特許第6368053号(P6368053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368053反応性物質のディスペンサを有する照明デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368053
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】反応性物質のディスペンサを有する照明デバイス
(51)【国際特許分類】
   F21K 9/23 20160101AFI20180723BHJP
   F21V 31/04 20060101ALI20180723BHJP
   F21K 9/27 20160101ALI20180723BHJP
   F21Y 113/10 20160101ALN20180723BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180723BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20180723BHJP
【FI】
   F21K9/23
   F21V31/04
   F21K9/27
   F21Y113:10
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-544704(P2017-544704)
(86)(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公表番号】特表2018-507521(P2018-507521A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2016053259
(87)【国際公開番号】WO2016135008
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年8月23日
(31)【優先権主張番号】15156778.1
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15195790.9
(32)【優先日】2015年11月23日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フェルトマン ダーク
(72)【発明者】
【氏名】ヒクメット リファット アタ ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】バン ボメル ティエス
(72)【発明者】
【氏名】ファン コーテン ワイナンド エヴァート ヤコブス
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5999458(JP,B2)
【文献】 特表2000−504476(JP,A)
【文献】 特表2005−534139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/23
F21K 9/27
F21V 31/04
F21Y 113/10
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の少なくとも一部が密閉空間中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器と、
前記密閉空間内に配置され、酸化物質を含むディスペンサと、
を含み、
前記ディスペンサは、前記酸化物質に対して少なくとも部分的に透過性である部分を有するリザーバを含み、前記酸化物質の少なくとも一部を、前記密閉空間に徐々に放出する、照明デバイス。
【請求項2】
前記リザーバは、前記酸化物質の少なくとも一部を徐々に放出する多孔質材料を含む、請求項に記載の照明デバイス。
【請求項3】
光源と、
前記光源の少なくとも一部が密閉空間中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器と、
前記密閉空間内に配置され、酸化物質を含むディスペンサと、
を含み、
前記ディスペンサは、前記酸化物質の少なくとも一部を含むセルラ材料を含み、前記酸化物質の少なくとも一部を、前記密閉空間に徐々に放出する、照明デバイス。
【請求項4】
