(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水を、前記第2排水路から前記分離膜装置内に流入させ、前記分離膜装置の前記筒体内の前記チューブ外を通過させて、前記第1排水路を通じて排出する第10工程を、前記第9工程の後に行なう、請求項4に記載の排水処理装置の洗浄方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に使用する排水処理装置の系統図である。
【
図2】本発明の一実施形態に使用する排水処理装置の、汚泥のろ過処理時の状態を示す系統図である。
【
図3】本発明の一実施形態に使用する排水処理装置に使用する分離膜装置の模式断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態における、分離膜装置内に残留している汚泥を排出する状態を示す系統図である。
【
図5】本発明の一実施形態における、分離膜装置内を洗浄水ですすぐ状態を示す系統図である。
【
図6】本発明の一実施形態における、排水処理装置内で苛性ソーダを循環させている状態を示す系統図である。
【
図7】本発明の一実施形態における、分離膜装置内の残留液を排出する状態を示す系統図である。
【
図8】本発明の一実施形態における、分離膜装置内を洗浄水ですすぐ状態を示す系統図である。
【
図9】本発明の一実施形態における、苛性ソーダタンクの洗浄状態を示す系統図である。
【
図10】本発明の一実施形態における、苛性ソーダタンク内の洗浄水を排出する状態を示す系統図である。
【
図11】本発明の一実施形態における、排水処理装置内で塩酸を循環させている状態を示す系統図である。
【
図12】本発明の一実施形態における、分離膜装置内の残留液を排出する状態を示す系統図である。
【
図13】本発明の一実施形態における、分離膜装置内を洗浄水ですすぐ状態を示す系統図である。
【
図14】本発明の一実施形態における、塩酸タンクの洗浄状態を示す系統図である。
【
図15】本発明の一実施形態における、塩酸タンク内の洗浄水を排出する状態を示す系統図である。
【
図16】本発明の一実施形態における、分離膜装置内を水で洗浄する状態を示す系統図である。
【
図17】本発明の一実施形態における、分離膜装置内を水で洗浄する状態を示す系統図である。
【
図18】本発明の一実施形態にかかる洗浄を行った排水処理装置の汚泥ろ過処理能力の経時的変化を示すグラフである。
【
図19】比較例にかかる洗浄を行った排水処理装置の汚泥ろ過処理能力の経時的変化を示すグラフである。
【
図20】本発明の一実施形態にかかる洗浄を行った排水処理装置および比較例にかかる洗浄を行った排水処理装置のフラックス値を示す図である。
【
図21】本発明の一実施形態にかかる洗浄を行った排水処理装置および比較例にかかる洗浄を行った排水処理装置の処理排水量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
まず、本発明に使用することのできる排水処理装置を説明する。
図1は、本発明に使用する排水処理装置1を示す図である。本発明に使用する排水処理装置は、汚泥を貯留する汚泥槽2と、汚泥流入口と汚泥流出口と水流出口とを有し、汚泥槽2から汚泥流入口を通じて流入した汚泥から水を分離して、分離した汚泥と分離した水をそれぞれ汚泥流出口と水流出口から流出させる分離膜装置4と、洗浄剤タンクとしての、苛性ソーダの流入口と流出口を有する苛性ソーダタンク8および塩酸の流入口と流出口を有する塩酸タンク10と、洗浄水流入口と洗浄水流出口を有する洗浄水タンク6とを有する。図中、V1〜V12は開閉弁を示し、P1、P2、P3およびP4は、ポンプを示す。
【0014】
排水処理装置1は、汚泥槽2と分離膜装置4とが、流路20および22により接続された、汚泥の循環路を有している。
図2は、排水処理装置の汚泥のろ過処理時の状態を示す図であり、太線のラインが、汚泥の循環路を示す。なお、
図2、4〜16において、太線のラインが液の流れている部分を示し、黒塗りされた弁は開状態を示し、白抜きの弁は閉状態を示す。
