(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367946
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ホイストに用いられる高強度繊維ロープの廃棄状態を検出する装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/16 20060101AFI20180723BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B66C13/16 A
B66D1/54 C
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-537154(P2016-537154)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2016-529183(P2016-529183A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2014002245
(87)【国際公開番号】WO2015028126
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】102013014349.7
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013017110.5
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197434
【氏名又は名称】リープヘル−コンポーネンツ ビーベラッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムペンデ イラカ
(72)【発明者】
【氏名】ザルザ ホルスト
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−503441(JP,A)
【文献】
特開2013−096950(JP,A)
【文献】
特開昭60−120228(JP,A)
【文献】
特開平11−352050(JP,A)
【文献】
特開2012−083217(JP,A)
【文献】
特開2001−153790(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0090834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/16
B66D 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイストにて、特にクレーンにて用いられる高強度繊維ロープ(1)の廃棄状態を検出するための装置であって、
少なくとも1つのロープパラメータを検出するための検出手段と、
前記ロープパラメータを評価し、かつ前記ロープパラメータの評価をもとに廃棄信号を提供するための評価ユニット(3)とを備え、
前記評価ユニットは、前記ロープ(1)の捩り剛性を判定するための捩り剛性判定手段(2)を有し、かつ、
前記評価ユニット(3)は、前記ロープの前記判定された捩り剛性をもとに前記廃棄信号を提供し、
前記捩り剛性判定手段(2)は、
所定の回転角で及び/又は所定のトルクでロープ区間に捩れを与えるための回転駆動部(5)と、
前記ロープ区間の捩れによる前記トルク及び/又は前記回転角を検出するための検出手段とを有し、
さらに前記評価ユニット(3)は、前記判定されたトルク及び/又は前記判定された回転角をもとに前記ロープの捩り剛性を判定することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記捩り剛性判定手段(2)は、ロープ長手方向にて互いに対して捩れが与えられ得て、かつ、前記の又はある回転駆動部によって互いに対して捩れるように力を受け得る、2つのスイベル部品(4a,4b)からなるスイベル(4)を有することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記スイベル(4)は、ロープ端部に回転不能に接続され、かつ、ベース部に、特にクレーンブームに回転不能に固定されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の装置において、
前記スイベル(4)にトルクメータ(11)及び/又は捩れ角メータ(12)が設けられ、