前記リザーバの少なくとも一部分は、ポリマー、酸化金属、窒化物、リン化物又は硫化物を含むコーティングを含む、請求項1又は2に記載の照明デバイス。
【請求項5】
光源と、
前記光源の少なくとも一部が密閉空間中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器と、
前記密閉空間内に配置され、酸化物質を含むディスペンサと、
を含み、
前記ディスペンサは、前記酸化物質の少なくとも一部を、前記密閉空間に徐々に放出し、
前記酸化物質は、酸素を含む、照明デバイス。
【請求項6】
前記ディスペンサは、熱分解によって、酸化物質を徐々に放出する材料を含む、請求項1に記載の照明デバイス。
【請求項7】
前記材料の熱分解温度は、200℃未満及び/又は室温よりも高い、請求項に記載の照明デバイス。
【請求項8】
前記材料は、Ag4O4、K2O又はMgO2を含む、請求項に記載の照明デバイス。
【請求項9】
光源と、
前記光源の少なくとも一部が密閉空間中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器と、
前記密閉空間内に配置され、酸化物質を含むディスペンサと、
を含み、
前記ディスペンサは、熱分解によって、前記酸化物質を徐々に放出する材料を含み、前記酸化物質の少なくとも一部を、前記密閉空間に徐々に放出し、
前記材料は、前記密閉空間内に配置されるコーティングとして提供される、照明デバイス。
【請求項10】
前記ディスペンサは、前記光源の付近に配置される、請求項1乃至の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項11】
光源と、
前記光源の少なくとも一部が密閉空間中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器と、
前記密閉空間内に配置され、酸化物質を含むディスペンサと、
前記密閉空間につながり、前記ディスペンサを受容する注入管と、
を含み、
前記ディスペンサは、前記酸化物質の少なくとも一部を、前記密閉空間に徐々に放出する、照明デバイス。
【請求項12】
前記光源は、発光ダイオード又はレーザダイオードを含む、請求項1乃至11の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項13】
前記外囲器は、バルブ形状又は管形状である、請求項1乃至12の何れか一項に記載の照明デバイス。
【請求項14】
照明デバイスを製造する方法であって、
少なくとも部分的に光透過性の外囲器内に、ディスペンサを配置するステップと、
前記外囲器が密閉空間を画定するように、前記外囲器を密閉するステップと、
を含み、
前記外囲器は、光源を少なくとも部分的に囲むように配置され、
前記ディスペンサは、酸化物質及び該酸化物質に対して少なくとも部分的に透過性である部分を有するリザーバを含み、前記酸化物質の少なくとも一部を前記密閉空間に徐々に放出する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、密閉空間を画定する光透過性外囲器と、化学反応性物質を放出するディスペンサとを含む照明デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
照明デバイスの外囲器は、当該外囲器内に配置される例えば発光ダイオード(LED)といった光源を冷却するように熱伝導気体で満たされる。しかし、この技術の1つの欠点は、囲い内で放出され、例えば光源の発光部分上に堆積する例えば光源からの副生成物及び汚染物質によって、光源が時期尚早に老化することである。光源が、堆積汚染物質によって徐々に覆い隠されると、光源の性能が、例えば色分布及び光強度に関して劣化する。
【0003】
国際特許公開WO2013/154932は、囲い内に酸素を含めることによってこの問題に対処している。これは、酸素が、汚染物質を減少又は排除することが分かっているからである。しかし、酸素の濃度が高すぎると照明デバイスの冷却性能が下がり、濃度が低すぎると汚染物質を減少又は除去するには十分ではないため、適切な酸素量を決定することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、光源の汚染及び劣化を低減可能である改良型照明デバイスが必要である。寿命が延長された照明デバイスも必要である。
【0005】
