特許第6368236号(P6368236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368236
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/30 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B62K19/30
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-254689(P2014-254689)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113065(P2016-113065A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−283903(JP,A)
【文献】 特開2010−052526(JP,A)
【文献】 特開平09−123891(JP,A)
【文献】 特開平11−217095(JP,A)
【文献】 特開平11−208560(JP,A)
【文献】 特開2013−204788(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0099297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/30
B62K 11/00
B62M 25/08
F16D 48/00
B62K 19/38 − 19/42
B62L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載され、エンジンと、前記エンジンから駆動輪への動力伝達経路に介設されて油圧駆動されるクラッチとを有する駆動源ユニットと、
前記車体フレームと前記クラッチの油圧導入部との間に架け渡されて、少なくとも一部が金属パイプで構成される油圧パイプと、
前記金属パイプを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記駆動源ユニットのスロットルボディホルダ及びウォーターホースフィッテングの少なくとも1つに固定される、鞍乗型車両。
【請求項2】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載され、駆動源と、前記駆動源から駆動輪への動力伝達経路に介設されて油圧駆動されるクラッチとを有する駆動源ユニットと、
前記車体フレームと前記クラッチの油圧導入部との間に架け渡されて、少なくとも一部が金属パイプで構成される油圧パイプと、
前記金属パイプを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記駆動源ユニットに固定され、
前記駆動源ユニットは、前記駆動源及び前記クラッチを含むユニット本体と、前記ユニット本体に形成される固定部に固定されて前記駆動源の駆動に用いられる駆動用部品とを有し、
前記保持部材は、前記ユニット本体の前記固定部に前記駆動用部品とともに固定される、鞍乗型車両。
【請求項3】
前記固定部には、雌ネジが形成され、
前記保持部材と前記駆動用部品とが、雄ネジが形成された締結部材によって前記ユニット本体に共締め結合される、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記駆動用部品は、前記固定部に結合されることで前記ユニット本体に形成される開口を塞ぎ、
前記保持部材は、前記駆動用部品を挟んで前記ユニット本体の反対側に配置される、請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載され、駆動源と、前記駆動源から駆動輪への動力伝達経路に介設されて油圧駆動されるクラッチとを有する駆動源ユニットと、
前記車体フレームと前記クラッチの油圧導入部との間に架け渡されて、少なくとも一部が金属パイプで構成される油圧パイプと、
前記金属パイプを保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記駆動源ユニットに固定され、
前記金属パイプには、前記車体フレームの前部に固定される位置決め箇所から前記駆動源ユニットに固定される位置決め箇所まで、前後方向の位置決め間隔が設定される、鞍乗型車両。
【請求項6】
前記金属パイプは、前記車体フレーム側の一端部と、前記駆動源ユニット側の他端部とで位置決めされるとともに、前記他端部寄りの中間部で前記駆動源ユニットに位置決めされ、
