(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367945
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】可動家具部品用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/453 20170101AFI20180723BHJP
A47B 88/40 20170101ALI20180723BHJP
【FI】
A47B88/00 H
A47B88/04 E
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-536198(P2016-536198)
(86)(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公表番号】特表2016-538941(P2016-538941A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】AT2014000186
(87)【国際公開番号】WO2015081350
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】A926/2013
(32)【優先日】2013年12月3日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デューバッハ,フレディ
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−526984(JP,A)
【文献】
特表2013−500806(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/84593(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動家具部品(2)を開き位置(OS)から閉じ位置(SS)に引き込むための引込み装置(3)を備えた、可動家具部品(2)用の駆動装置(1)であって、
前記引込み装置(3)は、
ハウジング(4)と、
前記ハウジング(4)に形成されると共に保持セクション(6)を有するガイド路(5)と、
前記ガイド路(5)内で前記ハウジング(4)に対して移動可能であると共に、前記保持セクション(6)にロック可能な引込みスライド(7)と、
前記引込みスライド(7)を付勢する引込み力貯蔵手段(8)と、
を備えており、
前記引込みスライド(7)は、前記保持セクション(6)に対応するところの第1の端位置(E1)と、前記閉じ位置(SS)に対応するところの第2の端位置(E2)との間を、前記ガイド路(5)に沿って移動可能である、駆動装置(1)において、
(i) 前記ハウジング(4)は、ベース部(9)と、スライド部(10)とを有し、前記スライド部(10)は、少なくとも第1のスライド部位置(S1)と第2のスライド部位置(S2)との間で前記ベース部(9)に対し移動可能であること
により、前記ガイド路(5)に沿った前記端位置(E1,E2)の相互間の距離(A)が可変である、ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ガイド路(5)に沿っての前記引込みスライド(7)の第1の端位置(E1)と第2の端位置(E2)との間の距離(A)は、第2のスライド部位置(S2)における場合よりも第1のスライド部位置(S1)において大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ガイド路(5)は前記スライド部(10)に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記スライド部(10)は、ブロック位置(B)におけるブロック装置(11)によって、前記第1のスライド部位置(S1)に固定可能である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ブロック装置(11)は、前記スライド部(10)に形成された移動可能なラッチ(12)と、前記ベース部(9)に形成された前記ラッチ(10)用のストップ(13)とを備えている、ことを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記可動家具部品(2)を前記閉じ位置(SS)から開き位置(OS)に押し出すためのエジェクト装置(14)を備えている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記可動家具部品(2)を前記閉じ位置(SS)から開き位置(OS)に押し出すためのエジェクト装置(14)を備えており、
