特許第6368009号(P6368009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368009通信装置、通信システムおよび帯域制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6368009
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】通信装置、通信システムおよび帯域制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/22 20090101AFI20180723BHJP
   H04W 36/04 20090101ALI20180723BHJP
   H04W 36/14 20090101ALI20180723BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20180723BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20180723BHJP
【FI】
   H04W28/22
   H04W36/04
   H04W36/14
   H04W88/06
   H04W84/12
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-119448(P2017-119448)
(22)【出願日】2017年6月19日
【審査請求日】2018年6月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志水 紀之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 弘明
(72)【発明者】
【氏名】新宮 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮越 健
【審査官】 伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/030870(WO,A1)
【文献】 特開2008−263580(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/101698(WO,A1)
【文献】 特開平9−46290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置であって、
接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、
接続先に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、
輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記記憶部は、
過去の通信状況に関する履歴情報を蓄積し、
前記制御部は、
自装置の現在の通信状況に近似する前記履歴情報がある場合には、その履歴情報に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得し、自装置の現在の通信状況に近似する前記履歴情報がない場合には、前記初期値設定情報に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
自装置の現在位置に関する前記履歴情報に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
自装置の現在位置に関する前記履歴情報と、自装置の現在位置の直前の周辺位置に関する履歴情報とに基づいて、前記通信帯域の初期値を取得することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記現在位置に関する履歴情報から、現在位置における過去の通信帯域の分布状況を取得し、
前記周辺位置に関する履歴情報から、周辺位置における過去の通信帯域の分布状況を取得し、
前記周辺位置における過去の通信帯域の分布状況に対する、直前の時点での周辺位置における通信帯域の偏差を求め、この偏差を、前記現在位置における過去の通信帯域の分布状況に適用することで、現時点での現在位置における通信帯域を取得して、これを通信帯域の初期値とすることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、
通信中のアプリケーションの種別に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記記憶部は、
通信中のアプリケーションの種別に応じた補正係数に関する補正係数設定情報を記憶し、
前記制御部は、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得するとともに、前記補正係数設定情報に基づいて、前記アプリケーションの種別に応じた補正係数を取得して、前記通信帯域の初期値に前記補正係数を乗じることで、前記通信帯域の初期値を補正することを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記制御部は、
自装置の移動速度に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記記憶部は、
自装置の移動速度に応じた補正係数に関する補正係数設定情報を記憶し、
前記制御部は、
前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得するとともに、前記補正係数設定情報に基づいて、前記自装置の移動速度に応じた補正係数を取得して、前記通信帯域の初期値に前記補正係数を乗じることで、前記通信帯域の初期値を補正することを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置であって、
接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、
無線品質に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、
輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、無線品質の変動値が所定のしきい値を超えた場合に、前記初期値設定情報に基づいて、変動後の前記無線品質に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項11】
接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する通信システムであって、
前記通信装置は、
接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、
接続先に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、
輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項12】
接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する際の通信帯域を制御する帯域制御方法であって、
前記通信装置が、
輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、当該通信装置に記憶された初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始することを特徴とする帯域制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置、接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する通信システムおよび帯域制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在検討が進められている5G(第5世代移動通信システム)では、通信エリアや通信速度などの通信性能が異なる様々なRAT(Radio Access Technology)の通信エリアが重畳して配置された、いわゆるヘテロジーニアスネットワークが構成される。このヘテロジーニアスネットワークでは、ユーザ端末が移動するのに応じて、ユーザ端末の接続先が時々刻々と変化し、それに合わせて通信性能も変化する。
