特許第6368215号(P6368215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368215部品実装装置、表面実装機、及び部品の実装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368215
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】部品実装装置、表面実装機、及び部品の実装方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-205630(P2014-205630)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-76579(P2016-76579A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 充
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−088570(JP,A)
【文献】 特開2002−057496(JP,A)
【文献】 特開2006−108138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド支持体に対して移動可能に取り付けられた装着部と、
前記装着部に対する取付部とノズル部を有し、部品を吸着して基板に実装する複数の吸着部と、
複数の前記吸着部の各取付部の側面にそれぞれ設けられ、吸着部側パラメータ情報を含む、固有の識別情報と、
前記ヘッド支持体に取り付けられ、前記吸着部に対して保持された部品の撮影及び前記取付部の側面に設けられた前記固有の識別情報の撮影を行う部品認識カメラと、
前記部品認識カメラにより撮影した前記固有の識別情報の画像データから、前記吸着部側パラメータ情報を認識する画像処理部と、
前記吸着部の位置制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の吸着部の各々について、前記吸着部側パラメータ情報に基づいて、前記部品を前記基板に実装するときの前記吸着部による前記部品の吸着位置の位置制御及び前記基板に対する前記部品の実装位置の位置制御を補正する補正処理を実行する補正処理部を有する部品実装装置。
【請求項2】
前記装着部は、装着部側パラメータ情報を有し、
前記制御部は、前記複数の吸着部の各々について、前記吸着部側パラメータ情報と前記装着部側パラメータ情報とを組み合わせることで、前記吸着位置の位置制御及び前記実装位置の位置制御を補正するための補正用データを算出する算出処理を実行する算出処理部を有する、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記装着部は、前記算出処理において前記吸着部側パラメータ情報の各々と組み合わされる共通の前記装着部側パラメータ情報を有する、請求項2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記部品認識カメラは、前記装着部に装着された前記複数の吸着部について前記固有の識別情報の画像を一度に撮影し、
前記画像処理部は、一度に撮影された前記複数の吸着部の前記固有の識別情報から、複数の前記吸着部側パラメータ情報を一度に読み取る、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の部品実装装置を備える表面実装機。
【請求項6】
ヘッド支持体に対して移動可能に取り付けられた装着部と、前記装着部に対する取付部とノズル部を有し部品を吸着して基板に実装する複数の吸着部と、複数の前記吸着部の各取付部の側面にそれぞれ設けられ、吸着部側パラメータ情報を含む、固有の識別情報と、前記ヘッド支持体に取り付けられ、前記吸着部に対して保持された部品の撮影及び前記取付部の側面に設けられた前記固有の識別情報の撮影を行う部品認識カメラと、前記部品認識カメラにより撮影した前記固有の識別情報の画像データから前記吸着部側パラメータ情報を認識する画像処理部と、を備える部品実装装置を用いた部品の実装方法であって、
前記部品を前記基板に実装するときに、前記複数の吸着部の各々について、前記吸着部側パラメータ情報に基づいて、前記吸着部による前記部品の吸着位置の位置制御及び前記基板に対する前記部品の実装位置の位置制御を補正する補正工程を備える部品の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、部品の実装する部品実装装置、その部品実装装置を備える表面実装機、及び部品の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を吸着する複数の吸着ノズルを備え、この吸着ノズルで吸着した電子部品をプリント基板上に実装する部品実装装置が知られている。この種の部品実装装置において用いられる吸着ノズルは、製造時における組立誤差や加工誤差によって吸着ノズル毎に固有のずれが生じることがある。各吸着ノズルにこのようなずれが生じると、電子部品をプリント基板に実装するときに、吸着ノズルによる電子部品の吸着位置やプリント基板に対する電子部品の実装位置がずれ、電子部品の実装精度が低下する虞がある。
【0003】
下記特許文献1には、精度の高い部品装着作業を行うことができる部品実装装置が開示されている。この部品実装装置は、各吸着ノズルが取り付けられる複数のノズル取り付け部を有しており、各吸着ノズルがノズル取り付け部に取り付けられた状態で各吸着ノズルについて補正用データを読み出し、読み出した補正用データに基づいて各吸着ノズルの位置制御の補正を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−254885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される部品実装装置では、各ノズル取り付け部と各吸着ノズルとが1対1で対応する形で、各吸着ノズルの取り付け位置が予め定められている。そして、各ノズル取り付け部から得られる取り付け先コードと各吸着ノズルから得られるノズルコードとを組み合わせて成るノズルデータから上記補正用データを読み出すようになっている。このため、例えば破損や紛失等により一部の吸着ノズルを別の吸着ノズルに交換した場合や、異なる部品実装装置の間で吸着ノズルを交換した場合、交換した吸着ノズルをノズル取り付け部に対応させた形で取り付けることができなかった。その結果、交換した吸着ノズルについて位置制御の補正を行うことができず、部品の実装精度を高めることができなかった。
