(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、LNG、LPG等の低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周側の地盤には、凍結範囲(凍結線の位置)を規制するため、ヒータ設備が設けられる。
かかるヒータ設備は、地下タンクの外周部を囲んで、周方向に所定の間隔で、地盤に縦方向に埋設される複数の側部ヒータを備えている。
【0003】
特許文献1の側部ヒータは、上下方向に延在して、ヒータ液が上部から流入し、下部から流出する内管と、この内管を包囲し、内管の下部から流出するヒータ液を通流させて、上部から排出させる外管と、この外管を包囲し、外管との間に熱伝導用の中詰め材(水等の液体)が充填される保護管(充填管)とを含んで構成される。
【0004】
かかる側部ヒータでは、ヒータ液(一般に温水)は、内管にその上部から流入し、内管内を下向きに流れ、下部から外管の底部に流出する。ヒータ液は、更に、外管と内管との間を上向きに流れ、外管の上部から排出される。このような循環により、外管の表面温度は全長に亘って一定に維持され、側部ヒータの全深度に亘って、外管の表面からヒータ液の熱が地盤に伝導される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タンク各部の保冷材や地盤各部の土の物性値によって、熱の伝導が異なることから、側部ヒータから全深度に亘って均等に熱を供給しても、凍結線を所望の位置に維持することが困難となる場合がある。
【0007】
このため、熱の伝導が悪いと考えられる箇所や熱の追加的供給が必要な箇所などを十分に加熱できるように、局部的に加熱量を変化させることが求められる。
前記特許文献1では、保護管(充填管)内を軸方向に複数の充填領域に区分し、各充填領域内の充填物(水)の充填・排出を制御可能とすることで、熱伝導率を軸方向に変化させ得るようにしている。しかし、構造的に複雑で、コストアップ要因となる。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、加熱量を深度方向に変化させることができる地下タンク用ヒータ設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る地下タンク用ヒータ設備は、低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周部を囲んで地盤に埋設される複数の側部ヒータを備える。各側部ヒータは、上下方向に延在して、ヒータ液が上部から流入し、下部から流出する内管と、この内管を包囲し、内管の下部から流出するヒータ液を通流させて、上部から排出させる外管と、を含んで構成される。
ここにおいて、前記複数の側部ヒータのうち、少なくとも一部の側部ヒータは、上下方向の一部に、他部に比べ地下タンク側の地盤への伝熱量が増大するように、他部とは少なくとも前記外管の形状を異ならせた部位を有する構成とする。
【0010】
前記形状を異ならせた部位は、前記外管の径を局部的に拡径してなる拡径部、あるいは、前記外管を前記内管と共に局部的に屈曲させて地下タンクに接近させた屈曲部であるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外管の形状を深度方向で異ならせるという簡単な構造で、局部的に加熱量を変化させて、凍結線を所望の位置に維持することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す地下タンク用ヒータ設備の縦断面図、
図2は同上の地下タンク用ヒータ設備の平面図である。
【0014】
地下タンク1は、LNG、LPG等の低温液化ガスを貯蔵するコンクリート製の円筒状のタンクで、地中に埋設されている。
そして、地下タンク1の外周側の地盤2に、凍結範囲を規制するため、ヒータ設備3が設けられる。
【0015】
ヒータ設備3は、地下タンク1の外周部を囲んで、周方向に所定の間隔で、地盤2に縦方向に埋設される複数の側部ヒータ4を備えている。