【0003】
一方、通信帯域を公平かつ効率的に利用するために、輻輳制御アルゴリズムに従った通信帯域の制御が行われるが、この輻輳制御アルゴリズムでは、通信帯域が拡大する際の追従性に問題がある。このため、5Gで実現される大容量な通信環境を十分に活用することができず、特にEHF帯を利用したRATでは、通信エリアが狭いため、大容量な通信環境を十分に活用できないまま通過してしまうという問題がある。
【0004】
また、輻輳制御アルゴリズムでは、ユーザ端末で利用可能な通信帯域を把握するため、状態監視用のパケットを送受信することで、パケットロス率や遅延時間(RTT)を取得して、これに基づいて通信帯域を推定するようにしている。この技術では、状態監視用のパケットを送受信することから、ネットワーク負荷を増大させるという問題がある。
【0005】
そこで、ネットワーク負荷を増大させずに、ユーザ端末で利用可能な通信帯域を迅速に把握する技術が望まれる。このような要望に対して、従来、ユーザ端末での通信状況に関する情報を履歴情報として蓄積し、現在の通信状況と近似する履歴情報を探し出して、該当する履歴情報から通信帯域を決定する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−244492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の技術では、履歴情報のみに基づいて通信帯域を決定するため、通信帯域を適切に制御することができないという問題があった。例えば、遮蔽物などにより通信状況が変化することで、同じ位置でも接続先が変化することがあり、このような場合に、履歴情報のみに基づく制御では、誤った制御が行われることがある。
【0008】
そこで、本発明は、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる通信装置、通信システムおよび帯域制御方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信装置は、接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置であって、接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、接続先に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、を備える構成とする。
【0010】
また、本発明の通信システムは、接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する通信システムであって、前記通信装置は、接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、接続先に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、を備える構成とする。
【0011】
また、本発明の帯域制御方法は、接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する際の通信帯域を制御する帯域制御方法であって、前記通信装置が、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、当該通信装置に記憶された初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接続先に応じた初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。これにより、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る通信システムの全体構成図
図2】第1実施形態に係るマクロセル基地局3の概略構成を示すブロック図
図3】第1実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図
図4】第1実施形態に係る初期値テーブルの一例を示す説明図
図5】第1実施形態に係るユーザ端末1の帯域制御部42の動作手順を示すフロー図
図6】第1実施形態に係るユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図
図7】第2実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図
図8】第2実施形態に係る通信履歴データベースの一例を示す説明図
図9】第2実施形態に係る初期値テーブルの一例を示す説明図
図10】第2実施形態に係るユーザ端末1の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図
図11】第2実施形態に係るユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図
図12】第2実施形態の変形例に係る帯域制御の概要を示す説明図
図13】第2実施形態の変形例に係る通信履歴データベースの一例を示す説明図
図14】第2実施形態の変形例に係るユーザ端末の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図
図15】第3実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図
図16】第3実施形態に係る帯域制御の状況を示す説明図
図17】第3実施形態に係る補正係数テーブルの一例を示す説明図
図18】第3実施形態に係るユーザ端末1の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図
図19】第3実施形態に係るユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図
図20】第4実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図
図21】第4実施形態に係る帯域制御の状況を示す説明図
図22】第4実施形態に係る補正係数テーブルの一例を示す説明図
図23】第4実施形態に係るユーザ端末1の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図
図24】第4実施形態に係るユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図
図25】第5実施形態に係る帯域制御の概要を示す説明図
図26】第5実施形態に係るユーザ端末1の帯域制御部42の動作手順を示すフロー図
図27】第5実施形態に係るユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置であって、接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、接続先に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、を備える構成とする。
【0015】
これによると、接続先に応じた初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。これにより、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる。
【0016】
また、第2の発明は、前記記憶部は、過去の通信状況に関する履歴情報を蓄積し、前記制御部は、自装置の現在の通信状況に近似する前記履歴情報がある場合には、その履歴情報に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得し、自装置の現在の通信状況に近似する前記履歴情報がない場合には、前記初期値設定情報に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得する構成とする。
