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:2に示すアミノ酸配列中の第38位のロイシンをイソロイシンに置換したアミノ酸配列である。
【0010】
本発明の他の一態様によると、上記トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体の符号化を行うヌクレオチドを提供する。
【0011】
さらに、上記ヌクレオチドの配列は以下の配列から選ばれる一つである:a)SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列、b)SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列であって、但し、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列ではないヌクレオチド配列、c)厳密な条件でSEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列と交雑し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列であって、但し、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列ではないヌクレオチド配列。ここで、高度の立体選択性とは、その中の一つの立体異性体の含有量が他の一つの少なくとも約1.1倍であることを指す。
【0012】
本発明の他の一態様によると、上記したヌクレオチドが有効に接続されている組換えベクターを提供する。
【0013】
さらに、組換えベクターはpET22b−CM32又はpET22b−CM33である。
【0014】
本発明の他の一態様によると、上記した組換えベクターにより形質転換又は形質導入される宿主細胞を提供する。
【0015】
本発明の他の一態様によると、ケトン系化合物と、上記トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体と、ピリドキサールリン酸と、アミノ基供与体とを、反応系で反応させてキラルアミンを得るキラルアミンの合成方法を提供する。
【0016】
さらに、上記ケトン系化合物は
【化1】
で、ここで、R1とR2がそれぞれ独自に、C1〜C8アルキル基、C5〜C10ナフテン基、C5〜C10アリール基又はC5〜C10ヘテロアリール基であって、又は、R1とR2がカルボニル基の炭素と協同にC5〜C10複素環基、C5〜C10炭素環基又はC5〜C10ヘテロアリール基を形成し、C5〜C10複素環基とC5〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロ原子がそれぞれ独自に、窒素、酸素、硫黄から選ばれる少なくとも1種であって、C5〜C10アリール基の中のアリール基、C5〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロアリール基、C5〜C10炭素環基中の炭素環基又はC5〜C10複素環基中の複素環基がそれぞれ独自に、置換されていないか又はハロゲン、アルコキシル基又はアルキル基の中の少なくとも一つの基によって置換されたものであって、好ましくは、ケトン系化合物
【化2】

【化3】
から選ばれる。
【0017】
さらに、上記反応系にカオトロピック剤をさらに含有し、カオトロピック剤はジメチルスルホキシド又はポリエチレングリコールであって、ここで、好ましくは、ポリエチレングリコールがPEG−400である。
【0018】
さらに、C1〜C8アルキル基はC1〜C8直鎖アルキル基で、C5〜C10ヘテロアリール基はピリジン基で、アルコキシル基はC1〜C6アルコキシル基で、C5〜C10複素環基の中の複素環基はピペリジンで、C5〜C10アリール基の中のアリール基、C5〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロアリール基、C5〜C10炭素環基中の炭素環基又はC5〜C10複素環基中の複素環基の置換基ははそれぞれ独自に、C1〜C6直鎖アルキル基、C1〜C6アルコキシル基であって、アミノ基供与体はイソプロピルアミン又はD−アラニンである。
【0019】
本発明の技術案を応用すると、高度の立体選択性を有するR型ω−トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体を利用することで、効率的に高いキラル純度のR体のキラルアミンを合成することができ、キラルアミンの産業化生産へ応用できる。
【0020】
本願の一部を構成する図面は本発明を一層理解させるためのもので、本発明における例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈するが、本発明を不当に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に記載のアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)とヒポモナスネプチュニウム(Hyphomonas neptunium)から由来のトランスアミナーゼをキラルアミンの合成に応用した場合の化学反応を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に記載のアスペルギルス・テレウスとヒポモナスネプチュニウムから由来のトランスアミナーゼをキラルアミンの合成に応用した場合の化学反応方程式である。
図3】本発明の実施例1中の制限酵素による消化の認定結果を示す図である。
図4】本発明の実施例1中の突然変異遺伝子をPCRを行った後の測定結果を示す図である。
図5】本発明の実施例4中の制限酵素による消化の認定結果を示す図である。
図6】本発明の実施例4中の突然変異遺伝子をPCRを行った後の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、衝突しない限り、本願の実施例及び実施例中の特徴を互いに結合することができる。以下、図面を参照しつつ実施例を結合して本発明を説明する。
【0023】
定義
用語「選択的/任意」又は「選択的に/任意に」はその後に記載の事件又は状況が発生する可能性があれば発生しない可能性もあることを表し、このような記載は該当事件又は状況が発生する場合と発生しない場合とを含む。例えば、以下の定義によって、「選択的に置換されたアルキル基」は「置換されていないアルキル基」(置換基によって置換されていないアルキル基)又は「置換されたアルキル基」(置換基によって置換されたアルキル基)とを表す。
【0024】
本願に記載のC1〜CnはC1〜C2、C1〜C3、……C1〜Cnを含む。例えば、前記「C1〜C4」基は該部分において1〜4個の炭素原子を含有することを表し、即ち、基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子又は4個の炭素原子を含有することを表す。
