特許第6368237号(P6368237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6368237-鞍乗型車両 図000002
  • 特許6368237-鞍乗型車両 図000003
  • 特許6368237-鞍乗型車両 図000004
  • 特許6368237-鞍乗型車両 図000005
  • 特許6368237-鞍乗型車両 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368237
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 11/00 20060101AFI20180723BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20180723BHJP
   B62J 29/00 20060101ALI20180723BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B62J11/00
   B62J99/00
   B62J29/00
   B62M7/02
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-257144(P2014-257144)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-117349(P2016-117349A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−190887(JP,A)
【文献】 特開2009−067283(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/077898(WO,A1)
【文献】 特開2010−195254(JP,A)
【文献】 特開2009−061890(JP,A)
【文献】 実開昭64−008492(JP,U)
【文献】 特開2008−143448(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007041780(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 11/00
B62J 99/00
B62J 29/00
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びる前側フレームと、を有する車体フレームと、
前記前側フレームの下方に配置され、前記前側フレームに支持される原動機と、
前記原動機を制御する制御装置と、
前記ヘッドパイプの前方に設けられ、前記制御装置が固定される支持部材と、
前記支持部材に固定されるメーター装置と、
前記メーター装置の前方及び側方に配置されたカウルと、を備え
前記制御装置は、前記カウルの内側において、前記メーター装置の表示面を含む仮想平面よりも前方に配置され且つ前記メーター装置より車幅方向外方に配置されており、
前記制御装置は、その厚み方向が車幅方向外方を向いた状態で、その前端部から後方に進むにつれて車幅方向外方に傾斜して延びるように傾斜配置されている、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記支持部材に固定されるサイドミラーを更に備える、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記支持部材には、その車幅方向一方側の端部に前記制御装置を支持する部分が形成される、請求項に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記カウルは、車体本体を車幅方向外側から覆い、前記車体フレームに取り付けられるサイドカウルを有し
前記制御装置は、前記サイドカウルの上方に配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記制御装置に電気的に接続され、前記支持部材に固定される接続体を更に備える、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記支持部材のうち前記メーター装置の表示面側とは反対側の裏面に、板状の前記接続体が前記メーター装置に沿うように配置されている、請求項に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記原動機はエンジンであり、
前記エンジンに供給するための空気を圧縮する過給機を更に備える、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後方に延びる車体フレームと、
前記車体フレームに支持されて、走行駆動力を発生する駆動源と、
前記ヘッドパイプの前方に設けられて、サイドミラーを支持する支持部材と、
