特許第6368249号(P6368249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6368249-組織化された界面活性剤懸濁系 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368249
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】組織化された界面活性剤懸濁系
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20180723BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20180723BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20180723BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180723BHJP
   C07C 69/30 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61K8/33
   A61K8/41
   A61K8/46
   A61K8/73
   A61K8/60
   A61Q1/00
   A61Q19/00
   C07C69/30
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-556706(P2014-556706)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-509488(P2015-509488A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】US2013025282
(87)【国際公開番号】WO2013119908
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】1202333.9
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591066100
【氏名又は名称】ステパン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】アウキンス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パセ,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ルベルト,レティシア
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−527313(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/049247(WO,A1)
【文献】 特表2001−504134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性の組織化された界面活性剤系であって、該系は:
水、及び、組織化された界面活性剤系の5重量%〜40重量%の量で存在する界面活性剤の混合物、
とを含み、ここにおいて、界面活性剤の混合物は、:
直鎖状の飽和アルキル鎖を有するグリセリルエステル、直鎖状の飽和アルキル鎖を有する脂肪族アルコールエトキシレート、およびそれらの混合物から選択される、10未満のHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤と;
アルキル化アミンオキシド、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルファ−スルホメチルエステル、サルコシネート、タウリド、プロピオネート、ベタイン、スルホベタイン、グリシネート、コール酸ナトリウム、アルキルポリグルコシド、脂肪酸石鹸、エトキシ化ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびそれらの混合物から選択される、10またはそれより大きいHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤と
を含み、界面活性剤の混合物は、全体で約11〜約13の範囲のHLB値を有し;
前記組織化された界面活性剤系は、2500オングストローム未満の液滴サイズを有し、二重層間の間隔が60オングストローム未満の多層の小胞で構成され;
前記組織化された界面活性剤系は、電解質、高分子増粘剤、および炭水化物の構造化剤を含まず;
前記組織化された界面活性剤系は、懸濁される物質が存在しない状態で実質的に透明であり、懸濁特性を有する、上記系。
【請求項2】
前記グリセリルエステルが、カプリル酸/カプリン酸グリセリルエステルである、請求項1に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
【請求項3】
前記組織化された界面活性剤系が、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するヒドロキシル含有化合物をさらに含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
【請求項4】
前記ヒドロキシル含有化合物が、グリセロール、ポリグリセロールまたはそれらの混合物を含む、請求項3に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
【請求項5】
前記組織化された界面活性剤系が、系中に安定して懸濁された固体、液体または気体の粒子をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
【請求項6】
前記系中に存在する少なくとも1種の10未満のHLB値を有する界面活性剤の、少なくとも1種の10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤に対する比率が、約4:1〜約1:4である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組織化された界面活性剤系を含む組成物。
【請求項8】
前記組成物が、パーソナルケア組成物、医薬配合物、洗濯用組成物、織物用柔軟剤組成物、農業用組成物、または硬質表面洗浄剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
パーソナルケア組成物であって、該組成物は:
