特許第6368209号(P6368209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368209吊り足場構築用足場板の積層方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368209
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】吊り足場構築用足場板の積層方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/24 20060101AFI20180723BHJP
   E04G 5/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   E04G3/24 302H
   E04G5/08 D
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-196260(P2014-196260)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-65434(P2016-65434A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】中垣 芳紹
(72)【発明者】
【氏名】野田 路男
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−184178(JP,A)
【文献】 特開昭61−186666(JP,A)
【文献】 実開昭60−046740(JP,U)
【文献】 特開平11−062221(JP,A)
【文献】 米国特許第04732235(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/24
E04G 5/08
E04G 3/00
E04G 3/22
E01D 21/00
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材(2)の下側にフレーム(5)を設けると共に該フレームに臨む窓孔(7)を床材に開設し、前記窓孔を介して上昇位置と下降位置の間で上下方向に移動自在な吊下げ金具(8)を前記フレームに設けた吊り足場構築用の足場板であり、前記吊下げ金具(8)は、下降位置に下降したとき前記フレーム(5)に吊持されると共に足場板(1)の下方に突出する構成において、前記足場板を下から順に積層させる方法であり、
1枚毎に足場板(1)を出発位置(P1)から目的位置(P2)まで移送する移送工程と、前記吊下げ金具(8)の姿勢を制御する制御工程と、前記目的位置(P2)に移送された足場板(1)を先行移送された待機状態の下層足場板(1x)の上に載置する載置工程とから構成され、
前記制御工程は、前記載置工程に先立って前記吊下げ金具(8)を窓孔(7)から引き上げる引上工程と、引き上げられた前記吊下げ金具(8)をフレーム(5)の軸線に対して傾斜姿勢となるように傾動させる傾動工程と、前記載置工程の直前又は直後に前記吊下げ金具(8)を傾斜姿勢の状態で押し下げる押下工程とから成ることを特徴とする吊り足場構築用足場板の積層方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を実施する装置であり、移送装置と制御装置とから構成され、
前記移送装置は、足場板(1)を着脱自在に保持する保持機構(10)を備えた機体(11)と、前記機体を昇降移動させる昇降機構(12)と、上昇させられた機体を出発位置(P1)と目的位置(P2)の間の上方空間で往復移動させる往復機構(13)とから成り、出発位置(P1)に位置する足場板(1)を前記保持機構(10)により保持した状態で機体(11)と同行して目的位置(P2)まで移送すると共に、前記機体(11)を目的位置(P2)で下降すると共に保持機構(10)を解放することにより足場板(1)を下層足場板(1x)の上に載置するように構成され、
前記制御装置(16)は、前記機体(11)に設けられており、前記保持機構(10)により保持された足場板(1)の窓孔(7)に臨むように配置された着脱手段(19)と、前記着脱手段を上下移動させる上下移動手段(20)と、前記着脱手段を前記フレームの軸方向に進退移動させる進退移動手段(21)とから成り、