前記エジェクト装置(14)は、前記引込み装置(3)と接続されることができ、
前記エジェクト装置(14)はトリガー要素(15)を備えており、
当該トリガー要素(15)によって、前記ブロック装置(11)は、前記ラッチ(12)が前記ストップ(13)に当接するところのブロック位置(B)から、前記エジェクト装置(14)の引込み装置(3)との接続時に前記トリガー要素(15)によって前記ラッチ(12)が前記ストップ(13)から解放されるところの解放位置(L)に移動可能であり、これにより、前記ガイド路(5)に沿った前記端位置(E1,E2)の相互間の距離(A)が、前記エジェクト装置(14)の前記引込み装置(3)との接続によって変えられ得る、ことを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記エジェクト装置(14)は、固定装置(17)によって前記引込み装置(3)に固定され得る、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記エジェクト装置(14)用のガイド要素(16)が前記引込み装置(3)上に形成されており、前記エジェクト装置(14)は、前記ガイド要素(16)によってガイドされるスライド動作(S)を介して前記固定装置(17)によって前記引込み装置(3)に固定され得る、ことを特徴とする請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記引込み装置(13)のスライド部(10)は、前記エジェクト装置(14)の前記スライド動作(S)時に、前記第1のスライド部位置(S1)から前記第2のスライド部位置(S2)に移動可能である、ことを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の可動家具部品用の駆動装置(1)を備えた家具製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動家具部品を開き位置から閉じ位置に引き込むための引込み装置を備えた、可動家具部品用の駆動装置であって、
前記引込み装置は、ハウジングと、前記ハウジングに形成されると共に保持セクションを有するガイド路と、前記ガイド路内で前記ハウジングに対して移動可能であると共に前記保持セクションにロック可能な引込みスライドと、前記引込みスライドを付勢する引込み力貯蔵手段とを備えており、
前記引込みスライドは、前記保持セクションに対応するところの第1の端位置と、前記閉じ位置に対応するところの第2の端位置との間を、前記ガイド路に沿って移動可能である、可動家具部品用の駆動装置に関する。
本発明は更に、そのような駆動装置を具備した家具製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具用の金物(又は付属物)の産業分野では、何年も前から、例えば引き出しのような家具部品を動かすために機械的な駆動装置が存在している。これは、家具部品を押すこと又は引っ張ることによってエジェクト動作(取出し動作)が機械的にサポートされ、又は完全に行われるというやり方で達成される。また、閉じ動作は、いわゆる引込み装置(retracting device)によって達成されることができ、その結果、引き出しは閉じ位置まで手動で押される必要は無く、とりわけ閉じ動作の最後の動作区間はその通りである。
【0003】
今日、これらの実際には反対の動作である引込みとエジェクト操作(押出し)を結合するという趣旨での努力が、数年にわたって存在する。反対に作用する力が互いに邪魔をしないということが、特に保障されなければならない。それに対する一つの可能性が、個々の力貯蔵手段の張力経路の最適配置にある。個々の力貯蔵手段のバネ力を異なったものにすることも可能性がある。更なる可能性は、バネ力を調節可能にすることにも存在する。このように既に、様々な構成がこれらの変形例でもって設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】(特になし)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に比べて、代替的な又はより良い駆動装置を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これは、請求項1の特徴を備えた駆動装置によって達成される。それによれば、ガイド路に沿った(二つの)端位置の相互間の距離が可変である。換言すれば、引込みスライド(retracting slide)のトラベル(行程)が変えられる。このことは、引込み経路をそれぞれの状況に個別に適応させることを可能にする。例えば、相対的に小さな引き出しがあるときには、短い引込み経路で既に十分である。しかしながら、それとは逆に、引き出しは、その重量のために、及び、手動閉じ時に引込み経路に到達する前に既に存する摩擦のために停止させられるということも起こり得る。この、半開き引き出しでの望まない停止は、引込み経路(二つの端位置の相互間の距離)を延ばすことによって防止可能である。