【0006】
本明細書で開示される技術は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、部品を吸着する吸着部を備える部品実装装置において、吸着部を交換等した場合であっても、部品の実装精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、各々が固有の識別情報を有し、部品を吸着して基板に実装する複数の吸着部と、前記固有の識別情報から得られる固有の吸着部側パラメータ情報を読み取る読取部と、少なくとも前記吸着部の位置制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の吸着部の各々について、前記読取部で読み取った前記吸着部側パラメータ情報に基づいて、前記部品を前記基板に実装するときの前記吸着部による前記部品の吸着位置の位置制御及び前記基板に対する前記部品の実装位置の位置制御を補正する補正処理を実行する補正処理部を有する部品実装装置に関する。
【0008】
上記の部品実装装置では、制御部の補正処理部は、各吸着部から読み取った固有の吸着部側パラメータ情報に基づいて、部品を実装するときの各吸着部による部品の吸着位置の位置制御及び部品の実装位置の位置制御をそれぞれ補正する。このため、破損や紛失等により一部の吸着部を別の吸着部に交換した場合や、異なる部品実装装置の間で吸着部を交換した場合であっても、交換した吸着部から固有の吸着部側パラメータ情報を読み取り、読み取った吸着部側パラメータ情報に基づいて交換した吸着部の位置制御を補正することができる。このように上記の部品実装装置では、吸着部を交換等した場合であっても、交換した吸着部の位置制御を補正することができ、部品の実装精度を高めることができる。なお、本明細書でいう「吸着部の位置制御を補正する」とは、吸着部による部品の吸着位置を補正することと、基板に対する部品の実装位置を補正することの両者を含むものとする。
【0009】
上記の部品実装装置は、前記複数の吸着部が装着される装着部を備え、前記装着部は、装着部側パラメータ情報を有し、前記制御部は、前記複数の吸着部の各々について、前記吸着部側パラメータ情報と前記装着部側パラメータ情報とを組み合わせることで、前記吸着位置の位置制御及び前記実装位置の位置制御を補正するための補正用データを算出する算出処理を実行する算出処理部を有してもよい。
【0010】
この構成では、制御部は、吸着部側パラメータ情報と装着部側パラメータ情報とを組み合わせることで、部品を実装するときの各吸着部の位置制御を補正するための補正用データを算出する。このため、吸着部側パラメータ情報のみで吸着部の位置制御を補正する場合と比べて部品の実装精度をより高めることができる。また、装着部における各吸着部の装着位置に拘わらず補正用データを算出でき、この補正用データを用いて上記吸着位置の位置制御及び上記実装位置の位置制御を補正することができるため、例えば装着部における各ノズル取り付け部に対して各吸着ノズルの取り付け位置が予め定められている従来の構成と比べて、補正用データを算出するために要する時間を短縮することができる。
【0011】
上記の部品実装装置において、前記装着部は、前記算出処理において前記吸着部側パラメータ情報の各々と組み合わされる共通の前記装着部側パラメータ情報を有してもよい。
【0012】
上記の構成では、各吸着部側パラメータ情報と組み合わされる装着部側パラメータ情報が共通しているので、装着部において各吸着部を交換した場合であっても、各吸着部についての補正用データが変わることがない。このため、装着部において各吸着部を交換した場合に、補正用データを即座に算出することができ、算出処理を実行するために要する時間を短縮することができる。
【0013】
上記の部品実装装置において、前記固有の識別情報は前記固有の吸着部側パラメータ情報を含み、前記読取部は、前記固有の識別情報を読み取り可能であり、前記固有の識別情報を読み取ることで前記固有の吸着部側パラメータ情報を読み取ってもよい。
【0014】
この構成によると、各吸着部から固有の識別情報を読み取ることで、各吸着部から固有のパラメータ情報を直接読み取ることができる。このため、固有の識別情報から固有の吸着部側パラメータ情報を得るための作業を省略することができ、各吸着部の位置制御の補正を容易に行うことができる。なお、固有の吸着部側パラメータ情報を含む固有の識別情報の一例としては、例えばQRコード(登録商標)を用いることができる。
【0015】
上記の部品実装装置において、前記読取部は、前記複数の吸着部が前記装着部に装着された状態で、複数の前記吸着部側パラメータ情報を一度に読み取り可能とされてもよい。
【0016】
この構成によると、複数の吸着部の各々から固有のパラメータ情報を一度に直接読み取ることができる。このため、各吸着部の位置制御の補正を一層容易に行うことができる。
【0017】
上記の部品実装装置において、前記読取部は、前記固有の識別情報の各々に対応付けられた前記固有の吸着部側パラメータ情報を読み取ってもよい。
【0018】
この構成によると、例えば固有の識別情報の各々と固有の吸着部側パラメータ情報の各々とが対応付けられた対応表等を用意することで、固有の識別情報から固有の吸着部側パラメータ情報を得ることができる。このため、各吸着部が極めて小さいサイズである等、各吸着部に吸着部側パラメータ情報を直接付与することができないような場合であっても、各吸着部から吸着部側パラメータ情報を間接的に読み取ることができる。
