(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイングアームに沿って配線された線状部材のレイアウトによっては、後輪が跳ね上げる泥等が線状部材に直接当たり、好ましくない場合が想定される。
【0005】
そこで本発明は、スイングアームに沿って配線される線状部材の好適な保護を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鞍乗型車両は、走行駆動力を発生する駆動源を支持する車体フレームと、後輪に設けられた車軸と、前端部が前記車体フレームに回動自在に支持され、後端部が前記車軸を回動自在に支持するスイングアームと、前記スイングアームに沿って配線された線状部材と、前記スイングアームに取り付けられ、前記線状部材と前記後輪との間に位置して前記線状部材を後方から覆う第1壁部を有するカバー部材とを、備える。
【0007】
前記構成によれば、カバー部材の第1壁部により後輪からの泥が線状部材に付着するのを防止できる。
【0008】
前記カバー部材は、前記スイングアームの上側に配置され、前記スイングアームの前部を上方から覆う第2壁部を有してもよい。
【0009】
前記構成によれば、スイングアームの前部を上方から覆う第2壁部を有するカバー部材に前記した第1壁部が形成されるので、部品点数が削減できる。
【0010】
前記第2壁部は、前記線状部材よりも後方かつ上方に位置する部分を含み、前記第1壁部は、前記線状部材よりも後方で前記第2壁部から下方に延びてもよい。
【0011】
前記構成によれば、第2壁部から下方に伝う泥水が第1壁部を伝うことで、線状部材に達することを防止できる。
【0012】
前記第2壁部は、前記線状部材よりも前方の位置から後方に延び、前記線状部材は、前記第2壁部の前部と前記第1壁部とによって、前方及び上方から覆われてもよい。
【0013】
前記構成によれば、線状部材を好適に隠すことができ、美観を向上できる。
【0014】
前記スイングアームのうち車幅方向の外側に向けて最も突出する部位であって車幅方向の両側面を含む膨出部が、車幅方向の内側に位置する内側要素と車幅方向の外側に位置する外側要素とが互いに溶接されて形成されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、スイングアームのうち外観として最も目立つ部分である膨出部の外側要素が、その内側要素と異なる部材で設けられて互いに溶接されるので、外側要素を内側要素に比べて表面粗さの小さい部材で形成することができ、簡単かつ効果的に美観を向上できる。
【0016】
前記スイングアームの前部に前記線状部材を位置決めする第1クランプ部材を更に備え、前記スイングアームは、前記後輪に前方から対向する側面において前方に向けて窪んだ凹部を有し、前記第1クランプ部材は、前記スイングアームの前記凹部に固定されてもよい。
【0017】
前記構成によれば、スイングアームの後輪に前方から対向する側面に第1クランプ部材を固定することで、第1クランプ部材の上方への突出量を抑えることができ、それを覆うカバー部材の高さも抑制できる。また、第1クランプ部材は、スイングアームの後輪に前方から対向する側面の凹部に固定されるため、後輪とスイングアームとを近づけて配置しても、後輪と第1クランプ部材との干渉を防止できる。
【0018】
前記スイングアームの前記後輪の側方に位置する中間部に位置決めする第2クランプ部材を更に備え、前記第2クランプ部材は、前記スイングアームの前記中間部の上面に固定されてもよい。
【0019】
前記構成によれば、第2クランプ部材は、スイングアームの中間部の上面に固定されるため、後輪とスイングアームとを近づけて配置しても、後輪と第2クランプ部材との干渉を防止できる。
【0020】
前記スイングアームは、鋳造部分と非鋳造部分とで構成され、前記鋳造部分に前記線状部材を支持するための支持部が形成されてもよい。
【0021】
