特許第6368088号(P6368088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368088放熱部と透光部とを有するLEDランプハウジング及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368088
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】放熱部と透光部とを有するLEDランプハウジング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 3/06 20180101AFI20180723BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20180723BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180723BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20180723BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20180723BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20180723BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180723BHJP
【FI】
   F21V3/06 110
   C08L69/00
   C08K3/22
   B29C47/06
   F21V3/02 400
   F21V3/06 130
   H01L33/00 L
   H01L33/64
   F21Y115:10
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-270196(P2013-270196)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-130820(P2014-130820A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年6月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0158089
(32)【優先日】2012年12月31日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516257888
【氏名又は名称】ロッテ アドバンスト マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】申 贊 均
(72)【発明者】
【氏名】李 厚 ▲せき▼
(72)【発明者】
【氏名】金 男 ▲げん▼
(72)【発明者】
【氏名】李 正 遠
(72)【発明者】
【氏名】林 鍾 ▲てつ▼
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−214628(JP,A)
【文献】 特開2010−073476(JP,A)
【文献】 特開2001−214049(JP,A)
【文献】 特開2007−302793(JP,A)
【文献】 特開2014−096237(JP,A)
【文献】 特開2012−246365(JP,A)
【文献】 特開平02−279744(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0103002(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 3/02−3/06
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を含む放熱部と、
透明性ポリカーボネート樹脂組成物を含む透光部と、
を有し、
前記熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、
(A)ポリカーボネート樹脂30〜0重量%と、
(B)酸化マグネシウム微粒子0〜70重量%と、
を含み、
前記酸化マグネシウム微粒子(B)は球形であり、平均直径が30〜80μmであることを特徴とする、LEDランプハウジング。
【請求項2】
前記放熱部及び前記透光部は、一体に成形される、請求項1に記載のLEDランプハウジング。
【請求項3】
前記放熱部及び前記透光部は、
前記熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物と、
前記透明性ポリカーボネート樹脂組成物と、
を共押出しすることにより形成されてなる、請求項1または2に記載のLEDランプハウジング。
【請求項4】
チューブ状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のLEDランプハウジング。
【請求項5】
前記透明性ポリカーボネート樹脂組成物は、
(A)ポリカーボネート樹脂100重量部と、
(C)光拡散剤0.1〜2重量部と、
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のLEDランプハウジング。
【請求項6】
前記熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物及び前記透明性ポリカーボネート樹脂組成物は、(D)難燃剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のLEDランプハウジング。
