(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物本体の上に傾斜屋根部を有する屋根が設けられた建物に適用されるとともに、前記傾斜屋根部と建物本体の天井面材との間に形成された天井裏空間に設置される空調設備の設置構造であって、
前記建物本体は、屋外に面した非居住空間と、前記非居住空間に隣接する居住空間とを有し、
前記空調設備は、前記非居住空間から還気を取り込み、空調機器にて前記還気から空調空気を生成し、当該空調空気を前記居住空間に供給する設備であり、
前記天井裏空間のうち、軒先側となる前記非居住空間の天井裏空間に設置され、前記非居住空間の天井面材に設けられた天井開口部を通じて屋内空気が還気として導入される還気用チャンバと、
前記還気用チャンバから水平方向へ延びるように同還気用チャンバに一端が接続され、他端が空調機器に接続され、前記還気用チャンバに導入された還気を前記空調機器に送るための還気用ダクトと、
前記還気用チャンバと前記傾斜屋根部との間に設けられた断熱材と、
を備えていることを特徴とする空調設備の設置構造。
前記断熱材は、前記還気用チャンバの上面に接し、少なくとも前記還気用チャンバの上面全域を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空調設備の設置構造。
前記還気用チャンバは、前記傾斜屋根部の傾斜角度と略同じ傾斜角度を有する傾斜上面部を有し、該傾斜上面部に設けられた前記断熱材の上面も、前記傾斜屋根部と略同じ傾斜角度を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空調設備の設置構造。
前記天井面材の天井裏側には,前記還気用チャンバの設置箇所を除く全域に,天井部を断熱する断熱材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空調設備の設置構造。
前記天井面材の天井裏側には、前記天井開口部を囲うように支持フレームが設けられ、前記還気用チャンバの設置構造として、前記支持フレームの上に前記還気用チャンバが載置される構造を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空調設備の設置構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示す従来の構造では、還気用ダクト82が還気用チャンバ81から上方に延びるように、該還気用チャンバ81に接続されている。このため、還気用ダクト82を空調室内機に導くべく、同還気用ダクト82を水平方向に向けて略直角に曲げる必要がある。その場合、還気用ダクト82を屈曲させたことによってダクト径が絞られると、その屈曲部分で圧損が生じてしまう。そのため、還気用チャンバ81の上方には、圧損を少なくした状態で、還気用ダクト82を屈曲させるだけのスペースを確保しておく必要がある。
【0007】
その点、
図5に示すように、廊下85と屋外との間に部屋86が設けられた間取りであれば、廊下85の天井裏空間83は棟側寄りとなる。その場合、還気用ダクト82を屈曲させるだけのスペースを確保することは可能となる。
【0008】
ここで、建物の屋根が傾斜して傾斜屋根部87を有している場合、天井裏空間83は軒先側ほど狭くなっていく。そのため、例えば、廊下85が外壁を隔てて屋外に面するような間取りを想定すると、部屋86が間に介在する前述の間取りと比べ、廊下85の天井裏空間83はより狭くなっている。そのような天井裏空間83には、還気の流通に支障のない状態で還気用チャンバ81や還気用ダクト82を設置するスペースが確保できない、ということも考えられる。その結果、建物に全館空調システムを設置することができないとか、間取りプランの変更が必要になり所望の間取りを設定できない等の不都合が生じることも考えられる。
【0009】
このような問題は、廊下85が屋外に面する間取りを有し、かつその廊下85の天井裏に空調設備を設置するという前述の場合に限られるものではない。狭い天井裏空間83、つまり、還気の流通に支障のない状態で空調設備を設置するスペースが確保できない天井裏空間83に、空調設備を設置しようとする場合であれば、共通して生じ得る。
