(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凍結保存容器の上方であり、平面視した際に前記開口部に隣接する位置であって、前記開口部を挟んで前記第1のステージと反対側に設けられた第2のステージをさらに備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載の凍結保存装置。
前記第1のステージと、前記第2のステージとが、一対となって、前記ケース側から第1のステージ側に向かう方向と直交する他の方向に移動可能とされている請求項7に記載の凍結保存装置。
平面視した際に前記開口部に隣接する前記第1のステージおよび前記第2のステージが、前記開口部を介して前記ケースを鉛直方向に上昇または下降させる際に、前記ケースを支持することを特徴とする請求項7または8に記載の凍結保存装置。
さらに前記ケースが鉛直方向に昇降する際の位置ずれを規制するガイドが、前記ケースの昇降方向に沿って上方に位置する第1のガイドと、それより下に位置する第2のガイドとを具備する請求項12記載の凍結保存装置。
前記凍結保存容器の上方であり、平面視した際に前記開口部に隣接する位置であって、前記開口部を挟んで前記第1のステージと反対側に設けられた第2のステージをさらに具備し、
前記第1のガイドが前記第1のアームに取り付けられ、
前記第2のガードが前記第2のステージに取り付けられている請求項14の凍結保存装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された凍結保存容器では、作業者自身が凍結保存容器から試料等の保存対象が収納されたケース本体を入出庫する必要があるため、凍結保存容器内の低温の液体窒素に対する凍傷防止のための装備や治具を使わなければならない等、作業者への負担が大きかった。また、ケース本体を凍結保存容器から出庫した状態で、目的の保存対象を取り出す必要があるため、ケース本体内に収納された他の保存対象も昇温するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、目的の試料等の保存対象を自動で取り出すことができ、かつ、目的の保存対象以外の保存対象が昇温するのを抑えることができる凍結保存装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記(1)〜(16)の凍結保存装置を提供する。
(1) 保存対象を並べて収納するケースを内部に収容するとともに、外部と連通する開口部が上面に設けられた凍結保存容器と、
前記ケースを保持した状態で、前記開口部を介して前記ケースを鉛直方向に上昇および下降させるとともに、前記ケースを任意の高さに維持する第1のアームと、
前記凍結保存容器の上方であって、平面視した際に前記開口部に隣接するように設けられるとともに、前記保存対象を載置可能な第1のステージと、
前記第1のステージと隣接する高さに位置する前記保存対象を、前記ケースから前記第1のステージに移動させる第2のアームとを備える凍結保存装置。
【0008】
(2) 少なくとも、前記第1のアームと、前記第2のアームとを制御する制御部をさらに備える、(1)に記載の凍結保存装置。
【0009】
(3) 前記第1のステージに載置された前記保存対象を、前記ケースに移動させる第3のアームをさらに備える、(1)または(2)に記載の凍結保存装置。
【0010】
(4) 前記凍結保存容器内の底部に回転テーブルをさらに備え、
前記回転テーブルの回転軸を中心とする任意の円の円周上に前記ケースが載置可能とされるとともに、
平面視した際に、前記開口部が前記円の円周上に位置することを特徴とする、(3)に記載の凍結保存装置である。
【0011】
(5) 前記凍結保存容器の上面に2以上の前記開口部が前記一の方向と直交する他の方向に隣接するように設けられ、
前記回転テーブルが、前記回転テーブルの前記回転軸を中心とする任意の2以上の同心円の各円周上に前記ケースが載置可能とされるとともに、
平面視した際に、前記開口部が前記同心円の各円周上に位置することを特徴とする、(4)に記載の凍結保存装置。
【0012】
(6) 前記第1のアーム、前記第2のアーム、前記第3のアーム、および前記第1のステージが、前記他の方向に移動可能とされている、(5)に記載の凍結保存装置である。
【0013】
(7) 前記凍結保存容器の上方であり、平面視した際に前記開口部に隣接する位置であって、前記開口部を挟んで前記第1のステージと反対側に設けられた第2のステージをさらに備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載の凍結保存装置である。
【0014】
(8) 前記第1のステージと前記第2のステージとが一対となって、前記ケース側から第1のステージ側に向かう方向と直交する他の方向に移動可能とされている、(7)に記載の凍結保存装置。
【0015】
(9) 平面視した際に前記開口部に隣接する前記第1のステージおよび前記第2のステージが、前記開口部を介して前記ケースを鉛直方向に上昇または下降させる際に、前記ケースを支持することを特徴とする、(7)または(8)に記載の凍結保存装置。
【0016】
(10) 前記第1のステージ上に載置された前記保存対象を識別する識別装置をさらに備える(1)乃至(9)のいずれかに記載の凍結保存装置。
【0017】
(11) 前記保存対象がバイアルに収容され、
前記バイアルが鉛直方向に2次元に並べて箱に収納されていることを特徴とする、(1)乃至(10)のいずれかに記載の凍結保存装置。
【0018】
(12) 前記第1のステージに載置された保存対象を、前記ケースに移動させる第3のアームが設けられ、
前記第3のアームの先端部には、複数の押圧アームが設けられ、
前記第2のアームには1本の押圧アームが設けられ、この1本の押圧アームは、前記ケースから前記第2のステージに向かう一の方向に対して直交する方向に移動可能であり、
さらに前記第1のステージには、上記複数の押圧アームが挿入される空間を有するホルダが設けられる(
7)記載の凍結保存装置。
【0019】
(13) 前記ホルダには、前記複数の押圧アームが挿入される空間を区画するための仕切板が設けられている(12)記載の凍結保存装置。
【0020】
(14) さらに前記ケースが鉛直方向に昇降する際の位置ずれを規制するガイドが、前記ケースの昇降方向に沿って上方に位置する第1のガイドと、それより下に位置する第2のガイドとを具備する(12)記載の凍結保存装置。
【0021】
(15) 前記凍結保存容器の上方であり、平面視した際に前記開口部に隣接する位置であって、前記開口部を挟んで前記第1のステージと反対側に設けられた第2のステージをさらに具備し、
前記第1のガイドが前記第1のアームに取り付けられ、
前記第2のガードが前記第2のステージに取り付けられている(14)の凍結保存装置。
【0022】
(16) 前記仕切板の先端部には、テーパが設けられている(13)記載の凍結保存装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の凍結保存装置は、保存対象を並べて収納するケースを内部に収容するとともに、外部と連通する開口部が上面に設けられた凍結保存容器と、ケースを保持した状態で、開口部を介してケースを鉛直方向に上昇させるとともに、ケースを任意の高さに維持する第1のアームと、凍結保存容器の上方であって、平面視した際に開口部に隣接するように設けられるとともに、保存対象を載置可能な第1のステージと、保存対象を第1のステージに移動させる第2のアームとを備える構成となっている。