【請求項7】
前記難燃剤(D)は、フッ素化ポリオレフィン系樹脂、スルホン酸金属塩系化合物、またはこれらの混合物である、請求項6に記載のLEDランプハウジング。
【請求項8】
前記放熱部は、ASTM E1461規定により測定される熱伝導性が、成形方向に対して水平方向には0.5W/mK以上であり、垂直方向には0.4W/mK以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のLEDランプハウジング。
【請求項9】
前記光拡散剤(C)は、アクリル系光拡散剤、シリコン系光拡散剤、またはこれらの混合物である、請求項5に記載のLEDランプハウジング。
【請求項10】
前記シリコン系光拡散剤(C)は、シリコン系光拡散剤全体含量に対して、50〜100重量%のポリオルガノシルセスキオキサンを含む、請求項9に記載のLEDランプハウジング。
【請求項11】
第1の投入口を備えた第1の押出機と、第2の投入口を備えた第2の押出機と、を有する共押出機の前記第1の投入口に熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を投入する段階と、
前記第2の投入口に透明性ポリカーボネート樹脂組成物を投入する段階と、
加熱された前記第1の押出機及び前記第2の押出機内でそれぞれの前記樹脂組成物を溶融/混練させる段階と、
前記第1の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を放熱部の形態を有するダイの一面に投入し、前記第2の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を透光部の形態を有するダイの他面に投入する段階と、
前記投入されたそれぞれの溶融/混練された樹脂組成物を前記ダイ内で放熱部と透光部とで接合して一体に形成する段階と、
を有し、
前記熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、
(A)ポリカーボネート樹脂30〜0重量%と、
(B)酸化マグネシウム微粒子0〜70重量%と、
を含み、
前記酸化マグネシウム微粒子(B)は球形であり、平均直径が30〜80μmであることを特徴とする、LEDランプハウジングの製造方法。
【請求項12】
前記透明性ポリカーボネート樹脂組成物は、
(A)ポリカーボネート樹脂100重量部と、
(C)光拡散剤0.1〜2重量部と、
を含む、請求項11に記載のLEDランプハウジングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱部と透光部とを有するLEDランプハウジング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)は、電力使用量が少なく、寿命が長くて、環境にやさしい製品としてその需要が引き続き増加してきている。LEDが多様な電子製品に活発に用いられるようになることにつれて、最近では家庭用照明ランプのチューブ状蛍光灯にも光源として用いられるようになっている。しかしながら、LEDは発熱量が大きく、照明ランプの光源として用いる場合には、LEDから発生する熱を効率的に外部へ伝達することが必要である。
【0003】
図1は、従来の一般的なチューブ状LEDランプを示した図であって、ハウジングが半球形の放熱部と透熱部とで組み立てられており、ハウジングの内部に光源としてLED素子と電源がそれぞれ設けられている。
【0004】
一般的に、LEDランプハウジングの放熱部は、アルミニウムなどの熱伝導性が優れた金属素材をダイカスト(die−casting)して製造することができる。しかし、製造コストが高く、生産性が低いという問題点がある。
【0005】
また、金属素材で放熱部を構成する場合、金属素材の重さによりLEDランプの重さが増加するため、家庭用照明ランプに用いるには適さない。また、放熱部と透光部とが機械式締結方法により組み立てられるので、結合隙間を通じて湿気や水が浸透し、LEDランプの誤作動をもたらす可能性がある。
【0006】
さらに、放熱部と透光部を別に製造して、それを機械式締結方法により組み立てるため、製造工程が複雑で、工程効率性が低下されるという問題点が発生する。したがって、既存の放熱部の素材として用いられる金属素材を代替することができる熱伝導性樹脂組成物に対する関心が高くなっている。
【0007】
一般的に、熱はフォノン(phonon)という一種の音響粒子により伝達されることが知られている。このようなフォノンは音波の性質を有するため、結晶性が優れた媒質でよく伝播される。したがって、熱伝導性樹脂組成物の場合、結晶格子からなる熱伝導性充填材ではフォノンが容易かつ速く伝達されるが、結晶化度と熱伝導度が低い高分子樹脂ではフォノンの伝達が非常に難しい。また、フォノンの音波的性質により散乱が生じ、熱伝導性充填材と高分子樹脂との間の界面で相当量のフォノンが損失される。このような理由で、一般的な熱伝導性樹脂組成物の場合、熱伝導度が低い高分子樹脂では熱がほとんど伝達されず、熱伝導度が高い熱伝導性充填材によって熱伝達がなされる。
【0008】
熱伝導性樹脂組成物に含浸(impregnation)される熱伝導性充填材として使用可能な物質としては、炭素繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維、グラファイト(graphite)などのような炭素系充填材と金属粉末などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2007−0025017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記炭素系充填材と金属粉末は熱伝導度だけでなく電気伝導度も高いため、これらを適用した熱伝導性樹脂組成物は電気伝導性を示すようになる。したがって、前記炭素系充填材と金属粉末は、LEDランプハウジングの放熱部のように電気的に絶縁体であり、かつ高い熱伝導度も有するべき製品の素材として用いることが困難である。