前記中間部での位置決め剛性が、前記他端部での位置決め剛性よりも小さく設定される、請求項5に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記金属パイプは、他の金属パイプと平行で、かつ、前記他の金属パイプよりも内側を延び、
前記金属パイプが、車体側面視において前記他の金属パイプに隠れる部分を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源(例えば、エンジン)から駆動輪への動力伝達経路にクラッチが介設されたものがある。そのクラッチには、油圧によって駆動されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−204788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、油圧源となる油庄シリンダは車体に固定され、油圧シリンダからクラッチの駆動部分までの油圧経路において、管路の膨張による反応遅れを防ぐために、部分的に金属パイプが用いられる場合がある。金属パイプを固定するためには、車体フレームに金属パイプ固定用の部分を別途形成する必要があり、フレーム構造が複雑化して、製造コストが増加してしまう。
【0005】
そこで本発明は、フレーム構造の複雑化を防いで、クラッチ駆動用の金属パイプを備える鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載され、駆動源と、前記駆動源から駆動輪への動力伝達経路に介設されたクラッチとを有する駆動源ユニットと、前記車体フレームに固定され、前記クラッチを駆動させる圧力を発生させる油圧源と、前記油圧源と前記クラッチの油圧導入部との間に架け渡されて、少なくとも一部が金属パイプで構成される油圧パイプと、前記金属パイプを保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記駆動源ユニットに固定される。
【0007】
前記構成によれば、クラッチ駆動用の金属パイプを備える鞍乗型車両において、車体フレームに対して保持部材を固定するための専用構造を省略することができ、車体フレームの構造が複雑化することを防ぐことができる。
【0008】
前記駆動源ユニットは、前記駆動源及び前記クラッチを含むユニット本体と、前記ユニット本体に形成される固定部に固定されて前記駆動源の駆動に用いられる駆動用部品とを更に有し、前記保持部材は、前記ユニット本体の前記固定部に前記駆動用部品とともに固定されてもよい。
【0009】
前記構成によれば、駆動源ユニットに対して保持部材を固定するための専用構造を省略することができ、ユニット本体の構造が複雑化することを防ぐことができる。
【0010】
前記固定部には、雌ネジが形成され、前記保持部材と前記駆動用部品とが、雄ネジが形成された締結部材によって前記ユニット本体に共締め結合されてもよい。
【0011】
前記構成によれば、ユニット本体に雌ネジ部分が増えることが防がれ、保持部材を固定することに起因するユニット本体の肉厚増大を抑えることができる。
【0012】
前記駆動用部品は、前記固定部に結合されることで前記ユニット本体に形成される開口を塞ぎ、前記保持部材は、前記駆動用部品を挟んで前記ユニット本体の反対側に配置されてもよい。
【0013】
前記構成によれば、駆動用部品と固定部との間のシール構造を維持しつつ、保持部材をユニット本体に取り付けることができる。なお、ユニット本体の開口を塞ぐ駆動用部品としては、例えば、スロットルボディホルダ、ウォータホースフィッティング、他のカバー部材等が挙げられる。
【0014】
前記金属パイプには、前記車体フレームの前部に固定される位置決め箇所から前記駆動源ユニットに固定される位置決め箇所まで、前後方向の位置決め間隔が設定されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、金属パイプの位置決めスパンを長くすることができ、車体フレームと駆動源との間で生じる相対振動を金属パイプで吸収しやすくできる。
【0016】
前記金属パイプは、前記車体フレーム側の一端部と、前記駆動源ユニット側の他端部とで位置決めされるとともに、前記他端部寄りの中間部で前記駆動源ユニットに位置決めされ、前記中間部での位置決め剛性が、前記他端部での位置決め剛性よりも小さく設定されてもよい。
【0017】
前記構成によれば、金属パイプの中間部での変位を許容しやすく、金属パイプの応力集中を抑制した状態で位置決めできる。
【0018】
