(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367978
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】熱可塑性合成材料製の2つの接合部材の溶接シームに沿うレーザ溶接方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
B29C65/16
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-570251(P2016-570251)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公表番号】特表2017-524558(P2017-524558A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】EP2015061724
(87)【国際公開番号】WO2015185415
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】102014210486.6
(32)【優先日】2014年6月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399007154
【氏名又は名称】エル・ピー・ケー・エフ・レーザー・ウント・エレクトロニクス・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン クノール
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヨナタン シュヴァルメ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ジーベン
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−184490(JP,A)
【文献】
特開2014−065288(JP,A)
【文献】
特開2002−182135(JP,A)
【文献】
特開昭63−247703(JP,A)
【文献】
特開2014−117724(JP,A)
【文献】
Dr. Alexander Olowinsky,Verfahrenstechnik und Anforderungen an die Produktkonstruktion fur das Kunststoffschweitzen mit Laserstrahlung,WOLF PRODUKTIONSSYSTEMEのホームページ,2008年 9月24日,pages 1-56,(インターネットより入手(URL:http://www.wolf-produktionssysteme.de/de/veroeffentlicht/technologieseminar/technologieseminar2008/vortrag1.pdf)(入手日:2017年10月30日))
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成材料製の接合すべき2つの部材(8、9)の溶接シーム(S)に沿うレーザ溶接方法であって、
レーザビーム(2)は、作成すべき溶接シーム経路に対応する制御データによる制御方法で作動フィールド(A)内のビーム方向(R)において制御され、
前記レーザビーム(2)は、作成すべき溶接シーム(S)の目標幅(B)よりも接合面(F)において小さく、かつ前記接合面(F)上への前記レーザビーム(2)の入射角(W)に依存及び/又は前記接合面(F)に対する焦点(f)の位置に依存して溶接を行なう当該焦点(f)の周りの領域におけるビーム寸法を有し、
前記レーザビーム(2)は、作成される溶接シーム(S)の軌道に沿って前方送り主方向(H)の第1の運動成分において、かつ前記第1の運動成分に重畳され、前方送り主方向(H)に対して横方向に振動振幅幅(OAW)で溶接シーム幅(B)をカバーする第2の振動運動成分において移動される熱可塑性合成材料製の2つの接合部材の溶接シームに沿うレーザ溶接方法において、
前記制御方法によって、前記振動振幅幅(OAW)は前記接合面(F)のビーム寸法に逆比例して調節されて、前記前方送り主方向Hに対して横方向に前記レーザビーム(2)によってスキャンされるビームフィールドの幅は前記溶接シーム(S)の目標幅(B)に対応し、前記レーザビーム(2)によって、前記作動フィールド(A)の位置及び偏向とは無関係に、前記前方送り主方向(H)に対して横方向にビームフィールドが前記溶接シーム(S)の前記目標幅(B)に対応してカバーされることを特徴とする熱可塑性合成材料製の2つの接合部材の溶接シームに沿うレーザ溶接方法。
【請求項2】
