特許第6368242号(P6368242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許636824240−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368242
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20180723BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180723BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61K31/436
   A61K9/16
   A61K47/38
   A61K47/34
   A61K47/32
   A61K47/02
   A61K9/48
   A61K9/20
   A61P35/00
   A61P37/06
【請求項の数】8
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-533869(P2014-533869)
(86)(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公表番号】特表2014-528431(P2014-528431A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012069541
(87)【国際公開番号】WO2013050419
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/544,026
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ディーデリッヒ,アンケ
(72)【発明者】
【氏名】リヒティ,カート
(72)【発明者】
【氏名】キュール,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウィング
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−354394(JP,A)
【文献】 特開2006−188539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/436
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/38
A61P 35/00
A61P 37/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY
/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、
b) 非水溶性被覆を形成するポリマーを含む、少なくとも1種の徐放性被覆、および、
c) 40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有する層を、前記徐放性被覆から隔離している保護層
を含む、多粒子の形態の、経口投与のための徐放性医薬製剤であって、
前記製剤が、急速に溶解または崩壊するマトリックス層を有する内層中に40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含み、
前記保護層が、マトリックス形成剤粘着防止剤を含み、前記マトリックス形成剤粘着防止剤がタルクまたは二酸化チタンの1種または複数を含む、徐放性医薬製剤。
【請求項2】
前記少なくとも1種の徐放性被覆が、さらに細孔形成剤を含む、請求項1に記載の徐放性医薬製剤。
【請求項3】
細孔形成剤が、水溶性セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、ポロキサマー188、またはポビドン、あるいはこれらの組合せである、請求項2に記載の徐放性医薬製剤。
【請求項4】
被覆を形成するポリマーが、非水溶性セルロースエーテルもしくは酢酸セルロース、またはポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、あるいはこれらの組合せである、請求項1から3のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
【請求項5】
前記被覆を形成するポリマーが、アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RSまたはEudragit RL)、またはこれらの混合物である、請求項1から4のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
【請求項6】
前記細孔形成剤が水溶性セルロースエーテルであり、被覆を形成するポリマーが非水溶性セルロースエーテルである、請求項2から5のいずれか1項に記載の徐放性医薬製剤。
【請求項7】
結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、または乾燥剤から選択される1種または複数の賦形剤をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
【請求項8】
ミニ錠剤、ペレット、ミクロ粒子、顆粒、またはビーズの形態の、請求項1から7に記載の徐放性医薬製剤を含む固形製剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む固形医薬製剤;前記固形医薬製剤を含む固形剤形;前記固形医薬製剤および前記固形剤形の調製方法;前記固形医薬製剤および前記固形剤形の、mTORシグナル伝達経路の阻害に応答する疾患または状態、例えば増殖性疾患または免疫抑制などを治療または予防するための薬剤を製造するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンは、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生されるラクタムマクロライド系抗生物質である。ラパマイシンは、強力な免疫抑制薬であり、かつ抗腫瘍および抗真菌活性を有する。しかし、その医薬としての有用性は、その極めて低くかつ変化しやすい生物学的利用能によって制約される。さらに、ラパマイシンは、水性媒体、例えば水に貧溶性であり、そのためガレヌス組成物を製剤化することが困難になる。
【0003】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス、RAD001)は、例えば国際公開第94/09010号の実施例8に記載されている経口で有効なラパマイシン誘導体である。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、まず2003年に免疫抑制薬として承認され、現に80を超える国々の患者が、例えば、臓器拒絶の予防のためにCertican(C)/Zortress(C)の名称で、腫瘍性疾患の治療のためにAfinitor(C)/Votubia(C)の名称で入手可能である。
【0004】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、水への溶解度が低く、かつ化学的安定性の低いマクロライドである。ヒトへの経口投与で、固形のO−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、血流中に十分な量で吸収されない可能性がある。O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの従来の医薬添加剤との混合物は、不安定性につながることがあり、このような組成物に付随する不都合としては、予測できない溶出速度または不規則な生物学的利用能が挙げられる。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン製剤およびこのような製剤の調製方法は、例えば、国際公開第97/03654号中に、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンなどのラパマイシン類についての、固形分散物の形態で存在する経口医薬組成物に関して開示されている。国際公開第03/028705号には、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンなどのラパマイシン類についての、崩壊を促進するためにコロイド状二酸化ケイ素を含む経口医薬組成物が開示されている。国際公開第05/034916号には、とりわけ、多粒子の形態で存在するMMF/MMAおよびRAD001を含み、そのMMF/MMA粒子が好ましくは腸溶性被覆を施されている、固定用量の組合せ剤についての医薬組成物が開示されている。開示された遅延放出性腸溶性被覆は、カルボキシ基を含むpH依存性ポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース;酢酸トリメリット酸セルロース;少なくとも40%のメチルアクリル酸を含有するメタクリル酸コポリマー、例えば、メチルアクリル酸およびそのエステルから誘導されるコポリマー;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;および酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。このようなpH依存性ポリマーは、典型的には、1つの多粒子サブユニットまたは画一的投与単位中で一緒に製剤化されると、安定なRAD001と適合性がない。
【0005】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、0.1から10mgの即放性錠剤として、経口投与用の固形剤形の状態で入手できる。しかし、今日でも、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを、製剤の安定性および経口での十分な生物学的利用能の双方の要件を同時に満たす経口固形剤形として製剤化することは困難である。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、水分に対して不安定であり、多くの一般的に使用される添加剤に対して適合性がなく、かつ光および酸化ストレスに敏感である。したがって、製剤の加工中および貯蔵寿命期間中に原薬を安定化するには、特殊な測定が必要とされる。さらに、変動性が低く一貫した信頼性のある薬物吸収を確実にするために、溶解度を増強する基本方針を適用すべきであり、かつ薬物の有効性を最適化するため、ならびに患者内および/または患者間での吸収の変動を低減するために、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの消化管中での分解を最小化する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これより、製品安定性の要件を満足し、かつ現行のIR(即放性)錠剤に優る好ましい薬物動態特性、例えば、低減された平均血漿中ピーク濃度、薬物吸収度および血漿中ピーク濃度に関する患者間および患者内での低減された変動性、低減されたCmax/Cmin比、ならびに低減された食物効果を有する、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む経口固形剤形の形態の改善された医薬製剤を提供する。本発明の改善された固形製剤は、より正確な用量調節を可能にし、有害事象の頻度を低減し、それゆえ、患者に対して40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンに関するより安全な治療を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多粒子系であり、かつ機能層および機能性被覆を有してもよい、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの安定な徐放性製剤(extended release formulation)に関する。