【0025】
本願において単独に又は組み合わせて使用される用語「アルキル基」は選択的に置換された直鎖又は選択的に置換された枝分鎖の脂肪族炭化水素系を指す。本願の「アルキル基」は1〜20個の炭素原子を含有することが好ましく、例えば、1〜10個の炭素原子を有し、1〜約8個の炭素原子、又は1〜約6個の炭素原子、又は1〜約4個の炭素原子又は1〜約3個の炭素原子を含有する。本願において、単独に又は組み合わせて使用される用語「アルコキシル基」はアルキル基エーテル基(O−アルキル基)を指し、アルコキシル基の非限定性実施例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を含む。
【0026】
本願において単独に又は組み合わせて使用される用語「ハロゲン」又は「ハロゲン置換」は選択的に置換された基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)の一つ又は複数の水素原子がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子又はその組み合せに置換されたものを指す。
【0027】
本願において単独に又は組み合わせて使用される用語「芳香基/アリール基」は選択的に置換された芳香炭化水素基を指し、6個〜約20個の環炭素原子(環をなすための炭素原子)、例えば6〜12個又は6〜10個の環炭素原子を有する。縮合芳香環又は非縮合芳香環であることができる。
【0028】
本願において単独に又は組み合わせて使用される用語「ヘテロアリール基」は、任意に置換されたの一価ヘテロアリール基を指し、約5〜約20個の骨格環原子、例えば5〜12個又は5〜10個の骨格環原子を有し、ここで、一つ又は複数の(例えば、1〜4個、1〜3個、1〜2個)環原子はヘテロ原子で、前記ヘテロ原子は独立に、酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、セレン、錫から選ばれるヘテロ原子であるが、これに限定されることはない。前記基の環は二つの隣り合うO又はS原子は含まない。ヘテロアリール基は、単一環ヘテロアリール基又は多環ヘテロアリール基(例えば双環ヘテロアリール基、三環ヘテロアリール基等)を含む。
【0029】
本願において単独に又は組み合わせて使用される用語「複素環」又は「複素環基」は非芳香複素環を指し、ヘテロナフテン基とヘテロシクロアルケニル基を含む。ここで、一つ又は複数の(例えば、1〜4個、1〜3個、1〜2個)環原子はヘテロ原子であって、例えば酸素、窒素又は硫黄原子である。複素環基は、単一環複素環基(複素環基が一つの環を有する)又は多環複素環基(例えば、双環複素環基(複素環基が二つの環を有する)、三環複素環基等)を含む。
【0030】
本願において単独に又は組み合わせて使用される用語「炭素環基」は非芳香族の炭素環を指し、ナフテン基とシクロアルケニル基とを含む。ナフテン基は単一環ナフテン基又は多環ナフテン基(例えば、2、3又は4個の環を有し、例えば双環ナフテン基である)であることができ、スピロ又はブリッジリングであることができる。炭素環基は3〜20個の炭素原子を有することができ、例えば3〜15個の環炭素原子又は3〜10個の環炭素原子又は3〜6個の環炭素原子を有することができ、そして、0、1、2又は3個の二重結合及び/又は0、1又は2個の三重結合を有することができる。例えば、3〜8個又は3〜6個の環炭素原子のナフテン基を有する。
【0031】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指し、フッ素、塩素、臭素を指すことが好ましい。シアノ基は「−CN」を指し、ヒドロキシ基は「−OH」を指し、メルカプト基は「−SH」を指し、アミノ基は「−NH2」を指す。
【0032】
用語「置換された」は一つの特定の原子の一つ又は更に多い水素が所定の基によって取り替えられたことを言い、所定の原子の正常な原子価が今の状況で越えていないと、置換後の結果は安定的な化合物である。
【0033】
背景技術部分に記載のように、既存技術におけるω−トランスアミナーゼには依然としてキラルアミン化合物の製造の需要を満たすことのできない欠陥が存在し、上記状況を改善するため、本発明においてR型ω−トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体を提供する。該R型ω−トランスアミナーゼのアミノ酸配列は、下記の配列から選ばれる一つを含み、a)SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列、b)SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性のアミノ酸配列であって、但し、該アミノ酸配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列で符号化されれたアミノ酸配列ではないアミノ酸配列、c)SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列に一つ又は複数のアミノ酸を置換、欠乏又は添加して且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性のSEQ ID NO.:2又は4から派生された蛋白質。ここで、高度の立体選択性とは、その中の一つの立体異性体の含有量が他の一つの少なくとも約1.1倍であることを指す。
【0034】
本発明の上記R型ω−トランスアミナーゼは、高度のR体立体選択性を有するω−トランスアミナーゼを指し、一実施形態において、本発明のトランスアミナーゼは配列がSEQ ID NO.:2又は4に示すようなトランスアミナーゼを指す。上記トランスアミナーゼは、本発明において分子生物学の技術を利用して、アスペルギルス・テレウスとヒポモナスネプチュニウムから由来のトランスアミナーゼ遺伝子taATとtaHNを突然変異及び分子改善を行って新規のトランスアミナーゼを得る。
【0035】
上記SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性のアミノ酸配列とは、SEQ ID NO.:2に示すアミノ酸配列と少なくとも、例えば85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.7%の同一性を有し且つSEQ ID NO.:5に示すアミノ酸配列ではない配列を指す。SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列の中のトランスアミナーゼの触媒活性に核心作用を果たすアミノ酸配列を不変に保持した状況下、当業者であれば他の非活性位のアミノ酸配列を変更させて、得られるトランスアミナーゼのアミノ酸配列をSEQ ID NO.:2に示すアミノ酸配列との同一性が少なくとも80%以上になるようにすることができる。このようにして得られたトランスアミナーゼはアミノ酸配列がSEQ ID NO.:2又は4であるトランスアミナーゼと同一なトランスアミナーゼ活性を具備する。
