(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記干渉制御部は、前記実在する作業エリア外に設けられた前記有人車両が退避するための実在する安全エリア内に前記有人車両が退避していることを前記開放条件として用いる、
ことを特徴とする請求項2に記載の交通管制サーバ。
前記実在する作業エリアを固有に識別する作業エリア識別情報、当該実在する作業エリア内に存在する可能性がある前記有人車両を固有に識別する有人車両識別情報、及び前記有人車両から前記開放要求信号が送信されたことを示す開放要求情報を関連付けて記録した作業エリア管理情報を格納する作業エリア管理情報記憶部を更に備え、
前記干渉制御部は、前記通信制御部が前記開放要求信号を受信すると、前記作業エリア管理情報を参照して、前記開放要求信号が発せられた作業エリア識別情報に関連付けられた全ての有人車両識別情報に対し、前記開放要求情報が関連づけられていることを前記開放条件として用いる、
ことを特徴とする請求項2に記載の交通管制サーバ。
前記鉱山は、前記無人車両への積荷の積込作業を行う又は前記無人車両が放土作業を行う実在する作業エリアと、前記作業場に連結され、前記無人車両が走行する搬送路と、を含み、
前記走行許可付与部は、
前記搬送路上に予め設定された走行経路の部分区間を前記無人車両の走行を許可する走行許可区間として設定する走行許可区間設定部を含み、
前記干渉制御部は、前記実在する作業エリアに隣接して設定された前記走行許可区間に、前記実在する作業エリアに向かって走行する前記無人車両が存在しないことを第二閉塞条件とし、当該第二閉塞条件を更に充足した場合に前記作業エリアデータを閉塞状態に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の交通管制サーバ。
鉱山内を自律走行する無人車両及び前記鉱山内を運転手が搭乗して走行する有人車両の干渉回避のための交通管制を行う交通管制サーバと、前記有人車両に搭載される車載端末装置とを含む交通管制システムであって、
前記交通管制サーバは、
前記鉱山内において、前記無人車両の走行許可を付与する走行許可付与部と、
前記鉱山内において前記有人車両が走行又は作業することが許容された実在する作業エリアの状態を示す作業エリアデータに対し、前記無人車両が前記実在する作業エリアに進入することを禁止する閉塞状態、又は前記進入することを許可する開放状態を設定する干渉制御部と、
前記車載端末装置から、前記実在する作業エリアを前記閉塞状態に遷移させるための閉塞要求信号及び前記開放状態に遷移させるための開放要求信号を受信するとともに、前記閉塞状態に遷移したことを通知するための閉塞状態通知信号及び前記開放状態に遷移したことを通知するための開放状態通知信号を前記車載端末装置に送信するサーバ側通信制御部と、を備え、
前記車載端末装置は、
前記閉塞要求信号及び前記開放要求信号を送信するとともに前記閉塞状態通知信号及び前記開放状態通知信号を受信する端末側通信制御部と、
前記閉塞要求信号及び前記開放要求信号の入力操作を受け付けると共に、前記閉塞状態通知信号及び開放状態通知信号を受信すると前記有人車両のオペレータに前記実在する作業エリアの状態を通知する処理を行う作業エリア情報処理部と、を備え、
前記干渉制御部は、オペレータの入力操作により作業エリアデータとして得られた搬送路領域に対し、当該領域内に含まれるノードに関連付けられたノードも含めるように拡大し、この拡大後の領域を前記作業エリアデータとして設定するとともに、前記サーバ側通信制御部が前記閉塞要求信号を受信した際に前記無人車両が前記実在する作業エリア外にいることを第一閉塞条件とし、当該第一閉塞条件を充足した場合に前記作業エリアデータを閉塞状態に設定し、前記サーバ側通信制御部が前記開放要求信号を受信した際に前記有人車両が前記実在する作業エリア外にいる場合に前記作業エリアデータを開放状態に設定し、
前記走行許可付与部は、前記作業エリアデータが閉塞状態に設定されている場合は、前記実在する作業エリアに前記無人車両が進入するための走行許可を付与せず、前記作業エリアデータが開放状態に設定されている場合は、前記実在する作業エリアに前記無人車両が進入するための走行許可を付与する、
ことを特徴とする交通管制システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
<第一実施形態>
