特許第6368246号(P6368246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368246
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】被覆チタン酸バリウム微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   C01G23/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-546952(P2014-546952)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2013080078
(87)【国際公開番号】WO2014077176
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-249324(P2012-249324)
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】守谷 好美
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−204315(JP,A)
【文献】 特開2010−030861(JP,A)
【文献】 米国特許第05243095(US,A)
【文献】 米国特許第7652870(US,B2)
【文献】 米国特許第7854916(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径10nm以上1000nm未満、Ba/Ti比0.80以上1.20以下、単位結晶のc軸とa軸との比c/a比が1.001以上1.010以下であり、Mg、Ca、Ba、Mnおよび希土類元素の群から選択される少なくとも1種類の金属の炭酸塩を含む被覆層を表面に有し、前記炭酸塩の被覆量が被覆チタン酸バリウム微粒子の全質量を基準として0.01〜20.0質量%であることを特徴とする被覆チタン酸バリウム微粒子の製造方法であって、
(1)温度200℃以上450℃以下、圧力2MPa以上50MPa以下、反応時間0.1分以上1時間以下で水熱反応することによりチタン酸バリウム微粒子を得る工程、及び
(2)当該チタン酸バリウム微粒子の表面に、Mg、Ca、Ba、Mn、及び希土類元素の硫酸塩、硝酸塩及び塩化物の群から選択される金属の化合物の水溶液と、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3及び(NH4)2CO3の群から選択されるアルカリとを100℃以下で中和反応させて、前記Mg、Ca、Ba、Mn、及び希土類元素の少なくとも1種類の金属の炭酸塩を含む被覆層を形成する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(2)が、当該チタン酸バリウム微粒子を水中に均一に分散させてスラリーを得、当該スラリーと、アルカリと、Mg、Ca、Ba、Mnおよび希土類元素の群から選択される少なくとも1種類の金属の化合物の水溶液とを混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(2)が、
(a)前記スラリーに、アルカリを加えた後、前記金属の化合物の水溶液を加える、
(b)前記スラリーに、前記金属の化合物の水溶液を加えた後、アルカリを加える、
(c)前記スラリーに、アルカリ及び前記金属の化合物の水溶液を同時に加える、
(d)アルカリ及び前記金属の化合物の水溶液を中和反応させて、中和反応後の水溶液を前記スラリーに加える、又は
(e)アルカリ及び前記金属の化合物の水溶液を中和反応させて、中和反応後の水溶液に前記スラリーを加える、
ことのいずれかを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
希土類元素が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、
及びLuの群から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記工程(2)におけるアルカリの濃度が0.01〜20.0mol/Lであり、アルカリの添加量が中和度を0.8以上として中和反応させる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られる金属の炭酸塩を含む被覆層を表面に有する被覆チタン酸バリウム微粒子を500〜1000℃で熱処理する工程を含む、Mg、Ca、Ba、Mn、及び希土類元素の少なくとも1種類の金属の酸化物を含む被覆層を表面に有する被覆チタン酸バリウム微粒子の製造方法
【請求項7】
工程(1)が、バリウム水酸化物を含む水溶液とチタン水酸化物を含む水溶液とを、バリウムとチタンのBa/Ti比が0.80以上1.20以下となる割合で混合し、温度200℃以上450℃以下、圧力2.0MPa以上50MPa以下、反応時間0.1分以上1時間以下で水熱反応させてチタン酸バリウム微粒子を得る工程を含む、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物を被覆層として有するチタン酸バリウム微粒子(以下、被覆チタン酸バリウム微粒子という)及びその製造方法に関する。本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の誘電体材料やNi内部電極の添加剤などに好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化により、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)には小型化、高容量化が求められている。小型化、高容量化には誘電体層の厚みを薄くする必要があり、現在ではその厚みが1μm以下にまで薄層化が進んでいる。