前記支持部材のサイドミラー支持部に支持される電装品と、
前記支持部材に固定されるメーター装置と、
前記メーター装置の前方及び側方に配置されたカウルと、を備え
前記電装品は、前記カウルの内側において、前記メーター装置の表示面を含む仮想平面よりも前方に配置され且つ前記メーター装置より車幅方向外方に配置されており、
前記電装品は、その厚み方向が車幅方向外方を向いた状態で、その前端部から後方に進むにつれて車幅方向外方に傾斜して延びるように傾斜配置されている、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両においては、原動機を制御する制御ユニット、ヒューズボックス等の各種電装品又は他の車載部品を車体に取り付けるために、それぞれ配置スペースを確保する必要がある。例えば、特許文献1では、制御ユニットをエアクリーナボックスの側方に配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、制御ユニットの配置スペースを確保するためには、車体フレームで囲まれる部品収容空間が小さくなる。また、制御ユニットをシート下空間に配置しようとすると、各種電装品又は車載部品の配置スペースをシート下空間に確保しにくくなり、車載レイアウトの設計自由度が低下するという課題もあった。
【0005】
そこで本発明は、鞍乗型車両における車載レイアウトの設計自由度を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る鞍乗型車両は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びる前側フレームと、を有する車体フレームと、前記前側フレームの下方に配置され、前記前側フレームに支持される原動機と、前記原動機を制御する制御装置と、前記ヘッドパイプの前方に設けられ、前記制御装置が固定される支持部材と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、ヘッドパイプの前方に設けられた支持部材に原動機を制御する制御装置が配置されるので、車体フレームで形成される空間には各種電装品又は車載部品を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、鞍乗型車両における車載レイアウトの設計自由度も向上することができる。
【0008】
前記形態において、前記支持部材に固定されるメーター装置を更に備えていてもよい。
【0009】
前記構成によれば、メーター装置及び制御装置が固定される支持部材を共通化できるため、部品点数を削減することもできる。
【0010】
前記形態において、前記支持部材に固定されるサイドミラーを更に備えていてもよい。
【0011】
前記構成によれば、支持部材に更にサイドミラーが固定されているので、支持部材を共通化でき、部品点数を削減することができる。
【0012】
前記形態において、前記支持部材には、その車幅方向一方側の端部に前記制御装置を支持する部分が形成されていてもよい。
【0013】
前記構成によれば、制御装置をなるべく車幅方向外側で支持することができ、他部品との干渉を防ぐことができる。
【0014】
前記形態において、車体本体を車幅方向外側から覆い、前記車体フレームに取り付けられるサイドカウルを更に備え、前記制御装置は、前記サイドカウルの上方に配置されていてもよい。
【0015】
前記構成によれば、制御装置が、車体フレームに取り付けられるサイドカウルの上方に配置されていることにより、上下方向における制御装置と原動機との距離が離れるため、制御装置に対する原動機の熱の影響を低減させることができる。
【0016】
前記形態において、前記制御装置に電気的に接続され、前記支持部材に固定される接続体を更に備えていてもよい。
【0017】
前記構成によれば、支持部材には制御装置以外に接続体が固定されるので、車体フレームにおいて、ヘッドパイプの後方に他の電装品及び車載部品を配置するためのスペースを確保することができる。
【0018】
前記形態において、前記支持部材のうち前記メーター装置の表示面側とは反対側の裏面に、板状の前記接続体が前記メーター装置に沿うように配置されていてもよい。
【0019】
前記構成によれば、板状の接続体が支持部材においてメーター装置の表示面側と反対側の裏面にメーター装置に沿うように配置されているので、支持部材と接続体との固定構造をコンパクトにすることができる。
【0020】
前記形態において、前記原動機はエンジンであり、前記エンジンに供給するための空気を圧縮する過給機を更に備えていてもよい。
【0021】
前記構成によれば、過給機搭載の鞍乗型車両では、当該過給機により圧縮された空気がエンジンに供給されると出力がより大きくなるため、エンジンの熱も昇温する。そのため、制御装置をヘッドパイプの前方に設けられた支持部材に固定することによって、エンジンの熱による制御装置の温度上昇を抑制することができる。しかも、制御装置をヘッドパイプの前方に配置することによって、前輪への分布荷重を高め、エンジン出力が大きい過給機搭載の鞍乗型車両において安定性を向上することができる。