【0024】
このように、平面視した際に開口部に隣接するように第1のステージが設けられているため、第1のアームによって目的の試料等の保存対象を凍結保存容器から取り出す際に、ケースの全体を凍結保存容器から引き上げることなく、目的の保存対象のみを第2のアームによって第1のステージ上に取り出すことができる。したがって、目的の保存対象を自動で取り出すことができ、かつ、目的の保存対象以外の保存対象が昇温するのを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0027】
第一実施形態
<凍結保存装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置の構成について、
図1〜8を参照しながら説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置1を示す側面模式図である。
図1に示すように、本実施形態の凍結保存装置1は、凍結保存容器2と、作業空間3にドロワー昇降装置(第1のアーム)4と、第1のステージ5と、第2のステージ6と、第1の押圧装置(第3のアーム)7と、第2の押圧装置(第2のアーム)8と、少なくともドロワー昇降装置(第1のアーム)4および第2の押圧装置(第2のアーム)8を制御する制御装置(制御部)(図示略)と、外部に制御装置へのバイアルやドロワー(ケース)の入出庫情報について入出力を行うための管理用の入出力装置9とを備えて概略構成されている。
【0028】
本実施形態の凍結保存装置1は、制御装置(図示略)によってドロワー昇降装置4および第2の押圧装置8を独立して駆動させることにより、凍結保存容器2内に保存されている目的の生体試料を自動で取り出すとともに、目的以外の生体試料の昇温を低減するものである。
【0029】
なお、
図2に示すように、本実施形態の凍結保存装置1では、複数のバイアル(保存対象)11が配列されてボックス(ユニット)12内に収納されており、さらに、ボックス12はドロワー(ケース)13に鉛直方向(以下、「Z軸方向」と記載する場合がある)に並べて収納されている。
【0030】
バイアル11は、生体試料などの試料を直接収容するための円筒状容器である。バイアル11は、生体試料などの試料を直接収容することができ、凍結保存容器内の低温に耐えられるものであれば、樹脂、ガラス等種々の材質からなる容器を使用することができ、特に限定されない。
【0031】
ボックス12は、バイアル11を収納するための箱である。ボックス12としては、特に限定されないが、例えば、48本、96本の複数のバイアル11を2次元に並べて収納でき、ボックス12に収納したままバイアル11の底面に貼り付けられたバーコードを後述するバーコードリーダーにて読み取ることができるよう、ボックス12の底面が開口しているものであってもよい。
【0032】
ドロワー13には、ボックス12をZ軸方向に並べて収納するための棚が設けられている。後述のドロワー昇降装置4により把持し、Z軸方向に上昇および下降させることができる。ドロワー13としては、ボックス12を収納することができ、かつ、ドロワー昇降装置4によりZ軸方向に上昇および下降させることが可能であれば、特に限定されない。
【0033】
図1に示すように、凍結保存容器2は、本実施形態の凍結保存装置1の下方に設けられている。凍結保存容器2は、ドロワー13を内部に収容し、凍結保存するための容器である。
【0034】
図3は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置1における凍結保存容器2を側面から見た断面模式図である。
図3に示すように、凍結保存容器2は、ステンレス鋼などからなる内槽21と外槽22とから形成される二重構造であり、内槽21と外槽22との間の空隙が真空である真空二重断熱容器である。したがって、内槽21の内部に液体窒素などの低温液化ガスを満たすことにより、内部を低温状態に保持することができる。例えば、内槽21の底部付近まで、具体的には後述のドロワーテーブル(回転テーブル)24の下まで液体窒素を満たすことにより、内槽21の内部の気相部を−150℃以下に保持することができる。
【0035】
凍結保存容器2の上面には、2つの開口部23a,23bが設けられている。この開口部23a,23bを介して、凍結保存容器2の内部空間と作業空間3とが連通されている。
2つの開口部23a,23bは、後述のドロワーテーブル(回転テーブル)24の半径方向に互いに隣接するように設けられている。ここで、2つの開口部23a,23bが隣接して並ぶ方向を「X軸方向」と記載する。
【0036】
各開口部23a,23bの開口面積は、ドロワー13を平面視した際の面積とほぼ同等となっている。このため、作業空間3においてドロワー13からボックス12を搬送する際に、誤ってボックス12が開口部23a,23bから凍結保存容器2内に落下することを防止することができる。
【0037】
各開口部23a,23bは、当該開口部を閉塞するキャップ25が設置可能とされている。ここで、
図3では、開口部23aにキャップ25が設けられて閉塞されており、開口部23bにはキャップ25が設けられていない場合を一例として説明する。各開口部23a,23bにそれぞれキャップ25を設けることにより、当該開口部が閉塞されるため、凍結保存容器2内の温度の上昇を抑制することができる。
【0038】
キャップ25の材質としては、断熱性能の高いものであれば特に限定されないが、例えば、発泡ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0039】
キャップ25の上面には、把持部26が設けられている。この把持部26の形状は、キャップ25を各開口部23a,23bから着脱させる際に把持しやすいものであれば特に限定されるものではないが、後述するドロワー昇降装置4によって把持することが可能な形状が好ましい。ドロワー昇降装置4によって把持部26を把持することが可能であれば、ドロワー昇降装置4をZ軸方向に上昇および下降させることで、キャップ25を開口部23a,23bから自動で着脱させることができる。
【0040】
図3および
図4に示すように、凍結保存容器2内の底部には、ドロワー13を載置させるためのドロワーテーブル24が設けられている。このドロワーテーブル24は、凍結保存容器2の外側に設けられドロワーテーブル24の中心軸28に結合したモーター27により、回転軸28を中心として回転させることができるように構成されている。
【0041】
また、
図4に示すように、ドロワーテーブル24上には、回転軸28を中心とする任意の2つの同心円の各円周上に、複数のドロワー13をそれぞれ載置可能とされている。なお、平面視した際に、開口部23a,23bが上記同心円の各円周上となるように、各開口部と同心円とが位置合わせされている。
【0042】
これにより、任意のドロワー13を取り出す際に、ドロワーテーブル24を回転させることにより、任意のドロワー13を開口部23aまたは開口部23bの真下に位置するように移動させることができる。
