特許第6368049号(P6368049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アグフア・グラフイクス・ナームローゼ・フエンノートシヤツプの特許一覧

<>
  • 特許6368049-融除破片を減少させる新システム 図000006
  • 特許6368049-融除破片を減少させる新システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368049
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】融除破片を減少させる新システム
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/055 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B41C1/055 501
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-525960(P2017-525960)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公表番号】特表2018-508377(P2018-508377A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2015077647
(87)【国際公開番号】WO2016091589
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年5月12日
(31)【優先権主張番号】14196734.9
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタメノビク,ミラン
(72)【発明者】
【氏名】デイルクス,ジヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス,ペーター
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−141584(JP,A)
【文献】 米国特許第05339737(US,A)
【文献】 特開2003−118252(JP,A)
【文献】 特開2005−099282(JP,A)
【文献】 特開2014−052501(JP,A)
【文献】 特開2002−296847(JP,A)
【文献】 特開平11−258785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/00−1/18
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成するための、レーザービームを発生するためのレーザーヘッドを含むプレートセッターを含み、
該プレートセッターが更に、被膜の表面を静電気的に荷電することができる静電発電機を含むことを特徴とする、
支持体上の被膜を含む感熱性および/または感光性印刷版前駆体を暴露するためのシステム。
【請求項2】
被膜の表面が、正または負に静電気的に荷電される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
静電発電機が少なくとも1本の荷電バーおよび1基のDC高電圧発電機を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
DC高電圧発電機が0.5μA以上の電流を発生する、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記荷電バーが一つ以上のピンナー電極(pinner electrode)を含む、請求項3または4記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版(lithographic)印刷版のレーザー照射の前および/またはその間に静電荷を適用することにより融除(ablation)破片(debris)を低減するための新システムに関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷は典型的に、輪転印刷機のシリンダー上に取付けられる印刷版のようないわゆる印刷マスターの使用を伴う。そのマスターはその表面上に平版印刷画像を担持し、そして、前記画像にインキを適用し、次にそのマスターから、典型的には紙であるレシーバー材料上にインキを移動することによりプリントが得られる。従来の平版印刷においては、インキ並びに湿し水(fountain solution)[湿し液(dampening liquid)とも呼ばれる]が、親油性(または疎水性、すなわちインキ受容性、撥水性)領域並びに親水性(または疎油性、すなわち水受容性、撥インキ性)領域よりなる平版印刷画像に供給される。いわゆる乾平版印刷(driographic printing)においては、平版印刷画像はインキ受容性およびインキ忌避性領域よりなり、そして乾平版印刷時にはインキのみがマスターに供給される。
【0003】
平版印刷のマスターは一般に、平版前駆体と呼ばれる結像材料の画像様暴露および処理により得られる。前駆体の被膜は、融除、重合、ポリマーの架橋もしくは熱可塑性ポリマーラテックスの粒子凝結(coagulation)による不溶化、分子間相互作用の破壊もしくは現像バリヤー層の透過性増加による可溶化のような(物理)化学的プロセスの引き金を引く、典型的にはレーザーのようなデジタルで調整される照射装置により、熱または光に対して画像様に暴露される。
【0004】
幾つかの平版前駆体は、湿式処理を伴わずに、暴露の直後に平版印刷画像を形成することができ、そして例えば、1枚以上の被膜層の融除に基づく。暴露領域において、インキまたは湿し水に対して非暴露被膜の表面と異なる親和性を有する、その下にある層の表面が浮き彫りにされる。湿式処理を伴わずに平版製造を可能にする他の熱工程(thermal process)は例えば、暴露領域において、インキまたは湿し水に対して非暴露被膜の表面におけるものと異なる親和性が形成されるような、1枚以上の被膜層の熱誘発親水性/親油性転化に基づく工程である。
【0005】
暴露は、被膜の暴露領域と非暴露領域との間に、現像剤中の溶解度または溶解速度の相異をもたらすので、最も汎用される平版前駆体は湿式処理を必要とする。ポジ型(positive working)平版において、被膜の暴露領域は現像剤に溶解し、他方、非暴露領域は現像剤に抵抗性のままである。ネガ型(negative working)平版においては、被膜の非暴露領域は現像剤に溶解し、他方、暴露領域は現像剤に抵抗性のままである。現像剤に抵抗性のままの領域は、平版のインキ受容性の印刷領域を区画し、他方、親水性支持体は、非印刷領域における現像剤中への被膜の溶解により浮き彫りにされる(revealed)ので、大部分の平版は親水性支持体上に疎水性被膜を含む。
【0006】
感熱平版(thermal plates)は一般に、内部ドラム(ITD)、外部ドラム(XTD)または平台タイプであることができるプレートセッターにおいて赤外線に暴露される。低コストの高電力赤外線レーザーダイオードの利用可能性が、そこで感熱平版材料が、より短い総暴露時間およびより高い平版処理量をもたらす、より高いドラム輪転速度において暴露されることができるプレートセッターの製造を可能にする。高電力の
赤外線レーザーのダイオードは、より短時間のピクセル滞留時間におけるエネルギー需要量をもたらす、平版表面における高い電力密度を提供することができる。しかし、いわゆる非融除性感熱平版、すなわち融除により画像を形成するようにはなっていない平版の、このような高い電力の暴露は、被膜の部分的融除をもたらすことが認められている。例えば暴露装置の電子機器および光学機器の汚染のような融除破片の発生に関連する問題を考慮すると、この現象は回避されなければならない。
【0007】
この融除の問題を解決するための解決策は、高電力の赤外線レーザー光線に暴露中に最少の融除が起こるように被膜の組成を最適化することにより、当該技術分野に提供されている。
【0008】
特許文献1および2は、融除を妨げる目的のための、特別の構造をもつ結合剤を含む画像記録層を開示している(特許文献1および2参照)。特許文献3は、融除を防止するための画像記録層上のバリヤ層を開示しているが、画像記録層上に提供されるバリヤ層は画像記録層中への現像剤の浸透を遅らせ、そのため被膜の現像性を低下させる(特許文献3参照)。
【0009】
特許文献4は、フィルムの特性を改善することができる結合剤が、それが使用される画像記録層の融除を妨げることを開示している(特許文献4参照)。しかし、改善されたフィルムの特性のために、非画像部分中への現像剤の透過性は抑制され、従って、ここでも被膜の現像能(developability)が劣化される。
【0010】
特許文献5は、赤外線吸収剤および、側鎖に両性イオン構造物をもつ反復単位および主鎖にヘテロ脂環式構造物をもつ反復単位を含むコポリマーを含む、優れた印刷耐久性および現像能と組み合わせて、融除を妨げることができる画像記録層を開示している(特許文献5参照)。
【0011】
特許文献6は、暴露後に、空中の融除破片を除去する、真空源と真空室を含む装置により、融除破片の問題に対する解決策を提供する(特許文献6参照)。しかし、このような装置の使用はプレートセッターの近くに多くの空間を必要とし、多大な騒音を生じそして定期的保守を要する。
【0012】
融除が減少されそして/または抑制される印刷版を提供するために、先行技術分野において多数の試みが実施されてきたが、レーザー照射中の融除破片の形成はいまだ、当該技術分野の主要な関心事である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−197566号公報
