(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、前記シリンダ内に挿入されて前記ピストンに連結されるロッドとを備えた第一シリンダ本体と、前記第一シリンダ本体内に液圧を供給するポンプと、前記第一シリンダ本体の推力発生方向と推力を調節する液圧回路とを備え、アクチュエータとしてもダンパとしても機能する第一シリンダ装置と、
シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、前記シリンダ内に挿入されて前記ピストンに連結されるロッドとを備えた第二シリンダ本体と、前記第二シリンダ本体を伸長時にのみ減衰力を発揮するダンパと収縮時にのみ減衰力を発揮するダンパと伸縮の両側で減衰力を発揮するダンパのいずれかに設定可能なダンパ回路とを備え、ダンパとしてのみ機能する第二シリンダ装置とを備え、
前記液圧回路と前記ダンパ回路が同一回路である
ことを特徴とする鉄道用制振装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。本発明の一実施の形態における鉄道用制振装置Sは、基本的には、
図1に示すように、鉄道車両の車体Bに設けた中心ピンPと台車Wとの間に設けた第一シリンダ装置Aと同じく中心ピンPと台車Wとの間であって第一シリンダ装置Aとは中心ピンPを挟んで反対側に配置される第二シリンダ装置Dとを備えて構成されている。このように、第一シリンダ装置Aと第二シリンダ装置Dは、車体Bと台車Wとの間に並列されて介装されており、これら第一シリンダ装置Aが出力する推力と第二シリンダ装置Dが出力する減衰力で車体Bの左右方向の振動を抑制するようになっている。また、車体Bは台車Wとの間に介装される空気ばねASによって弾性支持されていて、台車Wに対して
図1中上下左右方向への相対移動が許容されている。
【0016】
まず、第一シリンダ装置Aについて説明する。第一シリンダ装置Aは、
図2に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内にピストン3で区画した伸側室5と圧側室6とを備えた第一シリンダ本体C1と、タンク7と、第一シリンダ本体C1の推力発生方向と推力を調節する液圧回路LCと、伸側室5へ液体を供給するポンプ12とを備えており、片ロッド型のアクチュエータとして構成されている。また、前記伸側室5と圧側室6には作動油等の液体が充填されるとともに、タンク7には、液体のほかに気体が充填されている。なお、タンク7内は、特に、気体の圧縮充填によって加圧状態とする必要は無い。
【0017】
液圧回路LCは、この場合、伸側室5と圧側室6とを連通する第一通路8の途中に設けた第一開閉弁9と、圧側室6とタンク7とを連通する第二通路10の途中に設けた第二開閉弁11と、タンク7から圧側室6へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路18と、圧側室6から伸側室5へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路19と、伸側室5をタンク7へ接続する排出通路21と、排出通路21の途中に設けた可変リリーフ弁22とを備えて構成されている。
【0018】
そして、基本的には、第一開閉弁9で第一通路8を連通状態とするとともに第二開閉弁11を閉じた状態でポンプ12を駆動すると、この第一シリンダ装置Aを伸長駆動でき、第二開閉弁11で第二通路10を連通状態とするとともに第一開閉弁9を閉じた状態でポンプ12を駆動すると、第一シリンダ装置Aを収縮駆動できるようになっている。
【0019】
以下、第一シリンダ装置Aの各部について詳細に説明する。シリンダ2は筒状であって、その
図2中右端は蓋13によって閉塞され、
図2中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、前記ロッドガイド14内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端を同じくシリンダ2内に摺動自在に挿入されているピストン3に連結してある。
【0020】
なお、ロッド4の外周とロッドガイド14の内周とロッドガイド14の外周とシリンダ2との間は、図示を省略したシール部材によってシールされており、シリンダ2内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ2内にピストン3によって区画される伸側室5と圧側室6には、前述のように液体として作動油が充填されている。
【0021】
