特許第6368196号(P6368196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368196降圧DC/DCコンバータおよびそのコントロールIC、オフィス用通信機器、電動自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368196
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】降圧DC/DCコンバータおよびそのコントロールIC、オフィス用通信機器、電動自転車
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20180723BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180723BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20180723BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20180723BHJP
   H03K 17/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H02M3/155 S
   H01L27/06 311C
   H01L29/91 L
   H03K17/687 A
   H03K17/06 063
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-174618(P2014-174618)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-51739(P2016-51739A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松木 武
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 伸也
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−096982(JP,A)
【文献】 特開2014−036543(JP,A)
【文献】 特開2009−095214(JP,A)
【文献】 特開2013−118739(JP,A)
【文献】 特開2014−050032(JP,A)
【文献】 特開2013−038930(JP,A)
【文献】 特開2010−161903(JP,A)
【文献】 特開2013−106371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 29/861
H01L 29/868
H02M 3/155
H03K 17/06
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード整流型の降圧DC/DCコンバータのコントロールIC(Integrated Circuit)であって、
入力電圧を受ける入力端子と、
インダクタが接続されるとともに整流ダイオードのカソードが接続されるスイッチング端子と、
前記整流ダイオードのアノードが接続される接地端子と、
前記入力端子と前記スイッチング端子の間に設けられたNチャンネルDMOS型のスイッチングトランジスタと、
前記スイッチング端子と前記接地端子の間に直列に設けられた第1ダイオードおよびNチャンネルDMOS型のローサイドトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタをスイッチングするハイサイドドライバと、
前記ローサイドトランジスタをスイッチングするローサイドドライバと、
備えることを特徴とするコントロールIC。
【請求項2】
前記第1ダイオードは、ゲートおよびバックゲートが前記ローサイドトランジスタのドレインと接続されたPチャンネルDMOS型のトランジスタを含むことを特徴とする請求項1に記載のコントロールIC。
【請求項3】
前記第1ダイオードは、前記コントロールICが集積化される半導体基板に対して寄生素子を有しないように構成されることを特徴とする請求項1に記載のコントロールIC。
【請求項4】
前記第1ダイオードは、前記ローサイドトランジスタよりも高電位側に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコントロールIC。
【請求項5】
ブートストラップ端子と、
所定の電圧レベルの内部電圧を生成する内部レギュレータと、
前記内部レギュレータの出力と前記ブートストラップ端子の間に設けられた第2ダイオードと、
をさらに備え、