前記ロープの捩り剛性は、所定のトルクで及び/又は所定の捩れに必要なトルクで達成され得る捩れをもとに、前記捩り剛性判定手段(2)で判定され得ることを特徴とする装置。
【請求項5】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記回転駆動部(5)は、前記スイベル(4)の中に組み込まれ、特に、一方のスイベル部品(4a)の内部に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記ロープの捩り剛性が判定される前に生じ得るロープ捩れを補償するスイベル補償器が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記スイベル(4)にトルクメータ(11)及び/又は捩れ角メータ(12)が設けられ、
前記ロープの捩り剛性は、所定のトルクで及び/又は所定の捩れに必要なトルクで達成され得る捩れをもとに、前記捩り剛性判定手段(2)で判定され得るものであり、
前記スイベル補償器は、前記スイベルにて前記トルクメータ(11)により判定されたトルクに応じて、及び/又は、前記スイベル(4)に作用するロープ(1)からロープ捩れの回転方向メータ(13)により判定された回転方向に応じて前記回転駆動部(5)を制御する制御コンポーネントを有し、
前記制御コンポーネントは、前記トルクメータ(11)により測定された前記トルクがゼロに近付くべく前記回転駆動部(5)が駆動され得るように設計されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記トルクメータ(11)及び/又は前記捩れ角メータ(12)及び/又は前記回転方向メータ(13)は、前記スイベル(4)及び/又は前記回転駆動部(5)の中に組み込まれていることを特徴とする装置。
【請求項9】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記捩り剛性判定手段(2)は、前記ロープ(1)の所定の引張力を自動的に調整する張力調整ユニット、及び/又は、捩り剛性試験にかけられる前記ロープ区間の所定の長さLを調整する長さ調節ユニットを有することを特徴とする装置。
【請求項10】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記評価ユニット(3)は、前記捩り剛性判定手段(2)により判定された前記ロープの捩り剛性及び/又はその変化が、ある指定された閾値を超えるときに、廃棄信号を提供することを特徴とする装置。
【請求項11】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記捩り剛性判定手段(2)は、互いに異なるロープ区間のロープ捩り剛性を判定するように、当該互いに異なるロープ区間を、好ましくは長さの異なるロープ区間を自動的に位置決めするためのロープ位置決め手段を有することを特徴とする装置。
【請求項12】
高強度繊維ロープの廃棄状態を検出するための先行する請求項のいずれか1項に記載の装置を備えたクレーンであって、特に、タワークレーン、移動式クレーン、移動式港湾用クレーン、船舶用クレーン、又は車両用ブームクレーンであるクレーン。
【請求項13】
請求項12記載のクレーンにおいて、
前記捩り剛性判定手段(2)は、クレーンのロープ駆動部に固定的に取り付けられ、かつ割り当てられ、又は、クレーン作業のために既に装備されたクレーンにて前記ロープの捩り剛性が検出され得るように着脱可能なユニットとして設計されていることを特徴とするクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、スチールワイヤロープに代えて高強度繊維ロープを用いるクレーンのようなホイストに関する。本発明は、特に、そのようなホイストにて用いられる場合の高強度繊維ロープの廃棄状態を検出するための装置であって、少なくとも1つのロープパラメータを検出するための手段と、ロープパラメータを評価し、かつロープパラメータの評価をもとに廃棄信号を提供するための評価ユニットとを有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたってクレーンに成功裏に用いられてきたスチールワイヤロープに代えて、アラミド繊維(HPMA)、アラミド/カーボン混紡繊維、高弾性ポリエチレン繊維(HMPE)、又はポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO)のような合成繊維からなる高強度繊維ロープを用いる試みが、最近なされている。そのような高強度繊維ロープの利点は、それが軽量であることにある。同一のロープ径及び同一以上の引張強度にて、そのような高強度繊維ロープが比較対象のスチールワイヤロープに比べて軽量であることは、明らかである。特に、ロープ長が長くなってしまう高いクレーンでは、これにより、大きな重量低減効果が得られ、これがクレーンの自重に反映されるので、クレーン設計の他の項目が不変であれば取り扱い荷重が増大する。