【0010】
そこで、本発明は、狭い天井裏空間でも還気用チャンバを好適に設置することができる空調設備の設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0012】
第1の発明である空調設備の設置構造は、建物本体の上に傾斜屋根部を有する屋根が設けられた建物に適用されるとともに、前記傾斜屋根部と建物本体の天井面材との間に形成された天井裏空間に設置される空調設備の設置構造であって、前記天井裏空間に設置され、前記天井面材に設けられた天井開口部を通じて屋内空気が還気として導入される還気用チャンバと、前記還気用チャンバから水平方向へ延びるように同還気用チャンバに一端が接続され、他端が空調機器に接続され、前記還気用チャンバに導入された還気を前記空調機器に送るための還気用ダクトと、前記還気用チャンバと前記傾斜屋根部との間に設けられた断熱材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
第1の発明によれば、還気用チャンバには、そこから水平方向に延びるように還気用ダクトが接続されているため、天井裏空間において、還気用チャンバの上方に還気用ダクトを設置するスペースを確保する必要がなくなる。このため、軒先側の狭くなった天井裏空間であっても、還気用チャンバを設置することができる。
【0014】
ただ、狭くなった天井裏空間に還気用チャンバを設置する構成を採用すると、還気用チャンバと傾斜屋根部との間が近接または両者が接することとなり、還気用チャンバ内を流通する還気に対して、傾斜屋根部を通じた外気温の影響を与えてしまうことが考えられる。特に、冬場は、屋内外の温度差により、室内温度の還気が流通する還気用チャンバ内に結露が発生してしまうという不都合がある。
【0015】
そこで、第1の発明では、還気用チャンバと傾斜屋根部との間に断熱材が設けられている。これにより、還気用チャンバを流通する還気に対する外気温の影響を低減し、チャンバ内に結露が発生することを抑制できる。
【0016】
第2の発明では、前記断熱材が、前記還気用チャンバの上面に接し、少なくとも前記還気用チャンバの上面全域を覆うように設けられている。
【0017】
第2の発明によれば、還気用チャンバのうち、傾斜屋根部に近接または接している上面全域が断熱材に覆われるとともに、その断熱材は当該上面に接しているため、断熱効果が高まり、還気に対する外気温の影響をより低減させることができる。
【0018】
第3の発明では、前記還気用チャンバは、その下面に、前記天井開口部を通じて還気を内部に導入する還気導入口を有し、前記断熱材は、前記還気用チャンバの下面を除く外面全域に設けられている。
【0019】
第3の発明によれば、還気用チャンバには下面を除く外面全域に断熱材が設けられているため、還気に対する外気温の影響をより一層低減させ、チャンバ内に結露が発生することの抑制効果を高めることができる。
【0020】
第4の発明では、前記傾斜屋根部は屋根下地部を含んで構成されており、前記還気用チャンバは、その上面に設けられた前記断熱材が前記屋根下地部から離間するように設置されている。
【0021】
第4の発明によれば、断熱材を備えた還気用チャンバが屋根下地部から離間して設けられていることにより、両者の間には空間が形成されることになる。その空間の存在によって、傾斜屋根部から断熱材への熱移動を抑制し、断熱材による断熱効果を高めることができる。
【0022】
また,この場合,還気用チャンバが屋根下地部から離間した状態で,その還気用チャンバの上面を母屋材に当接させて該母屋材に固定する構成を採用することが好ましい。かかる構成を採用することにより,屋根を構成する母屋材を利用して還気用チャンバを固定することが可能となり,還気用チャンバの設置を好適に行うことができる。そして,この還気用チャンバの固定には,母屋材と還気用チャンバとに当接する固定部材が用いられ,その固定部材は,同固定部材を通じた熱の移動を抑制するという観点から,非金属材料によって形成されていることが好ましい。