前記ハイサイドドライバの上側の電源端子には、前記ブートストラップ端子の電圧が供給されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコントロールIC。
【請求項6】
24V系よりも高い入力電圧を受けることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のコントロールIC。
【請求項7】
前記降圧DC/DCコンバータの出力電圧に応じた検出電圧が入力される検出端子と、
前記検出電圧と所定の基準電圧の誤差を増幅して誤差信号を生成するエラーアンプと、
前記誤差信号を受け、前記誤差がゼロに近づくようにデューティ比が調節されるパルス変調信号を生成するデューティコントローラと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のコントロールIC。
【請求項8】
ダイオード整流型の降圧DC/DCコンバータのコントロールIC(Integrated Circuit)であって、
入力電圧を受ける入力端子と、
インダクタが接続されるとともに整流ダイオードのカソードが接続されるスイッチング端子と、
前記整流ダイオードのアノードが接続される接地端子と、
前記入力端子と前記スイッチング端子の間に設けられたNチャンネルDMOS型のスイッチングトランジスタと、
ソースが前記接地端子と接続されたNチャンネルDMOS型のローサイドトランジスタと、
前記スイッチング端子と前記ローサイドトランジスタのドレインの間に挿入され、前記ローサイドトランジスタのドレイン電圧が負方向にスイングするのを抑制する電圧制限素子と、
前記スイッチングトランジスタをスイッチングするハイサイドドライバと、
前記ローサイドトランジスタをスイッチングするローサイドドライバと、
備えることを特徴とするコントロールIC。
【請求項9】
前記電圧制限素子は、第1ダイオードを含むことを特徴とする請求項8に記載のコントロールIC。
【請求項10】
前記電圧制限素子は、ゲートおよびバックゲートが前記ローサイドトランジスタのドレインと接続されたPチャンネルDMOS型のトランジスタを含むことを特徴とする請求項8に記載のコントロールIC。
【請求項11】
前記電圧制限素子は、前記コントロールICが集積化される半導体基板に対して寄生素子を有しないことを特徴とする請求項8に記載のコントロールIC。
【請求項12】
前記電圧制限素子は、フローティングMOSFETを含むことを特徴とする請求項8に記載のコントロールIC。
【請求項13】
ダイオード整流型の降圧DC/DCコンバータであって、
請求項1から12のいずれかに記載のコントロールICと、
負荷が接続される出力ラインと、
前記コントロールICの前記スイッチング端子と前記接地端子の間に設けられた整流ダイオードと、
前記出力ラインと接続される出力キャパシタと、
前記出力ラインと前記スイッチング端子の間に設けられたインダクタと、
を備えることを特徴とする降圧DC/DCコンバータ。
【請求項14】
請求項13に記載の降圧DC/DCコンバータを備えることを特徴とするオフィス用通信機器。
【請求項15】
請求項13に記載の降圧DC/DCコンバータを備えることを特徴とする電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
ある電圧レベルの電源電圧VCCが供給される電子機器あるいはシステムにおいて、その内部の回路の動作電圧が電源電圧VCCよりも低い場合、降圧DC/DCコンバータが利用される。
【0003】
図1は、本発明者らが検討した降圧DC/DCコンバータの回路図である。DC/DCコンバータ100rは、入力ライン102の入力電圧(電源電圧)VCCを受け、それを降圧し、所定の目標レベルに安定化された出力電圧VOUTを、出力ライン104に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0004】
DC/DCコンバータ100rは、出力回路106およびコントロール集積回路(コントロールIC)200rを備える。このDC/DCコンバータ100rは、ダイオード整流型であり、その出力回路106は、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、インダクタL1、出力キャパシタC1を含む。
【0005】
コントロールIC200rは、入力端子(VCC)、スイッチング端子(LX端子)、接地端子(GND)およびブートストラップ端子(BST)を有する。スイッチングトランジスタM1をコントロールIC200rに内蔵(集積化)する場合、回路面積を小さくするためにNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が利用される。スイッチングトランジスタM1のドレインは、VCC端子と接続され、そのソースはLX端子と接続される。
