【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの懸念事項の1つ以上に対処するために、独立請求項に規定される特徴を有する照明デバイスが提供される。好適な実施形態は、従属請求項に規定される。
【0007】
したがって、第1の態様によれば、照明デバイスが提供される。照明デバイスは、光源と、光源の少なくとも一部が密閉空間の中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器とを含む。更に、照明デバイスは、化学反応性物質を密閉空間に徐々に放出するディスペンサを含む。
【0008】
第2の態様によれば、照明デバイスを製造する方法が提供される。当該方法は、少なくとも部分的に光透過性の外囲器内に、ディスペンサを配置するステップと、外囲器が密閉空間を画定するように、外囲器を密閉するステップとを含み、外囲器は、光源を少なくとも部分的に囲む。ディスペンサは、化学反応性物質を密閉空間に徐々に放出する。
【0009】
本発明の態様によれば、ディスペンサは、照明デバイスの寿命の少なくとも一部の間に、化学反応性物質を密閉空間に徐々に供給する供給源として機能する。つまり、反応性物質は、照明デバイスの製造後、即ち、外囲器が密閉された後に、密閉空間に放出される。したがって、例えば副生成物、汚染物質及び/又は光源を支持する基板と反応することによって、密閉空間内で消費された反応性物質は、ディスペンサからの反応性物質によって補充又は置換される。本開示の利点は、密閉空間(即ち、外囲器)内の反応性物質の枯渇のリスクが減少されることにあり、これは、光源の時期尚早な老化又は劣化のリスクを減少する。従来技術のデバイスと比べた場合の別の利点は、初期反応性物質量、即ち、照明デバイスの製造中に、密閉空間に加えられる反応性物質量が減少されることにある。特に、熱伝導率が比較的低い反応性物質を使用する場合、反応性物質量が減少されることによって、照明デバイスの放熱性能が向上される。反応性物質を密閉空間に徐々に放出することによって、密閉空間内の反応性物質の量、即ち、濃度を比較的低いレベル及び/又は一定のレベルに維持することができる。
【0010】
反応性物質の段階的な放出は、数か月、数年又は照明デバイスの全寿命といった長時間に亘って、物質の少量の流れ又は供給がゆっくりと又は少しずつ進むことと理解されるべきである。放出は、連続的、即ち、一定でも、時間の経過と共に変動しても、又は、非連続的、即ち、断続的であってもよい。一例では、放出率は、照明デバイスの動作中、即ち、光源が発光すると、増加され、照明デバイスを使用していない時には、減少又は停止される。段階的放出率は、幾つかの実施形態では、密閉空間内の汚染物質の実際若しくは現在の量又は濃度、及び/又は、照明デバイス若しくはディスペンサの温度に基づいているか、又は、関連している。
【0011】
ディスペンサは、長時間の間、反応性物質の少なくとも一部を包含、担持又は収容できる任意の材料、デバイス又は手段によって実現されてよい。ディスペンサは、例えば化学反応性物質を含む固体化合物といった材料で作られるか又は当該材料を含む。一例では、ディスペンサは、化合物の分解過程中に反応性物質を放出可能な化合物を含むか又は当該化合物で作られる。更に、ディスペンサは、リザーバ、外囲器、光源又は任意の保持若しくは支持手段といった照明デバイスの他の部分に組み込まれても、密閉空間内の若しくは密閉空間と流体連結する別個の部分又はデバイスとして配置されてもよい。
【0012】
本願の文脈では、「ディスペンサ」との用語は、「分配手段」、「分配ユニット」、「物質放出ユニット」及び「物質放出材料」といった用語と同義に使用される。
【0013】
本明細書では、「化学反応性物質」又は「反応性物質」との用語は、化学的に反応する、即ち、反応して、化学又は物理変化を経験する傾向を有する例えば化合物及び元素といった物質を含む。具体的には、当該用語は、密閉空間内又は光源上の副生成物又は汚染物質に、化学又は物理変化を経験させる物質を指す。
【0014】
外囲器は、光源から放出される光の少なくとも一部を、密閉空間及び光源に少なくとも部分的に面する内側表面を介して受光し、光源からの光を、外囲器の外側表面を介して出力する。更に、外囲器は、密閉空間から照明デバイスの周囲環境へ、また、その反対の気体及び液体の通過を阻止する、又は、少なくとも減少する障壁を形成するように密閉される。密閉は密封とも言う。外囲器は、例えば白熱電球の電球又は蛍光管の管として実現又は形作られる。
【0015】
一実施形態によれば、ディスペンサが、化学反応性物質に対して少なくとも部分的に透過性である一部分を少なくとも有するリザーバで作られるか又は当該リザーバを含む。つまり、リザーバは、反応性物質の少なくとも一部が、リザーバの上記一部分を、例えばリザーバを作っている透過性材料を介して通過することによって、密閉空間に放出されることを可能にする。一例では、リザーバは、透過性壁を含み、透過率は、壁の厚さ及び/又は壁の貫通孔といった通路によって調整又は決定される。透過性リザーバは、放出率を制御する追加若しくは別箇の構造体又はデバイスの必要を減少又は除外する。