また、この第一シリンダ装置Aの場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3の伸側室5側の受圧面積が圧側室6側の受圧面積の二分の一となるようになっており、伸長駆動時と収縮駆動時とで伸側室5の圧力を同じくすると、伸縮の双方で発生される推力が等しくなるようになっており、第一シリンダ装置Aの変位量に対する流量も伸縮両側で同じとなる。
【0022】
詳しくは、第一シリンダ装置Aを伸長駆動させる場合、伸側室5と圧側室6を連通させた状態となって伸側室5内と圧側室6内の圧力が等しくなって、第一シリンダ装置Aは、ピストン3における伸側室5側と圧側室6側の受圧面積差に前記圧力を乗じた推力を発生する。反対に、第一シリンダ装置Aを収縮駆動させる場合、伸側室5と圧側室6との連通が断たれて圧側室6をタンク7に連通させた状態となるので、第一シリンダ装置Aは、伸側室5内の圧力とピストン3における伸側室5側の受圧面積を乗じた推力を発生する。このように、第一シリンダ装置Aの発生推力は伸縮の双方でピストン3の断面積の二分の一に伸側室5の圧力を乗じた値となるのである。したがって、この第一シリンダ装置Aの推力を制御する場合、伸長駆動、収縮駆動共に、伸側室5の圧力を制御すればよい。この第一シリンダ装置Aでは、ピストン3の伸側室5側の受圧面積を圧側室6側の受圧面積の二分の一に設定しているので、伸縮両側で同じ推力を発生する場合に伸長側と収縮側で伸側室5の圧力が同じとなって制御が簡素となり、加えて変位量に対する流量も同じとなって伸縮両側で応答性が同じとなる利点がある。なお、ピストン3の伸側室5側の受圧面積を圧側室6側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、伸側室5の圧力で第一シリンダ装置Aの伸縮両側の推力の制御できる点は変わらない。
【0023】
戻って、ロッド4の
図2中左端とシリンダ2の右端を閉塞する蓋13には、図示しない取付部を備えており、この第一シリンダ装置Aを鉄道車両における車体Bと台車Wとの間に介装できるようになっている。
【0024】
そして、伸側室5と圧側室6とは、第一通路8によって連通されており、この第一通路8の途中には、第一開閉弁9が設けられている。この第一通路8は、シリンダ2外で伸側室5と圧側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。
【0025】
第一開閉弁9は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第一通路8を開放して伸側室5と圧側室6とを連通する連通ポジション9bと、伸側室5と圧側室6との連通を遮断する遮断ポジション9cとを備えたバルブ9aと、遮断ポジション9cを採るようにバルブ9aを附勢するバネ9dと、通電時にバルブ9aをバネ9dに対抗して連通ポジション9bに切換えるソレノイド9eとを備えて構成されている。
【0026】
つづいて、圧側室6とタンク7とは、第二通路10によって連通されており、この第二通路10の途中には、第二開閉弁11が設けられている。第二開閉弁11は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第二通路10を開放して圧側室6とタンク7とを連通する連通ポジション11bと、圧側室6とタンク7との連通を遮断する遮断ポジション11cとを備えたバルブ11aと、遮断ポジション11cを採るようにバルブ11aを附勢するバネ11dと、通電時にバルブ11aをバネ11dに対抗して連通ポジション11bに切換えるソレノイド11eとを備えて構成されている。
【0027】
ポンプ12は、モータ15によって駆動されるようになっており、ポンプ12は、一方向のみに液体を吐出するポンプとされており、その吐出口は供給通路16によって伸側室5へ連通され、吸込口はタンク7に通じて、モータ15によって駆動されると、タンク7から液体を吸込んで伸側室5へ液体を供給する。
【0028】
前述のようにポンプ12は、一方向のみに液体を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。さらに、ポンプ12の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ12を駆動する駆動源であるモータ15にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ15も安価なものを使用できる。
【0029】
なお、供給通路16の途中には、伸側室5からポンプ12への液体の逆流を阻止する逆止弁17を設けてある。よって、ポンプ12への液体の逆流が阻止されるため、第一シリンダ装置Aは、動作方向とは逆向きの力を発揮する際に、モータ15の最大トルクには縛られずに大きな力を発揮できる。