【0006】
出力電圧VOUTは、抵抗R1、R2により分圧され、フィードバックライン108を介してコントロールIC200rの電圧検出端子(VOUT)にフィードバックされる。エラーアンプ202は、フィードバックされた検出電圧Vと所定の基準電圧VREFの誤差を増幅する。デューティコントローラ204は、パルス幅変調器あるいはパルス周波数変調器、もしくはそれらの組み合わせで構成され、誤差がゼロに近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号S1を生成する。ハイサイドドライバ206は、パルス信号S1に応じて、スイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0007】
NチャンネルMOSFETであるスイッチングトランジスタM1をターンオンするためには、ハイサイドドライバ206は、スイッチングトランジスタM1のゲートに、電源電圧VCCよりも高い駆動電圧Vを印加する必要がある。かかる駆動電圧Vを生成するために、ブートストラップ回路が利用される。
【0008】
ブートストラップ回路は、ブートストラップキャパシタC2、ダイオードD2、ローサイドトランジスタM2、ローサイドドライバ208、内部レギュレータ210を含む。内部レギュレータ210は、電源電圧VCCを受け、それを降圧するリニアレギュレータを含み、安定化された内部電圧VREGを生成する。ダイオードD2は、内部レギュレータ210の出力とBST端子の間に設けられる。ブートストラップキャパシタC2は、LX端子とBST端子の間に設けられる。
【0009】
ローサイドトランジスタM2は、LX端子とGND端子の間に設けられる。デューティコントローラ204は、パルス変調信号S1と同期して、ローサイドトランジスタM2の制御信号S2を生成する。制御信号S2は、スイッチングトランジスタM1がオフである期間内の少なくとも一部においてローサイドトランジスタM2がターンオンするように生成される。
【0010】
スイッチングトランジスタM1がオフし、ローサイドトランジスタM2がオンすると、LX端子の電位が0Vとなる。このとき、ブートストラップキャパシタC2の一端(BST端子)は、ダイオードD2を介して内部レギュレータ210により充電される。ハイサイドドライバ206の上側の電源端子には、BST端子の電圧が供給される。
【0011】
ここで入力電源電圧VCCが48V程度の高いアプリケーションでは、スイッチングトランジスタM1やローサイドトランジスタM2として、60V程度の耐圧を有する高耐圧素子が利用され、こうした高耐圧素子としては、二重拡散構造を有するDMOS(Double-Diffused MOSFET)が用いられる。
【0012】
図2は、DMOS構造を有する半導体装置300の断面図である。P型半導体基板301上に、半導体層としてのN型エピタキシャル層302と、このN型エピタキシャル層302の周囲(側方)を取り囲む環状の分離領域としてのP型分離拡散領域303とが形成される。N型エピタキシャル層302の表層部には、ボディ領域としてのP型ボディ拡散領域304が形成される。P型ボディ拡散領域304の表層部には、ソース領域としてのN型ソース拡散領域305と、P型ボディーコンタクト領域306とが形成される。N型ソース拡散領域305およびP型ボディーコンタクト領域306は接地される。N型エピタキシャル層302の表層部には、ドレイン領域としてのドレイン拡散領域308が形成される。N型エピタキシャル層302の表面のゲート領域には、酸化膜層309が形成され、酸化膜層309の上にはゲート電極310(G)が形成される。P型半導体基板301とN型エピタキシャル層302の境界には、N型埋め込み拡散層314が形成される。
【0013】
P型分離拡散領域303は、P型半導体基板301に接続された下側分離拡散領域311と、その上に形成された上側分離拡散領域312を含む。上側分離拡散領域312は接地され、P型半導体基板301の電位は接地電圧(0V)に固定される。
【0014】
ローサイドトランジスタM2であるDMOSのドレイン(D)は、LX端子と接続され、そのソース(S)はGND端子と接続される。ローサイドトランジスタM2の周囲は、Nウェル縦構造を有するガードリング220で囲まれる。ガードリング220は、N型埋め込み拡散層222と、その上の拡散領域224、コンタクト領域226を含む。コンタクト領域226は、電源電圧VCCに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−095214号公報