【0016】
一実施形態によれば、ディスペンサ又はリザーバが、化学反応性材料の少なくとも一部を徐々に放出する多孔質材料を含む。多孔質材料は、微小の隙間を含み、当該隙間は、反応性物質を収容し、反応性物質に当該隙間を通過させる。反応性物質の少なくとも一部を保持又は蓄積可能である多孔質材料は、リザーバが、多孔質材料の固体片として形成されることを可能にする。多孔質材料は更に、リザーバ壁内に配置されてもよく、反応性物質の一部を収容するボイド又は入れ物を画定し、反応性物質が、多孔質材料を伝わり密閉空間へと通過することを可能にする。
【0017】
一実施形態によれば、ディスペンサ又はリザーバが、例えば発泡体といったセルラ材料を含む。反応性物質の少なくとも一部が、セルラ材料の多数のセルのうちの1つ又は幾つかの中に含まれてよい。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、化学反応性物質が、例えば酸素といった酸化物質、具体的には、二原子酸素気体である。酸素は、反応性であり、ほとんどの元素及び様々な化合物と、酸化物といった化合物を形成する点で有利である。具体的には、酸素は、照明デバイスの密閉囲い内に存在する副生成物及び汚染物質と効率的に反応することが分かっている。酸素の更なる例には、過酸化物、オゾン及び酸素の他の同素体が含まれる。酸素は更に、酸素を含む化合物の形で放出されてもよい。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、ディスペンサ又はリザーバの少なくとも一部分が、コーティングで作られる又は当該コーティングを含む。コーティングは、例えば所望又は特定の反応性物質透過性を有するコーティングを提供することによって、反応性物質の放出率を制御するように提供される。リザーバの透過率、したがって、放出率は、例えばコーティングの厚さ、ピンホールといった任意の欠陥及び反応性物質を通過させるコーティング材料の一般的な能力に依存する。コーティングは、例えばポリマー材料又は無機材料を含む。適切なポリマー材料は、アクリレート、ポリエチレン及びシリコーンといった合成ポリマーを含む。無機材料の例には、金属酸化物、窒化物、リン化物及び硫化物が含まれる。
【0020】
コーティングは、例えば原子層堆積、化学的気相蒸着(CVD)又は物理的気相堆積(PVD)といった層堆積技術によって形成される。
【0021】
一実施形態によれば、リザーバは、囲い壁によって画定される。したがって、リザーバは、囲まれた中空の球体又は円筒といったカプセルとして形成されてよい。囲い壁によって、即ち、中空体としてリザーバを形成することによって、壁を通る反応性物質の放出率が、リザーバのボリューム対面積比によって決定される。比率が小さいほど、より多くの反応性物質が壁にアクセスし、当該壁を通過することができる。したがって、本実施形態は、リザーバのサイズを変えることによって、具体的には、リザーバのボリューム対表面積の比率を変えることによって、反応性物質の放出率が調整又は選択される。
【0022】
一例では、リザーバの壁に、通路又はピンホールといった貫通孔が提供される。貫通孔は、リザーバから密閉空間に反応性物質を放出する。放出率、即ち、時間の経過と共に放出される反応性物質量は、通路の長さ及び/又は壁の厚さと、通路の幅、即ち、横断面寸法と、提供されている通路の数によって決定されてよい。
【0023】
一実施形態によれば、ディスペンサは、熱分解によって化学反応性物質を徐々に放出する材料を含む。当該材料は、例えば熱に晒されると、酸素又は酸素を含む化合物と、少なくとも1つの他の成分とに化学的に分解する酸素放出材料である。熱分解は、例えば酸素放出材料の分解を開始するために必要な温度と理解されるべきである熱分解温度以上の温度において誘発される。酸素放出材料は、熱分解温度を下回る温度では、化学的に安定しているか、少なくとも分解する又は酸素を放出する傾向はあまりない。したがって、本実施形態は、密閉空間への酸素の放出が、照明デバイスの温度、具体的には、ディスペンサ及び酸素放出材料に提供される熱量によって制御される照明デバイスを可能にする。したがって、照明デバイスを加熱することによって、密閉空間内の酸素量又は比率が増加される。加熱は、例えば照明デバイスの製造中の熱処理若しくは硬化ステップ、及び/又は、照明デバイスの使用中に行われてよい。一例では、照明デバイスの動作中に光源によって生成された熱が、酸素放出材料の分解を開始し、したがって、酸素が密閉空間に放出されることを可能にするのに十分である。照明デバイスの温度の増加は、密閉空間における酸素消費量と、酸素放出材料からの酸素放出量との両方を増加させる。