【0003】
しかしながら、そのような高強度繊維ロープの欠点は、その破断挙動、すなわち明確な長期にわたる事前の警告なしに故障に至る点にある。スチールワイヤロープでは、摩耗が明白な形で現れるので、かなり前に故障の前兆が示される。例えば、個々のスチールワイヤが破断して、その開いた断面が現れると、容易に検知できる。これに対し、高強度繊維では、肉眼で検知できて実際の故障のかなり前に前兆となるような破断面が外部に現れることはない。したがって、高強度繊維では、高強度繊維ロープの廃棄状態がいつ生じるかについての早期検知を可能にする知的な監視手段が必要になる。
【0004】
国際公開第2012/100938号から、応力のもとでロープが使用される期間にて変化する種々のロープ廃棄基準に従って試験を行うことにより、高強度繊維ロープの廃棄状態を検出することは公知である。ここに言うロープ廃棄基準として、ロープ径と、ロープが挟持されたときに生じる断面積の変化により測定された剪断応力剛性と、経験した応力サイクルの数とが監視される。しかしながら、これら個々の廃棄基準の情報価値は限られている。すなわち、高い信頼性をもって廃棄状態が検出され得る前に、これら廃棄基準の相互作用が、かなり複雑な監視プロセスで監視され、かつ評価されなければならないのである。
【0005】
これを基礎として、本発明の目的は、従来技術の欠点を回避しつつ有利に発展した、高強度繊維ロープの廃棄状態を検出するための、改良された装置を提供することにある。好ましくは、単純ではあるが高い信頼性を有しかつ正確な、廃棄状態の検出が達成されるべきである。そして、その検出は、安全性を損なうことなく繊維ロープの残余の寿命を経済的に活用できるようにし、また苛酷な稼働条件のもとでも高い信頼性をもって機能する単純な検出手段とともに建設機械に用いられ得るべきである。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、上記目的は、請求項1の装置と、請求項13のクレーンとにより達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
したがって、ロープの捩り剛性を監視し、当該ロープの捩り剛性により廃棄状態を判定することが提案される。ロープの捩り剛性とは、ロープの捩れに対するロープの抵抗又はモーメント抵抗を意味する。あるロープ部分の両終端区間を長手方向にて互いに対して捩る、すなわち所望の捩れを実現するように当該ロープを捩るためには、あるトルクが必要である。ここで、前記トルクはロープの曲がりにくさに依存する。本発明によれば、検出手段は、ロープの捩り剛性を判定するための捩り剛性判定手段を有し、評価ユニットは、ロープの判定された捩り剛性をもとに廃棄信号を提供する。スチールワイヤロープは、ロープの寿命に応じた捩り剛性の有意なる変化を示さないのに対し、高強度繊維ロープでは、これと違っている。ロープの使用開始時までは柔軟であるフィラメントが堅くなり、当該ロープが引張応力及び曲げ応力により曲がりにくくなる。このロープ捩り剛性の増加は、容易に測定可能である。これは、ロープの監視された捩り剛性により、廃棄状態が高い信頼性をもってかつ正確に判定され得ることを意味する。つまり、ロープ捩り試験にて、未使用のロープがかなり低い捩り剛性を示すのに対し、限界点まで駆動されたロープは、長期間にわたる苛酷な応力の結果として、ロープの初期状態の何倍もの、非常に高い捩り剛性を示すのである。この増加はサイクル対故障率とともに連続的に上昇し、ロープが破断する時点で最高点に達する。これは、当該評価ユニットが、高い信頼性をもって容易に廃棄状態を判定することができることを意味する。
【0008】
本発明の更なる発展によれば、捩り剛性判定手段は、ロープ駆動部の中に組み込まれ、又はロープをかけるために使用され得る、スイベルを有し得る。時には、そのようなスイベルは、ロープスイベルとも呼ばれる。それは、通常は、特にロープの長手方向の軸と共軸の回転軸のまわりに、ロープ長手方向にて互いに対して捩れが与えられ得る、2つのスイベル部品からなる。そして、例えば、固定側のスイベル部品は、長手方向にてクレーンブームに固定される一方、回転側のスイベル部品は、回転不能にロープに接続される。そのような従来技術のスイベルをロープの捩り剛性の判定に用いるために、本発明の更なる発展によれば、互いに対して回転するように2つのスイベル部品を駆動する回転駆動部が設けられ得る。特に、この回転駆動部は、スイベルの内部空間の中に組み込まれ得る。ここに、回転駆動部は、ギアとの接続が必要な場合には、例えば電気モータであり得る。