【0007】
基本的に、(二つの)端位置間の距離は、取り外し可能な
(複数の)制限ストップ材(limit
stops)によって、又は
、境界を区切る(複数の)要素によって調節可能とすることが可能である。ただし、好ましくは、ハウジングがベース部とスライド部とを有し、前記スライド部が、少なくとも第1の
位置と第2の
位置との間で前記ベース部に対し移動可能である。スライド部の
位置によっても、端位置間の距離は異なる。
【0008】
更に好ましい態様によれば、ガイド路に沿っての前記引込みスライドの第1の端位置と第2の端位置との間の距離は、第2の
位置における場合よりも第1の
位置において大きい。具体的には、ガイド路におけるトラベル(行程)は、スライド部の第2の
位置への移動によって拡大される。
【0009】
原理上、スライド部は、ガイド路から分離して形成される引込みスライド用の制限ストップ材を形成することができる。ただし、好ましくは、ガイド路の少なくとも一部はスライド部に形成される。特に好ましくは、ガイド路の全体が、引込み装置のハウジングのスライド部に形成される。
【0010】
スライド部の位置の設定をできるだけ容易なものとするために、スライド部が、ブロック装置によって、前記第1の
位置に対応するブロック位置にセット可能であることは好ましい。それに応じて(相応に)、前記ブロック装置のブロック位置はセット解除可能であり、これにより、スライド部は前記第1の
位置から前記第2の
位置に動かされることができる。このブロック装置それ自体は、スライド部とベース部との間で別個のコンポーネントとして働くことができる。好ましくは、ブロック装置は、前記スライド部に形成された(好ましくは弾性的に)移動可能なラッチと、前記ベース部に形成された前記ラッチ用のストップ(ストップ材またはストップ部)とを備えている。
【0011】
冒頭で既に述べたように、可動家具部品用の現代の駆動装置には、引込み装置だけが設けられているわけではない。ましてや、好ましい実施形態によれば、当該駆動装置はまた、可動家具部品を閉じ位置から開き位置に押し出す(又は取り出す)ためのエジェクト装置を有している。このエジェクト装置は部分的に、引込み装置に統合(合体)されることができ、その結果、引込み装置とエジェクト装置とは、家具アイテム上に又は可動家具部品上に取り付けるための構造ユニットを形成する。
【0012】
ただし、より柔軟性を高めるために、引込み装置とエジェクト装置とが、個別に提示され且つ販売され得る分離した構造ユニットとして製造されることが好ましい。この点で、個々の構造ユニットがそれ自体で完全に機能し、且つ、できるだけ簡単に取り付け可能であることが重要である。
【0013】
しかしながら、今、両方の構造ユニットが全く同一の家具アイテム又は可動家具部品に取り付けられるならば、それぞれが相手を邪魔しない(妨害しない)ように機能することが重要である。このことは特に、エジェクト装置が既存の引込み装置に据え付けられるときに重要である。これまで、個々の機能を制限せずに使用することを可能とするために、引込み装置は、エジェクト装置を据え付ける際には交換されなければならない。というのも、エジェクト装置の使用時に、引込み装置はより短い引込み経路に沿って引き込むことができるだけだからである。
【0014】
既に取り付けられている引込み装置の交換を防止するために、最初から、変更可能な引込み経路を備えた本発明に従う引込み装置が取り付けられる。かくして、この引込み装置は、任意的に、エジェクト装置を伴って据え付けることができる。よって、据え付け時には、引込み経路は変えられることができ、具体的には、短縮することができ、張力付与動作、並びに押出し及び引込み動作それぞれのスムーズな作動が保証される。
【0015】
このことは、引込み装置だけが取り付けられた場合、引込み装置用の別の(具体的なケースでは、より長い)トラベル(行程)が提供される。今、エジェクト装置も取れ付けられるならば、引込みスライドのトラベルは変更されなければならず、具体的なケースでは短縮されなければならない。本発明に従う駆動装置を用いると、引込み装置全体を交換することなく、この変更が容易なやり方で可能となる。
【0016】