したがって、本実施形態は、増加された温度における消費酸素の補償又は補充を可能にする。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、当該材料の熱分解温度は、150℃未満又は更には100℃未満といったように200℃未満である。例えば酸素といった反応性物質の放出は、光源によって生成された熱によって誘発され、これにより、照明デバイスの動作中の反応性物質の補充を可能とすると同時に、照明デバイスは、比較的低い温度において動作することができる。比較的低い動作温度は、例えば発光ダイオード及び他の半導体ベースの光源といった感熱光源を使用する場合に特に興味深い。これにより、寿命の長さが延長され、光学性能が維持される。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、当該材料の熱分解温度は、100℃を上回るといったように、室温を上回る。したがって、照明デバイスが、例えば動作中に加熱されると、反応性物質が密閉空間に放出される一方で、照明デバイスが使用されていない時は、反応性物質はないか、少なくともより少ない量の反応性物質が放出される。したがって、照明デバイスの寿命、即ち、反応性物質放出材料が使い果たされることなく照明デバイスが保存可能である時間の長さが増加される。
【0026】
一実施形態によれば、ディスペンサは、例えば分解されると酸素気体を放出する酸化銀(I、III)(Ag4O4)といった酸化銀を含む反応性物質放出材料で作られるか又は当該材料を含む。他の適切な酸素放出材料には、例えば酸化カリウム(K2O)及び過酸化マグネシウム(MgO2)が含まれる。
【0027】
一実施形態によれば、ディスペンサは、マトリクス材料に埋め込まれる。ディスペンサは、例えばマトリクス材料に組み込まれる反応性物質放出材料のカプセル、又は、マトリクス材料内のボイド又は空洞として形成されるリザーバとして形成される。マトリクス材料は、例えばポリマーを含む。
【0028】
一実施形態によれば、ディスペンサは、光源の動作中に生成される熱がディスペンサの温度を増加させるように、光源の付近に配置される。反応性物質放出材料を加熱することによって、熱分解温度に到達し、(例えば酸素といった)反応性物質が密閉空間に放出される。リザーバの場合、加熱は、例えばリザーバ内の反応性物質の圧力の増加、リザーバの透過性の増加、反応性物質の粘度の低下又は反応性物質の粒子又は分子の可動性の増加による反応性物質の放出率の増加を可能にする。照明デバイスの動作中の反応性物質の放出の増加によって、密閉空間内の反応性物質の量が、動作中の副生成物及び汚染物質の放出又は生成の増加に対応することができる。
【0029】
一実施形態によれば、照明デバイスは、密閉空間につながり、ディスペンサを受容又は収容する注入管を含む。注入管は、例えば照明デバイスの製造中に、例えばヘリウムといった気体を密閉空間に供給する。一例では、ディスペンサは、注入管が密閉空間内に配置される前に、注入管内に配置される。したがって、リザーバ及び注入管は、事前処理又は製造ステップにおいて提供されるか又は予め組み立てられる。
【0030】
一実施形態によれば、光源は、例えば発光ダイオード(LED)又はレーザダイオードといった固体ベースの光源を含む。しかし、当然ながら、光源は、原則として、光を生成し、放出することができる任意の種類の要素を含んでよい。照明デバイスからの動的色光出力を可能とするために、RGBのLEDを使用することが有利である。照明デバイスは、1つの光源を含んでも、同じ又は異なるタイプの幾つかの光源を含んでもよい。
【0031】
一実施形態によれば、照明デバイスに、例えば酸素放出材料といった反応性物質放出材料が提供される。照明デバイスは、密閉空間に酸素を放出するように、酸素放出材料が分解する温度に晒される。これは、例えば所望の酸素量を密閉空間に提供するために、照明デバイスの製造中に、例えば外囲器の密閉の後に行われるステップにおいて行われてよい。一例では、外囲器は、密閉空間の密閉の前に、ヘリウムで満たされ、少なくとも、酸素放出材料の熱分解温度に加熱され、これにより、密閉空間に酸素が加えられる。加えられた酸素量は、例えば密閉空間の全ボリュームの0.5%であってよい。更に又は或いは、外囲器の密閉の前に、追加の酸素(及び/又は他のタイプの気体)が提供されてもよい。
【0032】
当然ながら、ディスペンサは、例えばSiO2若しくはSiN2といった無機材料、又は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びナイロン6(PA6)を含むポリマー材料を含む材料で作られるリザーバを含む。
【0033】
なお、本発明の実施形態は、請求項に記載される特徴のあらゆる可能な組み合わせに関する。更に、当然ながら、デバイスについて説明される様々な実施形態は、第2の態様により規定される方法の実施形態とすべて組み合わせ可能である。