第一実施形態は、鉱山においてショベルやホイールローダ等の積込機が積み込んだ土砂や鉱石を搬送し、運転手が搭乗することなく自律走行するダンプトラック(無人車両に相当する。)と、ドーザやグレーダ、散水車、及びサービスカーのような運転手が搭乗して走行する有人車両と、これらダンプトラック及び有人車両の干渉回避のための交通管制を行う交通管制サーバ(以下「管制サーバ」と略記する)と、を無線通信回線で接続した交通管制システムに係り、特に積込場や放土場などの作業場内において有人車両が走行又は作業することが許容された実在する作業エリアに対し、ダンプトラックが進入することを禁止する閉塞状態又は進入することを許可する開放状態を設定する点に特徴がある。以下、本発明の第一実施形態に係る交通管制システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
まず、
図1に基づいて第一実施形態に係る交通管制システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る交通管制システムの概略構成を示す図である。
【0015】
図1に示す交通管制システム1は、鉱山などの採石場及び積込場を含む作業現場としての積込場61で、土砂や鉱石の積込作業を行うショベル10と、ショベル10から積み込まれた土砂や鉱石等の積荷を搬送するための自律走行車両からなるダンプトラック20(無人車両に相当する)、及びドーサ71や散水車やサービスカーなどの有人車両70と、採石場の近傍若しくは遠隔の管制センタ30に設置された管制サーバ31とを、無線通信回線40を介して互いに通信接続して構成される。
【0016】
ダンプトラック20は、鉱山内であらかじめ設定された搬送路60に沿って積込場61及び図示しない放土場の間を往復し、積荷を搬送する。
【0017】
鉱山内には、複数の無線基地局41−1、41−2、41−3が設置される。そしてこれらの無線基地局41−1、41−2、41−3を経由して、無線通信の電波が送受信される。
【0018】
ショベル10及び各ダンプトラック20は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の少なくとも3つの航法衛星50−1、50−2、50−3から測位電波を受信して自車両の位置を取得するための位置算出装置(
図1では図示を省略する)を備える。GNSSとして、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS、GALILEOを用いてもよい。ダンプトラック20や有人車両70は実際には複数存在し、それぞれが管制サーバ31と無線で通信を行う。
【0019】
ダンプトラック20は、管制サーバ31からの指示に従って自律走行をするための車載端末装置(以下「ダンプ端末装置」と略記する)26を搭載する。
【0020】
有人車両70は、積込場61を閉塞状態又は開放状態に遷移させるための信号を管制サーバ31との間で送受信するための車載端末装置(以下「有人車両端末装置」と略記する)76を搭載する。図示を省略するものの、ショベル10にも有人車両端末装置を搭載してもよい。
【0021】
管制サーバ31は、無線通信回線40に接続するためのアンテナ32に接続される。そして、管制サーバ31は、アンテナ32、無線基地局41−1、41−2、41−3を経由してダンプ端末装置26及び有人車両端末装置76の其々と通信する。
【0022】
図2は、
図1の搬送路60を詳述した図であり、ダンプトラック20や有人車両70が走行する露天掘り鉱山現場の構成例を示す。搬送路60は、積込場61と、放土場62及び放土場63とを連結する。ダンプトラック20は、積込場61で表土や鉱石を積込み、搬送路60を走行してそれらを放土場62又は63に搬送する。
【0023】
積込場61は、ショベル10が掘った表土や鉱石をダンプトラック20に積み込む作業現場である。
【0024】
放土場62は、ダンプトラック20が掘削現場から搬送した表土等は、この場所で放土され、層状あるいは放射状に展開する作業現場である。
【0025】
放土場63は、鉱石を破砕処理するクラッシャ(不図示)などが設置された作業現場である。クラッシャが破砕した鉱石は、ベルトコンベアなどにより貨車による積み出し場あるいは処理設備などに搬送される。
【0026】
上記各作業現場では、オペレータがドーサ71に搭乗して、こぼれた土砂をダンプトラック20の走行の妨げ何ならない位置によけたり、位置情報を測定する測定車に搭乗して、作業現場内を走行して位置情報の計測をしたりする。以下、有人車両が作業のために走行する可能性がある領域を「作業エリア」という。作業エリアは作業現場と完全一致してもよいし、作業現場内の部分領域であってもよい。また後述する第三実施形態では、作業エリアが搬送路上に設けられる。