【0003】
誘電体材料に用いられるチタン酸バリウム微粒子には、粒子形状が均一で粒度分布が狭く、結晶性が高く、分散性に優れた粒子が求められている。しかしながら、チタン酸バリウムでは、粒子径の微細化(200nm未満)に伴い、サイズ効果と呼ばれる結晶性の低下が問題となる。
【0004】
チタン酸バリウムにおける結晶性の指標としては、c/a比(単位結晶のc軸とa軸との比)が知られているが、粒子径が200nm未満になるとc/a比は1.009未満となり、誘電率が減少する傾向が見られる。MLCCの小型化、高機能化の対応には、チタン酸バリウムの微細化、高結晶化、高分散性の並立が課題である。
【0005】
従来、チタン酸バリウム微粒子の合成は固相反応法、蓚酸塩法、ゾルゲル法、水熱反応法等の様々な方法により行われている。
【0006】
固相反応法はチタン源として酸化チタン、バリウム源として炭酸バリウムを用いる。原料には微細粒子を使用し、原料を均一に混合して1000℃程度の温度で熱処理することによりチタン酸バリウム微粒子を合成する。合成後は粉砕機による微細化が必要であり、粒子はサブミクロンの不均一で、分散性の悪い粒子となりやすい。
【0007】
蓚酸塩法(例えば特許文献1参照)は、チタン塩とバリウム塩の水溶液に蓚酸水溶液を添加して蓚酸バリウムチタニルを沈殿させ、得られた蓚酸バリウムチタニルを700℃以上で熱処理することによりチタン酸バリウムを合成する方法である。固相反応法の一種であるが、前駆体を原子レベルで混合することができ、固相反応法と比べて微細で均質組成の粒子を得ることができる。しかし、粒子形状が固相反応法と同様にサブミクロンの不均一粒子となりやすい。
【0008】
ゾルゲル法では、チタンとバリウムのアルコキシドを混合したアルコール溶液を還流操作により複合アルコキシドとし、加水分解反応によりチタン酸バリウムの前駆体を得る。
【0009】
この前駆体粒子は十数ナノ以上100nm以下の粒径を有するが、結晶性が低いため高温での熱処理が必要となる。熱処理による粒子成長、凝集、焼結を制御して目的の粒子径を得る。微細で結晶性の高い粒子が得られるが、粒子形状の均一性、分散性が悪い。
【0010】
水熱反応法は液相反応を用いるものであり、通常、チタン化合物の加水分解で得られたチタン水酸化物と水酸化バリウムとを100℃以上の高温高圧条件下で反応させてチタン酸バリウムを合成する。水熱反応法で得られる粒子径はチタン原料の影響を受け、加水分解で得られるチタン水酸化物の粒子径が小さいほど、合成されるチタン酸バリウムの粒子径は小さくなる。固相反応法や蓚酸塩法では合成困難である微細な粒径の粒子が得られやすく、ゾルゲル法に比べて熱処理なしで高結晶且つ分散性の高い微粒子が得られやすい。
【0011】
特許文献2及び3には、微細化、高結晶化、高分散性を並立したチタン酸バリウム微粒子又はその製造方法が記載されている。従来の水熱反応法では低温(200℃未満)、低圧(2MPa未満)、長時間(数時間)の条件にて反応することが一般的であり、反応時間を制御することにより10〜200nmまでの粒径制御が可能であるが、固相反応法と比較して結晶性(c/a比、結晶子径)が低かった。この点、特許文献2又は3では水熱反応条件を高温(200℃以上)、高圧(2MPa以上)、短時間(1時間未満)にすることで、粒子径が微細であっても、単結晶であり、c/a比及び誘電率が高く、熱処理の必要性がない微粒子を合成している。また、熱処理の必要性がないことから、粒子形状が均一で、分散性も優れている。
【0012】
内部電極にNiを使用したNi-MLCCの作製プロセスでは、チタン酸バリウム及び添加物等にバインダーを添加して混合・分散させた後、シート成形、電極形成、積層、圧着、切断、脱バインダー、焼成、端子成形、焼付け、めっき等の工程を経て、Ni-MLCCを作製する。内部電極にNiを使用するため、焼成工程では水素雰囲気中、1000℃以上の高温にて焼成している。
【0013】
従来、焼成工程においてチタン酸バリウムが還元されることを防止するため、ペロブスカイトのAサイトとBサイトのモル比を1より大きくしたり、Baの一部をCaで置換したり、Mn化合物を添加することにより、焼成時の還元すなわち酸素欠陥の生成を抑制する試みが行われている。また、Ni-MLCCの長寿命化のために、チタン酸バリウムにMg化合物や希土類化合物を添加したり、焼成後に誘電体の再酸化を目的として熱処理したり、焼成時の酸素分圧を低くしたり、粒界のペロブスカイトのAサイトBサイトのモル比を1より大きくしたりすることも検討されている。
【0014】
Ni-MLCCの性能を向上させるために、Ba、Ca、Mn、Mg、希土類元素等の様々な化合物をチタン酸バリウム粒子に混合して誘電体層を改良することも行われている。
【0015】
特許文献2又は3に記載されているような、高温高圧条件で水熱反応し、微細化、高結晶化、高分散性を並立したチタン酸バリウム微粒子をNi-MLCCの誘電体材料に使用した場合、原料の混合・分散、シート成形工程でのシート平滑性に優れる。しかし、高温焼成した場合には、固相反応法等により合成されたチタン酸バリウムを用いた場合と比較して、チタン酸バリウムの結晶粒(グレイン)が成長してMLCCが短寿命となる問題が生じる。この原因は、高温での熱処理により高結晶化した固相反応法等によるチタン酸バリウム微粒子では、再度高温での焼成を行ってもグレイン成長が生じないが、水熱反応法で合成したチタン酸バリウムでは粒子表面の活性が高く、粒子間での焼結が進行してグレイン成長を生じやすいからであると考えられる。