【0036】
同じ理由により、SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列の中のトランスアミナーゼの触媒活性に核心作用を果たすアミノ酸配列を不変に保持した状況下、上記SEQ ID NO.:2又は4に示すアミノ酸配列の中のアミノ酸において一つ又は複数のアミノ酸を置換、欠乏又は添加を行って、このようにしてSEQ ID NO.:2又は4から派生された蛋白質はSEQ ID NO.:2又は4に示すトランスアミナーゼの高度の立体選択性を保持することができる。ここで、置換、欠乏又は添加を行う塩基性基は一つ又は複数であることができ、例えば1個、2個、3個、4個、5個、10個、20個、30個又は50個のアミノ酸であることができ、例えば保存アミノ酸(conservative amino acid)の置換を行うことができ、ここで、該アミノ酸配列はSEQ ID NO.:5に示すアミノ酸配列ではない。「保存アミノ酸の取り替え」とは、例えばGly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrの組み合せを指す。
【0037】
ここで、立体選択性とは、一つの反応を経てAとBの二つの立体異性体を得た時、Aの生産高がBより多いことを言う。高度の立体選択性とは、その中の一つの立体異性体の含有量が他の一つの少なくとも約1.1倍であることを指し、例えば少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約70倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍であることができ、又は更に高いことも可能である。
【0038】
本発明において、上記R型ω−トランスアミナーゼの修飾物は化学修飾物で、例えばアシル化、アルキル基化、PEG化産物であることができ、これらの修飾物が上記高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性を保留していればよい。上記機能同等物は、R型ω−トランスアミナーゼ活性を実現できる他のポリペプチド破片を指す。上記機能破片は、高度の立体選択性を有する即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼ活性を保留した蛋白質破片を指す。上記変異体は、一つ又は複数(幾つかの)の位置の一つ又は複数のアミノ酸を変更させることで、即ち置換、挿入及び/又は欠乏を行うことでparental蛋白質から派生されるポリペプチドを指す。
【0039】
本発明の一好適な実施例において、上記トランスアミナーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:2に示すアミノ酸配列中の第38位のロイシンをイソロイシンで置換したアミノ酸配列である。このように性質が類似するアミノ酸間の置換を行うことで、このような置換後のアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼがSEQ ID NO.:2に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼの活性及び高度の立体選択性を有することになる。
【0040】
本発明で得られる上記トランスアミナーゼは、高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼであって、効率的に高いキラル純度のR体のキラルアミンを合成することができ、キラルアミンの産業化生産へ応用できる。本発明によると、接合対象及び接合位を好適に選択することで、改善して得た新規のトランスアミナーゼ変異体が蛋白質の折り曲げに影響せず、トランスアミナーゼの活性を保留して高いトランスアミナーゼ活性を有し、且つ高度の立体選択性を有することになる。
【0041】
他の典型的な実施形態において、ヌクレオチドを提供し、該ヌクレオチドによって上記R型ω−トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体の符号化を行う。本発明の上記したR型ω−トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体のヌクレオチドによる符号化ルールは通常のコドン使用テーブルに符合する。
【0042】
本発明の一好適な実施例において、上記ヌクレオチドの配列は、以下の配列から選ばれた一つの配列を含む:a)SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列、b)SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列であって、但し、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列ではないヌクレオチド配列;c)厳密な条件で、SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列と交雑し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列であって、但し、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列ではないヌクレオチド配列。ここで、高度の立体選択性とは、その中の一つの立体異性体の含有量が他の一つの少なくとも約1.1倍であることを指す。
【0043】
上記SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列は、例えば少なくとも、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、99.8%又は99.9%の同一性を有し、ここで、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列ではない。SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列に基づいて、トランスアミナーゼ触媒活性に核心作用を果たすヌクレオチド配列を不変に保持した状況下、当業者であれば他の非活性位のヌクレオチド配列を変更させることで、得られるトランスアミナーゼのヌクレオチド配列がSEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列との同一性が少なくとも80%以上になるようにすることができる。このようにして得たトランスアミナーゼはヌクレオチド配列がSEQ ID NO.:1又は3であるトランスアミナーゼと同一なトランスアミナーゼ活性を具備する。
【0044】