【0022】
本発明の一形態に係る鞍乗型車両は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びる車体フレームと、前記車体フレームに支持されて、走行駆動力を発生する駆動源と、前記ヘッドパイプの前方に設けられて、サイドミラーを支持する支持部材と、前記支持部材のサイドミラー支持部に支持される電装品と、を備える。
【0023】
前記構成によれば、支持部材におけるサイドミラー支持部近傍の空間に電装品を配置することができ、当該空間を有効利用することができる。また、車体フレームで形成される空間には他の電装品又は車載部品を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、鞍乗型車両における車載レイアウトの設計自由度も向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鞍乗型車両における車載レイアウトの設計自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車の右側面図である。
図2図2は、図1のフロントカウルを取り外した状態の自動二輪車の車体前部の平面図である。
図3図3は、図2の支持部材の一部と制御装置周辺をメーター装置の表示面とは反対側の裏面から見た斜視図である。
図4図4は、図2のサイドカウルを取り外した状態の自動二輪車の車体前部の右側面図である。
図5図5は、図4のヘッドランプユニット周辺を車幅方向左側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細説明を省略する。以下の説明における方向の概念は、自動二輪車に騎乗した運転者が見る方向を基準としている。
【0027】
図1は、実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の右側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、従動輪である前輪2と、駆動輪である後輪3と、前輪2と後輪3との間に配置された車体フレーム4とを備えている。前輪2は、略上下方向に延びるフロントフォーク5の下端部にて回転可能に接続されている。フロントフォーク5の上端部には、ステアリングシャフト(図示せず)を介して、左右方向に延びるハンドル6が回転可能に取り付けられている。車体フレーム4は、ヘッドパイプ7と、ヘッドパイプ7から後方に延びる前側フレーム8と、前側フレーム部8の後端から後方に延びてシート等を支持する後側フレーム(図示せず)とを有する。ヘッドパイプ7の前方には、ヘッドランプユニット9が設けられている。
【0028】
また、自動二輪車1は、車体フレーム4に取り付けられるカウル10を備えている。カウル10は、フロントカウル11と、サイドカウル12とを有している。フロントカウル11は、ヘッドランプユニット9の上側を覆っている。サイドカウル12は、ヘッドランプユニット9の側方、フロントフォーク5の上部の側方、ヘッドパイプ7の側方及び前側フレーム8の側方を覆っている。このように、サイドカウル12は、自動二輪車1の車体本体の前部を車幅方向外側から覆っているカウルである。サイドカウル12の上方には、メーター装置13及びサイドミラー14が配置されている。
【0029】
更に、自動二輪車1には、後輪3を回転駆動し、走行駆動力を発生する駆動源の一例として、エンジン(原動機)Eが前輪2と後輪3との間で、前側フレーム8の下方に配置され、前側フレーム8により支持されている。エンジンEの上方には、燃料タンク15が配置されている。また、エンジンEの前方には、エンジンEの熱により高温となったエンジン冷却水を走行風により冷却するラジエータ16が配置されている。サイドカウル12は、ラジエータ16よりも前方に位置する部分を有し、サイドカウル12間を通過する走行風をラジエータ16へと導く。
【0030】
本実施形態では、エンジンEには、当該エンジンEに供給する空気を圧縮する過給機17が取り付けられている。過給機17が自動二輪車1に搭載されることにより、圧縮された空気がエンジンEに供給されるため、エンジンEの出力がより大きくなる。燃料タンク15の下方には、過給機17からの圧縮空気を蓄積する吸気チャンバー18が、設けられ、吸気チャンバー18で蓄積された圧縮空気がエンジンEに供給される。また、過給機17には、外部から吸気を導く吸気ダクト(図示せず)が接続されている。すなわち、過給式エンジンを採用した自動二輪車1においては、吸気ダクト、過給機17及び吸気チャンバー18を搭載するため、非過給式エンジンを採用する自動二輪車1と比べて搭載品が多くなる。
【0031】
