特許第6367995号(P6367995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6367995
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】舗装用再生アスファルト混合物
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/18 20060101AFI20180723BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20180723BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20180723BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   E01C7/18
   C08L95/00
   C08K5/09
   C08K5/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-48148(P2017-48148)
(22)【出願日】2017年3月14日
【審査請求日】2018年2月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】門田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】稲田 弘二
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰史
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−131388(JP,A)
【文献】 特開2005−048001(JP,A)
【文献】 特開2004−211432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/18
C08K 5/06
C08K 5/09
C08L 95/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、
(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、
(c)以下の一般式(2)で示されるグリコールエーテル系化合物と、
を含む、ことを特徴とする舗装用再生アスファルト混合物。

−O−(AO)n−H・・・・一般式(2)

(上記一般式(2)中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1〜30の数である。)
【請求項2】
(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、
(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、
(c)グリコールエーテル系化合物と、
を含み、
前記(a)アスファルトコンクリート再生骨材に対する前記(b)脂肪酸系化合物および/または前記(c)グリコールエーテル系化合物の割合は、0.001〜2質量%である、ことを特徴とする舗装用再生アスファルト混合物。
【請求項3】
前記(b)脂肪酸系化合物は、以下の一般式(1)に示される化合物である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の舗装用再生アスファルト混合物。

−CO−(AO)m−OR・・・一般式(1)

(上記一般式(1)中、Rは炭素数15〜19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、Rは水素、又は、炭素数1〜18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0〜30の数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装用再生アスファルト混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装用再生アスファルト混合物は、舗装の補修や打換え時などで発生するアスファルトコンクリート発生材を原料として、再資源化施設で素材となるアスファルトコンクリート再生骨材を製造し、これに所定の品質が得られるよう必要に応じて、新規骨材、再生用添加剤、新規アスファルトなどを加えて混合したものである。このほか、舗装用再生アスファルト混合物の性状を改質アスファルト混合物相当とするために、改質効果のある再生用添加剤や再生用ポリマー改質アスファルトを添加することもある。
【0003】
近年、アスファルトコンクリート再生骨材に含まれる使用済みアスファルト(旧アスファルト)の性状は低下傾向にある。この要因としては、アスファルトコンクリート再生骨材の繰り返し再生や、改質アスファルト混合物に含まれるポリマー改質アスファルトの影響などがあり、これに伴って舗装用再生アスファルト混合物の施工性も低下する傾向にある。このため、劣化を受け低下した旧アスファルトの針入度と伸度を回復させる能力に優れた再生用添加剤が普及している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−154467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、アスファルトコンクリート再生骨材の繰り返し再生によって旧アスファルトの劣化が著しい。このため、従来の再生用添加剤を添加して旧アスファルトの性状を一定量回復(再生)させても、これを用いて製造した再生アスファルト混合物の施工性が悪くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、旧アスファルトの性状を再生させるとともに、施工性を向上させることができる舗装用再生アスファルト混合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる舗装用再生アスファルト混合物は、
(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、
(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、
(c)以下の一般式(2)で示されるグリコールエーテル系化合物と、
を含む、ことを特徴とする。

−O−(AO)n−H・・・・一般式(2)

(上記一般式(2)中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1〜30の数である。)
【0008】
本発明の第2の観点にかかる舗装用再生アスファルト混合物は、
(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、
(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、
(c)グリコールエーテル系化合物と、
を含み、
前記(a)アスファルトコンクリート再生骨材に対する前記(b)脂肪酸系化合物および/または前記(c)グリコールエーテル系化合物の割合は、0.001〜2質量%である、ことを特徴とする。
【0009】
前記(b)脂肪酸系化合物は、以下の一般式(1)に示される化合物であることが好ましい。

−CO−(AO)m−OR・・・一般式(1)