【0017】
これによると、自装置の現在の通信状況に近似する履歴情報に基づいて通信帯域の初期値を取得するため、通信帯域をより一層適切に制御することができる。
【0018】
また、第3の発明は、前記制御部は、自装置の現在位置に関する前記履歴情報に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得する構成とする。
【0019】
これによると、現在位置に関する履歴情報に基づいて通信帯域の初期値を取得するため、通信帯域をより一層適切に制御することができる。
【0020】
また、第4の発明は、前記制御部は、自装置の現在位置に関する前記履歴情報と、自装置の現在位置の直前の周辺位置に関する履歴情報とに基づいて、前記通信帯域の初期値を取得する構成とする。
【0021】
これによると、現在位置に関する履歴情報および周辺位置に関する履歴情報に基づいて通信帯域の初期値を取得するため、通信帯域をより一層適切に制御することができる。
【0022】
また、第5の発明は、前記制御部は、前記現在位置に関する履歴情報から、現在位置における過去の通信帯域の分布状況を取得し、前記周辺位置に関する履歴情報から、周辺位置における過去の通信帯域の分布状況を取得し、前記周辺位置における過去の通信帯域の分布状況に対する、直前の時点での周辺位置における通信帯域の偏差を求め、この偏差を、前記現在位置における過去の通信帯域の分布状況に適用することで、現時点での現在位置における通信帯域を取得して、これを通信帯域の初期値とする構成とする。
【0023】
これによると、現在位置に関する履歴情報および周辺位置に関する履歴情報から、適切な通信帯域の初期値を取得することができる。
【0024】
また、第6の発明は、前記制御部は、通信中のアプリケーションの種別に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得する構成とする。
【0025】
これによると、通信中のアプリケーションの種別に基づいて通信帯域の初期値を取得するため、通信帯域をより一層適切に制御することができる。
【0026】
また、第7の発明は、前記記憶部は、通信中のアプリケーションの種別に応じた補正係数に関する補正係数設定情報を記憶し、前記制御部は、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得するとともに、前記補正係数設定情報に基づいて、前記アプリケーションの種別に応じた補正係数を取得して、前記通信帯域の初期値に前記補正係数を乗じることで、前記通信帯域の初期値を補正する構成とする。
【0027】
これによると、接続先と通信中のアプリケーションの種別との両方を考慮した適切な通信帯域の初期値を取得することができる。
【0028】
また、第8の発明は、前記制御部は、自装置の移動速度に基づいて、前記通信帯域の初期値を取得する構成とする。
【0029】
これによると、自装置の移動速度に基づいて通信帯域の初期値を取得するため、通信帯域をより一層適切に制御することができる。
【0030】
また、第9の発明は、前記記憶部は、自装置の移動速度に応じた補正係数に関する補正係数設定情報を記憶し、前記制御部は、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得するとともに、前記補正係数設定情報に基づいて、前記自装置の移動速度に応じた補正係数を取得して、前記通信帯域の初期値に前記補正係数を乗じることで、前記通信帯域の初期値を補正する構成とする。
【0031】
これによると、接続先と移動速度との両方を考慮した適切な通信帯域の初期値を取得することができる。
【0032】
また、第10の発明は、接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置であって、接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、無線品質に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、無線品質の変動値が所定のしきい値を超えた場合に、前記初期値設定情報に基づいて、変動後の前記無線品質に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、を備える構成とする。
【0033】
これによると、遮蔽などにより無線品質が急激に変動した場合に、変動後の無線品質に応じた初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。これにより、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる。
【0034】
また、第11の発明は、接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する通信システムであって、前記通信装置は、接続先となる前記基地局装置と無線通信を行う無線通信部と、接続先に応じた通信帯域の初期値に関する初期値設定情報を記憶する記憶部と、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、前記初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する制御部と、を備える構成とする。
【0035】
これによると、第1の発明と同様に、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる。
【0036】
また、第12の発明は、接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する際の通信帯域を制御する帯域制御方法であって、前記通信装置が、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、前記アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御し、接続先に変更がある場合に、当該通信装置に記憶された初期値設定情報に基づいて、前記接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて前記通信帯域の制御を開始する構成とする。
【0037】
これによると、第1の発明と同様に、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる。
【0038】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0040】
この通信システムは、ユーザ端末1(通信装置)と、サーバ2(対向装置)と、マクロセル基地局3(基地局装置)と、スモールセル基地局4(基地局装置)と、無線LANアクセスポイント5(基地局装置)と、通信制御装置6と、を備えている。
【0041】
マクロセル基地局3の通信エリアと、スモールセル基地局4および無線LANアクセスポイント5の各通信エリアとは重畳され、複数のRAT(無線通信方式)が混在する通信環境、いわゆるヘテロジーニアスネットワークを構成している。
【0042】
ユーザ端末1は、スマートフォンやタブレット端末などである。このユーザ端末1は、ヘテロジーニアスネットワークを構成するマクロセル基地局3、スモールセル基地局4、および無線LANアクセスポイント5に接続することができ、ヘテロジーニアスネットワークと、インターネットおよびコアネットワークからなる有線ネットワークと、を介して、サーバ2と通信を行う。
【0043】
サーバ2は、ユーザ端末1で撮影した映像をユーザ端末1から受信して格納する。また、サーバ2は、ユーザ端末1に各種のコンテンツなどを配信する。
【0044】