【0019】
本明細書で開示される他の技術は、上記の部品実装装置を備える表面実装機に関する。
【0020】
本明細書で開示される他の技術は、各々が固有の識別情報を有し、部品を吸着して基板に実装する複数の吸着部と、前記固有の識別情報から得られる固有の吸着部側パラメータ情報を読み取る読取部と、を備える部品実装装置を用いた部品の実装方法であって、前記部品を前記基板に実装するときに、前記複数の吸着部の各々について、前記吸着部による前記部品の吸着位置の位置制御及び前記基板に対する前記部品の実装位置の位置制御を補正する補正工程を備える部品の実装方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示される技術によれば、部品を吸着する吸着部を備える部品実装装置において、吸着部を交換等した場合であっても、部品の実装精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】表面実装機の平面図
図2】ヘッドユニットを正面から視た拡大正面図
図3】吸着ノズルを撮像する際のヘッドユニットを正面から視た拡大正面図
図4】吸着ノズルの拡大正面図
図5】ノズル部が取付部に対してずれて組み付けられた状態及び傾いて組み付けられた状態の一例を示す吸着ノズルの拡大正面図
図6】表面実装機の電気的構成を示すブロック図
図7】実施形態1のパラメータ情報更新処理の流れを示すフローチャート
図8】補正用データを算出するためのテーブル
図9】実装処理の流れを示すフローチャート
図10】実施形態2に係る吸着ノズルの拡大正面図
図11】実施形態2のパラメータ情報更新処理の流れを示すフローチャート
図12】対応表シートを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(表面実装機の全体構成)
図面を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、図1に示す表面実装機1について例示する。なお、表面実装機1は、以下に示す各実施形態において同様の構成とされる。表面実装機1は、基台10と、プリント基板(基板の一例)P1を搬送するための搬送コンベア20と、プリント基板P1上に電子部品(部品の一例)E1を実装するための部品実装装置30と、部品実装装置30に電子部品E1を供給するためのフィーダ型供給装置40等とを備えている。
【0024】
基台10は、平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされる。また、基台10における搬送コンベア20の下方には、プリント基板P1上に電子部品E1を実装する際にそのプリント基板Pをバックアップするための図示しないバックアッププレート等が設けられている。以下の説明では、基台10の長辺方向(図1の左右方向)及び搬送コンベア20の搬送方向をX軸方向とし、基台10の短辺方向(図1の上下方向)をY軸方向とし、基台10の上下方向(図2の上下方向)をZ軸方向とする。
【0025】
搬送コンベア20は、Y軸方向における基台10の略中央位置に配置され、プリント基板P1を搬送方向(X軸方向)に沿って搬送する。搬送コンベア20は、搬送方向に循環駆動する一対のコンベアベルト22を備えている。プリント基板P1は、両コンベアベルト22に架設する形でセットされるようになっている。本実施形態では、プリント基板P1は、搬送方向の一方側(図1で示す右側)からコンベアベルト22に沿って基台10上の作業位置(図1の二点鎖線で囲まれる位置)に搬入され、作業位置で停止して電子部品E1の実装作業がされた後、コンベアベルト22に沿って他方側(図1で示す左側)に搬出されるようになっている。
【0026】
フィーダ型供給装置40は、搬送コンベア20の両側(図1の上下両側)においてX軸方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。これらのフィーダ型供給装置40には、複数のフィーダ42が横並び状に整列して取り付けられている。各フィーダ42は、複数の電子部品E1が収容された部品供給テープ(不図示)が巻回されたリール(不図示)、及びリールから部品供給テープを引き出す電動式の送出装置(不図示)等を備えており、搬送コンベア側に位置する端部から電子部品E1が一つずつ供給されるようになっている。
【0027】
部品実装装置30は、基台10及びフィーダ型供給装置40等の上方に設けられる一対の支持フレーム31と、ヘッドユニット(装着部の一例)32と、ヘッドユニット32を駆動するヘッドユニット駆動機構とから構成される。各支持フレーム31は、それぞれX軸方向における基台10の両側に位置しており、Y軸方向に延びている。支持フレーム31には、ヘッドユニット駆動機構を構成するX軸サーボ機構及びY軸サーボ機構が設けられている。ヘッドユニット32は、X軸サーボ機構及びY軸サーボ機構によって、一定の可動領域内でX軸方向及びY軸方向に移動可能とされている。
【0028】
Y軸サーボ機構は、Y軸方向に延びる形で各支持フレーム31に設置されたY軸ガイドレール34Yと、Y軸方向に延びる形で各Y軸ガイドレール34Yに取り付けられ、図示しないボールナットが螺合されたY軸ボールねじ36Yと、Y軸ボールねじ36Yに付設されたY軸サーボモータ38Yとを有している。各Y軸ガイドレール34Yには、X軸方向に延びる形でボールナットに固定されたヘッド支持体39が取り付けられている。Y軸サーボモータ38Yが通電制御されると、Y軸ボールねじ36Yに沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体39、及び次述するヘッドユニット32がY軸ガイドレール34Yに沿ってY軸方向に移動する。
【0029】
X軸サーボ機構は、X軸方向に延びる形でヘッド支持体に設置されたX軸ガイドレール34X(図2参照)と、X軸方向に延びる形でヘッド支持体39に取り付けられ、図示しないボールナットが螺合されたX軸ボールねじ36Xと、X軸ボールねじ36Xに付設されたY軸サーボモータ38Xとを有している。X軸ガイドレール34Xには、その軸方向に沿ってヘッドユニット32が移動自在に取り付けられている。X軸サーボモータ38Xが通電制御されると、X軸ボールねじ36Xに沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたヘッドユニット32がX軸ガイドレール34Xに沿ってX軸方向に移動する。