【0043】
また、
図3に示すように、ドロワーテーブル24上には、各ドロワー13を載置する位置に対応するように、上端部が広がったテーパ形状とされたドロワーガイド29が設けられている。ドロワーガイド29を設けることにより、各ドロワー13が所定の位置に載置されるように固定することができる。これにより、ドロワーテーブル24を回転させた際に、ドロワーテーブル24上で各ドロワー13の位置がずれることを防止することができる。また、ドロワーガイド29のテーパ部がドロワー13下降時の位置ずれを補正することができる。
【0044】
図5に示すように、ドロワー13は、側面となる一対の縦板31,31と、縦板31,31間に亘って設けられた複数の床板32とによって構成される。これにより、Z軸方向に連続して棚が設けられ、各棚にボックス12を収納することができる。また、一対の縦板と直交する少なくとも一つの側面が開口しているため、ボックス12の出し入れが可能となっている。
【0045】
各ドロワー13をドロワーテーブル24上に載置する際は、後述するドロワー昇降装置4によりドロワー13を上昇した場合に、開口している側面が第1のステージ5側を向くように載置する。
【0046】
ドロワー13の上面には把持部33が設けられている。この把持部33の形状は、ドロワー13をZ軸方向に上昇および下降させることができるものであれば特に限定されるものではないが、後述するドロワー昇降装置4によって把持することが可能な形状が好ましい。ドロワー昇降装置4によって把持部33を把持することが可能であれば、ドロワー昇降装置4をZ軸方向に上昇および下降させることで、ドロワー13を開口部23a,23bから自動で入出庫させることができる。
【0047】
作業空間3は、
図1に示すように、凍結保存容器2の上方に設けられており、開口部23a,23bを介して凍結保存容器2と連通している。本実施形態の凍結保存装置1は筐体(図示略)に囲まれており、作業空間3は、凍結保存容器2内から蒸発した窒素ガスなどにより、例えば露点−40℃以下、好ましくは露点−50℃以下のドライ環境に維持されている。凍結保存容器2の開口部23a,23bを含んだ作業空間を筐体で覆うことによって、ドロワー13や液体窒素に作業者が直接触れることによる凍傷や、開口部23a,23bから蒸発する窒素ガスによる酸欠の危険を解消できる。また、ドライ環境に筐体内を維持することにより、作業空間3内での結露などを防止することができる。
【0048】
図6に示すように、ドロワー昇降装置4は、ドロワー13を把持するなどにより保持した状態で、開口部23a,23bのいずれか一方を介してドロワー13をZ軸方向に上昇および下降させるための部材であり、作業空間3内に設けられている。このドロワー昇降装置4は、支持レール41と、昇降装置駆動部42と、主軸部43と、フック44とによって構成されている。
【0049】
支持レール41は、作業空間3の上方にX軸方向に亘って設けられている。この支持レール41には、昇降装置駆動部42が上記X軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0050】
昇降装置駆動部42には、主軸部43が垂下するように設けられている。また、主軸部43の下端には、フック44が設けられている。
【0051】
主軸部43の形態は、昇降装置駆動部42とフック44との間を連結し、昇降装置駆動部42からフック44を垂下可能なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、棒状の部材であってもよいし、2以上に分割可能なチェーンを組み合わせた態様であってもよい。
【0052】
また、昇降装置駆動部42は、主軸部43を介してフック44をZ軸方向に上昇および下降させることができるものであれば特に限定されるものではなく、上述した主軸部43の態様によって適宜選択することができる。例えば、主軸部43の態様が棒状の部材である場合には、主軸部43を軸支するローラー部材を回転させる機構であってもよい。また、主軸部43の態様が2以上に分割可能なチェーンの組み合わせの場合には、チェーンの分割機能および巻き取り機能を有する機構であってもよい。
【0053】
フック44の形状は、ドロワー13を把持することができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、鉤状とすることができる。これにより、ドロワー13の上部に設けられた把持部33を把持することができる。
【0054】
このように構成されたドロワー昇降装置4によれば、支持レール41上をX軸方向に移動させることで、目的の試料が保管されたドロワー13の位置に対応する開口部23aおよび開口部23bのいずれかの上方にフック44を移動させることができる。
【0055】
また、ドロワー昇降装置4を凍結保存容器2内に下降させてドロワー13の上部に設けられた把持部33を把持する際に、支持レール41上をX軸方向に移動させることでフック44の位置を容易に調整することができる。これにより、ドロワー昇降装置4が1本であっても、複数の開口部23a,23bからドロワー13を入出庫することができる。
【0056】
また、昇降装置駆動部42を駆動させることにより、主軸部43を介してフック44をZ軸方向に上昇および下降させることができる。すなわち、ドロワー13を把持した状態で、開口部23a,23bのいずれかを介してドロワー13をZ軸方向に上昇および下降させることができる。これによりドロワー13を凍結保存容器2から入出庫させることができる。
【0057】
さらに、昇降装置駆動部42の駆動を停止することにより、フック44をZ軸方向の任意の高さに維持することができる。すなわち、ドロワー13を把持した状態で、ドロワー13を任意の高さに維持することができる。
【0058】
図7に示すように、作業空間3の下方に、第1のX軸レール51がX軸方向に亘って設けられている。第1のステージ5は、上記第1のX軸レール51に取り付けられており、X軸方向に移動可能とされている。そのため、第1のステージ5は、平面視した際に、開口部23aおよび開口部23bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる。
【0059】
第1のステージ5が、平面視した際に、開口部23a,23bのいずれかに隣接していることにより、ドロワー13から任意の高さに収納された所望のボックス12を取り出す際、ドロワー13全体を凍結保存容器2から出庫させる必要がなくなる。これにより、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1のステージ5とが同じ高さとなるまでドロワー13を上昇させることにより、後述する第2の押圧装置8(第2のアーム)によって、所望のボックス12のみを第1のステージ5上に取り出すことができる。したがって、目的の試料以外の試料が昇温するのを抑えることができる。さらに、ドロワー13の全体を引き上げる必要がないため、装置の高さ方向を小型化することができる。
【0060】
第1のステージ5は、ボックス12を載置可能であり、載置面の一部に開口部52が設けられている。これにより、開口部52を介して第1のステージ5の下方から各バイアル11を突き上げることができる。また、開口部52を介して第1のステージ5の下方から各バイアル11の例えば底部に設けられたバーコードを識別することができる。