【0009】
前記回転駆動部は、機能的には2つのスイベル部品の間に位置し、当該2つのスイベル部品に対して、すなわちスイベル軸のまわりの捩れに関して回転可能に支持されている。特に、回転駆動部の駆動軸は、例えばギア出力シャフトであって、回転側のスイベル部品に接続され得る。この回転側のスイベル部品上にロープが回転不能に固定される一方、モータハウジングが非回転側のスイベル部品に回転不能に又は少なくとも回転が制約されただけの状態で接続される。
【0010】
本発明の更なる発展によれば、トルクメータ及び/又は捩れ角メータがスイベルに設けられ得る。これは、スイベルが回転駆動される際に、又はスイベルが回転駆動されたときに2つのスイベル部品の互いに対する捩れ角の記録又は判定をするように駆動される際に、印加されたトルクを判定するためである。
【0011】
原則的には、前記トルクメータ又は捩れ角メータに種々の設計が可能である。例えば、本発明の更なる発展によれば、トルクメータは、回転駆動部の中に組み込まれ得る。例えば、電気モータが使用される場合には、それは、生成されたトルクを判定するために、電流及び電圧のような電気的制御変数を記録し得る。そのような駆動パラメータのメータに代えて、又はこれに加えて、トルクメータは、例えばクレーンブームの形態のような保持部材にて固定側のスイベル部品によって引き起こされた反作用モーメントの判定をもなし得る。それに代えて、又はそれに加えて、トルクメータは、駆動ギア又は回転側のスイベル部品の中に、例えば駆動ギアと回転側のスイベル部品との間に、例えば捩れ測定ソケット等の形態で取り付けられてもよい。
【0012】
原則的には、捩れ角メータ又は捩れメータに種々の設計が可能である。例えば、これらのメータは、駆動ギア又はその駆動モータの中に組み込まれる。これに代えて、又はこれに加えて、捩れメータは、2つのスイベル部品の互いに対する捩れを直接記録し得る。
【0013】
ロープの捩り剛性は、所定のトルクにより達成されるロープの捩れにより、及び/又は、所定の捩れに必要なトルクにより、捩り剛性検出手段で検出され得る。本発明の更なる発展によれば、これら2つの検出基準は、互いに組み合わせて用いることも可能である。特に、捩り剛性に関して生じ得る非線形性を考慮に入れて、所定の捩れを生じるのにどれほどの力が必要か、また所定のトルクに対してどれほどの捩れが生じるかが判定される。
【0014】
ロープへの引張力から生じる応力によってロープ捩り剛性の測定をゆがめたり、これに影響を及ぼしたりすることがないように、捩り剛性判定手段は、ロープ捩り剛性の繰り返し測定のためにロープに同一の引張力条件を設定する引張応力調整器を有する。特に、前記引張応力調整器は、ロープ捩り剛性が判定される際に、ロープの引張力をほとんど完全に解放する引張力解除手段を有し得る。
【0015】
前記引張力解除手段には、種々の設計が可能である。本発明の有利な実施形態によれば、引張力解除手段は、ロープを長手方向に保持するための保持手段、好ましくはロープをクランプする少なくとも1つのロープクランプを有し得る。このロープクランプは、特に、吊上フックにおけるホイスト荷重と、ロープ捩り剛性について検査されるべきロープ区間とを受け止めるものである。前記保持手段は、例えば、トロリとスイベルとの間のロープ区間を解放するように、タワークレーンのトロリに設けられ得る。好ましくは、ロープ捩り剛性試験は、吊上フックに荷重をかけないで実行され得る。ここで、吊上フックは、ロープの自重によりロープに所定の引張力を達成するために、また試験のためのあるロープ長を得るために、制御装置により又は手動で、所定の高さまで移動させられることが好ましい。
【0016】