【0027】
搬送路60上には、ダンプトラック20の進行方向が異なる二つの走行経路64が設けられる。各走行経路64は、上り車線及び下り車線を構成する。各走行経路64は、各作業現場の入口又は出口を相互に連結する。各作業現場の走行経路は、作業現場内におけるダンプトラック20の停車位置の移動、例えば積込点の移動や放土点の移動に伴って、随時生成される。以下では作業現場内において随時生成される走行経路を「動的パス」と称することがある。
【0028】
走行経路64は、地図上で設定された座標値として与えられる。ダンプトラックは、位置センサ(GPS)により特定した自己位置と走行路の座標値を比較しながら加減速やステアリングを制御することにより、走行経路64に沿って無人で走行する。走行経路64及びノード65の情報は、管制サーバ31の地図データ、及びダンプトラック20の地図データとして同一の情報が格納される。管制サーバ31はノード間として規定される走行区間毎に走行許可の付与・解除を行い、その情報をダンプトラック20に通知することによりダンプトラック同士の干渉を避けるように走行を制御する。隣接するノード間は、サブリンク66という。
【0029】
本実施形態の地図情報は、各作業場の入口、出口のそれぞれを結ぶ走行経路を規定しているが、各作業場内は各点の位置情報のみを含んでおり、動的パスは作業場内の各点の位置情報を用いて毎回生成されるので地図情報に含まれていない。例えば、積込場61では、ショベル10が掘削作業を進めながら移動する結果、積込点が移動する。そのため、本実施形態では、積込場61の入口から積込点までの走行経路や、積込点から積込場61の出口までの動的パスは、ダンプトラック20が走行する度毎に生成する。
【0030】
なお、積込場61内の作業エリアの位置情報は、本実施形態では地図情報に予め含むものとする。
【0031】
次に
図3乃至
図5を参照して、
図1の管制サーバ31、無人ダンプ20及びダンプ端末装置26、及び有人車両端末装置76のハードウェア構成について説明する。
図3は、交通管制サーバ及びダンプ端末装置のハードウェア構成図である。
図4は、有人車両端末装置のハードウェア構成図である。
図5は、作業エリア管理データベースに格納されるデータの例を示す図であって、(a)は作業エリア管理情報の一例を示し、(b)は作業エリア管理情報の他例を示し、(c)は、作業エリアの位置情報及び状態を規定した作業エリア地図情報を示す。
【0032】
図3に示すように、管制サーバ31は、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、マスタ地図情報データベース(以下データベースを「DB」と略記する)316、走行許可区間情報DB317(以下「区間情報DB」と略記する)、及び作業エリア管理DB318を含んで構成される。
【0033】
サーバ側制御装置311は、管制サーバ31の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置の他、管制サーバ31で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、また、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、を含むハードウェアを用いて構成される。管制サーバ31で実行されるプログラムの機能構成は
図6を参照して後述する。また、サーバ側制御装置311は、管制サーバ31で実行される機能を実現するための集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)を用いて構成してもよい。
【0034】
サーバ側入力装置312は、マウス、キーボードなどの入力装置により構成され、例えばサーバ側表示装置313の画面に表示した地図上で作業エリアの位置を入力する操作を行う際のユーザインタフェースとして機能する。
【0035】
サーバ側表示装置313は、液晶モニタ等により構成され、オペレータに対して情報を表示して提供するインターフェースとして機能する。
【0036】
サーバ側通信装置314は、有線通信回線や無線通信回線40に通信接続するための装置により構成される。サーバ側通信装置314は、有人車両端末装置76から作業エリアを閉塞状態に遷移させるための閉塞要求信号及び作業エリアを開放状態に遷移させるための開放要求信号を受信すると共に閉塞状態に遷移したこと通知するための閉塞状態通知信号及び開放状態に遷移したこと通知するための開放状態通知信号を送信する。