前記金属パイプは、他の金属パイプと平行で、かつ、前記他の金属パイプよりも内側を延び、前記金属パイプが、車体側面視において前記他の金属パイプに隠れる部分を有してもよい。
【0019】
前記構成によれば、美観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フレーム構造の複雑化を防いで、クラッチ駆動用の金属パイプを備える鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図2図1に示す自動二輪車の要部をカウル及び過給機等が取り外された状態で左後方から見た斜視図である。
図3図2に示す油圧パイプ及びその周辺を拡大した斜視図である。
図4図3に示す油圧パイプの保持構造を拡大した断面図である。
図5図1に示す自動二輪車の要部をカウル及び過給機等が取り付けられた状態で左後方から見た斜視図である。
図6図1に示す自動二輪車の要部の右側面図である。
図7図6に示す油圧パイプ及びその周辺を拡大して車幅方向内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0023】
図1は、実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、従動輪である前輪2と、駆動輪である後輪3と、前輪2と後輪3との間に配置された車体フレーム4とを備える。車体フレーム4は、ヘッドパイプ5と、ヘッドパイプ5から下方に傾斜しながら後方へ延びる左右一対のメインフレーム6と、メインフレーム6の後部から下方に延びるピボットフレーム7とを有する。メインフレーム6及びピボットフレーム7は、複数のパイプ部材を互いに溶接して形成されたパイプフレームである。前輪2は、フロントフォーク8の下端部にて回転自在に支持され、フロントフォーク8は、ブラケット(図示せず)を介してステアリングシャフト(図示せず)に支持される。ステアリングシャフトは、車体フレーム4のヘッドパイプ5によって回動自在に支持される。前記ブラケットには、左右へ延びるバー型のハンドル9が取り付けられる。ハンドル9には、運転者が左手で把持して操作するクラッチレバー23と、クラッチレバー23の操作に連動してクラッチ駆動用の油圧を発生させる油圧源24が設けられる。なお、油圧源24は、ハンドル9の周りに配置されてもよいし、ハンドル9から離れた位置で車体フレーム4に固定されてもよい。また、油圧源24は、クラッチレバー23の操作に機械的に連動して油圧を発生させるものでもよいし、クラッチレバー23の操作に電気的に連動して油圧を発生させるものでもよい。例えば、クラッチレバー23の移動量を検出し、その移動量に応じた油圧をアクチュエータによって発生させてもよい。
【0024】
ピボットフレーム7には、前後方向に延びるスイングアーム10の前端部が軸支され、スイングアーム10の後端部に後輪3が回転自在に軸支される。ハンドル9の後方には燃料タンク11が設けられ、燃料タンク11の後方に運転者騎乗用のシート12が設けられる。シート12の下方かつ左側には、自動二輪車1を左側に傾斜した状態で自立させるためのサイドスタンド13が設けられる。
【0025】
前輪2と後輪3との間では、駆動源ユニット21がメインフレーム6及びピボットフレーム7に支持された状態で搭載される。駆動源ユニット21は、エンジン26(駆動源)と、エンジン26からの駆動力を変速する変速機27と、エンジン26と変速機27との間の動力伝達経路に介設されたクラッチ28とを有するユニット本体25を備える。エンジン26は、例えば4ストローク多気筒エンジンである。変速機27から出力される駆動力が無端状の動力伝達ループ15(例えば、チェーン)を介して後輪3に伝達される。クラッチ28は、駆動源ユニット21の右側に配置される。駆動源ユニット21のユニット本体25のケース39の左側面には、クラッチ28を駆動する油圧が導入される金属製のホルダからなる油圧導入部29が取り付けられる。即ち、油圧源24から油圧パイプ30を介して駆動源ユニット21の左側の油圧導入部29に導入された油圧が、駆動源ユニット21の内部のプッシュロッド(図示せず)に伝達され、当該プッシュロッドにより駆動源ユニット21の右側のクラッチ28が駆動される。
【0026】
エンジン26の上側後方には、エンジン26に加圧されたエアを供給する過給機16が配置される。過給機16の左側部には、車体左側において前後に延びるエアダクト17の後端部が接続される。エアダクト17の前端部は前方に向けて開放されたエア取入口17aが形成される。即ち、エア取入口17aから流入した走行風がエアダクト17を通って過給機16に流入し、過給機16で加圧されたエアがエンジン26に供給される。車体フレーム4には、フロントカウル19及びサイドカウル20が接続される。