【0016】
そのため、高温高圧条件にて水熱反応して得られた、微細化、高結晶化、高分散性を並立したチタン酸バリウム微粒子をMLCCの誘電体材料に使用するためには、Ni-MLCC作製プロセスにおける焼成工程でのチタン酸バリウム微粒子のグレイン成長を抑制する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004-123431号公報
【特許文献2】特開2010-30861号公報
【特許文献3】特開2010-168253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであり、MLCC用誘電体材料の用途に適した、高温高圧条件にて水熱反応して得られたチタン酸バリウム微粒子であって、その表面が金属化合物で被覆されたチタン酸バリウム微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、高温高圧条件にて水熱反応して得られたチタン酸バリウム微粒子の粒子表面に、Mg、Mn、Ca、Ba、希土類元素等の化合物を均一に被覆することにより、焼成工程におけるチタン酸バリウム微粒子のグレイン成長を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明によれば、以下の実施態様が提供される。
[1]温度200℃以上450℃以下、圧力2MPa以上50MPa以下、反応時間0.1分以上1時間以下で水熱反応することにより得られるチタン酸バリウム微粒子であって、平均粒子径10nm以上1000nm未満、Ba/Ti比0.80以上1.20以下、単位結晶のc軸とa軸との比c/a比が1.001以上1.010以下であり、Mg、Ca、Ba、Mnおよび希土類元素の群から選択される少なくとも1種類の金属の化合物を含む被覆層を表面に有することを特徴とする被覆チタン酸バリウム微粒子。
[2]被覆層が、Mg、Ca、Ba、Mnおよび希土類元素の群から選択される少なくとも1種類の金属の化合物からなる[1]記載の被覆チタン酸バリウム微粒子。
[3]被覆層が、Mg、Ca、Ba、Mnおよび希土類元素の群から選択される少なくとも1種類の金属の酸化物、水酸化物、及び/又は炭酸塩からなる[2]記載の被覆チタン酸バリウム微粒子。
[4]希土類元素が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの群から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする[2]又は[3]記載の被覆チタン酸バリウム微粒子。
[5]チタン酸バリウム微粒子と被覆層の総質量を基準として、0.01以上20.0質量%以下の被覆層を有する[1]記載の被覆チタン酸バリウム微粒子。
[6](1)バリウム水酸化物を含む水溶液とチタン水酸化物を含む水溶液とを、バリウムとチタンのBa/Ti比が0.80以上1.20以下となる割合で混合し、温度200℃以上450℃以下、圧力2.0MPa以上50MPa以下、反応時間0.1分以上1時間以下で水熱反応させてチタン酸バリウム微粒子を得る工程、(2)当該チタン酸バリウム微粒子を水溶液中に均一に分散させる工程、(3)当該チタン酸バリウム微粒子の表面に金属化合物を被覆する工程、を含むことを特徴とする[1]記載の被覆チタン酸バリウム微粒子の製造方法。
[7][6]記載の方法によって製造された被覆チタン酸バリウム微粒子を500〜1000℃で熱処理することを特徴とする熱処理された被覆チタン酸バリウム微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、高温高圧条件にて水熱反応して得られた従来のチタン酸バリウム微粒子と比べて、焼成工程に付した場合にグレイン成長が抑制されるという利点を有するため、積層セラミックスコンデンサの誘電体材料、Ni内部電極の添加剤等の用途に好適である。また、本発明の当該微粒子の製造方法は、製造コストが比較的低減されており、工業化規模の生産に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明の方法により調製したチタン酸バリウム微粒子50nmの粒子形態を示す電子顕微鏡写真(20万倍)である。
図2図2は本発明の方法により調製したチタン酸バリウム微粒子100nmの粒子形態を示す電子顕微鏡写真(10万倍)である。
図3図3は実施例3のMg被覆チタン酸バリウム50nmの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
図4図4は実施例8のGd被覆チタン酸バリウム50nmの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
図5図5は実施例31のNd被覆チタン酸バリウム50nmの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
図6図6は実施例40のLa被覆チタン酸バリウム50nmの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
図7図7は比較例1の被覆処理なしのチタン酸バリウム50nmの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
図8図8は比較例6のNd被覆市販品チタン酸バリウムの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