組織化された界面活性剤系であって、該系は、水、及び、組織化された界面活性剤系の5重量%〜40重量%の量の界面活性剤の混合物、とを含み、ここにおいて、界面活性剤の混合物は、少なくとも1種の10未満のHLB値を有する界面活性剤と、少なくとも1種の10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤との混合物を含み、前記10未満のHLB値を有する界面活性剤が、直鎖状の飽和アルキル鎖を有するグリセロールエステルを含み、そして、前記10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤が、アルキル化アミンオキシド、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルポリグルコシド、脂肪酸石鹸、エトキシ化ソルビタンエステル、スクロースエステル、またはそれらの混合物を含み;ここで界面活性剤の混合物は、全体で11〜13の範囲のHLB値を有し、そして、2500オングストローム未満の液滴サイズと、60オングストローム未満の間隔を有する二重層とを有する多層の小胞を形成する;並びに
組織化された界面活性剤系中に懸濁された固体、液体または気体の粒子のうち少なくとも1種
を含む、上記パーソナルケア組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するヒドロキシル含有化合物の少なくとも1種をさらに含む、請求項9に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシル含有化合物が、グリセロール、ポリグリセロールまたはそれらの混合物を含む、請求項10に記載のパーソナルケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本発明の技術は、組織化された界面活性剤懸濁系、および組織化された界面活性剤懸濁系を含有する組成物、特にパーソナルケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[02]例えばシャンプーやボディウォッシュなどのパーソナルケア組成物に水不溶性または難溶性の固体および/または液体の懸濁物を調合することは、長期にわたり問題を起こしている。調合する者は、このような様々な成分を懸濁できるようにする必要がある。例えば、油類、例えばジンクピリチオンなどのふけ防止剤、カチオン性ポリマーを包含するヘアーコンディショナー、および例えば雲母などの乳白剤が広く使用されている。従って、それらを水性シャンプーおよびボディウォッシュに分散/懸濁する必要がある。
【0003】
[03]本発明者らは、濃密で安定な泡と優れた皮膚感覚を付与する高発泡性界面活性剤系を使用して、堆積を起こさずに固体粒子および油を懸濁できる、新規の組織化された界面活性剤系を発見した。
【0004】
[04]用語「組織化された系」は、本明細書で使用される場合、水、界面活性剤、および場合により他の溶存物質を含み、これらが一緒になると連続水性媒体中で中間相、または中間相の分散液を形成する流し込み可能な組成物を意味し、このような組成物は、非コロイド状の水不溶性粒子を固定する能力を有し、系が安定しているために、安定な流し込み可能な懸濁物が形成される。界面活性剤と水とが相互作用すると、液体でも結晶でもない相を形成する;これらは、通常、「液晶相(liquid crystal phase)」と呼ばれており、あるいは「液晶性相(mesomorphic phase)」または「中間相(mesophase)」とも呼ばれている。
【0005】
[05]用語「流し込み可能な」は、本明細書では、室温で約2000cps(ブルックフィールドRVT粘度計、スピンドル5、速度100)の粘度を有するずり減粘流体(shear thinning fluid)を指すものとして使用される。
【0006】
[06]水中に水不溶性材料を分散させるという課題を解決する試みは、一般的に、ゴムまたは他の高分子増粘剤を使用して液状媒体の粘度を高めるか、またはその他の方法でコロイド分散を形成するかのいずれかを含む。つい最近になって、層状に組織化された界面活性剤の使用が提唱され始めている。
【0007】
[07]ゴムおよび高分子増粘剤は、液状媒体の粘度を増加させるものであり、堆積を遅くするがそれを防ぐものではなく、同時に組成物を流し込みし難くする。このような増粘剤は、安定な懸濁液を提供しない。
【0008】
[08]コロイド分散体は、ブラウン運動のために堆積しないようになっている。このような系は、通常、比較的粗い粒子を分散させることはできない。
【0009】
[09]層状に組織化された懸濁系の性質は、粒子のサイズよりも、粒子を固定する懸濁媒のレオロジー特性に依存する。これは、懸濁された粒子の堆積またはクリーム化を妨げることができるが、一方、通常の液体のように、流し込みや撹拌などの外部からかけられた応力下で、懸濁媒が流動できる程度に十分に低い有意な降伏点を懸濁媒が示すことを必要とする。外的な応力によって引き起こされる振動が止まると、この構造は、堆積を防ぐのに十分な速さで再構成される。
【0010】
[10]層状に組織化された系はいずれも、L[アルファ]相を含み、この相は、分子の疎水性部分が二重層の内部に、親水性部分が二重層の外部になるように(逆もまた同様)界面活性剤の二重層を配置している。二重層は、それぞれ隣り合って、例えば平行または同軸の立体配置で、ときおり水層で分離されて存在する。L[アルファ]相(またG相としても知られている)は、通常、偏光顕微鏡で、および/またはX線回折によってそれらの特徴的な構造により確認でき、それによれば、層が対称になっているという証拠をたびたび検出することができる。このような証拠は、単純な整数比1:2:3の面間隔d(2[π]/Q、式中Qは、運動量輸送ベクトルである)を有する第一、第二、ときには第三のピークを含みうる。その他のタイプの対称性の場合、整数比にはならない。この一連の第一のピークの面間隔dは、二重層系の繰り返し間隔に相当する。
【0011】
[11]多くの界面活性剤は、所定の特定の比率で水と混合されると、周囲温度かまたはそれよりいくらか高い温度のいずれかでL[アルファ]相を形成する。しかしながら、これらの従来のL[アルファ]相は、組織化された懸濁系として機能しない。固体が有用な量だと、流し込み不可能になり、少ない量だと、堆積しやすくなる。
【0012】
[12]実際に使用される組織化された系の主なタイプは、分散されたスフェルライト相(spherulitic phase)をベースとするものである。球状相は、当業界では一般的にスフェルライトと呼ばれる明確な球状体(spheroidal bodies)を含み、その中に界面活性剤の二重層が同軸シェルとして配置される。スフェルライトは通常、1000〜15000オングストロームの範囲の直径を有し、典型的なエマルジョンの形態で水相中に分散されている。スフェルライトの系は、EP0151884でより詳細に説明されている。
【0013】
[13]多くの層状に組織化された界面活性剤は、固体を懸濁できる組織化された系を形成するために、構造化剤(structurant)、加えて界面活性剤および水の存在を必要とする。用語「構造化剤」は、本明細書では、水に溶解させると、界面活性剤と相互作用して、組織化された系を形成する、または強化する(例えば、その降伏点を高くする)ことができる界面活性剤以外のあらゆるものを説明するために使用される。構造化剤は、典型的には界面活性剤の脱可溶化剤(desolubiliser)であり、例えば電解質である。しかしながら、例えばイソプロピルアミンアルキルベンゼンスルホネートなどの所定の比較的疎水性の界面活性剤は、電解質の非存在下でも水中でスフェルライトを形成できる。このような界面活性剤は、EP0414549で説明されているように、構造化剤がまったく存在しなくても固体を懸濁できる。