前記構成によれば、スイングアームにおける支持部の形成を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、カバー部材の第1壁部により車輪からの泥が線状部材に付着するのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、車両に乗車した運転者から見た方向を基準とする。
【0025】
図1は実施形態に係る自動二輪車1の要部の左側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1では、その車体フレーム2に、略前後方向に延びるスイングアーム3の前端部がピボット軸4により回動自在に支持され、スイングアーム3の後端部に後輪5が回転自在に支持される。車体フレーム2には、走行駆動力を発生する駆動源(例えば、エンジン)及びそれに接続された変速機が搭載され、その変速機の出力軸6から出力される回転動力が無端状の動力伝達ループ7(例えば、ドライブチェーン又はドライブベルト)を介して車軸8に伝達される。車軸8は、後輪5と一体に回転するよう構成されている。後輪5は、車軸8に固定されたホイール18と、ホイール18のリムに装着されたタイヤ19とを有する。車軸8には、動力伝達ループ7が巻き掛けられる従動体9(例えば、スプロケット)が接続されている。即ち、動力伝達ループ7の回転動力は、従動体9を介して後輪5に伝達される。
【0026】
スイングアーム3の後部には、後輪5の車速(回転数)を検出する車速センサ(図示せず)と、油圧により摩擦パッド(図示せず)にブレーキディスク(図示せず)を圧接挟持させるブレーキキャリパ10とが設けられる。前記車速センサに接続されたセンサケーブル11とブレーキキャリパ10に接続された油圧パイプ12とは、スイングアーム3の上端面3dに沿わせて配線され、クランプ部材13〜15によりスイングアーム3に対して位置決めされる。
【0027】
スイングアーム3は、複数の構成要素を互いに溶接することで形成される。具体的には、スイングアーム3は、前後方向に並んだ前部3a、中間部3b及び後部3cが互いに溶接接続されて形成される。スイングアーム3には、前後方向に離れて配置された一対の開口部S1,S2が形成される。スイングアーム3のうち前側の開口部S1と後側の開口部S2とで挟まれて且つ側面視で動力伝達ループ7と重なる部位3baは、動力伝達ループ7よりも車幅方向外方に配置される。スイングアーム3のうち前側の開口部S1の前方で且つ側面視で動力伝達ループ7と重なる部位3aaは、動力伝達ループ7よりも車幅方向内方に配置される。スイングアーム3のうち後側の開口部S2の後方で且つ側面視で動力伝達ループ7と重なる部位3caは、動力伝達ループ7よりも車幅方向内方に配置される。
【0028】
即ち、動力伝達ループ7は、開口部S1,S2を前後方向に通過し、中間部3bは、動力伝達ループ7を車幅方向外方から覆い、前部3a及び後部3cは、動力伝達ループ7を車幅方向外方から覆わない。本実施形態では、スイングアーム3の前部3a及び後部3cは、車幅方向内方に窪んだ前後方向に延びる溝を有し、当該溝の底壁(即ち、前記部位3aa,3ca)が側面視で動力伝達ループ7に対して車幅方向内側から重なる。スイングアーム3の中間部3bは、車幅方向外方に窪んだ前後方向に延びる溝を有し、当該溝の底壁(即ち、前記部位3ba)が側面視で動力伝達ループ7に対して車幅方向外側から重なる。また、車体フレーム2にはライダーが足を載せるためのステップ18が取り付けられ、ステップ18は、車幅方向外方から見た側面視でスイングアーム3の前部3aに重なる。
【0029】
開口部S1,S2は、車幅方向両側に向けて開口するだけでなく、スイングアーム3が延在する前後方向に向けて開口する。スイングアーム3の開口部S1,S2を前後方向に通過する動力伝達ループ7は、ピボット軸4と後輪車軸8とを結ぶ仮想平面よりも上方に位置する上部分と、当該仮想平面よりも下方に位置する下部分とを有し、上部分及び下部分とはピボット軸4及び後輪車軸8の回りで折り返して連なることで、ループ状に形成される。本実施形態では、動力伝達ループ7の上部分がスイングアーム3の下緑部よりも上方に位置して開口部S1,S2を通過し、動力伝達ループ7の下部分がスイングアーム3の下縁部よりも下方を通過する。また、自動二輪車1の左側に立つ人から見てセンサケーブル11及び油圧パイプ12が目に付きにくくなるように、スイングアーム3に樹脂製のカバー部材21が取り付けられる。カバー部材21については後述する。