前記レーザビーム(2)の第2の振動運動成分は第1の直線運動成分に重畳される円形運動によって生成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記振動振幅幅(OAW)の仕様の基準となる接合面(F)の前記ビーム寸法は前記レーザビーム(2)の前記ビーム方向(R)の前記制御データから決定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記接合面(F)上への前記レーザビーム(2)の入射角(W)は前記振動振幅幅(OAW)の仕様の基礎として使用されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記接合面(F)における前記接合すべき2つの部材(8、9)の形状データは前記振動振幅幅(OAW)の仕様の基礎として使用されることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記焦点(f)の位置は、前記接合すべき2つの部材(8、9)間の前記接合面(F)の下方の前記作動フィールド(A)の中央領域において及び/又は前記接合すべき2つの部材(8、9)間の前記接合面(F)の上方の作動フィールド(A)のエッジ領域において調節されることを特徴とする請求項1乃至請求項5何れか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第2の運動成分の振動周波数は0.25kHz〜12kHzの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項6何れか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第2の運動成分の振動周波数は3kHz〜6kHzの範囲にあることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記作動フィールド(A)は500×500mm2及び1200×1200mm2の間の領域を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8何れか1項記載の方法。
【請求項10】
前記作動フィールド(A)は650×650mm2の領域を有することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビーム(2)の焦点(f)は0.3mm〜0.7mmの最小スポット直径(d)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10何れか1項記載の方法。
【請求項12】
前記レーザビーム(2)の焦点(f)は0.4mmの最小スポット直径(d)を有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
レーザ(1)がM2=1.0〜1.4の範囲の高ビーム品質で使用されて前記ビームを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項12何れか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、ドイツ特許出願DE 10 2014 210 486.6の優先権を主張するものであり、その内容はここで参照される。
【0002】
本発明は、熱可塑性合成材料製の接合すべき2つの部材を溶接シーム(継ぎ目)に沿ってレーザで溶接する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
この接合技術は、例えば特許文献1又は特許文献2から知られている。実質的には、これに関して、接合すべき2つの適切に装着されてクランプされた部材は、作成すべき溶接シームに沿って作動フィールド内でレーザビームが照射され、そのレーザビームのビーム方向は作成すべき溶接シーム経路に対応する制御データによって対応する制御方法で制御される。さらに、茲では溶接シームに沿った照射は所謂輪郭溶接を使用して実施することができ、各々の溶接シーム位置はレーザビームによって一回照射されることが知られている。代替例として、準同時溶接を実施することもでき、その場合レーザビームは溶接シームコースを短時間間隔で複数回案内される。
【0004】
さらに、上記の文献から、焦点区域、即ち特に接合面のビーム直径は作成すべき溶接シームの幅よりも小さいことが知られている。対応する幅の溶接シームを作成するために、上記の特許文献1には、レーザビームをその焦点区域とともに溶接シームの軌道に沿った前方送り主方向の第1の運動成分により、かつこれに重畳される第2の振動運動成分により振動振幅幅をもたせて運動させて、前進送り主方向に対して横方向の溶接シーム幅をカバーすることを提案している。前方送り主方向に沿った直線運動に、例えば円形振動運動成分を重畳する場合、レーザ焦点の螺旋状に延伸する経路が得られ、連続する螺旋状ストロークは振動周波数及び前方送り速度の間の比に強く依存し多かれ少なかれ互いに重畳する。全体として、接合面におけるレーザ焦点によって照射された領域における熱の供給によって、接合すべき2つの部材のうちの少なくとも1方の熱可塑性材料が溶融され、接合すべき他方の部材の熱伝導及び溶融によって、接合すべき2つの部材の間で溶接が達成される。