【0008】
一態様において、本発明は、徐放性多粒子製剤として製剤化された40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを有効成分として含む、安定な徐放性製剤を提供する。本明細書で使用する用語「徐放性多粒子製剤」は、長い時間にわたる、例えば、少なくとも1、2、3、4、5または6時間にわたる、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出を可能にする製剤を指す。徐放性製剤は、服用に続いて長い時間にわたって有効成分を利用可能にするような方式で製剤化される、例えば後記のような特殊な添加剤から構成されるマトリックスおよび被覆を含有する。
【0009】
本発明の目的に関し、用語「徐放性」は、用語「持続放出性(sustained release)」または「延長放出性(prolonged release)」と互換的に使用することができる。用語「徐放性」は、有効原薬を、経口投与の直後ではなく、欧州薬局方(第7版)の錠剤およびカプセル剤に関するモノグラフ、ならびに米国薬局方の医薬剤形に関する総則<1151>中の定義に従って長い時間にわたって放出する医薬製剤に関する。本明細書で使用する用語「即放性」は、「産業界向けガイダンス:即時放出性固形経口剤形の溶出試験(Guidance for Industry:Dissolution Testing of Immediate Release Solid Oral Dosage Forms)」(FDA CDER、1997)の定義に従って、有効原薬の85%を60分未満内で放出する医薬製剤を指す。具体的には、用語「即放性」は、例えば、後記の溶出アッセイで測定した場合、30分という時間以内での錠剤からのエベロリムスの放出を意味する。
【0010】
本発明による医薬製剤は、下記の溶出アッセイを使用するインビトロ放出プロフィールによって特徴付けることができる:溶出容器を、ドデシル硫酸ナトリウムを0.2%含有する37℃の900mLのリン酸塩緩衝液(pH6.8)で満たし、それぞれ米国薬局方試験モノグラフ711および欧州薬局方試験モノグラフ2.9.3に従い、パドル法を使用し、75rpmで溶出を実施する。
【0011】
本発明による徐放性製剤は、インビトロ放出アッセイにおいて、典型的には、次の放出仕様により40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを放出する:
0.5時間:45%未満、または40%未満、好ましくは30%未満
1時間 :20〜80%、好ましくは30〜60%
2時間 :50%超、または70%超、好ましくは75%超
3時間 :60%超、または65%超、好ましくは85%超、とりわけ90%超。
【0012】
本発明による徐放性製剤は、前記インビトロ溶出アッセイにおいて、典型的には、45、60、75、90、105分または120分を過ぎて40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの50%を放出する。
【0013】
好ましい一実施形態において、安定な徐放性製剤は、急速に溶解または崩壊する担体マトリックス中に、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを、その被覆群の少なくとも1つが徐放性被覆である被覆群と組み合わせて含む。別の好ましい実施形態において、安定な徐放性製剤は、徐放特性を備えた非崩壊性担体マトリックス中に、任意選択でさらなる被覆群と組み合わされてもよい40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む。
担体マトリックスは、マトリックス形成剤、典型的にはマトリックスを形成するポリマーから構成され、賦形剤(例えば、乳糖、マンニトール、マルトデキストリン、アルファ化デンプン、リン酸カルシウム、または微結晶セルロース)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、クロスカメロース(croscamellose)、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスポビドン)、酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルオール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル)、ならびに滑沢剤および流動促進剤などの加工促進剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、またはフマル酸ステアリルナトリウム)などのさらなる添加剤を含有することができる。用語「マトリックス形成剤」は、典型的には、例えば力学的または結合安定性などの物理的安定性を提供する薬学的に不活性な材料に関する。
【0014】
急速に溶解または崩壊する担体マトリックスのために使用するのに適したマトリックス形成ポリマーは、当技術分野で公知であり、例えば、セルロースまたはデンプン、例えば微結晶セルロース(「MCC」)、例えばAvicel PH101(FMC BioPolymer)、アラアビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールもしくはポリビニルピロリドン(「PVP」)、カラゲナン(Gelcarin GP812など)、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0015】
徐放特性を有する非崩壊性担体マトリックスに適したマトリックス形成添加剤は、当技術分野で公知であり、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(または「CMCナトリウム」)、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、またはポリアクリレート、例えば、アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RS/RL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドン(「PVP」)、例えばカラゲナン(Gelcarin GP812など)、モノステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル、あるいはこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
一実施形態において、徐放性被覆は、非水溶性の非崩壊性ポリマーを用いて形成される層であり、薬物のこの層を通る浸透によって放出を制御する。徐放性被覆は、また、細孔形成剤、可塑剤、および加工促進剤(滑沢剤および粘着防止剤など)を含有することができる。
【0017】
拡散制御放出を可能にする適切な徐放性被覆を形成するポリマーは、当技術分野で公知であり、例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、またはポリアクリレート、例えば、アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RS/RL)、ポリ酢酸ビニル、あるいはこれらの組合せが挙げられる。好ましい実施形態において、徐放性被覆を形成するポリマーは、エチルセルロースもしくは酢酸セルロース、あるいはポリアクリレート、例えば、アンモニオメタクリレートコポリマーA型(Eudragit RS)もしくはアンモニオメタクリレートコポリマーB型(Eudragit RL))またはこれらの組合せである。さらに、徐放性被覆は、可塑剤(トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、ポリエチレングリコール3000、4000もしくは6000、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、またはフタル酸ジエチルなど)、ならびに/あるいは粘着防止剤(Syloid244FP、タルク、モノステアリン酸グリセリル、または二酸化チタンなど)を含む。可塑剤の量は、持続放出性ポリマーの量に対して、典型的には、5から40%の間、好ましくは10から25%である。
【0018】
徐放性被覆は、本発明の好ましい一実施形態によれば、非水溶性の被覆を形成するポリマーおよび細孔形成剤を含む、細孔形成系である。用語「細孔形成剤」とは、細孔の導入または被覆の浸透性の増加、および有効成分の拡散制御放出を可能にする、容易に溶解できる添加剤に関する。
【0019】
適切な細孔形成剤は、当技術分野で公知であり、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、例えば、Klucel(商標)EF、EXF、LF)、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、例えば、Methocel(商標)E3/E5、Pharmacoat603(商標))、ポリエチレングリコール(例えば、Macrogol 1500、3500、4000、6000)、ポロキサマー188(PluronicF68(商標))またはポビドン(PVP、例えば、Kollidon K25/K30)、糖、例えば、単糖(デキストロース、マンノース、フルクトースなど)、二糖(蔗糖またはグルコジフルクトースなど)、あるいはこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、細孔形成剤は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、Klucel(商標)EF、EXF、LF)、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、Methocel(商標)E3/E5、Pharmacoat603(商標))、ポリエチレングリコール(Macrogol 1500、3500、4000、6000)、ポロキサマー188(Pluronic F68(商標))またはポビドン(PVP、Kollidon K25/K30)、あるいはこれらの組合せである。被覆中に含められる細孔形成剤の適切な量は、例えば100:20から100:50、または100:20から100:100である被覆ポリマーの細孔形成剤に対する比率、好ましくは被覆を形成するポリマーの量に対して100:35から100:45の比率、とりわけ100:35から100:50の比率に相当する。含められる被覆形成ポリマーの適切な量は、医薬製剤の全重量の、例えば、4から15重量%、5から15重量%、好ましくは5から12重量%、より好ましくは6から12重量%のポリマー重量増加率に相当する。
【0020】
別の好ましい実施形態によれば、非崩壊性の徐放性担体マトリックスは、ポリマーの水和による有効成分の拡散制御放出を可能にするマトリックス形成ポリマーを含む。徐放性担体マトリックスは、結合剤および/または賦形剤などのさらなる添加剤、ならびに滑沢剤および流動促進剤などの加工促進剤を含有することができる。