【0030】
図2は、
図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3の平面図である。
図3は、
図2のスイングアーム3の要部を斜め上後方かつ内側から見た斜視図である。
図2及び3に示すように、スイングアーム3は、複数の構成要素3a,3b(16,17),3cを互いに溶接することで形成される。具体的には、スイングアーム3は、前後方向に並んだ前部3a、中間部3b及び後部3cが互いに溶接接続されてなり、更に、中間部3bは、車幅方向の内側に位置する内側要素16と、車幅方向の外側に位置する外側要素17とが互いに溶接接続されてなる。スイングアーム3は、強度を確保しつつ軽量化を図るために、中空部または開断面部を有する形状である。本実施形態では、分割構造に形成されることで、中空形状のスイングアーム3が形成しやすくなっている。なお、前部3a及び後部3cは、左右に分割されず一体形成されている。
【0031】
スイングアーム3の前部3aは、後輪5よりも前方に位置し、略U字状に二股に分岐した左右一対の前端部を有する。前部3aの各前端部は、車幅方向に間隔をあけて位置し、スイングアーム3の延在方向(前後方向)に延びる。前部3aの各前端部は、それぞれピボット軸4に角変位可能に支持される。例えば、各前端部は、ホイール18のリムの幅方向寸法と同程度またはそれ以上に、車幅方向に間隔をあけて配置される。前部3aの後端部は、車軸中心に対して車幅方向一方に偏って配置され、本実施形態では、左側に偏って配置される。
【0032】
中間部3bは、タイヤ19の前部に対して車幅方向一方に配置され、車幅方向外側からタイヤ19の前部に対向する位置に配置される。中間部3bは、その前端が前部3aに連なり、その後端が後部3cに連なる。中間部3bの車幅方向の内側面及び外側面は、中間部3bの前端と後端に対して中間部3bが車幅方向外側に膨出する形状に形成される。言い換えると、中間部3bは、前部3a及び後部3cに比べて車幅方向の外方(左方)に位置し、スイングアーム3のうち車幅方向の外方に向けて最も突出する膨出部3bbを有している。膨出部3bbの車幅方向外方の表面が外側要素17により形成される。即ち、外側要素17は、動力伝達ループ7の車幅方向外側を通過する部分を含むものである。
【0033】
後部3cは、ホイール18に対して車幅方向一方側に配置され、車幅方向外側からホイール18に対向する位置に配置される。後部3cの後端部には、ホイール18に対して車幅方向一方で車軸8を支持する支持部分が形成される。後部3cは、その前端から当該支持部分に向けてスイングアーム3の延在方向に進むにつれて車幅方向中心に向かって延びる。言い換えると、平面視において、後部3cは、ホイール18の車幅方向一方側の縁辺形状に沿ってスイングアーム3の延在方向に延びる。
【0034】
スイングアーム3の車幅方向外側の構成要素の表面粗さは、車幅方向内側の構成要素の表面粗さよりも小さく形成される。スイングアーム3の複数の構成要素3a,3b(16,17),3cのうち一の構成要素の車幅方向外側の外面の表面粗さは、他の構成要素の外面の表面粗さよりも小さい。具体的には、中間部3bの外側要素17の車幅方向外側の外面の表面粗さは、他の構成要素3a,3c,16の外面の表面粗さよりも小さい。例えば、中間部3bの外側要素17は、板金プレス加工又は鍛造加工により製作された非鋳造部分であり、前部3aと内側要素16と後部3cとは、鋳造加工により製作される鋳造部分である。スイングアーム3のうち板金プレス加工又は鍛造加工により製作される外側要素17と異なる部分(前部3a及び後部3c)に、ピボット軸4又は車軸8を支持する支持部が形成される。そのため、外側要素17の構造が単純化され、外側要素17は塑性加工によって形成しやすくなっている。
【0035】