上記欠点を解決するか、少なくとも軽減する照明デバイスを実現することが有利である。具体的には、光源の汚染の傾向が減少され、寿命が延長された光源を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの懸念事項の1つ以上に対処するために、独立請求項に規定される特徴を有する照明デバイスが提供される。好適な実施形態は、従属請求項に規定される。
【0007】
したがって、第1の態様によれば、照明デバイスが提供される。照明デバイスは、光源と、光源の少なくとも一部が密閉空間の中に配置される当該密閉空間を画定する少なくとも部分的に光透過性の外囲器とを含む。更に、照明デバイスは、化学反応性物質を密閉空間に徐々に放出するディスペンサを含む。
【0008】
第2の態様によれば、照明デバイスを製造する方法が提供される。当該方法は、少なくとも部分的に光透過性の外囲器内に、ディスペンサを配置するステップと、外囲器が密閉空間を画定するように、外囲器を密閉するステップとを含み、外囲器は、光源を少なくとも部分的に囲む。ディスペンサは、化学反応性物質を密閉空間に徐々に放出する。
【0009】
本発明の態様によれば、ディスペンサは、照明デバイスの寿命の少なくとも一部の間に、化学反応性物質を密閉空間に徐々に供給する供給源として機能する。つまり、反応性物質は、照明デバイスの製造後、即ち、外囲器が密閉された後に、密閉空間に放出される。したがって、例えば副生成物、汚染物質及び/又は光源を支持する基板と反応することによって、密閉空間内で消費された反応性物質は、ディスペンサからの反応性物質によって補充又は置換される。本開示の利点は、密閉空間(即ち、外囲器)内の反応性物質の枯渇のリスクが減少されることにあり、これは、光源の時期尚早な老化又は劣化のリスクを減少する。従来技術のデバイスと比べた場合の別の利点は、初期反応性物質量、即ち、照明デバイスの製造中に、密閉空間に加えられる反応性物質量が減少されることにある。特に、熱伝導率が比較的低い反応性物質を使用する場合、反応性物質量が減少されることによって、照明デバイスの放熱性能が向上される。反応性物質を密閉空間に徐々に放出することによって、密閉空間内の反応性物質の量、即ち、濃度を比較的低いレベル及び/又は一定のレベルに維持することができる。
【0010】
反応性物質の段階的な放出は、数か月、数年又は照明デバイスの全寿命といった長時間に亘って、物質の少量の流れ又は供給がゆっくりと又は少しずつ進むことと理解されるべきである。放出は、連続的、即ち、一定でも、時間の経過と共に変動しても、又は、非連続的、即ち、断続的であってもよい。一例では、放出率は、照明デバイスの動作中、即ち、光源が発光すると、増加され、照明デバイスを使用していない時には、減少又は停止される。段階的放出率は、幾つかの実施形態では、密閉空間内の汚染物質の実際若しくは現在の量又は濃度、及び/又は、照明デバイス若しくはディスペンサの温度に基づいているか、又は、関連している。
【0011】
ディスペンサは、長時間の間、反応性物質の少なくとも一部を包含、担持又は収容できる任意の材料、デバイス又は手段によって実現されてよい。ディスペンサは、例えば化学反応性物質を含む固体化合物といった材料で作られるか又は当該材料を含む。一例では、ディスペンサは、化合物の分解過程中に反応性物質を放出可能な化合物を含むか又は当該化合物で作られる。更に、ディスペンサは、リザーバ、外囲器、光源又は任意の保持若しくは支持手段といった照明デバイスの他の部分に組み込まれても、密閉空間内の若しくは密閉空間と流体連結する別個の部分又はデバイスとして配置されてもよい。
【0012】
本願の文脈では、「ディスペンサ」との用語は、「分配手段」、「分配ユニット」、「物質放出ユニット」及び「物質放出材料」といった用語と同義に使用される。
【0013】
本明細書では、「化学反応性物質」又は「反応性物質」との用語は、化学的に反応する、即ち、反応して、化学又は物理変化を経験する傾向を有する例えば化合物及び元素といった物質を含む。具体的には、当該用語は、密閉空間内又は光源上の副生成物又は汚染物質に、化学又は物理変化を経験させる物質を指す。
【0014】