【0021】
拡散制御放出のために、典型的には、次のマトリックス形成ポリマー:アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸(または「カルボマー」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(または「CMCナトリウム」)、メチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、またはポリアクリレート、例えば、アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RS/RL)、種々の粘度グレード(すなわち、平均ポリマー鎖長)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、ならびにこれらの組合せ、例えば、Methocel(商標)CRグレード、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(商標)HF/MF)、ポリオキシエチレン(例えば、Polyox(商標)、またはポリビニルピロリドン(「PVP」)、(例えば、PVP K60、K90)、カラゲナン(Viscarin(商標)GP−209/GP−379など)、あるいはこれらの組合せが使用される。マトリックス形成ポリマーを組み合わせると、必要に応じて有効成分の溶出速度を調節することが可能になる。
【0022】
別法として、非崩壊性の徐放性マトリックスは、有効成分の浸食制御による放出を可能にする添加剤を用いて形成される。浸食制御マトリックスは、親油性マトリックス形成剤、ならびに賦形剤、崩壊剤、および加工促進剤(滑沢剤および流動促進剤など)などのさらなる添加剤も含有することができる。このマトリックス型に関する親油性マトリックスを形成する添加剤としては、モノステアリン酸グリセリル(例えば、Cutina GMS)、ベヘン酸グリセリル(例えば、Compritol 888ATO)、ステアリルアルコール、ステアリン酸、雄鹿脂肪(例えば、Gelucire(商標))、またはビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル(例えば、Speziol TPGS)などの親油性添加剤、あるいはこれらの組合せが挙げられる。
【0023】
適切な結合剤、賦形剤、またはさらなる添加剤としては、例えば、マンニトール、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、リン酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クエン酸トリエチル、アエロジル、酸化防止剤(例えば、BHTなど)、乾燥剤、および崩壊剤(例えば、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、クロスカルメロースなど)が挙げられる。
【0024】
好ましい一実施形態において、安定な徐放性製剤は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを、急速に溶解/崩壊するマトリックス中に、例えば後記の固形分散物の形態で、機能層または機能性被覆(その機能層(複数可)または機能性被覆(複数可)の少なくとも1つは、有効成分の徐放出を可能にする放出制御挙動を有する)と組み合わせて含む。別の好ましい実施形態において、安定な徐放性製剤は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを、保護性または持続放出性の層または被覆などの機能層または機能性被覆を任意選択でさらに含有することのできる徐放性マトリックス中に含む。被覆、例えば、徐放性被覆は、典型的には、10から100μm、好ましくは10から50μm(共焦点RAMAN分光法で評価して)の範囲の被覆厚を有する。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の製剤は、多粒子送達システムの形態で存在する。本発明による多粒子薬物送達システムは、主に、多様で小さな別個の投与単位からなる経口剤形である。これらのシステムにおいて、原薬の剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、サシェ剤またはスティックパック剤は、直径が0.05〜2.00mmの数十から数百、またはさらには数千までの球状粒子から典型的にはなる複数のサブユニットを含有する。大きさが1.5〜3mmの製剤、例えば、ミニ錠剤は、本発明のもう1つの選択肢を提供する。剤形は、胃内で急速に崩壊して多粒子を放出するように設計される。多粒子は、消化管腔中で広がり、胃から徐々に空になり、制御された方式で原薬を放出する。
【0026】
一実施形態において、例えば多粒子送達システムの形態の本発明による医薬組成物は、有効成分としてのO−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを、粒子(例えば、ビーズ、ペレット、顆粒、またはミニ錠剤)の芯中に、または粒子の不活性芯を取り囲む層中に溶解または分散して含む。有効成分は、例えば、親水性または親油性のマトリックス形成添加剤を好ましくは含む徐放性マトリックス中に包埋されるか、あるいは急速に崩壊および/または溶解するマトリックス中に、機能層(複数可)および上塗り被覆(複数可)と組み合わせて(該機能層(複数可)または上塗り被覆(複数可)の少なくとも1つは、有効成分の拡散制御徐放を可能にする被覆形成ポリマーを含む)包埋することができる。任意選択で、有効成分の安定性を改善するための保護層が、機能層または上塗り被覆から有効物質を含有するマトリックスを隔離して、製剤の安定性を確実にする。
【0027】
別の好ましい実施形態において、本発明は、有効成分としての40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、および不溶性ポリマーと細孔形成剤としての可溶性成分とを含む外側被覆層、ならびに任意選択でさらなる機能層を含む、例えば多粒子送達システムの形態の安定な徐放性製剤を提供する。本発明の目的に関して、用語「外側層」は、粒子の外側の方に配置された層であり、さらなる層(複数可)で被覆されていてもよく、あるいは上塗り被覆であってもよい、用語「外側層」、「被覆層」または「上塗り被覆」は、用語が使用される文脈に応じて、互換的に使用することができる。
【0028】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、唯一の治療有効成分として40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有する。
【0029】
好ましい一実施形態において、粒子は、有効成分の徐放を可能にする1つまたはいくつかの上塗り被覆を含む。上塗り被覆は、典型的には、多粒子の各粒子を別々に囲んでいる、放出制御挙動を備えた最終層である。
【0030】
とりわけ好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、浸透性の被覆層を通る薬物の拡散によって、場合によっては不溶性ポリマー層中での細孔の形成によって、または別法として不溶性ポリマーの水和のみによって放出を制御する、あるいは細孔形成剤と不溶性ポリマーの水和との組合せによって放出を制御する、外側層または上塗り被覆を含む。当該ポリマーは、pHと無関係に不溶性であり、任意選択で、水溶性の細孔形成剤を含有する。放出速度は、細孔形成剤が溶解した後の細孔形成の度合によって影響される。不溶性の被覆用ポリマーは、エチルセルロースなどのセルロースエーテル;酢酸セルロース;ポリアクリレート、例えばアンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RS/RL)でよい。適切な細孔形成剤としては、水溶性セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、Klucel(商標)EF、EXF、LF)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、Methocel(商標)E3/E5、Pharmacoat603(商標))、ポリエチレングリコール(Macrogol 1500、3500、4000、6000)、ポロキサマー188(Pluronic F68(商標))、またはポビドン(PVP、Kollidon K12、K25、K30)が挙げられる。例えば、水溶性の細孔形成剤を、不溶性ポリマーと、2:1から1:10、例えば、1:1から1:5、1:3または1:5の比率で混合することができる。細孔形成剤と不溶性ポリマーとの本発明による好ましい比率は、1:1から1:4、例えば、約1:1、1:1.2、1:1.5または1:2の比率のHPC(例えば、Klucel(商標)EF、EXF、LF)またはHMPC 3cP(例えば、Methocel(商標)E3)である。本発明による好ましい不溶性ポリマーは、細孔形成剤と組み合わせたエチルセルロース(EC、Aqualon EC N10(商標))である。好ましくは、細孔形成剤を使用しないで、1:2から9:1、好ましくは1:1から4:1の比率の不溶性ポリマーであるアンモニオメタクリレートコポリマーA型(Eudragit RS)とアンモニオメタクリレートコポリマーB型(Eudragit RL)との組合せを、本発明により塗布する。
【0031】
持続放出性の上塗り被覆(複数可)は、好ましくは、有効物質の大部分を小腸内で放出することを達成し、かつ有効物質を胃液から保護可能にし、有効物質の口腔、食道および胃への暴露を最小化する。
【0032】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、1種または複数の成分からなることのできるビーズ、ペレットまたは顆粒などの例えばスターター芯上に、原薬を含有するマトリックス、例えば、その中に有効成分が分散または溶解されている急速に崩壊および/または溶解するマトリックス層、または徐放性マトリックス層を含む。例えば、非晶性または結晶性の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを、マトリックス中に1:100から100:1であるマトリックス中の比率で分散または溶解させることができる。とりわけ好ましい実施形態において、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンのマトリックス形成剤に対する比率は、重量で1:50から5:1、または1:50から1:1、より好ましくは重量で1:5から2:3、さらにより好ましくは1:10から1:5である(マトリックス形成剤に関して)。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、スターター芯の表面上に原薬を含有するマトリックスの層を施す。層は、マトリックス成分および原薬の分散液または溶液を、流動床法で、均一で規則的な大きさおよび形状の粒子上に噴霧することによって構築される。別法として、回転円盤式処理装置を使用して、マトリックス成分の粉末混合物の層を施すことができる。スターター芯は、0.1から2.5mmの平均粒径を有する。それらの芯は、単結晶、例えば、蔗糖;または流動床造粒、ローター造粒、押出しおよび球状化(spheronization)、または圧密法によって製造される顆粒状凝集体でよい。これには、スターター芯として使用できるミニ錠剤も包含される。好ましくは、スターター芯は、球状形状を有し、蔗糖およびデンプン(球状糖、Suglets(商標)、ノンパレイユ(Non-pareils))、マンニトール(例えば、MCells(商標))、乳糖(例えば、噴霧乾燥乳糖)、または微結晶セルロース(例えば、Cellets(商標))などの不活性材料からなる。