【0027】
図2は、図1に示す自動二輪車1の要部をカウル20及び過給機16等が取り外された状態で左後方から見た斜視図である。図3は、図2に示す油圧パイプ30及びその周辺を拡大した斜視図である。図4は、図3に示す油圧パイプの保持構造を拡大した断面図である。図5は、図1に示す自動二輪車1の要部をカウル20及び過給機16等が取り付けられた状態で左後方から見た斜視図である。図2及び3に示すように、油圧パイプ30は、クラッチ28(図1参照)を駆動する圧力を発生する油圧源24(図1参照)と、駆動源ユニット21の油圧導入部29との間を接続している。油圧パイプ30は、ヘッドパイプ5の後方では左右一対のメインフレーム6で囲まれた空間内を通る。油圧パイプ30は、第1フレキシブルパイプ31と、金属パイプ32と、第2フレキシブルパイプ33とを有する。第1フレキシブルパイプ31及び第2フレキシブルパイプ33は、金属パイプ32の前後方向の両側に設けられ、金属パイプ32は、例えば、高圧ゴムホースで構成される。
【0028】
第1フレキシブルパイプ31は、油圧源24(図1参照)と、ヘッドパイプ5にステー34を介して固定された第1ジョイント部材35とを接続している。金属パイプ32は、第1ジョイント部材35と、駆動源ユニット21に支持された第2ジョイント部材36とを接続している。第2フレキシブルパイプ33は、第2ジョイント部材36と油圧導入部29とを接続している。即ち、金属パイプ32及び第2フレキシブルパイプ33が、車体フレーム4と油圧導入部29との間に架け渡されている。
【0029】
金属パイプ32は、第1フレキシブルパイプ31及び第2フレキシブルパイプ33よりも長尺である。即ち、油圧パイプ30では、金属パイプ部分を有することで、具体的には、フレキシブルパイプ31,33で構成される領域よりも金属パイプ32で構成される領域が長いことで、油圧の伝達が迅速となり、クラッチ28の応答性が向上する。駆動源ユニット21は、エンジン26の駆動に用いられる駆動用部品として、スロットルボディホルダ40及びウォータホースフィッティング41を有する。スロットルボディホルダ40は、ユニット本体25のケース39に形成される第1固定部39aに固定され、ウォータホースフィッティング41は、ユニット本体25のケース39に形成される第2固定部39bに固定される。
【0030】
第1固定部39aは、雌ネジが形成され、エンジン26の吸気ポート(図示せず)の周りに設けられる。スロットルボディホルダ40は、第1固定部39aとスロットルボディ(図示せず)との間に、雄ネジが形成された第1締結部材42(例えば、ボルト)により第1固定部39aに結合されることでユニット本体25に形成される吸気ポート(開口)を塞ぐ。即ち、スロットルボディ(図示せず)からのエアがスロットルボディホルダ40を通ってエンジン26の吸気ポートに供給される。第2固定部39bは、雌ネジが形成され、エンジン26の冷却ジャケットの入口ポート(図示せず)の周りに設けられる。具体的には、第2固定部39bは、エンジン26のシリンダの後面左側に設けられる。ウォータホースフィッティング41は、雄ネジが形成された第2締結部材43(例えば、ボルト)により第2固定部39b結合されることでユニット本体25に形成される入口ポート(開口)を塞ぐ。ウォータホースフィッティング41は、ウォータホース44の先端に設けられる。即ち、ウォータホース44からの冷却水が、ウォータホースフィッティング41を通ってエンジン26の冷却ジャケットの入口ポートに供給される。
【0031】
駆動源ユニット21には、金属パイプ32を保持するための第1保持部材37及び第2保持部材38が固定される。第1保持部材37は、スロットルボディホルダ40に固定された第1ブラケット45と、第1ブラケット45に係止されたクランプ部材46とを有する。第1ブラケット45は、スロットルボディホルダ40を挟んでユニット本体25とは反対側の面に配置される。第1ブラケット45は、スロットルボディホルダ40の左端部に設置され、第1締結部材42によりスロットルボディホルダ40とともに第1固定部39aに共締め結合される。クランプ部材46は、金属パイプ32の中間部32aを保持した状態で第1ブラケット45に係止される。金属パイプ32のうちクランプ部材46が保持する中間部32aは、前後方向に延びている。第1保持部材37は、金属パイプ32の一端部32bよりも他端部32cに近い位置に配置される。
【0032】