側部ヒータ4は、内管5と、外管6と、保護管7との三重管構造で、予め地盤2にボーリングにより形成した孔に挿入されて、上下方向(深度方向)に延在している。
【0016】
内管5は、その上部にヒータ液(一般に20〜60℃程度の温水)の供給源である環状の供給側ヘッダー管11からの分配用の配管12が接続され、下部が開口端をなしている。従って、内管5は、上下方向に延在して、ヒータ液が上部から流入し、管内の流路を下方向に流れて、下部から流出する。
【0017】
外管6は、内管5を包囲して、内管5との間に環状断面の流路を形成する。外管6はまた、下部が閉塞端をなし、上部は戻し用の配管13を介して、ヒータ液の戻り側である環状の戻り側ヘッダー管14に接続されている。従って、外管6は、内管5を包囲し、内管5の下部から流出するヒータ液を通流させて、上部から排出させる。
【0018】
保護管7は、外管6を包囲して、外管6との間に環状断面の充填空間を形成する。この充填空間には、土相当以上の熱伝導率を有する砂、セメントベントナイトあるいは金属片などの熱伝導用の中詰め材8が充填される。従って、保護管7は、外管6を包囲し、外管6との間に熱伝導用の中詰め材8が充填される。
尚、本実施形態では、側部ヒータ4は、内管5と、外管6と、保護管7との三重管構造としたが、保護管7が省略される場合もある。この場合は、地盤に形成した立孔に内管5と外管6とからなる側部ヒータ4を挿入し、立孔と側部ヒータ4との間の空隙に熱伝導用の中詰め材8を充填する。
【0019】
かかる側部ヒータ4においては、供給側ヘッダー管11から配管12を介して供給されるヒータ液は、内管5にその上部から流入し、内管5内を下向きに流れ、下部から外管6の底部に流出する。ヒータ液は、更に、外管6と内管5との間を上向きに流れて、外管6の上部から排出され、配管13を介して戻り側ヘッダー管14へ戻る。
【0020】
戻り側ヘッダー管14と供給側ヘッダー管11とは、加熱槽(図示せず)を介して、つながっている。従って、戻り側ヘッダー管14に戻されたヒータ液は、加熱槽にて加熱された後に、供給側ヘッダー管11へ戻される。これにより、ヒータ液は、内管5及び外管6を流れることで、温度低下するが、再加熱されることで、供給側ヘッダー管11内のヒータ液の温度は一定に保持される。
【0021】
また、供給側ヘッダー管11でのヒータ液の温度T1と戻り側ヘッダー管14でのヒータ液の温度T2とを監視し、これらの温度差ΔT=T1−T2が常に一定(例えば2℃)となるように、ポンプ(図示せず)によるヒータ液の循環流量を制御するようになっている。
【0022】
このような循環により、外管6の表面温度は全長に亘って一定に維持され、側部ヒータ4の全深度に亘って、外管6の表面からヒータ液の熱が保護管7内の熱伝導用の中詰め材8を介して地盤に伝導される。これにより、凍結線が制御される。
【0023】
ここにおいて、ヒータ設備3を構成する複数の側部ヒータ4のうち、少なくとも一部の側部ヒータ4Aは、上下方向の一部、特に下端部に、他部とは外管6の形状を異ならせた部位、具体的には、外管6の径を局部的に拡径してなる拡径部20を有する構成としてある。
【0024】
このように側部ヒータ4Aの一部に拡径部20を設けることで、他部に比べ地下タンク1側の地盤2への伝熱量を増大させることができ、地下タンク1と側部ヒータ4Aとの間の地盤をより積極的に加熱し、凍結線を一定の範囲内に制御できる。
【0025】
拡径部20による局部的ヒータ効果(伝熱量増大効果)を出すためには、拡径部20の径の設定のみならず、全体流量を適切に設定することが重要であり、これらは熱解析によって求めるのが望ましい。
【0026】
尚、
図1の実施形態では、外管6の径を局部的に拡径してなる拡径部20を外管6の下端部側に設けたが、これは一例で、これに限るものでないことは言うまでもない。すなわち、拡径部20は、熱の伝導が悪いと考えられる箇所や熱の追加的供給が必要な箇所などを十分に加熱できるように、上下方向の適宜の箇所に設けることができる。例えば
図3の変形例に示す拡径部20のごとくである。また、拡径部20は、
図1の位置と