過給機17の上流側には、エアクリーナ19が設けられている。一例として、エアクリーナ19は、前記吸気ダクトと過給機17との間の位置に設けられ、外部から吸気ダクトを介して進入した空気が、エアクリーナ19のフィルターエレメントを通過し、清浄な空気となって過給機17に供給される。
【0032】
エンジンEは、制御装置(ECU)20により制御される。具体的に、制御装置20は、エンジンEの点火時期、インジェクタによる燃料噴射量等を制御して出力する他、その他の車両状態を制御する。制御装置20は、ヘッドパイプ7の前方に配置されている。また、制御装置20は、カウル10(フロントカウル11)の車幅方向内側に配置されており、かつ、サイドカウル12の上方に配置されている。更に、制御装置20は、ラジエータ16の上端よりも上方に配置されている。
【0033】
図2は、図1のフロントカウル11を取り外した状態の自動二輪車1の車体前部の平面図である。なお、図2では、説明のために、サイドミラー14の図示を省略している。図2に示すように、車体前部において、サイドカウル12は、ヘッドランプユニット9の左右方向両側に設けられていることから、サイドカウル12は、一対のサイドカウル12R,12Lにより構成されている。一対のサイドカウル12R,12Lはそれぞれ、インナパネル12aと、インナパネル12aとの間に内部空間を形成してインナパネル12aを車幅方向外側から覆うアウタパネル12bとを有している。インナパネル12aの前端部は、アウタパネル12bの前端部に連結されると共に、アウタパネル12bの車幅方向内側にて前後方向に延びている。アウタパネル12bは、流線形状に形成されており、具体的には、前方から後方に進むにつれて車幅方向外側に膨らむ形状に形成されている。これにより、車体の走行抵抗が低減される。サイドカウル12R,12Lは、ヘッドランプユニット9と車幅方向において隙間を設けて対向しており、当該隙間は後方に進むにつれて、その車幅方向寸法が大きくなるように形成されている。
【0034】
フロントカウル11は、アウタパネル12bと同様に、前方から後方に進むにつれて車幅方向外側に膨らむような流線形状に形成されており、サイドカウル12に連結されている。制御装置20は、その前端部から後方に進むにつれて車幅方向外側に傾斜して延びている。これにより、流線形状に形成されたフロントカウル11の内側に制御装置20を配置しやすい。
【0035】
制御装置20は、長辺と、短辺と、厚み辺とを有する略矩形板状に形成されている。図1及び2に示すように、制御装置20の長辺に垂直な面20aは後方に進むにつれて下方に傾斜し、短辺に垂直な面20bは下方に進むにつれて前方に傾斜している。そして、制御装置20の厚み辺に垂直な面20cが、サイドカウル12Rに沿って後方に進むにつれて車幅方向外側(本実施形態では、右側)に傾斜している(図2参照)。
【0036】
また、前側フレーム8は、ヘッドパイプ7から左右に分かれた一対のフレーム部材8a,8bを有している。前側フレーム8の左側のフレーム部材8aに沿って、メインハーネス21が前後方向に延びている。制御装置20は、前後方向に延びるメインハーネス21と車幅方向において反対側(右側)に配置され、制御装置20に接続されたケーブル22がメインハーネス21に合流している。ケーブル22は、その先端にコネクタ23を有し、当該コネクタ23は、後方を向いている制御装置20のコネクタ接続面20dに接続されている。
本実施形態では、自動二輪車1は、車幅方向他方側(本実施形態では、左側)にサイドスタンド(図示せず)を備えている。よって、制御装置20は、サイドスタンドに対して車幅方向において反対側に配置されている。また、自動二輪車1は、ブレーキユニットとして車輪のロックを回避するために、ブレーキの液圧を自動的に減圧等するABS(Anti−Lock Brake System)を搭載しており、右側のハンドル6の下方に、ABSを制御するABS用ECU25が設けられている。よって、制御装置20は、車幅方向において、他の制御機器(ABS用ECU25)側に配置されている。なお、前記他の制御機器としては、ABS用ECU25に限らず、例えば、電子制御式サスペンション用ECU等でもよい。
【0037】
また、ヘッドパイプ7の前方には、支持部材26が設けられている。支持部材26は、例えば、アルミ合金等の金属材料により形成され、ヘッドパイプ7に固定されている。支持部材26は、メーター支持部26aを有している。メーター支持部26aは、支持部材26の車幅方向略中央に設けられ、ボルト等の締結部材(図示せず)によって、メーター装置13を固定している。
【0038】
更に、支持部材26には、その車幅方向両端部にそれぞれ、電装品を支持する部分が形成されている。具体的には、支持部材26の車幅方向他方側(本実施形態では、左側)には、ETC用アンテナ27を支持するアンテナ支持部26bが形成され、支持部材26の車幅方向一方側(本実施形態では、右側)には、制御装置20を支持する制御装置支持部26cが形成されている。アンテナ支持部26bは、メーター支持部26aから連続して、左側に延びている。なお、アンテナ27は、ETC車載器用に限らず、電波を送受信できるアンテナであれば、種類は問わない。