本発明の有利な更なる発展によれば、捩り剛性判定手段は、ロープ捩り剛性の試験を実行する前に、ロープに生じ得る捩れを解消し、又は少なくとも大幅に低減するスイベル補償器を有する。通常、ロープ巻胴に巻かれ、又はローププーリに沿って動くロープは、捩れる。ロープの捩り剛性測定のゆがみを避けるため、そのような捩れは、捩り剛性試験の実行前に除去され得ることが好ましい。前記スイベル補償器は、上記スイベルの中に組み込まれ、又はこれに関連付けられ得ることが好ましい。例えば、スイベル補償器は、ロープ捩れの回転方向又は実効的な方向を判定するのに役立つ回転方向センサを有し得る。つまり、回転駆動部は、スイベルを介してロープに又は回転側のスイベル部品に所望の回転方向の捩りを与えるように、関連付けられた回転方向信号に応じて駆動され得るということである。もし必要ならば、ロープの捩れによってスイベルに引き起こされたトルクの強さは、回転駆動部を駆動することにより、ロープの捩れによって引き起こされ、検出され又は判定されたトルクが、捩り剛性試験が始まる前にできるだけゼロに近付くように、上記した種類のトルクセンサにより判定され得る。
【0017】
原則的には、廃棄信号を提供するための評価装置は、種々の態様で、例えばロープの捩り剛性の変化を監視することにより、及び/又は、絶対的な捩り剛性を監視することにより、作動し得る。特に、前記評価ユニットは、ロープの捩り剛性及び/又はその変化が、関連付けられた閾値に達したときに廃棄信号を提供するように、設計され得る。
【0018】
例えば、1回以上の参照測定が未使用のロープで実行され得る。これにより、稼働中に生じるロープ捩り剛性の変化の割合が変化の閾値と比較され得て、この閾値を超えるとき、又はこの閾値に近付いたときに、廃棄信号が提供される。特に、廃棄信号は、ロープの捩り剛性が許容閾値を上回るように増加したときに、提供され得る。これに代えて、又はこれに加えて、監視されかつ稼働中に絶えず又は周期的に検出されたロープの捩り剛性は、あるタイプのロープ又は特定のロープに対して製造者により予め決定された絶対的な閾値と比較され得て、この閾値に達するとき、又はこの閾値を超えるときに、廃棄信号が提供される。また、これに代えて、又はこれに加えて、測定により判定されたロープ捩り剛性の変化が速過ぎるとき及び/又は遅過ぎるときに、すなわち、ある時間におけるロープ捩り剛性の変化速度がある閾値を上回るとき又は下回ったままであるときに、廃棄信号が提供され得る。ある時間における、この変化速度は、例えば、負荷サイクルカウンタで検出され、かつ評価装置により考慮され得る、負荷サイクル数の記録された変化速度であり得る。これに代えて、又はこれに加えて、この変化速度は、ロープ捩り剛性の測定回数によって考慮に入れられるのみであってもよい。例えば、ある回数の測定の後に、例えば10回目の測定の後に、検出されたロープ捩り剛性の変化が、予め決定された閾値を超えるときに、廃棄信号が提供される。
【0019】
単純には、廃棄信号は、クレーン操作者に対して、例えば聴覚的に及び/又は視覚的に表示され得る。あるいは、ロープ駆動部を停止させるのに廃棄信号を用いてもよい。
【0020】
本発明の有利な更なる発展によれば、捩り剛性判定手段は、ホイストのロープ駆動部に固定的に取り付けられ得る。これにより、稼働中にロープの捩り剛性が絶えず監視され得るので、ホイストの稼働状態にて、当該ホイストを特別な試験態様に取り替える必要性がない。これに代えて、又はこれに加えて、捩り剛性判定手段は、複数の異なるホイストで共用され得る、着脱可能なユニットとして設けられてもよい。
【0021】
以下、好ましい実施形態により、また図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ラフ可能なジブのためにホイストロープ及び/又はブレースロープが繊維ロープとして設計され得て、かつロープ巻胴からクレーンブームにおけるトロリを通って動くホイストロープの端部に捩り剛性判定手段が固定された、本発明の有利な実施形態に係るタワークレーンの形で示した、本発明に係るホイストの概略図である。
【
図2】ブームがラフ可能であり、かつロープ巻胴から出たホイストロープがブーム先端を通って動き、ブームにてロープ端部に捩り剛性判定手段が固定された、本発明の他の有利な実施形態に係るタワークレーンの形で示した、本発明に係るホイストの概略図である。
【
図3】
図1に示されたクレーンのホイストロープのロープ駆動部の中に組み込まれた捩り剛性判定手段のスイベルの概略を、当該スイベルの回転駆動部を示す長手方向の断面にて示す図である。
【
図4】回転駆動部に対向したトルクサポート部及びトルクメータを示す、捩り剛性判定手段のスイベルの回転駆動部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の有利な実施形態に係るホイストの例を、タワー部21が可動台又は固定台の上に取り付けられた最上部旋回式クレーン20の形態で示している。タワー部21には、ブレーシング24によって支えられたブーム23が、従前の公知態様で連結されている。前記ブレーシング24は、例えばブレーシングロッドの形態のような剛体であり得るが、ブーム23の作業角度が変えられるように、