【0034】
本発明の別の実施形態において、原薬を含有するマトリックスは、粒子の芯中に組み込まれる。マトリックスを形成する添加剤、賦形剤、および加工を促進するためのその他の成分を、原薬と一緒に混合する。得られた粉末混合物を、湿式押出しまたは溶融押出し、およびそれに続く球状化を使用することによって、あるいは混合物をミニ錠剤に圧密することによって、粒子として製剤化することができる。形成されるマトリックスは、急速に崩壊/溶解するマトリックス、あるいは親水性または親油性のマトリックスを形成する添加剤を用いて構築された、徐放特性を備えた非崩壊性マトリックスのどちらでもよい。一実施形態において、原薬またはその固形分散物を含有する親水性非崩壊性のマトリックスからなる多粒子は、有効成分、賦形剤(例えば、乳糖)を、親水性のヒドロゲルを形成する種々の粘度のポリマー、流動促進剤、および滑沢剤と一緒に混合することによって調製される。親水性のヒドロゲルを形成するポリマーは、好ましくは、2重量%の水溶液の場合に100mPasを超える高い粘度グレードを有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えば、Methocel K100と組み合わせた、例えば、2重量%の水溶液の場合に20mPas未満の低い粘度グレードを有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばMethocel E5である。次いで、粉末混合物を、打錠機で圧縮してミニ錠剤を得る。別法として、粉末混合物を、有機溶媒、例えばエタノールで湿潤化し、次いで押出し、そして球状化して、多粒子を得ることもできる。
【0035】
別の実施形態において、原薬またはその固形分散物を含有する親油性の非崩壊性マトリックスからなる多粒子は、有効成分、マトリックスを形成する親油性で溶融可能な添加剤、および賦形剤を混合することによって調製される。混合物を、押出し機中で溶融、混合することによって処理する。得られた押出し物のストランドを粒子に切断し、任意選択で球状化する。使用される親油性添加剤は、例えば、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル(Vit E TPGS、例えば、BASFからのKolliphor TPGS Pharma)の単独、またはモノステアリン酸グリセロール(GMS、例えば、BASFからのKolliwax GMS)との9:1から1:9の比率での組合せである。
【0036】
本発明による医薬組成物は、24名の健常対象において、単回用量の投与後に、患者にとって利用可能な現行の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン錠剤(市販予定製剤または「FMI」錠剤)と比較して、ピーク濃度(Cmax)対投与24時間後濃度(C24h)の比率を低下させることが見出された。本発明による製剤の典型的なCmaxは、10ng/mL未満である。低下したCmax/C24h比率は、薬物動態のモデルシミュレーションによって、本発明の1日1回投与の後の24時間の投与間隔の間の濃度−時間プロフィールにおいて、Cmax対最小濃度(Cmin)の比率(Cmax/Cmin)を低下させると予想される。本発明の低下したCmax/Cmin比率の利点は、FMI製剤に対して本発明の生物学的利用能に基づいた適正な用量で、本発明は、エベロリムスの濃度を、エベロリムスの治療域下限を上回って(十分な有効性のために)、かつ同時にエベロリムスの治療域上限(毒性濃度領域)から離れた距離に維持することを可能にする。したがって、本発明は、その有効性に影響を及ぼさないで、エベロリムスの安全性プロフィールを改善することができる。本発明による医薬組成物は、それゆえ、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの治療ウィンドウのより良好な活用を可能にする。本発明による医薬組成物を投与されている患者における典型的なCmax/C24h(したがって典型的なCmax/Cmin)比率は、5未満または4未満、例えば3.5±1または3±0.5である。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、製剤の徐放特性を制御する機能層または上塗り被覆から隔離した層中に含有される。このような層は、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを分散または溶解するのに適した任意の物質から構成される。好ましい実施形態において、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む層は、親水性担体マトリックスから構成される。担体マトリックスは、有効成分を包埋しており、それによって有効成分を分解から保護する。適切なマトリックス形成剤は、水に溶解または急速に分散することのできる親水性ポリマー、例えば、HPMCのタイプ2910もしくはタイプ2280、HPC、HEC、MEC、MHEC、ポビドンである。好ましい一実施形態において、マトリックス層は、例えば、国際公開第97/03654号または国際公開第03/028705号に記載のように、固形分散物の形態で存在する。
【0038】
好ましい実施形態において、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンのための急速に溶解/崩壊する担体マトリックスは、固形分散物の形態で存在する。固形分散物は、例えば、担体、例えば水溶性ポリマーを含み、例えば、次のポリマーの1種または混合物を使用することができる:
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えば、ヒプロメロース タイプ2910:これは、Dow ChemicalsからMethocel(商標)E、または信越化学工業からPharmacoat(商標)として入手可能である。良好な結果は、低い見かけ粘度、例えば2重量%の水溶液に関して20℃で測定して例えば100cps未満、例えば50cps未満、好ましくは20cps未満の粘度を有するHPMC、例えばHPMC 3cpsを使用して得ることができる。
ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、例えば、PVP K25、K30、またはPVP K12:PVPは例えば、BASF社からKollidon(登録商標)として、またはISP社からPlasdone(登録商標)として市販されている。約8,000から約50,000ダルトンの間の平均分子量を有するPVP、例えば、PVP K30が好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、例えば、Klucel EF/LF/JFまたはこれらの誘導体:HPC誘導体の例には、25℃の5%水溶液の状態で測定した場合に、水性媒体(例えば水)中で、例えば約400cps未満の低い動粘度を有するものが含まれる。好ましいHPC誘導体は、約200,000ダルトン未満、例えば80,000から140,000ダルトンの間の平均分子量を有する。市販HPCの例には、Hercules Aqualon社からのKlucel(登録商標)LF、Klucel(登録商標)EFおよびKlucel(登録商標)JF、ならびに日本曹達(株)から市販のNisso(登録商標)HPC−Lが含まれる。
ポリエチレングリコール(PEG):例には、1000から9000ダルトンの間、例えば約1800から7000の間の平均分子量を有するPEG、例えばPEG2000、PEG4000、またはPEG6000(Handbook of Pharmaceutical Excipients,p.355〜361)が含まれる。
飽和ポリグリコール化グリセリド:これは、例えば、Gattefosse社からGelucire(登録商標)、例えば、Gelucire(登録商標)44/14、53/10、50/13、42/12、または35/10として入手可能である。
シクロデキストリン、例えば、β−シクロデキストリンまたはα−シクロデキストリン:適切なβ−シクロデキストリンの例には、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、グリコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、スルホ−β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンのスルホ−アルキルエーテル(例えば、スルホ−C1〜4−アルキルエーテル)が含まれる。α−シクロデキストリンの例には、グルコシル−α−シクロデキストリンおよびマルトシル−α−シクロデキストリンが含まれる。
【0039】
好ましい一実施形態において、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有する層は、酸化防止剤を原薬の量に対して1:1000から1:1の比率で含有する。酸化防止剤は、また、その他の機能層中にも、例えば0.1から10%、好ましくは0.1から1%の濃度で存在することができる。適切な酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシルトルオール、ブチルヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステルが挙げられる。好ましい実施形態において、酸化防止剤は、ブチルヒドロキシルトルオールである。
【0040】
好ましい一実施形態において、保護層は、有効物質を含有する層を例えば上塗り被覆などのその他の機能層から隔離して、製剤の安定性を高める。原薬は、上塗り被覆との任意の直接接触を排除することによって安定化される。保護層は、また、上塗り被覆中の任意の成分、例えば層を通って移動できるポリマー副生成物または可塑剤が有効成分と直接的に接触することを防ぐ拡散遮蔽として作用する。マトリックス形成剤としても使用されるポリマー(例えば、前に記載のマトリックス形成剤)に加え、塗布されるポリマー量に対して高含有量の、例えば10から100%、好ましくは20から50%の無機顔料または粘着防止剤(タルクおよび/または二酸化チタンなど)が、遮蔽機能に寄与する。保護層の厚さは、最適化された製剤安定性を得るように調節することができる。
【0041】
別の好ましい実施形態において、有効成分40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、本明細書に記載の徐放性担体マトリックス中に直接的に包埋される。
【0042】
本発明の医薬組成物は、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンなどの有効物質に対して優れた安定性を提供する。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、製剤中に封入された水分を固めることのできる、内部乾燥剤として作用する強力な吸湿性添加剤を含有する。例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、またはデンプンなどの吸着剤を使用できる。