【0014】
[14]パーソナルケア製品を調合する者の視点からの層状の懸濁系に関連する主な問題は、このような系は、洗浄剤として働く界面活性剤系によって最も容易に形成されるという点である。より高い発泡性を有する界面活性剤(これは、例えばシャンプーなどのパーソナルケア製品において最も有効である)は、水中でより高い可溶性を有し、可溶化剤に分類される。
【0015】
[15]高発泡性界面活性剤系を用いて安定な層状の懸濁系を形成しようとすれば、高濃度の界面活性剤と、高レベルの構造化剤(例えば電解質または糖など)の使用が必要であった。
【0016】
[16]一般的に、高レベルの界面活性剤の使用、例えば約15〜20重量%より高いレベルの界面活性剤の使用は、コストと皮膚または毛髪に悪影響をもたらす可能性の両面で望ましくない。高いレベルの電解質も同様に、それらの潜在的な皮膚および毛髪への作用のために望ましくない。
【0017】
[17]高レベルの電解質により誘導されたスフェルライト状の界面活性剤系は不透明であるが、この不透明さが、達成可能な視覚的な効果を制限し、いくつかの用途では透明な系に比べて魅力的ではないと感じさせる可能性がある。これはなぜなら、光はスフェルライトの濃密なマトリックスを透過できないためである。それに対して、多くの液体および気体は、それらの原子間の大きいスペース間を光がより容易に透過できるために、それらは透明である。多くの結晶は固体かつ透明であり、これはなぜなら、結晶の原子は、規則的な列、それら列間の規則的な間隔で積み重ねられた正確な格子構造で配置されているためであり、したがって光束が結晶格子を通過できる多くの経路がある。また固体の原子がランダムに配置されていても、その固体は透明になる可能性もあり、その良い例は、ガラスおよびシュガーキャンディーである。
【0018】
[18]所定のスフェルライト状の界面活性剤系において、透過性は、高レベルの可溶性炭水化物(例えばスクロース)を添加することによって得ることができる;ただし糖は、一般的に、有効であるためには、不必要に高濃度で、例えば20%より高い濃度で存在することが必要である。このような系は、US2004235702でより詳細に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】EP0151884
【特許文献2】EP0414549
【特許文献3】US2004235702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
[19]したがって、特にパーソナルケア分野において、高発泡性界面活性剤のブレンドを含有し、透明で可動性があり;ただし構造化剤として電解質または糖の存在を必要としない懸濁系が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[20]驚くべきことに、電解質または炭水化物の実質的な非存在下で、特定の量の界面活性剤の特定の選択を混合することによって、透明な組織化された界面活性剤懸濁系を形成できることが見出された。透明な組織化された界面活性剤系は、特にパーソナルケア組成物において、様々な見た目に美しい視覚的な効果を達成するのに有用である。界面活性剤系は、可動性を有し、優れた懸濁力を有し、さらに相が安定している。
【0022】
[21]第一の形態において、本発明の技術は、二重層間の間隔が60オングストローム未満の多層の小胞で構成される、透明な組織化された界面活性剤系を提供する。
【0023】
[22]別の形態において、本発明の技術は、水性の組織化された界面活性剤系であって、該系は、水と界面活性剤の混合物とを含み、ここで界面活性剤の混合物は、10未満、あるいは8未満のHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤と、10またはそれより大きいHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤とを含み;ここで界面活性剤の混合物は、全体で約11〜約13の範囲のHLB値を有し;ここで組織化された界面活性剤系は、電解質および高分子増粘剤を含まず;ここで組織化された界面活性剤系は、懸濁される物質が存在しない状態で実質的に透明であり、懸濁特性を有する、上記界面活性剤系を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、組織化された界面活性剤系の微小胞を例示する電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[24]本発明の技術は、層状の界面活性剤の中間相をベースとする組織化された懸濁系に関する。この系は、透明で高発泡性であり、電解質量を極めて低くすることができ、糖を用いずに製造できることから、パーソナルケア用途にとって理想的である。組織化された界面活性剤系は、電解質または炭水化物を添加しないで透明な組織化された液体組成物を形成する、水と界面活性剤の混合物とを含む。本明細書で使用される場合、用語「透明」は、向こうにある、または後ろにある物体がはっきりと見えるように、ある物質を通過して光線を透過させる特性を有することを意味する。組成物の透過性は、色素が組成物の実質的な透過性を損なわない限り、例えば色素の添加により組成物を着色することを妨げない。さらに、組成物の透過性は、組成物が多種多様の作用を達成するための様々な粒子を含有することを妨げない。例えば、組成物中に雲母粒子を懸濁して、必要に応じて見た目のよい作用を提供できるが、これは、組成物の透過性を低下させると予想される。このような場合、透過性の定義は、懸濁される物質が添加されていない組織化された液体組成物に適用される。また透過性は、当業界公知の方法でも測定できる。例えば、分光光度計を使用して、380〜800nmの可視光の吸収を測定できる。本発明の組織化された界面活性剤系のいくつかの実施態様において、透過率は、50%より大きく、より典型的には60%より大きい。
【0026】
[25]組織化された懸濁系の分析(小角X線、走査電子顕微鏡、およびレオロジーを使用)から、構造単位の大半が、約5〜7つの同軸シェル、あるいは4〜7つの同軸シェルを有し、二重層間の間隔が約45オングストロームの多層の微小胞(すなわち極めて小さいスフェルライト)を含むことが示唆されている。図1は、組織化された界面活性剤系の微小胞を示す電子顕微鏡写真である。微小胞は、図1で示された大きい塊の表面上で観察される1ミクロン未満の物体である。電子顕微鏡写真から、微小胞は、約300〜約1000オングストロームの直径を有すると推測される。微小胞またはスフェルライトは、規則的な列、規則的な間隔で積み重ねられた正確な格子構造で配置されていると考えられ、これは、本組成物が高度な透過性および光学的透明度を有する理由のうち考えられるものの一つである。加えて、使用される界面活性剤の大部分が末端ヒドロキシル基を含有するために、スフェルライトは、水に近い屈折率を有する。これは、末端ヒドロキシル基は、光を散乱させるというよりも光を透過させることを意味しており、したがって、少量のグリセロール(例えば)を添加することにより連続媒体の屈折率を整合させて、申し分のない透過性を容易に達成できる。この特定の構造は、当業界においてこれまで懸濁系として認識されていなかった。界面活性剤の特定のブレンドがこの構造を形成するのかどうかを決定することにおいて、界面活性剤のHLB、頭部基、および形状はいずれも重要な要素である。例えば、低いHLBの界面活性剤は、実質的に直鎖状でなければならず、嵩高な親水性の頭部基を保持していてはならないことが発見された。また、低いHLBの界面活性剤は、飽和アルキル鎖を有し、さらに少なくとも1つの末端ヒドロキシル基を保持することが重要な場合もある。