図9図9は比較例9のNd被覆チタン酸バリウム50nmの焼成前後の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。
【発明の実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子及びその製造方法について、好ましい実施形態に基づき記述するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0024】
本発明者らは、高温高圧条件にて水熱反応して得られたチタン酸バリウム微粒子の粒子表面に、Ni-MLCCの特性向上のために添加されることのあるMg、Mn、Ca、Ba、希土類元素等の金属の化合物を均一に被覆することにより、Ni-MLCC作製プロセスにおける焼成工程においてチタン酸バリウム微粒子のグレイン成長が抑制できることを見出した。
【0025】
その理由は明らかでないが、高温高圧条件にて水熱反応して合成したチタン酸バリウム微粒子は、従来の固相反応法、又は低温低圧条件での水熱反応法と比較して分散性が優れるため金属化合物が均一に被覆しやすく、高温焼成においてチタン酸バリウム微粒子の粒子表面で金属化合物との反応が均一に進行する。その結果、Mg、Mn、Ba、Ca、ではこれらの金属がチタン酸バリウム中に均一に固溶してグレイン成長を抑制し、希土類元素ではグレイン成長の抑制に効果的なBa2TiO4、希土類酸化物、又は希土類元素と酸化チタンとの複合酸化物が粒子表面に均一に生成することに起因すると考えられる。
【0026】
また、従来のNi-MLCC作製プロセスでは、チタン酸バリウムに金属化合物及びバインダーを添加して、ビーズミル等の湿式分散機により均一混合を行っているが、均一に金属化合物をチタン酸バリウム微粒子の粒子表面に分散させることは困難であり、分散のバラツキによりMLCC特性の低下を招く。一方、本発明はチタン酸バリウム微粒子の粒子表面に金属化合物を均一に被覆することが可能であるため、グレイン成長の抑制だけでなく、均一なコアシェル構造の形成が可能であり、MLCC特性の向上にも効果的である。
【0027】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子のバリウムとチタンの原子比(Ba/Ti比)は、0.80〜1.20であり、0.90〜1.10が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。Ba/Ti比が0.80より小さい場合、不純物が混在し、c/a比が低くなり、粒子形態が不均一になりやすく、誘電特性が低下する。また、Ba/Ti比が1.20より大きい場合、Ba化合物等の不純物が混在して誘電体特性が低下する。
【0028】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、その平均粒子径が10〜1000nmであり、10〜500nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。該チタン酸バリウム微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察に基づいて、倍率が3万〜20万倍のTEM像から200個以上の任意の粒子の粒子径を計測し、その平均値より求める。粒子形態を均一で、高分散性なものとできる下限は10nmである。反応温度を高温とし、アルカリ量を多く添加して、結晶成長を促進した場合、平均粒子径は1000nmを超えると不均一となる。
【0029】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、粒子径分布の相対標準偏差が25.0%以下であり、20.0%以下であることが好ましい。粒子径分布を狭い範囲にすることにより、MLCC作製プロセスにおけるシート成形工程でのシート平滑性に優れる。
【0030】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、正方晶BaTiO3のc/a比が1.001以上であることが好ましく、1.003〜1.010であることがより好ましく、1.005〜1.010であることがさらに好ましい。正方晶BaTiO3のc/a比が1.001未満であると、誘電率の低下を招くため好ましくない。正方晶BaTiO3については、X線回折測定を行い、リートベルト解析により正方晶BaTiO3のc/a比を求めた。
【0031】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、金属化合物が、Mg、Ca、Ba、Mn、希土類元素の酸化物、水酸化物、及び/又は炭酸塩(炭酸塩の水和物も含む)からなる。希土類元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを含む。被覆チタン酸バリウム微粒子の全質量を基準として、金属化合物の被覆量が0.01〜20.0質量%であることが好ましく、0.1〜15.0質量%であることがより好ましい。金属化合物の被覆量が0.01質量%より少ない場合、グレイン成長を抑制する効果が小さい。金属化合物の被覆量が20.0質量%より大きな場合、グレイン成長を抑制する効果があるが、誘電特性が低下する。
【0032】
次に、本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子の好ましい製造方法について説明する。
【0033】
本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子は、下記のi)チタン酸バリウム微粒子の合成工程、ii)チタン酸バリウム微粒子の金属化合物による被覆処理工程により製造できる。