【0044】
好ましい実施形態において、クロスポビドンを使用する40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの安定化法が提供される。クロスポビドンは公知であり、錠剤崩壊剤として広範に使用される。驚くべきことに、本発明により、クロスポビドンが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを水分で誘発される分解から保護することが見出された。したがって、本発明は、水分で誘発される40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの分解を、2%から25%のクロスポビドンを使用して低減または防止する方法を提供する。クロスポビドンは、湿式および溶融押出しに使用される粉末混合物の一部、ミニ錠剤を圧縮するための粉末ブレンド物の一部、多粒子を打錠するための粉末ブレンド物の一部であり、サシェ(sachet)またはカプセルに充填する工程において多粒子に直接的に添加される。関連する実施形態において、本発明は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む医薬製剤のための内部乾燥剤としてのクロスポビドンの使用を提供する。
【0045】
一態様において、本発明は、全部で5%未満の、さらにより好ましくは全部で3%未満または2.5%未満の低い水分含有量を有する、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含有する粒子(0.1から0.5mm)、ビーズ、ペレット(0.2から2mm)またはミニ錠剤(1.5から3mm)を提供する。
【0046】
別の態様において、本発明は、製剤中に封入された水分を固めることのできる、内部乾燥剤として作用する強力な吸湿性添加剤を含有する。例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンなどの吸着剤を使用することができる。
【0047】
O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン製剤の一般的な副作用は、患者のさらなる苦痛、不十分な患者のコンプライアンス、および最善に達しない有効性をもたらすことのある粘膜炎である。粘膜炎の根底にある原因は、未知であり、例えば、粘膜の局所刺激のためである可能性があるが、さらに全身性影響のためである可能性がある。本発明の製剤は、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン投与の副作用としての粘膜炎を低減または排除することができる。
【0048】
本発明による医薬組成物、例えば、多粒子送達システムは、例えば、カプセル剤(例えば、HPMCまたは雄鹿(Hart)ゼラチンカプセル剤)などの製剤に製剤化されるか、サシェまたはスティックパック中に充填されるか、あるいは崩壊時に粒子を放出する錠剤として製剤化することができる。
【0049】
製剤安定性のさらなる改善のため、サシェ、スティックパック、ブリスターまたは瓶などの一次包装は、貯蔵寿命中および/または使用時中に製剤の水分含有量を低減または安定化している水分吸収性成分、例えば、シリカゲルを含むことができる。
【0050】
本発明の製剤は、多数のペレット、顆粒、またはミニ錠剤からなり、かつ/またはそれらを放出することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物が、投与単位の形態、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤として存在する場合、各単位投与量は、0.1mgから40mgの間、より好ましくは1から20mgの間、例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、2.0、2.5、3.0、5.0、10および20mgの原薬を適切には含有する。さらに適切な投与単位は、例えば、25mg、30mg、35mg、40mg、または50mgを含む。このような投与単位は、特定の治療目的、治療段階などに応じて1日に1から5回の投与に適している。一実施形態において、単位剤形は、1日に1回投与される。投与すべき組成物の正確な量は、いくつかの因子、例えば、所望される治療継続期間およびO−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの放出速度に依存する。
【0052】
本発明の製剤は、現用される製剤に優るさらに有利な特性を有する。例えば、本発明の製剤は、
順応性のある用量調節を可能にし、
例えば、異なる放出プロフィール(例えば、初期のパルスおよび持続放出)を備えた顆粒剤、ビーズ剤、ペレット剤、またはミニ錠剤を組み合わせることによって、望みの薬物放出プロフィールに合致させることを可能にし、
口腔中での薬物と粘膜との接触を予防することを可能にし、
徐放性被覆を施されたペレット、顆粒またはミニ錠剤が、胃内の薬物を分解から保護し、より大きな生物学的利用能をもたらすことを可能にし、
徐放性プロフィールを可能にし、
胃粘膜を薬物との直接接触による刺激から保護し、
Cmaxを低下させ、かつCmax/Cminの比率を低減し、
CmaxおよびAUCに関する患者間および/または患者内変動を低減し、
CmaxおよびAUCに関する食物依存性の患者間および/患者内変動を低減する。
【0053】
本発明の一実施形態により、本発明の医薬組成物が、市場で入手可能な即放性O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン製剤と比較してより高用量のO−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを投与することを可能にすると同時に、改善された安全性プロフィールを有することが見出された。したがって、一実施形態において、本発明は、医薬として使用するための徐放性医薬製剤または固形剤形を提供する。別の実施形態において、本発明は、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを例えば1日1回、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mgまたは50mgの用量として投与する、例えば後記のようなmTOR感受性疾患の治療方法を提供する。好ましい実施形態において、O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンは、1日1回、1mgから40mg、例えば20mgから40mg(例えば、20mg、25mg、30mg、35mgまたは40mg)、あるいは2日毎に2mgから80mg、例えば20mgから80mg(例えば、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mgまたは80mg)、あるいは週に1回、5mgから150mg、例えば、40mgから150mg(例えば、40mg、50mg、60mg、80mg、100mg、120mgまたは150mg)投与される。mTOR感受性疾患としては、とりわけ、固形腫瘍性疾患、例えば、腎細胞癌、TSC、胃がん、乳がん、リンパ腫、肝細胞がんが挙げられる。
【0054】
本発明による薬物の医薬組成物、例えば、多粒子製剤は、マトリックスを形成する添加剤の混合物を原薬と一緒に、熱または湿潤化用液体の助けを借りて押し出すことおよび球状化することによって、あるいはミニ錠剤を薬物含有混合物と圧密することによって、あるいは流動床または回転造粒法で芯上に薬物含有マトリックス層の層を施すことによって調製することができる。
有効物質を含有する層は、親水性成分および有効物質を分散または溶解した、好ましくは溶解した有機溶媒を含む噴霧用分散液を芯材料上に、溶媒を加熱乾燥空気の助けを借りて連続的に除去しながら噴霧することによって調製することができる。この方法によって、芯を取り囲むマトリックス層が形成され、より好ましくは、形成される層は、例えばHPMC、HPC、HECなどのポリマー中への活性成分の固形分散物である。
【0055】
本発明による医薬製剤は、例えば、次のように調製することができる:親水性ポリマーをコロイド状に分散させ、かつ40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを分散または溶解させた噴霧用の有機性供給混合物は、例えば放出改変被覆で被覆できるような方式で溶媒を除去すると、均一で平滑な固形分散物の層として一緒に凝析する。
【0056】
得られた薬物含有多粒子に、さらなる機能層および上塗り被覆を被覆することができる。有機溶媒およびそれらの混合物中に溶解、分散および懸濁された被覆用ポリマー、滑沢剤、粘着防止剤、細孔形成剤、および可塑剤を含有する噴霧用分散液は、薬物を含有する多粒子上に噴霧される。処理中、多粒子は、絶えず、制御された運動または流動状態に保持され、その間、多粒子の表面から溶媒を蒸発させるために、製品床に乾燥し加熱された処理用気体が供給され、規定の温度でフィルム層が形成される。フィルム層の厚さは、噴霧される被覆分散液の量で制御することができる。層を施され被覆された多粒子中の残留溶媒含有量を最小化するために、最終的な乾燥処理が加えられる。
【0057】
多粒子を、硬質カプセル、サシェ、スティックパック中に充填することができ、あるいは多粒子を適切な打錠助剤と混合した後に圧縮して錠剤とすることができる。
【0058】
また、本発明による医薬組成物、例えば多粒子送達システムを使用することによる、mTOR経路に敏感な例えば後記のような疾患のための治療方法が提供される。
【0059】
本発明の経口医薬組成物は、mTORシグナル伝達経路の阻害に応答する疾患または状態、例えば次の状態を治療または予防するのに有用である:
a)例えば、心臓、肺、心−肺の双方、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植の受容者を治療するためなどの、臓器または組織の同種もしくは異種移植拒絶の治療および予防。それらの経口医薬組成物は、また、骨髄移植後などの移植片対宿主病の予防のために指示される。
b)自己免疫疾患および炎症性状態、とりわけ、関節炎(例えば、リウマチ様関節炎、慢性進行性関節炎および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患などの自己免疫の要素を含む病因を伴う炎症性状態の治療および予防。本発明の化合物を採用できる具体的な自己免疫疾患としては、自己免疫性血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、真性赤血球性貧血および特発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、硬皮症、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スチーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼病、グレーヴス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年型糖尿病(I型糖尿病)、ぶどう膜炎(前方および後方)、乾性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化型腎症を含むネフローゼ症候群を伴うまたは伴わない)、および若年型皮膚筋炎が挙げられる。