(上記一般式(1)中、Rは炭素数15〜19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、Rは水素、又は、炭素数1〜18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0〜30の数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、旧アスファルトの性状を再生させるとともに、施工性を向上させることができる舗装用再生アスファルト混合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の舗装用再生アスファルト混合物について詳述する。
【0013】
本発明の舗装用再生アスファルト混合物は、
(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、
(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、(c)グリコールエーテル系化合物と、
を含む。
【0014】
(a)アスファルトコンクリート再生骨材
本発明に用いるアスファルトコンクリート再生骨材は、舗装の補修や打換え時などで発生するアスファルトコンクリート発生材からなり、使用済みアスファルト(旧アスファルト)を含んでいる。
【0015】
アスファルトコンクリート再生骨材の品質は、旧アスファルトの含有量が2.5質量%以上、旧アスファルトの針入度(1/10mm)が1以上30未満、圧裂係数(MPa)が3.00以下、骨材の微粒分量が15質量%以下であることが好ましい。
【0016】
ここで、旧アスファルトの含有量は、舗装調査・試験法便覧 G028「アスファルト抽出試験方法」で測定される含有量であり、旧アスファルトの針入度は、舗装調査・試験法便覧 A041「針入度試験方法」で測定される針入度である。また、圧裂係数は、舗装再生便覧「付録−2 アスファルトコンクリート再生骨材の圧裂係数の求め方」で測定される圧裂係数であり、骨材の微粒分量は、JIS A 1103「骨材の微粒分量試験方法」により測定される微粒分量である。
【0017】
本発明に好適な旧アスファルトは、針入度(1/10mm)が1以上30未満であって、かつ、伸度(cm)が10未満であることが好ましい。
また、本発明に好適な旧アスファルトの芳香族分は、60質量%以下であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。旧アスファルトの芳香族分が60質量%を超えると、(b)脂肪酸系化合物および/または、(c)グリコールエーテル系化合物を旧アスファルトへ添加して得られる再生アスファルトの粘性が低下し、舗装用再生アスファルト混合物の安定性が低下してしまうためである。この芳香族分は石油学会規格JPI−5S−70−2010 「TLC/FID法によるアスファルト組成分析試験方法」で測定される芳香族分である。
【0018】
本発明に用いる再生アスファルトは、芳香族分が60質量%以下を維持しつつ、針入度(1/10mm)が30〜300かつ、伸度(cm)が10〜150であることが好ましい。
【0019】
アスファルトコンクリート再生骨材の配合率は、舗装用再生アスファルト混合物全量基準で20〜99.999質量%であることが好ましく、30〜99.999質量%であることが更に好ましい。
【0020】
(b)脂肪酸系化合物
本発明に用いる脂肪酸系化合物は、ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物である。なお、脂肪酸系化合物のヨウ素価は、JIS K0070−1992に準拠して測定したヨウ素価である。
【0021】
脂肪酸系化合物は、以下の一般式(1)に示される化合物であることが好ましい。

−CO−(AO)m−OR・・・一般式(1)

(上記一般式(1)中、Rは炭素数15〜19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、Rは水素、又は、炭素数1〜18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0〜30の数である。)
【0022】
一般式(1)で表される脂肪酸系化合物としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルが好ましく、これらを単独で、あるいはこれらから選ばれる2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
ここで、Rは炭素数15〜17の直鎖または分岐のアルキル基及び炭素数15〜17の直鎖または分岐のアルケニル基であることが好ましい。Rは水素、又は、メチル基であることが好ましい。AOはエチレンオキサイド単位であることが好ましい。mは0〜15であることが好ましい。製造される舗装用再生アスファルト混合物の施工性が向上するためである。施工性を向上させるため、脂肪酸系化合物のヨウ素価は60〜100(g/100mg)であることが好ましく、70〜85(g/100mg)であることがさらに好ましい。なお、本発明において「アルケニル基」とは、二重結合を1〜3個含む炭化水素基を示す。
【0024】
一般式(1)で表される(b)脂肪酸系化合物としては、脂肪酸:RCOOH、脂肪酸メチルエステル:RCOOCH、脂肪酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル:RCOO(CHCHO)CH、(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステル:RCOO(CHCHO)H等があり、具体的な例としては、パルミチン酸、パルミチン酸メチルエステル、パルミチン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1〜15)、(ポリ)オキシエチレンパルミチン酸エステル(平均付加モル数:1〜15)、ステアリン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1〜15)、(ポリ)オキシエチレンステアリン酸エステル(平均付加モル数:1〜15)、オレイン酸、オレイン酸メチルエステル、オレイン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1〜15)、(ポリ)オキシエチレンオレイン酸エステル(平均付加モル数:1〜15)、リノール酸、リノール酸メチルエステル、リノール酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1〜15)、(ポリ)オキシエチレンリノール酸エステル(平均付加モル数:1〜15)、リノレン酸、リノレン酸メチルエステル、リノレン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1〜15)、(ポリ)オキシエチレンリノレン酸エステル(平均付加モル数:1〜15)等が挙げられる。
【0025】
これらのうち、オレイン酸メチルエステルを75〜95質量%含有し、かつ、ヨウ素価が50〜110(g/100mg)である脂肪酸メチルエステル混合物や、炭素数16〜18のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(平均付加モル数:3〜15)を用いることが好ましい。製造される舗装用再生アスファルト混合物の施工性が向上するためである。
【0026】
脂肪酸系化合物の配合率は、舗装用再生アスファルト混合物全量基準で0.005〜2質量%であることが好ましく、0.005〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
(c)グリコールエーテル系化合物
本発明に用いるグリコールエーテル系化合物としては、一般的に用いられるグリコールエーテル系化合物を挙げることができ、特に、以下の一般式(2)で示されるグリコールエーテル系化合物であることが好ましい。
【0028】