【0061】
開口部52の形状としては、バイアル11の突上げやバーコードの読み取りが可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、ボックス12よりもひとまわり小さく開口されたものであってもよいし、スリット状や格子状に複数開口されたものであってもよい。
【0062】
また、第1のステージ5には、載置面にボックスガイド53が設けられている。このボックスガイド53により、後述の第2の押圧装置8により押圧されたボックス12を、第1のステージ5上の所定の位置に載置されるように調整することができる。
【0063】
また、作業空間3の下方であって、開口部23a,23bを挟んで第1のX軸レール51の反対側に、第2のX軸レール54がX軸方向に亘って設けられている。第2のステージ6は、上記第2のX軸レール54に取り付けられており、X軸方向に移動可能とされている。そのため、第2のステージ6は、平面視した際に、開口部23aおよび開口部23bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる。
【0064】
第1のステージ5および第2のステージ6は、上述したようにX軸方向に移動可能であり、一対となってX軸方向に移動可能である。これにより、例えば、開口部23aからドロワー13を入出庫する際に、第1のステージ5、開口部23a、および第2のステージ6が、この順に隣接して並ぶことができる。ここで第1のステージ5、開口部23a、および第2のステージ6が隣接して並ぶ方向を「Y軸方向」と記載する。なお、第1のステージ5及び第2のステージ6は、一対で同時に動くだけでなく、個々に動作することも可能である。
【0065】
第1のステージ5および第2のステージ6の開口部23b側の側面には、ドロワーガイド55がそれぞれ設けられている。ドロワー13が開口部23bを介してZ軸方向に上昇または下降する際に、ドロワー13の両側からドロワーガイド55によって挟みこむようにドロワー13を支持することができる。これにより、ドロワー13の揺れなどを抑えることができるため、ドロワー13の上昇および下降、ドロワー13と第1のステージ5との間でのボックス12の移動をスムーズに行うことができる。
【0066】
ドロワーガイド55としては、ドロワー13を支持できるものであれば特に限定されない。例えば、ドロワー13の4隅の、X軸方向側の面およびY軸方向側の面に、樹脂製の車輪をそれぞれ当接させることにより、ドロワー13を支持する構成としてもよい。
【0067】
第1の押圧装置7は、第1のステージ5上に載置させられたボックス12をドロワー13側へ押圧することで、ボックス12をドロワー13に収納するための部材である。第1の押圧装置7は、第1のステージ5上に設けられている。この第1の押圧装置7は、第1の支持部56と、第1の押圧部57とによって構成されている。
【0068】
第1の支持部56は、第1のステージ5上であって、開口部23a,23bと対向する側の側面と反対側の側面に基端が設けられている。この第1の支持部56は、先端がY軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0069】
第1の押圧部57は、第1の支持部56の先端に設けられている。この第1の押圧部57によりボックス12をY軸方向に押圧することができる。
【0070】
このように構成された第1の押圧装置7によれば、第1のステージ5上に載置されたボックス12をドロワー13側へ押圧することで、ボックス12をドロワー13に収納することができる。
【0071】
第2の押圧装置8は、ドロワー昇降装置4により第1のステージ5と隣接する高さに維持されるボックス12を、第1のステージ5側へ押圧することで、ボックス12を第1のステージ5上に移動させる部材である。第2の押圧装置8は、第2のステージ6上に設けられている。この第2の押圧装置8は、第2の支持部58と、第2の押圧部59とによって構成されている。
【0072】
第2の支持部58は、第2のステージ6上であって、開口部23a,23bと対向する側の側面と反対側の側面に基端が設けられている。この第2の支持部58は、先端がY軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0073】
第2の押圧部59は、第2の支持部58の先端に設けられている。この第2の押圧部59によりボックス12をY軸方向に押圧することができる。
【0074】
このように構成された第2の押圧装置8によれば、ドロワー13内の第1のステージ5と隣接する高さに位置するボックス12を、第1のステージ5側へ押圧することにより、ボックス12を第1のステージ5に載置することができる。
【0075】
第1のステージ5と、第2のステージ6と、第1の押圧装置7と、第2の押圧装置8とが、連携して動作することにより、ドロワー昇降装置4により凍結保存容器2から出庫したドロワー13からボックス12を第1のステージ5上に載置可能とされている。また、第1のステージ5上に載置されたボックス12を、ドロワー13へ収納可能とされている。
【0076】
例えば、ドロワー昇降装置4により開口部23bを介して出庫した後に、ドロワー13からボックス12を第1のステージ5に載置する場合、先ず、第1のステージ5および第2のステージ6が、平面視した際に開口部23bを挟んで対向する位置へ移動する。
【0077】
次に、ドロワー昇降装置4により凍結保存容器2から開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1のステージ5とが同じ高さとなるまでドロワー13を上昇させる。ドロワー13を上昇させる際、第1のステージ5および第2のステージ6に設けられたドロワーガイド55により、ドロワー13を支持することにより、ドロワー13の揺れを抑える。
【0078】
次に、ドロワー13を支持した状態で、第2の押圧装置8により所望のボックス12をY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12をドロワー13から第1のステージ5へ移動させる。以上の動作により、第1のステージ5上に所望のボックス12を載置することができる。
【0079】
第1のステージ5上に取り出されたケースは、作業空間3に設けられている搬送系統61によって筐体(図示略)の取り出し口(図示略)付近まで搬送される。
図8に示すように、搬送系統61は、第1のステージ5と、識別装置62と、突き上げ部63と、バイアル昇降装置64とから概略構成されている。
【0080】
識別装置62は、バイアル11を識別するためのものであり、第1のX軸レール51の周辺または第1のステージ5上に設けられている。識別装置としては、バイアル11を識別することができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、バイアル11に貼り付けられた画像情報を認識できる装置であればいずれでもよく、具体的にはバーコードリーダーなどが挙げられる。
【0081】