外囲器は、光源から放出される光の少なくとも一部を、密閉空間及び光源に少なくとも部分的に面する内側表面を介して受光し、光源からの光を、外囲器の外側表面を介して出力する。更に、外囲器は、密閉空間から照明デバイスの周囲環境へ、また、その反対の気体及び液体の通過を阻止する、又は、少なくとも減少する障壁を形成するように密閉される。密閉は密封とも言う。外囲器は、例えば白熱電球の電球又は蛍光管の管として実現又は形作られる。
【0015】
一実施形態によれば、ディスペンサが、化学反応性物質に対して少なくとも部分的に透過性である一部分を少なくとも有するリザーバで作られるか又は当該リザーバを含む。つまり、リザーバは、反応性物質の少なくとも一部が、リザーバの上記一部分を、例えばリザーバを作っている透過性材料を介して通過することによって、密閉空間に放出されることを可能にする。一例では、リザーバは、透過性壁を含み、透過率は、壁の厚さ及び/又は壁の貫通孔といった通路によって調整又は決定される。透過性リザーバは、放出率を制御する追加若しくは別箇の構造体又はデバイスの必要を減少又は除外する。
【0016】
一実施形態によれば、ディスペンサ又はリザーバが、化学反応性材料の少なくとも一部を徐々に放出する多孔質材料を含む。多孔質材料は、微小の隙間を含み、当該隙間は、反応性物質を収容し、反応性物質に当該隙間を通過させる。反応性物質の少なくとも一部を保持又は蓄積可能である多孔質材料は、リザーバが、多孔質材料の固体片として形成されることを可能にする。多孔質材料は更に、リザーバ壁内に配置されてもよく、反応性物質の一部を収容するボイド又は入れ物を画定し、反応性物質が、多孔質材料を伝わり密閉空間へと通過することを可能にする。
【0017】
一実施形態によれば、ディスペンサ又はリザーバが、例えば発泡体といったセルラ材料を含む。反応性物質の少なくとも一部が、セルラ材料の多数のセルのうちの1つ又は幾つかの中に含まれてよい。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、化学反応性物質が、例えば酸素といった酸化物質、具体的には、二原子酸素気体である。酸素は、反応性であり、ほとんどの元素及び様々な化合物と、酸化物といった化合物を形成する点で有利である。具体的には、酸素は、照明デバイスの密閉囲い内に存在する副生成物及び汚染物質と効率的に反応することが分かっている。酸素の更なる例には、過酸化物、オゾン及び酸素の他の同素体が含まれる。酸素は更に、酸素を含む化合物の形で放出されてもよい。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、ディスペンサ又はリザーバの少なくとも一部分が、コーティングで作られる又は当該コーティングを含む。コーティングは、例えば所望又は特定の反応性物質透過性を有するコーティングを提供することによって、反応性物質の放出率を制御するように提供される。リザーバの透過率、したがって、放出率は、例えばコーティングの厚さ、ピンホールといった任意の欠陥及び反応性物質を通過させるコーティング材料の一般的な能力に依存する。コーティングは、例えばポリマー材料又は無機材料を含む。適切なポリマー材料は、アクリレート、ポリエチレン及びシリコーンといった合成ポリマーを含む。無機材料の例には、金属酸化物、窒化物、リン化物及び硫化物が含まれる。
【0020】
コーティングは、例えば原子層堆積、化学的気相蒸着(CVD)又は物理的気相堆積(PVD)といった層堆積技術によって形成される。
【0021】
一実施形態によれば、リザーバは、囲い壁によって画定される。したがって、リザーバは、囲まれた中空の球体又は円筒といったカプセルとして形成されてよい。囲い壁によって、即ち、中空体としてリザーバを形成することによって、壁を通る反応性物質の放出率が、リザーバのボリューム対面積比によって決定される。比率が小さいほど、より多くの反応性物質が壁にアクセスし、当該壁を通過することができる。したがって、本実施形態は、リザーバのサイズを変えることによって、具体的には、リザーバのボリューム対表面積の比率を変えることによって、反応性物質の放出率が調整又は選択される。
【0022】
一例では、リザーバの壁に、通路又はピンホールといった貫通孔が提供される。貫通孔は、リザーバから密閉空間に反応性物質を放出する。放出率、即ち、時間の経過と共に放出される反応性物質量は、通路の長さ及び/又は壁の厚さと、通路の幅、即ち、横断面寸法と、提供されている通路の数によって決定されてよい。
【0023】