【0030】
ヘッドユニット32は、フィーダ型供給装置40から基台10上に供給される電子部品E1を取り出してプリント基板P1上に実装する。ヘッドユニット32には、図2に示すように、電子部品E1の実装動作を行う実装ヘッド52が列状をなして複数個搭載されている。各実装ヘッド52は、ヘッドユニット32の下面から下向きに突出しており、その先端には電子部品E1を負圧によって吸着する吸着ノズル(吸着部の一例)54がそれぞれ設けられている。なお、各吸着ノズル54は、各実装ヘッド52に対して脱着可能となっている。
【0031】
各実装ヘッド52は、R軸サーボモータ38R(図4参照)等によって軸周りの回転動作が可能とされている。また、各実装ヘッド52は、Z軸サーボモータ38Z(図4参照)等の駆動によってヘッドユニット32のフレーム32Aに対して上下方向に昇降可能とされている。表面実装機1では、これらの各種サーボモータ38X,38Y,38Z,38Rが駆動されることにより、フィーダ型供給装置40から供給される電子部品E1の吸着位置及びプリント基板P1に対する実装位置が最適な位置となるように制御されるようになっている。
【0032】
なお、ヘッドユニット32には、基板認識カメラC1(図4参照、図1及び図2では不図示)が設けられている。基板認識カメラC1は、撮像面を下に向けた状態でヘッドユニット32に固定されており、ヘッドユニット32とともに一体的に移動する構成とされている。このため、上述したX軸サーボ機構、Y軸サーボ機構を駆動させることで、作業位置に停止したプリント基板P上の任意の位置の画像を、基板認識カメラC1によって撮像することができる。
【0033】
また、図2に示すように、ヘッド支持体39には、下方に延びるカメラユニット39Cが設けられている。カメラユニット39Cは、ヘッド支持体39に固定されており、その下端部には撮像面を吸着ノズル54側(Y軸方向の一方側、図2の手前側)に向けた状態で部品認識カメラ(読取部の一例)C2が設けられている。ヘッドユニット32がX軸方向に移動して部品認識カメラC2の手前側に位置した状態(図3に示す状態)では、部品認識カメラC2は、吸着ノズル54の画像及び吸着ノズル54に吸着された電子部品E1の画像を撮像する。なお、部品認識カメラC2は、ヘッドユニット32が部品認識カメラC2の手前側に位置した状態で、複数の吸着ノズル54の画像を一度に撮像できるようになっている。
【0034】
次に、各吸着ノズル54の構成について説明する。本実施形態の各吸着ノズル54は、図4に示すように、取付部54Aと、ノズル部54Bとから構成される。取付部54Aは、径の異なる2つの円板状の部位からなっており、実装ヘッド52に取り付けられる。ノズル部54Bは、取付部54Aの下面にノズル状に延びる形で組み付けられ、その先端部に電子部品E1が吸着される。各吸着ノズル54は、その製造過程において、ノズル部54Bが取付部54Aに対して組付け加工されることで形成される。
【0035】
2つの円板状の部位からなる取付部54Aのうち、相対的に下側に位置する円板状の部位の側面には、QRコードQ1が印字されている。QRコードQ1は、各吸着ノズル54が実装ヘッド52に取り付けられた状態でカメラユニット39C側(Y軸方向の他方側、図2の奥側)に向くような位置に設けられている。
【0036】
取付部54Aに印字されたQRコードQ1は、各吸着ノズル54を識別するための固有の識別情報であり、吸着ノズル54毎に異なるものとなっている。このQRコードQ1には、吸着ノズル54の製造時における組付け誤差や加工誤差によって吸着ノズル54毎に生じる取付部54Aに対するノズル部54Bのずれ量等に関する固有のパラメータ情報(以下、「吸着部側パラメータ情報」と称する)が含まれている。
【0037】
吸着部側パラメータ情報は、ノズル部54Bが取付部54Aに対する正しい組み付け位置からどの程度ずれて組み付け加工されているのかを示すパラメータ情報である。具体的には、吸着部側パラメータ情報には、ノズル部54Bが取付部54Aの下面に対する正しい組み付け位置からX方向及びY方向にずれて組み付けられている場合(図5(A)参照)のずれ量や、ノズル部54Bが取付部54Aの下面(X−Y平面)に対して傾いて組み付けられている場合(図5(B)参照)の傾き角度等が含まれる。
【0038】
上述したずれ量や傾き角度の測定方法については、限定されるものではなく、既存の方法を用いることができる。例えば治具を用いてずれ量や傾き角度を測定してもよいし、吸着ノズル54を下方から撮像し、撮像した画像を解析することでずれ量や傾き角度を測定してもよい。
【0039】
ここで本実施形態では、カメラユニット39Cの近傍に、部品認識カメラC2によって吸着ノズル54の画像を撮像する際に、吸着ノズル54に対して撮像用の光を照射する図示しないノズル撮像用ライトが設けられている。ノズル撮像用ライトから光を照射した状態で部品認識カメラC2によって吸着ノズル54の画像を撮像することで、吸着ノズル54に印字されたQRコードQ1の画像を撮像できるようなっている。
【0040】
(表面実装機の電気的構成)
次に、表面実装機1の電気的構成について、図6を参照して説明する。表面実装機1の本体は制御部70によってその全体が制御統括されている。制御部70はCPU等により構成される演算処理部71を備えている。演算処理部71には、モータ制御部72と、記憶部73と、画像処理部(読取部の一例)74と、外部入出力部75と、補正処理部76と、算出処理部77と、表示部78と、入力部79と、がそれぞれ接続されている。
【0041】
モータ制御部72は、後述する実装プログラム73Aに従って各ヘッドユニット32のX軸サーボモータ38XとY軸サーボモータ38YとZ軸サーボモータ38ZとR軸サーボモータ38Rとをそれぞれ駆動させる。また、モータ制御部72は、実装プログラム73Aに従って搬送コンベア20を駆動させる。