内側要素16と外側要素17との間の分割線は、平面視において、中間部3bの上端面の車幅方向中間領域をスイングアーム3の延びる方向に沿って延びる。具体的には、内側要素16と外側要素17との間の分割線は、平面視において、中間部3bの上端面の車幅方向外側(左側)に偏った位置にてスイングアーム3の延びる方向に沿って延びる。このようにして、内側要素16の上端面16aと外側要素17の上端面17aとが車幅方向に接続されることで、スイングアーム3の中間部3bの上端面が形成されている。スイングアーム3の前部3a及び後部3bの各々は、その車幅方向の全体が一体に成形される。
【0036】
外側要素17は、車幅方向から見て、ホイール18のリムに装着されたタイヤ19に重なるように配置される。詳細には、外側要素17は、タイヤ19の最も車幅方向の幅が大きくなる部分を車幅方向外方から覆う(
図1参照)。ステップ18は、側面視で外側要素17の前側に位置し、スイングアーム3の前部3aを車幅方向外方から隠す(
図1参照)。動力伝達ループ7が巻き掛けられる従動体9は、外側要素17の後側に位置し、スイングアーム3の後部3cを車幅方向外方から隠す(
図1参照)。即ち、外側要素17は、ステップ18及び従動体9から前後方向に離れて形成される。
【0037】
中間部3bの内側要素16は、中間部3bの外側要素17に比べて、肉厚が大きく形成されること及び/又は補強部材であるリブが形成されることで、強度が高く形成されてもよい。これによって、外側要素17の肉厚を薄くしても、スイングアーム3としての剛性を確保することができる。外側要素17の肉厚を薄くすることで、外側要素17を塑性加工によって形成しやすくなり、歩留まりが向上する。
【0038】
スイングアーム3の前部3a、内側要素16及び後部3cには、線状部材であるセンサケーブル11及び油圧パイプ12(
図1参照)を支持するための支持部3ab,16bが形成されている。但し、スイングアーム3の外側要素17には、センサケーブル11及び油圧パイプ12を支持するための支持部は形成されていない。即ち、鋳造加工により製作された前部3a、内側要素16及び後部3cに支持部3ab,16bが形成され、板金プレス加工又は鍛造加工により製作された非鋳造部分である外側要素17には支持部が形成されていない。鋳造加工は、板金プレス加工又は鍛造加工に比べて、単純でない形状を安定して作り易いため、スイングアーム3の製造効率が高められる。
【0039】
支持部3ab,16bは、センサケーブル11及び油圧パイプ12を保持するクランプ部材13〜15が締結部材22(例えば、ボルト又はネジ)で取り付けられる座部である。スイングアーム3の前部3aは、後輪5に前方から対向する後側の側面において前方に向けて窪んだ凹部3acを有する。凹部3acは、前後方向から見て後輪5と重なるように配置される。凹部3acは、後方に向けて開放されるだけでなく上方に向けても開放された形状である。凹部3acの底部(後輪5と前後方向に対向する面)には、締結部材22が螺着されるネジ孔が形成される。即ち、凹部3acの底部が支持部3abの役目を果たす。
【0040】
スイングアーム3の中間部3bの内側要素16の上端面16aには、上方に突出する凸部16cが設けられる。凸部16cは、中間部3bの車幅方向内側の端面から後輪5に近接する側には食み出していない。凸部16cの上端部には、締結部材が螺着されるネジ孔が形成される。即ち、凸部16cの上端面が支持部16bの役目を果たす。
【0041】
図4は、
図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3にセンサケーブル11及び油圧パイプ12が取り付けられた構成を斜め上後後方かつ外側から見た斜視図である。
図4に示すように、センサケーブル11及び油圧パイプ12は、スイングアーム3の上端面3dに沿って前後方向に延びる。スイングアーム3の支持部3ab,16bには、クランプ部材13〜15が固定され、クランプ部材13〜15によりセンサケーブル11及び油圧パイプ12が位置決め保持される。センサケーブル11及び油圧パイプ12は、スイングアーム3の中間部3bにおいては、内側要素16の上端面16aの直上を通過する。クランプ部材13(第1クランプ部材)は、スイングアーム3の凹部3acに固定される。具体的には、クランプ部材13は、スイングアーム3の凹部3acに上方から差し込まれ、締結部材22にて凹部3acの底部(支持部3ab)に締結される。クランプ部材14(第2クランプ部材)は、スイングアーム3の中間部3bの上面の凸部16c(