【0011】
一方、電気を通さない熱伝導性絶縁充填材としては、セラミック系充填材を用いることができる。但し、セラミック系充填材は熱伝導度が低いため、これを用いて熱伝導度が高い絶縁樹脂組成物を製造するためには、樹脂組成物に充填材を高い含量で含む必要がある。しかし、充填材の含量が増加すると、樹脂組成物の粘度が高くなって、樹脂組成物の押出及び射出成形性が損なわれ、これを用いて製品を製造することが難しくなり、製造された製品の機械的強度が低下してしまう。
【0012】
このように、熱伝導性と電気絶縁性を有し、機械的物性が優れた熱伝導性絶縁樹脂組成物を製造するためには、熱伝導性絶縁充填材の添加量によっては成形性が失われ、熱伝導性絶縁充填材間に効果的な熱伝導ネットワークが形成されなければ十分な放熱性が得られないという問題があった。
【0013】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、熱伝導性と電気絶縁性を有し、機械的物性が優れたLEDランプハウジングを提供することを目的とする。
【0014】
本発明の前記の目的は下記で説明される本発明によって達成されうる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物からなる放熱部及び透明性ポリカーボネート樹脂組成物からなる透光部を含むLEDハウジングランプにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明の上記課題は、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を有する放熱部と、透明性ポリカーボネート樹脂組成物を有する透光部と、を含むことを特徴とする、LEDランプハウジングによって達成される。
【0017】
本発明の上記課題はまた、第1の投入口を備えた第1の押出機と第2の投入口を備えた第2の押出機と、を有する共押出機の前記第1の投入口に熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を投入する段階と、前記第2の投入口に透明性ポリカーボネート樹脂組成物を投入する段階と、加熱された前記第1の押出機及び前記第2の押出機の内でそれぞれの前記樹脂組成物を溶融/混練させる段階と、前記第1の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を放熱部の形態を有するダイ(die)の一面に投入し、前記第2の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を透光部の形態を有するダイの他面に投入する段階と、前記投入されたそれぞれの溶融/混練された樹脂組成物を前記ダイ内で放熱部と透光部とで接合して一体に形成する段階と、を有する、LEDランプハウジングの製造方法によっても達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、互いに異なるポリカーボネート樹脂組成物を共押出して、放熱部と透光部とが一体に形成され、放熱部と透光部との接合性に優れ、防湿及び防水効果に優れ、放熱部の熱伝導性に優れ、製造上の工程効率性と経済性に優れたLEDランプハウジングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来のチューブ状LEDランプの模式図である。
図2】本発明に係る共押出されたチューブ状LEDランプハウジングと従来の機械式締結により組み立てられたチューブ状LEDランプハウジングとを比較するための図である。
図3】(a)は本発明のLEDランプハウジングの断面図である。(b)は、本発明のLEDランプハウジングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付された図面を参考として本発明の具体的な内容を下記で詳細に説明する。
【0021】
本発明は、LEDランプハウジングに関するのであって、互いに異なるポリカーボネート樹脂組成物を共押出して放熱部と透光部とが一体になるように成形したLEDランプハウジングに関する。
【0022】
《LEDランプハウジング》
本発明のLEDランプハウジングは、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を含む放熱部と、透明性ポリカーボネート樹脂組成物を含む透光部とを備える。この時、前記熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物と前記透明性ポリカーボネート樹脂組成物とを共押出しして、放熱部と透光部とが一体になるように成形することができる。本発明のLEDランプハウジングは、チューブ状のLEDランプハウジングであってもよい。
【0023】
本発明のLEDランプハウジングは、放熱部と透光部とを含む。図3(a)は本発明のLEDランプハウジングの断面図であり、図3(b)は本発明のLEDランプハウジングの斜視図であって、本発明のLEDランプハウジングは、透光部と放熱部とが共押出により一体に成形されることが好ましい。透光部は、光源から照射される光をよく透過させると共に光をよく拡散させるべきであるため、透明性ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造され、放熱部は、LED素子から発生する熱を外部に効率的に伝達すべきであるため、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造される。