【0030】
また、伸側室5とタンク7とが排出通路21を通じて接続されており、この排出通路21の途中に開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22が設けられている。
【0031】
可変リリーフ弁22は、排出通路21の途中に設けた弁体22aと、排出通路21を遮断するように弁体22aを附勢するバネ22bと、通電時にバネ22bに対抗する推力を発生する比例ソレノイド22cとを備えて構成され、比例ソレノイド22cに流れる電流量を調節すると開弁圧を調節できるようになっている。
【0032】
この可変リリーフ弁22は、弁体22aに作用させる排出通路21の上流となる伸側室5の圧力がリリーフ圧(開弁圧)を超えると、当該排出通路21を開放させる方向に弁体22aを推す前記圧力に起因する推力と比例ソレノイド22cによる推力との合力が、排出通路21を遮断させる方向へ弁体22aを附勢するバネ22bの附勢力に打ち勝つようになって、弁体22aを後退させて排出通路21を開放するようになっている。
【0033】
また、この可変リリーフ弁22にあっては、比例ソレノイド22cに供給する電流量を増大させると、比例ソレノイド22cが発生する推力を増大できるようになっており、比例ソレノイド22cに供給する電流量を最大とすると開弁圧が最小となり、反対に、比例ソレノイド22cに全く電流を供給しないと開弁圧が最大となる。
【0034】
そして、可変リリーフ弁22は、第一開閉弁9および第二開閉弁11の開閉状態に関わらず、第一シリンダ装置Aに伸縮方向の過大な入力があって、伸側室5の圧力が開弁圧を超える状態となると、排出通路21を開放して伸側室5をタンク7へ連通し、伸側室5内の圧力をタンク7へ逃がして、第一シリンダ装置Aのシステム全体を保護するようになっている。
【0035】
また、タンク7と圧側室6とを連通する吸込通路18が設けられており、この吸込通路18の途中には逆止弁18aが設けられて、当該吸込通路18は、タンク7から圧側室6へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、圧側室6と伸側室5とを連通する整流通路19が設けられており、この整流通路19の途中には逆止弁19aが設けられて、当該整流通路19は、圧側室6から伸側室5へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、吸込通路18については、第二開閉弁11の遮断ポジション11cを逆止弁とすると第二通路10に集約でき、整流通路19は、第一開閉弁9の遮断ポジション9cを逆止弁とすると第一通路8に集約できる。
【0036】
第一シリンダ装置Aに所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、第一開閉弁9を連通ポジション9bとし第二開閉弁11を遮断ポジション11cとして、モータ15を所定の回転数で回転させポンプ12からシリンダ2内へ液体を供給する。このようにすると、伸側室5と圧側室6とが連通状態におかれて両者にポンプ12から液体が供給され、ピストン3が
図2中左方へ押され第一シリンダ装置Aは伸長方向の推力を発揮する。伸側室5内および圧側室6内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧を上回ると、可変リリーフ弁22が開弁して液体が排出通路21を介してタンク7へ逃げるので、伸側室5内および圧側室6内の圧力は、可変リリーフ弁22に与える電流量で決まる可変リリーフ弁22の開弁圧にコントロールされる。よって、第一シリンダ装置Aは、ピストン3における伸側室5側と圧側室6側の受圧面積差に前記した可変リリーフ弁22によってコントロールされる伸側室5内および圧側室6内の圧力を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。
【0037】
これに対して、第一シリンダ装置Aに所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、第一開閉弁9を遮断ポジション9cとし第二開閉弁11を連通ポジション11bとして、モータ15を所定の回転数で回転させつつポンプ12から伸側室5内へ液体を供給する。このようにすると、圧側室6とタンク7が連通状態におかれるとともに伸側室5にポンプ12から液体が供給されるので、ピストン3が
図2中右方へ押され第一シリンダ装置Aは収縮