【0023】
第5の発明では、前記還気用チャンバは、前記傾斜屋根部の傾斜角度と略同じ傾斜角度となる傾斜上面部を有し、該傾斜上面部に設けられた前記断熱材の上面も、前記傾斜屋根部と略同じ傾斜角度を有している。
【0024】
第5の発明によれば、還気用チャンバの傾斜上面部に断熱材が設けられた状態でも、その断熱材の上面が前記傾斜屋根部と略同じ傾斜角度を有しているため、還気用チャンバをより軒先側の天井裏空間に設置しようとした場合に、還気用チャンバの上部と傾斜屋根部との干渉を極力避けることができる。これにより、還気用チャンバをより軒先側まで設置することが可能となり、還気用チャンバの設置箇所の自由度を高めることができる。例えば、廊下等の非居住空間が屋外に面した間取りには、還気用チャンバを軒先側の天井裏空間に設置することが求められるが、そのような要求にも応えることができる。
【0025】
第6の発明では,前記天井面材の天井裏側には,前記還気用チャンバの設置箇所を除く全域に,前記建物本体の天井部分を断熱する断熱材が設けられている。
【0026】
第6の発明によれば,建物本体の天井部分全体の断熱性を高めることができる。この場合,前記第3の発明を前提とすれば,天井面材の天井裏側と還気用チャンバの外面全域が断熱されることになって好適となる。
【0027】
第7の発明では、前記天井面材の天井裏側には、前記天井開口部を囲うように支持フレームが設けられ、前記還気用チャンバの設置構造として、前記支持フレーム上に前記還気用チャンバが載置される構造を有している。
【0028】
第7の発明によれば、還気用チャンバの設置構造として、該チャンバを載置する支持フレームを有することから、その支持フレームの高さ寸法を調整することにより、還気用チャンバの上下方向の設置位置を変更することができる。例えば、傾斜屋根部を構成する母屋材に還気用チャンバを当接させて、還気用チャンバを母屋材に固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、鉄骨ラーメン構造を有する2階建てのユニット式建物において本発明の空調設備設置構造を具体化している。まず、建物の構成について、
図3を参照しつつ説明する。
図3は建物10の概要を示す正面図であり、天井裏空間19については概略縦断面を示している。
【0031】
この
図3に示すように、住宅等の建物10は、基礎11の上に設けられた建物本体12と、建物本体12の上に設けられた屋根13とを備えている。建物10は、上階部としての一階部分14と下階部としての二階部分15とを有しており、一階部分14と二階部分15とは上下に重ねられている。一階部分14及び二階部分15においては、屋内空間が仕切られることでリビングやキッチン、寝室等の居住空間21〜24、廊下等の非居住空間25が複数設けられている。そして、特にこの実施形態では、二階部分15における非居住空間25の壁部が屋外に面した間取りとなっている。
【0032】
屋根13は、寄棟式の屋根13とされており、複数の傾斜屋根部16を有している。各傾斜屋根部16は、棟から軒先に向けて下方に傾斜しており、その傾斜角度が屋根勾配になっている。建物本体12の上には、屋根13を下方から支持する束17が立設されている。束17は、水平方向において建物本体12の中央寄りの位置に配置されており、屋根13における棟部分又は棟寄りの部分を支持している。また、
図3では図示が省略されているが、建物本体12の上において束17よりも軒側には屋根ブラケット18(後述の
図1を参照)が設けられており、その屋根ブラケット18は、屋根13における軒先寄りの部分を下方から支持している。
【0033】
建物本体12と屋根13との間には天井裏空間19が形成されている。天井裏空間19の高さ寸法は、棟の下方位置が最も大きく、軒に向けて徐々に小さくなっていく。なお、天井裏空間19は、建物最上階である二階部分15の屋根裏空間と称することもできる。
【0034】
建物本体12は、複数の建物ユニット30が互いに連結されることにより構成されている。建物ユニット30は、工場にてあらかじめ製造され、その後、トラック等により建築現場に運搬される。