【0042】
記憶部73は、CPUを制御するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び装置の動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等から構成されている。記憶部73には、次述する実装プログラム73Aと各種データ73Bとが記憶されている。
【0043】
記憶部73に記憶される実装プログラム73Aには、具体的には、実装対象となるプリント基板P1の生産台数に関する基板情報、プリント基板P1に実装される電子部品E1の個数や種類等を含む部品情報、各吸着ノズル54による電子部品E1の吸着位置に関する吸着位置情報、プリント基板P1上の電子部品E1の実装位置に関する実装位置情報等が含まれている。
【0044】
また、記憶部73に記憶される各種データ73Bには、フィーダ型供給装置40の各フィーダ42に保持された電子部品E1の数や種類に関するデータ、表面実装機1の製造時に生じる表面実装機1の本体に対するヘッドユニット32の組付け誤差に関する一つのパラメータ情報(以下、「装着部側パラメータ情報」と称する)等が含まれている。装着部側パラメータ情報は、表面実装機1毎に異なる固有のパラメータ情報であり、例えば表面実装機1の製造時に測定される。
【0045】
また、記憶部73に記憶される各種データ73Bには、後述する更新処理において算出される補正用データ等も含まれている。この補正用データは、各実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54毎に設定され、吸着部側パラメータ情報と上記装着部側パラメータ情報とを組み合わせることにより算出されるデータである。制御部70は、実装プログラム73Aと補正用データとに基づいて、電子部品E1の実装時に各吸着ノズル54の位置制御を行う。
【0046】
画像処理部74には、基板認識カメラC1及び部品認識カメラC2から出力される撮像信号がそれぞれ取り込まれるようになっている。画像処理部74では、取り込まれた各カメラC1,C2からの撮像信号に基づいて、部品画像の解析、基板画像の解析、及び各吸着ノズル54に印字された固有の識別情報の解析がそれぞれ行われるようになっている。
【0047】
具体的には、画像処理部74は、吸着ノズル54に吸着された電子部品E1の画像についての撮像信号に基づいて、各電子部品E1の吸着ノズル54による吸着姿勢を認識する。また、画像処理部74は、吸着ノズル54に印字されたQRコードQ1の画像についての撮像信号に基づいて、そのQRコードQ1を読み取り、そのQRコードQ1に含まれる吸着部側パラメータ情報を認識する。なお、画像処理部74は、部品認識カメラC2で複数の吸着ノズル54の画像が一度に撮像された場合、それらの画像から複数のQRコードQ1を一度に読み取り、複数の吸着部側パラメータ情報を一度に認識することができる。
【0048】
外部入出力部75は、いわゆるインターフェースであって、表面実装機1の本体に設けられる各種センサ類75Aから出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部75は、演算処理部71から出力される制御信号に基づいて、表面実装機1の本体に設けられる各種アクチュエータ類75Bに対する動作制御を行うように構成されている。
【0049】
補正処理部76は、吸着ノズル54による電子部品E1の吸着位置の位置制御及びプリント基板P1に対する電子部品E1の実装位置の位置制御をそれぞれ補正する。算出処理部77は、上記吸着位置の位置制御及び上記実装位置の位置制御を補正するための補正用データを算出する。
【0050】
表示部78は、表示画面を有する液晶表示装置等から構成され、表面実装機1の状態等を表示画面上に表示する。入力部79は、キーボード等から構成され、手動による操作によって外部からの入力を受け付けるようになっている。
【0051】
(表面実装機の動作態様)
本実施形態の表面実装機1では、自動運転中において、搬送コンベア20によるプリント基板P1の搬送作業を行う搬送状態と、基台10上の作業位置に搬入されたプリント基板P1上への電子部品E1の実装作業を行う実装状態と、交互に実行される。各実装ヘッド52に対する吸着ノズル54の取り付け作業は、作業者によって上記自動運転の停止中に行われる。
【0052】
本実施形態の表面実装機1では、制御部70は、各実装ヘッド52に新たに吸着ノズル54が取り付けられると、新たに取り付けられた各吸着ノズル54の吸着部側パラメータ情報に基づいて記憶部73に記憶される補正用データを更新する更新処理を実行する。この補正用データの更新は、新たな吸着ノズル54の取り付けが全て終了したときに自動で実行されてもよいし、入力部79が補正用データを更新させるための入力を外部から受け付けることで実行されてもよい。
【0053】
(更新処理)
本実施形態に係る表面実装機1は以上のような構成であって、次に、表面実装機1における上記更新処理に関する各実施形態を説明する。以下に示す一連の処理は、上述した実装プログラム73Aに従って制御部70が実行する処理である。
【0054】
(実施形態1)
実施形態1の更新処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態の更新処理では、制御部70は、まず、各吸着ノズル54に印字されたQRコードQ1の画像を撮像し、それらの画像を解析することで、各吸着ノズル54に印字されたQRコードQ1を読み取って認識する(S2)。これにより、制御部70は、各吸着ノズル54から固有の吸着部側パラメータ情報を取得する。
【0055】