【0039】
制御装置支持部26cは、メーター支持部26aから連続して、右側に延びている。このように、制御装置支持部26cは、支持部材26の車幅方向一方側の端部に形成されている。制御装置20は、取付部材30を介して制御装置支持部26cに固定されている。
【0040】
また、アンテナ支持部26b及び制御装置支持部20cには、サイドミラー14を支持するミラー固定部26dが形成されている。ミラー固定部26dは、アンテナ支持部26b及び制御装置支持部20cそれぞれの車幅方向外側の端部から上方に突出するように形成されており、アンテナ支持部26b及び制御装置支持部20cと上面視で重なるように設定されている。ミラー固定部26dには、ボルト等の締結部材を介してサイドミラー14が固定される。このように、アンテナ支持部26b及び制御装置支持部26cは、サイドミラー14を支持するサイドミラー支持部としての機能も有する。制御装置20は、フロントカウル11とヘッドランプユニット9との車幅方向における隙間において、サイドミラー支持部26c近傍の空間に配置されている。
【0041】
図3は、図2の支持部材26の一部及び制御装置20周辺をメーター装置13の表示面13a側とは反対側の裏面から見た斜視図である。図3に示すように、取付部材30は、第1取付金31、第2取付金32を有している。第1取付金31及び第2取付金32は板状体で、制御装置20を左右方向両側から覆っている。このように、制御装置20は、2つの板状体に左右から挟まれて支持されている。また、第1取付金31及び第2取付金32は、締結部材34(例えば、ボルトとナット)を介して、制御装置20の前方において互いに固定されている。また、固定部材33は、第2取付金32に固定されており、支持部材26に締結部材35(例えば、ボルト)を介して固定されている。なお、第2取付金32と固定部材33は、一体で形成されてもよい。
【0042】
制御装置支持部26cは、その裏面から下方に突出するボス部26eを有している。制御装置支持部26cのボス部26eは、ミラー固定部26dの下方で、制御装置20の車幅方向内側に設定されている。ボス部26eの内周面にはネジ溝が形成されており、当該ボス部26eに固定部材33を支持部材26に固定する締結部材35が挿通される。ここで、締結部材35は、予め定められた工業規格(JIS規格等)とは異なる頭部を有する特殊なボルトである。これにより、市販されている工具では弛緩することが困難となり、特殊な工具によって固定部材33が支持部材26に締結される。このように、第2取付金32は、制御装置20の車幅方向内側部分で、固定部材33及びボルト35を介して、支持部材26に締結される。
【0043】
また、第1取付金31の車幅方向外側面には板状の固定部材38が固定され、当該固定部材38がボルト39により制御装置支持部26cの車幅方向外側の端部26fに締結される。このように、第1取付金31は、固定部材38及びボルト39を介して、支持部材26に固定されている。なお、第1取付金31は、固定部材38と一体で形成されてもよい。よって、2つの板状体である第1取付金31及び第2取付金32のいずれも支持部材26にボルト35,39によって、それぞれ固定されている。
【0044】
また、制御装置20には、コネクタ23が後方から接続されている。コネクタ23の上下面は、ボルト51等を介して取付部材30に固定された固定部材52により、部分的に塞がれている(図2及び3参照)。
【0045】
図4は、図2のサイドカウル12を取り外した状態の自動二輪車1の車体前部の右側面図である。図4に示すように、支持部材26の下方には、ヘッドランプユニット9が設けられている。また、制御装置20は、ヘッドランプユニット9の後方に位置しており、制御装置20の一部は、ヘッドランプユニット9の上端部よりも下方に位置し、ヘッドランプユニット9の下端部よりも上方に位置している。更に、制御装置20の上端部は、メーター装置13の上端部よりも下方に位置している。
【0046】
前後方向において、制御装置20は、ハンドル6の前方に配置され、かつ、当該ハンドル6と上下方向位置において同一であるフロントフォーク5の上部よりも前方に配置されている。また、制御装置20は、メーター装置13の表示面13aを含む仮想平面Pよりも前方に配置されている。
【0047】
また、上下方向において、支持部材26とヘッドランプユニット9との間には、ブラケット40が設けられている。ブラケット40は、支持部材26とボルト36により固定され、ヘッドランプユニット9とボルト37により固定されている。ブラケット40は、例えば、樹脂製である。ブラケット40には、制御装置20及びETC用アンテナ27とは異なる電装品が固定されている。具体的には、ブラケット40には、イモビアンプ41及びヒューズボックス42が、制御装置20と近接する方向に固定されている(図2参照)。
【0048】