方向の推力を発揮する。前記したところと同様に、可変リリーフ弁22の電流量を調節すると、第一シリンダ装置Aは、ピストン3における伸側室5側の受圧面積と可変リリーフ弁22にコントロールされる伸側室5内の圧力を乗じた値からピストン3における圧側室6側の受圧面積にタンク圧を乗じた値を差し引きした値の収縮方向の推力を発揮する。
【0038】
このように、モータ15を所定の回転数で定速回転させると、ポンプ12の回転数が変化しないので、ポンプ12の回転数変動に伴う騒音の発生を防止でき、第一シリンダ装置Aの制御応答性をも良好なものとなるが、可変リリーフ弁22による圧力調整にモータ15の回転数の変更を加味して第一シリンダ装置Aを調節するようにしてもよい。
【0039】
また、この第一シリンダ装置Aにあっては、アクチュエータとして機能するのみならず、モータ15の駆動状況に関わらず、ダンパとしても機能させうる。第一シリンダ装置Aには、吸込通路18と整流通路19が設けられており、第一開閉弁9と第二開閉弁11が閉弁する場合、第一シリンダ装置Aが伸縮すると必ずシリンダ2内から液体が排出通路21を介してタンク7へ排出される。
【0040】
具体的には、第一開閉弁9と第二開閉弁11が閉弁する場合、第一シリンダ装置Aが伸長すると伸側室5が圧縮されて液体が排出通路21を通じてタンク7へ排出され、拡大される圧側室6には吸込通路18を介してタンク7から液体が供給される。第一開閉弁9と第二開閉弁11が閉弁する状態で、反対に、第一シリンダ装置Aが収縮すると圧側室6が圧縮されて液体が整流通路19を通じて伸側室5へ移動し、さらに、シリンダ2内へのロッド4の侵入によって余剰となる液体がシリンダ2内から排出通路21を通じてタンク7へ排出される。このように、第一シリンダ装置Aでは、伸縮すると必ずシリンダ2内から液体が排出通路21を介してタンク7へ排出される。この液体の流れに可変リリーフ弁22で抵抗を与えて、伸側室5内の圧力を制御すれば、第一シリンダ装置Aは所望の減衰力を発揮する。また、この第一シリンダ装置Aは、ピストン3の伸側室5側の受圧面積を圧側室6側の受圧面積の二分の一に設定しているので、可変リリーフ弁22の開弁圧が変わらなければ、伸縮両側で同じ減衰力を発揮する。
【0041】
また、第一開閉弁9を開き、第二開閉弁
11を閉じると伸側室5と圧側室6が連通され、この状態で第一シリンダ装置Aが収縮すると、ロッド4のシリンダ2内への侵入によって、伸側室5と圧側室6が圧縮されて、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の液体が排出通路21を介してタンク7へ排出される。この液体の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗を与えるので、第一シリンダ装置Aは、収縮側の減衰力を発揮する。第一開閉弁9を開き、第二開閉弁11を閉じた状態で、反対に、第一シリンダ装置Aが伸長すると、伸側室5と圧側室6が連通されているので、液体が伸側室5から抵抗なく圧側室6へ移動するとともに、ロッド4のシリンダ2内からの退出によって不足する液体は吸込通路18を通じてタンク7から供給される。このように、第一シリンダ装置Aが伸長する場合、可変リリーフ弁22を液体が通過しないため、第一シリンダ装置Aは、伸長側の減衰力を発揮しない。
【0042】
第一開閉弁9を閉じ、第二開閉弁
11を開くと、伸側室5と圧側室6は連通されず、圧側室6とタンク7とが連通される。この状態で第一シリンダ装置Aが伸長すると、伸側室5が圧縮されて、伸側室5から液体が排出通路21を介してタンク7へ排出される。拡大する圧側室6には、液体がタンク7から抵抗なく供給される。この液体の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗を与えるので、第一シリンダ装置Aは、伸長側の減衰力を発揮する。第一開閉弁9を閉じ、第二開閉弁11を開いた状態で、反対に、第一シリンダ装置Aが収縮すると、圧縮される圧側室6から整流通路19を通じて抵抗なく拡大する伸側室5へ液体が移動する。ロッド4のシリンダ2内への侵入によって余剰となる液体は、圧側室6とタンク7とが連通状態となっているので、シリンダ2内から抵抗なくタンク7へ排出される。このように、第一シリンダ装置Aが収縮する場合、可変リリーフ弁22を液体が通過しないため、第一シリンダ装置Aは、収縮側の減衰力を発揮しない。よって、第一開閉弁9と第二開閉弁11の開閉の切換えによって、伸長側でのみ減衰力を発揮する片効きのダンパと、収縮側でのみ減衰力を発揮する片効きのダンパと、伸縮両側で減衰力を発揮するダンパのいずれかに第一シリンダ装置Aを設定できる。このように、液圧回路LCは、第一シリンダ装置Aをアクチュエータとしてもダンパとしても機能させうるのである。