次に、制御部70の算出処理部77は、記憶部73から装着部側パラメータ情報HP1(図8参照)を読み出し、S2で取得した各吸着部側パラメータ情報と装着部側パラメータ情報HP1とを組み合わせることで、各実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54について、電子部品E1の実装時に各吸着ノズル54の位置制御を補正するための補正用データをそれぞれ算出する(S4)。なお、ヘッドユニット32は一つの装着部側パラメータ情報HP1を有するので、各吸着部側パラメータ情報と組み合わされる装着部側パラメータ情報HP1は共通している。また、制御部70の算出処理部77がS4で実行する処理は、算出処理の一例である。
【0056】
ここで、図8に、補正用データを算出するために制御部70の算出処理部77が有するテーブルT1の一例を示す。テーブルT1の左側から1列目L1は、各実装ヘッド52に割り振られた番号を示している。テーブルT1の左側から2列目L2は、各実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54の吸着部側パラメータ情報を示している。テーブルT1の左側から3列目は、各吸着部側パラメータ情報と組み合わされる共通の装着部側パラメータ情報HP1を示している。
【0057】
テーブルT1に示される吸着部側パラメータ情報において、「X」、「Y」の表示は、取付部54Aに対するノズル部54BのX方向、Y方向へのずれ量を示しており、「θ」の表示は、取付部54Aに対するノズル部54Bの傾き角度を示している。また、テーブルT1に示される装着部側パラメータ情報HP1において、「X」、「Y」の表示は、表面実装機1の本体に対するヘッドユニット32のX方向、Y方向へのずれ量を示しており、「θ」の表示は、表面実装機1の本体に対するヘッドユニット32の傾き角度を示している。
【0058】
テーブルT1では、1番の実装ヘッド52、2番の実装ヘッド52、3番の実装ヘッド52に取り付けられた各吸着ノズル54についての吸着部側パラメータ情報がそれぞれ読み取られて認識された状態を示している。4番の実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54についての吸着部側パラメータ情報が新たに読み取られて認識されると、その吸着部側パラメータ情報が、テーブルT1における4番の実装ヘッド52に対応する吸着部側パラメータ情報の欄に新たに記憶される。
【0059】
テーブルT1では、N(N=1、2、3…)番の実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54の吸着部側パラメータ情報と一つの装着部側パラメータ情報とを組み合わせたデータが、N番の実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54についての補正用データとして算出される。このため、ヘッドユニット42における各実装ヘッド52の間で吸着ノズル54が交換された場合であっても、交換された吸着ノズル54についての補正用データ自体が変わることはなく、補正用データが即座に導出される。
【0060】
図7に示すフローチャートの続きを説明する。制御部70は、S4の処理が終了すると、S4で算出した各吸着ノズル54についての補正用データを記憶部73に記憶させることで、各吸着ノズル54についての補正用データを更新する(S6)。制御部70は、S6の処理が終了すると、更新処理を終了する。
【0061】
(実装処理)
続いて、制御部70が実行する実装処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。実装処理は、上述したように、実装状態において、制御部70が電子部品E1のプリント基板P1上への実装作業を行う処理である。実装処理では、制御部70は、まず、記憶部73に記憶された各吸着ノズル54についての補正用データを読み出す(S10)。
【0062】
次に、制御部70の補正処理部76は、実装プログラムに基づいて、フィーダ型供給装置40から供給される電子部品E1を吸着ノズル54に吸着させる(S12)。このとき、制御部70は、吸着を行う吸着ノズル54について、吸着ノズル54の補正用データに基づいて、電子部品E1が確実に吸着されるように吸着ノズル54の位置制御を補正しながら電子部品E1を吸着する。なお、S12で制御部70の補正処理部76が実行する処理は、補正処理の一例である。
【0063】
次に、制御部70は、部品認識カメラC2によって、S12で吸着した電子部品E1の画像を撮像する(S14)。これにより、制御部70は、吸着ノズル54に吸着された電子部品E1の吸着姿勢を認識する。
【0064】
次に、制御部70は、実装プログラムに基づいて、吸着ノズル54に吸着された電子部品E1を基台10上の作業位置に搬入されたプリント基板P1上の実装位置に実装する(S16)。このとき、制御部70は、吸着を行う吸着ノズル54について、吸着ノズル54の補正用データ及びS14で認識した電子部品E1の吸着姿勢に基づいて、電子部品E1が実装プログラムに基づいた正しい実装位置に実装されるように、吸着ノズル54の位置制御を補正しながら電子部品E1を実装する。なお、S16で制御部70の補正処理部76が実行する処理は、補正処理の一例である。
【0065】
次に、制御部70は、実装プログラムに基づいて、作業位置に搬入されたプリント基板P1に対して、実装対象とされる全ての電子部品E1を実装したのか否かを判断する(S18)。制御部70は、S18で全ての電子部品E1を実装したと判断した場合(S18:YES)、実装処理を終了する。制御部70は、S18で全ての電子部品E1を実装していないと判断した場合(S18:NO)、S12に戻り、未実装の電子部品E1について、S12からS16の処理を繰り返し実行する。
【0066】
(実施形態1の効果)
以上説明したように本実施形態では、制御部70の補正処理部76は、各吸着ノズル54から読み取った固有の吸着部側パラメータ情報に基づいて、電子部品E1を実装するときの各吸着ノズル54による電子部品E1の吸着位置の位置制御及び電子部品E1の実装位置の位置制御をそれぞれ補正する。このため、破損や紛失等により一部の吸着ノズル54を別の吸着ノズル54に交換した場合や、異なる部品実装装置30の間で吸着ノズル54を交換した場合であっても、交換した吸着ノズル54から固有の吸着部側パラメータ情報を読みとって補正用データを更新することができる。そして、更新した補正用データに基づいて、交換した吸着ノズル54について、電子部品E1を実装するときの位置制御を補正することができる。
