(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6367992
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】植物栽培用吹出装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20180723BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A01G9/24 G
A01G7/00 601Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-22684(P2017-22684)
(22)【出願日】2017年2月10日
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000244958
【氏名又は名称】木村工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浦野 勝博
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−125196(JP,A)
【文献】
特開平08−338655(JP,A)
【文献】
特開2000−233141(JP,A)
【文献】
特開2012−063079(JP,A)
【文献】
特開平5−203193(JP,A)
【文献】
特開2012−42085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
A01G 7/00
F24F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培ベッド(2)の植物(4)に栽培用空気を吹出す多数の吹出部材(5)と、前記吹出部材(5)に前記栽培用空気を送る搬送部材(6)と、を備え、前記搬送部材(6)が、前記植物(4)を間において前記栽培ベッド(2)と向かい合う壁部(8)を、備え、前記吹出部材(5)が、前記栽培用空気を吹出すノズル(13)と、前記ノズル(13)の外周面の周囲に間をあけて配置された誘引部材(14)と、を備え、前記誘引部材(14)が、前記ノズル(13)から前記栽培用空気が吹出す際に負圧となるように前記ノズル(13)の空気出口付近で狭まって風上側と風下側に向かうにしたがって広がるように括れた内周面(15)を、備え、前記壁部(8)と前記栽培ベッド(2)との間の栽培スペース(S)の空気を負圧によって前記誘引部材(14)の前記風上側から誘引して前記栽培用空気とともに前記誘引部材(14)の前記風下側から前記植物(4)に吹出して前記栽培スペース(S)内で空気が循環するように、前記誘引部材(14)を前記壁部(8)から離した位置で前記吹出部材(5)を前記壁部(8)に取付けたことを特徴とする植物栽培用吹出装置。
【請求項2】
壁部(8)が、栽培ベッド(2)の植物(4)と前記壁部(8)の間に設置された照明装置(3)の光を反射させる反射面(10)を、備えた請求項1記載の植物栽培用吹出装置。
【請求項3】
吹出部材(5)が、栽培用空気の吹出方向を変更するための風向調整機構(12)を、備え、ノズル(13)と誘引部材(14)が一体に動くことで前記ノズル(13)と前記誘引部材(14)との間隙部が変化しないように構成し、かつ、前記ノズル(13)と前記誘引部材(14)の方向を最大限変化させたときの前記誘引部材(14)と前記壁部(8)との間隔を、前記誘引部材(14)の風上側と前記ノズル(13)との間隔以上に設定した請求項1又は2記載の植物栽培用吹出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培用吹出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物は、光合成速度が高まるほど生育が促進され早く大きくなる。光合成速度は、植物の葉面周辺の光強度、二酸化炭素濃度及び気流速度の増加にともなって高まる傾向を示す。人工光にて植物栽培を行う閉鎖型(人工光型)植物工場では、空調機で栽培用空気の温度及び湿度と気流速度を制御し、照明器具で光強度を制御している。
【0003】