例えば、(二つの)端位置の相互間の距離が、技術者によるエジェクト装置の取り付けに先んじて、例えば、スライド部を手動でシフトさせることによって容易に変更することができる。但し、特に好ましくは、エジェクト装置が引込み装置と接続されることができ、ガイド路に沿った前記端位置の相互間の距離が、エジェクト装置の引込み装置との接続によって変えられ得る。このことは、エジェクト装置が据え付けられ又は同期的に取り付けられたときに、引込みスライドのトラベル(行程)がエジェクト装置の取り付けによって自動的に変更されることを意味する。この変更ないし調節は、例えば電子制御によってもたらすことができる。但し、好ましくは、これは、機械的なやり方だけでもたらされ、例えば、ブロック装置のブロック位置がエジェクト装置によってセット解除され得るものである。具体的なケースでは、エジェクト装置はトリガー要素を備えており、当該トリガー要素によって、前記ブロック装置は、ラッチが前記ストップに当接するところのブロック位置から、エジェクト装置の引込み装置との接続時に前記トリガー要素によって前記ラッチが前記ストップから解放されるところのリリース位置に向けて移動可能である。その取り付け動作は、(二つの)端位置の対応する状態を変更するために使われ得る。
【0017】
エジェクト装置は例えば、引出しの底の下面に取り付けられることができる。取付けの容易性のために、エジェクト装置が、固定装置によって前記引込み装置に固定(好ましくは能動的にロック)されることは好ましい。更に、エジェクト装置用のガイド要素が引込み装置上に形成されており、前記エジェクト装置は、前記ガイド要素によってガイドされるスライド動作を介して前記固定装置によって前記引込み装置に固定され得ることは特に好ましい。特に好ましいことに、このスライド動作が、エジェクト装置の引込み装置への接続又は固定をもたらすために使用されるだけでなく、それに加えて、端位置の相互間の距離の変化がこのスライド動作によってももたらされる。これは具体的には、引込み装置のスライド部が、エジェクト装置の前記スライド動作時に第1の
位置から第2の
位置に移動可能であることでもたらされる。
【0018】
保護はまた、本発明に従う駆動装置を具備した家具製品に対しても要求されている。
【0019】
本発明の更なる詳細や利点については、図面に描かれた具体的実施形態を参照した具体的な説明によって、以後もっと十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、異なる位置にある可動家具部品を備えた家具製品を模式的に示す。
【
図2】
図2は、開き及び閉じ動作における引込み力貯蔵手段の、及び押出し力貯蔵手段のバネ力の推移を模式的に示す。
【
図3】
図3は、エジェクト装置および延出ガイドを備えた引込み装置の分解図を示す。
【
図4】
図4は、エジェクト装置および延出ガイドを備えた引込み装置の分解図を示す。
【
図5】
図5〜7aは、引込み動作時における引込み装置の延出ガイドに対する
位置を示す。
【
図5a】引込み動作時における引込み装置の延出ガイドに対する
位置を示す。
【
図6】引込み動作時における引込み装置の延出ガイドに対する
位置を示す。
【
図6a】引込み動作時における引込み装置の延出ガイドに対する
位置を示す。
【
図7】引込み動作時における引込み装置の延出ガイドに対する
位置を示す。
【
図7a】引込み動作時における引込み装置の延出ガイドに対する
位置を示す。
【
図8】
図8〜10aは、エジェクト装置の引込み装置への装着手順を示す。
【
図8a】エジェクト装置の引込み装置への装着手順を示す。
【
図9】エジェクト装置の引込み装置への装着手順を示す。
【
図9a】エジェクト装置の引込み装置への装着手順を示す。
【
図10】エジェクト装置の引込み装置への装着手順を示す。
【
図10a】エジェクト装置の引込み装置への装着手順を示す。
【
図11】
図11は、スライド部の状態を変更したときの引込み装置の詳細を示す。
【
図12】
図12は、スライド部の状態を変更したときの引込み装置の詳細を示す。
【
図13】
図13〜15は、エジェクト装置の引込み装置との接続についての詳細を示す。
【
図14】エジェクト装置の引込み装置との接続についての詳細を示す。
【
図15】エジェクト装置の引込み装置との接続についての詳細を示す。
【
図16】
図16〜19は、スライド部の異なる状態での引込み経路の比較を示す。
【
図17】
図16及び17は、スライド部の異なる状態での引込み経路の比較を示す。
【
図18】
図18及び19は、スライド部の異なる状態での引込み経路の比較を示す。
【
図19】