【0005】
溶接プラント技術に関して、上述の溶接方法はビーム偏向のためのガルバノスキャナで一般に実現され、このガルバノスキャナによって、レーザビームを対応する偏向を伴って、規定されている作動フィールド上に導くことができる。これに関して、結像光学系には所謂fθレンズが用いられ、これはレンズをつき通るビームを光軸の側に集束させる特性を有して、焦点位置が光軸上に直接延在するビームの場合と同じ平面内に配置されるような形態とされる。このようなfθレンズは典型的には2〜4個の非球面レンズの組み合わせから構成され、与えられる波長に対して焦点位置適応が良好に機能するような形状に設計される。
【0006】
レーザ溶接の場合、プロセス調節及び制御のためにパイロメータ(高温計)などの測定装置をビーム経路に接合することが望ましい。しかしながら、fθレンズに因り、スキャナが次第に増大して偏向される場合には、パイロメータの溶接スポット及び光学軸の横方向の逸脱が生じる可能性がある。この点で、パイロメータによる溶接スポットの検出は最早確保されない。
【0007】
茲で、fθレンズを省略すると、レーザプラントの光軸からの偏向が増大、即ち接合面へのレーザビームの入射角が増大することで、レーザビームはその焦点が接合面の外側に配置され、したがって焦点ぼけし、よって溶接スポットが大きくなる。
【0008】
さらに、接合面が焦点位置に対して変位するならば、例えば接合すべき2つの部材が溶接シームに沿って少なくとも僅かに階段状の経路を取るならば、レーザビームの焦点ぼけも観察される。
【0009】
実際に、上述した焦点ぼけ現象は接合面に入力されるエネルギーに関してはそれ自体許容できるものである。しかしながら、与えられる振動振幅幅では前方送り主方向を横切る照射領域が光軸からの偏向が次第に増大して溶接スポットが広がる結果として大きくなり、それで溶接シームも広くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE 10 2004 056 782 A1
【特許文献2】DE 10 2007 049 362 A1
【特許文献3】EP 1 098 751 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このことから、本発明の目的は、接合すべき2つの部材を溶接するための方法及び対応する装置を提供することであり、レーザビームの接合面への偏向角に拘わらず及び/又は焦点位置の接合面に対する相対的な位置に拘わらず、fθレンズを使用せずに規定される溶接シーム幅が確保される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、
制御方法によって達成され、ここで振動振幅幅は接合面のビーム寸法、好ましくはビーム直径に逆比例して調節されて、前方送り主方向に対して横方向にレーザビームによってスキャンされるビームフィールドの幅は溶接シームの目標幅に対応し、それによれば振動振幅幅は、接合面において、ビーム寸法、特にビーム直径に逆比例して調節されて、溶接シーム幅の前方送り主方向を基準にして横方向のビーム寸法とは無関係に、レーザビームによって走査されるビームフィールドの幅は溶接シーム幅に対応する。
【0013】
換言すれば、接合面におけるビーム寸法が拡大している場合、即ち、例えば比較的大きいビーム直径が強く偏向されるレーザビームの場合、振動振幅幅が縮小するので、溶接シームが作成されるレーザビームによって走査される通路の最大幅は目標溶接シーム幅に対応する。
【0014】
装置技術の点について、
本発明によるそれ自体知られている溶接装置はそのような制御方法でそのスキャナ装置内で制御される。
【0015】
本発明による溶接システムは、合成材料溶接に関して複数の異なる要求プロファイルに柔軟に使用できることを特徴とする。既知のシステムと比較すると、高いビーム品質のレーザを使用することにより、小さな溶接スポットで拡大された作動フィールドを同時に実現することができる。特に、焦点ぼけの補償を実現することができるばかりでなく、一般に、振動振幅幅の制御によって溶接シーム幅の柔軟な調節可能性を容易に実現することができる。最後に、例えばパイロメータによるインテリジェントプロセス制御が対応する溶接システムに容易に統合することができる。何故なら、上述したような従来技術で使用されているfθレンズに関連する制限が発生しないからである。
【0016】
本発明による方法のさらに好ましい発展例は、従属請求項に規定されている。したがって、レーザビームの第2の振動運動成分が第1の直線運動成分上に重畳される円形運動によって発生されることは有利である。この振動運動成分は、例えば垂直又は水平方向の8の字形の真円形運動、楕円形循環運動又は振動閉曲線によって実質的に作成することができる。各々の場合において、振動振幅幅は接合面に存在するビーム直径に対応して適合され、一定の目標溶接シーム幅が作成されるようになる。