図3参照)に固定される。具体的には、クランプ部材14は、スイングアーム3の凸部16c(
図3参照)の上端面(支持部16b)に締結される。
【0042】
図5は、
図2のスイングアーム3にセンサケーブル11、油圧パイプ12及びカバー部材21が取り付けられた構成を示す平面図である。
図5に示すように、カバー部材21は、側壁部21a、前上壁部21b(第2壁部)及び後上壁部21cを有する(
図1も参照)。側壁部21aは、スイングアーム3の中間部3bの車幅方向外側面に沿うように配置され、当該外側面に締結部材(図示せず)で固定される。前上壁部21bは、スイングアーム3の上側に配置され、スイングアーム3の前部3aを上方から覆う。後上壁部21cは、スイングアーム3の上側に配置され、スイングアーム3の中間部3bを上方から覆う。
【0043】
前上壁部21bは、後上壁部21cよりも高く上方に突出する。前上壁部21bは、センサケーブル11及び油圧パイプ12よりも前方の位置から斜め上後方に延び、センサケーブル11及び油圧パイプ12よりも後方かつ上方に位置する部分を有する。即ち、前上壁部21bは、平面視において、スイングアーム3の前部3aのうち後輪5に前方から対向する後側の側面よりも後方に延びる。
【0044】
図6は、
図5のVI−VI線断面図である。
図6に示すように、センサケーブル11及び油圧パイプ12には、それぞれ円筒状の弾性体23,24が外嵌され、弾性体23,24を介してセンサケーブル11及び油圧パイプ12が板状のクランプ部材13により保持される。そのクランプ部材13は、スイングアーム3の凹部3acに上方から差し込まれ、締結部材22にて凹部3acの底部(支持部3ab)に締結される。締結部材22は、凹部3acよりも後方に突出しないように凹部3acに収容される。
【0045】
カバー部材21は、センサケーブル11及び油圧パイプ12からなる線状部材と後輪5との間に位置し、センサケーブル11及び油圧パイプ12を後方から覆う遮蔽壁部21d(第1壁部)を更に有する。遮蔽壁部21dは、センサケーブル11及び油圧パイプ12よりも後方で前上壁部21bから下方に延びる。具体的には、遮蔽壁部21dは、前上壁部21bから斜め後下方に向けて突出するように傾斜している。センサケーブル11及び油圧パイプ12は、前上壁部21bの前部と遮蔽壁部21dとによって、前方、上方及び後方から覆われる。言い換えると、スイングアーム3の前部3aと、カバー部材21の前上壁部21bと、カバー部材21の遮蔽壁部21dとにより囲まれた空間S3が形成され、当該空間S3にセンサケーブル11及び油圧パイプ12が挿通される。なお、遮蔽壁部21dは、後輪5の前方に配置されており、後輪5の側方のクランプ部材14よりも前方の位置で終端している。即ち、遮蔽壁部21dは、クランプ部材14を車幅方向内方から覆わないように、後上壁部21cには遮蔽壁部21dに相当するものは設けられていない。
【0046】
以上に説明した構成によれば、カバー部材21の遮蔽壁部21dにより後輪3からの泥がセンサケーブル11及び油圧パイプ12に付着するのを防止できる。また、スイングアーム3の前部3aを上方から覆う前上壁部21bを有するカバー部材21に遮蔽壁部21dが形成されるので、部品点数が削減できる。また、前上壁部21bから下方に伝う泥水があっても、その泥水が遮蔽壁部21dを伝うことで、センサケーブル11及び油圧パイプ12に達することを防止できる。また、前上壁部21bと遮蔽壁部21dとによって、センサケーブル11及び油圧パイプ12が前方、上方及び後方から覆われるので、美観を向上できる。
【0047】
スイングアーム3のうち軸線方向の外側に向けて最も突出する部位であって軸線方向の両側面を含む膨出部3bbが、軸線方向の内側に位置する内側要素16と軸線方向の外側に位置する外側要素17とが互いに溶接されて形成されているので、スイングアーム3のうち外観として最も目立つ部分である膨出部3bbの外側要素17を内側要素16に比べて表面粗さの小さい部材で形成することができ、簡単かつ効果的に美観を向上させることができる。