図3及び4に示すように、第1ブラケット45は、前後方向に延びてスロットルボディホルダ40の左端部に設置される基板部45aと、基板部45aの前後方向中間部の左端より屈曲して延びて係止孔45cが形成された突出板部45bとを有する。突出板部45bには、クランプ部材46は、金属パイプ32に外嵌されて一対の離間した先端部が形成された断面C形状の保持部46aと、保持部46aの一対の先端部から互いに離れる向きに突出して突出板部45bの上面に当接する一対の鍔部46bと、保持部46aの一対の先端部から係止孔45cを通過するように突出して突出板部45bの下面に係止される矢尻状の係止部46cとを有する。基板部45aと突出板部45bとの間の屈曲ラインは、上下方向かつ前後方向を向いている。金属パイプ32の中間部32aは、突出板部45bが基板部45aに対して撓むことで上下方向及び車幅方向に変位可能である。更に、金属パイプ32の中間部32aは、その軸線方向にクランプ部材46に対して摺動することが許容され、前後方向に変位することが許容される。
【0033】
図2及び3に示すように、第2保持部材38は、ウォータホースフィッティング41に固定された第2ブラケット47と、第2ブラケット47に固定された第2ジョイント部材36とを有する。第2ブラケット47は、ウォータホースフィッティング41を挟んでユニット本体25とは反対側の面に配置される。第2ブラケット47は、第2締結部材43によりウォータホースフィッティング41とともに第2固定部39bに共締め結合される。金属パイプ32の前端部32bが第1ジョイント部材35に接続され、金属パイプ32の後端部32cが第2ジョイント部材36に接続される。金属パイプ32の後端部は、金属パイプ32のうちクランプ部材46で保持された中間部32aとは異なる方向を向いている。具体的には、金属パイプ32の後端部は、左下方を向いている。そのため、金属パイプ32のうち中間部32aと後端部32cとの間の部分は、車幅方向内方に向けて湾曲した湾曲部32dを有しており、湾曲部32dは、スロットルボディホルダ40の後側に配置される。
【0034】
第2ブラケット47は、ウォータホースフィッティング41に設置される基板部47aと、基板部47aの上端より屈曲して延びて第2ジョイント部材36が固定される突出板部47bとを有する。基板部47aと突出板部47bとの間の屈曲ラインは、上下方向かつ車幅方向を向いている。金属パイプ32の後端部32cは、突出板部47bが基板部47aに対して撓むことで上下方向及び車幅方向に変位可能である。
【0035】
金属パイプ32には、車体フレーム4の前部に固定される位置決め箇所(第1ジョイント部材35)から駆動源ユニット21に固定される位置決め箇所(第1保持部材37)まで、前後方向の位置決め間隔が設定される。金属パイプ32は、車体フレーム4側の一端部32bと、駆動源ユニット21側の他端部32cとで位置決めされるとともに、他端部32c寄りの中間部32aで駆動源ユニット21に位置決めされる。
【0036】
金属パイプ32の中間部32aの第1保持部材37による位置決め剛性は、金属パイプ32の他端部32cの第2保持部材38による位置決め剛性よりも小さく設定される。具体的には、第2保持部材38では、第2ブラケット47及び第2ジョイント部材36の両方が金属製であるが、第1保持部材37では、第1ブラケット45が金属製で、クランプ部材46が樹脂製である。また、金属パイプ32の後端部32cは、第2ジョイント部材36に固定されるが、金属パイプ32の中間部32aは、その軸線方向にクランプ部材46に対して摺動することが許容される。金属パイプ32のうち第1ジョイント部材35と第1保持部材37との間の部分は、前後方向に延びており、駆動源ユニット21と同色(例えば、黒色)の弾性材料(例えば、ゴム)からなる保護チューブ48で被覆される。
【0037】
図2及び5に示すように、第2フレキシブルパイプ33は、第2ジョイント部材36から左下後方に向けて緩やかに湾曲して駆動源ユニット21の油圧導入部29に接続される。油圧導入部29の上方には、過給機16に接続されたエアダクト17が前後方向に延びて配置される。第2フレキシブルパイプ33は、エアダクト17を迂回するようにエアダクト17の下側を通って配索される。
【0038】
図6は、図1に示す自動二輪車1の要部の右側面図である。図7は、図6に示す油圧パイプ50,51及びその周辺を拡大して車幅方向内側から見た斜視図である。図6及び7に示すように、自動二輪車1の右側には、メインフレーム6の右側部分に沿ってブレーキ駆動用の第1油圧パイプ50及び第2油圧パイプ51が配索されている。第1油圧パイプ50は第1金属パイプ52を有し、第2油圧パイプ51は第2金属パイプ53を有する。