イモビアンプ41は、車両の盗難防止装置であるイモビライザー(図示せず)に備えられている。イモビライザーは、専用のキーに埋め込まれた送信機からの信号に含まれる識別コードと、車体固有の識別コードとを照合し一致すれば、スイッチング回路から制御装置20にイモビ信号を送信する。イモビアンプ41は、スイッチング回路から出力されるイモビ信号を増幅する機能を有する。また、ヒューズボックス42は、一定値以上の過電流がケーブルを流れた場合に、当該電流の制御装置20への流れを遮断するために溶断するヒューズが取り付けられたボックスである。
【0049】
また、イモビアンプ41及びヒューズボックス42はヘッドランプユニット9の後方で、かつ、上下方向において、支持部材26とブラケット40との間に配置されている。更に、イモビアンプ41及びヒューズボックス42は、制御装置20の車幅方向内側に配置され、メインハーネス21から分岐したケーブルを介して、制御装置20と電気的に接続されている(図3参照)。イモビアンプ41が制御装置20に電気的に接続されていることにより、制御装置20はイモビライザー対応の制御装置である。なお、ブラケット40には、ステアリングダンパー用ECU、転倒センサ等、他の電装品が配置されてもよい。
【0050】
ステアリングダンパー用ECUは、ステアリングダンパーを電子制御する制御装置であり、車速センサ等からの信号に基づき判断した自動二輪車の運転状態に応じて、ステアリングダンパーが適切な減衰機能を発揮するようにダンパー内部の油圧を制御することで、操縦安定性を向上させる。転倒センサは、自動二輪車が所定角度以上傾いたことを検知すると、その検知信号をエンジンの制御装置に送信する機能を有する。そして、制御装置は、転倒センサからの検知信号に基づき、エンジンを停止させる。
【0051】
図3及び4に示すように、支持部材26のうちメーター装置13の表示面13aとは反対側の裏面には、板状の接続体43がメーター装置13に沿うように配置されている。接続体43は、ハーネスを介して制御装置20と電気的に接続される電装品を意味する。本実施形態では、接続体43は、制御装置20、ETC用アンテナ27、イモビアンプ41及びヒューズボックス42とは異なる電装品であり、具体的にはリレーボックスである。なお、接続体43は、リレーボックスに限らず、リレー、ヒューズ、ヒューズボックス、制御装置20以外の他の制御装置(例えば、ABS制御ユニット)、センサ等のいずれであってもよい。
【0052】
リレーボックス43は、取付金61及び締結部材(例えば、ボルトとナット)62を介して、支持部材26のうちメーター装置13側とは反対側の裏面に固定されている。ここで、リレーボックス43は、制御装置20からの信号に基づき、ハーネス28(図5参照)を介して電力を他の電装品に供給する複数(本実施形態では3つ)のリレーが取り付けられているボックスである。
【0053】
図5は、図4のヘッドランプユニット9周辺を車幅方向左側から見た斜視図である。図5に示すように、リレーボックス43には、ハーネス28のケーブルが接続されている。ハーネス28がメインハーネス21と合流することにより、リレーボックス43は、制御装置20と電気的に接続される。また、ヘッドランプユニット9の後部には、ヒートシンク70が設けられている。ヒートシンク70は、ヘッドランプユニット9の内部に設けられ、熱源となる配線基板の放熱を行うためのものである。ブラケット40は、リレーボックス43とヒートシンク70とを結ぶ直線上に設けられている。
【0054】
以上のように構成された鞍乗型車両の一種である自動二輪車1は、以下の効果を奏する。
【0055】
自動二輪車等の鞍乗型車両においては、高機能化のために車体に搭載される機器が増える傾向にある。搭載される機器としては、例えば、エバポレータ、ABS、電子制御式ステアリングダンパー、電子制御式サスペンション、過給機、排気バルブ、吸排気バルブの開閉タイミングを変更する可変バルブ機構、走行駆動力の駆動源としての電気モーター、電子制御スロットル、ETC車載器、各種センサ等が挙げられる。また、従来から、車体フレームで形成される空間に配置されていた装置(例えば、エアクリーナ又は燃料タンク)の大型化の要求もある。そのため、元来車載スペースの狭い鞍乗型車両では、各種機器を搭載するためのレイアウト設計に苦慮する。本実施形態では、エンジンEを制御する制御装置20がヘッドパイプ7の前方に配置されることによって、車体フレーム4で形成される空間には上記の各種機器又は上記機器を自動二輪車1に搭載するにあたって必要な電装品を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、自動二輪車1における車載レイアウトの設計自由度を向上することができる。
【0056】
本実施形態では、自動二輪車1のエンジンEは過給機17を搭載している過給式エンジンであり、過給機17の他に、吸気チャンバー18及び吸気ダクトを搭載する必要がある。そのため、非過給式エンジンと比べて搭載品が多くなるため、車載レイアウトの設計自由度が低くなる。本実施形態では、制御装置20及び電装品の一部(イモビアンプ41、ヒューズボックス42、リレーボックス43等)がヘッドパイプ7の前方に配置されることによって、ヘッドパイプ7の後方において、車体フレーム4で形成される搭載スペースを広げることができ、車載レイアウトの設計自由度を向上することができる。