図3の位置の両方に設けるなど、複数箇所に設けてもよい。
【0027】
図4は本発明の他の実施形態を示す地下タンク用ヒータ設備の縦断面図である。
本実施形態においては、ヒータ設備3を構成する複数の側部ヒータ4のうち、少なくとも一部の側部ヒータ4Bは、上下方向の一部、特に下端部に、他部とは外管6(及び内管5)の形状を異ならせた部位、具体的には、外管6を内管5と共に局部的に屈曲させて地下タンク1側に接近させた屈曲部30を有する構成としてある。
尚、本実施形態では、外管6及び内管5の他、保護管7も同様に屈曲させてあり、側部ヒータ4Bについて、その下端部を斜めに屈曲させて地下タンク1側に接近させている。
【0028】
このように側部ヒータ4Bの下端部側に地下タンク1側への屈曲部30を設けることで、他部(上端部及び中間部)に比べ地下タンク1側の地盤2への伝熱量を増大させることができ、地下タンク1の底部と外周部との間の角部付近の地盤をより積極的に加熱し、凍結線を一定の範囲内に制御できる。
【0029】
屈曲部30を有する側部ヒータ4Bの挿入用のボーリング孔は、曲がりボーリングの手法を用いて形成可能である。側部ヒータ4Bについては、屈曲部30をフレキシブルパイプにより構成することで、ストレートな状態で挿入し、曲がり部に達したところで曲がり孔に沿って屈曲させればよい。
【0030】
尚、上記の実施形態では、ヒータ設備3を構成する複数のヒータ4のうち、少なくとも一部の側部ヒータについて、拡径部20を有する側部ヒータ4A、又は、屈曲部30を有する側部ヒータ4Bとする旨、説明した。
これは、地下タンク1の外周側に周方向に等間隔で複数の側部ヒータ4を備える既存のヒータ設備3に対し、後付けで、拡径部20を有する側部ヒータ4A、又は、屈曲部30を有する側部ヒータ4Bを設置してもよいことを意味する。
【0031】
従って、既存のヒータ設備3の適宜の側部ヒータ4、4間に、側部ヒータ4A又は4Bを追加的に設置してもよい。あるいは、既存のヒータ設備3の側部ヒータ4(の設置円)より内側又は外側の同心円上に等間隔で並べて設置してもよい。
また、既存のヒータ設備3の適宜の側部ヒータ4を抜き取り、抜き取った箇所に側部ヒータ4A又は4Bを設置するようにしてもよい。すなわち、一部交換方式としてもよい。
また、新規にヒータ設備3を構築する場合などは、ヒータ設備3を構成する複数のヒータの全てを、拡径部20を有する側部ヒータ4A、又は、屈曲部30を有する側部ヒータ4Bとしてもよい。
【0032】
尚、上記の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【0033】
以下に参考例について説明する。
図5は参考例1を示す縦断面図である。
本参考例1では、ヒータ設備3を構成する複数の側部ヒータ4のうち、少なくとも一部の側部ヒータ4Cは、凍結線を制御したい範囲の中詰め材を高熱伝導率の中詰め材により構成してある。具体的には、保護管7内の下端部側にのみ高熱伝導率の中詰め材8を充填し、他の部位(上端部及び中間部側)は非充填部(空気層)80としてある。この場合の中詰め材8としては、金属片、金属粒子などが好適である。尚、保護管7内の上端部及び中間部側に低熱伝導率の(言い換えれば断熱性を有する)中詰め材を充填するようにしてもよい。
【0034】
このように側部ヒータ4Cの一部にのみ、保護管7内に高熱伝導率の中詰め材8を充填することで、他部に比べ地下タンク1側の地盤2への伝熱量を増大させることができ、地下タンク1と側部ヒータ4Cとの間の地盤をより積極的に加熱し、凍結線を一定の範囲内に制御できる。
【0035】
図6は参考例2を示す縦断面図である。
本参考例2では、ヒータ設備3を構成する複数の側部ヒータ4のうち、少なくとも一部の側部ヒータ4Dは、1本の保護管7内に、ヒータ液(温水)を循環させる高温ヒータ管40Hと、冷却液(常温又はこれより低温の液体)を循環させる低温ヒータ管40Lとを有し、高温ヒータ管40Hに比べ低温ヒータ管40Lを短く形成してある。
【0036】
高温ヒータ管40Hは、内管5と、外管6との二重管構造である。