【特許文献2】特開2008−509245号公報
【特許文献3】特開2003−156850号公報
【特許文献4】特開2005−99631号公報
【特許文献5】米国特許第2013/0029268号明細書
【特許文献6】米国特許第5,574,493号明細書
【発明の概要】
【0014】
平版印刷版前駆体の暴露工程中に形成される可能性がある、空中の融除破片が効果的に低減されそして/または防止されることを特徴とする、支持体上の被膜を含む感熱性および/または感光性印刷版前駆体を暴露するためのシステムを提供することが本発明の目的である。暴露工程中に形成される可能性がある空中の融除破片を低減することにより、環
境、例えば、レーザー照射装置の光学機器および電子機器、の汚染が回避される。この目的は、請求項1に規定されるシステムにより実現される。請求項1のシステムは本質的に、レーザー照射装置および、印刷版前駆体の被膜表面を静電気的に荷電させることができる装置、を含む。
【0015】
驚くべきことには、オフセット平版の結像中、静電荷を形成することにより、レーザー照射工程中に形成される可能性がある空中の融除破片の存在を著しく低減させそして/または完全に排除すらすることが見出された。純粋に物理的現象として、静電気的荷電は、化学的な被膜の組成および/または印刷版の特性を損なうことなしに、空中の融除破片を低減しそして/または排除する。
【0016】
支持体上に、感熱性および/または感光性被膜を適用し、それにより印刷版前駆体を得、本発明に従うシステムにより前記前駆体を画像様に暴露し、そして場合により前駆体を現像する工程を含む、印刷版を製造する方法を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0017】
本発明の好適な態様の具体的の特徴は付属請求項に示される。本発明の更なる利点および態様は以下の説明および図面から明白になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、外部ドラムを含む印刷版前駆体を暴露するためのシステムの、好適な態様を示す。
図2図2は、内部ドラムを含む印刷版前駆体を暴露するためのシステムの、好適な態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明のシステムは、レーザー照射装置および、印刷版前駆体の被膜の表面を静電気的に荷電させることができる装置、を含む。この装置は更に、「静電発電機(electrostatic generator)」とも呼ばれる。静電発電機は一般に、当該技術分野で知られるように、本明細書でプレートセッターとも言及されるレーザー照射装置内に、容易に一体化されることができる小型の便利な装置である。静電発電機は好適には、レーザーが平版を画像化する前そして/またはそれと同時に、結像領域が荷電されるように取り付けられる。言い換えると、前駆体の被膜は好適には、最初に静電気的に荷電され、次に照射されるか、または同時に荷電されそして照射される。あるいはまた、印刷版前駆体の被膜は、前駆体がプレートセッター上に取り付けられる前に静電気的に荷電される。
【0020】
プレートセッターは好適には、印刷版前駆体がその上に取り付けられる平台支持体、内部(ITD)または外部ドラム(XTD)の支持体および平版をレーザー画像化するためのレーザーヘッドを含む。内部ドラムITDを含むレーザー照射装置は典型的には、500m/秒までの非常に早いスキャン速度を特徴としてもち、そして数ワットのレーザー電力を必要とする可能性がある。外部ドラムを含むレーザー照射装置は典型的には、それぞれ約20mW〜約1Wのレーザー電力を使用し、そして例えば0.1〜10m/秒の比較的低いスキャン速度において、多数ビームにより作動する。750〜850nm間の波長範囲で照射する1個または好適にはそれ以上のレーザーダイオードを備えたXTDを含むレーザー照射装置が本発明の特に好適な態様である。
【0021】
本発明のシステムは、短縮された押下げ時間(press down−time)の利点を提供する印刷機外の照射装置として使用することができる。XTDレーザー照射装置を含む本発明のシステムはまた、印刷機上照射に対しても使用することができ、多色印刷機における即座の位置合わせ(immediate registration)の利点を提供する。印刷機上照射装置の更に技術的な詳細は例えば、米国特許第5,174,205号および同第5,163,368号明細書に記載されている。
【0022】
静電発電機は、印刷版前駆体の被膜の表面および/または、存在する場合はレーザー照射工程中にその表面から排出される粉塵粒子を静電気的に荷電する。どんな理論的説明にも制約はされないが、可能な作用機序は以下の通りである。印刷版前駆体の被膜表面は荷電刺激時に、静電発電機により発生される直流またはDC電流により静電気的に荷電される。この表面の電荷は被膜の抵抗性のために、前駆体がその上に取り付けられる支持体および/またはドラムまたは平台に逆電荷(反対符号)を誘発し、そして強力な電界が形成される。その結果、レーザー照射中の融除破片の形成は著しく低減され、そして/または防止されもする。更に、印刷版前駆体と静電発電機との間の空間に配置される空中の融除破片は、存在する場合には、逆荷電された支持体に引き付けられると考えられる。被膜の表面および/または空中の粉塵粒子に適用される静電荷は、それによって前駆体がその上に取り付けられる支持体および/またはドラムまたは平台に負の逆電荷が形成される正電荷でも、あるいは、それによって前駆体がその上に取り付けられる支持体および/またはドラムまたは平台に正の逆電荷が形成される負電荷、のいずれでもよい。前駆体がその上に取り付けられるドラムまたは平台は好適には、接地されている。
【0023】
静電発電機は好適には、定電流源モードまたは、電流を発生する定電圧モードのいずれでも使用されるDC高電圧発電機に接続された少なくとも1本の荷電バーを含む。好適には0.5μA以上の定電流、より好適には5〜100μA間の範囲の電流、そして最も好適には10〜40μA間の範囲の電流が高電圧発電機により発電される。電流を発生することにより、電界が形成され、支持体の表面が静電気的に荷電される。一方では、レーザー発射装置の型、即ち、外部、内部、もしくは平台プレートセッターに応じて、ドラム/スキャン速度に応じて、および/もしくは、レーザー出力に応じて、および/または、他方では、レーザー発射装置における静電発電機の型、寸法、設定および/もしくは配置に応じて、支持体の表面に特定の電流密度(μC/m2)が形成される。電流密度(μC/m2)は好適には、2〜500μC/m2間、より好適には25〜400μC/m2間そして最も好適には40〜350μC/m2間の範囲にある。十分に静電気的に荷電された表面を形成するために、前記の変量(variables)を適合させることは当業者次第である(up to the person skilled in the art)。
【0024】
本発明に従うシステムは好適には、少なくとも1基の静電発電機を含むが、2基以上の静電発電機を含んでもよい。電荷は、電極の特定の配列を含む1本以上の荷電バーにより適用されることができる。電極は例えば、針またはピン状[例えばピナー電極(pinner electrode)]または1本以上のワイアの形状であることができる。ピナー電極を含む荷電バーの適当な例は、好適には2〜20本の電極、より好適には3〜10本の電極そして最も好適には4〜6本の電極を含む、少なくとも1本の電極を含むことができる。ワイアの形状の荷電バーは1〜1000の電極、好適には5〜500の電極、そして最も好適には10〜100の電極を含むことができる。例えば、システムの幾何学構造およびタイミングに応じて、一点電源(例えば、1本の針電極)を含む荷電バーが例えば、外部ドラムのプレートセッターに対して最低必要電荷密度を適用するのに十分であることができる。固定レーザーが使用される平台または内部ドラムプレートセッターに対しては、フルスキャンまたはレーザーライン書き込み長さを同時に荷電しなければならず、従って複数の電極を含む、ワイアの形状の荷電バーが好適である。
【0025】
本発明の好適な態様は図1および2に示されている。図1には、被膜(2)および支持体(3)を含む印刷版前駆体(1)がドラム回転(5)を伴う外部ドラム(4a)上に取り付けられている、外部ドラム(4a)を含むレーザー照射装置が示されている。静電発電機(6)は、被膜がレーザーヘッド(7)により照射される前に、それが最初に被膜(2)の表面を静電気的に荷電することができるように、レーザー照射装置内に配置されている。図2には内部ドラム(4b)を含む態様が提示されている。図2に与えられるものと同様な構造は平台プレートセッターに適している。図1との主な相異は、レーザー照射装置が、回転はしないが、そこでレーザービームが、被膜上にレーザービームを向ける回転鏡(9)により平版を画像化する、内部ドラムまたは平台を含むことである。静電発電機(6)は、被膜が結像される前、またはそれと同時に、フルスキャンまたはレーザー書き込み幅を荷電することができるように、レーザー照射装置内に配置されている。ドラム(4a)および(4b)は接地されている(8)。
【0026】
平版印刷版前駆体の支持体は親水性表面をもつか、または親水性層を提供されている。支持体は、平版のようなシート様物質であるか、または印刷機の印刷シリンダーの周囲を滑動することができるスリーブのようなシリンダー状要素であることができる。支持体は好適には、アルミニウムまたはステンレス鋼のような金属支持体である。支持体はまた、アルミニウムフォイル並びにポリエチレンテレフタレートフィルムおよびポリエチレンナフタレートフィルムを含むポリエステルフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、等のようなプラスチック層を含むラミネートであることができる。プラスチックフィルムの支持体は透明でも不透明でもよい。