マクロセル基地局3は、LTE(Long Term Evolution)などのUHF帯を利用した無線通信を行うものである。このマクロセル基地局3は、制御信号を伝送するための制御プレーン(C−Plane)の基地局となる。なお、マクロセル基地局3は、ユーザデータを伝送するためのユーザプレーン(U−Plane)の基地局として使用される場合もある。
【0045】
スモールセル基地局4は、5GのNR(New Radio)となる高SHF帯またはEHF帯(ミリ波帯)を利用した無線通信を行うものである。このスモールセル基地局4は、ユーザデータを伝送するためのユーザプレーン(U−Plane)の基地局となる。
【0046】
無線LANアクセスポイント5は、Wi−Fi(登録商標)による比較的小容量の無線通信や、WiGig(登録商標)による比較的大容量の無線通信を行うものである。
【0047】
通信制御装置6は、マクロセル(LTE)に関する通信を制御するS−GW(Serving Gateway)やP−GW(Packet data network Gateway)、スモールセル(NR)に関する通信を制御するSMF(Session Management Function)やUPF(User Plane Function)などである。
【0048】
次に、第1実施形態に係るマクロセル基地局3の概略構成について説明する。図2は、マクロセル基地局3の概略構成を示すブロック図である。
【0049】
マクロセル基地局3は、無線通信部11と、有線通信部12と、制御部13と、記憶部14と、を備えている。
【0050】
無線通信部11は、ユーザ端末1と無線通信を行う。
【0051】
有線通信部12は、S−GWなどの通信制御装置6や、周辺にある別のマクロセル基地局3やスモールセル基地局4と有線通信を行う。
【0052】
記憶部14は、ユーザ端末1に関する情報や、周辺にある別のマクロセル基地局3およびスモールセル基地局4に関する情報や、制御部13を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0053】
制御部13は、無線制御部21と、有線制御部22と、を備えている。この制御部13は、プロセッサで構成され、制御部13の各部は、記憶部14に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0054】
無線制御部21は、ユーザ端末1との無線通信を制御し、ユーザ端末1からの無線品質情報に基づいて、適切な接続先への切り替えをユーザ端末1に指示する。
【0055】
有線制御部22は、S−GWなどの通信制御装置6や、周辺にある別のマクロセル基地局3やスモールセル基地局4との有線通信により、ユーザ端末1の接続先などに関する情報を交換する。
【0056】
なお、図2にはマクロセル基地局3の概略構成を示したが、スモールセル基地局4および無線LANアクセスポイント5もこれと略同様である。
【0057】
次に、第1実施形態に係るユーザ端末1の概略構成について説明する。図3は、ユーザ端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0058】
ユーザ端末1は、無線通信部31と、位置情報取得部32と、制御部33と、記憶部34と、を備えている。
【0059】
無線通信部31は、5Gヘテロジーニアスネットワークを構成するマクロセル基地局3、スモールセル基地局4、および無線LANアクセスポイント5との間で無線通信を行い、5Gヘテロジーニアスネットワークおよび有線ネットワークを介して、サーバ2と通信を行う。
【0060】
位置情報取得部32は、GPS(Global Positioning System)などの測位システムにより、自装置の位置情報を取得する。
【0061】
記憶部34は、自装置に関する情報や、基地局に関する情報や、制御部33を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。また、本実施形態では、初期値テーブル(図4参照)を記憶する。
【0062】
制御部33は、無線制御部41と、帯域制御部42と、アプリケーション部43と、を備えている。この制御部33は、プロセッサで構成され、制御部33の各部は、記憶部34に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0063】
無線制御部41は、無線通信部31で行われる無線通信を制御し、無線品質情報などに基づいて、適切な接続先(マクロセル基地局3、スモールセル基地局4、無線LANアクセスポイント5)を選択する。
【0064】
アプリケーション部43は、アプリケーションの内容に応じた処理を実行し、無線通信部31を介してサーバ2とアプリケーションデータを送受信する。
【0065】
帯域制御部42は、輻輳制御アルゴリズムに基づいて、アプリケーション部43に通知する通信帯域を制御する。このとき、各種のパラメータに基づいて現在の通信帯域を推定する帯域推定を行い、通信帯域の推定値をアプリケーション部43に通知する。本実施形態では、無線制御部41から取得した接続先情報に基づいて、通信帯域を制御する。すなわち、接続先に変更がある場合に、初期値テーブル(図4参照)に基づいて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その通信帯域の初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【0066】
なお、帯域推定のパラメータは、輻輳制御アルゴリズムに依存し、例えば、TFRC(TCP Friendly Rate Control)の場合には、パケットロス率および遅延時間(RTT)がパラメータとなる。
【0067】
また、接続先に変更がある場合とは、接続先の切替、追加、削除が行われる場合である。ここで、接続先の切替とは、例えば、接続先がスモールセル基地局4から無線LANアクセスポイント5に切り替えられた場合や、逆に無線LANアクセスポイント5からスモールセル基地局4に切り替えられた場合などである。また、接続先の追加とは、例えば、現在通信中のマクロセル基地局3の他に新たな接続先となるスモールセル基地局4や無線LANアクセスポイント5が追加された場合などである。また、接続先の削除とは、例えば、通信中であるスモールセル基地局4や無線LANアクセスポイント5との通信を切断して、接続先からスモールセル基地局4や無線LANアクセスポイント5を削除する場合などである。
【0068】
次に、第1実施形態に係る初期値テーブルについて説明する。図4は、初期値テーブルの一例を示す説明図である。
【0069】
ユーザ端末1の帯域制御部42では、記憶部34に記憶された初期値テーブル(初期値設定情報)に基づいて、接続先に応じた通信帯域(平均スループット)の初期値を取得する。
【0070】
この初期値テーブルには、接続先のRAT(Radio Access Technology)に応じた通信帯域の初期値が登録されている。図4に示す例では、5Gで採用されるNR(New Radio)、LTE(Long Term Evolution)、3G、ならびにIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)で策定された無線LANに関する規格である802.11acおよび802.11adの各RATに応じた通信帯域の初期値が登録されている。
【0071】
なお、各接続先の通信帯域の初期値は、各接続先のRATに応じたシステム容量とユーザ端末1の能力に基づいて決定される。
【0072】
次に、第1実施形態に係るユーザ端末1の動作手順について説明する。図5は、ユーザ端末1の帯域制御部42の動作手順を示すフロー図である。図6は、ユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図である。
【0073】
まず、帯域制御部42において、無線制御部41から接続先情報を取得する(ST101)。そして、接続先情報に基づいて、接続先に変更があるか否かを判定する(ST102)。ここで、接続先に変更があるとは、無線制御部41において既に接続先が変更された場合の他に、測定報告(Measurement Report)でマクロセル基地局3に通知する通信品質の測定結果などに基づいて、接続先を変更する契機となる条件を満たす状態になった場合も含まれる。