【0043】
つづいて、第二シリンダ装置Dについて説明する。第二シリンダ装置Dは、
図3に示すように、シリンダ32と、シリンダ32内に摺動自在に挿入されるピストン33と、シリンダ32内に挿入されてピストン33に連結されるロッド34と、シリンダ32内にピストン33で区画した伸側室35と圧側室36とを備えた第二シリンダ本体C2と、タンク37と、第二シリンダ本体C2の推力発生方向と推力を調節するダンパ回路DCとを備えており、片ロッド型のダンパとして構成されている。また、前記伸側室35と圧側室36には作動油等の液体が充填されるとともに、タンク37には、液体のほかに気体が充填されている。なお、タンク37内は、特に、気体の圧縮充填によって加圧状態とする必要は無い。
【0044】
ダンパ回路DCは、この場合、伸側室35と圧側室36とを連通する第一通路38の途中に設けた第一開閉弁39と、圧側室36とタンク37とを連通する第二通路40の途中に設けた第二開閉弁41と、タンク37から圧側室36へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路48と、圧側室36から伸側室35へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路49と、伸側室35をタンク37へ接続する排出通路51と、排出通路51の途中に設けた可変リリーフ弁52とを備えて構成されている。
【0045】
以下、第二シリンダ装置Dの各部について詳細に説明する。シリンダ32は筒状であって、その
図3中右端は蓋13によって閉塞され、
図3中左端には環状のロッドガイド44が取り付けられている。また、前記ロッドガイド44内には、シリンダ32内に移動自在に挿入されるロッド34が摺動自在に挿入されている。このロッド34は、一端をシリンダ32外へ突出させており、シリンダ32内の他端を同じくシリンダ32内に摺動自在に挿入されているピストン33に連結してある。
【0046】
なお、ロッド34の外周とロッドガイド44の内周と、ロッドガイド44の外周とシリンダ32との間は、図示を省略したシール部材によってシールされており、シリンダ32内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ32内にピストン33によって区画される伸側室35と圧側室36には、前述のように液体として作動油が充填されている。
【0047】
また、この第二シリンダ装置Dの場合、ロッド34の断面積をピストン33の断面積の二分の一にして、ピストン33の伸側室35側の受圧面積が圧側室36側の受圧面積の二分の一となるようになっており、伸長駆動時と収縮駆動時とで伸側室35の圧力を同じくすると、伸縮の双方で発生される推力が等しくなるようになっており、第二シリンダ装置Dの変位量に対する流量も伸縮両側で同じとなる。
【0048】
詳しくは、第二シリンダ装置Dが伸長駆動される場合、伸側室35と圧側室36を連通させた状態となって伸側室35内と圧側室36内の圧力が等しくなって、第二シリンダ装置Dは、ピストン33における伸側室35側と圧側室36側の受圧面積差に前記圧力を乗じた推力を発生する。反対に、第二シリンダ装置Dが収縮駆動される場合、伸側室35と圧側室36との連通が断たれて圧側室36をタンク37に連通させた状態となるので、第二シリンダ装置Dは、伸側室35内の圧力とピストン33における伸側室35側の受圧面積を乗じた推力を発生する。このように、第二シリンダ装置Dの発生推力は伸縮の双方でピストン33の断面積の二分の一に伸側室35の圧力を乗じた値となるのである。したがって、この第二シリンダ装置Dの推力を制御する場合、伸長駆動、収縮駆動共に、伸側室35の圧力を制御すればよい。この第二シリンダ装置Dでは、ピストン33の伸側室35側の受圧面積を圧側室36側の受圧面積の二分の一に設定しているので、伸縮両側で同じ推力を発生する場合に伸長側と収縮側で伸側室35の圧力が同じとなって制御が簡素となり、加えて変位量に対する流量も同じとなって伸縮両側で応答性が同じとなる利点がある。なお、ピストン33の伸側室35側の受圧面積を圧側室36側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、伸側室35の圧力で第二シリンダ装置Dの伸縮両側の推力の制御できる点は変わらない。
【0049】
戻って、ロッド34の
図2中左端とシリンダ32の右端を閉塞する蓋13には、図示しない取付部を備えており、この第二シリンダ装置Dを鉄道車両における車体Bと台車Wとの間に介装きるようになっている。
【0050】