一実施形態によれば、ディスペンサは、熱分解によって化学反応性物質を徐々に放出する材料を含む。当該材料は、例えば熱に晒されると、酸素又は酸素を含む化合物と、少なくとも1つの他の成分とに化学的に分解する酸素放出材料である。熱分解は、例えば酸素放出材料の分解を開始するために必要な温度と理解されるべきである熱分解温度以上の温度において誘発される。酸素放出材料は、熱分解温度を下回る温度では、化学的に安定しているか、少なくとも分解する又は酸素を放出する傾向はあまりない。したがって、本実施形態は、密閉空間への酸素の放出が、照明デバイスの温度、具体的には、ディスペンサ及び酸素放出材料に提供される熱量によって制御される照明デバイスを可能にする。したがって、照明デバイスを加熱することによって、密閉空間内の酸素量又は比率が増加される。加熱は、例えば照明デバイスの製造中の熱処理若しくは硬化ステップ、及び/又は、照明デバイスの使用中に行われてよい。一例では、照明デバイスの動作中に光源によって生成された熱が、酸素放出材料の分解を開始し、したがって、酸素が密閉空間に放出されることを可能にするのに十分である。照明デバイスの温度の増加は、密閉空間における酸素消費量と、酸素放出材料からの酸素放出量との両方を増加させる。したがって、本実施形態は、増加された温度における消費酸素の補償又は補充を可能にする。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、当該材料の熱分解温度は、150℃未満又は更には100℃未満といったように200℃未満である。例えば酸素といった反応性物質の放出は、光源によって生成された熱によって誘発され、これにより、照明デバイスの動作中の反応性物質の補充を可能とすると同時に、照明デバイスは、比較的低い温度において動作することができる。比較的低い動作温度は、例えば発光ダイオード及び他の半導体ベースの光源といった感熱光源を使用する場合に特に興味深い。これにより、寿命の長さが延長され、光学性能が維持される。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、当該材料の熱分解温度は、100℃を上回るといったように、室温を上回る。したがって、照明デバイスが、例えば動作中に加熱されると、反応性物質が密閉空間に放出される一方で、照明デバイスが使用されていない時は、反応性物質はないか、少なくともより少ない量の反応性物質が放出される。したがって、照明デバイスの寿命、即ち、反応性物質放出材料が使い果たされることなく照明デバイスが保存可能である時間の長さが増加される。
【0026】
一実施形態によれば、ディスペンサは、例えば分解されると酸素気体を放出する酸化銀(I、III)(Ag4O4)といった酸化銀を含む反応性物質放出材料で作られるか又は当該材料を含む。他の適切な酸素放出材料には、例えば酸化カリウム(K2O)及び過酸化マグネシウム(MgO2)が含まれる。
【0027】
一実施形態によれば、ディスペンサは、マトリクス材料に埋め込まれる。ディスペンサは、例えばマトリクス材料に組み込まれる反応性物質放出材料のカプセル、又は、マトリクス材料内のボイド又は空洞として形成されるリザーバとして形成される。マトリクス材料は、例えばポリマーを含む。
【0028】
一実施形態によれば、ディスペンサは、光源の動作中に生成される熱がディスペンサの温度を増加させるように、光源の付近に配置される。反応性物質放出材料を加熱することによって、熱分解温度に到達し、(例えば酸素といった)反応性物質が密閉空間に放出される。リザーバの場合、加熱は、例えばリザーバ内の反応性物質の圧力の増加、リザーバの透過性の増加、反応性物質の粘度の低下又は反応性物質の粒子又は分子の可動性の増加による反応性物質の放出率の増加を可能にする。照明デバイスの動作中の反応性物質の放出の増加によって、密閉空間内の反応性物質の量が、動作中の副生成物及び汚染物質の放出又は生成の増加に対応することができる。
【0029】
一実施形態によれば、照明デバイスは、密閉空間につながり、ディスペンサを受容又は収容する注入管を含む。注入管は、例えば照明デバイスの製造中に、例えばヘリウムといった気体を密閉空間に供給する。一例では、ディスペンサは、注入管が密閉空間内に配置される前に、注入管内に配置される。したがって、リザーバ及び注入管は、事前処理又は製造ステップにおいて提供されるか又は予め組み立てられる。
【0030】