上記厳密な条件で、SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列と交雑し且つ高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列であって、但し、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5又は6に示すヌクレオチド配列ではないヌクレオチド配列、同様に、SEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列に基づいて、厳密な条件で、それと交雑可能であると共に、高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの符号化を行うヌクレオチド配列を選別ことによって得られたSEQ ID NO.:1又は3に示すヌクレオチド配列の変異体配列は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.:1又は3であるトランスアミナーゼと同一なトランスアミナーゼ活性を具備する。
【0045】
ここで、立体選択性とは、一つの反応を経てAとBの二つの立体異性体を生成した時、Aの生産高がBより多いことを指す。高度の立体選択性とは、その中の一つの立体異性体の含有量が他の一つの少なくとも約1.1倍であることを指し、例えば少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約70倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍であることができ、又は更に高いこともできる。
【0046】
一例示的な厳密な条件として、6 X SSC、0.5% SDSの溶液を利用して、65℃で交雑し、その後2 X SSC、0.1 % SDS と 1 X SSC、0.1 % SDSを利用して膜をそれぞれ一回ずつ洗浄する。
【0047】
本発明において使用される用語「同一性」は本分野の通常の既知の意味を持つことを指し、当業者であれば異なる配列間の同一性を測定するルール、標準を理解できる。本発明において異なるレベルの同一性で限定する配列は同時に高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの活性を有しなければならない。当業者であれば該高度の立体選択性即ちR体触媒活性を有するω−トランスアミナーゼの活性を利用して変異体配列を選別する方法及び手段を理解できる。当業者であれば本願に開示された内容から示唆を得てこのような変異体配列を容易に得ることができる。
【0048】
当業者であれば、本発明において前記アミノ酸配列又はポリヌクレオチドを限定する際に「含む」を用いているが、上記アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の両端にその機能と関係ない他の配列を任意に追加できることを意味することではないことを理解できる。当業者であれば、組換え操作の要求を満たすため、前記ポリヌクレオチドの両端に適切な限定性エンドヌクレアーゼの酵素消化位を追加する、又は開始コドン、終了コドン等を別途に追加しなければならないので、閉鎖式の表現で上記配列を限定すると、このような状況をカバーできないことを理解できる。
【0049】
当業者であれば、符号化されれたアミノ酸を変更させない状況下、上記ヌクレオチド配列の中の一つ又は複数のコドンを等同意義での取り替えを行うことが可能であることを理解でき、例えばCTTにより符号化されれたロイシンLeuをCTA、CTC又はCTGに取り替えることができる。取り替えられるコドン数量は一つ又は複数のコドンであることができ、例えば1、2、3、4、5、6、8、9、10、15、20、30、40、50個のコドンであることができる。コドン使用テーブルは本分野の周知のものである。
【0050】
本発明の他の一態様によると組換えベクターを提供し、該組換えベクターに上記したいずれか一つのヌクレオチドが有効に接続されている。本発明の組換えベクターは組換え発現ベクターを含むがこれに限定されることはなく、組換えクローニングベクターを含むこともできる。組換えベクターは原核発現ベクター又は真核発現ベクターであることができ、本発明の一実施例において、上記組換えベクターは発現を誘導可能な組換え原核発現ベクターである。、例えば、pET22bベクターのような、IPTGを利用して遺伝子の発現を誘導したpETシリーズのベクターである。本発明において、SEQ ID NO.:1と SEQ ID NO.:3に示すヌクレオチド配列を有する組換えベクターがpET22b−CM32とpET22b−CM33であることが好ましい。ここで、「有効に接続される」とは、このような接続方式、つまりポリヌクレオチドをベクターの適切な位置に置くことで、ポリヌクレオチドが正確且つ順調にコピー、転写及び/又は翻訳されるようにすることを指す。
【0051】
本発明の他の一態様において宿主細胞を提供し、該宿主細胞は上記したいずれかの組換えベクターが形質転換又は形質導入されている。本発明の宿主細胞は原核宿主細胞と真核宿主細胞とを含み、本発明の一実施例において、上記宿主細胞は原核宿主細胞で、例えば大腸菌であって、大腸菌DH5α(DE3)であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明の他の一態様においてキラルアミンの合成方法を提供し、該方法は、ケトン系化合物と、上記したいずれかのR型ω−トランスアミナーゼ又はその修飾物、機能同等物、機能破片又は変異体と、ピリドキサールリン酸と、アミノ基供与体とを反応系で反応させてキラルアミンを得ることを含む。本発明のキラルアミンの合成方法によると、本分野の通常の生物酵素触媒反応によってキラル化合物を製造する方法に基づいて、本発明のランスアミナーゼを利用して、反応系の各種の反応原料の成分、比例、使用量、pH値、温度、反応時間等のパラメータを適切に変更させている。
【0053】
本発明の一好適な実施例において、上記ケトン系化合物は
【化4】
であって、ここで、R1とR2がそれぞれ独自に、C1〜C8アルキル基、C5〜C10ナフテン基、C5〜C10アリール基又はC5〜C10ヘテロアリール基であって、又はR1とR2がカルボニル基の炭素と協同にC5〜C10複素環基、C5〜C10炭素環基又はC5〜C10ヘテロアリール基を形成し、C5〜C10複素環基とC5〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロ原子はそれぞれ独自に、窒素、酸素、硫黄から選ばれる少なくとも一つであって、C5〜C10アリール基中のアリール基、C5〜C10ヘテロアリール基中のヘテロアリール基、C5〜C10炭素環基中の炭素環基又はC5〜C10複素環基中の複素環基はそれぞれ独自に、置換されておらず又はハロゲン、アルコキシル基又はアルキル基の中の少なくとも一つの基によって置換され、そして、好ましくは、ケトン系化合物
【化5】

【化6】