図2に示すようなブレーシングウィンチ25により長さが変更可能である、ロープを通す形態にて調整可能であってもよい。
【0024】
図1に示されるように、タワークレーン20にトロリブームを設けてもよい。前記クレーン上にて水平に稼働位置に、特に水平方向のブーム23上に、トロリ55が取り付けられる。このトロリ55は、例えば、ブーム先端にて転向プーリによって案内され得るトロリロープによって、可動であってもよい。
【0025】
タワークレーンは、
図2に示すようにクレーンフック29に接続されたブーム先端から転向プーリによって降ろされ得る、あるいは、
図1による態様では、前記移動可能なトロリ55とそこに配置された転向プーリとを介して動き得て、クレーンフック29に接続され得る、ホイストロープ1を更に有する。いずれの場合でも、前記ホイストロープ1は、ホイストウィンチ30の上を動く。
【0026】
前記ホイストロープ1及び/又はブレースロープは、アラミド繊維又はアラミド/カーボン混紡繊維のような合成繊維からなる繊維ロープとして設計され得る。
【0027】
いずれの場合でも、前記ホイストロープは、スイベル4によりクレーンのブーム23に固定され得る。
【0028】
廃棄状態に関連した前記繊維ロープのパラメータを監視し、又は検出するために、クレーン上に配置され得て、かつ取得したパラメータを評価する評価ユニット3とともに、電子式のクレーン制御ユニット31に接続され、又は組み込まれ得る、検出手段が設けられる。
【0029】
図1及び
図2に示されるように、捩り剛性判定手段2は、
図3及び
図4に詳細を示す前記スイベル4を有することが有利である。前記スイベル4は、ロープの長手方向にて互いに対して回転可能である、2つのスイベル部品4a及び4bを有する。一方のスイベル部品4aは、ロープの長手方向に関してブーム23に固定的に取り付けられた、固定の又は傾斜不能のスイベル部品を形成する。振動を与える、吊された又は垂直の装置が第1の軸受軸6に、水平の同様に振動を与える装置が第2の軸受軸7にそれぞれ設けられ得る。これらは、ロープ長手方向におけるスイベル部品4の捩れを防止しつつ、ロープ長手方向に交差する方向の振動又はスイベル運動を可能にする。
【0030】
他方のスイベル部品4bは、ロープ1が回転不能に固定される、回転側のスイベル部品を形成する。この回転側のスイベル部品4bは、例えば、固定側のスイベル部品4a上のアキシャル軸受8及びラジアル軸受9の形態のような、複数のローラー軸受を介してロープ長手方向のまわりに回転可能に取り付けられ得る。
【0031】
回転側のスイベル部品4bは、スイベル4の中に有利に配置され得る回転駆動部5に接続され得ることが有利である。このために、例えば、固定側のスイベル部品4aは、回転駆動部5のための収容部を形成するように、ベル形又はスリーブ形であり得る。しかしながら、逆に、回転側のスイベル部品4bがベル形又はスリーブ形の外形を持ち、これが固定側のスイベル部品4aを収容し得るような構成でもよい。
【0032】
例えば、前記回転駆動部5は、ギアを介して又は直接に、回転不能に出力シャフトで回転側のスイベル部品4bに接続された電気モータを有し得る。回転駆動部5の駆動ハウジング10は、例えば、ストップ又は他の適当な軸受外形によりスイベル部品4a上に支持され得る1つ以上のトルクサポート部14によって、固定側のスイベル部品4a上にて捩れが生じないように準備され得る(
図4参照)。
【0033】
図3及び
図4に示されるように、スイベル4には、前記回転駆動部5の向こう側に、2つのスイベル部品4a及び4bの互いに対する回転の捩れ角と、2つのスイベル部品4a及び4bの捩れに必要なトルク並びに回転方向とを測定する測定手段が設けられる。原則的には、そのために設けられる捩れ角メータ12,トルクメータ11及び回転方向メータ13に種々の設計が可能であって、例えば、回転駆動部5のためのモータの動作パラメータを測定する手段を有する。例えば、駆動モータの動作パラメータである電流及び電圧から、トルクが判定され得る。これに代えて、又はこれに加えて、トルクメータ11は、トルクを測定して、それを制御装置15に利用させるように、スイベル部品4aに対する前記トルクサポート部14又は回転駆動部5に割り当てられ得る。前記回転方向メータ13もまた、例えば、前記トルクメータ11と組み合わされて、スイベル部品4a上のストップ外形に対するトルクサポート部の圧力を測定する測定ユニットをなすように、トルクサポート部14に割り当てられ得る。