識別装置62が、バーコードリーダーである場合、例えば、バイアル11の底部に識別コードが設けられ、第1のステージ5の底面に開口部が設けられており、第1のステージ5の下方に設けられていることが好ましい。これにより、ボックス12内に収納されたバイアル11を容易に識別することができる。また、この場合、識別装置62(バーコードリーダー)は、第1のステージ5のX軸への移動経路であって、開口部23aと突き上げ部63の間のいずれかの位置に設けられていればよい。なお、識別装置62がバーコードリーダーである場合、一次元バーコード読み取り可能なリーダー、二次元バーコード読み取り可能なリーダー、いずれも可能である。
【0082】
識別装置62を設けることにより、バイアル11の保管場所や入出庫した日時などの在庫情報や運用履歴などの情報を自動で記録することができる。また、自動で記録することができるため、大量の試料を扱う場合であっても、読み取り忘れなどのミスを減らすことができ、試料の取り違いなどの事故を防ぐことができる。
【0083】
突き上げ部63は、第1のステージ5上に載置されたケース内に収容されている各バイアル11を、第1のステージ5の下方から、第1のステージ5に設けられている開口部52を介して、各バイアル11の底部を押し上げるための装置である。
【0084】
突き上げ部63は、例えば、支持台65と、この支持台65上に直線状に設けられた複数の柱状部66A,66Bとから概略構成されている。支持台65は、2つのユニットに分割されており、一方のユニットにはボックス列に収容されてあるバイアル列のうち、奇数番目に対応して位置する柱状部66Aが、他方のユニットにはボックス列に収容されてあるバイアル列のうち、偶数番目に対応して位置する柱状部66Bがそれぞれ固定されている。また、支持台65は、2つのユニットを交互に上昇されることが可能となっており、一方のユニットを上昇させることにより、ボックス12内に収容されてあるバイアル列のうち、奇数番号のバイアルを同時に突き上げることができるようになっている。同様に、他方のユニットを上昇させることにより、同バイアル列のうち、偶数番号のバイアルを同時に突き上げることができる。なお、支持台65が2つのユニットに分割されることにより、突き上げられたバイアル11間の間隔が全バイアル11を一度に突き上げる場合より広くなっているため、バイアル昇降装置64の把持部68が開状態となるスペースを十分に確保できる。
【0085】
バイアル昇降装置64は、筐体(図示略)の作業空間3の上部においてY軸方向に延在するように設けられたY軸レール(図示略)と、このY軸レール(図示略)に設けられてY軸方向に移動自在とされた昇降装置駆動部67と、昇降装置駆動部67の下端に設けられた把持部68とを備えて構成されている。
【0086】
昇降装置駆動部67は、Z軸方向に上昇および降下可能な機構であれば、特に限定されない。
把持部68は、バイアル11を1本ずつ把持することができる機構であれば、特に限定されない。具体的には、互いに離間および近接するように設けられた複数の板状部材によって構成することができる。把持部68を開状態とするには板状部材を互いに離間させるように移動させ、閉状態とするには互いに近接するように移動させる。これにより、板状部材の間の空間に、バイアル11を把持することができる。
【0087】
上記のように構成された搬送系統61によれば、第1のステージ5上に取り出されたボックス12が第1のステージ5が開口部23aから突き上げ部63に移動する際、識別装置62によって所望のバイアル11の位置が確認される。その後、第1のステージ5が突き上げ部63まで移動すると、識別装置62によって得られた位置情報に基づいて、支持台65の対応するユニットが上昇することにより、所望のバイアル11が上方に押し出される。押し出されたバイアル11の上方にバイアル昇降装置64を移動させた後に把持部68を降下させ、把持部68によって目的のバイアル11を把持した後、バイアル置き場69へと搬送させる。これにより、作業者は、所望のバイアル11を容易に取り出すことができる。
【0088】
入出力装置9は、筐体(図示略)の外部に設けられた、表示部および入力部を持つ例えばパーソナルコンピュータである。作業者は、入出力装置9を操作して、凍結保存装置1に内蔵された制御装置(図示略)に指示を出すことにより、バイアル11またはボックス12を取り出しおよび収納するための様々な操作をすることができる。例えば、作業者が、在庫情報から取り出す試料を選択し、バイアル11またはボックス12の取出しを指示することで、自動で所望のバイアル11またはボックス12を取り出し口(図示略)まで移動させることができる。また、外部の入出力装置9が備える記憶部において、凍結保存装置1において管理されるバイアル11情報を記憶することもできる。
【0089】
また、凍結保存装置1内の制御装置(図示略)には、ドロワー昇降装置4、第1のステージ5、第2のステージ6、第1の押圧装置7、第2の押圧装置8、識別装置62、突き上げ部63、バイアル昇降装置64などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれている。これにより、例えば、第2の押圧装置8によりボックス12を第1のステージ5上に載置した後に、ドロワー昇降装置4によりドロワー13を下降させ、凍結保存容器2内に移動させるといった動作指示をすることができる。これにより、ドロワー13内に収納された他の試料が昇温するのを抑制することができる。
【0090】
次に、本実施形態の凍結保存装置1の使用方法、すなわち、上述した凍結保存装置1を用いて、開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のボックス12を取り出す方法について説明する。
【0091】
先ず、入出力装置9を操作して、所望のボックス12の取り出しを制御装置(図示略)に指示する。これにより、ドロワーテーブル24が回転し、所望のボックス12を収納したドロワー13が、開口部23bの真下に移動する。
【0092】
次に、ドロワー昇降装置4がX軸方向に移動し、開口部23bの真上に移動する。その後後、フック44がZ軸下方向に下降し、キャップ25の把持部26を把持する。その後、フック44がZ軸上方向に上昇することにより、キャップ25が開口部23bから外される。開口部23bから外したキャップ25は、ドロワー昇降装置4およびフック44がX軸方向およびZ軸方向に移動することにより、例えば、もう一方のキャップ25の上などの空いているスペースに載置される。
【0093】
次に、第1のステージ5および第2のステージ6がX軸方向に移動することにより、平面視した際に開口部23aの両側を挟むような位置へ移動する。また、ドロワー昇降装置4が、キャップ25の外れた開口部23bの真上に移動する。
【0094】
次に、ドロワー昇降装置4により凍結保存容器2から開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1のステージ5とが同じ高さとなるまでドロワー13を上昇させる。ドロワー13を上昇させる際、第1のステージ5および第2のステージ6に設けられたドロワーガイド55によってドロワー13を支持することにより、ドロワー13の揺れを抑える。
【0095】
次に、第2の押圧装置8により所望のボックス12をY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12をドロワー13から第1のステージ5へ移動させる。以上の動作により、第1のステージ5上に所望のボックス12が載置される。