そして、伸側室35と圧側室36とは、第一通路38によって連通されており、この第一通路38の途中には、第一開閉弁39が設けられている。この第一通路38は、シリンダ32外で伸側室35と圧側室36とを連通しているが、ピストン33に設けられてもよい。
【0051】
第一開閉弁39は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第一通路38を開放して伸側室35と圧側室36とを連通する連通ポジション39bと、伸側室35と圧側室36との連通を遮断する遮断ポジション39cとを備えたバルブ39aと、遮断ポジション39cを採るようにバルブ39aを附勢するバネ39dと、通電時にバルブ39aをバネ39dに対抗して連通ポジション39bに切換えるソレノイド39eとを備えて構成されている。
【0052】
つづいて、圧側室36とタンク37とは、第二通路40によって連通されており、この第二通路40の途中には、第二開閉弁41が設けられている。第二開閉弁41は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第二通路40を開放して圧側室36とタンク37とを連通する連通ポジション41bと、圧側室36とタンク37との連通を遮断する遮断ポジション41cとを備えたバルブ41aと、遮断ポジション41cを採るようにバルブ41aを附勢するバネ41dと、通電時にバルブ41aをバネ41dに対抗して連通ポジション41bに切換えるソレノイド41eとを備えて構成されている。
【0053】
また、伸側室35とタンク37とが排出通路51を通じて接続されており、この排出通路51の途中に開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁52が設けられている。
【0054】
可変リリーフ弁52は、排出通路51の途中に設けた弁体52aと、排出通路51を遮断するように弁体52aを附勢するバネ52bと、通電時にバネ52bに対抗する推力を発生する比例ソレノイド52cとを備えて構成され、比例ソレノイド52cに流れる電流量を調節すると開弁圧を調節できるようになっている。
【0055】
この可変リリーフ弁52は、弁体52aに作用させる排出通路51の上流となる伸側室35の圧力がリリーフ圧(開弁圧)を超えると、当該排出通路51を開放させる方向に弁体52aを推す前記圧力に起因する推力と比例ソレノイド52cによる推力との合力が、排出通路51を遮断させる方向へ弁体52aを附勢するバネ52bの附勢力に打ち勝つようになって、弁体52aを後退させて排出通路51を開放するようになっている。
【0056】
また、この可変リリーフ弁52にあっては、比例ソレノイド52cに供給する電流量を増大させると、比例ソレノイド52cが発生する推力を増大できるようになっており、比例ソレノイド52cに供給する電流量を最大とすると開弁圧が最小となり、反対に、比例ソレノイド52cに全く電流を供給しないと開弁圧が最大となる。
【0057】
そして、可変リリーフ弁52は、第一開閉弁39および第二開閉弁41の開閉状態に関わらず、第二シリンダ装置Dに伸縮方向の過大な入力があって、伸側室35の圧力が開弁圧を超える状態となると、排出通路51を開放して伸側室35をタンク37へ連通し、伸側室35内の圧力をタンク37へ逃がして、第二シリンダ装置Dのシステム全体を保護するようになっている。
【0058】
また、タンク37と圧側室36とを連通する吸込通路48が設けられており、この吸込通路48の途中には逆止弁48aが設けられて、当該吸込通路48は、タンク37から圧側室36へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、圧側室36と伸側室35とを連通する整流通路49が設けられており、この整流通路49の途中には逆止弁49aが設けられて、当該整流通路49は、圧側室36から伸側室35へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、吸込通路48についても、第二開閉弁41の遮断ポジション41cを逆止弁とすると第二通路40に集約でき、整流通路49は、第一開閉弁39の遮断ポジション39cを逆止弁とすると第一通路38に集約できる。
【0059】
第一開閉弁39と第二開閉弁41が閉弁する場合、第二シリンダ装置Dが伸長すると伸側室35が圧縮されて液体が排出通路51を通じてタンク37へ排出され、拡大される圧側室36には吸込通路48を介してタンク37から液体が供給される。第一開閉弁39と第二開閉弁41が閉弁する状態で、反対に、第二シリンダ装置Dが収縮すると圧側室36が圧縮されて液体が整流通路49を通じて伸側室35へ移動し、さらに、シリンダ32内へのロッド34の侵入によって余剰となる液体がシリンダ32内から排出通路51を通じてタンク37へ排出される。このように、第二シリンダ装置Dでは、伸縮すると必ずシリンダ32内から液体が排出通路51を介してタンク37へ排出される。この液体の流れに可変リリーフ弁52で抵抗を与えて、伸側室35内の圧力を制御すれば、第二シリンダ装置Dは所望の減衰力を発揮する。また、この第二シリンダ装置Dは、ピストン3の伸側室