【0034】
これに代えて、又はこれに加えて、トルクメータ11及び/又は回転方向メータ13は、ロープ1を回転側のスイベル部品4bに接続するためのコネクタ部16の中にも組み込まれ得る。
【0035】
捩れ角メータ12又はこれと等価な回転センサは、例えば、2つのスイベル部品の互いに対する捩れを直接測定するために、2つのスイベル部品4a及び4bの間のインターフェイスに接続され得る。これに代えて、又はこれに加えて、捩れ角メータ12は、回転駆動部5に、又は、回転駆動部5のギアシャフト又は出力シャフト上に割り当てられ得る。
【0036】
以下のステップによりロープ1の捩り剛性が検出され得ることが、有利である。
【0037】
まず、ロープが測定位置へ移動させられる。そのために、吊上フックのホイスト位置測定手段が用いられ得る。特に、あるホイスト高さまで吊上フックが移動させられる。もし必要ならば、ある位置までトロリが移動させられ、又は、あるラフ位置までブームが移動させられる。
【0038】
未使用のロープが最初に使用される場合には、更なる測定のための参照ベースであるゼロ状態として、ロープ1の捩り剛性が測定される。このために、例えば、吊上フックをあるホイスト高さに、トロリをある位置に、及び/又は、ブームをあるラフ位置にそれぞれ設定することにより、ロープの決定された試験長Lが、ある値に設定され、かつ格納され得る。これは、参照ロープ長Lが後の測定のために再度所望の値に設定され得るように、適切な位置決め又は位置センサを介して測定され、かつ格納され得る。
図1に示されるように、トロリを有するタワークレーンでは、測定されたロープ区間とその長さLは、スイベル4と、トロリの転向プーリとの間の長さであり得る。ラフ可能なブーム23を有するタワークレーンでは、ロープ区間とその長さLは、前記スイベルと、吊上フック又は吊上フックシースとの間の長さであり得る。
【0039】
好ましくは、以下の全ての試験においてロープが常に同一の引張力を有するように、フックに荷重を掛けない状態で試験が実行され得る。
【0040】
捩り剛性試験を始めるために、まず、ロープ1に存在する捩れが、できる限り補償されなければならない。このために、ロープの捩れによってスイベル4に引き起こされたトルクが、測定されなければならない。これは、上述のトルクメータ11により行われ得る。次に、制御ユニット15は、ロープの捩れによって引き起こされたトルクがゼロに近付くように、判定されたトルクとその方向とに応じて回転駆動部5を制御する。それは、実際の捩り剛性試験の起点である。
【0041】
ここで、ロープ1の前記区間Lにて、所定数の回転が引き起こされ、その結果生じるトルクが測定される。そのために、回転駆動部5が駆動され、その捩れに必要なトルクが測定される。
【0042】
これに代えて、又はこれに加えて、回転駆動部は、あるトルクがロープ1に引き起こされるように、制御ユニット15によって制御され得る。そして、その結果生じる回転速度又は捩れ角が、捩れ角メータで測定される。
【0043】
ロープの捩り剛性は、測定されたトルク及び捩れ角から判定される。回転速度が固定の場合には、これに必要なトルクが、捩り剛性の測定値として直接に用いられ得る。一方、トルクが固定の場合には、その結果生じる回転速度又は回転角が捩り剛性の測定値として用いられ得る。特に、トルク及び回転角の測定値は、以下の測定の参照ベースとして使用されるように、制御ユニット15のメモリの中に格納される。
【0044】
負荷サイクルカウンタにより記録され得る所定数の負荷サイクル又は屈曲サイクルの形式がもし必要ならば、所定の時間間隔にて、上記のように捩り剛性が再度測定される。そして、その結果が前の測定の結果と、特に未使用ロープの結果と比較される。
【0045】
評価装置3は、上記の態様で、未使用のロープに対して、ロープの捩り剛性及び/又はその変化が所定の閾値を超えているかどうかを、特に評価する。
【0046】
安全なクレーン作業のための、捩り剛性の最大許容閾値、又は、未使用ロープの評価における最大許容変化が、制御ユニット15に記録され、かつ捩り剛性の測定の際の比較基準として使用され得る。本発明の更なる発展によれば、前記閾値に近付いたときに、ロープを交換すべきことを表示する事前の警告が与えられ得る。前記閾値が無視され、これに到達し、又はこれを超える場合には、制御ユニット15は、そのロープでの稼働を自動的にシャットダウンするように、評価ユニット3により生成された廃棄信号を用い得る。
【0047】
捩り剛性を判定するためのロープ区間の移動は、自動的に又は手動でプログラムされ得る。