【0096】
次に、残りのボックスが昇温するのを防止するため、ドロワー昇降装置4を下降させ、ドロワー13を凍結保存容器2に入庫する。その後、上述したキャップ25を外す動作と逆の動作を行うことにより、キャップ25により開口部23bを閉塞する。
【0097】
次に、ボックス12を載置した第1のステージ5がX軸方向に移動することで、ボックス12が取出し口(図示略)に搬出される。その後、作業者は取出し口(図示略)から目的のボックス12を取り出すことができる。以上の動作により、ボックス12の取出し動作が完了する。
【0098】
次に、上述した凍結保存装置1を用いて、開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のバイアル11を取り出す方法について説明する。
先ず、作業者が入出力装置9を操作して、制御装置(図示略)に所望のバイアル11の取出しを指示する。これにより、上述したボックス12の取出しと同様の動作により、凍結保存容器2から開口部23bを介して所望のドロワー13を出庫し、所望のボックス12が収納されている収納空間の底面と第1のステージ5とが同じ高さとなるまでドロワー13を上昇させる。
【0099】
次に、第2の押圧装置8により所望のボックス12をY軸方向へ押圧することで、所望のボックス12をドロワー13から第1のステージ5へ移動させる。以上の動作により、第1のステージ5上に所望のボックス12が載置される。
【0100】
次に、残りのボックスが昇温するのを防止するため、ドロワー13を上面が凍結保存容器2に入るまで下降させ、この状態で待機する。その際、ドロワー昇降装置4はドロワー13を把持した状態を維持する。
【0101】
次に、ボックス12を載置した第1のステージ5がX軸方向に移動することで、第1のステージ5を突き上げ部63まで移動させる。第1のステージ5上に取り出されたボックス12は、第1のステージ5が開口部23bから突き上げ部63に移動する際、識別装置62によって所望のバイアル11の位置が確認される。
【0102】
次に、第1のステージ5が突き上げ部63まで移動すると、識別装置62によって得た位置情報に基づいて、支持台65の対応するユニットが上昇することにより、所望のバイアル11が上方に押し出される。
【0103】
次に、押し出されたバイアル11の上方にバイアル昇降装置64を移動させた後に把持部68を降下させ、把持部68によって目的のバイアル11を把持した後、バイアル置き場69へと搬送させる。これにより、作業者は、所望のバイアル11を容易に取り出すことができる。
【0104】
所望のバイアル11を取り出した後のボックス12は、第1のステージ5に載置されたまま、X軸方向を移動し、ドロワー13に隣接する位置まで移動する。その後、ドロワー昇降装置4により、ドロワー13内の所望のボックス12を収納する空間の底面が、第1のステージ5および第2のステージ6と並ぶまで、ドロワー13を上昇させる。
【0105】
次に、第1の押圧装置7により、ボックス12をY軸方向に押圧することで、ボックス12を第1のステージ5からドロワー13へ移動させる。ボックス12を移動した後、ドロワー昇降装置4により、ドロワー13を下降させ凍結保存容器2へ入庫する。その後、上述したキャップ25を外す動作と逆の動作を行うことにより、キャップ25で開口部23bを閉塞する。以上の動作により、バイアル11の取出し動作が完了する。
【0106】
以上、所望のボックス12またはバイアル11を取り出す方法について説明したが、ボックス12またはバイアル11を収納する方法については、取り出す際の動作と逆の動作を行うことで収納することができるため、説明を省略する。
【0107】
以上、説明したように、本実施形態の凍結保存装置1によれば、バイアル11をボックス12ごとに鉛直方向に並べて収納するドロワー13を内部に収容するとともに、作業空間3と連通する開口部23a,23bが上面に設けられた凍結保存容器2と、ドロワー13を把持した状態で、開口部23a,23bを介してドロワー13を鉛直方向に上昇および下降させるとともに、ドロワー13を任意の高さに維持するドロワー昇降装置4と、凍結保存容器2の上方であって、平面視した際に開口部23a,23bに隣接するように設けられるとともに、ボックス12を載置可能な第1のステージ5と、ボックス12を押圧して第1のステージ5に移動させる第2の押圧装置8とを備える構成となっている。
【0108】
このように、平面視した際に開口部23a,23bに隣接するように第1のステージ5が設けられているため、ドロワー昇降装置4によって目的の試料を凍結保存容器2から取り出す際に、ドロワー13の全体を凍結保存容器から引き上げることなく、目的の試料のみを第2の押圧装置8によって第1のステージ5上に取り出すことができる。したがって、目的の試料を自動で取り出すことができ、かつ、目的の試料以外の試料が昇温するのを抑えることができる。さらに、ドロワー13の全体を引き上げる必要がないため、装置の高さ方向を小型化することができる。
【0109】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、少なくとも、ドロワー昇降装置4と、第2の押圧装置8とを制御する制御装置(図示略)をさらに備える構成となっている。そのため、第2の押圧装置8によりボックス12を第1のステージ5に載置した後に、ドロワー昇降装置4によりドロワー13を下降させ、凍結保存容器2内に収容させる一連の操作を自動で行うことができる。これにより、目的の試料以外の試料が昇温するのをさらに抑えることができる。
【0110】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、第1のステージ5に載置されたボックス12を、第1のステージ5側からドロワー13側に押圧して、ドロワー13に収納する第1の押圧装置7をさらに備える構成となっている。これにより、バイアル11またはボックス12を自動で凍結保存容器2内へ収納することができる。
【0111】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、凍結保存容器2内の底部にドロワーテーブル24をさらに備え、ドロワーテーブル24の回転軸28を中心とする任意の2つの同心円の各円周上にドロワー13が載置可能とされるとともに、平面視した際に、開口部23a,23bが上記同心円の円周上に位置する構成となっている。これにより、大量のドロワー13を凍結保存容器2内に収納することができる。
【0112】
また、本実施形態の凍結保存装置1によれば、平面視した際に開口部23a,23bに隣接する第1のステージ5および第2のステージ6が、開口部23a,23bを介してドロワー13をZ軸方向に上昇または下降させる際に、ドロワー13を支持する構成となっている。そのため、ドロワー13を上昇または下降させる際に、ドロワー13の振動を抑えることができる。これにより、ドロワー13の上昇および下降や、ドロワー13と第1のステージ5との間でのボックス12の移動などを、スムーズに行うことができる。
【0113】
第二実施形態