図2に示すように、汚泥のろ過処理時には、弁V1、V2およびV3を開とする。この循環路では、汚泥を、ポンプP1により、汚泥槽2から流路20を通じ分離膜装置4にその汚泥流入口を通じて流入させ、分離膜装置4内においてろ過処理を行い、ろ過処理後の汚泥を、分離膜装置4からその汚泥流出口を通じて流出させ、流路22を通じ汚泥槽2に返送させる。すなわち、汚泥槽2の汚泥流出口は分離膜装置4の汚泥流入口と流路20により連通しており、この流路20には弁V1およびP1が設けられている。また、分離膜装置4には、排水ラインへ通じる弁V2が設けられた排出路24が接続されており、分離した水は、排出路24を通じて排水ラインへ排出される。そして、分離膜装置4の汚泥流出口は汚泥槽2の汚泥流入口と流路22を介して連通しており、この流路22には弁V3が設けられている。また、流路22には弁7が設けられた排出路26が接続されている。また、分離膜装置4には、弁V4が設けられた排出路28が接続されており、弁V4を開とすると分離膜装置4内の分離した水は排出路28を通じて排出される。
【0015】
ここで、分離膜装置4について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態で使用する分離膜装置4の断面を模式的に示す図である。この図に示すように、分離膜装置4は、円筒状の筒体4Aと、筒体4A内にその軸方向に沿って配置された複数のチューブ状の分離膜モジュール4Bとを備える。筒体4Aの軸方向両端面には複数の孔が形成されており、その各孔に各分離膜モジュール4Bの端部が挿入されている。分離膜モジュール4Bは、ろ過機能を有する多孔質のチューブであり、チューブ内を通過するものについて、水を小孔から透過させる一方、汚泥中の懸濁物質をチューブ内にとどめてそのまま通過させる。分離膜モジュール4Bの小孔からチューブ外へ透過した水は、筒体4Aに設けた流路24又は28を介して流出させる。
【0016】
図6において太線で示すように、排水処理装置1は、苛性ソーダタンク8と分離膜装置4とが、流路32、20、22および34により接続された、苛性ソーダの循環路を有している。この循環路では、苛性ソーダが、ポンプP3によって、苛性ソーダタンク8から流路32および20を通じ分離膜装置4にその苛性ソーダ流入口を通じて流入し、分離膜装置4からその苛性ソーダ流出口を通じて流出した苛性ソーダが流路22および34を通じ苛性ソーダタンクに返送される。すなわち、苛性ソーダタンク8の苛性ソーダ流出口と分離膜装置4の汚泥流入口は、弁V8、V9およびポンプP3が設けられた流路32および流路20を介して連通しており、分離膜装置4の汚泥流出口と苛性ソーダタンク8の苛性ソーダ流入口は、流路22および弁V10が設けられた流路34を介して連通している。
【0017】
図11において太線で示すように、排水処理装置1は、塩酸タンク10と分離膜装置4とが流路36、20、22および38により接続された、塩酸の循環路を有している。この循環路では、塩酸が、塩酸タンク10からその塩酸流出口を通じて流出し、流路36および流路20を通じ分離膜装置4にその汚泥流入口を通じて流入し、分離膜装置4からその汚泥流出口を通じて流出した塩酸が流路22および流路38を通じ塩酸タンクに返送される。すなわち、塩酸タンク10の塩酸流出口と分離膜装置4の汚泥流入口は、弁V11、V12およびポンプP4が設けられた流路36および流路20を介して連通しており、分離膜装置4の汚泥流出口と塩酸タンク10の塩酸流入口は、流路22および弁V13が設けられた流路38を介して連通している。
【0018】
また、
図1に示すように、排水処理装置1は、洗浄水タンク6の洗浄水流出口と、分離膜装置4の汚泥流入口が、弁V5、V6及びポンプP2が設けられた流路40および流路20を介して連通している。
【0019】
次に、本発明に係る排水処理装置の洗浄方法の一実施形態を図を用いて説明する。
図2は、汚泥をろ過処理する場合の排水処理装置の状態を示し、
図4〜15は、分離膜装置を洗浄する場合の排水処理装置の状態を示す。
【0020】
(汚泥排出処理の停止工程)
排水処理装置1を洗浄する場合には、まず、ポンプP1を停止させて、汚泥槽2から分離膜装置4への汚泥の供給を停止させる。そして、弁V1、V2及びV3を閉とする。そして、
図4に示すように、弁V4を開として、分離膜装置4内に残留している分離した水を、排出路28を通じて排出する。
【0021】
(分離膜装置内を洗浄水ですすぐ工程)
次に、分離膜装置内を洗浄水ですすぐ。弁V4を閉とし、