【0024】
本発明において、放熱部の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性を発現するために熱伝導性絶縁充填材として酸化マグネシウム微粒子を含むことが好ましい、透光部の透明性ポリカーボネート樹脂組成物は、光透過性及び光拡散性を発現するために光拡散剤としてアクリル系光拡散剤またはシリコン系光拡散剤を含むことが好ましい。
【0025】
本発明において、放熱部は透光部と共に共押出により一体に形成されることが好ましい。共押出によりLEDランプハウジングを一体に製造するためには、透光部である透明性ポリカーボネート樹脂組成物と放熱部である熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物との接合性が優れることが好ましい。本発明は、放熱部と透光部の両方にポリカーボネート樹脂を用いることにより、放熱部と透光部との充分な接合性を確保することができる。
【0026】
以下、LEDランプハウジングの透光部と放熱部の各構成成分について具体的に説明する。
【0027】
[放熱部の構成:熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明において放熱部は、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を用いることができる。
【0028】
(A)ポリカーボネート(PC)樹脂
一般に、熱伝導性樹脂組成物の基礎樹脂としてポリフェニレンスルファイド樹脂やポリアミド樹脂を用いることができるが、本発明では透光部の透明性熱可塑性樹脂組成物に用いられるポリカーボネート樹脂と同種のポリカーボネート樹脂を用いるのが接合性の確保の面で有利である。
【0029】
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、下記化学式1:
【0030】
【化1】
【0031】
前記化学式1において、Aは単結合、置換または非置換のC1〜C5のアルキレン基、置換または非置換のC2〜C5のアルキリデン基、置換または非置換のC5〜C6のシクロアルキレン基、置換または非置換のC5〜C10のシクロアルキリデン基、CO、S、及びSOよりなる群から選択される連結基であり、
及びRはそれぞれ独立で置換または非置換のC1〜C30のアルキル基、及び置換または非置換のC6〜C30のアリール基よりなる群から選択される置換基であり、
及びnはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、
前記「置換された」とは、水素原子がハロゲン基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のハロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C20のアルコキシ基、及びこれらの組合せよりなる群から選択される置換基に置換されたことを意味する]
で表される1または2以上のジフェノール類と、ホスゲン、ハロゲンホルメート、カーボネートまたはこれらの組合せよりなる1またはその以上の化合物と、を反応させて製造することができる。
【0032】
前記化学式1で表示されるジフェノール類は、2種以上が組み合わされてポリカーボネート樹脂の反復単位を構成することができる。前記ジフェノール類の具体例としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(「ビスフェノール−A」ともいう)、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンなどを挙げることができる。前記ジフェノール類の中で、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、または1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンを好ましく用いることができる。また、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンをより好ましく用いることができる。
【0033】
前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000〜200,000g/molであるのが好ましく、15,000〜80,000g/molであるのがより好ましい。前記重量平均分子量の範囲でポリカーボネート樹脂組成物の優れた衝撃強度を確保することができ、適当な流動性を有することになって優れた加工性を得ることができる。
【0034】
前記ポリカーボネート樹脂は、2種類以上のジフェノール類から製造された共重合体の混合物であってもよい。また、前記ポリカーボネート樹脂は、線形(linear)ポリカーボネート樹脂、分枝形(branched)ポリカーボネート樹脂、ポリエステル−カーボネート共重合体樹脂、ポリカーボネート−シロキサン共重合体樹脂などを用いることができる。
【0035】