【0027】
特に好適な平版印刷支持体は粗面化され(grained)そして陽極酸化された(anonized)アルミニウム支持体である。アルミニウム支持体は通常、約0.1〜0.6mmの厚さをもつ。しかし、この厚さは、使用される印刷版のサイズおよび/または、印刷版前駆体がその上で照射されるプレートセッターのサイズに応じて適当に変化させることができる。アルミニウムは好適には、電気化学的粗面化により粗面化され、そしてリン酸または硫酸/リン酸混合物を使用する陽極酸化法により陽極酸化される。アルミニウムの粗面化および陽極酸化法は両者とも、当該技術分野で周知である。陽極酸化層は、被膜層と組み合わせて非伝導層または絶縁層として働き、それにより下方のアルミニウムが、静電発電機を使用して被膜の表面をそれぞれ正または負に静電気的に荷電される時に、それぞれ負または正に逆荷電される。
【0028】
アルミニウム支持体を粗面化する工程(またはザラザラにする工程)により、印刷画像の付着性および非結像領域の湿潤性の両者が改善される。電解質のタイプおよび/または濃度並びに粗面化工程における適用電圧を変えることにより、異なるタイプの粗面を得ることができる。表面の粗さはしばしば、算術平均の中心線の粗さRa(ISO 4287/1またはDIN 4762)として表わされ、0.05〜1.5μm間でばらつくことができる。本発明のアルミニウム支持体は好適には、0.30μm〜0.60μm間、より好適には0.35μm〜0.55μm間、そして最も好適には0.40μm〜0.50μm間のRa値を有する。Ra値の下限は好適には、約0.1μmである。粗面化されそして陽極酸化されたアルミニウム支持体の表面の好適なRa値に関する更なる詳細は、欧州特許第1356926号明細書に記載されている。
【0029】
アルミニウム支持体を陽極酸化することにより、その摩耗抵抗(abrasion resistance)および親水性が改善される。Al23l層の微細構造並びに厚さは、陽極酸化工程により決定され、陽極重量(アルミニウム表面上に形成されるAl23のg/m2)は1〜8g/m2間でばらつく。陽極重量は好適には1.5g/m2〜5.0g/m2間、より好適には2.5g/m2〜4.0g/m2間、そして最も好適には2.5g
/m2〜3.5g/m2間である。
【0030】
粗面化されそして陽極酸化されたアルミニウム支持体は、その表面の親水性を改善するために、いわゆる陽極後の処理(post−anodic treatment)を受けることができる。例えば、アルミニウム支持体は1種以上のアルカリ金属シリケート化合物−例えばアルカリ金属ホスホシリケート、オルソシリケート、メタシリケート、ヒドロシリケート、ポリシリケートまたはピロシリケートを含む溶液のような−、を含む溶液で、高温、例えば95℃で、その表面を処理することによりシリケート処理することができる(may be silicated)。あるいはまた、酸化アルミニウムの表面を、更に無機フッ化物を含むことができるリン酸塩溶液で処理する工程を伴うリン酸塩処理を適用することができる。更に、酸化アルミニウムの表面はクエン酸またはクエン酸塩溶液、グルコン酸または酒石酸ですすぐことができる。この処理は室温で実施するか、または約30〜50℃の僅かに高温で実施することができる。更なる興味深い処理は、酸化アルミニウムの表面を重炭酸塩溶液ですすぐ工程を伴う。まだ更に、酸化アルミニウムの表面をポリビニルホスホン酸、ポリビニルメチルホスホン酸、ポリビニルアルコールのリン酸エステル、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリビニルアルコールの硫酸エステル、スルホン化脂肪族アルデヒドとの反応により形成されるポリビニルアルコールのアセタール、Ciba Speciality Chemicalsから市販のGLASCOL E15TMのようなポリアクリル酸または誘導体、で処理することができる。これらの一つ以上の後処理は単独でまたは組み合わせて実施することができる。これらの処理の更なる詳細な説明は、英国特許第1084070号、ドイツ特許第4423140号、ドイツ特許第4417907号、欧州特許第659909号、欧州特許第537633号、ドイツ特許第4001466号、欧州特許第292801号、欧州特許第291760号および米国特許第4458005号明細書に与えられている。
【0031】
好適な態様において、支持体は最初に、前記の通りの1種以上のシリケート化合物を含む水溶液で処理され、次にカルボン酸基および/またはホスホン酸基を有する化合物、あるいはそれらの塩を含む水溶液でその支持体を処理する。特に好適なシリケート化合物は、ナトリムもしくはカリウムオルソシリケートおよびナトリムもしくはカリウムメタシリケートである。カルボン酸基および/またはホスホン酸基を有する化合物および/またはそれらのエステルまたは塩の適切な例は、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルメチルホスホン酸、ポリビニルアルコールのリン酸エステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸のようなポリマー並びにアクリル酸とビニルホスホン酸とのコポリマーである。ポリビニルホスホン酸またはポリ(メタ)アクリル酸を含む溶液が極めて好適である。
【0032】
支持体はまた、以後「基底層(base layer)」と呼ばれる親水性層を提供されることができる柔軟な支持体であることができる。柔軟な支持体は例えば、紙、プラスチックフィルムまたはアルミニウムである。プラスチックフィルムの好適な例は、ポリエチレン・テレフタレート・フィルム、ポリエチレン・ナフタレート・フィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、等である。プラスチックフィルムの支持体は不透明でも透明でもよい。
【0033】
基底層は好適には、ホルムアルデヒド、グリオキサール、ポリイソシアネートまたは加水分解テトラ−アルキルオルソシリケートのような硬化剤で架橋された親水性結合剤から得られる架橋親水性層である。後者は特に好適である。親水性基底層の厚さは0.2〜25μmの範囲内で変わることができ、また好適には1.0〜10μmである。基底層の好適な態様の更なる詳細は例えば、欧州特許第1 025 992号明細書に認めることができる。
【0034】
親水性層を提供されることができる柔軟な支持体は、被膜層と組み合わせて、非伝導性
層または絶縁層として働くことができ、それにより、レーザー照射装置内でその上に前駆体が取り付けられているドラムまたは平台が、静電発電機を使用して被膜の表面を、それぞれ正または負に静電気的に荷電する時に、それぞれ負または正に逆荷電されることができる。
【0035】
本発明に従うと、更に、(i)親水性支持体上に感熱性および/または感光性被膜を含む印刷版前駆体を−前記の通りの、本発明に従う暴露システムにより−暴露し、そして(ii)場合により現像する工程を含む、平版印刷版を製造する方法が提供される。本発明に使用される平版印刷版前駆体は、切り替え可能な(switchable)機序、または、融除性(ablative)機序に基づくことができ、親水性もしくは親油性仕上げ層の切り替え反応(a switching reaction)または除去のそれぞれにより親水性/親油性の区別を得ることができ、結果として下にある、それぞれ親油性、親水性の表面を得ることができる。前駆体はまた、ネガ型でもまたはポジ型でも実施することができ、すなわち暴露領域または非暴露領域それぞれにインキ受容性領域を形成することができる。以下に、感熱性および感光性被膜並びに切り替え可能な機序または融除性機序に基づく被膜の適切な例が詳細に討議される。
【0036】
感熱性の印刷版前駆体
感熱性の印刷版前駆体の結像機序は、熱に対する直接の暴露により、例えば、サーマルヘッドにより、または光、より好適には赤外光を熱に変換することができる被膜中の1種以上の化合物の光吸収により引き金を引かれることができる。これらの感熱性の平版印刷版前駆体は好適には、可視光線に感受性でない、すなわち現像剤中の被膜の溶解速度に対する実質的な効果は可視光線に対する暴露により誘発されない。最も好適には、被膜は外界の日光には感受性でない。
【0037】
感熱(thermal)印刷版前駆体の第1に適切な例は、例えば、欧州特許第770
494号、同第770 495号、同第770 497号、同第773 112号、同第774 364号、同第849 090号、同第1 614 538号、同第1 614 539号、同第1 614 540号、同第1 777 067号、同第1 767
349号明細書、国際公開第2006/037716号、同第2006/133741号および同第2007/045515号パンフレットに記載の通りの、好適には親水性結合剤中に分散された疎水性の熱可塑性ポリマー粒子の熱誘発凝結(coalescence)に基づく前駆体である。好適な態様に従うと、熱可塑性ポリマー粒子は1:1〜5:1(スチレン:アクリロニトリル)間の重量比、例えば2:1の比率のスチレンとアクリロニトリル単位を含む。適切な親水性結合剤の例は、ビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、並びにマレイン酸無水物/ビニルメチルエーテルコポリマーである。
【0038】