【特許文献1】特開2008−212078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら植物の生育促進のため、気流速度を増やそうとすると送風動力が過剰となり、光強度を大きくしようとすると照明の数及び消費電力が増えて、栽培コストアップにつながる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、栽培ベッドの植物に栽培用空気を吹出す多数の吹出部材と、前記吹出部材に前記栽培用空気を送る搬送部材と、を備え、前記搬送部材が、
前記植物を間において前記栽培ベッドと向かい合う壁部を、備え、前記吹出部材が、前記栽培用空気を吹出すノズルと、前記ノズルの外周面の周囲に間をあけて配置された誘引部材と、を備え、前記誘引部材が、前記ノズルから前記栽培用空気が吹出す際に負圧となるように前記ノズルの空気出口付近で狭まって風上側と風下側に向かうにしたがって広がるように括れた内周面を、備え、前記壁部と前記栽培ベッドとの間の栽培スペースの空気を負圧によって前記誘引部材の前記風上側から誘引して前記栽培用空気とともに前記誘引部材の前記風下側から前記植物に吹出して前記栽培スペース内で空気が循環するように、前記誘引部材を前記壁部から離した位置で前記吹出部材を前記壁部に取付けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、搬送部材の壁部と栽培ベッドで栽培スペースを仕切っているので、空調が要らない無駄なスペースを減らせて空調コストが下がる。搬送部材を仕切りに兼用しているので製作コストが下がる。栽培スペース内だけで空気を循環させるので、気流速度を高めても少ない送風動力で済み光合成速度が高まる。限られた栽培スペースの中で空気を循環させて撹拌することで、気流速度を必要以上に高めずに乱流の気流環境を得られる。乱流の気流環境は、通気が悪くなるほど植物が繁茂しても、空気の淀み及び温度ムラを無くし、植物の葉面を強制的に揺らすことができる。その結果、葉面境界層抵抗が低下して光合成速度が一層高まるので、植物生育促進と送風動力削減の両立が図れて栽培コストダウンにつながる。
【0007】
また、搬送部材から送られた栽培用空気は、ノズルを通って出ることで気流速度が増加し光合成速度が高まる。ノズルの空気出口付近で誘引部材との間隙が狭まっているので、ノズルから栽培用空気が吹出す際に負圧となる。栽培スペース内の空気は、負圧によって誘引部材の風上側から誘引されて、栽培用空気とともに誘引部材の風下側から植物に向かって出る。誘引部材の風下側が広がっているので、誘引空気と栽培用空気が拡散して混合し、層流から乱流への遷移を促進する。誘引部材の風上側が広がっているので、栽培スペース内の空気が多量に誘引されて空気の循環スペースが広がり植物全体に気流が接触する。その結果、気流速度を必要以上に高めずに乱流の気流環境を得られ、葉面境界層抵抗が低下して光合成速度が一層高まるので、植物生育促進と送風動力削減の両立が図れて栽培コストダウンにつながる。栽培スペース内の空気を誘引してノズルからの栽培用空気と混合することで、空気温度差が緩和された状態で植物に接触するので、植物への不快なストレスが軽減され、生育不良や植物工場内の結露を防げる。
【0008】
請求項
2の発明によれば、反射面により照明を増やさずに光強度を大きくして消費電力を減らせる。光合成速度が一層高まるので、植物生育促進と照明消費電力削減の両立が図れて栽培コストダウンにつながる。
【0009】
請求項
3の発明によれば、植物の成長に合わせて吹出し方向を調整でき、しかも、ノズルと誘引部材の方向を変えたときに誘引の空気量が部分的に偏ったり減ったりして空気の循環スペースが偏ったり狭くなったりしないので、生育のばらつきが無くなって収穫量がアップし、栽培コストダウンにつながる。
【実施例】
【0010】
図1〜
図3は本発明の植物栽培用吹出装置を示し、人工光型植物工場内に設けられた栽培棚1に、栽培ベッド2及び照明装置3とともに図示省略の固定金具等にて設置する。植物栽培用吹出装置は、栽培ベッド2の植物4に栽培用空気を吹出す多数の吹出部材5と、吹出部材5に栽培用空気を送る搬送部材6と、を備える。
【0011】
搬送部材6は、栽培用空気の空気入口7と、吹出部材5が取付けられる壁部8と、を備える。空気入口7は、栽培用空気の温度及び湿度と気流速度を調整する図示省略の空調機の吹出口に、ダクト9にて連結する。この空調機から送られてきた栽培用空気は、搬送部材6の内部を通って吹出部材5から出る。各図において実線及び破線の太い矢印は気流方向をあらわし、破線は隠れた部分の流れを示す。