35側の受圧面積を圧側室
36側の受圧面積の二分の一に設定しているので、可変リリーフ弁52の開弁圧が変わらなければ、伸縮両側で同じ減衰力を発揮する。
【0060】
また、第一開閉弁39を開き、第二開閉弁41を閉じると伸側室35と圧側室36が連通され、この状態で第二シリンダ装置Dが収縮すると、ロッド34のシリンダ32内への侵入によって、伸側室35と圧側室36が圧縮されて、ロッド34がシリンダ32内に侵入する体積分の液体が排出通路51を介してタンク37へ排出される。この液体の流れに対して可変リリーフ弁52が抵抗を与えるので、第二シリンダ装置Dは、収縮側の減衰力を発揮する。第一開閉弁39を開き、第二開閉弁41を閉じた状態で、反対に、第二シリンダ装置Dが伸長すると、伸側室35と圧側室36が連通されているので、液体が伸側室35から抵抗なく圧側室36へ移動するとともに、ロッド34のシリンダ32内からの退出によって不足する液体は吸込通路48を通じてタンク37から供給される。このように、第二シリンダ装置Dが伸長する場合、可変リリーフ弁52を液体が通過しないため、第二シリンダ装置Dは、伸長側の減衰力を発揮しない。
【0061】
第一開閉弁39を閉じ、第二開閉弁41を開くと、伸側室35と圧側室36は連通されず、圧側室36とタンク37とが連通される。この状態で第二シリンダ装置Dが伸長すると、伸側室35が圧縮されて、伸側室35から液体が排出通路51を介してタンク37へ排出される。拡大する圧側室36には、液体がタンク37から抵抗なく供給される。この液体の流れに対して可変リリーフ弁52が抵抗を与えるので、第二シリンダ装置Dは、伸長側の減衰力を発揮する。第一開閉弁39を閉じ、第二開閉弁41を開いた状態で、反対に、第二シリンダ装置Dが収縮すると、圧縮される圧側室36から整流通路49を通じて抵抗なく拡大する伸側室35へ液体が移動する。ロッド34のシリンダ32内への侵入によって余剰となる液体は、圧側室36とタンク37とが連通状態となっているので、シリンダ32内から抵抗なくタンク37へ排出される。このように、第二シリンダ装置Dが収縮する場合、可変リリーフ弁52を液体が通過しないため、第二シリンダ装置Dは、収縮側の減衰力を発揮しない。よって、第一開閉弁39と第二開閉弁41の開閉の切換えによって、伸長側でのみ減衰力を発揮する片効きのダンパと、収縮側でのみ減衰力を発揮する片効きのダンパと、伸縮両側で減衰力を発揮するダンパのいずれかに第二シリンダ装置Dを設定できる。
【0062】
前記したところから理解できるように、第二シリンダ装置Dにおけるダンパ回路DCと、第一シリンダ装置Aにおける液圧回路LCは、共に同一の部品を採用し同一の構造を採用しており、両者は同一の回路となっている。また、第一シリンダ本体C1および第二シリンダ本体C2も同一の構造となっている。したがって、第一シリンダ装置Aと第二シリンダ装置Dとの違いは、第一シリンダ装置Aでは、第一シリンダ本体C1と液圧回路LCの他に、供給通路16、ポンプ12、モータ15および逆止弁17を備えているのに対して、第二シリンダ装置Dでは、第一シリンダ本体C1と同一構造の第二シリンダ本体C2と液圧回路LCと同一構造のダンパ回路DCのみを備える点である。つまり、第一シリンダ装置Aは、第二シリンダ装置Dの構成に、供給通路16、ポンプ12、モータ15および逆止弁17を加えた構成となっている。
【0063】
本実施の形態の鉄道用制振装置Sでは、第一シリンダ装置Aにおけるシリンダ2の内径と第二シリンダ装置Dにおけるシリンダ32の内径を同じにしてあり、第一シリンダ装置Aにおけるピストン3の外径と第二シリンダ装置Dにおけるピストン33の外径を同じにしてあり、さらに、第一シリンダ装置Aにおけるロッド4の外径と第二シリンダ装置Dにおけるロッド34の外径を同じにしてある。よって、第一シリンダ装置Aにおける可変リリーフ弁22の開弁圧と、第二シリンダ装置Dにおける可変リリーフ弁52の開弁圧とを等しくすると、第二シリンダ装置Dが減衰力を発揮できる状況では、第一シリンダ装置Aの推力と第二シリンダ装置Dの減衰力とが等しくなる。
【0064】