前記保持機構(10)により足場板(1)を保持した状態で、着脱手段(19)を下動することにより吊下げ金具(8)の上端を取着し、前記着脱手段(19)を上動することにより前記吊下げ金具(8)を窓孔(7)から引き上げ、前記着脱手段(19)を前記フレーム(5)の軸方向に前進させることにより前記吊り金具(8)を傾動させ、前記着脱手段(19)を下動することにより前記吊下げ金具(8)を押し下げると共に、該着脱手段(19)から該吊下げ金具(8)を離脱させるように構成して成ることを特徴とする吊り足場構築用足場板の積層装置。
【請求項3】
前記吊下げ金具(8)は、上部円弧部(8b)を備えた長円形状の環状金具により構成されると共に前記フレーム(5)に上下方向に移動自在に遊嵌されており、
前記着脱手段(19)は、下面に前記フレームの軸方向に延びる溝部(24)を有する溝部材(25)を備え、該溝部材により電磁石(26)を構成すると共に、前記溝部(24)の両側に前記吊下げ金具(8)の上部円弧部(8b)の両側に斜交状態で接触するテーパ面(24b,24b)を形成しており、
前記吊下げ金具(8)の上部円弧部(8b)を前記溝部(24)に進入させて磁着した状態で、前記テーパ面(24b,24b)が該磁力に抗して上部円弧部(8b)を前記溝部(24)に沿って摺動可能とするように構成して成ることを特徴とする請求項2に記載の吊り足場構築用足場板の積層装置。
【請求項4】
前記機体(11)は、足場板(1)のフレーム(5)の軸方向に向けて配設されたマウント部材(17)を備えており、
前記上下移動手段(20)は、前記マウント部材(17)に搭載された縦向きシリンダ装置により構成され、
前記着脱手段(19)は、前記縦向きシリンダ装置により上下移動させられる溝部材(25)により形成されると共に、該溝部材により電磁石(26)を構成しており、
前記進退移動手段(21)は、機体(11)に搭載された横向きシリンダ装置により構成され、該横向きシリンダ装置により前記着脱手段(19)を前記フレーム(5)の軸方向に進退移動するように構成して成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の吊り足場構築用足場板の積層装置。
【請求項5】
前記マウント部材(17)は、機体(11)に摺動自在に支持されており、
前記制御装置(16)は、上下移動手段(20)と着脱手段(19)を備えたユニット(16a)の複数個を前記マウント部材(17)の軸方向に所定間隔をあけて固定し、少なくとも1個のユニットを進退移動させるように前記進退移動手段(21)を設けており、
前記進退移動手段(21)により少なくとも1個のユニット(16a)を介して前記マウント部材(17)を摺動させることにより、複数個のユニットを同時に前記フレーム(5)の軸方向に進退移動させるように構成して成ることを特徴とする請求項4に記載の吊り足場構築用足場板の積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り足場を構築するために使用する足場板を保管や運搬等に際して積層するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や橋梁等の高架構築物の建設又は改修に際して、該高架構築物の延長方向に沿って吊り足場が構築されている。
【0003】
このような吊り足場を構築するための足場板は、図10に示すように構成されており、足場板1は、床材2の両側縁を支持する一対の桁側フレーム3、3と、該桁側フレーム3、3の両端部を連結する妻側フレーム4、4により矩形枠状に形成され、床材2を前記桁側フレーム3、3に搭載すると共に、前記妻側フレーム4の両端部にソケット4aとプラグ4bを形成しており、更に、床材2の下側に配設したセンターフレーム5(単に「フレーム5」という。)の両端を前記妻側フレーム4、4に連結している。
【0004】
図11に示すように、吊り足場を構築する際、足場板1、1は、前記ソケット4aとプラグ4bを交互に連結することにより、高架構築物の延長方向に並列され、チェーン等の索条6により、高架構築物の下側に吊持される。このようなチェーン等の索条6による吊持を可能にするため、前記床材2には、前記フレーム5に臨む窓孔7が所定間隔をあけて開設されており、前記フレーム5には、各窓孔7に臨む吊下げ金具8が設けられている。従って、前記吊下げ金具8に索条6を連結することにより、該金具8を介してフレーム5を吊持するように構成されている。