前記線型ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール−A系ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。前記分枝形ポリカーボネート樹脂としては、トリメリット酸無水物、トリメリット酸などのような多官能性芳香族化合物をジフェノール類及びカーボネートと反応させて製造したものを挙げることができる。前記多官能性芳香族化合物は、分枝形ポリカーボネート樹脂全量に対して、0.05〜2モル%で含まれるのが好ましい。前記ポリエステル−カーボネート共重合体樹脂としては、二官能性カルボン酸をジフェノール類及びカーボネートと反応させて製造したものを挙げることができる。このとき、前記カーボネートとしては、ジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネート、環状エチレンカーボネートなどを用いることができる。
【0036】
本発明の放熱部に用いられる熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂の含量は、ポリカーボネート樹脂及び酸化マグネシウム微粒子100重量%に対して、30〜80重量%で含まれるのが好ましい。前記範囲で含まれる場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物から製造された放熱部は、透光部との接着性が優れ、適切な流動性及び粘度を確保して共押出時の成形性が十分に確保される。
【0037】
(B)酸化マグネシウム(MgO)微粒子
本発明において、放熱部に用いられる熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、LED素子の光源から排出される熱を効果的に外部に伝達するために、酸化マグネシウム微粒子を熱伝導性絶縁充填材として用いることが好ましい。
【0038】
酸化マグネシウム微粒子は、これを含む熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の熱拡散度及び流動性の観点で、球形粒子であるのが好ましい。球形の酸化マグネシウム微粒子は電気絶縁性を有しながら、樹脂組成物の成形方向に対して水平方向だけでなく、垂直方向への熱伝導性が優れるため、方向性に関わらず樹脂組成物の熱伝導性が著しく優れる。本発明において、前記球形の酸化マグネシウム微粒子は、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の流動性の確保及び他の物性とのバランスを考慮し、平均粒子直径が30〜80μmのものを用いるのが好ましく、40〜60μmの平均粒子直径を有する球形の酸化マグネシウム微粒子を用いるのがより好ましい。
【0039】
熱伝導性が高い絶縁樹脂組成物で放熱部を製造するためには、熱伝導性樹脂組成物に含まれる球形の酸化マグネシウムの含量を高めるべきだが、充填材の含量が増加すると樹脂組成物の粘度が高くなって、樹脂組成物の押出及び射出成形性が損なわれ、機械的強度が低下し得る。
【0040】
このような観点から、本発明の放熱部に用いられる熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる酸化マグネシウム微粒子の含量は、ポリカーボネート樹脂及び酸化マグネシウム微粒子100重量%に対して、20〜70重量%で含まれるのが好ましい。前記範囲で含まれる場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物から製造された放熱部は透光部との接着性が優れ、適切な流動性及び粘度を確保して、共押出時の成形性が十分に確保されることができる。
【0041】
[透光部の構成:透明性ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明において、透光部は透明性ポリカーボネート樹脂組成物を用いることができる。
【0042】
(A)ポリカーボネート(PC)樹脂
ポリカーボネート樹脂は、本来的に透明性と衝撃強度が優れるため、LEDランプハウジングの透光部に用いるに好適である。
【0043】
本発明の透明性ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂についての説明は、前記の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物で前述した通りであるので、省略する。
【0044】
(C)光拡散剤
本発明では、透光部の光透過性及び光拡散性を増大させるために、透明性ポリカーボネート樹脂組成物に、光拡散剤として、アクリル系光拡散剤、シリコン系光拡散剤、またはこれらの混合物を含むことがんでもよい。
【0045】
(C1)アクリル系光拡散剤
アクリル系光拡散剤は、本発明の透光部に用いられる透明性ポリカーボネート樹脂組成物の光透過性及び光拡散性を増大させることができる。
【0046】
前記アクリル系光拡散剤は、1種以上の(メタ)アクリル系単量体の重合体、共重合体またはこれらの混合物が好ましい。
【0047】
前記アクリル系光拡散剤は、線型構造で重量平均分子量が5,000〜300,000g/molであり、屈折率が1.480〜1.495であるのが好ましい。
【0048】
前記(メタ)アクリル系単量体の例としては、特に制限されないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレートなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル系単量体は、単独または2種以上の混合物で用いてもよい。
【0049】
アクリル系光拡散剤は、通常の塊状、乳化及び懸濁重合法によって製造することができ、これら方法は本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に広く知られている。
【0050】