このように構成された鉄道用制振装置Sでは、モータ15を備えているのは第一シリンダ装置Aのみであり、第二シリンダ装置Dにはモータが設けられていないので、消費電力も少なくて済み、装置が安価に済む。また、インバータを備える大型の制御箱が必要なのは第一シリンダ装置Aだけであるので、制御箱まで含めた鉄道用制振装置Sのシステム全体のコストも低減される。さらに、インバータを備える大型の制御箱が必要なのは第一シリンダ装置Aだけであるので、鉄道用制振装置Sの鉄道車両への搭載性が向上する。
【0065】
そして、前述のように鉄道用制振装置Sでは、台車W一台当たり第一シリンダ装置Aと第二シリンダ装置Dを一つずつ設けても鉄道車両へ難なく搭載できる。鉄道用制振装置Sは、第一シリンダ装置Aと第二シリンダ装置Dとが車体Bを制振するから、高い制振効果が得られる。したがって、トンネル走行時にトンネル内の空気圧によって車体Bが加振された場合に対しても、鉄道用制振装置Sは、効果的に車体Bを制振できる。
【0066】
よって、本発明の鉄道用制振装置Sによれば、鉄道車両への搭載性を損なわずに鉄道車両を効果的に制振できる。
【0067】
さらに、液圧回路LCとダンパ回路
DCは、同一構成とされているので、車体Bの制振制御に際して、第一シリンダ装置Aと第二シリンダ装置Dを共に伸長側或いは収縮側へ力を発揮するように制御すればよいので、液圧回路LCとダンパ回路
DCの第一開閉弁9,39および第二開閉弁11,41への制御指令は同じとなり、制御信号を共通化できる。よって、第一シリンダ装置Aと第二シリンダ装置Dを制御するコントローラを一つのコントローラに集約可能となる。
【0068】
また、液圧回路LCおよびダンパ回路DCが、伸側室5,35と圧側室6,36とを連通する第一通路8,38の途中に設けた第一開閉弁9,39と、圧側室6,36とタンク7,37とを連通する第二通路10,40の途中に設けた第二開閉弁11,41と、タンク7,37から圧側室6,36へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路18,48と、圧側室6,36から伸側室5,35へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路19,49と、伸側室5,35をタンク7,37へ接続する排出通路21,51と、排出通路21,51の途中に設けた可変リリーフ弁22,52とを備えて構成されると、たとえば、第一シリンダ装置Aに伸長する方向に推力を発揮させる場合、第二シリンダ装置Dについては伸長方向の減衰力を発揮する片効きのダンパとすれば、第二シリンダ装置Dは、第一シリンダ装置Aの推力に同方向の減衰力を発揮し、第一シリンダ装置Aの推力と逆向きの減衰力を発揮しないので、第一シリンダ装置Aの制振制御を一切邪魔せず、第二シリンダ装置Dの減衰力も車体Bの振動抑制に寄与できるから、より一層、高い制振効果が得られる。
【0069】
第一シリンダ装置Aは、第二シリンダ装置Dと同じ構成に、供給通路16、ポンプ12、モータ15および逆止弁17を設けた構成とされているので、第一シリンダ装置Aの製造に当たって、第二シリンダ装置Dに供給通路16、ポンプ12、モータ15および逆止弁17を取り付ければよいから、製造も容易となる。また、第一シリンダ装置Aにおける第一シリンダ本体C1と第二シリンダ装置Dにおける第二シリンダ本体C2とを共通の部品で構成し、液圧回路LCとダンパ回路DCとを共通の部品で構成すると、より一層製造が容易となる。なお、
図2に示すように、供給通路16、ポンプ12、モータ15および逆止弁17を一つの回路ブロックBRに設けるようにすれば、第二シリンダ装置Dにこの回路ブロックBRを装着するだけで第一シリンダ装置Aを製造でき、第一シリンダ装置Aの製造が飛躍的に容易となる。
【0070】
そして、第一シリンダ装置Aにおけるシリンダ2の内径と第二シリンダ装置Dにおけるシリンダ32の内径を同じにしてあり、第一シリンダ装置Aにおけるピストン3の外径と第二シリンダ装置Dにおけるピストン33の外径を同じにしてあり、さらに、第一シリンダ装置Aにおけるロッド4の外径と第二シリンダ装置Dにおけるロッド34の外径を同じにしてある。こうすることで、第一シリンダ装置Aにおける可変リリーフ弁22の開弁圧と、第二シリンダ装置Dにおける可変リリーフ弁52の開弁圧とを等しくすると、第二シリンダ装置Dが減衰力を発揮できる状況では、第一シリンダ装置Aの推力と第二シリンダ装置Dの減衰力とが等しくなって、可変リリーフ弁22,52についても制御信号を共通化できる。よって、コントローラが一つになって第一シリンダ装置Aおよび第二シリンダ装置
Dに対して一つの制御箱を設ければ足り、より一層車両搭載性が向上し、鉄道用制振装置Sが安価に済む。
【0071】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。