【0067】
このように本実施形態では、吸着ノズル54を交換等した場合であっても、交換した吸着ノズル54の吸着位置や実装位置を補正することができ、電子部品E1の実装精度を高めることができる。さらに、電子部品E1の実装精度を高めながら、組付け誤差や加工誤差を有する吸着ノズル54を異なる表面実装機1間で用いることができるため、吸着ノズル54の汎用性を高めることもできる。
【0068】
また本実施形態では、制御部70の算出処理部77は、各吸着ノズル54について、各吸着部側パラメータ情報と装着部側パラメータ情報HP1とを組み合わせることで、補正用データを算出する。このため、吸着部側パラメータ情報HP1のみで吸着ノズル54の位置制御を補正する場合と比べて電子部品E1の実装精度をより高めることができる。また、ヘッドユニット32における各吸着ノズル54の装着位置に拘わらず補正用データを算出でき、吸着ノズル54の位置制御を補正することができる。
【0069】
例えばヘッドユニット32において各吸着ノズル54の装着位置を入れ替えた場合であっても、各吸着ノズル54の装着位置に拘わらず、吸着ノズル54毎に吸着部側パラメータ情報を取得できるので、取得した各吸着部側パラメータ情報と一つの装着部側パラメータ情報HP1とを組み合わせることで、各実装ヘッド52に装着された吸着ノズル54についてそれぞれ補正用データを算出することができる。このため、例えばヘッドユニットにおける各実装ヘッドに対して各吸着ノズルの取り付け位置が予め定められている従来の構成と比べて、補正用データの更新処理を実行するために要する時間を短縮することができる。
【0070】
また、各吸着部側パラメータ情報と組み合される装着部側パラメータ情報HP1は共通しているので、各実装ヘッド52の間で各吸着ノズル54を交換した場合であっても、対応する実装ヘッド52の番号が変わるのみであり、各吸着ノズル54についての補正用データが変わることがない。このため、各実装ヘッド52の間で各吸着ノズル54を交換した場合に、補正用データを即座に算出することができ、補正用データを算出するために要する時間を短縮することができる。
【0071】
また本実施形態では、各吸着ノズル54に印字されたQRコードQ1を読み取ることで、そのQRコードQ1に含まれる吸着部側パラメータ情報を直接読み取る。このため、各吸着ノズル54に設けられた固有の識別情報から固有の吸着部側パラメータ情報を得るための作業を省略することができ、各吸着ノズル54の位置制御の補正を容易に行うことができる。
【0072】
また本実施形態では、部品認識カメラC2が複数の吸着ノズル54の画像を一度に撮像できるようになっている。このため、各吸着ノズル54から固有のパラメータ情報及び固有の吸着部側パラメータ情報を一度に直接読み取ることができ、各吸着ノズル54の位置制御の補正を一層容易に行うことができる。
【0073】
(実施形態2)
次に、実施形態2の更新処理について、図10に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、図11に示すように、各吸着ノズル54の取付部54Aに、シリアル番号S1(図11に示す例では「1xxxx」)が印字されている。このシリアル番号S1は、各吸着ノズル54を識別するための固有の識別情報であり、吸着ノズル54毎に異なるものとなっている。なお、表面実装機1のその他の構成、及び制御部70が実行する実装処理については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0074】
また本実施形態では、各吸着ノズル54に印字されたシリアル番号S1からその吸着ノズル54についての固有のパラメータ情報(吸着部側パラメータ情報)を取得するために、各シリアル番号S1〜S3と各吸着部側パラメータ情報とが対応付けられた対応表シートA1(図12参照)を用いる。対応表シートA1では、各吸着部側パラメータ情報がそれぞれ異なるバーコードB1〜B3で示されている。各バーコードB1〜B3には、それぞれ吸着部側パラメータ情報が含まれている。
【0075】
図12の対応表シートA1では、「1xxxx」で示されるシリアル番号S1が「1234567890」で示されるバーコードB1と対応付けられており、「2xxxx」で示されるシリアル番号S2が「1098763432」で示されるバーコードB2と対応付けられており、「3xxxx」で示されるシリアル番号S3が「1002345678」で示されるバーコードB3と対応付けられている。
【0076】
本実施形態の更新処理について説明する。本実施形態の更新処理では、制御部70は、まず、作業者等によって入力部79に吸着部側パラメータ情報の読み取り指示が入力されたのか否かを判断する(S101)。ここでいう吸着部側パラメータ情報の読み取り指示とは、部品認識カメラC2によって上述した対応表シートA1の各バーコードB1〜B3の画像を撮像させることで、画像処理部74に各バーコードB1〜B3に含まれる吸着部側パラメータ情報を読み取らせて認識させるための指示である。
【0077】
例えば、図11に例示する吸着ノズル54についての吸着部側パラメータ情報を読み取らせる場合、作業者は、上記対応表シートA1を用意し、対応表シートA1から図11に例示する吸着ノズル54に印字されたシリアル番号S1と対応付けられたバーコードB1を確認する。そして、作業者は、対応表シートA1のバーコードB1を部品認識カメラC2に近づけ、図11に例示する吸着ノズル54についての吸着部側パラメータ情報の読み取り指示を入力部79に入力する。
【0078】
このようにバーコードB1を部品認識カメラC2に近づけた状態で上記読み取り指示が入力部79に入力されることで、バーコードB1の画像が撮像され、バーコードB1に含まれる吸着部側パラメータ情報が読み取られて認識される。このような作業は、各実装ヘッド52に新たに取り付けられた吸着ノズル54毎に行われる。