【0005】
前記吊下げ金具8は、図10(C)に示すように、鋼棒等により、左右の直線部8a、8aの上下に上部円弧部8bと下部円弧部8cを備えた長円形状の環状金具により構成されており、前記フレーム5を遊嵌状態で挿入することにより、前記窓孔7を介して、床材2から引き上げた上昇位置Hと、床材2の下側に格納した下降位置Lとの間で、上下方向に移動自在となるように取付けられている。
【0006】
そこで、吊下げ金具8は、上昇位置Hにおいて、下部円弧部8cによりフレーム5を下側から保持した状態で、上部円弧部8bに前記索条6を連結することにより、足場板1を高架構築物の下側に吊持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−103679号公報
【特許文献2】特許第2647801号公報
【特許文献2】特許第2647802号公報
【特許文献2】特許第2664642号公報
【特許文献2】特許第3012827号公報
【特許文献2】特許第4106133号公報
【特許文献2】特許第5399865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の足場板1は、不使用時には、多数の足場板を積層した状態で、保管され、運搬される。不使用時において、前記吊下げ金具8は、下降位置Lにおいて、上部円弧部8bをフレーム5に係止することにより吊持される。この際、吊下げ金具8の長さ寸法は、足場板1の厚さT(桁側フレーム3の上下寸法)を超えて、足場板1の下方に突出する。
【0009】
しかしながら、このような吊下げ金具8を設けた足場板1を積層する場合、図12に示すように、上下の足場板1、1の間で吊下げ金具8が干渉し、足場板1、1の好適な積層が妨げられるという問題がある。図12(B)に示すように、上下から対向する吊下げ金具8、8が相互に干渉し合う場合は、上下の足場板1の桁側フレーム3、3の間に離間空間が形成されることになる。また、上下の吊下げ金具8、8を位置ずれさせた状態で積層する場合でも、下側の足場板1の吊下げ金具8が上側の足場板1のフレーム5に干渉し、上下の足場板1、1の桁側フレーム3、3を当接状態で積層することができないので、積層状態が不安定となる。
【0010】
このため、保管・運搬等に際して、多数の足場板1を積層したとき、積層体が嵩高くなり、しかも、不安定な状態で積層崩れを生じやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決した吊り足場構築用足場板の積層方法及び装置を提供するものである。
【0012】
そこで、本発明の積層方法が手段として構成したところは、床材の下側にフレームを設けると共に該フレームに臨む窓孔を床材に開設し、前記窓孔を介して上昇位置と下降位置の間で上下方向に移動自在な吊下げ金具を前記フレームに設けた吊り足場構築用の足場板であり、前記吊下げ金具は、下降位置に下降したとき前記フレームに吊持されると共に足場板の下方に突出する構成において、前記足場板を下から順に積層させる方法であり、1枚毎に足場板を出発位置から目的位置まで移送する移送工程と、前記吊下げ金具の姿勢を制御する制御工程と、前記目的位置に移送された足場板を先行移送された待機状態の下層足場板の上に載置する載置工程とから構成され、前記制御工程は、前記載置工程に先立って前記吊下げ金具を窓孔から引き上げる引上工程と、引き上げられた前記吊下げ金具をフレームの軸線に対して傾斜姿勢となるように傾動させる傾動工程と、前記載置工程の直前又は直後に前記吊下げ金具を傾斜姿勢の状態で押し下げる押下工程とから成る点にある。
【0013】