【0012】
搬送部材6の平坦な壁部8は、植物4を間において栽培ベッド2と向かい合うように設ける。照明装置3は、栽培ベッド2の植物4と壁部8との間に適数設置する。照明装置3は、消費電力の少ないものを使用すれば良く、形状及び構造は図例に限定されない。壁部8は、照明装置3の光を反射させる反射面10を、備える。反射面10は、反射材や反射塗料、その他の反射物質を用いて構成する。
【0014】
吹出部材5は、栽培用空気の吹出方向を変更するための風向調整機構12を備えると共に搬送部材6の壁部8と栽培ベッド2との間の栽培スペースSの空気を循環させる。図4と図5に示すように、吹出部材5は、栽培用空気を吹出す筒形状のノズル13と、ノズル13の外周面の周囲に間をあけて配置された筒形状の誘引部材14と、を備える。誘引部材14は、ノズル13の空気出口付近で狭まって風上側と風下側に向かうにしたがって広がるように括れた内周面15を、備える。誘引部材14とノズル13は、取付片16で橋渡すようにして、同心円にて固定する。
【0015】
風向調整機構12は、搬送部材6の壁部8とノズル13との間に蛇腹管17を設けてノズル13の方向を自由に変更できるように構成する。搬送部材6の内部の栽培用空気がノズル13から吹出すように、搬送部材6と蛇腹管17とノズル13とを互いに連結する。蛇腹管17は、人力で曲げることができて自然に元の位置に戻らない材質及び構造とする。
【0016】
二点鎖線の誘引部材14は、蛇腹管17を曲げて栽培用空気の吹出方向を変更した状態を示す。ノズル13と誘引部材14の方向を変えたときに誘引の空気量が部分的に偏ったり減ったりして空気の循環スペースが偏ったり狭くなったりしないようにする。それには、ノズル13と誘引部材14が一体に動くことでノズル13と誘引部材14との間隙部が変化しないように構成し、かつ、ノズル13と誘引部材14の方向を最大限変化させたときの誘引部材14と壁部8との間隔を、誘引部材14の風上側とノズル13との間隔以上に設定する。
【0017】
図6と
図7は、風向調整機構12の他の実施例を示す。こちらの風向調整機構12は、搬送部材6の壁部8とノズル13との間に円筒の枠部18及び中空の球部19を設けてノズル13の方向を自由に変更できるように構成する。搬送部材6の内部の栽培用空気がノズル13から吹出すように、搬送部材6と枠部18と球部19とノズル13とを互いに連結する。枠部18には球部19を回転させても外れないように連結する。枠部18と球部19は、球部19を人力で回転できて自然に元の位置に戻らない材質及び構造とする。
【0018】
二点鎖線の誘引部材14は、球部19を回転させて栽培用空気の吹出方向を変更した状態を示す。ノズル13と誘引部材14の方向を変えたときに誘引の空気量が部分的に偏ったり減ったりして空気の循環スペースが偏ったり狭くなったりしないようにする。それには、ノズル13と誘引部材14が一体に動くことでノズル13と誘引部材14との間隙部が変化しないように構成し、かつ、ノズル13と誘引部材14の方向を最大限変化させたときの誘引部材14と壁部8との間隔を、誘引部材14の風上側とノズル13との間隔以上に設定する。
【0019】
なお、本発明は上述の実施例に限定されない。風向調整機構12を省略して壁部8にノズル13を直結しても良い。吹出部材5の数の増減と配置の変更は自由である。ノズル13と誘引部材14は筒形状であれば円筒でなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の植物栽培用吹出装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0021】
2 栽培ベッド
3 照明装置
4 植物
5 吹出部材
6 搬送部材
8 壁部
10 反射面
11 循環機構
12 風向調整機構
13 ノズル
14 誘引部材
15 内周面
S 栽培スペース
【要約】
【課題】 植物栽培コストダウンが図れる植物栽培用吹出装置を得る。
【解決手段】 栽培ベッド(2)の植物に栽培用空気を吹出す多数の吹出部材(5)と、吹出部材(5)に栽培用空気を送る搬送部材(6)と、を備える。搬送部材(6)が、吹出部材(5)が取付けられると共に植物(4)を間において栽培ベッド(2)と向かい合う壁部(8)を、備える。吹出部材(5)が、壁部(8)と栽培ベッド(2)との間の栽培スペース(S)の空気を循環させる循環機構(11)を、備える。
【選択図】
図1