【0034】
<i)チタン酸バリウム微粒子の合成工程>
始めに、バリウム及びチタン水酸化物含有水溶液を調製する。調製方法としては、下記の(イ)及び(ロ)の方法が挙げられる。
(イ)先ず、チタン塩水溶液を調製し、このチタン塩水溶液にアルカリ水溶液を添加して、中和反応によりチタン水酸化物を生成させてチタン水酸化物含有水溶液を得る。次に、チタン水酸化物含有水溶液にバリウム塩水溶液を添加してバリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液を得る。
(ロ)先ず、チタン塩水溶液を調製し、このチタン塩水溶液をアルカリ水溶液に添加して、中和反応によりチタン水酸化物を生成させてチタン水酸化物含有水溶液を得る。次に、チタン水酸化物含有水溶液にバリウム塩水溶液を添加してバリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液を得る。
【0035】
(イ)及び(ロ)の方法の場合、バリウム塩水溶液を中和反応前のチタン塩水溶液又はアルカリ水溶液に予め添加してもよい。バリウム塩の溶解及び添加の際は、空気中の炭酸等が反応しないように不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気にて行うことが望ましい。
【0036】
(イ)及び(ロ)の方法において、中和反応により生成したバリウム及びチタン水酸化物を200℃以下の温度範囲で加熱して予めチタン酸バリウムを生成させてもよい。
【0037】
また、(イ)及び(ロ)の方法において、中和反応後のバリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液に有機化合物を添加してもよく、中和反応前のバリウム塩水溶液、チタン塩水溶液、又はアルカリ水溶液に有機化合物を添加しても良い。有機化合物としては所望の物性を充たせば特に制限はないが、界面活性剤等の高分子化合物が挙げられる。有機化合物の添加量は、チタン酸バリウムの理論生成量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.01〜15.0質量%がより好ましく、0.1〜10.0質量%がより一層好ましい。
【0038】
(イ)及び(ロ)の方法で用いるチタン塩水溶液としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、アルコキシド等といった各種のチタン塩の水溶液を使用することができる。また、一つのチタン塩水溶液を使用してもよく、複数のチタン塩水溶液の混合物を使用してもよい。チタン塩水溶液の濃度は、好ましくは0.05〜5.5mol/L、より好ましくは0.13〜3.0mol/Lのものを使用する。また、チタン塩水溶液の代わりに酸化チタン含有水溶液を使用してもよい。
【0039】
(イ)及び(ロ)の方法で用いるバリウム塩水溶液としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、炭酸塩、アルコキシド等といった各種のバリウム塩の水溶液を使用することができる。また、一つのバリウム塩水溶液を使用してもよく、複数のバリウム塩水溶液を使用してもよい。該バリウム塩水溶液は、その濃度が好ましくは0.05〜2.0mol/L、より好ましくは0.1〜1.5mol/Lのものを使用する。
【0040】
上記のチタン塩水溶液とバリウム塩水溶液は、バリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液中のBa/Ti比が0.8〜1.20、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05となるように添加する。
【0041】
(イ)及び(ロ)の方法で用いるアルカリ水溶液としては、例えば、NaOH、KOH、NH3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3、(NH4)2CO3の水溶液等を使用することができる。該アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜20.0mol/L、より好ましくは1.0〜10.0mol/Lのものを使用し、アルカリ量はチタン酸バリウム微粒子の中和度が0.8以上となるように使用する。中和度が0.8より小さい場合、チタン酸バリウムの粒子形態は100nm以下の板状粒子となり、組成的にBa/Ti比が0.80よりも小さくなり、結晶構造的にもBaTiO3相以外のチタンリッチのバリウムチタン化合物の不純物相が生成する。
【0042】
また、上記バリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液には、誘電体材料として、誘電率、キュリー温度、誘電率の温度係数等の制御を行う目的で、ペロブスカイト型の結晶構造のBaサイトをMg、Ca、Sr、Pb等から選ばれる少なくとも一種の元素で置換させるため、Mg、Ca、Sr、Pb等の化合物を添加してもよく、Tiサイトの置換のためにZr、Hf、Sn等の化合物を添加してもよい。これらの化合物は、バリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液の調製時の何れの段階で添加してもよく、バリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液の調製後に添加しても良い。
【0043】