【0035】
建物ユニット30は、従来から存在する一般に知られた構成を有する。
図2は、建物ユニット30の平面図の一部を示した図であるが、この
図2を参照しつつ説明する。建物ユニット30は、四隅に配置された柱31と、柱31の上端部(上仕口)に連結された天井大梁32と、柱31の下端部(下仕口)に連結された床大梁とを有している。それら柱31、天井大梁32、床大梁により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱31は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁32及び床大梁は断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部開放側を互いに向き合わせるようにユニット内側に向けて配置されている。
【0036】
建物ユニット30において長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁32の間には、所定間隔で複数の天井小梁33が架け渡されている。同じく床大梁の間には、所定間隔で複数の床小梁が架け渡されている。天井小梁33及び床小梁は、それぞれ同一の間隔で且つ短辺側(妻側)の天井大梁32及び床大梁と平行に延びている。天井小梁33及び床小梁はそれぞれリップ溝形鋼よりなる。
【0037】
建物本体12は、上記の建物ユニット30が複数並べて設置されるとともに、それら複数の建物ユニット30が互いに連結されることにより構成されている。なお、
図3では4個の建物ユニット30の桁面が示されている。
【0038】
次に、本実施形態の建物10では、空調設備として、セントラル方式の全館空調システムが構築されている。全館空調システムは、空調を行うための空調空気を生成することが可能な空調室内機41を有している。空調機器としての空調室内機41は、階ごとに設けられ、二階部分15の空調を行うための空調室内機41は天井裏空間19に設置されている。空調室内機41は、居住空間24の屋内空気を、非居住空間25を通じて還気RAとして取り込む。その取り込みのため、非居住空間25の天井裏空間19に還気用チャンバ42が設けられ、還気用チャンバ42は還気用ダクト43を介して空調室内機41と接続されている。空調室内機41は、その還気RAから空調空気を生成し、その空調空気を二階部分15の居住空間24に供給する。
【0039】
前述したように、建物10では、二階部分15の非居住空間25が屋外に面した間取りとなっている。このため、二階部分15の複数の建物ユニット30のうち、還気用チャンバ42が設置された建物ユニット30Aは、その妻面の一方は他の建物ユニット30に接し、他方は外壁部を構成している。
【0040】
図1は、その建物ユニット30Aの天井裏空間内部を示す図である。この
図1を参照しつつ、屋根13の構造と、還気用チャンバ42の設置構造とを続いて説明する。
【0041】
図1に示すように、傾斜屋根部16は、棟から軒先に向けて下方に延びている垂木51と、垂木51の上に設けられた屋根下地部としての野地板52と、野地板52の上に設けられたアスファルトルーフィング53と、垂木51に対して直交している母屋材54とを有している。垂木51は、傾斜屋根部16の傾斜方向に沿って延びており、その傾斜角度は屋根勾配と同じにされている。また、垂木51は、断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部を側方に向けた状態で設置されている。母屋材54は、垂木51の長手方向に沿って所定間隔で複数並べられている。なお、垂木51及び母屋材54を含んで屋根構造体が形成されている。
【0042】
前記屋根ブラケット18は、建物ユニット30Aが有する天井大梁32のうち、軒側に位置する天井大梁32Aの上に設置されており、垂木51を下方から支持している。また、建物ユニット30Aの天井大梁32や天井小梁33には、野縁等の天井下地材(図示略)を介して天井面材34が取り付けられている。そのため、天井裏空間19は、天井面材34と傾斜屋根部16との間に設けられている。天井面材34の上には、その略全域にわたってグラスウール等の断熱材35が敷き詰められるとともに、天井大梁32の溝内にも断熱材35が設けられ、二階部分15の天井側での断熱が確保されている。