【特許文献2】特開2011−211020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、図2のデバイス構造を有する半導体装置300について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0017】
ローサイドトランジスタM2のN型エピタキシャル層302と、P型半導体基板301と、ガードリング220のN型埋め込み拡散層222は、寄生バイポーラトランジスタ(NPN型)230を形成する。
【0018】
図1に戻る。電源電圧VCCが48V程度と大きなアプリケーションでは、整流ダイオードD1にも、高耐圧が要求される。一般に高耐圧のダイオード素子の順方向電圧Vfは、低耐圧のダイオードのそれよりも大きい。一例として高耐圧を有する整流ダイオードD1の順方向電圧Vfを0.9Vであり、低耐圧のダイオードの0.7V程度の順方向電圧よりも大きい。
【0019】
寄生トランジスタ230に着目する。寄生トランジスタ230のエミッタはLX端子と接続され、そのベースはP型半導体基板301と接続される。上述のようにP型半導体基板301の電位は0Vである。またスイッチングトランジスタM1がオフの期間、整流ダイオードD1のアノードからカソードに向かって電流が流れる。このときLX端子の電位は、−Vf=−0.9Vとなる。つまり寄生トランジスタ230のベースエミッタ間電圧は、0.9Vとなる。
【0020】
寄生トランジスタ230のベースエミッタ間電圧Vbeが0.7Vとすれば、スイッチングトランジスタM1がオフの期間、寄生トランジスタ230がターンオンする。これにより電源ライン、ガードリング220および寄生トランジスタ230を経由して、N型エピタキシャル層302に大電流が流れ、信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。なおこの問題を本発明の分野における共通の一般知識の範囲として捉えてはならない。
【0021】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、信頼性を高めたDC/DCコンバータのコントロールIC200の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のある態様は、ダイオード整流型の降圧DC/DCコンバータのコントロールIC(Integrated Circuit)に関する。コントロールICは、入力電圧を受ける入力端子と、インダクタが接続されるとともに整流ダイオードのカソードが接続されるスイッチング端子と、整流ダイオードのアノードが接続される接地端子と、入力端子とスイッチング端子の間に設けられたNチャンネルDMOS型のスイッチングトランジスタと、スイッチング端子と接地端子の間に直列に設けられた第1ダイオードおよびNチャンネルDMOS型のローサイドトランジスタと、スイッチングトランジスタをスイッチングするハイサイドドライバと、ローサイドトランジスタをスイッチングするローサイドドライバと、備える。
【0023】
この態様によると、スイッチング端子と接地端子の間に第1ダイオードを挿入したことにより、ローサイドトランジスタの周囲をガードリングで囲む必要がなくなる。これにより、入力端子、基板、スイッチング端子を経由する寄生トランジスタが見えなくなり、スイッチング端子の電位が負方向に大きくスイングしても、ローサイドトランジスタに対して大電流が流れるのを抑制でき、信頼性を高めることができる。
【0024】
ある態様において、順方向電圧の大きな整流ダイオードを用いてもよい。これにより降圧DC/DCコンバータのコストを下げることができる。
【0025】
第1ダイオードは、ゲートおよびバックゲートがローサイドトランジスタのドレインと接続されたPチャンネルDMOS型のトランジスタを含んでもよい。
【0026】
第1ダイオードは、コントロールICが集積化される半導体基板に対して寄生素子を有しないよう構成されてもよい。
【0027】
第1ダイオードは、ローサイドトランジスタよりも高電位側に設けられてもよい。
【0028】
ある態様のコントロールICは、ブートストラップ端子と、所定の電圧レベルの内部電圧を生成する内部レギュレータと、内部レギュレータの出力とブートストラップ端子の間に設けられた第2ダイオードと、をさらに備えてもよい。ハイサイドドライバの上側の電源端子には、ブートストラップ端子の電圧が供給されてもよい。
【0029】
コントロールICは、その入力端子に24V系よりも高い入力電圧を受けてもよい。
【0030】
ある態様のコントロールICは、降圧DC/DCコンバータの出力電圧に応じた検出電圧が入力される検出端子と、検出電圧と所定の基準電圧の誤差を増幅して誤差信号を生成するエラーアンプと、誤差信号を受け、誤差がゼロに近づくようにデューティ比が調節されるパルス変調信号を生成するデューティコントローラと、をさらに備えてもよい。