から選ばれる。上記ケトン系化合物は商業化された原料又は簡単に製造できる原料であって価格が低く、大量生産の需要を満たすことができる。
【0054】
本発明の他の一好適な実施例において、上記反応系にカオトロピック剤をさらに含有し、カオトロピック剤はジメチルスルホキシド又はポリエチレングリコールであって、好ましくは、ポリエチレングリコールがPEG−400である。カオトロピック剤は反応が順調に行われるように上記原料を良好に溶解させる作用を果たし、PEG−400は溶解触媒効果が一層良好である。
【0055】
本発明の他の好適な実施例において、上記C1〜C8アルキル基はC1〜C8直鎖アルキル基で、C5〜C10ヘテロアリール基はピリジン基で、アルコキシル基はC1〜C6アルコキシル基で、C5〜C10複素環基の中の複素環基はピペリジンであって、C5〜C10アリール基の中のアリール基、C5〜C10ヘテロアリール基の中のヘテロアリール基、C5〜C10炭素環基の中の炭素環基又はC5〜C10複素環基の中の複素環基の置換基はそれぞれ独自に、C1〜C6直鎖アルキル基、C1〜C6アルコキシル基であって、アミノ基供与体はイソプロピルアミン又はD−アラニンである。上記原料は商業化された原料又は簡単に製造できる原料であって、価格が低く、大量生産の需要を満たすことができる。
【0056】
本発明の一好適な実施例において、上記反応系は反応系のpH値を7.0〜9.5の範囲に維持するための緩衝液を含有し、及び/又は、ケトン系化合物とカオトロピック剤の使用量の比例は1g/1mL〜15mLであって、及び/又は、ケトン系化合物と緩衝液の使用量の比例は1g/15mL〜50mLであって、及び/又は、ケトン系化合物とピリドキサールリン酸の使用量の比例は1g/0.01g〜0.1gであって、及び/又は、ケトン系化合物とアミノ基供与体の使用量の比例は1eq/1eq〜5eqであって、及び/又は、ケトン系化合物とR型ω−トランスアミナーゼの使用量の比例は1g/0.2g〜10gであって、及び/又は、反応系の温度は20〜45℃であって反応時間は12h〜48hであって、及び/又は、緩衝液はリン酸塩緩衝液又はpH=9.3〜9.5のトリエタノールアミン緩衝液である。
【0057】
本発明の他の一好適な実施例において、上記方法はさらに、塩基で反応系をpH≧10まで調節し、有機溶剤で水相中の製品であるキラルアミンを抽出する工程を含み、好ましくは、塩基が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで、有機溶剤が酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル又は2−メチルテトラヒドロフランである。
【0058】
本発明の他の一典型的な実施形態において、上記したいずれかの方法で合成されるR型キラルアミンを提供する。本発明の上記トランスアミナーゼを用いて製造したR型キラルアミンのキラルアミン純度は高く、98%以上に達する。
【0059】
以下、具体的な実施例を結合して本発明の有益な効果を説明する。
【0060】
以下の実施例において、特別な説明がないと、いずれも通常の方法を利用していて、特別な説明がないと、用いられる実験材料はいずれも商業会社から容易に入手可能なものである。
【実施例】
【0061】
実施例1:アスペルギルス・テレウスとヒポモナスネプチュニウムから由来のトランスアミナーゼAH−TACM33の製造
本発明のトランスアミナーゼAH−TACM33の製造方法の具体的な工程は以下のとおりである:
【0062】
(1)鋳型の構築:
生工生物工程(上海)有限会社に依頼して、アスペルギルス・テレウスとヒポモナスネプチュニウムから由来のトランスアミナーゼ遺伝子taAT(アスペルギルス・テレウス)(そのヌクレオチド配列は配列表中のSEQ ID NO.:5に示す遺伝子配列であって、アミノ酸配列はSEQ ID NO.:23に示すとおりである)とtaHN(ヒポモナスネプチュニウム)(そのヌクレオチド配列は配列表中のSEQ ID NO.:6に示す遺伝子配列であって、アミノ酸配列はSEQ ID NO.:24に示すとおりである)とを全遺伝子合成し、合成されたtaAT遺伝子とtaHNをベクターpUC57に接続して組換えプラスミドpUC57−taATとpUC57−taHNを得た。その後、NdeIとXhoI制限性エンドヌクレアーゼを利用して、組換えプラスミドpUC57−taATとpUC57−taHNを同時に酵素消化を行って、ゲル回収を経て純化された回収破片taATとtaHNを得て、後続のPCR の鋳型とした。
【0063】
(2)プライマーの設計:
アスペルギルス・テレウス由来のトランスアミナーゼ遺伝子に基づいて設計した特異性プライマーは以下のとおりである:
taAT A: 5’−CCGCTCGAGGTTACGCTCGTTGTAGTCAATTTC−3’ (SEQ ID NO.:7)
taAT S: 5’−GGAATTCCATATGGCGTCTATGGACAAAG−3’ (SEQ ID NO.:8)
【0064】
ヒポモナスネプチュニウム由来のトランスアミナーゼ遺伝子に基づいて設計した特異性プライマーは以下のとおりである:
taHN A: 5’−CCGCTCGAGCGGTGCATAGGTTACCGGTTC−3’ (SEQ ID NO.:9)
taHN S:5’−GGAATTCCATATGCTGACCTTCCAAAAAGTACTGAC−3’ (SEQ ID NO.:10)
【0065】
同時に異なる位に基づいて6対のプライマーを設計した:
CM31A:5’−GAACTTCAGACCGCGGGTGACAATCAG−3’ (SEQ ID NO.:11)
CM31S:5’− CACCCGCGGTCTGAAGTTCCTGC −3’ (SEQ ID NO.:12)
CM32A:5’− CGGCGGAACACGACGAACGGTACG −3’ (SEQ ID NO.:13)
CM32S:5’− TTCGTCGTACTCCGCCGGGCGCAC −3’(SEQ ID NO.:14)
CM33A:5’− TAGCCTGCGCCCTCGGTCAGGTGAG −3’ (SEQ ID NO.:15)
CM33S:5’− GACCGAGGGCGCAGGCTACAATATC −3’ (SEQ ID NO.:16)
CM34A:5’− CCCTTCAGACCACGCGTAACGATGATC −3’ (SEQ ID NO.:17)
CM34S:5’− TTACGCGTGGTCTGAAGGGTGTGCGTG −3’ (SEQ ID NO.:18)
CM35A:5’− CCAGGCGGAGTACGACGTACAGTACGAG −3’ (SEQ ID NO.:19)
CM35S:5’− TACGTCGTGTTCCGCCTGGCGCAATC −3’ (SEQ ID NO.:20)
CM36A:5’− GCCGCTGCCTTCCGTCGCGTTACC −3’ (SEQ ID NO.:21)
CM36S:5’− GACGGAAGGCAGCGGCTTCAACATC −3’ (SEQ ID NO.:22)