【0027】
[26]実施可能な範囲で、このような系を調合するのに大量の電解質を用いる必要がないことが見出された。電解質がなくても、スフェルライトは水中に分散されて、スフェルライト表面上の電荷により正確な結晶格子に構成されると考えられる(非イオン界面活性剤の場合、電荷は、分極した頭部基により誘導されると予想される)。電解質が存在する場合、電解質が表面電化を遮蔽し、スフェルライトが接近して互いに「ぶつかる」ような状態になる可能性がある。
【0028】
[27]組織化された界面活性剤系の調製に使用するための界面活性剤は、低い、例えば10未満の親水性−親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の界面活性剤と、高いHLB値、例えば10またはそれより大きいHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤との混合物を含む。典型的には、高いHLB値は、40を超えないと予想される。低いHLB値を有する界面活性剤は、親油性であり、低い水溶性を有する。高いHLB値を有する界面活性剤は、親水性であり、高い水溶性を有する。界面活性剤の組み合わせは、全体で、約11〜約13、好ましくは約12のHLB値を有すると予想される。
【0029】
[28]界面活性剤は、組織化された界面活性剤系の少なくとも5重量%の濃度で存在すると予想される。有用な界面活性剤濃度は、組織化された界面活性剤系の約5重量%〜約40重量%、あるいは約5重量%〜約30重量%の範囲であり、これらの範囲の間のあらゆるパーセンテージまたは範囲を包含する。界面活性剤の好ましい総濃度は、約7%〜約20%、あるいは約10%〜約15%の範囲である。
【0030】
[29]低いHLBの界面活性剤は、10未満、あるいは9未満、あるいは8未満、あるいは7未満、あるいは6未満、あるいは5未満のHLB値を有する。低いHLB値を有する界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル(glyceryl fatty acid ester)であることが特に有用である。このようなグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンを媒体でエステル化して6〜約18個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸にすることによって製造される。その結果得られた生成物は、脂肪酸のモノ−、ジ−、および/またはトリグリセリドの混合物を含み、その相対的比率は、使用される過程と採用される反応物の比率に応じて決まる。好ましいグリセリン脂肪酸エステルは、カプリル酸およびカプリン酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの混合物である。市販のカプリル酸/カプリン酸グリセリルは、一例として、イリノイ州ノースフィールドのステパン社(Stepan Company)からステパン−マイルド(Stepan-Mild)(登録商標)GCCという商品名で得ることができる。ステパン−マイルド(登録商標)GCCのHLB値は、約5〜約6の範囲内である。他の有用な低いHLBの界面活性剤としては、約1〜4、あるいは2〜3モルのエチレンオキシドを有する脂肪族アルコールエトキシレート、例えばセチルアルコールなどの脂肪族アルコール、および例えばラウリン酸、ステアリン酸、またはパルミチン酸などの脂肪酸が挙げられる。また低いHLBの界面活性剤の混合物も利用できる。例えば、グリセロールエステルと組み合わせて、約1重量%のレベルの脂肪族アルコールは、発泡を増進/強化する作用をもたらす。
【0031】
[30]高いHLBの界面活性剤は、10またはそれより大きいHLB値を有し、このような界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤であってもよい。好適なアニオン性界面活性剤としては、石鹸、スルホン化アルキルベンゼン、スルホン化メチルエステル、スルホン化アルファオレフィン、パラフィンスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルホスフェート、アルキルアルコキシホスフェート、アルキルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、タウリド(tauride)、アシルラクチレート、アルキルイセチオネート、アシルサルコシネート、スルホスクシネート、グルタメート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
[31]好適なカチオン性界面活性剤としては、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、エステル四級化物(esterquat)、アミド四級化物(amidoquat)、およびステアロアミドプロピルジメチルアミン四級化物(stearamidopropyl dimethyl amine quat)が挙げられる。好適な非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド、エトキシ化脂肪族アルコール、エトキシ化ソルビタンエステル、エトキシル化脂肪酸アルカノールアミド、エトキシ化脂肪族アミン、およびスクロースエステルが挙げられる。
【0033】
[32]好適な両性界面活性剤としては、ベタイン、スルホベタイン、プロピオネート、グリシネート、およびアンホアセテートが挙げられる。また高いHLBの界面活性剤は、好ましくは約10〜18個の炭素の範囲の炭素鎖長を有する、アミンオキシドまたはアルキル化アミンオキシドであってもよい。高いHLBの界面活性剤の混合物を採用してもよい。好ましい高いHLBの界面活性剤は、電解質をまったく含有しないか、または最小レベルしか含有しないものである。特に好適な高いHLBの界面活性剤は、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、およびサルコシネートである。
【0034】
[33]低いHLBの界面活性剤と高いHLBの界面活性剤とは、その結果得られる混合物のHLBが約11〜約13の範囲、好ましくは約12になるような相対的比率で一緒に混合される。一般的に、界面活性剤系中の低いHLBの界面活性剤と高いHLBの界面活性剤との比率は、選択される具体的な界面活性剤に応じて、約4:1〜約1:4の範囲であってもよい。