そして、前記積層方法を実施するために本発明の積層装置が手段として構成したところは、移送装置と制御装置とから構成され、前記移送装置は、足場板を着脱自在に保持する保持機構を備えた機体と、前記機体を昇降移動させる昇降機構と、上昇させられた機体を出発位置と目的位置の間の上方空間で往復移動させる往復機構とから成り、出発位置に位置する足場板を前記保持機構により保持した状態で機体と同行して目的位置まで移送すると共に、前記機体を目的位置で下降すると共に保持機構を解放することにより足場板を下層足場板の上に載置するように構成され、前記制御装置は、前記機体に設けられており、前記保持機構により保持された足場板の窓孔に臨むように配置された着脱手段と、前記着脱手段を上下移動させる上下移動手段と、前記着脱手段を前記フレームの軸方向に進退移動させる進退移動手段とから成り、前記保持機構により足場板を保持した状態で、着脱手段を下動することにより吊下げ金具の上端を取着し、前記着脱手段を上動することにより前記吊下げ金具を窓孔から引き上げ、前記着脱手段を前記フレームの軸方向に前進させることにより前記吊り金具を傾動させ、前記着脱手段を下動することにより前記吊下げ金具を押し下げると共に、該着脱手段から該吊下げ金具を離脱させるように構成して成る点にある。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、前記吊下げ金具は、上部円弧部を備えた長円形状の環状金具により構成されると共に前記フレームに上下方向に移動自在に遊嵌されており、前記着脱手段は、下面に前記フレームの軸方向に延びる溝部を有する溝部材を備え、該溝部材により電磁石を構成すると共に、前記溝部の両側に前記吊下げ金具の上部円弧部の両側に斜交状態で接触するテーパ面を形成しており、前記吊下げ金具の上部円弧部を前記溝部に進入させて磁着した状態で、前記テーパ面が該磁力に抗して上部円弧部を前記溝部に沿って摺動可能とするように構成している。
【0015】
前記機体は、足場板のフレームの軸方向に向けて配設されたマウント部材を備えており、前記上下動手段は、前記マウント部材に搭載された縦向きシリンダ装置により構成され、前記着脱手段は、前記縦向きシリンダ装置により上下移動させられる溝部材により形成されると共に、該溝部材により電磁石を構成しており、前記進退移動手段は、機体に搭載された横向きシリンダ装置により構成され、該横向きシリンダ装置により前記着脱手段を前記フレームの軸方向に進退移動するように構成している。
【0016】
好ましくは、前記マウント部材を機体に摺動自在に支持しており、前記制御装置は、上下移動手段と着脱手段を備えたユニットの複数個を前記マウント部材の軸方向に所定間隔をあけて固定し、少なくとも1個のユニットを進退移動させるように前記進退移動手段を設けており、前記進退移動手段により少なくとも1個のユニットを介して前記マウント部材を摺動させることにより、複数個のユニットを同時に前記フレームの軸方向に進退移動させるように構成している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吊下げ金具8の姿勢を制御することにより、足場板1を安定した状態で積層することが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る吊り足場構築用足場板の積層方法を示しており、(A)足場板の移送経路を説明する斜視図、(B)は積層された足場板における吊下げ金具の状態を示す拡大斜視図である。
図2】本発明に係る吊り足場構築用足場板の積層装置の1実施形態に関して、全体の概観状態を示す斜視図である。
図3】機体を部分的に示すと共に、該機体に設けられた移送装置の保持機構と、該機体に設けられた制御装置を示す斜視図である。
図4図3に示す破断された機体を破断面の側から見た側面図であり、(A)は保持機構と制御装置を示す側面図、(B)は着脱手段の拡大断面図である。
図5図4のA−A線断面図であり、制御装置を示す側面図である。
図6】制御装置の作用を示しており、(A)(B)(C)は着脱手段を下動させることにより吊下げ金具を磁着した状態を示す断面図である。
図7】制御装置の作用を示しており、吊下げ金具を窓孔から引き上げた引上工程を示す断面図である。
図8】制御装置の作用を示しており、吊下げ金具を傾斜姿勢とさせた傾動工程を示す断面図である。
図9】制御装置の作用を示しており、吊下げ金具を傾斜姿勢の状態で押し下げた押下工程を示す断面図である。
図10】従来の吊り足場構築用の足場板を示しており、(A)は斜視図、(B)(C)は吊下げ金具が設けられた部分の拡大図である。
図11】従来の足場板により吊り足場を構築する方法を示す斜視図である。
図12】従来の足場板を積層する際の問題点を示しており、(A)は斜視図、(B)は吊下げ金具が干渉した状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0020】