内管5は、その上部にヒータ液の供給源からの分配用の配管12Hが接続され、下部が開口端をなしている。従って、内管5は、上下方向に延在して、ヒータ液が上部から流入し、管内の流路を下方向に流れて、下部から流出する。
外管6は、内管5を包囲して、内管5との間に環状断面の流路を形成する。外管6はまた、下部が閉塞端をなし、上部は戻し用の配管13Hを介して、ヒータ液の戻り側に接続されている。従って、外管6は、内管5を包囲し、内管5の下部から流出するヒータ液を通流させて、上部から排出させる。
【0037】
低温ヒータ管40Lは、高温ヒータ管40Hと同様、内管5と外管6との二重管構造である。異なる点は、高温ヒータ管40Lより短い(低深度である)点と、冷却液が循環する点とである。冷却液が循環する点に関しては、内管5には冷却液の供給源からの分配用の配管12Lが接続され、外管6は戻り用の配管13Lを介して冷却液の戻り側に接続されている。
【0038】
高温ヒータ管40H及び低温ヒータ管40Lは、1本の保護管7内に並べて挿入され、保護管7内の空隙には、熱伝導用の中詰め材8が充填されている。本例では、低温ヒータ管40Lの方を地下タンク1側に配置してある。
【0039】
上記のように、本参考例2は、低温液化ガスを貯蔵する地下タンク1の外周部を囲んで地盤2に縦方向に埋設される複数の側部ヒータ4を備え、地盤2の凍結範囲を制御可能な地下タンク用ヒータ設備であって、前記複数の側部ヒータ4のうち、少なくとも一部の側部ヒータ4Dは、ヒータ液を循環させる高温ヒータ管40Hと、冷却液を循環させる低温ヒータ管40Lとを含んで構成され、前記低温ヒータ管40Lは、前記高温ヒータ管40Hより短いことを特徴としている。
【0040】
本参考例2によれば、側部ヒータ4Dの上端部及び中間部側では、高温ヒータ管40Hからの伝熱を低温ヒータ管40Lが弱めるように機能するので、地下タンク1側への伝熱量は小となる。これに対し、側部ヒータ4Dの下端部側では、低温ヒータ管40Lが存在せず、高温ヒータ管40Hからの熱がそのまま伝わるので、地下タンク1側への伝熱量が大となる。
従って、側部ヒータ4Dの下端部側からの伝熱量を他部に比べ増大させることができ、地下タンク1と側部ヒータ4Dとの間の地盤をより積極的に加熱し、凍結線を一定の範囲内に制御できる。
【0041】
図7は参考例3を示す平面図、
図8は
図7のA−A及びB−B断面図である。
本参考例3では、地下タンク1の外周側に、高温側部ヒータ4Hと低温側部ヒータ4Lとを周方向に交互に設置している。ここで、高温側部ヒータ4Hに比べ低温側部ヒータ4Lは短い。
【0042】
高温側部ヒータ4Hは、内管5と外管6と保護管7との三重管構造で、ヒータ液(温水)が供給される。
低温側部ヒータ4Lは、同様に、内管5と外管6と保護管7との三重管構造で、冷却液(常温又はこれより低温の液体)が供給される。
【0043】
上記のように、本参考例3は、低温液化ガスを貯蔵する地下タンク1の外周部を囲んで地盤2に縦方向に埋設される複数の側部ヒータ4を備え、地盤2の凍結範囲を制御可能な地下タンク用ヒータ設備であって、前記側部ヒータ4として、ヒータ液を循環させる高温側部ヒータ4Hと、冷却液を循環させる低温側部ヒータ4Lとを備え、前記低温側部ヒータ4Lは、前記高温側部ヒータ4Hより短く、前記高温側部ヒータ4H及び前記低温側部ヒータ4Lは、周方向に交互に配置されることを特徴としている。
【0044】
本参考例3によれば、地下タンク1の深度方向で、上端部及び中間部に相対する部位には、高温側部ヒータ4Hと低温側部ヒータ4Lとから伝熱がなされる。従って、高温側部ヒータ4Hからの伝熱を低温側部ヒータ4Lが弱めるように機能するので、地下タンク1側への伝熱量は小となる。これに対し、下端部に相対する部位には、低温側部ヒータ4Lがないので、高温側部ヒータ4Hのみから伝熱がなされる。従って、高温側部ヒータ4Hからの熱がそのまま伝わるので、地下タンク1側への伝熱量が大となる。
従って、地下タンク1の下端部側への伝熱量を他部に比べ増大させることができ、地下タンク1と側部ヒータ4H、4Lとの間の地盤をより積極的に加熱し、凍結線を一定の範囲内に制御できる。