c)喘息の治療および予防。
d)多剤耐性(MDR)の治療。MDRは、薬剤がPgpによって細胞から汲み上げられるため従来の化学療法に応答しないがん患者およびAIDS患者においてとりわけ問題となる。したがって、組成物は、多剤耐性のがんまたは多剤耐性のAIDSなどの多剤耐性状態の治療および管理において、他の化学療法薬の有効性を高めるのに有用である。
e)増殖性障害、例えば、腫瘍、過剰増殖性皮膚障害など、例えば、固形腫瘍:例えば、腎細胞癌、神経内分泌腫瘍(例えば、GEP神経内分泌腫瘍)、褐色細胞腫、髄膜腫、頭頸部扁平上皮癌、乳がん、リンパ腫NOS、甲状腺がんNOS、子宮内膜がん、肝細胞癌、前立腺がん、転移性黒色腫、神経膠腫、多形性神経膠芽腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、肥満細胞腫、転移性肺がん、肝細胞癌、消化管間質性腫瘍(GIST)、肝細胞癌、星状細胞腫、結節性硬化症(例えば、SEGA、AML)、リンパ管平滑筋腫症、甲状腺癌NOS、総胆管がん、結腸直腸がん、腺様嚢胞癌、胆管癌、肉腫NOS、中皮腫、悪性肝新生物、結腸直腸がん、転移性黒色腫、子宮頸部がん、転移性乳がん、膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、扁平上皮癌、尿路上皮がん、消化器の新生物、胃癌、膵臓がん;あるいは液性腫瘍:例えば、進行性血液悪性腫瘍、例えば、白血病、例えば、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫の治療。
f)異常に増加した骨代謝回転または再吸収、例えば、骨粗鬆症、例えばアロマターゼ阻害薬での治療に付随する骨損失、リウマチ様関節炎、骨減少症、骨形成不全、甲状腺機能亢進症、神経性食欲不振、臓器移植、関節補綴喪失、リウマチ様関節炎における関節周囲骨びらん、骨関節炎、高カルシウム血症、原発性腫瘍に誘発された骨がんおよび骨転移、多発性骨髄腫の治療。
f)真菌感染症の治療。
g)特にステロイドの作用を増強することにおける、炎症の治療および予防。
h)感染、特にMipまたはMip様因子を有する病原体による感染の治療および予防。
i)FK−506およびその他のマクロフィリン結合性免疫抑制剤の過剰投与の治療。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】持続放出性被覆を施した5mgエベロリムスペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。
図2】持続放出性被覆を施した5mgエベロリムスペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。
図3】持続放出性被覆を施したミニ錠剤のリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。
図4】ECおよび細孔形成剤としてのHPCで被覆して持続放出性被覆を施したペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。
図5】ECおよび細孔形成剤としてのHPCで被覆して持続放出性被覆を施したペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。
図6】摂食および絶食状態における10mgエベロリムスの多回投与での血漿中濃度曲線のシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
次の実施例は、上記の本発明を例示するものであるが、それらの実施例は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図しない。本発明の製剤の有益な効果は、また、当業者にとってそれ自体公知のその他の試験方法によって決定することができる。
下記で例示するのは、投与した場合に、平均血漿中ピーク濃度の低減、薬物吸収度および血漿中ピーク濃度の患者間および患者内変動の低減、Cmax/Cmin比率の低減をもたらし、食物効果の低減を示す、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む医薬製剤のいくつかの例である。製剤は、より強固であり、より安定で、より安全である。さらに、製剤の組成または製剤の調製方法により、所望の放出プロフィールをより正確に達成することが可能になる。
【実施例】
【0062】
〔実施例1〕
5mgのエベロリムスを投与するための保護層を施したペレット:
薬物層および保護層を施したペレットに関する次の実施例は、徐放特性を有する製品を得るためにさらに被覆することのできる即放性形態の多粒子を提供する。薬物装填量は、サイズ0のカプセル中に5mgを充填することを見込んだ割合に調節される。表1に記載の2種の異なる組成により、異なる厚さの保護層を実現して、保護効果を最適化することができる。薬物を含有するマトリックス層を備えた多粒子の調製手順は、次の通りである:マトリックスを形成するポリマーであるHPMC(タイプ2910、3cP)を原薬に対して4:1の比率で、エタノール中に6%の溶媒中最終濃度で分散させる。分散液に酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルオールを、原薬に対して2%に相当する量で添加する。層中の固体を基準にして7.5%のタルクおよび3.0%の二酸化チタンを、全溶媒量の6%に相当する少量の水を使用し、ホモジナイザーの助けを借りて分散させる。この水性懸濁液を分散液に添加する。連続的に撹拌する間に、分散液は、膨潤ポリマー粒子が崩壊するまで平衡化される。最後に、原薬を添加し、被覆用分散液中に分散させた後、流動床式処理装置中で予熱され流動化された355から425μmの球状糖上に層を施すことを開始する。使用される球状糖の量は、噴霧後に、有効層を施した多粒子中で1.5%の薬物濃度をもたらす。噴霧は、接線噴霧法を使用して、35℃から45℃の間の範囲に制御された製品床温度で行われる。噴霧工程を終えた後、重量増加が9.2%に到達したなら、得られた多粒子を、流動床中で65℃までの温度で乾燥する。
【0063】
保護的な安定性増強層を塗布するために、層を施す次の手順が続く:結合ポリマーであるHPMC(タイプ2910、3cP)を、エタノール中に4%の溶媒中最終濃度で分散させる。HPMCに対して25%のタルクおよび5%の二酸化チタンを、全溶媒量の6%に相当する少量の水を使用し、ホモジナイザーの助けを借りて分散させる。この水性懸濁液を分散液に添加する。連続的に撹拌している間に、分散液は、膨潤ポリマー粒子が崩壊するまで平衡化される。有効層を施した多粒子を、流動床処理装置中で予熱および流動化する。噴霧は、底部噴霧法を使用し、35℃から45℃の間の範囲に制御された製品床温度で、10から15%の重量増加が達成されるまで行われる。噴霧工程を終えた後、得られた多粒子を、流動床中で65℃までの温度で乾燥する。
【0064】
【表1】
【0065】
〔実施例2〕
20mgのエベロリムスを投与するための保護層を施したペレット:
この実施例では、層を施すことおよび被覆することによって製造される別のペレット変形体を提供する。即放性ペレットは、実施例1に比べてより高い薬物装填量を有し、より高い投与強度の構築を可能にする。この10または20mgの変形体を、サイズ1の硬質カプセルに充填することができる。異なる種類の徐放性被覆材料を使用することができる。有効成分を含有するマトリックスで層を施され、続いて保護層を施された多粒子が、実施例1に記載のように製造される。実施例1と異なり、マトリックスを形成するポリマーであるHPMC(タイプ2910、3cP)を原薬に対して3:2の比率で、エタノール中に5%の溶媒中最終濃度で分散させる。有効層を施したペレット中での有効成分濃度は、実施例1の1.5%から10%へ高められる。
【0066】
【表2】
【0067】
〔実施例3〕
Eudragit RS/RLで被覆された5mg徐放性ペレット
この実施例は、表3に由来するペレットなどの即放性ペレットを上塗り被覆することによって、徐放性プロフィールをどのように達成できるかの可能性を提供する。不溶性ポリマーであるEudragit RSとEudragit RLとの組合せを適切に調節して、所望の放出特性を備えた製品をもたらすことができる。この場合、放出は2時間以内に完了した(図2参照)。
【0068】
持続放出特性を備えた製品を得るために、保護層を施した多粒子に被覆を塗布する:
持続放出性ポリマーであるEudragit RL100およびEudragit RS100を、3:7の比率でアセトンに溶解して、14%の溶媒中最終濃度とする。溶液を絶えず撹拌しながら、アンモニオメタクリル酸コポリマー(Eudragit RS/RL)の量に対して5%のモノステアリン酸グリセリル(粘着防止剤)および10%のクエン酸トリエチル(可塑剤)の量で添加し、溶解する。30%のタルクを、全溶媒量の5%に相当する少量の水を使用し、ホモジナイザーの助けを借りて分散させる。この水性懸濁液をポリマー溶液に添加する。
保護層を施した多粒子を、流動床処理装置中で予熱および流動化した後、分散液の噴霧を開始する。噴霧は、底部噴霧法を使用して、35℃から45℃の間の範囲に制御された製品床温度で、14%のポリマーによる重量増加が達成されるまで行われる。噴霧工程を終えた後、得られた多粒子を、流動床中、40℃の温度で15分間乾燥する。
最後に、被覆された多粒子を、サイズ0のHPMC硬質カプセル中に手で充填した。充填重量は、5mgのエベロリムスに相当する量に調節した。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
インビトロ溶出法:
サイズ0の硬質カプセル中に多粒子を充填し、次いで、ドデシル硫酸ナトリウムを0.2%含有する900mLのリン酸塩緩衝液(pH6.8)を満たした溶出容器中に37℃で配置した。溶出は、それぞれ米国薬局方モノグラフ711、および欧州薬局方モノグラフ2.9.3.に従い、75rpmでパドル法を使用して実施した。
【0072】
インビトロ溶出の結果:
放出プロフィールを図2に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
〔実施例4〕
Eudragit RL/RSで被覆された5mg徐放性ペレット
保護層を施した薬物装填量が2.6%のペレットに、ポリマーとしてEudragit RL100のみを使用して、極めて急速に放出する被覆を塗布した。被覆用噴霧流体は、イソプロパノール/アセトン(60:40)の溶媒混合物を使用して調製した。溶媒中のポリマー濃度は、10%(w/w)に設定した。ポリマーによる重量増加は7.4%であった。
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
〔実施例5〕
細孔形成剤であるHPCを使用した徐放性5mgペレット:
目標とする放出プロフィールは、保護層を施したペレット上に、特定分量の細孔形成剤を含有する上塗り被覆を塗布することによって得ることができる。この実施例では、水溶性ポリマーであるヒドロキシプロピルセルロースを使用して不溶性エチルセルロース被覆中に細孔を形成した。有効成分を含有するマトリックスで層を施され、続いて保護層を施されたペレットは、実施例1に記載のように製造される。
持続性放出特性を備えた製品を得るために、保護層を施された多粒子に被覆を塗布する。
ポリマーの量を基準にして10%のコロイド状二酸化物(滑沢剤)、および10%のクエン酸トリエチル(可塑剤)をエタノール中に分散させる。次いで、持続放出性ポリマーであるエチルセルロースN−10(EC)を、6から7.5%の溶媒中最終濃度で溶解する。分散液を絶えず撹拌しながら、HPC(Klucel EF)をエチルセルロース量の45%から50%に相当する量で添加し、溶解する。