【0017】
レーザビームのビーム方向は、与えられる溶接システムを基準として、接合面内の焦点寸法と既知の関係にあるので、対応する振動振幅幅はレーザビームのビーム方向の制御データに基づき単純な制御技術を用いてレーザビームのビーム方向に応じて調節することができる。したがって、ビーム方向を決定するパラメータとしてのレーザビームの偏向角は振動振幅幅を特定するための基礎として用いることができる。
【0018】
上記の振動振幅幅の仕様に加えて或いはこれに代えて、本発明による方法では、接合すべき部材の限定された3次元性は、例えば接合面が階段状の経路の場合にも補償することができ、段差に起因する接合面におけるビーム直径の変動に対応して振動振幅幅を調節することができる。溶接システムの制御部に記憶される接合すべき2つの部材の形状データが使用されて、振動振幅幅を特定することができる。
【0019】
本発明による方法のさらに好ましい実施例によれば、接合すべき2つの部材間の接合面の下方で作動フィールドの中央領域において又は接合すべき2つの部材間の接合面の上方で作動フィールドのエッジ領域において焦点位置は調節することができる。したがって、作動フィールド全体にわたるビーム寸法の可能な限り最小限の変動が両方向において達成される。
【0020】
第2の運動成分の好ましい振動周波数は、kHz帯域、好ましくは0.25kHz〜12kHzの間、特に好ましくは3kHz〜6kHzの間に配置される。
【0021】
振動振幅幅の本発明による補償に関連してfθレンズを省略する可能性について、実際の点では、作動フィールドは約500×500mm
2〜1200×1200mm
2の間、好ましくは約650×650mm
2を有する。
【0022】
レーザ光学系の設計は、好ましくは、レーザビームの焦点が0.3mm〜0.7mm、好ましくは0.4mmの最小スポット直径を有するようなものである。この寸法は、重畳された前方送り及び振動運動によって、溶接シーム幅がミリメートル範囲の溶接シームを製造するにあたって十分に大きなプロセスウィンドウをもたらすのである。
【0023】
有利な形態において、M
2=1.0〜1.4の範囲の高いビーム品質を有するビームが使用されて当該ビームを作成する。したがって、接合面の領域において比較的高い放射輝度を達成するための条件が作成される。
【0024】
本発明による方法の他のさらに好ましい発展形態によれば、レーザビームのビーム直径は、そこでのコリメート及び集束光学系の構成に因り、スキャナ装置のビーム方向に上流で、3mm〜10mmの間に配置され、それで反射ビーム直径の領域内で一般的に使用されるスキャナミラーは制限された照射を受けることができる。
【0025】
また、本発明は溶接シームに沿って熱可塑性合成材料製の2つの部材を溶接するための溶接装置に関し、好ましくはレーザ伝導プロセスを使用するものであって、
レーザ源、
接合すべき部材のためのクランプ装置、
特にコリメーション及び集束レンズ光学系を有する光学レーザビーム調光装置、
接合すべき2つの部材の間に形成される溶接シームに沿って作動フィールドにわたってレーザビームを案内するスキャナ装置を備えている。
【0026】
本発明による溶接装置はスキャナ装置が本発明による制御方法によって制御されることを特徴とし、それで振動振幅幅が接合面におけるビーム寸法に逆比例して調節される形態をとり、また前方送り主方向に対してレーザビームによって横方向に走査されるビームフィールドの幅は溶接シームの目標幅に対応している。
【0027】
本発明によるこの溶接装置の利点について、対応する制御方法に関する対応する考察を参照することができる。
【0028】
好ましい実施例によれば、これに関連して、ファイバレーザが溶接装置のために使用される。好ましくは、単一モードファイバによるビーム結合が実施される。このレーザがスキャナ装置と組み合わせて良好なビーム品質を有する結果として、比較的小さいビーム直径で同時に大きな作動フィールドを達成することが可能である。さらに、これに関連して、ビーム焦点の比較的大きなレイリー長も達成される。
【0029】
原理的には、振動ミラー装置をスキャナ装置として使用することが可能であり、これで溶接シーム方向に沿ったレーザビームの前方送り運動と、前方送り運動に対して横方向への振動運動との両方を確保する。これは装置技術の合理的な変形例を表している。
【0030】
しかしながら、前方送り主方向に沿ってレーザビームの第1の運動成分を作成するための第1のスキャナユニットと、第1のスキャナ装置の上流に接続されて前方送り主方向に対して横方向への第2の運動成分を作成するための第2のスキャナユニットとを代替例として提供することができる。ビームの偏向に関与する運動成分の分離により、第2のスキャナユニットはそれぞれ必要とされる力学機構に最適に適合させることができる。したがって、第2の運動成分の振動はkHz範囲でかなりダイナミック(動的)であるが、前方送り主方向の運動よりもかなり小さい振幅で提供される。後者は、例えば5秒当たり数百〜数千mm程度の大きさにて前方送り速度で行われる。