【0031】
本発明の別の態様も、ダイオード整流型の降圧DC/DCコンバータのコントロールICに関する。コントロールICは、入力電圧を受ける入力端子と、インダクタが接続されるとともに整流ダイオードのカソードが接続されるスイッチング端子と、整流ダイオードのアノードが接続される接地端子と、入力端子とスイッチング端子の間に設けられたNチャンネルDMOS型のスイッチングトランジスタと、ソースが接地端子と接続されたNチャンネルDMOS型のローサイドトランジスタと、スイッチング端子とローサイドトランジスタのドレインの間に挿入され、ローサイドトランジスタのドレイン電圧が負方向にスイングするのを抑制する電圧制限素子と、スイッチングトランジスタをスイッチングするハイサイドドライバと、ローサイドトランジスタをスイッチングするローサイドドライバと、備える。
この態様によると、電圧制限素子を挿入したことにより、ローサイドトランジスタのドレインが負電位となるのが抑制され、ローサイドトランジスタの周囲をガードリングで囲む必要がなくなる。これにより、入力端子、基板、スイッチング端子を経由する寄生トランジスタが見えなくなり、スイッチング端子の電位が負方向に大きくスイングしても、ローサイドトランジスタに対して大電流が流れるのを抑制でき、信頼性を高めることができる。
【0032】
電圧制限素子は、第1ダイオードを含んでもよい。電圧制限素子は、ゲートおよびバックゲートがローサイドトランジスタのドレインと接続されたPチャンネルDMOS型のトランジスタを含んでもよい。電圧制限素子は、フローティングMOSFETを含んでもよい。
【0033】
電圧制限素子は、コントロールICが集積化される半導体基板に対して寄生素子を有しないよう構成されてもよい。
【0034】
本発明の別の態様は、ダイオード整流型の降圧DC/DCコンバータに関する。降圧DC/DCコンバータは、上述のいずれかのコントロールICと、負荷が接続される出力ラインと、コントロールICのスイッチング端子と接地端子の間に設けられた整流ダイオードと、出力ラインと接続される出力キャパシタと、出力ラインとスイッチング端子の間に設けられたインダクタと、を備える。
【0035】
本発明の別の態様は、オフィス用通信機器あるいは電動自転車に関する。オフィス用通信機器あるいは電動自転車は、上述の降圧DC/DCコンバータを備える。
【0036】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0037】
本発明のある態様によれば、降圧DC/DCコンバータのコントロールICの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明者らが検討した降圧DC/DCコンバータの回路図である。
図2】DMOS構造を有する半導体装置の断面図である。
図3】実施の形態に係る降圧DC/DCコンバータの回路図である。
図4】コントロールICの出力段の回路図である。
図5】ローサイドトランジスタおよび第1ダイオードが集積化される半導体装置の断面図である。
図6図6(a)は、DC/DCコンバータを備えるオフィス用通信機器を示す図であり、図6(b)は、DC/DCコンバータを備える電動自転車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0040】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0041】
図3は、実施の形態に係る降圧DC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は、入力ライン102の入力電圧(電源電圧)VCCを受け、それを降圧し、所定の目標レベルに安定化された出力電圧VOUTを、出力ライン104に接続される負荷(不図示)に供給する。DC/DCコンバータ100の基本構成は図1のそれと同様であるため、説明を省略する。
【0042】
実施の形態に係るコントロールIC200は、入出力ピンとして、入力端子(VCC)、スイッチング端子(LX端子)、接地端子(GND)およびブートストラップ端子(BST)を有する。また、コントロールIC200はその内部に、スイッチングトランジスタM1、ローサイドトランジスタM2、第1ダイオードD11、第2ダイオードD12、エラーアンプ202、デューティコントローラ204、ハイサイドドライバ206、ローサイドドライバ208、内部レギュレータ210を備え、単一のパッケージを構成する。コントロールIC200の構成要素は、単一の半導体基板に集積化されてもよい。あるいはパワー系の素子の半導体製造プロセスと小電力系の素子の半導体製造プロセスが異なる場合、それらを複数の半導体基板に個別に集積化されてもよい。