【0074】
ここで、接続先に変更がある場合には(ST102でYes)、通信帯域の初期値を取得する(ST103)。そして、取得した通信帯域の初期値を現在の通信帯域の推定値(制御値)に設定する(ST104)。また、通信帯域の初期値に整合するように帯域決定パラメータ(パケットロス率および遅延時間)を初期化する(ST105)。これにより、通信帯域の初期値で通信帯域の制御(帯域推定)が開始される。
【0075】
なお、帯域決定パラメータの初期化(ST105)では、このとき、帯域決定パラメータから通信帯域を推定する帯域計算式を用いて通信帯域の初期値から逆算して帯域決定パラメータを求めることもできるが、両者の関係を表すテーブルを事前に作成しておき、このテーブルを用いて、通信帯域の初期値から帯域決定パラメータを求めるようにしてもよい。
【0076】
次に、帯域制御部42からアプリケーション部43に通信帯域情報を通知する(ST106)。これにより、アプリケーション部43では、帯域制御部42から指定された通信帯域で、アプリケーションデータを無線通信部31を介してサーバとの間で送受信する処理が行われる。
【0077】
一方、接続先に変更がない場合には(ST102でNo)、無線制御部41から現在の通信状態を表す帯域決定パラメータを取得する(ST107)。そして、帯域決定パラメータに基づいて、通信帯域の推定値を算出する(ST108)。そして、ST106に進む。
【0078】
通信帯域の初期値を取得する処理では(ST103)、帯域制御部42において、まず、無線制御部41から接続先情報を取得する(ST111)。また、記憶部34から初期値テーブルを取得する(ST112)。そして、初期値テーブルに基づいて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得する(ST113)。
【0079】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図7は、第2実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0080】
ユーザ端末1で利用可能な通信帯域(可用帯域)は、ユーザ端末1の現在位置および曜日や時間帯などの通信状況に応じて異なる。そこで、本実施形態では、各位置での実際の通信状況に関する情報を履歴情報として蓄積し、その履歴情報の中から、ユーザ端末1の現在位置に関する履歴情報で、ユーザ端末1の現在の通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)に近似する履歴情報を取得して、その履歴情報に含まれる通信帯域の実績値を通信帯域の初期値として取得する。
【0081】
ユーザ端末1は、第1実施形態と同様に、無線通信部31と、位置情報取得部32と、制御部33と、記憶部34と、を備えている。無線通信部31は、第1実施形態と同様である。
【0082】
記憶部34は、通信履歴データベース(図8参照)と、初期値テーブル(図9参照)とを記憶する。
【0083】
制御部33は、第1実施形態と同様に、無線制御部41と、帯域制御部42と、アプリケーション部43と、を備えているが、本実施形態では、さらに、履歴情報登録部44と、履歴情報取得部45と、端末状態取得部46と、を備えている。
【0084】
履歴情報登録部44は、実際に通信を行った際に、そのときの位置情報、日時情報、接続先情報、無線品質情報、および通信帯域情報(通信帯域の実績値)を、履歴情報として、記憶部34の通信履歴データベースに登録する。
【0085】
履歴情報取得部45は、帯域制御部42からの問い合わせに応じて、自装置の現在の通信状況(接続先、無線品質、時刻および曜日)に近似する現在位置に関する履歴情報を、記憶部34の通信履歴データベースの中から検索して取得する。このとき、該当する履歴情報が複数ある場合には、最も新しい履歴情報を取得すればよい。
【0086】
なお、ここで取得する履歴情報は、通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)の各項目について、所定の許容範囲で近似していればよく、全ての項目が厳密に一致する必要はない。
【0087】
端末状態取得部46は、端末状態情報として、自装置の現在の位置情報、および現在の日時情報(時間および曜日)を取得する。
【0088】
帯域制御部42は、履歴情報取得部45で取得した現在位置に関する履歴情報に基づいて、通信帯域を制御する。本実施形態では、現在位置に関する履歴情報がある場合に、その履歴情報に含まれる通信帯域の実績値を通信帯域の初期値として取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。また、該当する履歴情報がない場合には初期値テーブル(図9参照)を用いて、通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【0089】
次に、第2実施形態に係る通信履歴データベースについて説明する。図8は、通信履歴データベースの一例を示す説明図である。
【0090】
本実施形態では、ユーザ端末1で通信が実行されると、そのときのユーザ端末1の位置情報およびその他の通信状況に関する情報(時刻および曜日、接続先、無線品質など)を履歴情報として通信履歴データベースに登録する。そして、通信帯域を制御する際に、ユーザ端末1の現在の通信状況に近似する履歴情報を通信履歴データベースから取得して、その履歴情報にある通信帯域の実績値を通信帯域の初期値として取得する。
【0091】
この通信履歴データベースには、位置情報、日時情報(時間および曜日)、接続先情報(接続先のRAT)、無線品質情報(信号雑音比など)、および通信帯域情報(通信帯域の実績値)などが登録されている。
【0092】
なお、本実施形態では、通信履歴データベースに、位置情報以外の通信状況に関する情報として、日時情報、接続先情報、無線品質情報、および通信帯域情報を登録するようにしたが、この他に、通信先(対向装置となるサーバ2など)や移動速度に関する情報を登録して、これらの情報を加味して、現在の通信状況に近似する履歴情報を選択するようにしてもよい。
【0093】
次に、第2実施形態に係る初期値テーブルについて説明する。図9は、初期値テーブルの一例を示す説明図である。
【0094】
本実施形態では、初期値テーブル(初期値設定情報)に基づいて、ユーザ端末1の現在の通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)に該当する通信帯域の初期値を取得する。この初期値テーブルに基づいて通信帯域の初期値を取得する処理は、ユーザ端末1の現在の通信状況に近似する履歴情報が通信履歴データベースに存在しない場合に行われる。
【0095】
初期値テーブルには、日時情報(時間および曜日)、接続先情報(接続先のRAT)、無線品質情報(信号雑音比など)、および通信帯域情報(通信帯域の初期値)などが登録されている。図9(A)に示す例は、スモールセルに関するものであり、接続先のRATがNR(New Radio)となっている。図9(B)に示す例は、マクロセルに関するものであり、接続先のRATがLTE(Long Term Evolution)となっている。
【0096】
なお、現在の通信状況に該当するか否かの判定では、通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)の各項目について、所定の許容範囲で近似していればよく、全ての項目が厳密に一致する必要はない。
【0097】
次に、第2実施形態に係るユーザ端末1の動作手順について説明する。図10は、ユーザ端末1の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図である。図11は、ユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図である。
【0098】