【0079】
図10に示すフローチャートの続きを説明する。制御部70は、S101で上記読み取り指示が入力されていないと判断すると(S101:NO)、S101の処理を繰り返し実行する。制御部70は、S101で上記読み取り指示が入力されたと判断すると(S101:YES)、部品認識カメラC2によってバーコードB1〜B3の画像を撮像し、撮像したバーコードB1〜B3と対応するシリアル番号S1〜S3が印字された吸着ノズル54に関する吸着部側パラメータ情報を読み取って認識する(S102)。
【0080】
次に、制御部70は、各実装ヘッド52に新たに取り付けられた全ての吸着ノズル54について、吸着部側パラメータ情報を読み取ったのか否かを判断する(S103)。制御部70は、S103で全ての吸着部側パラメータ情報を読み取っていないと判断した場合(S103:NO)、吸着部側パラメータ情報を読み取っていない吸着ノズル54についての上記読み取り指示が入力されるまで、S101の処理を繰り返し実行する。
【0081】
制御部70の算出処理部77は、S103で全ての吸着部側パラメータ情報を読み取ったと判断した場合(S103:YES)、記憶部73から一つの装着部側パラメータ情報HP1を読み出し、S102で取得した各吸着部側パラメータ情報と一つの装着部側パラメータ情報HP1とを組み合わせることで、各実装ヘッド52に取り付けられた吸着ノズル54について、電子部品E1の実装時に各吸着ノズル54の位置制御を補正するための補正用データをそれぞれ算出する(S104)。なお、制御部70の算出処理部77がS104で実行する処理は、算出処理の一例である。
【0082】
次に、制御部70は、S104で算出した各吸着ノズル54についての補正用データを記憶部73に記憶させることで、各吸着ノズル54についての補正用データを更新する(S106)。制御部70は、S106の処理が終了すると、更新処理を終了する。
【0083】
(実施形態2の効果)
以上説明したように本実施形態では、各吸着ノズル54に固有の識別情報としてシリアル番号S1〜S3が印字されており、対応表シートA1を用意して各シリアル番号S1〜S3に対応付けられた各バーコードB1〜B3の画像を部品認識カメラC2で撮像することで、制御部70の画像処理部74が固有の吸着部側パラメータ情報を読み取って認識する。このため、各吸着ノズル54が極めて小さいサイズである等、各吸着ノズル54に吸着部側パラメータ情報を直接付与することができないような場合であっても、各吸着ノズル54から吸着部側パラメータ情報を間接的に読み取ることができる。
【0084】
このように本実施形態では、吸着ノズル54のサイズや形状等に拘わらず、吸着ノズル54を交換等した場合に交換した吸着ノズル54の吸着位置や実装位置を補正することができ、電子部品E1の実装精度を高めることができる。
【0085】
(他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0086】
(1)上記の各実施形態では、固有の識別情報の一例としてQRコード及びシリアル番号を例示したが、吸着ノズルに設けることが可能なものであればよく、これに限定されない。また、上記の各実施形態では、吸着部側パラメータ情報の一例としてQRコード及びバーコードを例示したが、吸着ノズルに関する固有のパラメータ情報を含むものであればよく、これに限定されない。
【0087】
(2)上記の各実施形態では、更新処理において、ヘッドユニットに設けられた全ての吸着ノズルについての吸着部側パラメータ情報を取得する例を示したが、例えばヘッドユニットに設けられた一部の吸着ノズルのみを交換した場合、交換した吸着ノズルのみから吸着部側パラメータ情報を取得してもよい。
【0088】
(3)上記の各実施形態では、吸着ノズルについての固有の識別情報(QRコード、シリアル番号)が、吸着ノズルの取付部のうち相対的に下側に位置する円板状の部位の側面に印字された構成を例示したが、吸着ノズルにおいて固有の識別情報が印字される箇所については限定されない。例えば吸着ノズルの取付部のうち相対的に下側に位置する円板状の部位の下面に固有の識別情報を印字してもよい。当該下面は印字可能範囲が吸着ノズル54の組付け誤差や加工誤差による影響を受けないため、吸着ノズル54の組付け誤差や加工誤差に拘わらず固有の識別情報を印字することができる。
【0089】
(4)上記の各実施形態では、部品認識カメラで撮像した画像を画像処理部で解析することで、各吸着ノズルに印字された固有の識別情報から吸着部側パラメータ情報を取得する構成を例示したが、固有の識別情報から吸着部側パラメータ情報を取得するための手段については限定されない。
【0090】
(5)上記の各実施形態では、吸着ノズルに固有の識別情報が印字された構成を示したが、吸着ノズルに固有の識別情報を持たせるための方法については限定されない。例えば組付け誤差や加工誤差によって影響を受けない吸着ノズルの部位を吸着ノズル毎にわずかに変えることで、吸着ノズルの形状自体に固有の識別情報を持たせてもよい。
【0091】
(6)上記の各実施形態では、吸着ノズルが取付部とノズル部とから構成された例を示したが、吸着ノズルの構成については限定されない。
【0092】
以上、各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…表面実装機
10…基台
20…搬送コンベア
30…部品実装装置
32…ヘッドユニット(装着部)
40…フィーダ型供給装置
54…吸着ノズル(吸着部)
70…制御部
74…画像処理部(読取部)
76…補正処理部
77…算出処理部
A1…対応表シート
B1…バーコード(吸着部側パラメータ情報)
C1…基板認識カメラ
C2…部品認識カメラ(読取部)
E1…電子部品(部品)
HP1…装着部側パラメータ情報
P1…プリント基板
Q1…QRコード(固有の識別情報、吸着部側パラメータ情報)
S1〜S3…シリアル番号(固有の識別情報)
T1…テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12