(足場板の構成)
足場板1の構成は、図10ないし図12に基づいて上述した通りであり、図1は、足場板1の積層方法の概略を示している。
【0021】
(積層方法)
積層方法は、1枚毎に足場板1を出発位置P1から目的位置P2まで移送する移送工程と、前記吊下げ金具8の姿勢を制御する制御工程と、前記目的位置P2に移送された足場板1を先行移送された待機状態の下層足場板1xの上に載置する載置工程とから構成されている。
【0022】
図示省略しているが、足場板1は、コンベヤ装置により出発位置P1まで搬送され、そこで後述する積層装置により目的位置P2まで移送される。図1(A)に示すように、足場板1は、出発位置P1で保持されると共に矢印Uで示すように上昇させられ、その後、矢印Mで示すように目的位置P2の上方に移動させられた後、矢印Dで示すように下降させられることにより、先行して積層された足場板1xの上に載置させられる。
【0023】
出発位置P1から出発する前の足場板1の吊下げ金具8は、上述のように自重で下降位置Lに位置した状態でフレーム5に吊持された垂下姿勢Vとされているが、目的位置P2まで移送され、該足場板1が下層足場板1xに載置され積層されたときは、前記制御工程を経ることにより、図1(B)に示すように、フレーム5の軸線に対して傾斜する傾斜姿勢Xとされ、該足場板1の下部空間に格納されている。つまり、吊下げ金具8は、足場板1の厚さT(桁側フレーム3の上下寸法)を超えて足場板1の下方に突出しておらず、これにより、上下の足場板1、1xを相互に桁側フレーム3、3が当接した状態で積層することを可能にする。
【0024】
このように吊下げ金具8を垂下姿勢Vから傾斜姿勢Xとするように姿勢変更させるため、前記制御工程は、前記載置工程に先立って前記吊下げ金具8を床材2の窓孔7から引き上げる引上工程と、引き上げられた前記吊下げ金具8をフレーム5の軸線に対して傾斜姿勢Xとなるように傾動させる傾動工程と、前記載置工程の直前又は直後に前記吊下げ金具8を傾斜姿勢Xの状態で押し下げる押下工程により構成されている。
【0025】
前記引上工程と傾動工程は、足場板1を出発位置P1から目的位置P2まで移送中に実施されるが、前記押下工程は、目的位置P2に移送した足場板1を下層足場板1に載置する直前に実施しても良く、又は載置した直後に実施しても良い。
【0026】
(積層装置)
上記の積層方法を実施するための積層装置とその作用を図2ないし図9に示している。図2に示すように、積層装置は、足場板1を着脱自在に保持する第1保持機構10aと第2保持機構10bを備えた機体11を備えている。図示実施形態の場合、機体11は、足場板1の桁側フレーム3、3の外側に臨まされる長手フレーム11a、11aと、該長手フレーム11a、11aを連結する複数の短手フレーム11bにより、矩形枠体を形成している。図示省略しているが、積層装置は、図示矢印で示すように、前記機体11を昇降移動させる昇降機構12と、上昇させられた機体11を出発位置P1と目的位置P2の間の上方空間で往復移動させる往復機構13を設けており、該昇降機構12と往復機構13により移送装置を構成している。
【0027】
これにより、前記機体11は、出発位置P1に位置する足場板1に向けて前記昇降機構12により下降させられ、前記保持機構10a、10bにより足場板1を保持した状態で、前記上昇機構12により上昇させられると共に往復機構13により目的位置P2の上方に往動させられ、再び前記昇降機構12により下降させられ、足場板1を下層足場板1xの上に載置させると共に、前記保持機構10a、10bを解放する。その後、前記機体11は、前記と逆の方向に移動することにより、出発位置P1の上方位置に戻り、同じ動作を繰り返す。そして、その間に、後述する制御装置16により、足場板1の吊下げ金具8の姿勢が制御される。このような一連の動作は、コンピュータのプラグラムにより制御され自動化されている。
【0028】
(保持機構)
図示実施形態の場合、図2ないし図4に示すように、前記第1保持機構10aは、長手フレーム11a、11aに設けられた横向きシリンダ等の駆動源により相対向して進退移動させられるプッシュロッド14、14を備え、該プッシュロッド14、14を進出することにより、出発位置P1に位置する足場板1の桁側フレーム3、3を外側から保持し、前記プッシュロッド14、14を後退することにより、目的位置P2で足場板1の保持を解放する。