【0031】
第2の運動成分の振動を発生させるスキャナユニットについて、共鳴スキャナ又は音響光学偏光器を設けることができる。
【0032】
最後に、さらに好ましい実施例において、石英ガラス製のミラーがスキャナユニットに使用され、これは炭化ケイ素製の従来のミラーとは異なる。ところが、この炭化ケイ素製の従来のミラーは軽く、したがって高周波スキャン動作に設定することが容易ではある。しかしながら、炭化ケイ素材料の吸収能力はミラー層を通過するレーザの残留放射が問題であり、炭化ケイ素基板の加熱をもたらす。これは基板とスキャナ駆動装置との間の接着点が破損する危険性をもたらす。対照的に、石英ガラスは本発明で使用される近赤外放射線に対して吸収性ではない。ミラー層を通過する残留放射線はスキャナハウジング又は対応する放射線トラップにおいて吸収される。したがって、本発明による溶接システムにおいて、レーザをはるかに高い放射輝度で使用することが可能である。
【0033】
本発明にしたがう装置の他の特徴、詳細及び利点は、実施例についての以下の説明と図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】接合面におけるレーザ溶接プラントの作動フィールドの拡大概略平面図。
【
図3A】ビーム直径に依存する振動振幅幅を示す
図2の詳細図。
【
図3B】ビーム直径に依存する振動振幅幅を示す
図2の詳細図。
【
図4A】接合面の急変領域において接合面に垂直に接合される2つの部材を通る概略拡大詳細断面図。
【
図4B】接合面の急変領域において接合面に垂直に接合される2つの部材を通る概略拡大詳細断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明にしたがう熱可塑性合成材料製の2つの接合部材の溶接シームに沿うレーザ溶接方法及び装置における実施の形態について図面を参照して詳述する。
【0036】
図1に示すように、本発明にしたがって制御されるレーザ溶接装置は放射源としてのファイバレーザ1を備え、そのレーザビーム2はシングルモードファイバ3を介してシステムに結合される。これに関して、レーザビーム2はファイバ3からコリメーション(平行)装置4に供給される。コリメーション装置4はコリメータレンズ5を備えている。
【0037】
このようにして平行にされたレーザビーム2は規定の焦点距離を有する集束レンズ6によって集束される。
【0038】
集束されたレーザビーム2は、スキャナ装置7によって、後述する制御方法に対応して、接合すべき2つの部材8、9上に指向され、そこでは、一方で、第1の運動成分として案内され、前方送り主方向Hに沿って接合面F内に溶接シームSを形成する。これに関して、接合すべき2つの部材8、9はクランプ装置10によって互いに十分に接触して保持され、既知のレーザ透過溶接を用いて溶接シームSを作成することができる。したがって、接合すべき上部材8はレーザビーム2に対して透過性であり、接合すべき下部材9は吸収性である。レーザビーム2の放射エネルギーは熱伝導によって接合すべき下部材9の溶融をもたらし、接合すべき上部材8もまた溶融され、接合すべき両部材8、9の間の実質的嵌め合い結合がレーザビーム2の経路に沿って形成される。
【0039】
他方、ビーム直径dは配置すべき溶接シームの目標幅Bよりもかなり小さいので、目標幅Bをカバーするために、レーザビーム2は前送り主方向Hに対して横方向に第2の振動運動成分が付与され、これは約3〜6kHzの間の高周波円運動とすることができる。したがって、前方送り主方向Hにおいて当該運動を重畳することにより、
図2で容易に可視可能のレーザビーム2の螺旋運動が得られる。前進送り主方向Hの速度とそれを横断する振動運動成分の振動周波数との比に依存して、連続した螺旋経路は互いにより大きく又はより小さく重なり合う。
【0040】
与えられる周縁条件の下では、接合すべき両方の部材8、9は、別例としてレーザビーム2に対して実質的に透過性であり得る。それにも拘わらず、レーザビーム2の高い集束により、与えられる残留吸収能力は十分なエネルギー吸収及び接合すべき2つの部材8、9の溶融を達成するのに十分なものである。特許文献3には対応する方法が記載され、この方法によれば2つの高度に透明な材料は波長範囲1.8−2.2μmにおける固有吸収に因り加工処理することができる。
【0041】
スキャナ装置7において、1つのスキャナミラー11のみが
図1に概略的に示されている。一般に、2次元の作動フィールドA(
図2)をカバーするために、2つのミラーが使用され、その各々が軸線x又はそれぞれ軸線yに沿ってレーザビーム2の偏向をもたらす。この場合、ミラー11上のレーザビーム2のビーム直径sは3mm〜10mmのオーダの大きさに配置される。