一実施形態によれば、光源は、例えば発光ダイオード(LED)又はレーザダイオードといった固体ベースの光源を含む。しかし、当然ながら、光源は、原則として、光を生成し、放出することができる任意の種類の要素を含んでよい。照明デバイスからの動的色光出力を可能とするために、RGBのLEDを使用することが有利である。照明デバイスは、1つの光源を含んでも、同じ又は異なるタイプの幾つかの光源を含んでもよい。
【0031】
一実施形態によれば、照明デバイスに、例えば酸素放出材料といった反応性物質放出材料が提供される。照明デバイスは、密閉空間に酸素を放出するように、酸素放出材料が分解する温度に晒される。これは、例えば所望の酸素量を密閉空間に提供するために、照明デバイスの製造中に、例えば外囲器の密閉の後に行われるステップにおいて行われてよい。一例では、外囲器は、密閉空間の密閉の前に、ヘリウムで満たされ、少なくとも、酸素放出材料の熱分解温度に加熱され、これにより、密閉空間に酸素が加えられる。加えられた酸素量は、例えば密閉空間の全ボリュームの0.5%であってよい。更に又は或いは、外囲器の密閉の前に、追加の酸素(及び/又は他のタイプの気体)が提供されてもよい。
【0032】
当然ながら、ディスペンサは、例えばSiO2若しくはSiN2といった無機材料、又は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びナイロン6(PA6)を含むポリマー材料を含む材料で作られるリザーバを含む。
【0033】
なお、本発明の実施形態は、請求項に記載される特徴のあらゆる可能な組み合わせに関する。更に、当然ながら、デバイスについて説明される様々な実施形態は、第2の態様により規定される方法の実施形態とすべて組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
上記態様及び他の態様は、幾つかの実施形態を示す添付図面を参照してより詳細に説明される。
【0035】
図1図1は、一実施形態による照明デバイスの横断面を示す。
図2a図2aは、一実施形態による図1のリザーバの横断面を示す。
図2b図2bは、一実施形態による図1のリザーバの横断面を示す。
図2c図2cは、一実施形態による図1のリザーバの横断面を示す。
図3図3は、一実施形態による照明デバイスの横断面を示す。
図4図4は、別の実施形態による照明デバイスの横断面を示す。
図5図5は、幾つかの実施形態による照明デバイスを製造する方法を説明するフローチャートである。
【0036】
図面はすべて概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、全般に、実施形態を説明するのに必要な部分のみを示し、その他の部分は、省略されているか、示唆されているに過ぎない。同様の参照符号は、説明の全体を通して、同様の要素を指している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の態様は、添付図面を参照して、以下により詳細に説明される。添付図面には、現在好適である実施形態が示されている。しかし、本発明は、多くの異なる形で具体化されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、完全さ及び完璧さのために提供され、また、当業者に本発明の態様の範囲を十分に伝えるものである。
【0038】
図1を参照して、一実施形態による照明デバイスが説明される。
【0039】
照明デバイス100は、少なくとも部分的に光透過性の外囲器120によって形成される密閉空間130内に配置される、例えば3つのLEDといった光源110を含む。外囲器120は、例えばバルブ形状又は管形状であり、例えばガラス又はプラスチックで作られる。外囲器120は、光源110を収容し、密閉空間130を画定するように、照明デバイス100の口金160に密閉される。密閉空間130は、例えば外囲器120を介した光源110から照明デバイス100の周囲環境への熱輸送を促進するための例えばヘリウム及び/又は水素といった気体を含む。
【0040】
更に、ディスペンサ140が、密閉空間130内に配置されるか、密閉空間と流体連結し、これにより、例えば酸素気体といった反応性物質が、リザーバ140から密閉空間130に放出される。本実施形態によれば、ディスペンサは、リザーバ140として形成され、照明デバイス100の口金160の近くに配置される。
【0041】