【0043】
建物ユニット30Aは、屋外に面する非居住空間25とそれに隣接する居住空間24の一部を形成しているため(前記
図3も参照)、軒先側の天井大梁32Aの下には外壁部36が設置されている。また、非居住空間25と居住空間24とを仕切る内壁部37は、天井小梁33の下に設けられている。
【0044】
前記還気用チャンバ42は、天井裏空間19のうち、非居住空間25の上方で、かつ空間がより狭くなった軒先側に設置されている。より詳しく言えば、還気用チャンバ42は、軒先側の天井大梁32Aと、それに隣接する天井小梁33Aとの間の天井裏空間19に設置されている。
【0045】
その設置部分となる、天井大梁32Aと天井小梁33Aとの間において、天井面材34には天井開口部38が設けられている。天井開口部38が設けられた箇所、つまり非居住空間25の天井部には、非居住空間25の空気を還気RAとして取り込む際の導入口となる還気グリル61が設けられている。天井面材34を挟んで、還気グリル61の反対側(天井裏側)には、天井開口部38を囲うように支持フレーム62が設置されている。支持フレーム62は四角枠状に形成され、天井面材34の上に載置された状態で、天井面材34、天井大梁32A及び天井小梁33Aに取り付けられている。支持フレーム62の枠内は、還気グリル61を通じて取り込まれた還気RAが通過する還気流通部63となっている。
【0046】
図2は、支持フレーム62を設置した状態の建物ユニット30Aだけを個別に図示したものである。この
図2に示すように、天井面材34の天井裏側全体に設けられた前記断熱材35は、支持フレーム62が設置された部分を除くすべての領域に設置されている。支持フレーム62の外側側面のうち、一側面は天井小梁33に当接しているが、他の三つの側面には断熱材35が隙間なく接した状態となっている(
図1参照)。天井小梁33と接する部分に関しても、天井小梁33の上に被さるまで断熱材35が設けられているため、この部分でも断熱は確保されている。
【0047】
図1に戻り、支持フレーム62の上には、還気用チャンバ42が載置されている。還気用チャンバ42は金属材料よりなる板材が箱型形状の外形をなすように成形され、内側はチャンバ空間44となっている。還気用チャンバ42には、その下面に前記チャンバ空間44へ通じる還気導入口45が設けられ、棟側の側面に設けられたダクト接続口46に還気用ダクト43の一端が接続されている。還気用ダクト43は、還気用チャンバ42からいったん水平方向に向けて延びるようにその還気用チャンバ42に接続されている。
【0048】
還気用チャンバ42の還気導入口45の周縁部と、支持フレーム62との間には、例えば発砲エチレンプロピレンゴム(発砲EPDM)等のゴム系樹脂材料を素材とするシール部材64が設けられ、両者の間に介在している。シール部材64は、還気用チャンバ42の重みで圧縮されることによりシール機能を発揮し、還気導入口45の周縁部と支持フレーム62との間の気密性が確保されて、還気RAの漏れが防止されるようになっている。
【0049】
ここで、還気用チャンバ42の上面71は、傾斜上面部72と水平上面部73とを有する構成となっている。傾斜上面部72は、棟から軒先に向けて下方に傾斜しており、傾斜屋根部16の傾斜と同じその傾斜角度となっている。還気用チャンバ42には、その下面を除く外面全域に、発砲ポリスチレン等を素材とするチャンバ用断熱材47が設けられている。チャンバ用断熱材47は、還気用チャンバ42の外面に貼り付けるようにして取り付けられている。このチャンバ用断熱材47によって、還気用チャンバ42の断熱性が確保されている。チャンバ用断熱材47が取り付けられた状態でも、還気用チャンバ42の外形はもとの還気用チャンバ42と同一形状をなしており、傾斜上面部72Aと水平上面部73Aを有している。
【0050】