【0029】
前記第2保持機構10bは、長手フレーム11a、11aに設けられた縦向きシリンダ等の駆動源により相対向して進退方向に回動させられる爪付きのアーム15、15を備え、該アーム15、15を進出方向に回動することにより、出発位置P1に位置する足場板1の桁側フレーム3、3の底部を外側から保持し、前記アーム15、15を後退方向に回動することにより、目的位置P2で足場板1の保持を解放する。
【0030】
(制御装置)
図2ないし図4に示すように、前記機体11は、移送中に、足場板1の吊下げ金具8を制御するための制御装置16を設けている。
【0031】
図示実施形態の場合、前記機体11に長手フレーム11aと平行に延びる一対のロッドから成るマウント部材17、17が設けられており、該マウント部材17、17は、短手フレーム11bに設けたブッシュ等の軸受部材18に摺動自在に支持されている。
【0032】
前記制御装置16は、前記機体11が前記保持機構10a、10bにより足場板1を保持したとき、該足場板1の床材2の窓孔7に臨むように配置された着脱手段19と、該着脱手段19を上下移動させる縦向きシリンダ等の駆動源により構成された上下移動手段20と、前記着脱手段19を前記足場板1のフレーム5の軸方向に進退移動させる横向きシリンダ等の駆動源により構成された進退移動手段21により構成されている。
【0033】
図示実施形態の場合、前記制御装置16は、上下移動手段20を支持するブラケット22をクランプ具等の固着手段23により前記マウント部材17、17に固設しており、前記進退移動手段21は、機体11の短手フレーム11bに搭載され、該短手フレーム11bの近傍に位置する制御手段16の上下移動手段20に連結されている。従って、進退移動手段21は、前記着脱手段19及び上下移動手段20と共にマウント部材17、17を軸支部材18に沿って進退移動させるように構成されている。
【0034】
この際、図示のように、足場板1は、フレーム5の軸方向に間隔をあけて複数の窓孔7を床材2に開設し、各窓孔7に臨んで吊下げ金具8を設けているので、これに対応して、図3に示すように、制御装置16は、上下移動手段20と着脱手段19を備えたユニット16aの複数個を前記マウント部材17、17の軸方向に所定間隔をあけて固着手段23により固定し、少なくとも1個のユニット16aを進退移動させる進退移動手段21を設けている。
【0035】
このように構成することにより、前記進退移動手段21により少なくとも1個のユニット16aを介して前記マウント部材17,17を摺動させることにより、複数個のユニット16aが同時に前記フレーム5の軸方向に進退移動させられるので、間隔をあけて配置された全てのユニット16aに進退移動手段21を設ける必要はなく、少なくとも1個のユニット16aに設ければ足りるという利点がある。
【0036】
しかしながら、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、マウント部材17、17を機体11に摺動不能に固定すると共に、該マウント部材17、17に対してユニット16aを摺動自在に搭載し、全てのユニット16aに個別に進退移動手段21で進退移動させるように構成しても良い。
【0037】
前記着脱手段19は、図4(B)に示すように、下面に前記マウント部材17の軸方向に延びる溝部24を有する溝部材25を備えると共に、該溝部材25により電磁石26を構成している。従って、電磁石26のONにより溝部材25に吊下げ金具8を磁着させ、電磁石26のOFFにより磁着した吊下げ金具8を溝部材25から離脱させるように構成されている。
【0038】
図示のように、前記溝部24の断面形状は、中央部に設けられた凹部24aの両側から下向きに末広がり状に傾斜するテーパ面24b、24bを形成することが好ましい。
【0039】
(制御装置の作用)
上述したように機体11が出発位置P1に向けて下降し、保持機構10a、10bにより足場板1を保持したとき、図5に示すように、制御装置16の着脱手段19が足場板1の床材2の窓孔7に臨まされる。
【0040】