図18及び19は、スライド部の異なる状態での引込み経路の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、家具カーカス(家具枠体)19、及び、引き出し形態をした合計4つの可動家具部品2を備えた家具製品18を示す。上から下(底)に向かって見ていくと、上側二つの引き出しは開き位置(OS)にあり、3番目の引き出しは閉じ位置(SS)にあり、一番下の引き出しは超過押圧位置(US)にある。可動家具部品2の各々は、引き出しコンテナ20とフロントパネル(前面パネル)21を備えている。可動家具部品2は、引き出しコンテナ20を介して延出ガイド24に接続されている。この延出ガイドは、引き出しレール22、ここには示されていない中央レール36、及びカーカスレール23を備えている。最も上に示された引き出しにおいて、エジェクト装置14(押出し装置14)は模式的に描かれている。このエジェクト装置14は、ハウジング25を介して引き出しレール22に(即ち引き出しの底に)取り付けられている。
押出し同調部材32(これは、エジェクト装置14の押出しスライド28と少なくとも区間的に結合され得る)が、カーカスレール23に固定されている。この押出しスライド28はハウジング25に対して移動可能である。制御レバー29が押出しスライド28に旋回可能に取り付けられ、制御ピン30がこの制御レバー29上に形成されている。この制御ピン30は、ハート型のカーブ(湾曲線)に形状化されたスライドガイド経路26内でガイド(案内)される。このスライドガイド経路26は、制御ピン30用のラッチ凹部Rを備えている。スライドガイド経路26のラッチ凹部Rと共に制御ピン30は、ハウジング25に押出しスライド28のためのロック装置27を形成する。押出しスライド28は、押出し力貯蔵手段31(この場合、圧縮バネ)によって付勢されている。最上位の引き出しに従った図示では、この押出し力貯蔵手段31はリラックス(弛緩)されている。このエジェクト装置14によって、可動家具部品2は、(知られているように)閉じ位置SSから開き方向ORに押し出される。このことは、最上位に示された引き出しから始まって、以下のように達成される。
【0022】
可動家具部品2を閉じ方向SRに押すことで、可動家具部品2は、第2の引き出しに準じた開き位置OSに到達する。この動作中、引込みスライド29(7)が押出し同調部材32によってハウジング25に対しシフトされ、これにより、押出し力貯蔵手段31が負荷を与えられると共に、制御ピン30がラッチ凹部Rに到達する。こうしてロック装置27はロック位置Vとなる。その後、この位置から始めて、可動家具部品2は、引込み装置3によって閉じ位置SSに引込められる。この動作オペレーションは、後ほど更に詳細に説明される。こうして、引き出しは、第3の引き出しに準じた閉じ位置SSに到達する、但しエジェクト装置14は未だロック位置Vにある。この閉じ位置SSから可動家具部品2を超過押圧することで、可動家具部品は、最も下位の引き出しに準じた超過押圧位置USに到達する。それにより、引き出しレール22とカーカスレール23との間に配設されたバッファー(緩衝器)35(これは閉じ位置SSの正確な位置を規定する)もまた、押し込まれる。この超過押圧動作によってロック位置Vも解放され、制御ピン30は、ハート型のカーブに形状化されたスライドガイド経路26のエジェクト・セクション(押出し区間)に到達する。これにより、押出し力貯蔵手段31がリラックス(弛緩)され、可動家具部品2が開き方向ORにエジェクト(押出し)される。この場合、エジェクト装置14は可動家具部品2に関連付けされている。しかしながら、もちろん、これはまた反対のやり方で達成され得る。即ち、エジェクト装置14が家具カーカス19又はカーカスレール23と関連付けされており、可動家具部品2と関連付けされた押出し同調部材32に作用する場合である。もちろん、これらの配置可能性の両方が、引込み装置3についても類似性をもって適用される。
【0023】
図1の中程の二つの引き出しを代表して、引込み装置3についての更なる詳細を説明することができる。これらの引き出しの上側を参照すると、引込み装置3(それはエジェクト装置14と共に駆動装置1を形成する)は、まさに引込み動作の始まりにある。引込み装置3はハウジング4を備えており、それによって引込み装置3は引き出しレール22に取り付けられている。更に、引込み装置3は、ガイド路5内をガイドされる引込みスライド7を備えている。引込み力貯蔵手段8(引張バネ)は、引込みスライド7と、ハウジング4上に設置されたスプリングベース34との間に架け渡されている。引込みスライド7用の保持セクション(保持区間)6が、ガイド路5の端に配置されている。可動家具部品2の閉じ方向SRへの動きのために、引込みスライド7は、カーカスレール24(23)上に取り付けられた引込み同調部材33によって保持セクション6から既に解放され、これにより、引込み力貯蔵手段8が弛緩することができる。こうして、可動家具部品2は、下側の引き出しに準じて閉じ位置SSに到達する。この引込み動作は、バッファー35によって停止させられる。エジェクト装置14及び引込み装置3を備えたこれまで公知の駆動装置1の機能性もまた、その程度である。