【0057】
また、自動二輪車1が過給機17を搭載していることにより、エンジンEの出力が大きくなるため、エンジンEの熱も昇温する。制御装置20は、ヘッドパイプ7の前方に設けられた支持部材26に固定されることによって、エンジンEの熱による制御装置20の温度上昇も抑制することができる。
【0058】
また、自動二輪車1は後輪駆動であり、前輪2が従動輪となるため、前輪2への分布荷重を高める必要が生じる場合があるが、制御装置20をヘッドパイプ7の前方に配置することによって、その前輪2への分布荷重を高めることができる。更に、前輪2への分布荷重を高めることで、過給機搭載の自動二輪車1において、安定性も向上することができる。
【0059】
本実施形態では、制御装置20がヘッドパイプ7の前方に設けられた支持部材26に固定されることにより、制御装置20をエンジンEから離間させ、エンジンEの熱の影響を低減させることで、制御装置20の温度上昇を抑制することができると共に、自動二輪車1における車載レイアウトの設計自由度を向上することができる。
【0060】
また、制御装置20が支持部材26におけるサイドミラー支持部26c近傍の空間に配置されることにより、当該空間を有効利用することができる。
【0061】
また、エアクリーナボックスの側方に制御装置の配置スペースを確保するためには、エアクリーナボックスの車幅方向寸法を狭める等、エアクリーナボックスの大きさを小さくしなければならないが、エンジンに供給される空気量を確保するためにエアクリーナボックスの容積は可能な限り大きい方が望ましい。本実施形態において、制御装置20は、ヘッドパイプ7の前方に配置されていることによって、エアクリーナ19の大きさを小さくせずに、容積を確保することができる。
【0062】
また、制御装置20はサイドカウル12Rの上方に配置されていることによって、上下方向における制御装置20とエンジンEとの距離が離れるため、制御装置20に対するエンジンEの熱の影響をより低減させることができる。
【0063】
制御装置20は、取付部材30を介して支持部材26の制御装置支持部26cに固定される。ここで、取付部材30の固定部材33を制御装置支持部26cに締結するボルト35が、特殊な工具を用いて締結されることによって、第三者にサイドカウル12が取り外されても、制御装置20の不所望な着脱を防止することができる。
【0064】
また、制御装置20が2つの板状体である第1取付金31及び第2取付金32に左右から挟まれて支持されていることにより、取り外しが困難となり、第三者の不所望な着脱を防止できる。また、第1取付金31及び第2取付金32は、締結部材34を介して制御装置20の前方側部分で固定されると共に、第2取付金32は、固定部材33及び締結部材35を介して制御装置20の車幅方向内側部分で支持部材26に締結されることによって、制御装置20の後方から締結部材34,35へのアクセスが困難となり、第三者による締結部材34,35の着脱を防止することができる。
【0065】
また、制御装置20は、長辺と、短辺と、厚み辺とを有する略矩形板状に形成されている。長辺に垂直な面20aは後方に進むにつれて下方に傾斜し、短辺に垂直な面20bが下方に進むにつれて前方に傾斜している。また、厚み辺に垂直な面20cは、アウタパネル12bに沿って後方に進むにつれて車幅方向外側に傾斜している。これにより、車体とアウタパネル12bとの間の空間において、制御装置20の車幅方向内側に他の電装品を配置しやすく、本実施形態では、リレーボックス43が支持部材26に固定されるため、車体とサイドカウル12Rとの間の空間を有効的に利用することができる。
【0066】
支持部材26は、アルミ合金等の金属材料により形成されており、締結部材34,35を用いることで、制御装置20又は取付部材30と強固な固定を実現することができ、第三者による制御装置20の不所望な取り外しを防止することができる。また、支持部材26は、車体フレーム4のヘッドパイプ7に固定されていることによって、操舵に関わらず車体に固定されているので、操舵操作し易い。
【0067】
また、メーター装置13及び制御装置20が固定される部材が支持部材26により共通化できるため、部品点数を削減することができる。また、支持部材26には、サイドミラー14も更に固定されているので、部品点数をより削減することができる。
【0068】
支持部材26には、その車幅方向一方側(本実施形態では、右側)の端部に制御装置20を支持する部分(制御装置支持部26c)が形成されていることによって、制御装置20をなるべく車幅方向外側に支持することができ、制御装置と他部品との干渉を防ぐことができる。
【0069】