保護層を施した多粒子を、流動床処理装置中で予熱および流動化した後、分散液の噴霧を開始する。噴霧は、底部噴霧法を使用して、35℃から45℃の間の範囲に制御された製品床温度で、ポリマーによる7.5%から11%の重量増加が達成されるまで行われる。噴霧工程を終えた後、得られた多粒子を、流動床中、55℃までの温度で乾燥する。
最後に、被覆された多粒子を、サイズ0のHPMC硬質カプセル中に、投与チャンバー充填ステーションを備えた自動カプセル充填機を用いて充填した。充填重量は、5mgのエベロリムスに相当する量に調節した。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【0081】
インビトロ溶出法:
サイズ0の硬質カプセル中に多粒子を充填し、次いで、ドデシル硫酸ナトリウムを0.2%含有する900mLのリン酸塩緩衝液(pH6.8)を満たした溶出容器中に37℃で配置した。溶出は、それぞれ米国薬局方モノグラフ711、および欧州薬局方モノグラフ2.9.3.に従い、75rpmでパドル法を使用して実施した。
【0082】
インビトロ溶出の結果:
放出プロフィールを図1に示す。
【0083】
【表11】
【0084】
〔実施例6〕
細孔形成剤であるHPMCを用いた持続放出性5mgペレット:
ペレットからの薬物の放出を可能にするために、実施例5に代わって、他の溶性ポリマーも、不溶性被覆中に細孔を形成するのに適している。HPCの代わりにヒプロメロース(HPMC)を使用して、改変された放出プロフィールをもたらすことができる。この場合、薬物のほぼ90%を2時間以内に放出することができる。
有効成分を含有するマトリックスで層を施され、続いて保護層を施されたペレットは、実施例中に記載のように製造される。
持続放出特性を備えた製品を得るために、保護層を施された多粒子に被覆を塗布する:
ポリマーの量を基準にして10%のコロイド状二酸化物(滑沢剤)、および10%のクエン酸トリエチル(可塑剤)をエタノール中に分散させる。次いで、持続放出性ポリマーであるエチルセルロースN−10を溶媒中に、6から7.5%の最終濃度で溶解する。分散液を絶えず撹拌しながら、HPC(Klucel EF)をエチルセルロース量の45%から50%に相当する量で添加し、溶解する。
保護層を施した多粒子を、流動床処理装置中で予熱および流動化した後、分散液の噴霧を開始する。噴霧は、底部噴霧法を使用して、35℃から45℃の間の範囲に制御された製品床温度で、ポリマーによる7.5%から11%の重量増加が達成されるまで行われる。噴霧工程を終えた後、得られた多粒子を、流動床中、55℃までの温度で乾燥する。
最後に、被覆された多粒子を、サイズ0のHPMC硬質カプセル中に、投与チャンバー充填ステーションを備えた自動カプセル充填機を用いて充填した。充填重量は、5mgのエベロリムスに相当する量に調節した。
【0085】
【表12】
【0086】
インビトロ溶出法:
サイズ0の硬質カプセル中に多粒子を充填し、次いで、ドデシル硫酸ナトリウムを0.2%含有する900mLのリン酸塩緩衝液(pH6.8)を満たした溶出容器中に37℃で配置した。溶出は、それぞれ米国薬局方モノグラフ711、および欧州薬局方モノグラフ2.9.3.に従い、75rpmでパドル法を使用して実施した。
【0087】
インビトロ溶出の結果:
実施例5に記載のインビトロ溶出法を使用した。
放出プロフィールを図3に示す。
【0088】
【表13】
【0089】
〔実施例7〕
Eudragit RL/RSで被覆した持続放出性ミニ錠剤:
この実施例では、徐放性被覆のための基体としてペレットの代わりにミニ錠剤を使用する可能性について説明する。遅延放出を達成するために、浸透性の不溶性ポリマーであるEudragit RSとEudragit RLとの組合せを使用した。
固形分散物を溶媒蒸発法で製造した。固形分散物は、1:9部の比率のエベロリムスとHPMC2910 3cP、加えて乳糖およびBHTからなる。BHTの量は、エベロリムスの量に対して2%である。
エベロリムスを、比率が1:1のエタノールとアセトンとの溶媒混合物に溶解し、続いて、容器にBHT、HPMCおよび乳糖を添加し、懸濁させた。分散液を、50℃の乾燥機壁温で真空乾燥した。
【0090】
【表14】
【0091】
エベロリムスが9.09%のミニ錠剤固形分散物を製造するため、無水乳糖、微結晶セルロースおよびステアリン酸マグネシウムを、ターブラ(turbula)型ミキサーで5分間混合した。ブレンド物を、シングルパンチ打錠機で、直径が2mmの19パンチを備えたミニ錠剤用パンチツールを使用して圧縮した。ほぼ18kNの圧縮力を印加して、被覆処理を可能にする10N(範囲:14〜25N)を超える十分な錠剤硬度を備えたミニ錠剤を得た。
【0092】
【表15】
【0093】
ミニ錠剤を、実験室規模の流動床コーター上で被覆した。55.8:37.2:7.0の比率のイソプロパノール/アセトン/水からなる混合溶媒中で、Eudragit RL100とEudragit RS100との溶液を調製した。クエン酸トリエチル(可塑剤)およびタルク(粘着防止剤)を添加した。ミニ錠剤を、処理器中、27〜28℃に加熱された入口空気で流動化し、底部噴霧法で、0.8バールの噴霧圧を印加して被覆した。
【0094】
【表16】
【0095】
〔実施例8〕
エチルセルロースおよび細孔形成剤であるHPCで被覆された持続放出性ミニ錠剤:
この実施例では、ミニ錠剤上に、細孔形成剤を含む被覆を噴霧した。
ミニ錠剤は、実施例7について記載のように製造した。
底部噴霧被覆法には、実験室規模の流動床コーターを使用した。無水エタノール中に、クエン酸トリエチル(可塑剤)およびコロイド状二酸化ケイ素(粘着防止剤)を分散させた後、被覆用ポリマーであるエチルセルロースN10および細孔形成剤であるHPC EFを溶解した。ミニ錠剤を、処理器中、43〜45℃に加熱された入口空気で流動化し、0.8バールの噴霧圧で被覆した。
【0096】
【表17】
【0097】
インビトロ溶出の結果:
実施例5に記載のインビトロ溶出法を使用した。
放出プロフィールを図3に示す。
【0098】
【表18】
【0099】
〔実施例9〕
エチルセルロース(被覆用ポリマー)およびHPC(細孔形成剤)を使用して被覆された持続放出性ペレットを充填した20mgカプセル剤:
この実施例では、サイズ1の硬質カプセルに10または20mgの投与強度で充填するのに、より高い薬物装填量のペレットを使用した。HPMCカプセルを使用すること、および高い水分結合能を備えたスーパー崩壊剤クロスポビドンを添加することによって、その化学安定性に関して製品を改善することができた。
有効成分を含有するマトリックスで層を施され、続いて保護層を施されたペレットを実施例2に記載のように製造する。
実施例5に記載の方法により、保護層を施した多粒子に被覆を塗布した。噴霧流体中のポリマー(ECおよびHPC)濃度は、10%に設定した。可塑剤HPCおよび粘着防止剤アエロジルの量は、ポリマーであるECおよびHPCに対して10%の量で使用した。
サイズ1のHPMCカプセルにペレットを充填し、続いて、第2充填ステーションでカプセル中にクロスポビドンを同一方法で別途充填した。
【0100】
【表19】
【0101】
〔実施例10〕
この実施例では、代わりの剤形としての錠剤を得るための打錠工程に、前記実施例に記載の徐放性被覆を施したペレットを使用することが可能であることを立証する。
硬質カプセルに充填するのに実施例9で使用した徐放性被覆を施したペレットを、別法として、微結晶セルロース(賦形剤)、コロイド状二酸化ケイ素(流動促進剤)およびステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)と共に、タンブルビンブレンダー中で混合して、打錠に適したブレンド物を得た。完全に包埋されて被覆されたペレットを用いて力学的に安定な錠剤を得るために、ブレンド物中のペレット濃度を、40%に保持した。シングルパンチ機で、直径が9mmの丸みのある両凸型錠剤を、4kNの圧縮力で圧縮して、38Nの錠剤硬度を得た。錠剤は、急速に崩壊し、打錠されたペレットの薬物放出は、溶出結果によって想像できるように、圧密によってほんの僅かに影響される。
【0102】
【表20】
【0103】
インビトロ溶出の結果:
実施例5に記載のインビトロ溶出法を使用した。
放出プロフィールを図6に示す。
【0104】
【表21】
【0105】
〔実施例11〕
徐放プロフィールは、また、被覆を塗布する代わりに拡散制御マトリックスシステムを形成することによって達成することができる。この実施例では、特定の放出プロフィールを備えた膨潤性の高粘性マトリックスシステムを得るために、異なる粘度を有する2種のグレードのヒプロメロース(HPMC)を組み合わせた徐放性マトリックスが呈示される。
添加剤の全量を秤量し、篩い分け、ブレンダー、例えばタンブルビンミキサーの容器中に仕込み、適切な時間混合する。打錠中の良好な潤滑を確保するため、適切なブレンド時間の5分を過ぎて、ステアリン酸マグネシウムを添加する。ブレンド物を、シングルパンチ打錠機で、直径が2mmの19パンチを備えたミニ錠剤パンチツールを使用して圧縮した。ほぼ12kNの圧縮力を印加して、15Nを超える十分な錠剤硬度を備えたミニ錠剤を得た。
【0106】
【表22】
【0107】
【表23】
【0108】
図1〕持続放出性被覆を施した5mgエベロリムスペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。(Δ)保護層を被覆した即時放出性ペレット(実施例1/表1)、(□)持続放出性被覆を施したペレット(実施例5/表6)、(◇)持続放出性被覆を施したペレット(実施例5/表8)、(○)持続放出性被覆を施したペレット(実施例5/表9)の間の比較。
図2〕持続放出性被覆を施した5mgエベロリムスペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。(△)保護層を被覆した即時放出性ペレット(実施例1/表1)、(□)ECおよび細孔形成剤としてのHPMCで被覆された持続放出性ペレット(実施例6/表10)、(◇)Eudragit RS/RL(3:7)で被覆された持続放出性ペレット(実施例3/表4)の間の比較。
図3〕持続放出性被覆を施したミニ錠剤のリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。(□)ECおよび細孔形成剤としてのHPCで被覆されたミニ錠剤(実施例8/表14)。
図4〕ECおよび細孔形成剤としてのHPCで被覆して持続放出性被覆を施したペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。(□)ペレットを含む10mg錠剤製剤(実施例10/表16)、(△)20mgペレット(実施例9/表15)の間の比較。
図5〕ECおよび細孔形成剤としてのHPCで被覆して持続放出性被覆を施したペレットのリン酸塩緩衝液6.8中でのインビトロ放出プロフィールを示す図である。(◇)5mg製剤(実施例5/表8)、(△)20mg製剤(実施例9/表15)の間の比較。
図6〕摂食および絶食状態における10mgエベロリムスの多回投与での血漿中濃度曲線のシミュレーションを示す図である。3種の異なる製剤を比較する:
IR:従来の即放性、急速崩壊性錠剤(最上部の線)
SR 6h:サイズ0のHPMCカプセル中の持続放出性ペレット、カプセル当たり5mgのエベロリムス、3時間までにほぼ90%のエベロリムスが放出された、実施例5/表6(下部の2本の線)