【0048】
スイングアーム3は、前後方向に並んだ前部3a、中間部3b(内側要素16及び外側要素17)及び後部3cが互いに溶接接続されて形成されるので、複雑な形状のスイングアーム3を容易に製作することができる。また、動力伝達ループ7は、スイングアーム3の開口部S1,S2を前後方向に通過し、中間部3bが動力伝達ループ7を車幅方向外方から覆うので、側面視において、表面粗さの小さい外側要素17により動力伝達ループ7を隠すことができる。
【0049】
スイングアーム3の後輪5に前方から対向する側面にクランプ部材13を固定することで、クランプ部材13の上方への突出量を抑えることができ、それを覆うカバー部材21の高さも抑制できる。また、クランプ部材13は、スイングアーム3の後輪5に前方から対向する側面の凹部3acに固定されるため、後輪5とスイングアーム3とを近づけて配置しても、後輪5とクランプ部材13との干渉を防止できる。
【0050】
スイングアーム3の中間部3bに位置決めするクランプ部材14は、スイングアーム3の中間部3bの上面に固定されるため、後輪5とスイングアーム3とを近づけて配置しても、後輪5とクランプ部材14との干渉を防止できる。また、スイングアーム3は、鋳造部分(3a,16,3c)と非鋳造部分(17)とで構成され、鋳造部分にセンサケーブル11及び油圧パイプ12を支持するための支持部3ad,16bが形成されるので、スイングアーム3においてクランプ部材13〜15の支持部を容易に形成できる。
【0051】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記実施形態では、本発明を自動二輪車に適用した例について説明したが、ライダーがシートに跨がった状態で運転する鞍乗型車両のいずれにも適用可能である。鞍乗型車両には、自動二輪車の他に、ATV(All-Terrain Vehicle)等が含まれる。また、鞍乗型車両では、エンジン(内燃機関)を駆動源としてもよいし、電動モータを駆動源としてもよいし、エンジン及び電動モータの両方を駆動源としてもよい。
【0052】
また、動力伝達ループ7は、ドライブチェーンでなくドライブベルトでもよく、その場合、プーリが第1カップリング部材31に固定される。駆動源からの回転動力は、動力伝達ループ7の代わりに、ドライブシャフト又はギヤ等の動力伝達部材を用いて後輪5に伝達してもよい。また、スイングアーム3の外側要素17の外面には、その表面粗さがスイングアーム3の他の部分の表面粗さに比べて小さくなるように、表面を滑らかにする表面処理(例えば、研磨加工)を施すようにしてもよい。その場合、外側要素17も他の構成要素3a,3c,16と同様に鋳造加工にて製作してもよい。
【0053】
本実施形態では、スイングアーム3に関して、表面粗さが他の要素よりも小さい外側要素17が中間部3bの外側に形成されるとしたが、これに限られない。例えば、前部3aまたは後部3cを車幅方向に分かれた分割体を互いに溶接して形成されるとした場合、中間部3bの外側要素17が前部または後部の車幅方向外側部分として延長されてもよい。本実施形態では、内側要素16と外側要素17とについて、成形方法を異ならせたがこれに限らない。例えば、内側要素16と外側要素17とで成形方法を同じにして、成形後の後処理を異ならせてもよい。例えば、外側要素17は、内側要素16に比べて、表面粗さを低下させる表面処理を行ってもよい。
【0054】
また、内側要素16及び外側要素17ともに、鋳造成形したとしても、外側要素17の方が成形後の表面粗さが低い鋳造方法を適用してもよい。外側要素17について、塑性加工以外に、例えば切削加工によって形成してもよい。また、外側要素17として、少なくとも動力伝達ループ7よりも車幅方向外側に位置するスイングアーム3部分を含むようにしてもよい。例えば、スイングアーム3の前部3aまたは後部3cなどで、動力伝達ループ7の車幅方向外側に位置する部分が存在する場合には、その外側部分についても、前記の外側要素として形成されるとよい。