このような画像記録層は好適には、国際公開第2007/04551号パンフレットに記載の通りの、少なくとも一つのホスホン酸基または少なくとも一つのリン酸基またはその塩を含む有機化合物を含む。
【0039】
第2の適切な態様において、感熱印刷版前駆体は、熱またはUV光への暴露前に、親水性で、処理液中に可溶性であり、そして、そのような暴露後に疎水性で、低い溶解性にされるアリールジアゾスルホネート・ホモポリマーもしくはコポリマーを含む被膜を含む。
【0040】
このようなアリールジアゾスルホネートポリマーの好適な例は、他のアリールジアゾスルホネートモノマーと、そして/または(メタ)アクリル酸もしくはそのエステル、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルクロリド、ビニリデ
ンクロリド、スチレン、α−メチルスチレン等のようなビニルモノマーとの、アリールジアゾスルホネートモノマーの単独重合(homopolymerization)または共重合により調製することができる化合物である。適切なアリールジアゾスルホネートモノマーは、欧州特許第339393号、同第507008号および同第771645号明細書に開示され、そして適切なアリールジアゾスルホネートポリマーは、欧州特許第507,008号、同第960,729号、同第960,730号および同第1,267,211号明細書に開示されている。
【0041】
更なる適切な感熱印刷版前駆体はポジ型であり、そして親油性樹脂の熱誘導可溶化に基づく。親油性樹脂は好適には、水性現像液、より好適には7.5〜14間のpHをもつ水性アルカリ性現像液中に可能性のポリマーである。好適なポリマーは、フェノール樹脂、例えば、ノボラック、レゾール、ポリビニルフェノ−ルおよびカルボキシル置換ポリマーである。これらのポリマー典型的な例は、ドイツ特許第4007428号、同第4027301号および同第4445820号明細書に記載されている。結像層中に存在するフェノール樹脂の量は好適には、結像層中に存在するすべての成分の総重量に対して、少なくとも50重量%、好適には少なくとも80重量%である。
【0042】
好適な態様において、親油性樹脂は好適には、フェニル基またはヒドロキシル基が有機置換基で化学的に修正された(modified)フェノール樹脂である。有機置換基で化学的に修正されたフェノール樹脂は、湿し水のような印刷用化学薬品、または平版洗浄剤のような平版処理液に対して、増加した化学的抵抗性を示すことができる。このような化学的に修正されたフェノール樹脂の例は、欧州特許第0 934 822号、同第1 072 432号、米国特許第5 641 608号、欧州特許第0 982 123号明細書、国際公開第99/01795号パンフレット、欧州特許第02 102 446号、同第02 102 444号、同第02 102 445号、同第02 102 443号、同第03 102 522号明細書に記載されている。欧州特許第02 102
446号明細書に記載された修正樹脂、特に、前記フェノール樹脂のフェニル基が構造
− N=N−Q[ここで、−N=N−基はフェニル基の炭素原子に共有結合され、そしてQは芳香族基である]をもつ基で置換された樹脂、が好適である。
【0043】
後者の態様において、被膜は1以上の他の結合剤を含む第2層を含むことができ、結合剤は水に不溶性でアルカリ性溶液に可溶である、例えばpKaが13未満の酸性基を有し、当該層の水性アルカリ性現像剤に対する可溶性または少なくとも膨潤性を保証する有機ポリマーである。この層は、親油性樹脂を含む前記の層と親水性支持体との間に配置される。結合剤は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン基材の樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリ尿素樹脂から選択することができる。結合剤は一つ以上の官能基をもつことができる。官能基は、
(i)−NR−SO2−、−SO2−NR−または−SO2−NR’R”のようなスルホンアミド基、ここでRおよびR’は独立して、水素または、場合により置換されたアルキル、アリールもしくはヘテロアリール基のような、場合により置換された炭化水素基を表わし、これらのポリマーに関する更なる詳細は欧州特許第2 159 049号明細書に認めることができ、
(ii)例えば、米国特許第6,573,022号明細書に開示された通りの、−SO2−NH−CO−または−SO2−NH−SO2−のような酸水素原子を含むスルホンアミド基、これらの化合物の適切な例は、例えばN−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミドおよびN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドを含み、
(iii)−NH−CO−NH−のような尿素基、これらのポリマーに関する更なる詳細は国際公開第01/96119号パンフレットに認めることができ、
(iv)欧州特許第2 497 639号明細書に記載された通りの、少なくとも3つのポリマー連鎖がコアに結合された星形ポリマー、
(v)カルボン酸基、
(vi)ニトリル基、
(vii)スルホン酸基、および/または
(viii)リン酸基、
のリストから選択することができる。
【0044】
スルホンアミド基を含む(コ)ポリマーが好適である。スルホンアミド(コ)ポリマーは好適には、少なくとも一つのスルホンアミド基を含むモノマーの単独重合(homopolymerization)により、またはこのようなモノマーと他の重合可能なモノマーとの共重合により調製される高分子化合物である。好適には、本発明のポリ(ビニルアセタール)結合剤が第2層中に存在する態様において、少なくとも一つのスルホンアミド基を含むコポリマーが、本発明のポリ(ビニルアセタール)結合剤を含む層と親水性支持体との間に配置された第1層中に存在する。
【0045】
少なくとも一つのスルホンアミド基を含むモノマーと共重合されたモノマーの例は、欧州特許第1 262 318号、同第1 275 498号、同第909 657号、同第1 120 246号、同第894 622号明細書、米国特許第5,141,838号明細書、欧州特許第1 545 878号および同第1 400 351号明細書に開示された通りのモノマーを含む。アルキルもしくアリール(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート];(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド:N−アルキルもしくはN−アリール(メタ)アクリルアミド[例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−メチルピリジル)(メタ)アクリレート)];(メタ)アクリロニトリル;スチレン;置換スチレン(例えば、2−、3−もしくは4−ヒドロキシ−スチレン、4−安息香酸−スチレン);ビニルピリジン(例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン);置換ビニルピリジン(例えば、4−メチル−2−ビニルピリジン);ビニルアセテート[ここで、場合により共重合されたビニルアセテートモノマー単位は、少なくとも一部加水分解されてアルコール基を形成し、そして/または少なくとも一部は、ホルムアルデヒドもしくはブチルアルデヒドのようなアルデヒド化合物により反応されて、アセタールもしくはブチラール基を形成する];ビニルアルコール;ビニルアセタール;ビニルブチラール;ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル);ビニルアミド;N−アルキルビニルアミド(例えば、N−メチルビニルアミド、カプロラクタム、ビニルピロリドン);マレイミド;N−アルキルもしくはN−アリールマレイミド(例えば、N−ベンジルマレイミド)、は好適である。
【0046】
スルホンアミド(コ)ポリマーの適切な例および/またはそれらの製法は欧州特許第933 682号、同第982 123号、同第1 072 432号明細書、国際公開第99/63407号パンフレット、欧州特許第1 400 351号および同第2 159 049号明細書に開示されている。スルホンアミド(コ)ポリマーの極めて好適な例は、欧州特許第2 047 988号明細書の[0044]〜[0046]に記載されている。
【0047】
スルホンアミド(コ)ポリマーの具体的な好適な例は、N−(p−アミノスルホニルフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(o−アミノスルホニルフェニル)(メタ)アクリルアミド、および/またはm−アミノスルホニルフェニル(メタ)アクリレートを含むポリマーである。
【0048】
イミド基を含む(コ)ポリマーもまた、感熱性被膜中の結合剤として好適である。具体的な例は、N−置換環状イミドモノマー単位および/または、N−置換マレイミド(例えばN−フェニルマレイミドモノマー単位およびN−ベンジル−マレイミドモノマー単位)を含むメチルビニルエーテル/マレイン酸無水物コポリマーの誘導体並びにスチレン/マレイン酸無水物コポリマーの誘導体を含む。このコポリマーは好適には、本発明のポリ(ビニルアセタール)結合剤を含む層と親水性支持体との間に配置された第1層中に存在する。このコポリマーは好適には、アルカリに可溶性である。適切な例は、欧州特許第933 682号、同第894 622 A号明細書の[0010]〜[0033]、同第901 902号、同第0 982 123 A号明細書の[007]〜[0114]、同第1 072 432 A号明細書の[0024]〜[0043]および国際公開第99/63407号パンフレット(ページ4 第13行〜ページ9 第37行)に記載されている。