次に、バリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液を高温高圧条件にて水熱反応する。水熱反応は、温度が、200℃以上、好ましくは200〜450℃、より好ましくは250〜400℃、且つ全圧力が2MPa以上、好ましくは2〜50MPa、より好ましくは10〜40MPaで、通常0.1分以上、好ましくは0.1分〜1時間、より好ましくは0.1〜30分行うとよい。このような高温高圧条件下で水熱反応させて、粒子径、粒子の均一性等の粒子形態の制御を行い、ろ過、水洗した後、乾燥、解砕することにより、チタン酸バリウム微粒子が得られる。特に反応時間を制御することで、粒子径の制御が可能である。
【0044】
上記水熱反応の条件は、バリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液における原料の種類、Ba/Ti比、アルカリ量、反応スケール、反応温度、反応圧力及び反応時間等によって上記範囲内において適宜決定できる。上記水熱反応でチタン酸バリウム微粒子を形成する最低温度は60℃であるが、結晶性及び分散性の高い粒子を得るためには200℃以上が好ましい。上記水熱反応の最高温度は特に制限がなく、臨界点を越えてもよいが、使用する反応装置の仕様に制限される。
【0045】
<ii)金属化合物によるチタン酸バリウム微粒子の被覆工程>
i)で得られたチタン酸バリウム微粒子を金属化合物で被覆する。始めに、チタン酸バリウム微粒子を水中に均一に分散させる。均一にチタン酸バリウム微粒子を分散させるためには、pH調整を行い、超音波ホモジナイザ、遊星ボールミル、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、湿式ジェットミル、湿式ビーズミル等の分散機により行うことが望ましい。得られたチタン酸バリウム微粒子スラリーにアルカリを添加して均一に混合した後、金属化合物の水溶液を添加して中和反応させ、チタン酸バリウム微粒子の粒子表面に金属化合物を均一に被覆させる。また、中和反応させる際には、チタン酸バリウム微粒子スラリーに金属化合物の水溶液を添加した後、アルカリを添加してもよく、金属化合物の水溶液及びアルカリを同時に添加してもよい。更に、金属化合物の水溶液及びアルカリを先に中和反応させてから、均一に分散したチタン酸バリウム微粒子スラリーに添加して均一に金属化合物を被覆させてもよく、逆に均一に分散したチタン酸バリウム微粒子スラリーを金属化合物とアルカリの水溶液に添加してもよい。また、チタン酸バリウム微粒子を粉末で添加する場合は、添加後に混合スラリーを均一に分散させる。また、アルカリは水溶液として添加してもよく、粉末、固体および結晶状のまま添加してもよい。
【0046】
金属化合物の水溶液としては、Mg、Ca、Ba、Mn、希土類元素の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、アルコキシド等を使用することができる。該水溶液の濃度は、好ましくは0.001〜10mol/L、より好ましくは0.01〜5.0mol/Lのものを使用する。
【0047】
アルカリとしては、例えば、NaOH、KOH、NH3、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3、(NH42CO3の水溶液、粉末、固体および結晶を使用することができる。該アルカリの濃度は、好ましくは0.01〜20.0mol/L、より好ましくは1.0〜10.0mol/Lのものを使用し、アルカリの添加量は金属化合物水溶液の中和度が0.8以上となるようにする。
【0048】
金属化合物の被覆において、100℃以下の温度範囲にて中和反応させて被覆してもよい。また、その後100℃以上で水熱処理してもよい。
【0049】
次に、金属化合物の水溶液及びアルカリで処理されたチタン酸バリウム微粒子スラリーをろ過、水洗後、乾燥、解砕して被覆チタン酸バリウム微粒子を得る。被覆層は、Mg、Ca、Ba、Mn、希土類元素の水酸化物又は炭酸塩からなり、非晶質の状態である。また、熱処理を行うことで、被覆層を酸化物の結晶質の状態にしてもよい。熱処理温度の最高到達温度は、好ましくは300〜1500℃、より好ましくは500〜1000℃である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子及びその製造方法について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
[チタン酸バリウム微粒子(50nm)の調製]
チタン塩水溶液としてチタン水酸化物含有水溶液、バリウム塩水溶液として硝酸バリウム水溶液、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液を用いて、Ti量が0.43mol、Ba量が0.43mol、アルカリ量が2.58mol[中和度=アルカリ量/(4×Ti量+2×Ba量)=1.0]となるように原料を準備した。次に原料タンク内で、室温、大気下にてチタン水酸化物含有水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加後、硝酸バリウム水溶液を添加して、反応前駆体である無定形のバリウム及びチタン水酸化物を含有する水溶液を調製した。調製後の反応前駆体のpH値は13.2であった。調製した反応前駆体を連続式水熱反応装置により温度400℃、圧力25MPa、滞留時間0.4minにて水熱反応を行い、その後、ろ過、水洗、乾燥して50nmのチタン酸バリウム微粒子を得た。
【0052】