【0043】
コントロールIC200のうち、エラーアンプ202、デューティコントローラ204、ハイサイドドライバ206、ローサイドドライバ208、内部レギュレータ210、第2ダイオードD12については、図1を参照してすでに説明した。
【0044】
コントロールIC200は、図1のコントロールIC200rに加えて、第1ダイオードD11をさらに備える。ローサイドトランジスタM2は、NチャンネルのDMOS型(以下、NDMOSと称する)トランジスタである。本実施の形態において、第1ダイオードD11とローサイドトランジスタM2は、LX端子とGND端子の間に直列に設けられる。第1ダイオードD11は、ローサイドトランジスタM2よりも高電位側、つまりLX端子側に挿入される。
【0045】
図4は、コントロールIC200の出力段の回路図である。たとえば第1ダイオードD11は、PチャンネルMOSトランジスタ(PMOSトランジスタとも称する)を含む。PMOSトランジスタのゲートおよびバックゲート(ボディ)は、ローサイドトランジスタM12のドレインと接続される。したがって第1ダイオードD11のボディダイオードのカソードは、ローサイドトランジスタM2のドレインと接続され、ボディダイオードのアノードはLX端子と接続される。
【0046】
第2ダイオードD12についても、第1ダイオードD11と同様に、PMOSトランジスタを利用して構成してもよい。BST端子とLX端子の間には、保護用のダイオードD21が挿入される。またVCC端子とGND端子の間には、保護用のダイオードD22が挿入される。ダイオードD21、D22の段数は、各端子に印加される電圧レベルを考慮して定めればよい。保護用のダイオードは、NチャンネルMOSFETを用いて構成される。
【0047】
図5は、ローサイドトランジスタM2および第1ダイオードD11が集積化される半導体装置400の断面図である。図5には、ローサイドトランジスタM2と第1ダイオードD11が示される。
【0048】
ローサイドトランジスタM2の構造は、図2と同様である。すなわちP型半導体基板401上に、半導体層としてのN型エピタキシャル層402が形成される。N型エピタキシャル層402の表層部には、ボディ領域としてのP型ボディ拡散領域404が形成される。P型ボディ拡散領域404の表層部には、ソース領域(S)としてのN型ソース拡散領域405と、P型ボディーコンタクト領域406とが形成される。N型ソース拡散領域405およびP型ボディーコンタクト領域406は接地される。
【0049】
N型エピタキシャル層402の表層部には、ドレイン領域としてのドレイン拡散領域408が形成される。N型エピタキシャル層402の表面のゲート領域には、酸化膜層409が形成され、酸化膜層409の上にはゲート電極410(G)が形成される。P型半導体基板401とN型エピタキシャル層402の境界には、N型埋め込み拡散層414が形成される。
【0050】
第1ダイオードD11は、PチャンネルのDMOS型トランジスタ(PDMOSという)を利用して構成される。N型エピタキシャル層402のPDMOSの位置には、P型拡散領域420が形成される。P型拡散領域420の表層部には、PDMOSの一端(便宜的にドレインと称する)としてのP型拡散領域422が形成される。またP型拡散領域420の表面のゲート領域には、酸化膜層424が形成され、酸化膜層424の上にはゲート電極426(G)が形成される。またP型拡散領域420には、N型ボディ拡散領域428が形成され、N型ボディ拡散領域428の表層には、ボディーコンタクト領域としてのN型ボディーコンタクト領域432(BG)と、PDMOSの他端(便宜的にソースと称する)としてのP型拡散領域430が形成される。
【0051】
ローサイドトランジスタM2であるNDMOSトランジスタのソース(S)およびバックゲート(BG)はGND端子と接続される。第1ダイオードD11であるPDMOSトランジスタのゲート(G)、バックゲート(BG)、ドレイン(D)は、ローサイドトランジスタM2のドレイン(D)と接続される。PDMOSトランジスタのソース(S)は、LX端子と接続される。かくして、P型拡散領域430をアノード、N型ボディ拡散領域428をカソードとする第1ダイオードD11(440)が形成される。
【0052】
以上が半導体装置400のデバイス構造である。続いてその利点を説明する。
【0053】
ローサイドトランジスタM2と直列に、第1ダイオードD11を挿入したことにより、LX端子の電位が負にスイングした場合であっても、ローサイドトランジスタM2のドレインが負方向にスイングするのが抑制される。これによりN型エピタキシャル層402の周囲を、図2に示したようなガードリング220で囲む必要が無くなる。その結果、図2に示した寄生トランジスタ230が存在しなくなるため、寄生トランジスタ230を介してローサイドトランジスタM2に大電流が流れ込み、信頼性が低下するのを防止できる。