【0049】
例えば、アルデヒド、特にホルムアルデヒドまたはケトンと、フェノール、レソルシノール、クレゾール、キシレノールまたはトリメチルフェノールを反応させることにより得られるような遊離フェノールのヒドロキシル基をもつ重縮合物およびポリマーもまた、感熱性被膜に添加することができる。スルファモイルもしくはカルバモイル置換芳香族化合物およびアルデヒドもしくはケトンの縮合物もまた適切である。ビスメチロール置換尿素、ビニルエーテル、ビニルアルコール、ビニルアセタールまたはビニルアミドのポリマーおよびフェニルアクリレートのポリマーおよびヒドロキシ−フェニルマレイミドのコポリマーも同様に適切である。更に、ビニル芳香族化合物またはアリール(メタ)アクリレートの単位をもつポリマーを挙げることができ、ここでこれらの単位それぞれがまた、1個以上のカルボキシル基、フェノールのヒドロキシル基、スルファモイル基またはカルバモイル基をもつこともできる。具体的な例は、2−ヒドロキシルフェニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレンまたはヒドロキシフェニルマレイミドの単位をもつポリマーを含む。ポリマーは更に、酸性単位をもたない他のモノマーの単位を含むことができる。このような単位は、ビニル芳香族化合物、メチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メタクリルアミドまたはアクリロニトリルを含む。
【0050】
被膜の溶解(dissolution)動態は、場合による溶解度調整成分により微調整することができる。より具体的には、現像性促進化合物、現像加速剤および現像阻害剤を使用することができる。被膜が2枚以上の層を含む態様において、これらの成分は被膜の第1層および/または第2層および/または、場合により他の層に添加することができる。
【0051】
適切な現像性促進化合物は(i)国際公開第2003/79113号パンフレットに開示された通りの、加熱時にガスを放出する化合物、(ii)国際公開第2004/81662号パンフレットに開示された通りの化合物、(iii)国際公開第2008/103258号パンフレットに開示された通りの、1種以上の塩基性窒素含有有機化合物を含む組成物および(iv)国際公開第2009/85093号パンフレットに開示された通りの、少なくとも一つのアミノ基および少なくとも一つのカルボン酸基をもつ有機化合物、である。
【0052】
現像性促進組成物中に有用な塩基性窒素含有有機化合物の例は、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−フェニルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシメチル−1.3−プロパンジオール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2
−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、3−[(2−ヒドロキシエチル)フェニルアミノ]プロピオニトリルおよびヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンである。好適には、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンが使用される。これらの化合物の2種以上の混合物もまた有用である。塩基性窒素含有有機化合物はBASF(ドイツ)およびAldrichChemical Company(Milwaukee,WI)を含む多数の販売元から得ることができる。
【0053】
塩基性窒素含有有機化合物は好適には、被膜組成物の総固形分に基づいて、1〜30重量%、そして典型的には3〜15重量%の量で被膜中に含まれる。
【0054】
1種以上の塩基性窒素含有有機化合物は好適には、カルボン酸または環状酸無水物、スルホン酸、スルフィン酸、アルキル硫酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸エステル、フェノール、スルホンアミドまたはスルホンイミドのような1種以上の酸性の現像性促進化合物と組み合わせて使用される。何故ならこのような組み合わせ物は更に改善された現像の自由度(latitude)および印刷耐久性(durability)を許すことができるからである。酸性の現像性促進化合物の代表的な例は、米国特許第2005/0214677号明細書の[0030]〜[0036]中に提供されている。それらは被膜組成物の総乾燥重量に基づいて、0.1〜30重量%の量で含まれることができる。1種以上の酸性の現像性促進化合物に対する1種以上の塩基性窒素含有有機化合物のモル比は一般に0.1:1〜10:1、そしてより典型的には0.5:1〜2:1である。
【0055】
現像加速剤は、それらが被膜の溶解速度を増加することができるので、溶解促進剤として働く化合物である。水性の現像性を改善するためには、例えば環状酸無水物、フェノールまたは有機酸を使用することができる。環状酸無水物の例は、米国特許第4,115,128号明細書に記載された通りの、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、3,6−エンドキシ−4−テトラヒドロ−フタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、アルファ−フェニルマレイン酸無水物、コハク酸無水物およびピロメリチン酸無水物を含む。フェノールの例は、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシ−トリフェニルメタンおよび4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニル−メタン、等を含む。有機酸の例は、例えば、特開昭60−88,942号および特開平2−96,755号公報に記載された通りのスルホン酸、スルフィン酸、アルキル硫酸、ホスホン酸、ホスホン酸塩およびカルボン酸を含む。これらの有機酸の具体的な例は、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルリン酸塩、ジフェニルリン酸塩、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸(p−toluic acid)、3,4−ジメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ桂皮酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸およびアスコルビン酸を含む。被膜中に含まれる環状酸無水物、フェノールまたは有機酸の量は好適には、概して被膜に対して0.05〜20重量%範囲内にある。反復性モノマー単位として少なくとも70モル%のメタクレゾールを含むフェノール−ホルムアルデヒド樹脂のようなポリマーの現像加速剤もまた、適切な現像加速剤である。
【0056】
好適な態様において、被膜はまた、現像阻害剤とも呼ばれる現像剤抵抗手段(means)、すなわち処理中に、非暴露領域の溶解を遅らせることができる1種以上の成分、を含む。溶解阻害効果は好適には、加熱により逆転され、そのため、暴露領域の溶解は実質
的には遅れず、それにより、暴露領域と非暴露領域間に溶解の大きな差が得られる。例えば欧州特許第823 327号明細書および国際公開第97/39894号パンフレットに記載された化合物は、被膜中の、アルカリ可溶性樹脂との例えば水素架橋形成による相互反応により、溶解阻害剤として働く。このタイプの阻害剤は典型的には、少なくとも一つの芳香族基並びに、複素環式リングの一部であることができる窒素原子またはアミノ置換基、オニウム基、カルボニル、スルフィニルまたはスルホニル基のような水素結合サイト、を含む有機化合物である。このタイプの適切な溶解阻害剤は、例えば欧州特許第825 927号および同第823 327号明細書に開示されている。以下に言及される幾つかの化合物、例えばシアニンのような赤外染料(infrared dyes)および第四級化トリアリールメタン染料のような対比染料(contrast dye)もまた、溶解阻害剤として働くことができる。
【0057】
他の適切な阻害剤は、それらが被膜中への水性アルカリ性現像液の透過を遅らせるために、現像剤の抵抗を改善する。このような化合物は例えば、欧州特許第864 420号、同第950 517号明細書、国際公開第99/21725号および同第01/45958号パンフレットに記載された通りの、前記の層の上部上の第1層および/または場合により第2層および/または現像バリヤ層中に含まれることができる。現像剤中のバリヤ層の溶解度および/または透徹性(penetrability)は熱および/または赤外光に対する暴露により増加されることができる。
【0058】
撥水性ポリマーは他のタイプの適切な溶解阻害剤の例である。このようなポリマーは被膜から水性現像液を撥くことにより被膜の現像剤抵抗性を増加するように見える。撥水性ポリマーは被膜の第1および/または第2層に添加されることができ、そして/またはこれらの層の上部上に提供される別の層中に含まれることができる。後者の態様において、例えば、欧州特許第864 420号、同第950 517号明細書および国際公開第99/21725号パンフレットに記載された通りに、撥水性ポリマーは、現像剤から被膜を遮へいするバリヤ層を形成し、そして現像剤中へのバリヤ層の溶解度、または現像剤によるバリヤ層の浸透性(penetrability)が、熱または赤外光に対する暴露により増加されることができる。