【0024】
しかしながら、今や本発明によれば、引込み装置3のガイド路5での引込みスライド7の行程についての調節可能性も存在する。それに加え、引き出しレール22に対するガイド路5の代替位置が、(それぞれが破線の境界線で強調されている)中程の二つの引き出しと共に示されている。この異なる位置又は状態は、ここではあまり詳細に説明されていないスライド部10によって可能とされる。
上側の引き出しに示されるように、引込み同調部材33(それは可動家具部品2の同じ開き位置OSにあるとき、同じ位置に配置されている)は、まだ引込みスライド7に当接しない。更には、引込みスライド7は、ガイド路5の保持セクション6に依然としてある。この保持セクション6は、ガイド路5における引込みスライド7の第1の端位置E1に対応する。見て取れるように、この場合には、引込み力貯蔵手段8は、他の場合におけるように強く荷重付与されない。しかしながら、このことは引込み動作を妨げない。更に、引込み動作は、低くあるがそれ故よりスムーズな力によってまさに開始される。今仮に、可動家具部品2が更に閉じ方向SRに手動で動かされるならば、引込み同調部材33は引込みスライド7と接触し、これにより、この引込みスライド7はガイド路5の保持セクションから解放される。よって、引込み力貯蔵手段8が弛緩でき、引込み装置3は可動家具部品2を閉じ位置SSに引く。この閉じ位置SSは、ガイド路5に沿った引込みスライド7の第2の端位置E2に対応する。下側の引き出しで示されるように、かくして、端位置E1及びE2の相互間の距離Aは、ガイド路5の状態に依存して異なる。このことは、ガイド路5に沿った引込みスライド7の行程長が異なる、ことを意味する。
【0025】
図2には、可動家具部品2の移動経路に沿った力貯蔵手段8及び31のバネ力の進展(推移)が模式的に示されている。この場合、それらバネ力は直線として示されるが、実際のケースでは、もちろんバネ力の推移はずっと曲線的である。
図2に従うダイアグラム(図表)には、押出し力貯蔵手段31のバネ力F(31)と、引込み力貯蔵手段8のバネ力F(8)とが対比されている。押出し力貯蔵手段31のバネ力は、引込み力貯蔵手段8のバネ力よりも大きい。一番左で、可動家具部品2は閉じ位置SSに配置される。その結果、押出し力貯蔵手段31は十分に引っ張られ且つ荷重付与される。引込み力貯蔵手段8は弛緩される。可動家具部品2を閉じ方向SRに動かすことで、可動家具部品2は超過押圧位置USに到達する。そこでは、押出し力貯蔵手段31が更に荷重付与される一方で、引込み力貯蔵手段8は弛緩する。可動家具部品2を解き放つことで、押出し力貯蔵手段31は弛緩することができ、これにより可動家具部品2が開き方向ORにエジェクト(押出し)され、開き位置OS1に達する。押出し動作と同時的に、引込み力貯蔵手段8が引っ張られる。そこでのスライド部10が第1の
位置S1にあるならば、引込み力貯蔵手段8は、スライド部10が第2の
位置S2にある場合よりも高いバネ力F(8)に引っ張られる(張力付与される)。
【0026】
自由走行から始まる可動家具部品2が再び閉じ方向SRに動かされるならば、可動家具部品2は先ず開き位置OS2に到達する。この位置から、押出し力貯蔵手段31は、開き位置OS1に到達するまで手動押圧によって再び荷重付与される。この動作区間では、引込み力貯蔵手段8のバネ力F(8)は変わらないままである。しかしながら、更なる閉じ動作によって引込みスライド8(7)は、その保持セクション6から解放され、このことは、引込みスライド7がその第1の端位置E1を離れることを意味する。この第1の端位置E1の実際の位置は、スライド部10の
位置S1又はS2に依存する。スライド部10が第1の
位置S1にあるならば、後続の引込み経路EW1は、スライド部10が第2の
位置S2にある場合(即ち引込み経路EW2)よりも長くなる。この引込み動作の終わりにおいて、引込みスライド7は、可動家具部品2の閉じ位置SSに対応する第2の端位置E2に到達する。それ故、端位置E1,E2間の距離Aは、(スライド部10の
位置に依存して)長さが異なる。
【0027】