【0035】
[34]組織化された界面活性剤系はさらに、系の光学的透明度を改善するために、屈折率を調節する成分を包含していてもよい。理論にとらわれずにいえば、適切な比率の低いHLBの界面活性剤と高いHLBの界面活性剤とが一緒に混合されれば、界面活性剤の混合物は、分散媒、例えば水中で正確な格子構造で配置されたスフェルライトで構成される液晶分散液を形成すると考えられる。組織化された界面活性剤系に成分を添加して、連続分散媒の屈折率がスフェルライトの屈折率と近くなるように連続分散媒の屈折率を調節することにより、組織化された界面活性剤系の光学的透明度が改善される。
【0036】
[35]屈折率を調節するための好適な材料としては、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グレセレス−7、グリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビトールなどが挙げられる。グリセロールは好ましい材料であり、グリセロールとポリグリセロール(例えばトリグリセロール)との混合物も好ましい。ポリグリセロールは、屈折率を変更することと同様に、小さいスフェルライトの形成を促進することにより透明度も改善すると考えられる。グリセロールとポリグリセロールとの混合物は、組成物を清澄化することにおいてグリセロールまたはポリグリセロールのいずれか単独よりもほぼ2倍有効であるため、これらの混合物は相乗作用を示す。添加された材料の量は、どの程度の調整が必要かによって決まると予想される。添加されたヒドロキシル含有材料の量は、一般的には、組織化された界面活性剤系の約1重量%〜約15重量%、あるいは約1重量%〜約10重量%の範囲であると予想される。より一般的には、上記量は、組織化された界面活性剤系の約2重量%〜約6重量%と予想される。50%のグリセロールと50%のポリグリセロール(例えばトリグリセロール)とのブレンドが特に有効であることが見出されている。
【0037】
[36]所定比率のポリオキシエチレン基を取り入れることによって透明度が強化される可能性があることがさらに発見された。ポリオキシエチレン基は、ポリオキシエチレン基が、単純なポリオキシエチレン鎖として、すなわちポリエチレングリコールとして存在する場合に機能することが見出されており、またさらに、ポリオキシエチレン基が、界面活性剤の親水性成分、例えばエトキシ化ソルビタンエステルを含む場合も機能することも見出されている。例えば、いくつかの実施態様において、0.5%のPEG(例えばPEG400)および1%のPOE(20)モノラウリン酸ソルビタンの量が有効であると見出されている。
【0038】
[37]本発明の技術の組織化された界面活性剤系は、優れた降伏値を有する。「降伏値」は、組織化された界面活性剤系が、微粒子状の(気体、固体、液体)物質を保持する能力があることを意味する。降伏値があるために、組織化された界面活性剤系は、液体組成物全体に固体、液体または気体粒子を懸濁化できる。
【0039】
[38]本組成物は、懸濁された固体、液体または気体の粒子を含有していてもよい。例えば本組成物は、懸濁された油滴を含有していてもよい。油は、好ましくは鉱油(例えば低分子量の石油)、または脂肪グリセリド、または例えば酢酸ラウリルなどの他のエステル、例えばリモネンなどのテルペン油、またはシリコーンオイルである。油の混合物を使用してもよい。特に好ましくは植物油であり、例えばココナツ油、月見草油、落花生油、メドウフォームの油、杏仁油、桃仁油、アボカド油、ホホバ油、およびオリーブ油などである。油溶性の化粧用または局所用医薬成分を油中に溶解させてもよく、このような油溶性の化粧用または局所用医薬成分としては、例えば、消毒剤、収斂剤、例えばジンクオマジン(ジンクピリチオン)およびセレニウムジスルフィドなどのふけ防止剤、プロテイン、例えばラノリン、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸プロピレングリコールなどのエモリエント剤、色素、香料、およびワックスなどが挙げられる。水不溶性の微粒状固体を懸濁させてもよく、このような微粒状固体としては、例えばタルク、粘土、ポリマービーズ、おがくず、シリカ、種子類、粉砕した堅果の殻、およびリン酸二カルシウムなどの皮膚摩擦剤、例えば雲母またはグリセロールまたはジステアリン酸エチレングリコールなどのパール光沢付与剤(pearlizer)、光輝剤(glitter additives)、ならびに例えば二酸化チタンおよび酸化亜鉛などの日焼け止めなどが挙げられる。また吸収された活性成分を含有する多孔質粒子(いわゆるマイクロスポンジ)またはゼラチンまたは他のマイクロカプセルが懸濁されていてもよい。懸濁される可能性がある他の活性成分としては、防虫剤および局所用医薬配合物が挙げられ、例えば座瘡を処置するための調製物、足白癬もしくは輪癬のための殺真菌剤、または消毒剤もしくは抗ヒスタミン剤が挙げられる。例えば酸化鉄などの顔料を添加してもよい。懸濁される材料の粒度は広範囲に様々であってもよく、例えば約5ミクロンから数ミリメートルのサイズである。
【0040】
[39]単に見た目の良さという理由でパーソナルケア組成物に懸濁された粒子を添加して、見た目をよくする作用を達成してもよい。あるいは、例えば洗濯用および織物用柔軟剤組成物、殺虫剤や防虫剤を含有する農業用組成物、医薬懸濁液、ならびに剥離剤、例えば炭酸カルシウムを含有する硬質表面洗浄剤などの水不溶性または難溶性の成分が利用されている他の用途にも、組織化された界面活性剤系を使用できる。
【0041】
[40]組織化された界面活性剤系は、室温で成分を混合し、次いで約55℃、あるいは約45℃の温度で一晩貯蔵することによって調製できる。次いで成分を再度混合し、室温に冷却する。組成物を混合する際、液/液エマルジョンの形成が起こらないように混合の順番を決めることが重要である。これは、高いHLBの界面活性剤の撹拌溶液に油溶性界面活性剤が添加される場合に形成されやすいと予想される。液/液エマルジョンは準安定的な液滴の懸濁液であるが、それに対して、本明細書において説明される組織化された界面活性剤系は、典型的には安定な液晶の分散液である。液/液エマルジョンが形成されないようにするためには、全ての界面活性剤を一緒にブレンドして、それらを水に添加する前に高活性な濃縮物を得ることが好ましい。高活性な濃縮物は、流し込み可能であり、室温での低剪断混合で容易に分散して組織化された界面活性剤を形成することが見出されている。その結果得られた組織化された界面活性剤系は透明で流動性があり、電解質、炭水化物または高分子増粘剤を添加しなくても優れた懸濁能力を達成する。このような界面活性剤系は、単独で、例えばボディウォッシュ、ハンドウォッシュ、シャンプーまたは同種のもののような液体クレンジング組成物として使用できる。あるいは、例えば水ベースのスクラブ、布地用洗剤/柔軟剤などの多種多様の用途に好適な組織化された界面活性剤系を製造するのにその他の任意の成分が添加されてもよい。
【0042】