SR 3h:サイズ0のHPMCカプセル中の持続放出性ペレット、カプセル当たり5mgのエベロリムス、3時間までにほぼ90%のエベロリムスが放出された、実施例5/表7(残りの中間の2本の線)。
本発明は以下の発明に関するものである。
(1)a)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、ならびにb)i)非水溶性被覆を形成するポリマーおよびii)任意選択で細孔形成剤を含む少なくとも1種の徐放性被覆を含む、多粒子の形態の、経口投与のための徐放性医薬製剤。
(2)細孔形成剤が、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC、Klucel(商標)EF、EXF、LF)もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、Methocel(商標)E3/E5、Pharmacoat603(商標))などの水溶性セルロースエーテル;ポリエチレングリコール(Macrogol 1500、3500、4000、6000);ポロキサマー188(Pluronic F68(商標));またはポビドン(PVP、Kollidon K25/K30)M;あるいはこれらの組合せである、上記(1)に記載の徐放性医薬製剤。
(3)細孔形成剤が、ヒドロキシプロピルセルロース300〜600cp(HPC)、HPMC2910 3cP、ポリエチレングリコール、またはポビドンである、上記(1または2)に記載の徐放性医薬製剤。
(4)被覆を形成するポリマーが、非水溶性セルロースエーテル、例えばエチルセルロースもしくは酢酸セルロース;またはポリメタクリレート、例えばアンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RS/RL);ポリ酢酸ビニル;あるいはこれらの組合せである、上記(1)から(3)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(5)被覆を形成するポリマーが、Eudragit RSもしくはEudragit RL、またはこれらの混合物である、上記(1)から(4)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(6)細孔形成剤が水溶性セルロースエーテルであり、被覆を形成するポリマーが非水溶性セルロースエーテルである、上記(1)から(5)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(7)被覆が、可塑剤をさらに含む、上記(1)から(6)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(8)前記製剤が、急速に溶解または崩壊するマトリックス層を有する内層中に40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む、上記(1)から(7)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(9)急速に溶解または崩壊するマトリックス層が、スターター芯上に配置される、上記(8に記載の徐放性医薬製剤。
(10)前記製剤が、保護層をさらに含む、上記(1)から(9)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(11)保護層が、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む層を隣接層から隔離している、上記(10)に記載の徐放性医薬製剤。
(12)隣接層が、徐放性被覆である、上記(11に記載の徐放性医薬製剤。
(13)徐放性被覆が、上塗り被覆である、上記(12)に記載の徐放性医薬製剤。
(14)保護層が、マトリックス形成剤粘着防止剤、および任意選択で無機顔料を含む、上記(13に記載の徐放性医薬製剤。
(15)保護層が、タルクおよびヒプロメロース2910 3cPを含む、上記(14)に記載の医薬組成物。
(16)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの拡散制御放出を可能にする親水性マトリックス形成剤、または40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの浸食制御放出を可能にする親油性マトリックス形成剤、ならびに任意選択でさらなる機能層および/または機能性被覆を含む多粒子の形態の、経口投与のための徐放性医薬製剤。
(17)マトリックス形成剤が、アルギン酸ナトリウム;カルボキシメチルセルロースナトリウム(または「CMCナトリウム」)、メチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;ポリメタクリレート、例えば、アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RS/RL);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、例えばMethocel(商標)CRグレード;ヒドロキシプロピルセルロース、例えば、Klucel(商標)HF/MF;ポリオキシエチレン、例えば、Polyox(商標);またはポリビニルピロリドン(「PVP」)、例えば、PVP K60、K90;Viscarin(商標)GP−209/GP−379などのカラゲナン;あるいはこれらの組合せである、上記(16)に記載の徐放性医薬製剤。
(18)マトリックス形成剤が、モノステアリン酸グリセリル、例えば、Cutina GMS;ベヘン酸グリセリル、例えば、Compritol 888ATO;ステアリルアルコール;雄鹿脂肪、例えば、Gelucire(商標);またはビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル、例えば、Speziol TPGS;あるいはこれらの組合せである、上記(16)に記載の徐放性医薬製剤。
(19)ドデシル硫酸ナトリウムを0.2%含有する900mLのリン酸塩緩衝液pH6.8中、37℃での溶出アッセイにより測定し、かつ溶出が、欧州薬局方モノグラフ2.9.3に従って75rpmのパドル法を使用して実施した場合に、30分後に有効成分の45%未満が前記医薬組成物から放出される、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを含む多粒子の形態の、経口投与用の徐放性医薬製剤。
(20)医薬製剤が、0.5時間の時点で45%未満、1時間の時点で20〜80%、2時間の時点で50%を超え、かつ3時間の時点で65%を超える、成分a)のインビトロ溶出を示す、上記(19)に記載の徐放性医薬製剤。
(21)a)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、およびb)少なくとも1種の拡散制御徐放性被覆、あるいはc)拡散を可能にする親水性マトリックス形成剤または浸食制御放出を可能にする親油性マトリックスを含む担体マトリックスを含み、ドデシル硫酸ナトリウムを0.2%含有する900mLのリン酸塩緩衝液pH6.8中、37℃での溶出アッセイにより測定し、かつ溶出が、欧州薬局方モノグラフ2.9.3に従って75rpmのパドル法を使用して実施される場合に、30分後に有効成分の45%未満が前記医薬組成物から放出される、上記(20に記載の徐放性医薬製剤。
(22)結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、または乾燥剤から選択される1種または複数の添加剤をさらに含む、上記(1)から(21)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。
(23)内部乾燥剤として、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプングリコール酸ナトリウムを含む、上記(20)に記載の徐放性医薬製剤。
(24)ミニ錠剤、ペレット、ミクロ粒子、顆粒、またはビーズの形態の、上記(1)から(23)に記載の徐放性医薬製剤を含む固形剤形。
(25)硬質カプセル剤、錠剤、サシェ剤、またはスティックパック剤である、上記(24)に記載の固形剤形。
(26)硬質HPMCカプセル剤が、さらなる乾燥剤、例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプングリコール酸ナトリウムを含む、上記(25)に記載の固形剤形。
(27)(i)コロイド状ポリマーおよび40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンが分散または溶解された有機性噴霧流体混合物を調製するステップ、
(ii)芯粒子の表面上に合着させ、溶媒の除去により固体分散体からなる均一で平滑な層として一緒に融合させるステップ、
(iii)得られた粒子を、任意選択でさらなる機能層および放出改変被覆で被覆するステップ
を含む、上記(1)から(23)に記載の徐放性医薬製剤の製造方法。
(28) (iv)有効成分を含むマトリックス層をスターター芯粒子上に付加するステップ、
(v)任意選択で、有効成分を含むマトリックス層上に保護層を付加するステップ、
(vi)粒子を徐放性被覆で被覆するステップ
を含む、上記(1)から(23)に記載の徐放性医薬製剤の製造方法。
(29)エベロリムスが、上記(1)から(26)に記載の徐放性医薬製剤または固形剤形と共に投与される、mTOR経路起因の疾患の治療方法。
(30)薬剤として使用するための、上記(1)から(23)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤、または上記(24)から(26)のいずれかに記載の固形剤形。
(31)上記(1)から(23)のいずれかに記載の徐放性医薬製剤、または上記(24)から(26に記載の固形剤形の、mTOR経路起因の疾患を治療するための薬剤を製造するための使用。
(32)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンが、1日1回1mgから40mg、または1日おきに20mgから80mg、または週1回40mgから150mgの用量で投与される、上記(1)から(26)に記載の徐放性医薬製剤または固形剤形を使用するmTOR経路起因の疾患の治療方法。
(33)a)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、ならびにb)i)非水溶性被覆を形成するポリマーおよび任意選択で細孔形成剤を含む少なくとも1種の徐放性被覆、あるいはc)拡散を可能にする親水性マトリックス形成剤または浸食制御放出を可能にする親油性マトリックスを含む担体マトリックスを含む多粒子の形態の、経口投与のための徐放性医薬製剤を投与することを含む、患者におけるエベロリムスのCmax対Cmin比率を低減する方法。
(34)a)40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、およびb)少なくとも1種の拡散制御徐放性被覆、ならびに/あるいはc)拡散制御放出または浸食制御放出を可能にする親水性マトリックス形成剤を含む担体マトリックスを含む多粒子の形態の、経口投与のための徐放性医薬製剤であって、製剤のCmax対Cmin比率が定常状態で5未満である、徐放性医薬製剤。
図1
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図4
図5
図6