【0054】
図5の構成においては、寄生トランジスタ230に代えて、N型エピタキシャル層402をエミッタ、P型半導体基板301をベース、図示しないN型領域をコレクタとする寄生トランジスタ442が存在しうる。ところが、第1ダイオードD11によってローサイドトランジスタM2のドレイン(D)が負方向に大きくスイングすることが抑制されるため、寄生トランジスタ442がターンオンすることもない。
【0055】
また第1ダイオードD11を、図5のようにPDMOSトランジスタを用いて構成した。これにより、第1ダイオードD11を、コントロールIC200が集積化される半導体基板401に対して寄生素子を有しないように構成することができる。つまり、第1ダイオードD11自体が、寄生トランジスタ442のドレインとなるのを防止できる。
【0056】
加えて、PDMOSトランジスタを用いることで第1ダイオードD11は高耐圧を有することとなり、VCC=24V系や48V系などのアプリケーションに利用可能となる。
【0057】
そして寄生トランジスタ442を介した電流は、LX端子の電位にかかわらず流れない。したがって整流ダイオードD1として順方向電圧Vfが大きな素子を使用することができる。このことは、整流ダイオードD1、ひいてはDC/DCコンバータ100のコスト低下に寄与することとなる。
【0058】
図3のコントロールIC200に関して、第1ダイオードD11は、ローサイドトランジスタM2のドレイン電圧が負方向にスイングするのを抑制する電圧制限素子として把握することができる。図3では、かかる電圧制限素子の一例として、ダイオード、特にPDMOSトランジスタを利用したダイオードを例示したが、当業者によれば、本発明がそれに限定されるものでないことが理解されよう。たとえば電圧制限素子は、フローティングMOSFETを用いて構成してもよい。
【0059】
最後にコントロールIC200を用いたDC/DCコンバータ100の用途を説明する。図6(a)は、DC/DCコンバータ100を備えるオフィス用通信機器500を示す図である。オフィス用通信機器は、たとえば電話線502を介して電源が供給される電話機である。電話線502内の電線504には、12V、24あるいは48V系の電源電圧VCCが供給される。DC/DCコンバータ100は、電源電圧VCCを3.5V,5Vあるいは1.5Vに降圧し、負荷であるマイクロコントローラ506に供給する。オフィス用通信機器は、PoE(Power Over Ethernet(登録商標))と呼ばれるLANケーブルを介して電源が供給される機器であってもよい。
【0060】
図6(b)は、DC/DCコンバータ100を備える電動自転車600を示す図である。電動自転車600は、2次電池602、アシストモータ604、図示しないモータ駆動回路や制御用のマイコン等を備える。DC/DCコンバータ100は、電池電圧を受け、それを降圧してマイコンや駆動回路に供給する。マイコンは、クランクの回転数や踏み込みトルクに応じて、アシストモータ604の回転数やトルクを制御する。
【0061】
なお、DC/DCコンバータ100の用途は、オフィス用通信機器や電動自転車には限定されず、たとえば農業用の耕作機械等にも利用可能である。
【0062】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0063】
100…DC/DCコンバータ、102…入力ライン、104…出力ライン、106…出力回路、108…フィードバックライン、M1…スイッチングトランジスタ、D1…整流ダイオード、L1…インダクタ、C1…出力キャパシタ、R1,R2…抵抗、C2…ブートストラップキャパシタ、D2…ダイオード、M2…ローサイドトランジスタ、D11…第1ダイオード、D12…第2ダイオード、200…コントロールIC、202…エラーアンプ、204…デューティコントローラ、206…ハイサイドドライバ、208…ローサイドドライバ、210…内部レギュレータ、220…ガードリング、230…寄生トランジスタ、400…半導体装置、401…P型半導体基板、402…N型エピタキシャル層、404…P型ボディ拡散領域、405…N型ソース拡散領域、406…P型ボディーコンタクト領域、408…ドレイン拡散領域、409…酸化膜層、410…ゲート電極、414…N型埋め込み拡散層、420,422…P型拡散領域、424…酸化膜層、426…ゲート電極、428…N型ボディ拡散領域、430…P型拡散領域、432…N型ボディーコンタクト領域、500…オフィス用通信機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6