本発明において、アクリル系光拡散剤は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1〜2重量部で含まれるのが好ましい。前記範囲で含まれる場合、透明性ポリカーボネート樹脂組成物の光透過性及び光拡散性が優れ、優れた衝撃強度を保持することができる。
【0051】
(C2)シリコン系光拡散剤
シリコン系光拡散剤は、本発明の透光部に用いられる透明性ポリカーボネート樹脂組成物の光透過性及び光拡散性を増大させることができる。
【0052】
シリコン系光拡散剤は、無機微粒子よりなる光拡散剤であって、ポリオルガノシルセスキオキサン(polyorganosilsesquioxane)を主成分として含んでよい。前記ポリオルガノシルセスキオキサンは、シリコン系光拡散剤全量に対して、50〜100重量%で含まれてもよい。ポリオルガノシルセスキオキサンの具体的な例としては、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、ポリブチルシルセスキオキサンなどを挙げることができ、この中でポリメチルシルセスキオキサンを用いるのが好ましい。
【0053】
本発明において、シリコン系光拡散剤は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部で含まれるのが好ましい。前記範囲で含まれる場合、透明性ポリカーボネート樹脂組成物の光透過性及び光拡散性が優れ、優れた衝撃強度を保持することができる。
【0054】
(D)難燃剤
本発明の放熱部と透光部に用いられるそれぞれの熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物及び透明性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性を改善するために選択的に難燃剤をさらに含むことができる。難燃剤としては、公知の難燃剤を制限無しに用いることができるが、フッ素化ポリオレフィン系樹脂、スルホン酸金属塩系化合物、またはこれらの混合物を用いるのが好ましい。
【0055】
前記フッ素化ポリオレフィン系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体などを挙げることができる。これらは互いに独立で用いてもよく、互いに異なる2種以上を併用することもできる。この中で、ポリテトラフルオロエチレンを用いるのが最も好ましい。
【0056】
前記スルホン酸金属塩系化合物は、芳香族スルホン酸金属塩、脂肪族スルホン酸金属塩、またはこれらの混合物を用いることができる。この中で、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムを用いるのが最も好ましい。難燃剤は、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の機械的物性を阻害しなく、透光部と放熱部との接合性の確保の側面から、ポリカーボネート樹脂及び酸化マグネシウム微粒子100重量部に対して、0.05ないし3重量部で含まれるのが好ましく、透明性ポリカーボネート樹脂組成物の場合、透明性ポリカーボネート樹脂組成物の光透過性、光拡散性及び機械的物性を阻害せず、透光部と放熱部との接合性の確保の側面から、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.05〜3重量部で含まれるのが好ましい。
【0057】
(E)その他の添加剤
本発明の放熱部と透光部に用いられるそれぞれのポリカーボネート樹脂組成物には、熱伝導性、光透過性及び光拡散性を阻害しない範囲で物性を向上させるため、任意に酸化防止剤、滑剤、難燃剤、熱安定剤、無機物添加剤、顔料、染料、またはこれらの混合物が添加剤としてさらに含むことができる。添加剤は、本発明において、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の場合、ポリカーボネート樹脂及び酸化マグネシウム微粒子100重量部に対して0.1〜5重量部で含まれるのが好ましく、透明性ポリカーボネート樹脂組成物の場合、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部で含まれるのが好ましい。
【0058】
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物から製造された放熱部のASTM E1461規定により測定した熱伝導性が、成形方向に対して水平方向には0.5W/mK以上であり、垂直方向には0.4W/mK以上であることを特徴とする。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、放熱部の表面積を増大させて放熱効果を改善するため、放熱部の内側面または外側面に放熱フィンを形成したり、溝を形成したりするなど、表面積を増大させる公知技術を多様に適用することができる。本発明は、LEDランプハウジングの内部にLED素子を配置し、ハウジングの両先端に接触ピンが設けられたベースを結合して製造されたチューブ状LEDランプを提供することができる。
【0060】
《LEDランプハウジングの製造方法》
本発明の一実施形態によれば、LEDランプハウジングは、第1の投入口を備えた第1の押出機と第2の投入口を備えた第2の押出機とを有する共押出機の第1の投入口に熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を投入し、第2の投入口に透明性ポリカーボネート樹脂組成物を投入して、240〜350℃に加熱された第1の押出機及び第2の押出機内でそれぞれ溶融/混練させた後、第1の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を放熱部の形態を有するダイの一面に投入し、第2の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を透光部の形態を有するダイの他面に投入して、ダイ内で放熱部と透光部とを接合して一体に形成するように製造することができる。