【0066】
(3)新規のトランスアミナーゼの取得:
アスペルギルス・テレウス由来のトランスアミナーゼ遺伝子に基づいて設計した特異性プライマーtaAT S(順方向プライマー)と上記6対のプライマーの中の三つの逆方向プライマー(CM31A、CM32A、CM33A)の中のいづれか一つの逆方向プライマーとを組み合せし、アスペルギルス・テレウス由来のトランスアミナーゼ遺伝子の破片を拡張し、又は、taHN A(逆方向プライマー)と上記6対のプライマーの中の三つの順方向プライマー(CM36S、CM35S、CM34S)の中的いづれか一つとを組み合せして、ヒポモナスネプチュニウム由来のトランスアミナーゼ遺伝子の破片を拡張した。その後、上記拡張して得た出所の異なる二つの破片を整合させて、改善されたトランスアミナーゼ遺伝子を得た。
【0067】
同様に、アスペルギルス・テレウス由来のトランスアミナーゼ遺伝子に基づいて設計した特異性プライマーtaAT A(逆方向プライマー)と上記6対のプライマーの中の三つの順方向プライマー(CM33S、CM32S、CM31S)の中のいづれか一つの順方向プライマーとを組み合せして、アスペルギルス・テレウス由来のトランスアミナーゼ遺伝子の破片を拡張し、又は、taHN S(順方向プライマー)と上記6対のプライマーの中の三つの逆方向プライマー(CM34A、CM35A、CM36A)の中のいずれか一つとを組み合わせして、ヒポモナスネプチュニウム由来のトランスアミナーゼ遺伝子の破片を拡張した。その後、上記拡張して得た出所の異なる二つの破片を整合させて、改善されたトランスアミナーゼ遺伝子を得た。
【0068】
具体的な改善ステップを、taAT S順方向プライマーとCM33A逆方向プライマーにより拡張された破片とtaHN A逆方向プライマーとCM33S順方向プライマーにより拡張された破片とを整合して得たトランスアミナーゼ及びtaAT S順方向プライマーとCM32A逆方向プライマーにより拡張された破片とtaHN A逆方向プライマーとCM32S順方向プライマーにより拡張された破片とを整合して得たトランスアミナーゼを例に詳しく説明する。
【0069】
以下はトランスアミナーゼAH−TACM33を取得するプロセスである:
(1)破片Aの取得:上記回収破片taATをPCR 鋳型とし、taAT SとCM33Aをプライマーとして、PCR 拡張を行って、産物をゲル回収して純化すると、破片Aである。
【0070】
(2)破片Bの取得:上記回収破片taHNをPCR 鋳型とし、taHN AとCM33Sをプライマーとして、PCR 拡張を行って、産物をゲル回収して純化すると、破片Bである。
【0071】
(3)破片CM33の取得:上記取得した破片Aと破片Bをそれぞれ鋳型及びプライマーとし、PCR 拡張を5個循環行った後、直接にPCR体系にプライマーtaAT SとtaHN Aを添加し、PCR拡張を重ねて、産物をゲル回収して純化すると、破片CM33である。
PCR体系:破片A 1μL、破片B 1μL、PCR MIX 5μL、ddH2O 4.5μL;
PCR プログラム:95℃ 3min;(95℃ 30s、57℃ 30s、72℃ 90s、5個循環);72℃ 1min;
体系にプライマーtaAT SとtaHN Aをそれぞれ 0.2μL添加する。
PCR プログラム:95℃ 3min;(95℃ 30s、57℃ 30s、72℃ 90s、30個循環);72℃ 10min。
【0072】
(4)組換えプラスミドpET22b−CM33の取得:NdeIとXhoIを用いて、上記破片CM33とpET−22b(+)とを同時に酵素消化を行って、T4 DNA接続酵素で接続反応させ、接続産物を大腸菌DH5α菌株の受容性細胞に形質転換し、振分盤による復活を経て、アンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLBペトリ皿に塗布し、37℃の培養器で一夜培養する。上記ペトリ皿上のシングルコロニーを選択してアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質に接種し、37℃、180r/minで一夜振動培養し、プラスミドを抽出し、PCR と酵素消化認定を行って、酵素消化認定結果は図3に示す。
【0073】
図3はpET22b−CM33プラスミドをNdeI酵素とXhoI酵素との二つの酵素消化を経た後の認定結果を示す図で、1はpET22b空きベクターを表し、2はDNA分子サイズマークを表し(上から下へそれぞれ、10000bp、8000bp、6000bp、5000bp、4000bp、3500bp、3000bp、2500bp、2000bp、1500bp、1000bp、750bp、500bp、250bp)、3はpET22b−CM33−DH5αを表す。図3に示すように、酵素消化後の破片サイズが1000bp程度である比較的に弱いストライプが目標破片であって(目標破片を切り出した後のプラスミドストライプは比較的に強い)、これにより、組換えプラスミドpET22b−CM33の挿入配列の挿入方向及びサイズは正確であることを確定することができ。
【0074】
(5)BL21/pET22b−CM33の取得:上記取得した組換えプラスミドpET22b−CM33を直接に大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、振分盤による復活を経てアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLBペトリ皿に塗布し、37℃で一夜培養する。上記ペトリ皿中のシングルコロニーを選択してアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質5mLに接種し、37℃、180r/min で一夜培養する。菌液を生工生物工程(上海)有限会社に持っていて測定し、遺伝子番号の測定を経て正確と検定された後、BL21/pET22b−CM33と命名した。
【0075】
ここで、番号の測定結果を図4に示した。図4に示すように、番号測定の結果においてBL21/pET22b−CM33プラスミドが含む遺伝子配列は予期したものと完全に一致し、突然変異した塩基はなかった。番号測定を経て正確であると検定されると、該組換えプラスミドが目標プラスミド配列である。
【0076】
(6)AH−TACM33トランスアミナーゼの製造:上記BL21/pET22b−CM33菌液をアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質に接種し、37℃、180r/minで、OD600値が0.6〜0.8になるまで振動培養し、最終濃度が0.2mMになるまでIPTGを添加し、培養液を25℃にして誘導発現し、16h誘導した後、菌液を取り出し、12000r/minで10min遠心処理して菌体を得た。菌体を細胞破砕し、4℃、12000r/minで、20min遠心処理を経て、上澄みを取得し、それが製造されたトランスアミナーゼAH−TACM33であって、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.:4に示すとおりで、対応するヌクレオチド配列はSEQ ID NO.: 3に示すとおりであった。