【0059】
被膜中への水性アルカリ性現像液の浸透(penetration)を遅らせる阻害剤の好適な例は、シロキサンおよび/またはペルフルオロアルキル単位を含む撥水性ポリマーを含む。ポリシロキサンは線状、環状または複合架橋ポリマーまたはコポリマーであることができる。用語ポリシロキサン化合物は、2個以上のシロキサン基−Si(R,R’)−O−を含むあらゆる化合物を含むこととし、式中RおよびR’は場合により置換されてもよいアルキルまたはアリール基である。好適なシロキサンはフェニルアルキルシロキサンおよびジアルキルシロキサンである。ポリマー中のシロキサン基の数は少なくとも2、好適には少なくとも10、より好適には少なくとも20である。それは100未満、好適には60未満であることができる。
【0060】
撥水性ポリマーは、ポリ−もしくはオリゴ(アルキレンオキシド)のような極性ブロックおよび長鎖炭化水素基、ポリシロキサンおよび/または過フッ化炭化水素基のような疎水性ブロックを含むブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであることができる。過フッ化界面活性剤の典型的な例は、Dainippon Ink & Chemicals,Inc.から市販のMegafac F−177である。他の適切なコポリマーは、約15〜25のシロキサン単位および50〜70のアルキレンオキシド基を含む。好適な例は、フェニルメチルシロキサンおよび/またはジメチルシロキサン並びに、すべてTego Chemie,Essen,Germanyから市販されているTego Glide 410、Tego Wet 265、Tego Protect 5001またはSilikophen P50/Xのようなエチレンオキシドおよび/またはプロピレ
ンオキシドを含むコポリマーを含む。
【0061】
被膜中のこのような撥水性ポリマーの適切な量は、0.5〜25mg/m2間、好適には0.5〜15mg/m2間そして最も好適には0.5〜10mg/m2間である。撥水性ポリマーがまた、例えばポリシロキサンの場合にインキ反撥性でもある場合、25mg/m2cを超える高い量は非暴露領域の低いインキ受容性をもたらす可能性がある。他方、0.5mg/m2未満の量は不満足な現像抵抗性をもたらす可能性がある。
【0062】
被覆および乾燥中に、撥水性ポリマーまたはコポリマーは界面活性剤として働き、そしてその二官能構造のためにそれ自体を被膜と大気の間の界面に配置する傾向をもち、それにより、被膜溶液の成分として適用される時でも、別の上部層を形成すると考えられる。このような界面活性剤はまた同時に、被膜の品質を改善する展着剤(spreading
agents)として働く。あるいはまた、撥水性ポリマーまたはコポリマーは別の溶液中に適用されて、1枚または場合により2枚以上の層を含む被膜の上部上に塗布されることができる。その態様においては、上記別の溶液では他の層に存在する成分を溶解できない溶媒を使用して、被膜の上部に高度に濃厚な撥水性相が得られるようにするのが有利であり得る。
【0063】
前記の感熱性の印刷版前駆体の被膜は好適には、また、被膜が2枚以上の層を含む態様において、第1層および/または第2層および/または場合により他の層中に含まれることができる赤外光吸収染料または顔料を含む。好適なIR吸収染料はシアニン染料、メロシアニン染料、インドアニリン染料、オキソノール染料、ピリリウム染料およびスクアリリウム染料である。適切なIR染料の例は例えば、欧州特許第823327号、同第978376号、同第1029667第号、同第1053868号、同第1093934号明細書、国際公開第97/39894号および同第00/29214号パンフレットに記載されている。好適な化合物は以下:
【0064】
【化1】
【0065】
のシアニン染料である。
【0066】
被膜中のIR染料の濃度は概して、被膜に対して、好適には0.25〜15.0重量%間、より好適には0.5〜10.0重量%間、最も好適には1.0〜7.5重量%間である。
【0067】
被膜は更に、被膜に可視色彩を提供し、そして処理工程期間に除去されない、画像領域の被膜中に留まる染料または顔料のような1種以上の着色剤を含むことができる。それにより、可視画像が形成され、そして現像された印刷版上の平版印刷画像の検査が可能になる。このような染料はしばしば、対比染料または指示(indicator)染料と呼ばれる。該染料は好適には、青色および600nm〜750nm間の波長範囲において吸収最大値を有する。このような対比染料の典型的な例は、アミノ置換トリもしくはジアリールメタン染料、例えば、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、フレキソブラウ(flexoblau)630、バソニルブラウ(basonylblau)640、オーラミンおよびマラカイトグリーンである。更に、欧州特許第400,706号明細書中で徹底的に討論されている染料は適切な対比染料である。例え
ば国際公開第2006/005688号パンフレットに記載の通りに、特定の添加剤と組み合わせると、被膜をごく僅かに着色するが、暴露後には強度に着色される染料もまた、着色剤として使用することができる。とりわけ、機械的損傷から、感熱性および/または感光性の印刷版前駆体の被膜表面を保護するために、場合により、更に保護層を適用することができる。保護層は一般に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、部分加水分解ポリビニルアセテート、ゼラチン、炭水化物またはヒドロキシエチルセルロースのような少なくとも1種の水溶性結合剤を含み、そして、必要な場合には、少量−すなわち、保護層に対する被膜の溶剤の総重量に基づいて5重量%未満−の有機溶剤を含むことができる、水溶液または分散液からのようなあらゆる知られた方法で生成されることができる。保護層の厚さは適切には、あらゆる量、好都合には5.0μmまで、好適には0.1〜3.0μm、特に好適には0.15〜1.0μmであることができる。
【0068】
場合により、被膜は更に、界面活性剤、特にペルフルオロ界面活性剤、二酸化ケイ素もしくは二酸化チタン粒子または、つや消し剤(matting agents)およびスペーサー(spacers)のようなポリマー粒子、のような更なる成分を含むことができる。
【0069】
支持体の親水性面に1種以上の被膜溶液を適用するためのあらゆる被覆法を使用することができる。各層を連続して被覆/乾燥することにより、または幾つかの被膜溶液を一度に同時に被覆することにより、複数層の被膜を適用することができる。乾燥工程において、被膜が自己支持性で、接触に対して乾燥するまで、揮発性溶剤を被膜から除去する。しかし、乾燥工程において、すべての溶剤を除去することは必要ではない(可能ですらないかも知れない)。事実、残留溶剤含量は、それにより組成物が最適化され得る更なる組成の変数(composition variables)と見なされることができる。乾燥は典型的には少なくとも70℃の温度、適切には80〜150℃そして特には90〜140℃の温度で被膜上に熱風を吹き付けることにより実施される。更に赤外線ランプを使用することもできる。乾燥時間は典型的には15〜600秒であることができる。
【0070】
被覆および乾燥の間の、または乾燥工程後の、国際公開第99/21715号パンフレット、欧州特許第1074386号、同第1074889号明細書、国際公開第00/29214号および同第/04030923号、同第/04030924号、同第/04030925号パンフレットに記載の通りの、熱処理およびその後の冷却は、更なる利点を提供することができる。
【0071】
印刷版前駆体は、例えばLEDまたはレーザーにより赤外光に暴露されることができる。最も好適には、暴露のために使用される光線は、半導体レーザーダイオード、Nd:YAGまたはNd:YLFレーザーのような約750〜約1500nm、より好適には750〜1100nmの範囲の波長をもつ近赤外光を発するレーザーである。必要なレーザー力(laser power)は、平版前駆体の感度、スポットの直径(最大強度の1/e2における現代のプレートセッターの典型的な値は:5〜25μmである)により決定されるレーザービームのピクセル滞留時間、暴露装置のスキャン速度および解像度(すなわち、しばしばインチ当たりのドットまたはdpiで表わされる直線距離の単位当たりのアドレス可能なピクセル数、典型的な値:1000〜4000dpi)により左右される。
【0072】
暴露後、前駆体はアルカリ性水溶液のような適切な処理液により現像されることができ、それにより被膜の非結像領域が除去され、現像工程が、例えば回転ブラシを使用することによる機械的な摩擦と組み合わせることができる。現像中に、存在するあらゆる水溶性保護層も除去される。ラテックスの凝結(coalescence)に基づく感熱性の印刷版前駆体はまた、欧州特許第1,342,568号明細書に記載された通りに、淡水または水溶液、例えばガム状化溶液(gumming solution)を使用して現像されることもできる。あるいはまた、このような印刷版前駆体は暴露後に、印刷機上に直接取付けて、前駆体にインキおよび/または湿し水を供給することにより印刷機上で現像されることができる。
【0073】