−O−(AO)n−H・・・・一般式(2)

(上記一般式(2)中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1〜30の数である。)
【0029】
ここで、Rは炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜6のアルキル基である。AOはオキシエチレン基であることが好ましい。nは2〜20であることが好ましく、3〜10であることが更に好ましい。製造される舗装用再生アスファルト混合物の施工性が向上するためである。
【0030】
一般式(2)で表されるグリコールエーテル系化合物としては、(ポリ)エチレングリコールメチルエーテル(平均付加モル数:1〜30)、(ポリ)エチレングリコールエチルエーテル(平均付加モル数:1〜30)、(ポリ)エチレングリコールプロピルエーテル(平均付加モル数:1〜30)、(ポリ)エチレングリコールブチルエーテル(平均付加モル数:1〜30)、(ポリ)エチレングリコールヘキシルエーテル(平均付加モル数:1〜30)、(ポリ)エチレングリコールオクチルエーテル(平均付加モル数:1〜30)等が挙げられ、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテルが特に好適である。
【0031】
グリコールエーテル系化合物の配合率は、舗装用再生アスファルト混合物全量基準で0.001〜2質量%であることが好ましく、0.001〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
舗装用再生アスファルト混合物の(a)アスファルトコンクリート再生骨材に対する(b)脂肪酸系化合物および/または(c)グリコールエーテル系化合物の割合は、0.001〜2質量%であることが好ましい。
【0033】
また、舗装用再生アスファルト混合物に、(b)脂肪酸系化合物および(c)グリコールエーテル系化合物の両方が含まれる場合には、(b)脂肪酸系化合物と(c)グリコールエーテル系化合物とは、
(c)/(b)=0.2〜75
の配合比(質量比)であることが好ましい。
【0034】
本発明の舗装用再生アスファルト混合物は、(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、(c)グリコールエーテル系化合物と、を混合することにより容易に製造することができる。
【0035】
舗装用再生アスファルト混合物は、(a)アスファルトコンクリート再生骨材に、(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、(c)グリコールエーテル系化合物を混合しているので、アスファルトコンクリート再生骨材との相互溶解性等が向上する。また、アスファルトコンクリート再生骨材表面のベタツキを抑制する。このため、本発明の舗装用再生アスファルト混合物は、旧アスファルトの性状を再生させるとともに、施工性を向上させることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。例えば、本発明の舗装用再生アスファルト混合物は、さらに、新規骨材、新規フィラー、新規アスファルト等を含んでいてもよい。
【0037】
本発明に好適な新規骨材としては、例えば、砕石、スラグ、砂、再生骨材など、一般的に舗装に用いられるものが挙げられる。新規骨材の配合率は、舗装用再生アスファルト混合物全量基準で80質量%以下であり、好ましくは70質量%以下である。
【0038】
本発明に好適な新規フィラーとしては、例えば、石粉など、一般的に舗装に用いられるものが挙げられる。新規フィラーの配合率は、舗装用再生アスファルト混合物全量基準で10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
【0039】
本発明に好適な新規アスファルトとしては、ストレートアスファルトや、ブローンアスファルトや、ゴムやポリマーなどを添加した改質アスファルト等の一般的に舗装に用いられるものが挙げられる。新規アスファルトの配合率は、舗装用再生アスファルト混合物全量基準で10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施例、比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1〜7、比較例1〜5)
まず、舗装用再生アスファルト混合物の施工性向上の指標となる旧アスファルトの性状の向上を確認する。