【0077】
実施例2:AH−TACM33トランスアミナーゼの活性テスト1
反応瓶に1g主原料(N−Boc−3−ピペリドン、CAS:98977−36−7)と1mL ジメチルスルホキシドを投入し、原料を分散させた後、50mL 0.2mol/Lの氷浴条件で濃い塩酸でpHを9.3〜9.5まで調節したトリエタノールアミン緩衝液、0.765g イソプロピルアミン、0.01gピリドキサールリン酸、0.01g上記AH−TACM33トランスアミナーゼを添加し、体系のpHは9.5で、30℃の恒温で12h攪拌した。体系のpHを2N NaOHを用いて10以上に調節し、酢酸エチルを利用して二回抽出し、有機相を乾燥、ろ過、濃縮して粗生成物を得て(中国語名称:(R)−1−N−Boc−3−アミノ基ピペリジン、CAS:188111−79−7)、ガスクロマトグラフィー(GC)検定の結果、形質転換率は90%で、e.e値は100%であった。
得られた製品の核磁気データは、1H−NMR(300 MHz、CDCl3)δ 4.00−3.78(m,2h)、3.80(m,2h)、3.60(m,1H)、1.90(m,1H)、1.70(m,1H)、1.60−1.40(m,12H)、1.30(m,1H)ppmである。
【0078】
得られた製品の核磁気データは、1H−NMR(300 MHz、CDCl3)δ 4.00−3.78(m,2h)、3.80(m,2h)、3.60(m,1H)、1.90(m,1H)、1.70(m,1H)、1.60−1.40(m,12H)、1.30(m,1H)ppmである。
【0079】
実施例3:AH−TACM33トランスアミナーゼの活性テスト2
反応瓶に0.1g主原料(2,4−ジクロロアセトフェノン、CAS: 2234−16−4)と1.5 mLポリエチレングリコールPEG−400を投入し、原料を分散させた後、23.5mLリン酸塩緩衝液(pH8.0)、0.031 gイソプロピルアミン、0.0075gピリドキサールリン酸、0.02g 上記AH−TACM33トランスアミナーゼを添加し、体系のpHは8.0で、45℃の恒温で20h攪拌した。体系のpHを2N NaOHを利用して10以上に調節し、酢酸エチルを利用して二回抽出し、有機相を乾燥、ろ過、濃縮して粗生成物([(R)−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]アミン、CAS:133773−29−2)を得て、GC検定の結果、形質転換率は82%で、e.e値は100%であった。
【0080】
得られた製品の核磁気データは、1H NMR(400 MHz,DMSO D6):δ=7.67(d 1H)、7.60(d,1H)、7.47(dd,1H)、7.34(dd,4H)、7.23−7.12(m,6H)、4.84(s,1H)、4.47(quartet,1H)、1.31(d,3H)である。
【0081】
実施例4:アスペルギルス・テレウスとヒポモナスネプチュニウム由来のトランスアミナーゼAH−TACM32の製造
本発明のトランスアミナーゼAH−TACM32の製造方法は以下の工程を含む。
【0082】
(1)鋳型の構築:
実施例1に記載の方法に従って組換えプラスミドpUC57−taAT とpUC57−taHNを取得した。NdeIとXhoI制限性エンドヌクレアーゼを利用して、組換えプラスミドpUC57−taATとpUC57−taHNとを同時に酵素消化を行って、ゲル回収し純化して、回収破片taATとtaHNを得て、次のPCRの鋳型とした。
【0083】
(2)プライマーの設計:
実施例1と同じである。
【0084】
(3)新規のトランスアミナーゼの取得:
(1)破片Eの取得:上記回収破片taATをPCR 鋳型とし、taAT SとCM32Aをプライマーとし、PCR 拡張を行って、産物をゲル回収して純化すると、破片Eである。
【0085】
(2)破片Fの取得:上記回収破片taHNをPCR 鋳型とし、taHN AとCM32Sをプライマーとし、PCR 拡張を行って、産物をゲル回収して純化すると、破片Fである。
【0086】
(3)破片CM32の取得:上記取得した破片Eと破片Fをそれぞれ鋳型及びプライマーとし、PCR拡張を5個循環を行った後、直接にPCR体系にプライマーtaAT SとtaHN Aを添加し、PCR拡張を重ねて、産物をゲル回収して純化すると、破片CM32である。
【0087】
(4)組換えプラスミドpET22b−CM32の取得:NdeIとXhoIを利用して、上記破片CM32とpET−22b(+)とを同時に酵素消化を行って、T4 DNA接続酵素で接続反応させ、接続産物を大腸菌DH5α菌株の受容性細胞に形質転換し、振分盤による復活を経て、アンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLBペトリ皿に塗布し、37℃の培養器で一夜培養する。上記ペトリ皿上のシングルコロニーを選択してアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質に接種し、37℃、180r/minで一夜振動培養し、プラスミドを抽出し、PCRと酵素消化認定を行って、酵素消化認定結果は図5に示す。
【0088】
図5はpET22b−CM32プラスミドをNdeI酵素とXhoI酵素との二つの酵素消化を経た後の認定結果を示す図で、1はDNA分子サイズマークを表し(上から下へそれぞれ、10000bp、8000bp、6000bp、5000bp、4000bp、3500bp、3000bp、2500bp、2000bp、1500bp、1000bp、750bp、500bp、250bp)、2はpET22b−CM32−DH5αを表し、3はpET22b空きベクターを表す。
【0089】
図5に示すように、制限酵素消化後の破片サイズが1000bp程度である比較的に弱いストライプが目標破片であって(目標破片を切り出した後のプラスミドストライプは比較的に強い)、これにより、組換えプラスミドpET22b−CM32の挿入配列の挿入方向及びサイズは正確であることを確定することができ、組換えプラスミドpET22b−CM32を取得できる。
【0090】
(5)BL21/pET22b−CM32の取得:上記取得した組換えプラスミドpET22b−CM32を直接に大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、振分盤による復活を経てアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLBペトリ皿に塗布し、37℃で一夜培養する。上記ペトリ皿中のシングルコロニーを選択してアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質5mLに接種し、37℃、180r/min で一夜培養する。菌液を生工生物工程(上海)有限会社に持っていて番号測定し、遺伝子の番号測定を経て正確と検定された後、BL21/pET22b−CM32と命名した。