水性アルカリ現像液は好適には、無機アルカリ剤(アルカリ金属水酸化物のような)、有機アルカリ剤(アミンのような)および/またはアルカリ性シリケート(アルカリ金属シリケートまたはアルカリ金属メタシリケートのような)であることができるアルカリ剤を含む。現像剤は好適には、8を超えるpH、より好適には10を超える、そして最も好適には12を超えるpHを有する。現像剤は更に、当該技術分野で知られる通りの、バッファー物質、錯体形成剤、発泡抑制剤、有機溶剤、腐食抑制剤、染料、スラッジ抑制剤、溶解防止剤(例えば非イオン界面活性剤)、アニオン性、カチオン性または両性界面活性剤および/または屈水剤(hydrotropic agent)のような成分を含むことができる。現像剤は更に、例えば、好適には少なくとも40g/lの濃度におけるソルビトールのようなポリヒドロキシル化合物および更に、例えば、好適には最高で0.15g/lの濃度におけるRHODIAから市販のSupronic B25のようなポリエチレンオキシド含有化合物を含むことができる。
【0074】
現像工程に関する更なる詳細は例えば、欧州特許第1 614 538号、同第1 614 539号、同第1 614 540号明細書および国際公開第2004/071767号号パンフレットに認めることができる。
【0075】
感光性の印刷版前駆体
前記の感熱材料に加えて、更に感光性被膜を使用することができる。このような平版の典型的な例は、UV−感受性「PS」平版および、光に対する暴露時に硬化する光重合可能な組成物を含むいわゆる感光ポリマー(photopolymer)の平版である。
【0076】
本発明の特定の態様においては、従来のUV−感受性「PS」の平版前駆体が使用される。300〜450nmの範囲(近UV光と青色)で感光性である、このような平版前駆体の適切な例は、欧州特許第1,029,667号明細書中に討論されている。ポジ型およびネガ型組成物が典型的には「PS」平版前駆体に使用される。
【0077】
ポジ型結像層は好適には、o−ナフトキノンジアジド化合物(NQD)およびアルカリ可溶性樹脂を含む。特に好適なものは、様々なヒドロキシル化合物のo−ナフトキノン−ジアジドスルホン酸エステルまたはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸エステルおよび様々な芳香族アミン化合物のo−ナフトキノン−ジアジドスルホン酸アミドまたはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸アミドである。NQD系(system)の2つの変形:1成分系および2成分系:を使用することができる。このような感光性印刷版は先行技術分野において、例えば米国特許第3,635,709号明細書、特開昭第55−76346号公報、同昭第50−117503号、同昭第50−113305号公報、米国特許第3,859,099号、同第3,759,711号、英国特許第739654号、米国特許第4,266,001号明細書および特開昭第55−57841号公報に広く開示されている。
【0078】
「PS」平版のネガ型層は好適にはジアゾニウム塩、ジアゾニウム樹脂またはアリールジアゾスルホネート・ホモポリマーもしくはコポリマーを含む。低分子量ジアゾニウム塩の適切な例は、ベンジジン・テトラゾニウムクロリド、3,3’−ジメチルベンジジン・テトラゾニウムクロリド、3,3’−ジメトキシベンジジン・テトラゾニウムクロリド、4,4’−ジアミノジフェニルアミン・テトラゾニウムクロリド、3,3’−ジエチルベンジジン・テトラゾニウムスルフェート、4−アミノジフェニルアミン・ジアゾニウムス
ルフェート、4−アミノジフェニルアミン・ジアゾニウムクロリド、4−ピペリジノアニリン・ジアゾニウムスルフェート、4−ジエチルアミノアニリン・ジアゾニウムスルフェートおよびジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとのオリゴマー縮合生成物:を含む。ジアゾ樹脂の例は、感光性物質として芳香族ジアゾニウム塩の縮合生成物を含む。このような縮合生成物は、例えば、ドイツ特許第1 214 086号明細書に記載されている。感光性または感熱性層は好適には、更に、結合剤、例えばポリビニルアルコールを含む。
【0079】
暴露時に、ジアゾ樹脂またはジアゾニウム塩は水溶性から水不溶性に(ジアゾニウム基の破壊により)転化され、更にジアゾの光分解生成物がポリマー結合剤またはジアゾ樹脂の架橋レベルを増加し、それにより画像パターンにおいて被膜を水溶性から水不溶性に選択的に転化することができる。非暴露領域は不変のままであり、すなわち水溶性である。
【0080】
このような印刷版前駆体は、前記の通りにアルカリ性水溶液を使用して現像することができる。
【0081】
二番目に適切な態様において、感光性の印刷版前駆体は光重合反応に基づき、そしてフリーラジカル開始剤(例えば、米国特許第5,955,238号、同第6,037,098号、同第5,629,354号、同第6,232,038号、同第6,218,076号、同第5,955,238号、同第6,037,098号、同第6,010,824号、同第5,629,354号、ドイツ特許第1,470,154号、欧州特許第024,629号、同第107,792号、米国特許第4,410,621号、欧州特許第215,453号、ドイツ特許第3,211,312号および欧州特許第1,091,247号明細書に開示された通りに)、重合可能な化合物(欧州特許第1,161,4541号、同第1349006号明細書、国際公開第2005/109103号パンフレットおよび未公開欧州特許出願第5,111,012.0号、欧州特許第5,111,025.2号、同第5110918.9号および同第5,110,961.9号明細書に開示された通りに)並びにポリマー結合剤(例えば、米国特許第2004/0260050号、同第2005/0003285号、同第2005/0123853号、欧州特許第1,369,232号、同第1,369,231号、同第1,341,040号、米国特許第2003/0124460号、欧州特許第1 241 002号、同第1 288 720号、米国特許第6,027,857号、同第6,171,735号、同第6,420,089号、欧州特許第152,819号、同第1,043,627号、米国特許第6,899,994号、同第2004/0260050号、同第2005/0003285号、同第2005/0170286号、同第2005/0123853号、同第2004/0260050号、同第2005/0003285号、同第2004/0260050号、同第2005/0003285号、同第2005/0123853号および同第2005/0123853号明細書に開示された通り)、を含む光硬化性組成物を含む被膜を含む。増感剤、共開始剤、阻害剤、付着促進化合物、着色剤、界面活性剤および/または焼き付け剤(printing out agents)のような他の成分を、場合により添加することができる。これらの印刷版前駆体は、青、緑または赤色光(すなわち、450〜750nm間の波長範囲)で、紫色光(すなわち、350〜450nm間の波長範囲)で、または、例えばArレーザー(488nm)またはFD−YAGレーザー(532nm)、半導体レーザーInGaN(350〜450nm)、赤外レーザーダイオード(830nm)またはNd−YAGレーザー(1064nm)を使用して赤外光(すなわち、750〜1500nm間の波長範囲)を使用して、感光性を与えられることができる。
【0082】
感光ポリマーの平版前駆体は典型的には、pH>10(前記)を有するアルカリ性現像剤中で処理され、その後ガム状化される。あるいはまた、暴露された感光ポリマーの平版前駆体はまた、被膜にガム溶液を適用し、それにより非暴露領域が除去されることにより
現像されることができる。適切なガム状化溶液(gumming solution)は国際公開第2005/111727号パンフレットに記載されている。暴露工程後、結像前駆体はまた、印刷機上に直接取り付けられ、そしてインキおよび/または湿し水を適用することにより印刷機上で処理されることができる。このような平版の調製法は、国際公開第93/05446号パンフレット、米国特許第6,027,857号、同第6,171,735号、同第6,420,089号、同第6,071,675号、同第6,245,481号、同第6,387,595号、同第6,482,571号、同第6,576,401号、同第6,548,222号明細書、国際公開第03/087939号パンフレット、米国特許第2003/16577号および同第2004/13968号明細書に開示されている。
【0083】
とりわけ、機械的損傷から、感熱性および/または感光性の印刷版前駆体の被膜表面を保護するために、場合によりまた、保護層も適用することができる。保護層は一般に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、部分加水分解ポリビニルアセテート、ゼラチン、炭水化物またはヒドロキシエチルセルロースのような少なくとも1種の水溶性結合剤を含み、そして、必要な場合は、少量−すなわち、保護層に対する被膜の溶剤の総重量に基づいて5重量%未満−の有機溶剤を含むことができる、水溶液または分散液からのような、あらゆる知られた方法で生成することができる。保護層の厚さは適切には、あらゆる量、好都合には5.0μmまで、好適には0.1〜3.0μm、特に好適には0.15〜1.0μmであることができる。
【0084】
場合により、被膜は更に、界面活性剤、特にペルフルオロ界面活性剤、二酸化ケイ素もしくは二酸化チタン粒子、有機もしくは無機スペーサー(spacer)粒子または艶消し剤(matting agent)のような更なる成分を含むことができる。
【0085】