リザーバ140は、囲い壁143を介したリザーバ140から密閉空間130への酸素の段階的な放出又は供給を提供するように、酸素に対して少なくとも部分的に透過性の材料で作られるか又は当該材料を含む当該囲い壁143によって画定される。壁143は、例えば多孔質材料及び/又はプラスチック材料を含む。
【0042】
コーティング142が、リザーバ140の表面の少なくとも一部に提供される。コーティングは、リザーバ140の外側表面、即ち、密閉空間130に面している表面及び/又は内側表面上に提供されてよい。コーティング142は、例えばPVD又はCVDといった堆積方法によって提供され、また、壁143の酸素放出率、即ち、透過率を制御又は調整するように適応される。
【0043】
或いは又は更に、ディスペンサは、化学的に分解し、これにより、例えば酸素気体といった反応性物質を放出する材料で作られる又は当該材料を含む。このような酸素放出材料は、例えば酸化銀(I、III)(Ag4O4)を含み、酸素放出材料の温度が熱分解温度に近づくにつれて、特に酸素に分解する。熱分解温度は、例えば100〜150℃の範囲内である。
【0044】
最初に、リザーバ140は、酸素が満たされているか又は提供され、密閉空間130内に配置される。照明デバイス100の寿命の少なくとも一部の間に、酸素は、リザーバ140によって、例えばリザーバ140の壁143及び/又はコーティング142を通り抜ける又は通過することによって、密閉空間130に徐々に放出又は供給される。放出された酸素は、密閉空間130内の汚染物質及び/又は光源110上若しくは光源110に堆積している汚染物質と反応して、当該汚染物質が除去されるか、少なくとも減少される。しかし、当然ながら、酸素の少なくとも一部は、壁143を形成する材料内に蓄積又は収容され、そこから、酸素が徐々に放出される。図2a乃至図2cは、図1を参照して説明された照明デバイス100と同様に構成される照明デバイスのリザーバの横断面部を示す。
【0045】
図2aに示されるように、ディスペンサ140は、例えば囲い壁142によって形成される中空の球体又は円筒といった1つ又は幾つかのカプセル145を含むリザーバとして形成される。カプセル145は、少なくともある程度の酸素を収容し、酸素を密閉空間130に徐々に放出する。カプセルのボリュームは、例えば1ナノリットル乃至20ミリリットルの範囲内であってよい。
【0046】
図2bによれば、リザーバ140は、マトリクス材料144内に埋め込まれたカプセル若しくはボイド146を含むか又は当該カプセル若しくはボイド146で作られる。例えば1ナノリットル乃至20ミリリットルの範囲内のボリュームを有するボイド146は、酸素を含み、当該酸素は、多孔質又は酸素に対して透過性であるマトリクス材料144を通過することによって、密閉空間130に放出される。
【0047】
図2cは、リザーバ140が、例えば発泡体といったセルラ(cellular)材料(即ち、細胞様の材料)を含む別の例を示す。酸素は、セルラ材料のセル141のうちの1つ又は幾つかの中に提供され、セル141の透過性壁又は膜を介して、密閉空間130に放出される。
【0048】
密閉空間内の(例えばヘリウムといった)気体の全ボリューム又は密閉空間の全ボリュームに対する酸素気体のボリュームの占有率は、0.3%未満又は0.2%未満といったように、0.5%未満であってよい。酸素気体のボリュームの全ボリュームに対する比率は、熱分解温度以上で照明デバイスを硬化させることによって、増加される。
【0049】
一例では、リザーバ内の酸素気体の初期ボリューム濃度は、70%又は80%よりも高いといったように、60%よりも高い。
【0050】
しかし、当然ながら、図2a乃至図2cを参照して説明された実施形態の何れか1つにおけるリザーバ140は、例えば熱分解されると、酸素を徐々に放出する酸素放出材料が提供されるか又は当該材料で満たされている。
【0051】
図3は、図1を参照して説明された照明デバイス100と同様の照明デバイスの側断面図である。図3では、照明デバイス300は、密閉空間330を画定する管形外囲器320を含む。当該密閉空間330内に光源310が配置される。光源は、管320に沿って延在する支持部材312上に配置されるLED310のアレイを含む。支持部材312は、例えば酸素気体及び/又は酸素放出材料を有するリザーバ340といった1つ又は幾つかのディスペンサが提供される。図3に示されるように、ディスペンサ340は、支持部材312内に埋め込まれるか又は支持部材312内で包み込まれる。しかし、或いは又はこれに加えて、支持部材312内で別箇の部分として光源の近くに配置されてもよい。