図5に示すように、弁V5、V6及びV7を開とし、ポンプP2によって、洗浄水タンク6内の洗浄水を、流路40および流路20を通じて分離膜装置4に流入させ、分離膜装置4から流出した液を、流路22および排出路26を通じて排出する。これにより、分離膜装置4内に残存する汚泥のうち、洗浄水によって流出させることができるものを排出することができる。なお、本明細書において記載する洗浄水は特に限定されず、工水や純水でもよい。
【0022】
(苛性ソーダによる分離膜装置の洗浄工程)
次に、苛性ソーダで分離膜装置を洗浄する。なお、本実施形態において、苛性ソーダを使用するが、本工程において使用する洗浄液は、アルカリ性洗浄液であれば限定されない。
【0023】
弁V5、V6およびV7を閉とし、
図6に示すように、弁V8、V9及びV10を開とし、ポンプP3により、苛性ソーダを、苛性ソーダタンク8、流路32、流路20、分離膜装置4、流路22及び流路34を経由する循環路に循環させる。循環させる回数は、1回でもよく、複数回でもよく、循環させる時間も限定されない。
【0024】
次に、弁V8、V9およびV10を閉とし、
図7に示すように、弁V4を開とし、分離膜装置4内の残留液を、排出路28を通じて排出する。
【0025】
次に、弁V4を閉とし、
図8に示すように、弁V5、V6及びV7を開とし、ポンプP2によって、洗浄水タンク6内の洗浄水を、流路40および流路20を通じて分離膜装置4に流入させ、分離膜装置4から流出した液を、流路22および排出路26を通じて排出する。
【0026】
(苛性ソーダタンクの洗浄工程)
次に、苛性ソーダタンク内の苛性ソーダを洗浄水で洗浄する。弁V7を閉とし、
図9に示すように、弁V5、V6及びV10を開とし、ポンプP2によって、流路40、流路20、分離膜装置4、流路22、流路34を通じて苛性ソーダタンク8内に洗浄水を流入させる。その後、弁V5、V6及びV10を閉とし、
図10に示すように、弁V7、V8及びV9を開として、流路32、流路20、分離膜装置4、流路22および排出路26を通じて苛性ソーダタンク8内の液を排出する。
【0027】
(塩酸による分離膜装置の洗浄工程)
次に、塩酸で分離膜装置を洗浄する。なお、本実施形態において、塩酸を使用するが、本工程において使用する洗浄液は、酸性洗浄液であれば限定されない。
【0028】
次に、弁V7、V8およびV9を閉とし、
図11に示すように、弁V11、V12及びV13を開とし、ポンプP4によって、塩酸を、塩酸タンク10、流路36、流路20、分離膜装置4、流路22および流路38を経由する循環路に循環させる。循環させる回数は、1回でもよく、複数回でもよく、循環させる時間も限定されない。
【0029】
次に、弁V11、V12およびV13を閉とし、
図12に示すように、弁V4を開とし、分離膜装置4内の残留液を、排出路28を通じて排出する。なお、このとき、循環させていた塩酸全てを排出することが好ましいが、全てを排出しなくてもよく、例えば、塩酸タンク内の塩酸が50%、70%、又は80%以上残っていても構わない。
【0030】
次に、弁V4を閉とし、
図13に示すように、弁V5、V6およびV7を開とし、ポンプP2によって、洗浄水タンク6内の洗浄水を分離膜装置4に流路40および流路20を通じて流入させ、分離膜装置4から流出した液を流路22および排出路26を通じて排出する。
【0031】
(塩酸タンクの洗浄工程)
次に、塩酸タンクを洗浄水で洗浄する。弁V7を閉とし、
図14に示すように、弁V5、V6及びV13を開とし、ポンプP2によって、洗浄水タンク内の洗浄水を塩酸タンク10内に、流路40、流路20、分離膜装置4、流路22および流路38を通じて流入させる。その後、弁V5、V6及びV13を閉とし、
図15に示すように、弁V11、V12およびV7を開として、塩酸タンク10内の液を、流路36、流路20、分離膜装置4、流路22および排出路26を通じて排出する。
【0032】
従来法では、この塩酸タンクの洗浄工程の後、汚泥のろ過処理を再開していたが、本発明者は、この塩酸タンクの洗浄工程後の分離膜装置4内のpHが非常に低いことを発見し、分離膜装置の洗浄後の分離膜の目詰まりは、分離膜装置4内の低pHに起因することを見出した。
【0034】
塩酸による分離膜装置の洗浄工程では、
図11において示したように塩酸タンク10および分離膜装置4を経由する循環路に塩酸を循環させる。そして、この循環の終了後に弁V11およびV12を閉とした際に、流路36に塩酸が残留する。その後、