【0042】
上述の背景技術で説明した本発明の根底にある課題は
図1を参照して再び説明する。したがって、接合すべき部材8、9上に垂直に投射するレーザビーム2は溶接装置の作動フィールドAに中心に配置され、比較的小さな寸法、即ち小さなビーム直径dを有する。
【0043】
レーザビーム2を中央領域から外側に偏向させ、ビーム方向Rが接合面Fと90°よりも小さい入射角Wとなる場合、スキャナミラーから接合面Fまでの光路は長くなり、fθレンズは補償のために使用されないので、レーザビーム2の焦点fは接合面Fに対して上方に変移される。したがって、接合すべき2つの部材8、9間の接合面Fの領域におけるビーム直径dは拡大され、その形状は少なくともわずかに楕円形である。
【0044】
拡大した
図2において、レーザビーム2の中央領域から外側への偏向が増加するにつれて接合面におけるビーム直径dの変化が概略的に示唆される。作動フィールドAの中央領域において、ビーム直径dが小さく、作動フィールドのエッジ領域におけるビーム直径d’は大きい。ここで、拡大されたビーム直径d’がより広い溶接シームSを引き起こすものではないことを確保するために、
図2に点線で記入されビーム直径dに対応し、即ちこれに起因するレーザビーム2の偏向及び入射角Wに対応して振動振幅幅OAWは、作動フィールドAの位置及び偏向とは無関係に、前方送り主方向Hを横切るビームフィールドが溶接シームSの目標幅Bに対応して常にレーザビーム2によってカバーされるように適応される。したがって、中央領域において、小さなビーム直径dに因り振動振幅幅OAWは大きく、エッジ領域では逆になる。小さな振動振幅幅OAW’は大きなビーム直径d’を補償する。
【0045】
説明の便宜上、この関係は
図3A、
図3Bのレーザビーム2の真円形の運動でより高い分解能で示されている。
図3Aは作動フィールドAの中央領域における状況を示している。ビーム直径dは小さく、それで振動振幅幅OAWが大きく、これによって溶接シームSの目標幅Bに対応するビームフィールドを調節する。
【0046】
図3Bにおいて、レーザビーム2が偏向された状況が示され、ビーム直径d’は
図3Aの状況と比較してより大きい。したがって、振動振幅幅OAW’は小さく調節され、これにより作成される溶接シームSの目標幅Bは変化しない。
【0047】
図4A及び
図4Bにおいて、接合すべき2つの部材8、9の表面トポグラフィの段差12上の運動を再生する状況が示されている。
図4Aにおいて、レーザビーム2は比較的僅か偏向され、入射角Wは約90°に配置される。原理的には、これに関連して、偏向されていないレーザビームの場合、即ち入射角Wが90°である場合、焦点fは接合すべき2つの部材の間の接合面Fの若干下方に配置されるように溶接システムは設計される。レーザビーム2の偏向が増加するにつれて、
図4Aの左側の破線で示唆されるように、焦点fは接合面Fに逸脱し、それを越えて上方に移る。この設計が意味することは作動フィールドAの幅にわたるビーム直径dの変動は偏向されていないレーザビーム2の場合の焦点が接合面Fに配置されるシステム設計と比較して大幅に低減されることである。
【0048】
ここで、
図4Bは段差12を走行した後の状況を示し、そこにおいて接合面Fまで少なくともステップ12の高さだけ長いレーザビーム2の光路が走行されなければならない。これを超えると、入射角W’でより強い偏向によってさらに拡大された光路が観察され、それでレーザビームはより大きなビーム直径d’で接合面Fに投射する。また、ここではその補償のために、
図4Aの状況と比較して振動振幅幅OAW’が減少し、
図4A及び
図4Bに挿入された2つの平面図の比較によって可視可能である。
【0049】
これに関連して、段差12は、一方では、制御装置に格納された接合すべき部材8、9の形状座標によってレーザビーム運動の制御にソフトウェアによって含ませることができる。他方では、例えば共焦点、色測定又はレーザ三角測量に基づいて、スキャナによって実施される距離測定に基づいて制御パラメータの適応を実行することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・ファイバレーザ
2・・・レーザビーム
3・・・シングルモードファイバ
4・・・コリメーション装置
5・・・コリメータレンズ
6・・・集束レンズ
(5、6・・・集束レンズ)
7・・・スキャナ装置
8、9・・・接合すべき2つの部材
10・・・クランプ装置
11・・・スキャナミラー(振動ミラーユニット、石英ガラス製のミラー)
12・・・段差
H・・・前方送り主方向
F・・・接合面
S・・・溶接シーム
B・・・目標幅
A・・・作動フィールド
R・・・ビーム方向
W、W’・・・入射角
OAW、OAW’・・・振動振幅幅
x、y・・・軸線
f・・・焦点
d、d’、s・・・ビーム直径(最小スポット直径)