この状態から、図6に示すように、上下移動手段20を駆動することにより着脱手段19を下動し、電磁石26のONにより吊下げ金具8の上部円弧部8bを磁着する。吊下げ金具8は、上部円弧部8bの頂部だけを僅かに窓孔7から露出しているが、図示実施形態によれば、着脱手段19を構成する溝部材25の凹部24aが上部円弧部8bの頂部中央を受入れるので、テーパ面24b、24bが上部円弧部8bの頂部両側の2個所に斜交状態で接触し、該吊下げ金具8を引き上げ可能とするように磁着する。
【0041】
次いで、図7に示すように、吊下げ金具8を磁着した状態で、上下移動手段20を駆動して着脱手段19を上動すると、吊下げ金具8は、窓孔7から引き上げられる(上記引上工程)。この際、引き上げは、吊下げ金具8の下部円弧部8cがフレーム5の下面に接触しない程度、つまり、フレーム5が上部円弧部8bと下部円弧部8cの中間に位置する程度に引き上げることが好ましい。
【0042】
引き続き、図8に示すように、吊下げ金具8を磁着した状態で、進退移動手段21を駆動し、着脱手段19をフレーム5の軸方向に前進させると、吊下げ金具8は、傾動して傾斜姿勢Xとされる(上記傾動工程)。前述のように、吊下げ金具8は、下部円弧部8cがフレーム5の下面に接触しない程度に引き上げられているので、図示のように、着脱手段19に磁着された状態で前進方向に同行しつつ、窓孔7の縁部に当接し、該当接部を支点として、下部円弧部8cをフレーム5の下面に接触する方向に向けて傾動させられる。
【0043】
吊下げ金具8の傾動を確実に行わせるため、着脱手段19は、図8(B)に鎖線で示すように、吊下げ金具8が傾斜姿勢Xとされた後も、オーバーラン位置Fまで前進させられることが好ましい。上述のように、着脱手段19を構成する溝部材25は、テーパ面24b、24bを吊下げ金具8の上部円弧部8bの両側に斜交状態で点接触しているので、磁力に抗して上部円弧部8bを溝部24に沿って摺擦しながら摺動可能である。即ち、吊下げ金具8が下部円弧部8cをフレーム5の下面に接触させた傾斜姿勢Xの状態に拘束されている場合でも、溝部材25を前記オーバーラン位置Fまで前進させることが可能となるように構成されている。
【0044】
上記の引上工程及び傾動工程は、足場板1を保持した機体11が出発位置P1から目的位置P2まで移送される間に実施される。そして、目的位置P2に向けて機体11が下降され、移送された足場板1が下層足場板1xに載置される直前又は直後に、吊下げ金具8を押し下げる上記押下工程が実施される。
【0045】
図9に示すように、吊下げ金具8を磁着した状態で、着脱手段19は、上下移動手段20を駆動することにより下降させられ、吊下げ金具8を傾斜姿勢Xとした状態で押し下げる(上記押下工程)。図9(B)に示すように、吊下げ金具8は、傾斜姿勢Xで押し下げられると、窓孔7の縁部に当接することにより傾斜角度を大きくする方向に偏位する可能性があるが、上述のように、テーパ面24b、24bの点接触により、上部円弧部8bが磁力に抗して溝部24に沿って摺擦するように摺動可能に構成しているので、吊下げ金具8は、図9(C)に示すように、溝部24を摺動しつつ傾斜方向に向けて好適に押し下げられる。
【0046】
足場板1を下層足場板1xに載置した後、着脱手段19は、電磁石26のOFFにより吊下げ金具8を離脱した後、上下移動手段20の上動と、進退移動手段21の後退移動により、元の位置に戻される。
【0047】
上記のようにして、移送された足場板1は、吊下げ金具8を下部空間に好適に格納した状態で、下層足場1xの上に載置される。つまり、下層足場板1xの桁側フレーム3の上に、足場板1の桁側フレーム3が当接した状態で載置され、上記を繰り返すことにより、出発位置P1から目的位置P2に向けて、順次、足場板1を移送することにより、多数の足場板が安定した状態で積層される。
【符号の説明】
【0048】
1 足場板
2 床材
3 桁型フレーム
4 妻側フレーム
4a ソケット
4b プラグ
5 フレーム(センター不レム)
6 索条
7 窓孔
8 吊下げ金具
10a、10b 保持機構
11 機体
11a 長手フレーム
11b 短手フレーム
12 昇降機構
13 往復機構
14 プッシュロッド
15 アーム
16 制御装置
16a ユニット
17 マウント部材
18 軸支部材
19 着脱手段
20 上下移動手段
21 進退移動手段
22 ブラケット
23 固着手段
24 溝部
24a 凹部
24b テーパ面
25 溝部材
26 電磁石
図1
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