まず、帯域制御部42において、端末状態取得部46から端末状態情報として、自装置の現在の位置情報と日時情報(時刻および曜日)とを取得する(ST121)。また、無線制御部41から現在の接続先情報および無線品質情報を取得する(ST122)。
【0099】
次に、自装置の現在の通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)と近似する現在位置に関する履歴情報があるか否かを履歴情報取得部45に問い合わせる(ST123)。このとき、履歴情報取得部45では、記憶部34に記憶された通信履歴データベースを検索して、該当する履歴情報を取得する。
【0100】
ここで、該当する履歴情報がある場合には(ST123でYes)、その履歴情報を履歴情報取得部45から取得する(ST124)。そして、その履歴情報に含まれる通信帯域の実績値を、通信帯域の初期値として取得する(ST125)。
【0101】
一方、該当する履歴情報がない場合には(ST123でNo)、記憶部34から初期値テーブル(図9参照)を取得する(ST126)。そして、初期値テーブルから、現在の通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)に該当する通信帯域の初期値を取得する(ST127)。
【0102】
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図12は、帯域制御の概要を示す説明図である。図13は、通信履歴データベースの一例を示す説明図である。
【0103】
第2実施形態では、ユーザ端末1の現在位置に関する履歴情報に基づいて、通信帯域の初期値を取得するようにしたが、本変形例では、ユーザ端末1の現在位置に関する履歴情報に加えて、ユーザ端末1の周辺位置(ユーザ端末1の現在位置の周辺の位置)に関する履歴情報も加味して、通信帯域の初期値を取得する。
【0104】
図12(A)に示すように、マクロセルとスモールセルとが重畳しており、マクロセルに在圏するユーザ端末1が移動してスモールセルに入ると、接続先がマクロセルからスモールセルに切り替えられる。このとき、本変形例では、ユーザ端末1の現在位置Bに関する履歴情報と、その直前の周辺位置A(例えば10秒前の位置)に関する履歴情報とに基づいて、通信帯域の初期値を取得する。
【0105】
また、図12(B)に示すように、特定の曜日および時間帯における履歴分布(過去の通信帯域の実績値のばらつき)は正規分布となる。なお、周辺位置Aでは、ユーザ端末1がマクロセルに在圏することから、通信帯域が小さくなり、現在位置Bでは、ユーザ端末1がスモールセルに在圏することから、通信帯域が大きくなる。
【0106】
ここで、ユーザ端末1の現在位置Bと、その直前の周辺位置Aとでは、履歴分布の形状、すなわち、過去の通信帯域の実績値のばらつき具合は異なるが、通信の混み具合は、現在位置Bと周辺位置Aとで相関関係があり、現在位置Bと周辺位置Aとで類似しているものと想定される。そして、この通信の混み具合は履歴分布の偏差(実績値の平均値に対する差)で表すことができ、通信が非常に空いている場合や非常に混み合っている場合には偏差が大きくなる。
【0107】
そこで、本変形例では、履歴情報取得部45において、記憶部34の通信履歴データベースから、現在の通信状況と近似する現在位置Bに関する履歴情報、および周辺位置Aに関する履歴情報を取得する。
【0108】
そして、帯域制御部42において、周辺位置Aに関する履歴情報から、周辺位置Aにおける通信帯域の分布状況を取得し、また、現在位置Bに関する履歴情報から、現在位置Bにおける通信帯域の分布状況を取得する。次に、周辺位置Aにおける通信帯域の分布状況と、直前の時点での周辺位置Aにおける通信帯域(瞬時値)とを比較して、現在の通信の混み具合を表す偏差を求め。そして、この偏差を現在位置Bにおける通信帯域の分布状況に適用することで、現時点での現在位置Bにおける通信帯域(瞬時値)を推定して、これを通信帯域の初期値とする。
【0109】
具体的には、ユーザ端末1の現在時刻tでの現在位置Bにおける通信帯域の推定値BWest(B,t)を、次の式1のように、現在位置Bにおける過去の実績値の平均値Ave(B)に、現在時刻tでの現在位置Bにおける偏差の推定値devest(B,t)を加算することにより算出する。
【数1】
【0110】
ここで、現在位置Bにおける過去の実績値の平均値Ave(B)は、現在位置Bに関する履歴情報から算出する。
【0111】
また、現在時刻tでの現在位置Bにおける偏差の推定値devest(B,t)は、次の式2により算出する。
【0112】
具体的には、周辺位置Aにおける直近の期間Nの各時刻nの偏差、すなわち、現在時刻tから期間Nだけ遡った時刻t−Nから時刻t−1までの偏差dev(A,n)を求める。次に、その合計値を期間Nで除算することで、直近の期間Nにおける偏差の平均値を求める。そして、この偏差の平均値に、周辺位置Aの標準偏差σAと現在位置Bの標準偏差σBとの比率を乗じることで、現在時刻tでの現在位置Bにおける偏差の推定値devest(B,t)を算出する。
【数2】
【0113】
ここで、周辺位置Aにおける直近の期間Nの各時刻nの偏差dev(A,n)は、次式のように、周辺位置Aにおける過去の実績値の平均値Ave(A)から、周辺位置Aにおける各時刻nの通信帯域の実績値BW(A,n)を減算することで算出される。また、周辺位置Aにおける過去の実績値の平均値Ave(A)は、周辺位置Aに関する履歴情報から算出する。
【数3】
【0114】
なお、マクロセル(LTE)の半径は約500mであり、履歴情報の収集単位を10m〜20mの範囲で設定すると、直近の期間Nは、10s〜20sの範囲で設定すればよい。
【0115】
図13(A)に示す例は、通信履歴データベースに登録された履歴情報である。この例では、通信履歴データベースに、日付、曜日、時間、位置情報、RAT、周波数、無線品質の平均値、通信帯域の平均値、通信帯域の標準偏差、対向局アドレスが登録されている。
【0116】
また、図13(B)に示す例は、周辺位置(10)における直近の期間Nで収集された情報である。なお、図13(B)には、次の式4中の各時刻の偏差dev(10,n)、すなわち、通信履歴データベースに登録された履歴情報の通信帯域の平均値に対する偏差を記載している。
【0117】
ここで、図13(B)に示す例の場合、ユーザ端末1の現在時刻(13:00:16)での現在位置(11)における偏差の推定値devest(11,13:00:16)は、式2により次の式4のように算出される。
【数4】
【0118】
そして、ユーザ端末1の現在時刻(13:00:16)での現在位置(11)における通信帯域の推定値BWest(11,13:00:16)は、式1により次の式5のように算出される。
【数5】
【0119】
次に、第2実施形態の変形例に係るユーザ端末の動作手順について説明する。図14は、ユーザ端末の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図である。
【0120】
まず、帯域制御部42において、端末状態取得部46から端末状態情報として、自装置の現在の位置情報と日時情報(時刻および曜日)とを取得する(ST121)。また、無線制御部41から現在の接続先情報と無線品質情報とを取得する(ST122)。
【0121】
次に、現在の通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)と近似する現在位置に関する履歴情報および周辺位置に関する履歴情報があるか否かを履歴情報取得部45に問い合わせる(ST131)。このとき、履歴情報取得部45では、記憶部34に記憶された通信履歴データベースを検索して、該当する履歴情報を取得する。
【0122】
ここで、該当する履歴情報がある場合には(ST131でYes)、該当する履歴情報、すなわち、現在の通信状況と近似する現在位置に関する履歴情報を、履歴情報取得部45から取得する(ST124)。また、現在の通信状況と近似する周辺位置に関する履歴情報を、履歴情報取得部45から取得する(ST132)。そして、現在位置に関する履歴情報と周辺位置に関する履歴情報とに基づいて、通信帯域の初期値を取得する(ST133)。