[41]任意の成分としては、クレンジング能を補助する脂肪酸石鹸、ビルダー、および追加の界面活性剤が挙げられる。コンディショニング性能をさらに改善するために、エモリエント剤(例えば、これらに限定されないが、植物油、鉱油、シリコーンオイル、ワセリン、ポリグリセロールメチルエステル、およびエステル)、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、および薬草抽出物が添加されてもよい。完成品の外観と臭いをさらに向上させるために、芳香剤や色素が添加されてもよい。例えばベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルクロロイソチアゾリノン//メチルイソチアゾリノン、フェノキシエタノール、イミダゾリジニル尿素、およびDMDMヒダントインなどの好適な保存剤を利用してもよい。
【0043】
[42]必要に応じて、特定の組成物にとって望ましい粘度を達成するために、追加の増粘剤を添加してもよい。このような増粘剤としては、例えば、エステル四級化物、アミド四級化物、ステアロアミドプロピルジメチルアミン四級化物、ならびに例えばセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、およびヒドロキシルプロピルグアールガムなどの高分子増粘剤などが挙げられる。
【0044】
[43]パーソナルケア用に調合される場合、組織化された界面活性剤系を含有する組成物は、典型的には約4.0〜約8.5、あるいは約5.0〜約7.0のpHを有する。推奨使用レベルでpHを制御する技術としては、緩衝液、アルカリおよび酸の使用が挙げられ、当業者公知である。任意のpH調節剤としては、これらに限定されないが、クエン酸、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【実施例】
【0045】
[44]以下の実施例で、本発明の技術の好ましい実施態様のうちいくつかを説明するが、技術がそれらに限定されることはない。他の実施態様は、上記の説明で説明されたものに限定されず、追加または代替の成分、代替の濃度、ならびに追加または代替の特性および用途なども包含する。以下の実施例において、全ての比率は、そうではないと述べられていない限り、組成物の総重量に基づく活性成分の重量パーセンテージに基づく。
【0046】
【表1】
【0047】
アルファ−ステップ(ALPHA-STEP)(登録商標)PC−48、ステオール(STEOL)(登録商標)CS−270−E、アンモニクス(AMMONYX)(登録商標)LO、アンモニクス(登録商標)LMDO、ニノール(NINOL)(登録商標)COMF−N、ニノール(登録商標)40C0−E、ステパノール(STEPANOL)(登録商標)ALS25、およびステパン−マイルド(登録商標)GCCは、イリノイ州ノースフィールドのステパン社(Stepan Co.)から市販されている。プランタケア(PLANTACARE)(登録商標)818UPは、BASF/コグニス(Cognis)から市販されている。
【0048】
実施例1
[45]アミンオキシドとカプリル酸/カプリン酸グリセリルとが1:3〜2:1の範囲の比率で、アンモニクス(登録商標)LOアミンオキシドと、ステパン−マイルド(登録商標)GCCカプリル酸/カプリン酸グリセリルとを混合することにより、一連の調合物を調製した。各調合物の全界面活性剤は15重量%であった。表Bは、各調合物の各界面活性剤の比率と見た目の結果を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
[46]アミンオキシドとカプリル酸/カプリン酸グリセリルとが1:1.5〜1.25:1にわたる範囲の比率で組織化された液体を得たところ、アミンオキシドの量が増加するに従って透明度が増加した。アミンオキシド:カプリル酸/カプリン酸グリセリルが1.25:1(w/w)のときに最高の程度の透明度が達成された。
【0051】
実施例2
[47]グリセロールの添加がブレンドの光学的透明度を改善できるかどうかを決定するために、アミンオキシド:カプリル酸/カプリン酸グリセリルが1.25:1(w/w)のブレンドにグリセロールを添加した。表Cは、グリセロールを添加して調製された調合物を示す。
【0052】
【表3】
【0053】
[48]室温で全ての成分を手動で混合し、55℃で一晩貯蔵し、再度撹拌し、次いで室温に冷却することによって調合物を調製した。全ての調合物は、空気を懸濁した組織化された液体であった。サンプル間の透明度に顕著な差があった。5%グリセロールを有するサンプルが最も透明であり、極めて高度な透明度を有し、それに続いて10%グリセロールを有するサンプル、次いで1%グリセロールを有するサンプルが透明であった。これらの結果は、連続相の屈折率を調節することにより、液晶分散液の透明度を改善できることを示す。
【0054】
実施例3:カプリル酸/カプリン酸グリセリルと他の界面活性剤との併用
[49]カプリル酸/カプリン酸グリセリルと様々な親水性界面活性剤とを混合し、水中に分散させることによって調合物を調製した。必要に応じて、屈折率を調節するためにグリセロールを取り入れた。表Dに、これらの様々な調合物を示す。
【0055】
【表4】
【0056】
[50]室温で成分を一緒に手動で混合し、55℃で一晩貯蔵し、再度撹拌し、次いで室温に冷却することによってそれぞれの調合物を調製した。サンプル2は、約3:1(w/w)の比率のGCC:アルファ−ステップ(登録商標)PC48と約15重量%の全界面活性剤とを含み、これは、濁りがわずかしかない強い組織化された界面活性剤懸濁系になった。サンプル3は、約3:1の比率のGCC:ALSと約15重量%の全界面活性剤とを含み、これも、濁りがわずかな強い組織化された界面活性剤懸濁系になった。サンプル4は、約4:1の比率のGCC:SLESと約12.5重量%の全界面活性剤とを含み、これは効果的に透明になった。
【0057】
実施例4:濃縮ブレンド
[51]実施例2に記載のサンプル1(b)のアミンオキシド/GCC調合物をベースとして以下の濃縮ブレンドを調製した。
【0058】
【表5】
【0059】
[52]その結果得られたブレンドは、濁った「薄い層状の」相であり、50%w/wの固体、38%の全界面活性剤で極めて高い可動性を示した。このブレンド40gを水60gに室温で穏やかに撹拌したところ、透明な組織化された系が容易に形成された。
【0060】
実施例5
[53]組成物中にビーズを懸濁するために組織化された界面活性剤懸濁系を利用して調合物を調製した。表Eに配合を示す。これらの調合物は、3ヶ月室温で貯蔵した後、さらに40℃および3℃で貯蔵した後でも、相が安定しており堆積を起こさないことが見出された。
【0061】
【表6】
【0062】
[54]まず水中にラウレス硫酸ナトリウム(2EO)を溶解させ;穏やかに撹拌しながら60℃に加熱し;グリセロール、次いでケーソン(Kathon)、次いでビーズ、最後にGCCを添加することによって配合1を調製した。穏やかな撹拌をずっと維持し;サンプルが増粘したらすぐにかき混ぜるのを止めた。アミンオキシドを水およびケーソンと混合し、60℃に加熱することによって配合2を調製した。残りの成分を室温で一緒に混合し、その後この混合物に熱いアミンオキシド溶液を添加して、サンプルが増粘するまで穏やかにかき混ぜて撹拌した。ボトルに詰める前、配合1と配合2の両方をサーモスタットで60℃に16時間維持した。