図15において示したように、塩酸タンクの洗浄工程の最終段階において、弁V11及びV12を開とした際に、流路36に残留していた塩酸が、分離膜装置4に流れ込むため、分離膜装置4内のpHが低下する。こうして、従来法における排水処理装置1の洗浄後には、分離膜装置4内のpHが非常に低くなることが判明した。より具体的には、塩酸等の酸性洗浄剤タンクの洗浄後、分離膜装置内、すなわち分離膜モジュールのチューブ内外のpHは、0.4〜1.0程度になっていると考えられる。
【0035】
ここで汚泥は、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤により排水内の物質が凝集したものであり、汚泥のpHは凝集に適した値(pH6〜8程度、通常6.5程度)である。従来の洗浄方法の最後工程である塩酸タンクの洗浄工程後は、上述の通り分離膜装置4内のpHが非常に低いため、排水処理を再開し分離膜装置4内に汚泥を含む排水が流入すると、汚泥のpHが、凝集剤による凝集に適したpHの範囲の下限を分離膜装置内において下回る。より具体的には、分離膜内に汚泥を含む排水が流入した結果、その汚泥を含む排水のpHは4程度になると考えられる。その結果、汚泥中の物質が小径化し、分離膜モジュールのチューブの目詰まりを発生させていることがわかった。
【0036】
(洗浄水による分離膜装置の洗浄工程)
そこで、本発明では、この塩酸タンクの洗浄工程の後、
図16に示すように、洗浄水による分離膜装置4内の洗浄を行う。すなわち、塩酸タンクの洗浄工程の後、弁V11、およびV12を閉として、
図16に示すように、弁V5、V6およびV7を開として、ポンプP2によって、洗浄水タンク6中の洗浄水を、流路40および流路20を通じて分離膜装置4に流入させ、分離膜装置4から流出した液は流路22および排出路26を通じて排出する。この後さらに、
図17に示すように、弁V5、V6およびV7を閉として、弁V2およびV4を開として、水を、流路28を通じて分離膜装置4に流入させ、分離膜装置4から流路24を通じて排出することが好ましい。
【0037】
図3を用いて、本工程における、分離膜装置4の洗浄方法を説明する。まず、洗浄水を、流路20から分離膜モジュール4Bのチューブ内を通過させ、流路22から分離膜装置4外へ流出させることにより、分離膜モジュール4Bのチューブ内を洗浄する。このとき、弁V2及びV4を閉としているため、分離膜装置のうち分離膜モジュールのチューブ内が主に洗浄される。この洗浄は、分離膜装置4から流出する洗浄水のpHが2以上になるまで行うことが好ましく、60分以上行うことが好ましい。次に、洗浄水を、流路28から分離膜装置4内に流入させて、筒体4A内であって分離膜モジュール4Bのチューブ外を通過させ、流路24から分離膜装置4外へ流出させることにより、筒体内であって分離膜モジュール4Bのチューブ外を洗浄する。この洗浄は、分離膜装置4から流出する洗浄水のpHが3以上になるまで行うことが好ましく、10分以上行うことが好ましい。
【0038】
このように、本発明による排水処理装置の洗浄方法は、洗浄剤タンクの洗浄工程の後に、洗浄水で分離膜装置内に残留した酸性洗浄剤を流すことにより、分離膜装置内を通過する汚泥のpHが低くなることに起因する、汚泥中の物質の小径化を抑制することができ、その結果、汚泥中の物質の小径化に伴う分離膜装置の目詰まりの発生を低減させることができる。また、本発明にかかる方法は、既存の排水処理装置をそのまま使用することができる。
【実施例】
【0039】
[実験例1]
汚泥のpHと、その汚泥のろ過処理に使用する分離膜モジュールの詰まり易さとの関係に関する試験である。
【0040】
まず、試料として分離膜モジュールへ流入させる前の排水(実排水)を5リットル用意した。この排水には、凝集剤としてのポリ塩化アルミニウムが排水に対して1500mg/リットルとなるように添加されており、汚泥フロックが形成されている。分離膜へ流入する排水のpHは、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム等)を含むためにpH6.5程度である。
【0041】
この汚泥フロックを含む排水を6つに分注し、各試料のpHを、2、3、4、5、6、7に調整し6種の試料とした。そして、各試料250mlを孔径0.45μmのろ紙を用いてろ過し、ろ過開始から各試料の水が透過しきったまでの時間をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
表1に示すように、排水がpH4の場合に特に通過時間が長かった。つまり、汚泥を含む排水がpH4のとき、特に小径化してろ紙が目詰まりした。