【0123】
一方、該当する履歴情報がない場合には(ST131でNo)、記憶部34から初期値テーブル(図9参照)を取得する(ST126)。そして、初期値テーブルから、現在の通信状況(時刻および曜日、接続先、無線品質など)に該当する通信帯域の初期値を取得する(ST127)。
【0124】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図15は、第3実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0125】
通信中のアプリケーションの種別に応じて、通信の安定性など、要求される通信性能が異なる。そこで、本実施形態では、通信中のアプリケーションの種別に基づいて、アプリケーション部43に通知する通信帯域を制御する。
【0126】
ユーザ端末1は、第1実施形態と同様に、無線通信部31と、位置情報取得部32と、制御部33と、記憶部34と、を備えている。無線通信部31は、第1実施形態と同様である。
【0127】
記憶部34は、初期値テーブル(図4参照)、および補正係数テーブル(図17参照)を記憶する。
【0128】
制御部33は、第1実施形態と同様に、無線制御部41と、帯域制御部42と、アプリケーション部43と、を備えているが、本実施形態では、さらに、アプリケーション情報取得部47を備えている。
【0129】
アプリケーション情報取得部47は、アプリケーション部の通信を監視し、通信中のアプリケーションの種別に関するアプリケーション情報を取得する。
【0130】
帯域制御部42は、アプリケーション情報取得部47で取得したアプリケーション情報に基づいて、通信帯域を制御する。本実施形態では、接続先に変更がある場合に、通信中のアプリケーションの種別に応じて通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【0131】
次に、第3実施形態に係る帯域制御について説明する。図16は、帯域制御の状況を示す説明図である。
【0132】
本実施形態では、通信中のアプリケーションの種別に応じて、通信帯域を制御する。
【0133】
例えば、緊急通報システムから送信される緊急通報をユーザに通知するアプリケーションでは、緊急通報を確実に受信できるように、通信帯域を安全側すなわち小さくなるように制御する。
【0134】
また、ストリーミングなどでサーバ2から配信されるエンターテイメント用途の映像データを視聴するアプリケーションでは、通信帯域の推定誤差による映像再生の中断が、ユーザ満足度を大きく低下させることから、映像再生の中断を抑制するため、できるだけ実際の可用帯域を越えないように、通信帯域を比較的安全側すなわち比較的小さくなるように制御する。
【0135】
また、監視カメラから送信される映像データを視聴するアプリケーションでは、遠方の人物の顔が識別できるように高精細な映像が必要となり、また、エンターテイメント用途の映像のように、映像再生の中断にさほど配慮する必要がないため、実際の可用帯域に近づくように通信帯域を制御する。
【0136】
また、FTP(File Transfer Protocol)により一般的なデータを送受信するアプリケーションでは、通信の安定性は問題にならないため、可用帯域の有効利用を図ることができるように、通信帯域をできるだけ大きくなるように制御する。
【0137】
次に、第3実施形態に係る補正係数テーブルについて説明する。図17は、補正係数テーブルの一例を示す説明図である。
【0138】
本実施形態では、アプリケーションの種別に基づいて通信帯域の初期値を取得する。特に本実施形態では、初期値テーブル(図4参照)を用いて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得し、この通信帯域の初期値に、アプリケーションの種別に応じた補正係数を乗じる補正を行って、補正された通信帯域の初期値を取得する。このとき、補正係数テーブル(補正係数設定情報)を用いて、アプリケーションの種別に応じた補正係数を取得する。
【0139】
この補正係数テーブルには、アプリケーションの種別に応じた補正係数が登録されている。図17に示す例では、アプリケーションの種別として、FTP(File Transfer Protocol)、監視カメラの映像視聴、エンターテイメント用途の映像視聴、緊急通報の各種別に応じた補正係数が登録されているが、これに限定されるものではない。
【0140】
次に、第3実施形態に係るユーザ端末1の動作手順について説明する。図18は、ユーザ端末1の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図である。図19は、ユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図である。
【0141】
まず、帯域制御部42において、無線制御部41から接続先情報を取得する(ST111)。また、通信中のアプリケーションの種別に関するアプリケーション情報をアプリケーション情報取得部47から取得する(ST141)。また、記憶部34から初期値テーブルおよび補正係数テーブルを取得する(ST142)。
【0142】
次に、補正係数テーブルに基づいて、通信中のアプリケーションの種別に応じた補正係数を取得する(ST143)。また、初期値テーブルに基づいて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得する(ST113)。そして、通信帯域の初期値を、補正係数を用いて補正する(ST144)。すなわち、通信帯域の初期値に補正係数を乗じる補正を行って、補正された通信帯域の初期値を取得する。
【0143】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図20は、第4実施形態に係るユーザ端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0144】
ユーザ端末1が静止している場合には、通信帯域が安定していることから、推定誤差(推定値に対する誤差)が小さくなるが、ユーザ端末1が移動している場合には、通信帯域が不安定になるため、推定誤差が大きくなり、ユーザ端末1の移動速度に応じて、推定誤差が変化する。そこで、本実施形態では、ユーザ端末1の移動速度に基づいて、通信帯域を制御する。
【0145】
ユーザ端末1は、第1実施形態と同様に、無線通信部31と、位置情報取得部32と、制御部33と、記憶部34と、を備えている。無線通信部31は、第1実施形態と同様である。
【0146】
記憶部34は、初期値テーブル(図4参照)、および補正係数テーブル(図22参照)を記憶する。
【0147】
制御部33は、第1実施形態と同様に、無線制御部41と、帯域制御部42と、アプリケーション部43と、を備えているが、本実施形態では、さらに、端末状態取得部46を備えている。
【0148】
端末状態取得部46は、端末状態情報として、位置情報取得部32で取得した自装置の位置情報から求められる自装置の移動速度を取得する。
【0149】
帯域制御部42は、端末状態取得部46で取得した端末状態情報に基づいて、通信帯域を制御する。本実施形態では、接続先に変更がある場合に、自装置の移動速度に応じて通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【0150】
次に、第4実施形態に係る帯域制御について説明する。図21は、帯域制御の状況を示す説明図である。
【0151】
本実施形態では、ユーザ端末1の移動速度に応じて、通信帯域を制御する。すなわち、ユーザ端末1が静止している場合には、通信帯域が安定しており、推定誤差(推定値に対する誤差)が小さくなるため、可用帯域の有効利用を図ることができるように、通信帯域ができるだけ大きくなるように制御する。
【0152】