上記第一実施形態の凍結保存装置では、保存対象が収容されるバイアル11を凍結保存したのに対して、本実施形態では保存対象が収容されるエンベロープを凍結保存する。この保存対象の変更に伴い、凍結保存装置自体の構成も異なる。以下、第一実施形態との相違点を中心に本実施形態の凍結保存装置を説明する。
【0114】
上記エンベロープとは、その中に血液バッグや臍帯血バッグなどの袋状の保存対象物を収納するボックスである。エンベロープを使用することにより、保存対象が不定形状であっても取り出しまたは収納しやすくなると同時に、保存対象を衝撃などから守ることもできる。エンベロープは、それ自体の形状を維持できる材料であればどのような材料で形成されてもよい。エンベロープは、樹脂で形成されてもよいし、熱伝導率の大きい金属、例えばアルミニウムで形成されてもよい。
また、このエンベロープには、第一実施形態におけるバイアルと同様に、識別コードが設けられることが好ましい。
【0115】
エンベロープ100は、
図9に示すように、Z軸方向に対して垂直に設けられたドロワー13の棚に一定の間隔をあけて数個収容されている。
図9では、4つの棚にそれぞれ5つのエンベロープ100が直立して収容されている。エンベロープ100の位置および姿勢を規制するために、ドロワー13の棚には仕切板が設けられていることが好ましい。なお、仕切板の代わりにエンベロープ100を直立させる溝が設けられていてもよい。
【0116】
また、第一実施形態においては、ドロワー13が開口部23bを介してZ軸方向に上昇または下降する際に、ドロワー13を支持するために、第1のステージ5および第2のステージ6の開口部23b側の側面に、ドロワーガイド55を設けた。この一つのドロワーガイド55に対して本実施形態では少なくとも2つのドロワーガイドを用いることが好ましい。
図10に示されるように、第1および第2のドロワーガイド155および255が、ドロワー13が移動するZ軸方向に上下に位置して設けられていることが好ましい。このように二か所にガイドを設けることにより、ドロワー13が昇降する際、ドロワー13の位置ずれを規制することができ、したがってドロワー13の昇降をより正確な場所により正確な姿勢で行うことができる。
【0117】
上記第1のドロワーガイド155は、ドロワー昇降装置4の一部である支持レール41に設けられていることが好ましい。これにより、ドロワー13を引き上げる際、特にドロワー13の上部の位置ずれを規制できる。
上記第2のドロワーガイド255は、上記第1のドロワーガイド155よりも下方に設けられている。これにより、ドロワー13を引き上げる際、特にドロワー13の下部の位置ずれを規制できる。第2のドロワーガイド255は、第2のステージ6に取り付けられていることが好ましい。
第1および第2のドロワーガイド155および255は、
図11に示すように、ドロワー13の周囲を囲むように設けられていることが好ましい。これにより、X軸およびY軸方向の二方向における位置ずれを規制できる。ドロワー13の形状が四角柱であれば、第1および第2のドロワーガイド155および255の形状は、四角の枠形であることが好ましい。
【0118】
上記第一実施形態の凍結保存装置は、第1の押圧装置7および第2の押圧装置8を具備し、この第1および第2の押圧装置7および8は、それぞれ第1および第2の支持部56および28と、第1および第2の押圧部57および59を具備する。これに対して本実施形態の凍結保存装置では、
図12に示されるように、第1の押圧装置7は、さらにエンベロープホルダ153を具備する。また第1の押圧装置7の第1の押圧部57には複数本の押圧アーム157…が設けられている。これに対して第2の押圧装置の第2の押圧部59には1本の押圧アーム159が設けられている。
【0119】
上記第2の押圧装置に設けられた押圧部59である1本の第2の押圧アーム159は、第2のステージ6上でX軸方向に移動し、第1のステージ5と隣接する高さに位置するドロワー13内の特定のエンベロープ100を第1のステージ5側へ押圧して、第1のステージ5に載置することができる。つまり、第2の押圧アーム159の少なくとも先端は、一つのエンベロープ100を押し出すことができる大きさである。
なお、本実施形態では、第2の押圧アーム159が1本であるが、複数本設けることも可能である。この場合、複数のエンベロープ100を同時に押し出すことができる。
【0120】
上記のとおり、上記第1の押圧装置7は、エンベロープホルダ153を具備する。また第1の押圧装置7の第1の押圧部57には複数本の押圧アーム157…が設けられている。
上記エンベロープホルダ153には、
図12に示すように、ドロワー13の棚に設けられた仕切板と対応するよう、仕切板が設けられている。つまり、ドロワー13に収容されたエンベロープ100を収容できるように仕切板が設けられている。さらに、エンベロープホルダ153の仕切板であって、ドロワー13に設けられた仕切板に対する端部153aには、テーパが形成されている。これにより、ドロワー13に対してエンベロープホルダ153を精度よく配置できる。
また、第1の押圧アーム157は、エンベロープホルダ153に設けられた仕切板と仕切板との空間を通過する複数のアームを具備する。これによりエンベロープ100がエンベロープホルダ153のどの部分に収容されていても、その位置を考慮することなく、第1の押圧アーム157をドロワー13に向かって押し出すことでエンベロープ100をドロワー13に収容することができる。またエンベロープ100が複数ある場合であってもドロワー13に一度に収容できる。なお、上記第1の押圧アーム157は、第2の押圧アーム159と同様に、1本の押圧アームのみ具備することもできる。その場合、押圧アーム157は、第一ステージ5上をX軸方向に移動できる。
【0121】
また、本実施形態の凍結保存装置においては、作業空間3を覆う筐体の取り出し口に、自動扉を設け、この自動扉に連動して第1のステージ5をX軸上に動かし、自動スライド扉としてもよい。この場合、作業者は筐体内に手を入れることなくエンベロープ100を取り出すことができる。
【0122】
次に、上述した凍結保存装置を用いて、開口部23bを介してドロワー13を出庫し、所望のエンベロープ100を取り出す方法について説明する。
【0123】
先ず、第一実施形態と同様に、作業者が入出力装置9を操作して、制御装置(図示略)に所望のエンベロープ100の取出しを指示する。これにより、所望のエンベロープ100が収納されている収納空間の底面と第1のステージ5とが同じ高さとなるまで、開口部23bを介して、ドロワー13を上昇させる。この時、第1および第2のドロワーガイド155および255が、ドロワー13が移動するZ軸方向に上下に設けられているため、ドロワー13を所定位置に、かつ所定の姿勢で移動させることができる。
【0124】
次に、第2の押圧装置8の第2の押圧アーム159がX軸方向に移動し、所望のエンベロープ100に相対する。次いで第2の押圧アーム159が所望のエンベロープ100をY軸方向へ押圧することで、所望のエンベロープ100のみをドロワー13から第1のステージ5上のエンベロープホルダ153へ移動させる。以上の動作により、エンベロープホルダ153上に所望のエンベロープ100が載置される。
【0125】