図3及び4は、駆動装置1の重要な部品を分解図で示す。更に、カーカスレール23、引出しレール22および中央レール36を具備した延出ガイド24が示されている。基礎部品として、引込み装置3はハウジング4を備える。このハウジング4は、ベース部9と、当該ベース部9に対してスライド可能なスライド部10とからなる。ベース部9は、ベースプレート37及びベースカバー38からなる。ハウジング4は、ネジ45を介して引出しレール22に対し装着可能である。ハウジング4において、引込みスライド7はガイド路5に沿って移動可能に支持されている。引込みスライド7は、スライドベース41と、当該スライドベース41上に旋回可能に支持されたキャッチレバー40とを備える。スライドベース41には、引込み動作を減衰し又は制動(braking)するための減衰装置44が配設されている。減衰装置44は、減衰シリンダ42及び減衰ピストン43を備える。更に、伝達要素39が引込みスライド7の領域に配設されている。更に、引張りバネとして形成された引込み力貯蔵手段8は、引込みスライド7とハウジング4との間に架け渡されている。その機能のために、引込み装置3は引込み同調部材33を更に必要とする。この引込み同調部材33は、カーカスレール23に取り付けられてなる保持プレート53上に配設されている。
【0028】
更には、駆動装置1は、その機能が本来的に知られている(但しそれが何故かは分解図には示されない)ところのエジェクト装置14を備えている。但し、エジェクト装置14の詳細は、
図1に見て取ることができる。エジェクト装置14は、ハウジング25又は装着プレートを備えており、それを介してエジェクト装置14は引込み装置3と接続されることができる。実際のケースでは、トリガー要素15およびロックキャッチ47がハウジング25に形成されている。ベースカバー38に形成されたロックストップ(locking stop)48と共にロックキャッチ47は、固定装置17の一部を形成する。更に固定装置17は、ベースカバー38に形成されたロック突起49によって、及び、ハウジング25に形成されたロック凹部50によって形成されている。更には、引込み装置3におけるエジェクト装置14のスライド動作Sをガイドするための幾つかのガイド要素16が、ハウジング4のベース部9のベースカバー38に形成されている。
ガイド路5の保持セクション6がスライド部10に形成されていることが、これらの分解図から認められ得る。更に、ブロック装置11のラッチ12がスライド部10に配設されている。ブロック装置11は、ストップ(停止部)13と共にラッチ12によって形成されている。その機能のために、エジェクト装置14はまた、保持プレート52を介してカーカスレール23に固定されている押出し同調部材32を必要とする。
【0029】
基本的な引込み機能が、
図5〜7aでより詳細に説明される。
図5では、引出しレール22は未だ、カーカスレール23に対して開き位置OSに配置されている。
図5aに示されるように、キャッチレバー40は旋回軸51の周りを未だ旋回されており、ガイド路5の保持セクション6にラッチ又は保持されている。引込み同調部材33はまだ、引込みスライド7とも、そのキャッチレバー40とも接触していない。
【0030】
図5からスタートして、可動家具部品2および引出しレール22が閉じ方向SRに動かされるならば、引込み同調部材33は、
図6及び6aから見て取れるようにキャッチレバー40と接触する。ただし、キャッチレバー40及びひいては引込みスライド7は未だ、(第1の端位置E1に対応するところの)保持セクション6にある。
【0031】
しかしながら、閉じ動作によってキャッチレバー40が、引込み同調部材33から及ぼされる力のために保持セクション6から解放されるや否や、
図7及び7aに見られるように、引込み力貯蔵手段8が弛緩可能となって、引出しレール2と共に可動家具部品2を閉じ位置SSに引っぱる。そこで、キャッチレバー40は旋回軸51の周りを再旋回し、第2の端位置E2に配置される。
【0032】
図8〜15によって、引込み装置3へのエジェクト装置14の取付け、及び、その結果としてのスライド部10の
位置S1からS2への調節が、より詳細に説明される。
【0033】
図8には、引込み装置3が、引出しレール23に取り付けられた状態で示されている。そこでは、スライド部10は第1の
位置S1で配置されている。それ故、引込みスライド7の行程ないし引込み経路EW1は長い。スライド部10のこの第1の
位置S1は、ブロック装置11によって到達され又は固定される、というのも、スライド部10上に形成された弾力性のラッチ12が、ベースカバー38に形成されたストップ(停止部)13に当接するからである(
図8a参照)。
【0034】
図9及び9aに示されるように、エジェクト装置14が引込み装置3に押圧されるならば、ラッチ12が、ハウジング25上に形成されたトリガー要素15によって押し込まれる。それによって、ブロック装置13(11)はもはやブロック位置Bにはなく、解放位置Lにある。ラッチ12はもはやストップ13には当接していない。