【0063】
[55]配合1(ビーズなし)は、ブルックフィールドRVT粘度計で、21サイクル/秒で測定した場合、22℃で約2000cpsの粘度を有することが見出された。次いで、(同じ温度で)粘度を、メトラー(Mettler)RM260レオメーターで0.1〜100サイクル/秒の範囲にわたり測定した。サンプルは、ずり減粘性を有することが見出され、剪断を中断すると開始時の粘度に迅速に回復することが示された。
【0064】
実施例6
[56]組織化された界面活性剤懸濁系を用いて、そこに雲母と光輝剤を懸濁することによりハンドウォッシュ調合物を調製した。表Fに組成を示す。この調合物は、3ヶ月室温で貯蔵した後、さらに40℃および3℃で貯蔵した後でも、相が安定しており堆積を起こさないことが見出された。この調合物は、使用時によく泡立ち、手にソフト感としっとり感を残すことが見出された。
【0065】
【表7】
【0066】
[57]アミンオキシドを水およびケーソンと混合して60℃に加熱することによってサンプルを調製した。残りの成分を室温で一緒に混合し、その後、この混合物に熱いアミンオキシド溶液を穏やかにかき混ぜながら添加し、サンプルが増粘するまで撹拌した。ボトルに詰める前、サンプルをサーモスタットで60℃に16時間維持した。
【0067】
実施例7
[58]懸濁された油滴を含有するボディウォッシュ調合物を調製した。表Gに組成を示す。この調合物は、3ヶ月室温で貯蔵した後、さらに40℃および3℃で貯蔵した後でも、相が安定しており分離を起こさないことが見出された。この調合物は、使用時に驚くほどよく発泡し、皮膚上に油分を送達し、独特な「ツーインワン」のクレンジング/保湿特性を達成した。
【0068】
【表8】
【0069】
[59]GCC、白色鉱油、シアバター、および香料を一緒に混合して、透明な溶液が得られるまで穏やかに温める(30℃)ことによって、配合2を調製した。次いで室温でこの混合物を残りの成分の撹拌溶液に注入した。サンプルが滑らか且つ均一になるまで、サンプルを効率的に(空気を入れないで)撹拌した。
【0070】
[60]カウント時間600秒、室温での小角X線によって、配合2を試験した。X線の結果から、約45オングストロームのハンプを伴う弱い散乱が示された;これは、わずかな同軸シェルしか含有しない微小胞と一致した。
【0071】
[61]フリーズフラクチャー電子顕微鏡法によって配合2を分析した;結果は、直径2500オングストローム未満の液滴サイズと一致した。計算から、5〜7つのシェルを有し、二重層間の間隔が45オングストロームのスフェルライトは、約500オングストロームレベルのサイズを有すると予測されることが示された。この技術を使用して500オングストローム前後の構造単位を完全に解析することは難しい。
【0072】
実施例8
[62]カプリル酸/カプリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸アンモニウムの組織化された界面活性剤系を使用して、2種の水性シュガースクラブ組成物を調製した。典型的にはシュガースクラブやソルトスクラブは圧倒的に油ベースが多いが、水性のスクラブは所定の利点を提供する。表Hにこのようなスクラブを列挙する。このスクラブは、1ヶ月室温で貯蔵した後、さらに45℃およびO℃で貯蔵した後でも、相が安定しており分離を起こさないことが見出された。
【0073】
【表9】
【0074】
[63]全ての成分を水に入れて、次いで滑らかで均一な粘稠度が得られるまで室温で穏やかに撹拌することによりスクラブを調製した。
【0075】
実施例9
[64]1%のジンクオマジンを含有するふけ予防用シャンプーを調合した(表J)。このシャンプーは、3ヶ月室温で貯蔵した後、さらに45℃および0℃で貯蔵した後でも、相が安定しており分離を起こさないことが見出された。
【0076】
【表10】
【0077】
[65]室温で低剪断力のパドル撹拌器を用いて、GCC、カプリル酸/カプリン酸グリセリルにニノール(登録商標)を溶解させ、次いでここにラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、水、ジンクオマジン、ケーソン、および最後に香料を添加し;過剰な量の空気を入れないようにして穏やかな剪断を維持することによって組成物を調製した。
【0078】
実施例10
[66]様々な化合物が、ベースのカプリル酸/カプリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸アンモニウムの組織化された界面活性剤系に優れた清澄化作用を有することが見出された。清澄剤がないと、本組成物はわずかに濁っていた。顕微鏡試験(偏光顕微鏡)から、濁度は、極めてわずかな大きいスフェルライトに起因することが示された。以下に列挙される清澄剤は、屈折率整合、またはスフェルライトのサイズを小さくすること、または(ポリグリセロールの場合は確実に)両方のメカニズムの組み合わせのいずれかによって作用すると考えられる。
【0079】
【表11】
【0080】
[67]室温で界面活性剤と添加剤とを一緒にブレンドして流動性のある層状の「ペースト」を得て、次いで水を添加して、組織化された界面活性剤系が形成されるまで穏やかに撹拌することにより、サンプルを調製した。次いでサンプルをサーモスタットで45℃に16時間維持した。全てのサンプルは極めて高度な透明度を有していたが、表Kの調合物BおよびCは著しく優れており、すなわちこれらは、ほぼ結晶のように透明であった。グリセロールとトリグリセロールとの組み合わせにより、最小の添加剤で最良の性能が得られた。細く切断されたポリグリセリド(−3、−4、および−6、例えばスピガ・ノードS.P.A.(Spiga Nord S.P.A.))のサンプルをALS/GCC/グリセロール系で試験した。それらの間で清澄化作用における有意差は見出されなかった。
【0081】
実施例11
[68]カプリル酸/カプリン酸グリセリル(ステパン−マイルド(登録商標)GCC)は、経口用医薬製剤用に承認された添加剤である。これを高いHLBの製薬用添加剤と組み合わせることによって、不溶性の薬物粒子を調合するのに有用な数種の懸濁系を構築できる。多数の添加剤のための懸濁系を構築するのに必要な高いHLBの添加剤とステパン−マイルド(登録商標)GCCとの比率を実験的に決定し、それを表Lに列挙した。
【0082】
【表12】
【0083】
[69]室温で全ての成分を一緒に低剪断混合し;サーモスタットで45℃に16時間維持し、次いで再度混合した後、室温に冷却することにより、サンプルを調製した。上記の実施例はいずれも、21サイクル/秒で約2000cpsの粘度を有するわずかに濁った液体であった。バルクのサンプルを偏光フィルターに通してみると、それらは複屈折を有していることから、固体、液体または気体の粒子を懸濁させていると予想される。
【0084】
実施例12