図2に示すように、支持フレーム62は、垂木51と直交する方向の寸法として、垂木51間に納まる寸法を有する。このため、支持フレーム62の上に載置された断熱材47付きの還気用チャンバ42(
図2では図示略)についても、垂木51間に納まる寸法を有することとなる。なお、
図2における垂木51は、支持フレーム62の両側に配置されるものだけを示している。
【0051】
図1に戻り、断熱材47付きの還気用チャンバ42は、傾斜上面部72Aの傾斜上端側が母屋材54の下面に当接して設置されている。傾斜上面部72Aと水平上面部73Aとの稜線部分は母屋材54の棟側側面55の下端縁に合致し、前記稜線部分を境にして、棟側側面55と水平上面部73Aとが接続されている。
【0052】
その上で、棟側側面55及び水平上面部73Aには、両者にまたがる固定部材65が設けられ、この固定部材65により、断熱材47付きの還気用チャンバ42が母屋材54に固定されている。固定部材65は、樹脂等の非金属材料により形成され、板状部材がくの字状に曲げられた形態を有している。固定部材65は、第1板状部66と第2板状部67とを有している。
【0053】
第1板状部66は、裏側の当接面全体が断熱材47付きの還気用チャンバ42の水平上面部73Aに当接し、該還気用チャンバ42にビス68で固定されている。第2板状部67は、母屋材54の棟側側面55と同じ傾斜角度を有しており、裏側の当接面全体が棟側側面55に当接した状態で、母屋材54にビス68で固定されている。このような固定部材65が、母屋材54の延びる方向に沿って複数設けられ、断熱材47付きの還気用チャンバ42が母屋材54に固定されている。
【0054】
還気用チャンバ42は以上のような構成で、天井裏空間19に設置されている。そして、かかる構成において、居住空間21〜24より非居住空間25に集められた還気RAは、還気グリル61、支持フレーム62の還気流通部63、還気用チャンバ42の還気導入口45を通じてチャンバ空間44内に取り込まれる。そこからさらに、還気RAは還気用ダクト43内を通過し、空調室内機41に導入される。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0056】
還気用チャンバ42には、そこから水平方向に延びるように還気用ダクト43が接続されている。これにより、天井裏空間19において、還気用チャンバ42の上方に還気用ダクト43を設置するスペースを確保する必要がない。そうすると、従来のように還気用ダクト43を略垂直に屈曲させる必要もなくなる。このため、屋外に面した非居住空間25の天井裏という、軒先側寄りの狭くなった天井裏空間19であっても、還気用チャンバ42を設置することができる。
【0057】
そして、狭くなった天井裏空間19に還気用チャンバ42を設置したため、還気用チャンバ42と傾斜屋根部16との間が近接している。そのため、還気用チャンバ42を流通する還気RAが外気温の影響を受け、特に、冬場は、屋内外の温度差から、還気用チャンバ42内が結露してしまうという不都合がある。この点、還気用チャンバ42には、その下面を除く外面全域にチャンバ用断熱材47が設けられている。これにより、還気用チャンバ42と傾斜屋根部16との間で断熱が確保されるため、還気RAに対する外気温の影響を低減し、結露の発生を抑制できる。
【0058】
また、チャンバ用断熱材47を備えた還気用チャンバ42は、傾斜屋根部16の野地板52から離間して設けられている。そのため、還気用チャンバ42と野地板52との間には空間が形成されている。その空間の存在によって、傾斜屋根部16からチャンバ用断熱材47への熱移動が抑制され、チャンバ用断熱材47による断熱効果を高めることができる。
【0059】
還気用チャンバ42は、傾斜屋根部16の傾斜角度と略同じ傾斜角度を有する傾斜上面部72を有している。そして、チャンバ用断熱材47が設けられた状態でも、傾斜屋根部16と略同じ傾斜角度を有する傾斜上面部72Aが形成されている。そのため、還気用チャンバ42の上部と傾斜屋根部16との干渉が極力避けられる。本実施形態の建物10のように非居住空間25が屋外に面した間取りであっても、その天井裏空間19に還気用チャンバ42を設置することができている。
【0060】