得られたチタン酸バリウム微粒子は、X線回折、平均粒子径、粒度分布を評価した。また、透過型電子顕微鏡(TEM)写真(20万倍)を図1に示す。X線回折法によりリートベルト解析したところ、c/a比が1.004の正方晶チタン酸バリウムであり、結晶子径が50nmであり、平均粒子径が50nmであり、Ba/Ti比が1.000であり、比表面積は31.1m2/gであり、粒度分布測定によるメジアン径が50nm、変動係数が20.0%であった。TEMによる観察から粒子形態の均一性が良い。また、結晶性が高く、平均粒子径とメジアン径が一致し、変動係数が低いことから分散性が良い。
【0053】
[チタン酸バリウム微粒子(100nm)の調製]
前記チタン酸バリウム微粒子50nmの製造方法において、原料調製時のアルカリ量を5.16mol(中和度=2.0)に変更し、それ以外は同じ条件で100nmのチタン酸バリウム微粒子を調製した。得られた100nmのチタン酸バリウム微粒子は、X線回折、平均粒子径、粒度分布を同様に評価した。また、透過型電子顕微鏡(TEM)写真(10万倍)を図2に示す。
【0054】
得られた100nmのチタン酸バリウム微粒子は、c/a比が1.007の正方晶チタン酸バリウムであり、結晶子径が100nmであり、平均粒子径が100nmであり、Ba/Ti比が1.000であり、比表面積は8.1m2/gであり、粒度分布測定によるメジアン径が100nm、変動係数が20.0%であった。TEMによる観察から粒子形態の均一性が良い。また、結晶性が高く、平均粒子径とメジアン径が一致し、変動係数が低いことから分散性が良い。
【0055】
(実施例1〜67及び比較例1〜5)
[チタン酸バリウム微粒子の被覆]
まず、前記チタン酸バリウム微粒子0.150molを純水550mlに超音波ホモジナイザにより単分散液とした。なお、実施例63及び比較例4では100nm、比較例5では市販品(蓚酸塩法、粒子径500nm)、それ以外は50nmのチタン酸バリウム微粒子を使用した。
【0056】
前記チタン酸バリウムの単分散液にアルカリを添加して均一混合した後、金属塩水溶液200mlを添加し、中和反応により金属化合物をチタン酸バリウム微粒子の粒子表面に被覆させた。被覆後、ろ過・水洗し、150℃乾燥、解砕して目的の被覆チタン酸バリウム微粒子を得た。実施例64〜67については、被覆チタン酸バリウム微粒子を大気雰囲気で熱処理(700℃、3時間)して、被覆した金属化合物を酸化物とした。得られた熱処理被覆チタン酸バリウム微粒子を、X線回折、蛍光X線分析、熱重量分析により評価した。
【0057】
実施例1〜67で得られた被覆チタン酸バリウム微粒子、及び被覆処理なしの比較例1〜5について、窒素雰囲気、5vol.%水素雰囲気(残りは窒素)、又は大気雰囲気にて、1000℃、3時間の焼成を行い、グレイン成長抑制効果についてX線回折、蛍光X線分析、透過型電子顕微鏡(TEM)、及び比表面積測定により評価した。それらの結果を表1〜3に示す。また、実施例3、8、31、41及び比較例1のTEM写真(6万倍)を図3〜7に示す。なお、焼成後のX線回折の結果からは、実施例14及び15を除く実施例1〜67のすべて、及び比較例1〜3において、BaTiO3及びBa2TiO4(斜方晶)が形成されていることが分かった。一方、実施例14及び15では、BaTiO3とともにBaCO3のピークが観測された。また、比較例4及び5では、BaTiO3のピークのみが観測された。
【0058】
(比較例6〜8)
チタン酸バリウム微粒子の市販品(蓚酸塩法、粒子径500nm)を用いて、実施例1〜63と同様の方法により表面にNd、Gd、Laを被覆し、同様にグレイン成長抑制効果の評価を行った。その被覆条件及び結果を表1〜3に示す。また、比較例6のTEM写真(6万倍)を図8に示す。
【0059】
(比較例9、10)
本発明の方法により調製したチタン酸バリウム微粒子(50nm)とNd2O3粉末又はHo2O3とを遊星ボールミル(100rpm、3h)を用いて水中で湿式混合し、Nd又はHoの被覆を行った。被覆後に150℃乾燥、解砕して目的の被覆チタン酸バリウム微粒子を得た。得られた被覆チタン酸バリウム微粒子は、実施例1〜67及び比較例1〜8と同様の方法によりグレイン成長抑制の評価をした。その被覆条件及び結果を表1〜3に示す。また、比較例9のTEM写真(6万倍)を図9に示す。
【0060】
【表1-1】
【0061】
【表1-2】
【0062】
【表2-1】
【0063】
【表2-2】
【0064】
【表3-1】
【0065】
【表3-2】
【0066】
実施例1〜60と比較例1とを比較すると、比較例1では窒素雰囲気での焼成後の比表面積が2.8m2/gであるのに対して、本発明の方法で粒径50nmのチタン酸バリウム粒子を被覆した場合には窒素雰囲気での焼成後の比表面積が2.8m2/gより大きな値をとっており、本発明の被覆層によってグレイン成長抑制効果が大幅に向上していることが明白である。
【0067】
実施例36と実施例39とを見ると、被覆層が炭酸塩及び水酸化物である場合に、比表面積はそれぞれ15.5m2/g及び17.8m2/gであり、水酸化物を用いても炭酸塩と同様のグレイン成長抑制効果が見られた。
【0068】
実施例3のTEM写真(図3)、実施例8のTEM写真(図4)と比較例1のTEM写真(図7)とを比較すると、本発明の方法で被覆した場合には焼成後のTEM写真からグレイン成長抑制効果が確認できる。
【0069】
実施例19と比較例10、実施例27と比較例9とを比較すると、本発明の方法を用いて被覆した場合には、従来の湿式混合による被覆処理と比べて窒素雰囲気での焼成後の比表面積が大幅に向上しており、グレイン成長抑制効果が高いことが明白である。
【0070】