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
[各成分の仕様]
本発明の実施例及び比較例で用いられた各成分の仕様は次のようである。
【0063】
(A)ポリカーボネート(PC)樹脂
韓国第一毛織株式会社製のポリカーボネート樹脂(製品名:SC−1080)を用いた。
【0064】
(A’)ポリフェニレンスルファイド(PPS)樹脂
中国四川得陽化学有限公司(Sichuan Deyang Chemical Co., Ltd)製のポリフェニレンサルファイド樹脂(製品名:PPS−hb DL)を用いた。
【0065】
(A”)ポリアミド(PA)樹脂
旭化成株式会社製のポリアミド樹脂(製品名:Leona−1200)を用いた。
【0066】
(B)酸化マグネシウム(MgO)微粒子
平均粒子直径が50μmである球形の酸化マグネシウム微粒子を用いた。
【0067】
(B’)アルミナ(Al)微粒子
電気化学工業株式会社製の平均粒子直径が50μmである球形のアルミナ微粒子を用いた。
【0068】
(C)シリコン系光拡散剤
ポリメチルシルセスキオキサンを80重量%含むシリコン系光拡散剤を用いた。
【0069】
(D)難燃剤
(D1)スルホン酸金属塩系化合物
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(KPBS)を用いた。
【0070】
(D2)フッ素化ポリオレフィン系樹脂
3M社製のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂であるMM5935EFを用いた。
【0071】
[物性の評価方法]
(1)熱伝導性(W/mK):ASTM E1461に規定された方法により測定した。
【0072】
(2)難燃度(UL94難燃等級):UL94に準じて1.5mm厚さの試片に対して難燃度を評価した。
【0073】
(3)接合性(外見の点数):共押出を通じて放熱部と透光部とが一体に形成されたLEDランプハウジング成形品10個の外見をそれぞれ肉眼で評価して下記の基準によって点数を付与した後、平均を求めた。
(非常に優秀:5〜4、優秀:3、普通:2、悪い:1、非常に悪い:0)
[実施例1〜6及び比較例1〜5]
下記表1の含量によって各構成成分を添加し、240〜350℃に加熱された二軸溶融押出機内で溶融/混練させて、ペレット状態の放熱部を製造するための熱伝導性樹脂組成物及び透光部を製造するための透明性樹脂組成物をそれぞれ製造した。
【0074】
このように得られたペレットを100〜130℃の温度で5時間以上乾燥させた後、240〜330℃に加熱されたスクリュー式射出機を用いて物性評価用試片を製造した。
【0075】
また、放熱部と透光部とが一体に形成された共押出成形品を製造するため、放熱部を製造するためのペレット状態の熱伝導性樹脂組成物及び透光部を製造するためのペレット状態の透明性樹脂組成物をそれぞれ用意した。第1の投入口を備えた第1の押出機と第2の投入口を備えた第2の押出機とからなる共押出機の第1の投入口にペレット状態の熱伝導性樹脂組成物を投入し、第2の投入口にペレット状態の透明性樹脂組成物を投入した後、240〜350℃に加熱された第1の押出機及び第2の押出機内でそれぞれ溶融/混練させた。その後、第1の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を放熱部の形態を有するダイの一面に投入し、第2の押出機を通過した溶融/混練された樹脂組成物を透光部の形態を有するダイの他面に投入して、ダイ内で接合及び一体成形して放熱部と透光部とが一体に成形されたLEDランプハウジング成形品を製造した。
【0076】
下記表1において、(A)及び(B)の量は(A)及び(B)の全体100重量%に対して重量%で表したものであり、(C)の量は(A)100重量部に対して重量部で表したものであり、(D1)及び(D2)の量は(A)及び(B)の全体100重量部に対して重量部で表したものである。(A’)及び(A”)の含量基準は(A)の含量基準と同一であり、(B’)の含量基準は(B)の含量基準と同一である。
【0077】
【表1】
【0078】
前記表1の結果から、本発明の組成による参考例1〜4ならびに実施例5および6の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃度、垂直/水平方向の熱伝導性、及び透明性ポリカーボネート樹脂組成物から形成された透光部との接合性のいずれについても優れることが分かる。参考例3のように、放熱部を製造するための熱伝導性樹脂組成物の基礎樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、比較例2のポリフェニレンスルファイド樹脂または比較例4のポリアミド樹脂に比べて、放熱部と透光部との接合性が優れることが分かる。また、熱伝導性絶縁充填材として酸化マグネシウム微粒子を用いた参考例3は、アルミナを用いた比較例1に比べて難燃度が優れ、垂直/水平方向の熱伝導性が著しく優れることが分かる。
【0079】
本発明の単純な変形ないし変更はこの技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に実施されることができ、このような変形や変更はすべて本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3