また、支持部材26の車幅方向両端部にサイドミラー14が支持され、支持部材26のうち、制御装置20を支持する部分(制御装置支持部26c)がサイドミラー14を支持する部分(ミラー固定部26d)と上面視で重なるように設定されていることによって、制御装置20を車幅方向外側に配置でき、車幅方向における制御装置20とエンジンEとの距離が離れるため、エンジンEの熱の影響をより低減することができる。
【0070】
支持部材26には、制御装置20に電気的に接続されるリレーボックス43が更に固定されていることによって、車体フレーム4において、ヘッドパイプ7の後方に他の電装品及び車載機器を配置するためのスペースを確保することができる。
【0071】
支持部材26のうちメーター装置13の表示面13a側とは反対側の裏面に、板状のリレーボックス43がメーター装置13に沿うように配置されている。これにより、支持部材26とリレーボックス43との固定構造をコンパクトにすることができる。
【0072】
また、上下方向において、支持部材26とヘッドランプユニット9との間にブラケット40を設けることによって、車体フレーム4において、ヘッドパイプ7よりも後方に他の電装品及び車載機器を配置するためのスペースを確保しやすくなるため、車体フレーム4で形成される空間を有効的に活用でき、自動二輪車1における車載レイアウトの設計自由度を向上することもできる。
【0073】
ブラケット40には、イモビアンプ41及びヒューズボックス42が固定されている。イモビアンプ41及びヒューズボックス42は、制御装置20に近接する方向に配置されているので、制御装置20との接続を容易化することができる。具体的には、制御装置20とヒューズボックス42、イモビアンプ41とを電気的に接続するメインハーネス21から分岐するケーブルの長さを短縮できたり、所定の電流範囲内に収めたりしやすい。
【0074】
ブラケット40は樹脂製であり、ヘッドランプユニット9のヒートシンク70とリレーボックス43とを結ぶ直線上に配置されていることにより、リレーボックス43に対してヒートシンク70から放出される熱の影響を低減させることができ、リレーボックス43の温度上昇を抑制させることができる。また、ブラケット40にはイモビアンプ41及びヒューズボックス42等の電装品が固定されているため、ブラケット40に固定された電装品の温度上昇も抑制することができる。
【0075】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加又は削除することができる。前述した実施形態では、支持部材26の制御装置支持部(サイドミラー支持部)26cには、エンジンEを制御する制御装置(ECU)20が支持されていたが、他のECU(ABS用ECU、電子制御式サスペンション用ECU等)他、リレー、ヒューズ、レギュレータ等の他の電装品が配置されていてもよい。また、制御装置20は、前後方向において、エンジンEから更に離間させるために、メーター装置13よりも前方に配置されていてもよい。また、制御装置20は、車体左側に配置されてもよい。更に、制御装置20は、車幅方向において、メインハーネス21と同じ側に配置されてもよい。また、前述の実施形態では、リレーボックス43は、支持部材26に固定されていたが、ブラケット40に固定されていてもよい。また、ETC用アンテナ27は、支持部材26の車幅方向他方側の端部に固定されていなくてもよく、支持部材26には、その車幅方向一方側の端部に制御装置20のみが固定されていてもよい。
【0076】
また、前述した実施形態では、自動二輪車1は過給式エンジンを搭載した車両であったが、非過給式エンジンを搭載した車両であってもよい。また、前述の実施形態では、原動機としてエンジンEを備えた自動二輪車について説明したが、原動機は、エンジンに限らず電気モーターであってもよく、即ち、自動二輪車1は電動車両であってもよい。また、例えば、ABS制御ユニット、電子制御スロットル装置、蒸散ガス用キャニスタなど、車体に搭載される搭載品が増える又は大型化する場合には、本発明により、車体フレーム4に形成される空間にスペースを確保することができるので有効である。また、例え、車体に搭載される搭載品の数や構造等に変化が無くても、車載レイアウトの設計自由度が向上することで、レイアウト変更等を容易に行うことができる。また、自動二輪車1は、ロードスポーツタイプ、アメリカンタイプ等いずれのカテゴリーであってもよいし、スクータータイプであってもよい。更に、鞍乗型車両は自動二輪車1に限らず、例えば、ATV(All Terrain Vehicle:不整地走行車両)あるいは小型運搬車等であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
4 車体フレーム
7 ヘッドパイプ
8 前側フレーム
12 サイドカウル
13 メーター装置
14 サイドミラー
17 過給機
20 制御装置(電装品)
26 支持部材
26c サイドミラー支持部
43 接続体
E 原動機(駆動源、エンジン)

図1
図2
図3
図4
図5