【0035】
図9又は9aに準じたこの位置に起源を発して、エジェクト装置14は引込み装置3に固定される。この固定は、とりわけ、ロックキャッチ47がロックストップ48内に移動されることでもたらされる。これら両部品47,48は共に、固定装置17の一部を構築する。このスライド動作Sと同時的に、スライド部10もまた、ハウジングに形成された限界ストップ材54と共に動かされ(
図10a参照)、その結果、スライド部10が第1の
位置S1から第2の
位置S2になる。このスライド動作Sの際、ブロック装置11はその解放位置Lにとどまる。
【0036】
より良い図示のために、
図11及び12では、エジェクト装置14と、ベース部9のベースカバー38が隠されており、これにより、スライド部10への、及び、ベース部9のベースプレート37に対する(スライド部の)位置へのより良い表示が可能である。
図11では、スライド部10はまだ第1の
位置S1にある。ラッチ12もまだ押し込まれていない。これとは対照的に、
図12ではラッチ12は押し込まれ、スライド部10は既にスライドされている。これにより、ガイド路5の保持セクション6は引込み力貯蔵手段8により近づいている。
【0037】
引出しレール22に装着された引込み装置3と、まだ装着されていないエジェクト装置14が
図13に示されている。ベースカバー38上に一体に形成されているところの、ガイド要素16、ロックストップ48及びロック突起49が、この
図13にはよく示されている。引込み装置のこれらのコンポーネントに対応して、(
図14に見られるように)、ロック凹部50、トリガー要素15、ガイド凹部55およびロックキャッチ47がそれぞれに、エジェクト装置14上に、又はそのハウジング25及び固定プレート上に形成されている。既に説明したスライド動作Sに伴い、引込み装置3に対するエジェクト装置14の固定が実行される。それにより、
図15に従う位置に到達し、そこでは、ロックキャッチ47がロックストップ48にて固定され、ロック突起49がロック凹部50内に固定される。
【0038】
図16〜19には、本発明の基本的な考え方が再び示されている。
図16によれば、可動家具部品2が開き位置OSにあり、引込み同調部材33は既に、引込みスライド7のキャッチレバー40に接触している。しかしながら、この引込みスライド7は、ガイド路5の保持セクション6に対応する第1の端位置E1にまだある。スライド部10は、その第1の
位置S1にある。
図16に従うこの位置から第1の引込み経路EW1が始まり、
図17に従う閉じ位置SSで終わり、そこでは、引込みスライド7はその第2の端位置E2にある。引込みスライド7はもちろん閉じ方向に更に動かされ得ることは、言わなければならない。しかしながら、基本的に、この第2の端位置E2は、可動家具部品2が閉じ位置SSに配置される位置に対応する。
【0039】
図18では、引出しレール22に対するスライド部10の位置が変化することが認められ得る。それ故、スライド部10は第2の
位置S2にある。
図16の場合に比較して、引出しレール22は既に閉じ方向SRに更に動かされているけれども、引込み同調部材33はまだ、保持セクション6からのキャッチレバー40の解放動作の始まりにある。かくして、引込みスライド7はまだ、第1の端位置E1にある。この位置を起源として、短縮された引込み経路EW2がスタートし、そこでは引込み力貯蔵手段8がリラックス(弛緩)し、可動家具部品2が閉じ方向SRにおいて
図19に従う閉じ位置SSに移動する。これにより、引込みスライド7は再びその第2の端位置E2にある。特に
図19と17との比較で、本発明によれば、端位置E1とE2の距離Aがガイド路5に沿って互いからどのように変わり得るかを見て取ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 駆動装置
2 可動家具部品
3 引込み装置
4 ハウジング
5 ガイド路
6 保持セクション
7 引込みスライド
8 引込み力貯蔵手段
9 ベース部
10 スライド部
11 ブロック装置
12 ラッチ
13 ストップ(停止部)
14 エジェクト装置(押出し装置)
15 トリガー要素
16 ガイド要素
17 固定装置
18 家具製品
19 家具カーカス(家具枠体)
<記号>
OS 開き位置
SS 閉じ位置
E1 第1の端位置
E2 第2の端位置
A 距離
S1 第1の
位置
S2 第2の
位置
B ブロック位置
L 解放位置
S スライド動作
<
図2の説明>
図2中の”FEDERKRAFT”とは、「バネ張力」。