一方、ユーザ端末1が移動している場合には、通信帯域が不安定になり、推定誤差が大きくなるため、通信帯域を安全側に制御する、すなわち通信帯域が小さくなるように制御する。特に、低速、中速、高速と移動速度が速くなるのに応じて、通信帯域の不安定さが顕著になるため、移動速度が速くなるのに応じて、通信帯域が小さくなるように制御する。
【0153】
次に、第4実施形態に係る補正係数テーブルについて説明する。図22は、補正係数テーブルの一例を示す説明図である。
【0154】
本実施形態では、自装置の移動速度に基づいて通信帯域の初期値を取得する。特に本実施形態では、初期値テーブル(図4参照)を用いて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得し、この通信帯域の初期値に、移動速度に応じた補正係数を乗じる補正を行って、補正された通信帯域の初期値を取得する。このとき、補正係数テーブル(補正係数設定情報)を用いて、移動速度に応じた補正係数を取得する。
【0155】
この補正係数テーブルには、移動速度に応じた補正係数が登録されている。本実施形態では、移動速度を複数のしきい値と比較して、静止、低速、中速、高速の各速度状態にレベル分けされ、補正係数テーブルには、各速度状態の補正係数が登録されている。
【0156】
次に、第4実施形態に係るユーザ端末1の動作手順について説明する。図23は、ユーザ端末1の帯域制御部42で行われる通信帯域初期値取得処理の手順を示すフロー図である。図24は、ユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図である。
【0157】
まず、帯域制御部42において、無線制御部41から接続先情報を取得する(ST111)。また、端末状態取得部46から自装置の移動速度を取得する(ST151)。また、記憶部34から初期値テーブルおよび補正係数テーブルを取得する(ST152)。
【0158】
次に、補正係数テーブルに基づいて、移動速度に応じた補正係数を取得する(ST153)。また、初期値テーブルに基づいて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得する(ST113)。そして、通信帯域の初期値を、補正係数を用いて補正する(ST154)。すなわち、通信帯域の初期値に補正係数を乗じる補正を行って、補正された通信帯域の初期値を取得する。
【0159】
ところで、第3実施形態では、通信中のアプリケーションの種別に基づいて通信帯域の初期値を設定し、第4実施形態では、ユーザ端末1の移動速度に基づいて通信帯域の初期値を設定するようにしたが、各実施形態の制御方式を組み合わせて通信帯域を制御するようにしてもよい。
【0160】
この場合、通信帯域を安全側に制御する、すなわち、各実施形態の制御方式で取得した通信帯域の初期値のうち小さい方を選択するとよい。例えば、通信中のアプリケーションの種別がFTPであり、かつ、ユーザ端末1が高速で移動している場合には、通信中のアプリケーションの種別による初期値より、移動速度による初期値の方が小さくなるため、この移動速度による初期値を採用する。また、ユーザ端末1が静止しており、かつ、通信中のアプリケーションの種別が緊急通報である場合には、移動速度による初期値より、通信中のアプリケーションの種別による初期値の方が小さくなるため、この通信中のアプリケーションの種別による初期値を採用する。
【0161】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
【0162】
第1〜第4実施形態では、接続先に変更がある場合に、通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始するようにしたが、本実施形態では、遮蔽などにより無線品質が急激に変動した場合に、通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始するようにする。
【0163】
ユーザ端末1の構成は、第1実施形態(図3)と同様である。
【0164】
記憶部34に記憶された初期値テーブル(初期値設定情報)には、無線品質(例えば信号雑音比など)に応じた通信帯域の初期値が登録されている。
【0165】
帯域制御部42は、無線制御部41から取得した無線品質情報に基づいて、通信帯域を制御する。本実施形態では、遮蔽などにより無線品質が急激に変動した場合に、初期値テーブルに基づいて、変動後の無線品質に応じた通信帯域の初期値を取得して、その通信帯域の初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【0166】
次に、第5実施形態に係る帯域制御について説明する。図25は、無線品質の変動状況を示す説明図である。
【0167】
本実施形態では、無線品質の変動値(上昇値)、すなわち、今回の無線品質と前回の無線品質との差分を、所定のしきい値と比較する処理により、遮蔽などによる無線品質の急激な変動を検知する。この処理は、所定のタイミングで定期的に行われ、無線品質の変動値がしきい値を超えた場合に、通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【0168】
次に、第5実施形態に係るユーザ端末1の動作手順について説明する。図26は、ユーザ端末1の帯域制御部42の動作手順を示すフロー図である。図27は、ユーザ端末1の動作手順を示すシーケンス図である。
【0169】
まず、図26(A)に示すように、帯域制御部42において、無線制御部41から無線品質情報を取得する(ST201)。そして、無線品質情報に基づいて、無線品質の変動値が所定のしきい値Thを超えたか否かを判定する(ST202)。
【0170】
ここで、無線品質の変動値がしきい値Thを超えている場合には(ST202でYes)、通信帯域の初期値を取得する(ST203)。以降は、第1実施形態と同様である。また、無線品質の変動値がしきい値Thを超えない場合も(ST202でNo)、第1実施形態と同様である。
【0171】
通信帯域の初期値を取得する処理では(ST203)、図26(B)に示すように、帯域制御部42において、まず、無線制御部41から無線品質情報を取得する(ST211)。また、記憶部34から初期値テーブルを取得する(ST212)。そして、初期値テーブルに基づいて、変動後の無線品質に応じた通信帯域の初期値を取得する(ST213)。
【0172】
なお、以上の無線品質情報に基づく通信帯域の制御は、接続先に変更がない場合に行うようにしてもよい。すなわち、無線制御部41から接続先情報を取得して、接続先に変更がない場合には、本実施形態の制御を行い、接続先に変更がある場合には、第1〜第4実施形態の制御を行う。
【0173】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明に係る通信装置、通信システムおよび帯域制御方法は、ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御することができる効果を有し、接続先となる基地局装置を経由してアプリケーションデータを送受信する通信装置、接続先となる基地局装置を経由して通信装置がアプリケーションデータを送受信する通信システムおよび帯域制御方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0175】
1 ユーザ端末(通信装置)
2 サーバ
3 マクロセル基地局(基地局装置)
4 スモールセル基地局(基地局装置)
5 アクセスポイント(基地局装置)
6 通信制御装置
31 無線通信部
32 位置情報取得部
33 制御部
34 記憶部
【要約】
【課題】ネットワーク負荷を増大させずに、通信帯域を適切に制御できるようにする。
【解決手段】輻輳制御アルゴリズムに基づいて、アプリケーションデータの伝送に利用する通信帯域を制御する帯域制御部を備え、この帯域制御部は、接続先に変更がある場合に、初期値テーブルに基づいて、接続先に応じた通信帯域の初期値を取得して、その初期値を用いて通信帯域の制御を開始する。
【選択図】図5
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