次に、エンベロープ100が載せられたエンベロープホルダ153を載置した第1のステージ5をX軸方向に移動させ、作業空間3を覆う筐体の取り出し口まで移動させる。作業者は、筐体の取り出し口から手を入れてエンベロープ100を取り出すことができる。なお、上記自動スライド扉が設けられている場合には、作業者は筐体の中に手を入れることなくエンベロープ100を取り出すことができる。以上の動作により、所望のエンベロープ100の取り出し動作が完了する。
【0126】
以下、エンベロープ100を凍結保存装置に収容する方法を説明する。
先ず、入出力装置9を操作して、エンベロープホルダ153を載置した第1のステージ5を収容口まで移動させる。なお、この収容口は取り出し口と兼用することもできる。次いで作業者は、エンベロープホルダ153の指定場所にエンベロープ100を収容する。この指定場所は、入出力装置9が入出庫状況に基づいて指示する。
【0127】
次に、エンベロープホルダ153を載置する第1のステージ5をX軸方向に移動させ、開口部23bに隣接させる。この時、第1のステージ5と、収容すべきドロワーの棚の底面とが同じ高さになるように、ドロワー13は移動している。
【0128】
次いで、第1の押圧装置7の第1の押圧アーム157をY軸方向に移動させ、エンベロープホルダ153上のエンベロープ100に突き当てる。その後、さらにエンベロープ100を押し出し、エンベロープ100の全体がドロワー13に収容されたら、動きを停止させる。これによりエンベロープ100をドロワー13に収容させる。
この際、第1の押圧アーム157は複数のアームを具備するため、エンベロープ100がエンベロープホルダ153のどこに収容されていても、1回の押し出しにて確実にドロワーに収容できる。また、複数のエンベロープ100であっても1回の押し出しにて収容できる。その後、ドロワー13は、第一実施形態と同様に、凍結保存容器に収容される。
【0129】
本実施形態の凍結保存装置によれば、エンベロープ100を鉛直方向に並べて数段に収納するドロワー13を内部に収容するとともに、作業空間3と連通する開口部23a,23bが上面に設けられた凍結保存容器2と、ドロワー13を把持した状態で、開口部23a,23bを介してドロワー13を鉛直方向に上昇および下降させるとともに、ドロワー13を任意の高さに維持するドロワー昇降装置4と、凍結保存容器2の上方であって、平面視した際に開口部23a,23bに隣接するように設けられるとともに、エンベロープ100を収容できるエンベロープホルダ153を載置した第1のステージ5と、エンベロープ100を押圧して第1のステージ5上のエンベロープホルダ153に移動させる第2の押圧装置8とを備える構成となっている。
このため、上記第一実施形態の凍結保存装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0130】
また、本実施形態の凍結保存装置においては、第1および第2のドロワーガイド155および255が、ドロワー13が昇降するZ軸方向の上下に2か所設けられている。このため、X軸およびY軸方向におけるドロワー13の位置ずれを規制することができる。本発明においては、ドロワー13の棚に複数載置されたエンベロープ100の中の所定のエンベロープ100のみを取り出すため、エンベロープ100の位置について高い精度が求められる。第1および第2のドロワーガイド155および255が設けられていると、X軸およびY軸方向におけるドロワー13の位置ずれをより規制することができるため好ましい。さらに、第1および第2のドロワーガイド155および255がZ軸方向における上下に設けられていると、ドロワー13を昇降させる際に生じる可能性がある傾きや揺れも規制できるため好ましい。
【0131】
また、本実施形態の凍結保存装置においては、第1の押圧装置7はさらにエンベロープホルダ153を具備し、第1の押圧部57は複数の押圧アーム157を有し、第2の押圧部59は1本の第2の押圧アーム159を具備する。第2の押圧アーム159は、第2のステージ6上をX軸方向に移動し、所望のエンベロープのみを第1のステージ5方向に押し出すことができる。第1の押圧装置7が具備するエンベロープホルダ153は、ドロワー13に複数収容されるエンベロープ100に対応して収納空間が設けられている。また、エンベロープホルダ153は、その収納空間と、ドロワー13の収納空間とがY軸方向で一致するように配置される。このため、第2の押圧アーム159をY軸方向に押し出すことでドロワー13に収容されたエンベロープ100を第1のステージ5上のエンベロープホルダ153に収容できる。
【0132】
さらに、第1のアーム157は複数のアームを具備し、このアームはドロワーに収容されるエンベロープ100に対応して位置する。したがって、凍結保存容器2に収納すべきエンベロープ100がエンベロープホルダ153のどの位置に収納されていても、第1の押圧アーム157の一度の移動で確実にエンベロープ100をドロワー13に収納できる。また、収納すべきエンベロープ100が複数あったとしても、第1の押圧アーム157を一度移動させることで、ドロワー13に収納できる。
【0133】
さらに、作業空間3を区画する筐体に自動スライド扉が設けられていれば、作業者は凍結保存装置に手を入れることなく、エンベロープ100を取り出すことができる。
【0134】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した凍結保存装置1では、ドロワー13が凍結保存容器2内で同心円状に2段にわたり並べられ、2つの開口部23a,23bを備える例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、ドロワー13が凍結保存容器2内で1つの任意の円状に並べられ、開口部が1つであってもよいし、ドロワー13が凍結保存容器2内で3つ以上の任意の同心円状に並べられ、開口部が3つ以上であってもよい。
【0135】
また、上述した凍結保存装置1では、入出力装置9が筐体(図示略)の外部に設けられている例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、入出力装置9の入力部および表示部の一方又は両方が筐体の外壁に設けられる等により、凍結保存装置と一体に構成されていても構わない。
【0136】
また、上述した凍結保存装置1では、凍結保存装置1に内蔵された制御装置(図示略)に、ドロワー昇降装置4、第1のステージ5、第2のステージ6、第1の押圧装置7、第2の押圧装置8、識別装置62、突き上げ部63、バイアル昇降装置64などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれ、外部に接続された入出力装置9を作業者が操作することにより制御部に各種指示を出す例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、入出力装置9を介さず、作業者が制御装置(図示略)を操作することにより、ドロワー昇降装置4などの各動作部に直接指示するものであってもよい。
【0137】
また、上述した凍結保存装置1では、第1のステージ5と第2のステージ6とが連動する例について説明したが、この実施形態に限られるものではなく、別々に動く構成であってもよい。
【0138】
また、上述した凍結保存装置1では、保存対象が容器と蓋とからなるバイアル11又はエンベロープ100である場合について説明したが、チューブ形状等、ドロワー13に収納可能であれば特に限定されるものではない。