【0039】
メインフレーム6は、燃料タンク11に沿って斜め下後方へ延びる第1フレーム部6aと、第1フレーム部6aとは異なる方向に延びて第1フレーム部6aに接合される第2フレーム部6bとを有する。第1金属パイプ52及び第2金属パイプ53は、車体側面視にて第2フレーム部6bの下側で第2フレーム部6bに沿って延びる第1部分52a,53aと、車体側面視で第1フレーム部6aに隠れるように第2フレーム部6bの車幅方向内側に沿って延びる第2部分52b,53bを有する。
【0040】
第1金属パイプ52の第1部分52aは、第2金属パイプ53の第1部分53aと平行で、かつ、第2金属パイプ53の第1部分53aよりも内側に位置する。即ち、第1金属パイプ52の第1部分52aは、車体側面視において第2金属パイプ53の第1部分53aに隠れ、第1金属パイプ52の第1部分52aと第2金属パイプ53の第1部分53aとが車体側面視で1本の金属パイプのように見える。
【0041】
第1金属パイプ52の第2部分52bは、第2金属パイプ53の第2部分53bの真上に配置される。即ち、第1金属パイプ52の第2部分52bと第2金属パイプ53の第2部分53bとは、上下に並んで配置される。メインフレーム6の第1フレーム部6aの内側には、金属製のクランプ部材54が固定される。クランプ部材54は、第1フレーム部6aに固定される基部54aと、基部54aに接合されたU字形状の保持部54bとを有する。第1金属パイプ52の第2部分52bと第2金属パイプ53の第2部分53bとは、クランプ部材54の保持部54bにより保持される。第1金属パイプ52及び第2金属パイプ53には、駆動源ユニット21と同色(例えば、黒色)の弾性材料(例えば、ゴム)からなる保護チューブ55,56で被覆される。
【0042】
以上に説明した構成によれば、クラッチ28を油圧駆動するための金属パイプを備える自動二輪車1において、第1保持部材37及び第2保持部材38が駆動源ユニット21に固定されるので、車体フレーム4に対して第1保持部材37及び第2保持部材38を固定するための専用構造を省略することができ、車体フレーム4の構造が複雑化することを防ぐことができる。特に、メインフレーム6が、ダイカストフレームに比べて雌ネジ形成用の肉盛りが行いにくいパイプフレームであるので、製造効率が向上する。また、車体フレーム4が複数のパイプ部材を溶接して形成されため、ダイカストフレームに比べて形状の精度が出にくい。よって、雌ネジ部分を車体フレーム4に形成した場合には、雌ネジ部分の位置に誤差が生じやすいので、駆動源ユニット21の雌ネジ部分に第1保持部材37及び第2保持部材38を固定することで、位置精度を高めることができる。
【0043】
駆動源ユニット21のユニット本体25の第1固定部39a及び第2固定部39bには、雌ネジが形成され、第1保持部材37及び第2保持部材38が、スロットルボディホルダ40及びウォータホースフィッティング41とともに第1締結部材42及び第2締結部材43によってユニット本体25に共締め結合されるので、ユニット本体25に雌ネジ部分が増えることが防がれ、第1保持部材37及び第2保持部材38を固定することに起因するユニット本体25の肉厚増大を抑えることができる。
【0044】
スロットルボディホルダ40及びウォータホースフィッティング41は、第1固定部39a及び第2固定部39bに結合されることでユニット本体25に形成される開口(吸気ポート及び入口ポート)を塞ぎ、第1保持部材37及び第2保持部材38は、スロットルボディホルダ40及びウォータホースフィッティング41のユニット本体25とは反対側の面に設置されるので、第1固定部39a及び第2固定部39bに対するスロットルボディホルダ40及びウォータホースフィッティング41のシール構造を維持しつつ、第1保持部材37及び第2保持部材38をユニット本体25に取り付けることができる。
【0045】
金属パイプ32の車体フレーム4の前部に固定される位置決め箇所(第1ジョイント部材35)から金属パイプ32の駆動源ユニット21に固定される位置決め箇所(第1保持部材37)までの位置決めスパンが長く設定されるので、車体フレーム4と駆動源ユニット21との間で生じる相対振動を金属パイプ32で吸収しやすくできる。また、金属パイプ32の他端部32c寄りの中間部32aで駆動源ユニット21に位置決めされ、中間部32aでの位置決め剛性が、他端部32cでの位置決め剛性よりも小さく設定されるので、金属パイプ32の中間部32aでの変位を許容しやすく、金属パイプ32の応力集中を抑制した状態で位置決めできる。