支持体の親水性面に2種以上の被膜溶液を適用するためのあらゆる被覆法を使用することができる。幾つかの被膜溶液の各層を、連続して被覆/乾燥する工程、またはそれらを一度に同時に被覆することにより、複数層の被膜を適用することができる。乾燥工程において、被膜が自己支持性で、接触に対して乾燥するまで、揮発性溶剤が被膜から除去される。しかし、乾燥工程において、すべての溶剤を除去することは必要ではない(そして可能ですらないかも知れない)。事実、残留溶剤含量は、それにより組成物が最適化され得る、更なる組成の変数(variables)と見なされることができる。乾燥は典型的には、少なくとも70℃の温度、適切には80〜150℃、そして特には90〜140℃の温度で被膜上に熱風を吹き付けることにより実施される。更に赤外線ランプを使用することもできる。乾燥時間は典型的には15〜600秒であることができる。
【0086】
被覆および乾燥工程の間の、または乾燥工程後の熱処理およびその後の冷却は、国際公開第99/21715号パンフレット、欧州特許第1074386号、同第1074889号明細書、国際公開第00/29214号および同第/04030923号、同第/04030924号、同第/04030925号パンフレットに記載の通りに、更なる利点を提供することができる。
【0087】
切り替え可能な、そして融除性(ablative)の感熱性の印刷版前駆体
これらの印刷版前駆体の結像機序は、例えばサーマルヘッド(thermal head)による熱に対する直接的暴露により、または光、より好適には赤外光を熱に変換することができる被膜中の1種以上の化合物の光吸収により引き金を引かれることができる。印刷版前駆体は例えば、LEDまたはレーザーにより、赤外光に暴露されることができる。最も好適には、暴露に使用される光線は、半導体レーザーダイオード、Nd−YAGまたはNd−YLFレーザーのような、約750〜約1500nm、より好適には750〜1100nmの範囲の波長をもつ近赤外光を放射するレーザーである。
【0088】
感熱性被膜は、赤外線を使用する暴露工程中に発生される熱により、感熱性被膜の表面の親水性/疎水性バランスを変えることができる、切り替え可能ポリマーを含むことができる。通常、このような印刷版は印刷機上に直接使用することができるが、印刷機上現像工程のような更なる湿式現像工程、または印刷機を離れた現像工程を使用することができる。
【0089】
このようなシステムの典型的な例は、国際公開第92/9934号パンフレット、欧州特許第652 483号および同第1 787 810号明細書に記載された通りの、ポリマー主鎖からぶら下がった(pendent from)不安定な基の、熱誘発劈開(cleavage)、加熱時に、支持体から融除する(ablate from)かまたは解重合する(depolymerise)ポリマー系、米国特許第4,081,572号明細書に記載の通りの、ヒドラジド基とのポリアミド酸の熱シクロ脱水、欧州特許第200 488号明細書に記載の通りの、ポリマー上の電荷の熱誘発破壊または形成、米国特許第5,569,573号、欧州特許第646 476号明細書、国際公開第94/2395号、同第98/29258号パンフレットに記載の通りの、カプセル封入反応性物質の熱誘発破裂、特開10069089号公報に記載の通りのフェノール性の上部層との、水溶性基底層の画像様架橋、米国特許第6,162,578号明細書に記載の通りの、感熱性活性末端基を含む感熱性の過分枝ポリマー、並びに欧州特許第1 129 861号明細書に記載の通りの、極性切り替え可能な結像材料、である。
【0090】
感熱性平版は工程の少ない平版、すなわちどんな処理をも必要とせず、従って暴露直後に印刷版として使用することができる平版である融除性(ablative)平版であることができる。このような融除版の記録層において、赤外線吸収装置−感熱性の印刷版前駆体に対する前記の通りの−による光の吸収時に発生される熱が親水性または親油性仕上げ層を取り除き、それにより下にある親油性または親水性表面が浮き彫りになり、それにより画像(印刷)領域および非画像(非印刷)領域間のインキ受容性の必要な区別を獲得する。
【0091】
感熱性および/または感光性印刷版は、平版にインキおよび水性湿し液(dampening liquid)が供給される、従来の、いわゆる湿式オフセット印刷に対して使用されることができる。他の適切な印刷法は、湿し液を伴わずに、いわゆる単一流体(single−fluid)インキを使用する。適切な単一流体インキは米国特許第4,045,232号、同第4,981,517号および同第6,140,392号明細書に記載されている。最も好適な態様において、単一流体インキは、国際公開第00/32705号パンフレットに記載の通りの、疎水性または親油性相とも呼ばれるインキ相およびポリオール相を含む。
【実施例】
【0092】
本発明は以下の実施例に関して詳細に説明されると考えられるが、本発明はそれらに限定はされない。実施例は、Agfa Graphics N.V.から市販の印刷版前駆体、Thermostar P970を使用して実施される。
【0093】
1.平版の暴露
市販の印刷版前駆体Thermostar P970(745mm×605mm)を、Eastman Kodak Corp.から市販の、150rpmおよび2400dpiで稼働する、40Wの赤外線レーザーヘッド(830nm)をもつプレートセッターのCreo Trendsetterを使用して様々な(a range of)エネルギー密度において画像様に暴露して、200mJ/cm2を得た。記録された画像は0%のドットカバレッジを有した。
【0094】
本発明が、暴露された平版の量に左右されないことを示すために、5枚の平版を連続して暴露した。
【0095】
2.静電発電機
静電発電機を結像装置Creo Trendesetter(前記参照)上に設置した。SIMCO−ION
から市販のSIMCO線状6ピンナー電極DC正電荷静電発電機(positive electrostatic generator)を、接地されたドラムシリンダーから20〜30mmの距離で、レーザー台車(laser carriage)からできるだけ遠くのレーザーヘッド上に取付けた。静電発電機から平版表面までの最適な距離は実験により確定される。適切に調整されると、融除粉塵(ablation dust)の形成は減少/防止され、そして電極から印刷版への火花連絡(spark−over)は起こらない。
【0096】
静電発電機の最も近位の金属部品は関連起電力(electro−motive)に影響を与える可能性があり、その結果、荷電効果は修正され、そして/または破壊される可能性すらある。従って、静電発電機と平版設置装置内の金属部品との間の最短距離、例えば約70mmの距離を考慮しなければならない。
【0097】
この設定において、被膜表面が結像される前に、それが荷電されることができる方法で、荷電バーをプレートセッター内に配置する。荷電バーは典型的には、暴露が開始される直前に起動される。荷電刺激時に、被膜表面は静電気的に荷電され、他方、それに反応するアルミニウム支持体は逆荷電される。荷電領域の幅はレーザーの列幅(swath width)より有意に大きいので、被膜表面は結像前に荷電される。
【0098】
以下の表1には、30mmの、静電発電機とアルミニウム版との間の距離に対する静電発電機による起電力に対する発生電流が与えられている。
【0099】
【表1】
【0100】
3.融除(ablation)
市販の印刷版前駆体P970の融除動態を下記の融除試験法に従って試験した。融除試験の結果は以下の写真および表2に示される。
【0101】
融除試験法
第1の工程において、融除粉塵(dust)を「急速フィルター回収(Fast Filter Collection(FFC)」法により回収する。その後、「総有機炭素(TOC)」測定が、版の面積当りの放出固形粉塵の重量の詳細な値(例えば、炭素のm
g/m2)を提供する。
【0102】
急速フィルター回収法
急速フィルター回収(FFC)法を、Eastman Kodak Corp.から市販の、140rpmおよび2400dpiで作動する、20Wの赤外線レーザーヘッド(830nm)をもつプレートセッターのCreo Trendsetter上で実施する。
【0103】
フィルター(PallflexTM Membrame Filter Tissu;石英 47mm;rec.no.7202)を、レーザーヘッドのすぐ後方で、レーザーヘッドと真空清浄器との間に配置する。フィルターはグリッドと支持体との間でブロックされる。約4000cm2の平版の表面積が暴露され、そして粉塵をフィルターの11cm2上に回収する。1回の測定は約5〜10分間継続する。次に融除レベルを、「総有機炭素(TOC)」測定により定量する。
【0104】
総有機炭素(TOC)測定
TOC分析はFFC法により得られるサンプル中に存在する全有機炭素原子の総重量を提供する定量法である。融除現象により暴露工程中に放出された炭素原子の量−すなわち炭素のmg/m2−が得られ、融除の度合いについての概念を与える。
【0105】
この測定に関する更なる詳細は以下の基準に見出すことができる:
ISO NBN EN 15936/2012:スラッジ、処理済み生物廃棄物、土壌および廃棄物−乾式燃焼による総有機炭素(TOC)の決定。
【0106】
NBN EN 13137/2001:廃棄物の特徴付け−廃棄物、スラッジおよび堆積物中の総有機炭素(TOC)の決定。
【0107】
結果
暴露工程時またはその直前に、静電発電機を起動して、それぞれ10μA、15μAおよび20μAの電流を発生した。対照サンプルとして、静電発電機を起動せずに同様な暴露工程を実施した。急速フィルター回収法の結果は、以下の写真および以下の表2のTOC分析に示される。
【0108】
急速フィルター回収(20μA)
【0109】
【0110】
TOC分析
【0111】
【表2】
【0112】
写真上で認められ、表2に提示された結果は、10μA、15μAまたは20μAの電荷形成により何の融除粉塵も検出されないことを示す。
図1
図2