【0043】
上述のように、排水処理装置において、酸性洗浄剤タンクの洗浄後、分離膜装置内(分離膜モジュールのチューブ内外)のpHは、分離膜装置内に流入した酸性洗浄剤に起因して0.4〜1.0程度になっていると考えられ、そこに分離膜装置内に汚泥を含む排水(pH6.5程度)が流入した際に、その汚泥を含む排水のpHは4程度になると考えられる。
【0044】
よって、汚泥を含む排水のpHが4となる時間をできるだけ短くすることで、汚泥の小径化を抑制し、分離膜モジュールのチューブの目詰まりが改善できる。
【0045】
[実験例2]
塩酸による分離膜装置の洗浄後の、洗浄水による分離膜装置の洗浄条件に関する試験である。
【0046】
排水として脱硫排水を用意し、凝集剤として、ポリ塩化アルミニウムを、排水に対して1500mg/リットルとなるように添加し、汚泥を生成した。
【0047】
図1に示す排水処理装置1と同様の構成であって、分離膜装置4の位置に、
図3に示す分離膜装置4と同様の構成を有する分離膜装置を4台並列させた排水処理装置を用意した。この排水処理装置は、最大処理排水量が1000m
3/d程度、17.0m
3/h程度となるよう設計されている。分離膜装置には、チューブラー型の精密ろ過膜(栗田工業社製、商品名:膜モジュール、型番:KM-6355-T3、材質:ポリプロピレン、膜面積:8m
2、孔径:0.2μm)の分離膜モジュールを用いた。汚泥のろ過処理は、
図2に示す循環路で行い、内圧型クロスフロー濾過方式(膜間差圧最大0.3kPa)で行った。排水処理を続け分離膜装置の処理能力が低下すると、処理排水量は1000m
3/hより遥かに低い値となり、安定した排水処理ができなくなる。フラックス値も、同様に低下する。フラックス値は、新品の分離膜モジュールで、通常25m/d程度である。
【0048】
そして、分離膜装置フラックス値5.0m/d以下または分離膜出口流量10m
3/h以下まで低下したとき、
図4〜17に示す、本発明の排水処理装置の洗浄方法を行った。
【0049】
出口流量は、公知の流量計測装置で運転中常時測定した。
【0050】
フラックス値は、排水処理装置の処理能力を表す指標であり、排水処理装置の運転中常時計算され、下記のとおり求められる。
【0051】
排水処理装置に既設される公知の測定機器で計測した分離膜の入口圧力をP
1(MPa)、出口圧力をP
2(MPa)、分離膜処理水圧力をP
3(MPa)とし、同様に排水処理装置に既設される公知の測定機器で計測した排水温をT
1と、分離膜出口流量をF
3(m
3/h)とした。
【0052】
まず、下記の式で温度補正係数(TCF)を求めた。
【0053】
ηt(℃)=100/(2.1482×(T
1-8.435+(8078.4+(T-8.435)
2)
1/2)-120)×0.89352)
TCF(温度補正係数)=ηt(℃)/η25(℃)
また、分離膜の有効圧(P
N)を下記の式で求めた。
【0054】
P
N(有効圧、MPa)=(P
1+P
2)/2-P
3
以上の値を用い、下記の式で分離膜のフラックス値を求めた。
【0055】
フラックス値(m/d)=(F
3(m
3/h)×24(h)×0.098(MPa)×TCF)/(8(m
2)×チューブ本数×P
N(MPa))
図16に示す、本発明の洗浄水による分離膜装置の洗浄工程では、分離膜モジュールのチューブ内の洗浄を75分間行った。その際、洗浄水による洗浄開始前、並びに、洗浄開始から30分後、45分後、60分後、および、75分後の、分離膜モジュールから流路22を通って流出する洗浄水のpHを測定した。その測定結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
分離膜モジュールのチューブ内を75分間洗浄後、
図17に示す、分離膜装置内であって分離膜モジュールのチューブ外の洗浄を10分間行った。その際、洗浄開始前および洗浄開始から10分後の、分離膜装置から排出路24を通って流出する洗浄水のpHを測定した。その測定結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
分離膜モジュールのチューブ内の洗浄によって、45分後には分離膜モジュールから流路22を通って流出した洗浄水のpHは2超えた。また、分離膜モジュールのチューブ外の洗浄によって、10分後には分離膜装置から排出路24を通って流出した洗浄水のpHは3を超えた。