還気用チャンバ42の設置構造として、天井面材34の天井裏側に設けられた支持フレーム62に還気用チャンバ42を載置する構造を有している。このため、支持フレーム62の高さ寸法を調整することにより、還気用チャンバ42の上下方向の設置位置を変更することができる。この実施形態では、支持フレーム62の存在により、断熱材47付きの還気用チャンバ42を母屋材54に当接させ、還気用チャンバ42を母屋材54に固定することが可能となっている。
【0061】
そして、この固定部材65は樹脂等の非金属材料により形成されているため、傾斜屋根部16からチャンバ用断熱材47への熱伝達を軽減させることができる。
【0062】
また、支持フレーム62の高さ寸法を調整すれば、還気用チャンバ42の設置箇所が異なる建物であっても、この実施形態の還気用チャンバ42をそのまま利用して、母屋材54に固定するという設置構造を採用することができる。これにより、還気用チャンバ42の汎用性を高め、設置箇所の自由度を高めることもできる。
【0063】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、還気用チャンバ42に設けられたチャンバ用断熱材47は、下面を除く外面全域に設けられているが、少なくとも上面71に設けられていればよい。ただ、還気用チャンバ42の断熱性を十分に確保するためには、この実施形態の構成を採用することが好ましい。
【0064】
(2)上記実施形態では、還気用チャンバ42の外面に当接するようにチャンバ用断熱材47が設けられているが、還気用チャンバ42の外面とチャンバ用断熱材47とが離間した構成を採用してもよい。つまり、還気用チャンバ42と傾斜屋根部16との間に断熱材が介在する構成が少なくとも確保されていればよい。
【0065】
(3)上記実施形態では、還気用チャンバ42は四角形の箱状をなす形態を有し、その上面71は傾斜上面部72と水平上面部73とを有しているが、他の形態を採用してもよい。例えば、
図4に還気用チャンバ42の別例を示す。この還気用チャンバ76は、水平上面部73が省略され、底面に至るまで傾斜上面部77が形成されている。かかる構成であれば、より軒先寄りの狭くなった天井裏空間19にも、この還気用チャンバ76を設置することが可能となる。
【0066】
(4)上記実施形態では、還気用チャンバ42は支持フレーム62に載置された構成となっているが、例えば、天井面材34の天井裏側に直接載置した構成など、この支持フレーム62を省略した構成を採用してもよい。
【0067】
(5)上記実施形態では、支持フレーム62の一側面を天井小梁33Aに当接させた状態でその支持フレーム62を設置しているが、これを天井大梁32A側に寄せて設置してもよい。その構成では、天井小梁33Aと支持フレーム62との間に隙間が形成されるため、その部分まで断熱材35を延長させて設けることが可能となる。
【0068】
(6)上記実施形態では、天井裏空間19のうち、非居住空間25の上方に還気用チャンバ42が設置されているが、居住空間24の上方に設置される構成を採用してもよい。もっとも、かかる構成では、還気RAの吸込音が居住空間24に発生するため、本実施形態のように非居住空間25の上方に設置することが好ましい。
【0069】
(7)上記実施形態では、非居住空間25が屋外に面して軒先側に配置された間取りを有する建物10への適用例を説明したが、もちろん、非居住空間25が棟側に存在する間取りを有する建物にも適用することができる。例えば、傾斜屋根部16の傾斜角度が小さく、棟側であっても天井裏空間19が狭くなっている建物であれば、本発明を適用する上で好適である。このように、本実施形態の設置構造であれば、還気用チャンバ42を棟側寄りから軒先側寄りまで設置することが可能となり、還気用チャンバ42の設置箇所の自由度を高めることができる。
【0070】
(8)上記実施形態では、複数の建物ユニット30が組み合わされてなるユニット式建物に適用した構成を示したが、鉄骨軸組工法や木造在来工法によって立てられた建物に適用してもよい。また、二階建ての建物10ではなく、三階建てや平屋建ての建物に適用してもよい。