比較例9の焼成前のTEM写真(図9)から、従来の湿式合成による被覆処理でも、被覆層が均一に形成されていることが判明したが、グレイン成長抑制効果は低かった。
【0071】
実施例63と比較例4とを比較すると、本発明の方法で粒径100nmのチタン酸バリウム粒子を被覆した場合においても、被覆処理なしと比べて、窒素雰囲気での焼成後の比表面積が3.3m2/gから5.1m2/gへと大幅に向上しており、本発明の被覆層によるグレイン成長抑制効果が明白である。
【0072】
実施例11〜67と比較例2とを比較すると、比較例2では5vol.%水素雰囲気での焼成後の比表面積が2.7m2/gであるのに対して、本発明の方法で粒径50nmのチタン酸バリウム粒子を被覆した場合では5vol.%水素雰囲気での焼成後の比表面積が2.7m2/gより大きく、本発明の被覆層によってグレイン成長抑制効果が大幅に向上していることが明白である。
【0073】
実施例61、62、65、及び66を比較すると、比表面積はそれぞれ9.4m2/g、10.7m2/g、5.9m2/g、6.2m2/gであり、被覆層が炭酸塩であっても酸化物であっても同様なグレイン成長抑制効果が見られた。
【0074】
実施例31のTEM写真(図5)と実施例40のTEM写真(図6)を見ると、焼成後のグレイン成長が抑制されていることが分かる。
【0075】
実施例14〜23と比較例3とを比較すると、比較例3では大気雰囲気での焼成後の比表面積が1.8m2/gであるのに対して、本発明の方法で粒径50nmのチタン酸バリウム粒子を被覆した場合では大気雰囲気での焼成後の比表面積が1.8m2/gより大きく、本発明の被覆層によってグレイン成長抑制効果が大幅に向上していることが明白である。
【0076】
比較例5と比較例6〜8をみると、市販品チタン酸バリウムを使用した場合では本発明の方法で被覆しても、被覆処理なしと比べて、大幅なグレイン成長抑制効果が見られなかった。
【0077】
比較例6の焼結前のTEM写真(図8)から、市販品チタン酸バリウムを使用して本発明の方法で被覆しても、均一に被覆層が形成されないことが分かる。
【0078】
実施例1〜67の結果より、本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子では、比較例1〜5の被覆処理なしのチタン酸バリウム微粒子と比較して、各雰囲気下での焼成においてグレイン成長抑制の効果が見られた。
【0079】
実施例4、5、8、11〜16の比較により、焼成雰囲気による影響では窒素雰囲気、5vol.%水素雰囲気(残りは窒素)、大気雰囲気の順に抑制効果が高い結果であった。また、金属化合物が水酸化物、炭酸塩、酸化物でも抑制効果は同等であった。
【0080】
比較例6〜8では市販品500nmのチタン酸バリウム微粒子を用いて同様の被覆処理を行ったが、粒子表面に均一に被覆することが出来ず、希土類化合物の微粒子が生成した。そのため、本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子と比較して、グレイン成長抑制の効果が低かった。
【0081】
比較例9、10では、従来のMLCC製造プロセスと同様に、希土類酸化物粉末を湿式混合により均一にチタン酸バリウム微粒子に分散させたが、本発明の被覆チタン酸バリウム微粒子と比較して、粒子表面に均一に被覆することができず、グレイン成長抑制の効果が低かった。
【0082】
<評価手法>
(1) X線回折(XRD)
ブルカーAXS社製X線回折装置(D8 ADVANCE/V)にて測定し、定性分析、又はリートベルト解析による定量分析(正方晶BaTiO3、立方晶BaTiO3、BaCO3等)、格子定数(正方晶チタン酸バリウムのc/a比)、結晶子径を求めた。
(2) バリウムとチタンのBa/Ti比
ブルカーAXS社製蛍光X線分析装置(S8 Tiger)にて測定した。日本電子材料工業会標準規格EMAS-4202のガラスビード法によりBa/Ti比を算出した。
(3) 比表面積(SSA)
マウンテック社製全自動BET比表面積測定装置(Macsorb HM Model-1210)にて測定した。
(4) 平均粒子径の測定、粒子形状及び均一性評価
日立ハイテク製透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、200個以上の粒子を計測し、その平均値を求めた。粒子形状はTEM像の観察より評価し、均一性は平均粒子径の測定値の相対標準偏差より評価した。
(5) 粒度分布
粒子5〜10mgを0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液30mlに添加し、超音波ホモジナイザにより分散させた(600Wにて30秒間)。その分散液を堀場製作所製動的光散乱法粒度分布測定装置(LB-550)にて測定し、体積基準のメジアン径とその変動係数を求めた。
(6) 蛍光X線分析(XRF)
ブルカーAXS社製蛍光X線分析装置(S8 Tiger)にて元素分析を行った。化合物中の水素、炭素、酸素については金属含有量から理論計算して算出した。また、Ba被覆に関しては被覆処理なしのチタン酸バリウム微粒子との差から算出した。被覆チタン酸バリウムについては、金属化合物種にて算出し、焼成後では金属酸化物にて算出した。
(7) 熱重量分析
リガク製示差熱天秤TG-DTA(TG-8210)を用いて室温から1200℃の温度範囲を測定した。金属化合物が非晶質状態の場合では、被覆処理なしのチタン酸バリウム微粒子の熱重量減少量との差と焼成前後の蛍光X線分析値から、金属化合物種を確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9