【0058】
つまり、分離膜装置の分離膜モジュール内外のpHは、それぞれ、洗浄水による45分以上のチューブ内洗浄で2を超え、その後の10分以上のチューブ外洗浄で3を超えると考えられた。
【0059】
分離膜モジュールのチューブ内外のpHを、本発明の洗浄工程によってそれぞれ2以上、3以上にしておくことにより、排水処理の再開後に汚泥を含む排水の流入によってその汚泥を含む排水のpHが4程度になる時間を、本発明の洗浄工程を行わない場合よりも短縮でき、汚泥の小径化による分離膜装置の目詰まりを十分抑制できると考えられる。
【0060】
[実験例3]
洗浄水による分離膜装置の洗浄工程を追加したことによる、分離膜装置の排水処理能力の変化に関する試験である。
【0061】
(実施例)
実験例2で使用した汚泥および排水処理装置を用い、実験例2と同様に汚泥のろ過処理を行った。そして、実験例2と同様、分離膜装置フラックス値5.0m/d以下または分離膜出口流量10m
3/h以下となったとき、
図4〜17に示す、排水処理装置の洗浄方法を行った。
図16に示す、分離膜装置の洗浄工程では、分離膜モジュールのチューブ内の洗浄を60分間行った。分離膜モジュールのチューブ内の洗浄後、
図17に示す、分離膜モジュールのチューブ外の洗浄を10分間行った。確実に分離膜モジュールのチューブ内外のpHをそれぞれ2以上、3以上にするために、チューブ内外の洗浄時間(それぞれ60分、10分)は、実験例2の結果から決定した。
【0062】
各月に測定したフラックス値及び処理排水量の結果を
図18に示す。フラックス値は、排水処理装置の運転中常時計算されており、上記式を用いて求めた。各月のフラックス値は、その月の排水処理装置洗浄直後のフラックス値のうちの最大値を表す。
【0063】
(比較例)
図16および
図17に示す洗浄工程を行わないこと以外は、実施例と同様に行った。具体的には、処理中、フラックス値5.0m/d以下または分離膜出口流量10m
3/h以下となったときに、
図4〜
図15までの従来の方法で排水処理装置の洗浄を行い、その後排水処理を再開した。各月に測定したフラックス値及び排水処理量の結果を
図19に示す。
【0064】
(本発明の実施例と従来法による比較例との対比)
本発明の実施例では、比較例に比べて、フラックス値が向上した。分離膜装置のフラックス値は排水処理における通水と共に低下するが、
図18〜21に示すとおり、従来の洗浄方法を行った比較例では、フラックス値は洗浄前の5.0m/dから、15.0m/d程度に向上した一方で、本発明の洗浄方法を行った場合、これまで、分離膜モジュールの取替直後しか出なかったフラックス値(25m/d程度)まで向上した。またフラックス値の最低値も比較例に比べ高くなった。また、フラックス値の年間平均は、本発明の方法が、従来法(比較例)に比べ2.6m/d高かった。
【0065】
加えて、本発明の実施例では比較例に比べて処理排水量も向上した。使用した排水処理装置の最大処理排水量は上述の通り17.0m
3/h程度であるが、本発明の洗浄方法を用いた場合の方が、従来法である比較例に比べて、その最大処理排水量を達成する頻度が高かった。また、処理排水量の年間平均は、本発明の方法が、従来法(比較例)に比べ分離膜装置1台あたり0.7m
3/h高くなった。この処理排水量の増加分は、下記の通り求めた。
【0066】
分離膜装置1台あたりの年間平均処理量(時間あたり)の増加分={(実施例の各月処理排水量の合計)/12(月)}−{(比較例の各月処理排水量の合計)/12(月)}(※小数点第2位切り捨て)
つまり、本発明の方法を用いると、分離膜装置4台分、つまり排水処理装置1台において処理排水量が67.2m
3/d上昇した。この値は下記の通り求めた。
【0067】
排水処理装置1台の処理量(1日あたり)の増加分=0.7(m
3/h)×4(分離膜台数)×24(h)
ここで、排水処理装置の最大処理排水量は上述の通り1000m
3/dであるので、本発明の洗浄方法によって、排水装置の処理能力が6.7%向上した。
【0068】
この効果は、排水処理装置を本発明の方法で洗浄し、汚泥を含む排水のpHが4程度となる期間が短くなり、分離膜装置の目詰まりが抑制されたためと考えられる。
【0069】
以上から、本発明にかかる洗浄方法により、既存の排水処理装置を使用しつつ、洗浄後の分離膜装置の目詰まりの発生を低減させ、排水処理装置の処理能力を向上させることができる。