【0091】
ここで、番号測定結果を図6に示した。図6に示すように、番号測定の結果においてBL21/pET22b−CM32プラスミドが含む遺伝子配列は予期したものと完全に一致し、突然変異した塩基はなかった。番号測定を経て正確であると検定されると、該組換えプラスミドが目標プラスミド配列である。
【0092】
(6)AH−TACM32トランスアミナーゼの製造:上記BL21/pET22b−CM32菌液をアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質に接種し、37℃、180r/minで、OD600値が0.6〜0.8になるまで振動培養し、最終濃度が0.2mMになるまでIPTGを添加し、培養液を25℃にして誘導発現し、16h誘導した後、菌液を取り出し、12000r/minで10min遠心処理して菌体を得た。菌体を細胞破砕し、4℃、12000r/minで、20min遠心処理を経て、上澄みを取得し、それが製造されたトランスアミナーゼAH−TACM32であって、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.:2に示すとおりで、対応するヌクレオチド配列はSEQ ID NO.: 1に示すとおりであった。
【0093】
実施例5:AH−TACM32トランスアミナーゼの活性テスト
反応瓶に0.1g主原料(2−アセトナフトン、CAS:93−08−3)と1mLポリエチレングリコールPEG−400を投入し、原料を分散させた後、24mLリン酸塩緩衝液(pHが7.0)、0.17gイソプロピルアミン、0.01gピリドキサールリン酸、0.004g上記AH−TACM32トランスアミナーゼを添加し、体系のpHは7.0で、20℃の恒温で48h攪拌した。体系のpHを2N NaOHを利用して10以上に調節し、酢酸エチルを利用して二回抽出し、有機相を乾燥、ろ過、濃縮して粗生成物(((R)−(+)−1−(2−ナフチル)エチルアミン、CAS:3906−16−9)を得て、GC検定の結果、形質転換率は20%で、e.e値は100%であった。
【0094】
得られた製品の核磁気データは、1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ7.86−7.76(m,4H)、7.52−7.41 (m,3H)、4.29(q,J = 6.4 Hz,1H)、1.74(br s,2H)、1.48(d,J = 6.4 Hz,3H)である。
【0095】
本発明において、主原料で(2−アセトナフトン、CAS:93−08−3)トランスアミナーゼAH−TACM33のトランスアミナーゼ活性をテストし、主原料(N−Boc−3−ピペリドン、CAS:98977−36−7)と主原料(2,4−ジクロロアセトフェノン、CAS: 2234−16−4)でトランスアミナーゼAH−TACM32のトランスアミナーゼ活性をテストし、具体的な方法は上記実施例と同じである。
【0096】
実施例6
アミノ酸配列がSEQ ID NO.:2であるトランスアミナーゼであるAH−TACM32を基に、該トランスアミナーゼを第38位のロイシンに突然変異させて、ロイシンをイソロイシンに置換して、配列がSEQ ID NO.:25であるトランスアミナーゼを得た。
【0097】
該トランスアミナーゼに酵素活性テストを行って検定し、検定工程は以下のようである:
突然変異体菌液をアンピシリンを最終濃度50μg/mL含有するLB液体培養基質100mLに接種し、37℃、180r/minで、OD600値が0.6〜0.8になるまで振動培養し、最終濃度が0.2mMになるまでIPTGを添加し、培養液を25℃にして誘導発現し、同時に、IPTG誘導剤を添加していない培養液を陰性対照とした。16h誘導した後、菌液を取り出して、12000r/minで、5min遠心処理して菌体を収集した。0.5gの菌体を計って再懸濁させ2.5mL 0.1Mリン酸塩緩衝液(pH8.0)菌体と超音波破砕器で細胞破砕し、超音波パラメータはプローブ直径が6mmで、出力が200Wで、2s動作し、6s間欠的に休憩し、合計で10min行って、超音波処理後に4℃、12000r/minで、20min遠心処理して超音波上澄みと沈殿物を得て、上澄みは酵素活性のテスト反応へ用いた。
【0098】
反応瓶に0.1g主原料(アセトフェノン、CAS:98−86−2)を投入して、原料を13.5mL 0.1M リン酸塩緩衝液(pH8.0)と、0.356g D−アラニンと、0.002g β−NAD+と、0.0192g 乳酸脱水素酵素と、0.006g グルコース脱水素酵素と、0.432 グルコースと、0.004g ピリドキサールリン酸と、2.5mL 配列がSEQ ID NO.:25であるR体Ω−トランスアミナーゼとに分散させ、体系のpHは7.0で、30℃の恒温で16h攪拌した。体系のpHを2N NaOHを利用して10以上に調節し、酢酸エチルを利用して二回抽出し、有機相を乾燥、ろ過、濃縮して粗生成物 (中国語名称:(R)−1−フェネチルアミン,CAS:3886−69−9)を得て、ガスクロマトグラフィー(GC)検定の結果、形質転換率は83%で、e.e値は99.5%であった。
【0099】
得られた製品の核磁気データは、1H NMR (CDCl3,400 MHz,300 K)δ (ppm):7.36−7.29(m,4H)、7.26−7.19(m,1H)、4.11(q,J=6.6 Hz,1H)、1.53 (bs,2h)、1.38(d,J=6.6 Hz,3H)である。
【0100】
当該結果から分かるように、本発明の上記実施例中のトランスアミナーゼによると、いずれも類似する収率及び鏡像体の純度を得られ、対応するR体キラルアミンを得ることができる。
【0101】
上述のように、本発明の上記実施例によると、以下のような技術効果を実現できる:本発明に開示された新規のトランスアミナーゼは、アミノ基供与体の中のアミノ基がプロキラルケトン又はアルデヒド系へ移転することを触媒し、対応するR体のキラルアミンを生成する。本発明の新規のトランスアミナーゼの合成方法によると高純度の目標産物が得られ、得られた製品の光学純度は98%以上に安定することになる。上述した合成方法に用いられる原料は容易に入手できるものであって、方法は簡単で、化学反応の条件は温和であって、収率及び鏡像体の純度も高く、生産全般において操作が簡単で、実行可能なものであって且つ汚染の低い合成工程で、キラルアミンの製造のために新しいルート及び方法を提供した。
【0102】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者であれば本発明に様々な修正や変形が可能である。本発明の精神や原則内での如何なる修正、置換、改良などは本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]