【0052】
ディスペンサ340を光源310の近くに配置することによって、照明デバイス300の動作中、ディスペンサは光源310によって加熱される。ディスペンサ340を加熱することによって、酸素が放出される、並びに/又は、酸素放出率が、酸素及び/若しくはディスペンサ340の温度が増加すると共に増加される。
【0053】
図4を参照して、別の実施形態による照明デバイスが説明される。照明デバイス400は、図1及び図3を参照してそれぞれ説明された照明デバイス100及び300と同様に構成されるが、本実施形態では、例えば照明デバイス400の製造中に、気体を密閉空間430に供給するための注入管450が具備されている。注入管450は、例えば照明デバイス400の口金460から光源410に向かって延在し、照明デバイス400の製造後に、酸素気体といった化学反応性物質を密閉空間430に放出するリザーバ440といった1つ以上のディスペンサ140を含む。図4に示されるように、注入管450は、壁443によって囲まれるカプセル440として形成される複数のリザーバ440を収容するか又は当該複数のリザーバ440で満たされる。或いは又はこれに加えて、反応性物質を放出する材料が、注入管450上又は内に配置されてよい。例えば酸素といった反応性物質の段階的な放出中、放出された酸素は、注入管450内を、光源410に向かってゆっくりと流れるか又は動き、注入管450の端開口部において、密閉空間430に入る。
【0054】
図5は、幾つかの実施形態による照明デバイスを製造する方法500を説明するフローチャートである。照明デバイスは、図1図3及び図4を参照して説明された照明デバイスと同様に構成される。
【0055】
方法500は、ディスペンサを、少なくとも部分的に光透過性の外囲器内に配置するステップ510と、外囲器が密閉空間を画定するように、外囲器を密閉するステップ515とを含み、外囲器は、光源を少なくとも部分的に取り囲むように配置される。ディスペンサは、化学反応性物質を含み、当該化学反応性物質の少なくとも一部を密閉空間に徐々に放出する。
【0056】
一実施形態によれば、方法500は更に、反応性物質を密閉空間に放出するために、ディスペンサを、ディスペンサの材料の熱分解温度以上の温度に晒すステップ520を含む。
【0057】
一実施形態によれば、方法500は更に、密閉空間、即ち、外囲器によって画定され、密閉される囲いを、密閉空間内の熱伝導率を増加するために、例えばヘリウム及び/又は水素を含む気体で満たすステップ520を含む。気体は、図4を参照して前に説明された注入管によって、照明デバイスに供給される。
【0058】
ある研究では、密閉空間がヘリウムで満たされ、100mgのAg4O4が提供された。次に、照明デバイスは、55時間の間、100℃に加熱され、酸素が密閉空間に放出された。この研究における放出酸素量は、密閉空間の全ボリュームの0.5%になったことが分かった。
【0059】
結論として、照明デバイスが開示される。照明デバイスは、光源と、少なくとも部分的に光透過性の外囲器と、ディスペンサとを含む。外囲器は、密閉空間を画定し、その中に光源の少なくとも一部が配置される。更に、ディスペンサは、化学反応性物質を含み、密閉空間内に存在しうる汚染物質及び副生成物を減少させるように、化学反応性物質の少なくとも一部を密閉空間に徐々に放出する。
【0060】
当業者は、本発明が、上記好適な実施形態に限定されないことを認識する。それどころか、添付の請求項の範囲内で、多くの修正態様及び変更態様が可能である。例えばディスペンサは、リザーバとして形成されるか、及び/又は、化学反応性物質を徐々に放出する材料で作られ、任意の位置に配置され、当該位置から、ディスペンサは、化学反応性物質の少なくとも一部を、密閉囲いに供給することができる。ディスペンサは更に、化学反応性物質の少なくとも一部を収容又は蓄積可能である任意の適切な材料で作られて、任意の適切な形態又は構造が与えられてよい。
【0061】
更に、開示された実施形態の変形態様は、図面、開示内容及び添付の請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5