[70]ラウラミンオキシドと2.5および3.0モルの直鎖状エトキシ化アルコールとを組み合わせて、農薬活性物質を懸濁するのに優れた可能性を有する系を生産した。選ばれたエトキシ化アルコールは、C11と3EO、およびC9〜11と2.5EOであった。表Mに、懸濁系を構成するラウラミンオキシドとアルコールエトキシレートとの比率を列挙した。
【0085】
【表13】
【0086】
[71]室温で全ての成分を一緒に低剪断混合することによりサンプルを調製した。これらは、21サイクル/秒で約2000cpsの粘度を有するわずかに濁った液体であり、固体、液体または気体の粒子を懸濁させていると予想される。
【0087】
実施例13
[72]農業活性物質と共に使用して農業用組成物を調製するための懸濁系を調製した。表Nに示される界面活性剤を一緒にブレンドして、その後それらを水中に分散させ(室温で)、次いで滑らかで均一なサンプルが得られるまでクロロタロニル活性物質中で穏やかに撹拌することにより、クロロタロニル分散液を調製した。表Nに示される配合を有する組成物は不透明であり、流し込み可能であった。この組成物は室温で3ヶ月間安定であり、堆積および/または相分離の徴候は示されなかった。
【0088】
【表14】
【0089】
[73]以上、関連する当業者が本発明の技術を実施できるように、本発明の技術をこのような十分に明確で且つ簡潔な用語で説明した。前述の内容は本発明の技術の好ましい実施態様を説明しており、特許請求の範囲に記載された本発明の技術の本質または範囲から逸脱することなくそれらに改変をなすことが可能であることが理解されるものとする。
本発明は非限定的に以下の態様を含む。
[態様1]
水性の組織化された界面活性剤系であって、該系は:
水と界面活性剤の混合物と
を含み、界面活性剤の混合物は、:
10未満のHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤と;
10またはそれより大きいHLB値を有する少なくとも1種の界面活性剤と
を含み、界面活性剤の混合物は、全体で約11〜約13の範囲のHLB値を有し;
組織化された界面活性剤系は、電解質および高分子増粘剤を含まず;
組織化された界面活性剤系は、懸濁される物質が存在しない状態で実質的に透明であり、懸濁特性を有する、上記系。
[態様2]
前記10未満のHLB値を有する界面活性剤が、グリセリルエステル、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族アルコール、脂肪酸、およびそれらの混合物から選択される、態様1に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様3]
前記グリセリルエステルが、カプリル酸/カプリン酸グリセリルエステルである、請求項2に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様4]
前記10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤が、アミンオキシド、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルファ−スルホメチルエステル、サルコシネート、タウリド、プロピオネート、ベタイン、スルホベタイン、グリシネート、コール酸ナトリウム、アルキルポリグルコシド、脂肪酸石鹸、エトキシ化ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびそれらの混合物から選択される、態様1〜3のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様5]
前記組織化された界面活性剤系が、2500オングストローム未満の液滴サイズを有し、二重層間の間隔が60オングストローム未満の多層の小胞で構成される、態様1〜4のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様6]
前記組織化された界面活性剤系が、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するヒドロキシル含有化合物をさらに含む、態様1〜5のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様7]
前記ヒドロキシル含有化合物が、グリセロール、ポリグリセロールまたはそれらの混合物を含む、態様6に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様8]
前記組織化された界面活性剤系が、系中に安定して懸濁された固体、液体または気体の粒子をさらに含む、態様1〜7のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面活性剤系。
[態様9]
前記系中に存在する少なくとも1種の10未満のHLB値を有する界面活性剤の、少なくとも1種の10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤に対する比率が、約4:1〜約1:4である、態様1〜8のいずれか一項に記載の水性の組織化された界面
活性剤系。
[態様10]
態様1〜9のいずれか一項に記載の組織化された界面活性剤系を含む組成物。
[態様11]
前記組成物が、パーソナルケア組成物、医薬配合物、洗濯用組成物、織物用柔軟剤組成物、農業用組成物、または硬質表面洗浄剤である、態様10に記載の組成物。
[態様12]
パーソナルケア組成物であって、該組成物は:
組織化された界面活性剤系(ここで組織化された界面活性剤系は、少なくとも1種の10未満のHLB値を有する界面活性剤と、少なくとも1種の10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤との混合物を含み、ここで界面活性剤の混合物は、2500オングストローム未満の液滴サイズと、60オングストローム未満の間隔を有する二重層とを有する多層の小胞を形成する);
組織化された界面活性剤系中に懸濁された固体、液体または気体の粒子のうち少なくとも1種;及び
残部の水、を含む、上記組成物。
[態様13]
前記10未満のHLB値を有する界面活性剤が、グリセロールエステルを含む、態様12に記載のパーソナルケア組成物。
[態様14]
前記10またはそれより大きいHLB値を有する界面活性剤が、アミンオキシド、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルポリグルコシド、脂肪酸石鹸、エトキシ化ソルビタンエステル、スクロースエステル、またはそれらの混合物を含む、態様12または13に記載のパーソナルケア組成物。
[態様15]
前記組成物が、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するヒドロキシル含有化合物の少なくとも1種をさらに含む、態様12〜14に記載のパーソナルケア組成物。
[態様16]
前記ヒドロキシル含有化合物が、グリセロール、ポリグリセロールまたはそれらの混合物を含む、態様15に記載のパーソナルケア組成物。
[態様17]
2500オングストローム未満の液滴サイズと、60オングストローム未満の間隔を有する二重層とを有する多層の小胞で構成される、透明な組織化された界面活性剤系。
図1