アスファルトコンクリート再生骨材に含まれる旧アスファルトを舗装調査・試験法便覧 G029「アスファルトの回収試験方法」で回収した旧アスファルト100gに対し、表1に示す脂肪酸系化合物1〜9、エステル1〜3を5%になるように(それぞれ質量5.26g)添加して、実施例1〜7、比較例1〜5の舗装用再生アスファルト混合物に含まれる再生アスファルトを得た。
表中の各成分の含有量の単位は質量%である。以下において、含有量の単位を表す「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
【0042】
得られた再生アスファルトについて、性状の向上効果を確認した。性状の向上効果は、再生アスファルトの芳香族分が60質量%以下か否か、針入度(1/10mm)が30〜300の範囲内か、伸度(cm)が10〜150の範囲内に含まれているか否かを基準として評価した。性状の向上効果がきわめて優れている場合を「◎」、性状の向上効果が優れている場合を「○」、性状の向上効果があまりみられない(劣っている)場合を「△」とした。なお、前述のように、芳香族分は石油学会規格JPI−5S−70−2010 「TLC/FID法によるアスファルト組成分析試験方法」で測定し、針入度は舗装調査・試験法便覧 A041「針入度試験方法」で測定し、伸度は舗装調査・試験法便覧 A043「伸度試験方法」で測定した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、実施例1〜7の再生アスファルトは、性状の向上効果が優れていることを確認した。一方、比較例1〜5の再生アスファルトは、性状の向上効果が劣っていることを確認した。
【0045】
(実施例8〜11、比較例6〜9)
実機アスファルトプラントで、アスファルトコンクリート再生骨材80.0%(質量1,200kg)に対し、表2に示す添加剤1〜8を0.17%(質量2.55kg、旧アスファルトに対し5%)添加し、これに新規骨材16.8%(質量252kg)、新規石粉1.0%(質量15kg)、新規アスファルト2.03%(質量30.45kg)を加えて、舗装用再生アスファルト混合物(1,500kg)を製造した。なお、実施例9、10のグリコールエーテル系化合物には、株式会社NIPPO社製「ワークライトA」を使用した。
【0046】
製造した舗装用再生アスファルト混合物について施工性の向上効果を確認した。施工性の向上効果は、製造した舗装用再生アスファルト混合物を1時間放置した後、角スコップ、舗装用レーキ等を用いた施工性が向上しているか否か基準として評価した。施工性の向上効果がきわめて優れている場合を「◎」、施工性の向上効果が優れている場合を「○」、施工性の向上効果が劣っている場合を「△」、施工性の向上効果が著しく劣っている場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、実施例8〜11の舗装用再生アスファルト混合物は、施工性が良好であることを確認した。一方、比較例7は施工性が劣ることを確認した。また、比較例6、8、9は施工性が著しく劣ることを確認した。
【0049】
このような添加剤の添加効果により再生アスファルト性状が向上するだけでなく、舗装用再生アスファルト混合物の施工性を飛躍的に改善することで、時間経過に伴って温度低下が発生した場合および製造温度を30℃程度低減(中温化)させた場合においても、良好な施工性を確保できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、舗装用再生アスファルト混合物に有用である。
【要約】
【課題】旧アスファルトの性状を再生させるとともに、施工性を向上させることができる舗装用再生アスファルト混合物を提供する。
【解決手段】舗装用再生アスファルト混合物は、(a)アスファルトコンクリート再生骨材と、(b)ヨウ素価が50〜110の脂肪酸系化合物、および/または、(c)グリコールエーテル系化合物と、を含む。(b)脂肪酸系化合物は、以下の一般式(1)に示される化合物であることが好ましい。R−CO−(AO)m−OR・・・一般式(1)(上記一般式(1)中、Rは炭素数15〜19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、Rは水素、又は、炭素数1〜18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表す。AOは炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し、mは平均付加モル数を表し、0〜30の数である。)
【選択図】なし