【0046】
駆動源ユニット21のうち油圧導入部29側となる車幅方向一方側(左側)に位置する雌ネジ部分を活用して金属パイプ32が位置決め固定される。これによって、駆動源ユニット21の車幅方向内側の雌ネジ部分を用いる場合に比べて、ブラケット45,47を短くしやすく、締結部材42,43の着脱もしやすくなる。
【0047】
第1金属パイプ52の第1部分52aは、第2金属パイプ53の第1部分53aと平行で、かつ、第2金属パイプ53の第1部分53aよりも内側を延び、車体側面視において第2金属パイプ53の第1部分53aに隠れるので、美観を向上させることができる。また、第1金属パイプ52の第2部分52bと第2金属パイプ53の第2部分53bとは、車体側面視で第1フレーム部6aに隠れた状態で上下に並んでいるので、美観を損なうことなく、左右一対のメインフレームで囲まれる収容スペースを大きくすることができる。
【0048】
また、金属パイプ32は、第1ブラケット45及び第2ブラケット47を介して駆動源ユニット21に固定されることで、駆動源ユニット21の雌ネジ位置から離れた位置かつ当該雌ネジとは異なる姿勢にて、金属パイプ32を保持することができる。また、クランプ部材46と第2ジョイント部材36とは、車幅方向、互いに上下方向及び前後方向の少なくとも一方にずれて配置されて、金属パイプ32が湾曲部分を有しているので、当該湾曲部分が変形することで取付誤差を吸収することができ、金属パイプ32を取り付けやすくすることができる。
【0049】
また、クランプ部材46及び第2ジョイント部材36は、それぞれ二点以上の部分で締結部材により固定されるので、回り止めが図られる。また、保持部材37,38は、駆動源ユニット21の車幅方向側端面よりも内側に配置されることで、金属パイプ32の取り付けに起因した車体の車幅方向の大型化を防ぐことができる。また、金属パイプ32は、ヘッドパイプ5とスロットルボディとの間の中間領域では、保持部材により保持されていないので、金属パイプ32の変形を許容しやすく、応力集中を防ぐことができる。
【0050】
また、メインフレーム6は、パイプフレーム(トレリスフレーム)にて形成されるので、車体フレーム4に駆動ユニット21を搭載した状態で、パイプフレームの隙間から金属パイプ32をメインフレーム6で囲まれた空間に出し入れしやすく、比較的最後の方の工程で組み付けられる金属パイプ32の脱着作業を容易にすることができる。また、クランプ部材46で保持された金属パイプ32は、エンジン26のシリンダに対して車幅方向に間隔をあけた位置を前方に延びるので、金属パイプ32が振動しても、エンジン26と金属パイプ32との干渉を防ぐことができる。また、第1ジョイント部材35がヘッドパイプ5の側部に配置されるので、ヘッドパイプ5と金属パイプ32とを車幅方向に間隔をあけた位置で保持することができる。よって、金属パイプ32が振動しても、ヘッドパイプ5と金属パイプ32との干渉を防ぐことができる。
【0051】
なお、変形例として、クラッチ駆動用の金属パイプ32は、ブレーキ駆動用の金属パイプ52と同様にして、他の金属パイプ(例えば、ブレーキ駆動用の金属パイプ)と平行で、かつ、当該他の金属パイプよりも内側を延び、金属パイプ32が、車体側面視において前記他の金属パイプに隠れる部分を有するように構成されてもよい。また、前述した実施形態では、保持部材37,38は、駆動源ユニット21の雌ネジ部分にスロットルボディホルダ40及びウォータホースフィッティング41と共締めされたが、他の部品とともに駆動源ユニット21の雌ネジ部分に共締めされてもよい。例えば、保持部材は、エンジンカバーとともに駆動源ユニット21に共締めされてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
4 車体フレーム
21 駆動源ユニット
24 油圧源
25 ユニット本体
26 エンジン(駆動源)
28 クラッチ
29 油圧導入部
30 油圧パイプ
31 第1フレキシブルパイプ
32 金属パイプ
32a 中間部
32b 前端部(一端部)
32c 後端部(他端部)
33 第2フレキシブルパイプ
37 第1保持部材
38 第2保持部材
39 ケース
39a 第1固定部
39b 第2固定部
40 スロットルボディホルダ(駆動用部品)
41 ウォータホースフィッティング(駆動用部品)
42 第1締結部材
43 第2締結部材
52 第1金属パイプ
53 第2金属パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7