【0037】
通信バス315は、各構成要素を互いに電気的に接続する。
【0038】
マスタ地図情報DB316は、HDDなど情報を固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、搬送路60上の各ノードの位置情報(座標値)と、各ノードを連結するサブリンクとにより定義された地図情報を記憶する。また、鉱山の地形情報や、各ノードの絶対座標(測位電波を基に算出される3次元実座標)を含んでもよい。各ノードには、そのノードを固有に識別する位置識別情報(以下「ノードID」という)が付与される。なお、上記地図情報には、走行経路上を走行するダンプトラックの向きが含まれる。
【0039】
区間情報DB317は、HDDなど情報を固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、各ダンプトラック20を固有に識別する車両識別情報と、各無人ダンプに割り当てられた走行許可区間を示す位置情報、各ダンプトラックの現在位置、走行速度を含む区間情報を記憶する。車両識別情報は、ダンプトラック20及び有人車両70の区別がつく情報であることが望ましい。
【0040】
作業エリア管理DB318は、有人車両が走行して作業をおこなう作業エリアを固有に識別する作業エリア識別情報と、作業エリアを固有に識別する作業エリア識別情報、当該作業エリア内に存在する可能性がある前記有人車両を固有に識別する有人車両識別情報、及び前記有人車両から前記開放要求信号が送信されたか否かを示す開放要求情報を関連付けた作業エリア管理情報を格納する。例えば
図5の(a)、(b)に示すように、作業エリア管理情報は、「作業エリア識別情報」と、各作業エリアに存在する有人車両を固有に識別する「有人車両識別情報」と、各有人車両が閉塞要求信号を送信したかを記録する「閉塞要求フラグ」と、各有人車両が作業エリアの開放を要求する開放要求信号を送信したかを記録する「開放要求フラグ」と、を格納するレコードを有するテーブルとして構成してもよい。
【0041】
更に作業エリア管理DB318は、
図5の(c)に示すように、「作業エリア識別情報」と、各作業エリアの位置を示す「実座標(位置情報)」と、各作業エリアが閉塞状態か開放状態かを示す「状態」(「状態」レコードは作業エリアデータに相当する。)と、を関連づけた作業エリア地図情報を格納してもよい。作業エリア地図情報は、測定車72から取得した位置情報を基に生成されてもよいし、オペレータからの入力操作により生成してもよい。また、有人車両に対して走行許可区間を設定した場合に、その走行許可区間を基に作業エリア地図情報を生成してもよい。
【0042】
上記の各データベースは、地図情報や区間情報を記憶する記憶部だけを備え、サーバ側制御装置311がそれらのデータベースの更新・検索処理を行ってもよいし、各DBに情報の更新・検索処理を行うエンジンを搭載したものでもよい。
【0043】
一方、ダンプトラック20は、電気駆動ダンプトラックであって、
図3に示すようにダンプ端末装置26の他、ダンプ端末装置26の指示を受けて加減速やステアリングを制御する車両制御装置27、外界センサ装置28、及び位置検出装置29を備える。
【0044】
ダンプ端末装置26は、端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265、及び端末側地図情報DB266を含んで構成される。
【0045】
端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265、及び端末側地図情報DB266のそれぞれは、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、及びマスタ地図情報DB316のそれぞれと同一の構成であるので、重複説明を省略する。上記端末側地図情報DB266は、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報と同じ地図情報を格納する。
【0046】
車両制御装置27は、リターダブレーキ(回生ブレーキ)271、サービスブレーキ(機械ブレーキ)272、ステアリング制御装置273、及び加速制御装置274を含む。車両制御装置27は、ダンプ端末装置26に電気的に接続され、管制サーバ31からの指示に従ってダンプトラック20を自律走行させる。
【0047】
外界センサ装置28は、ミリ波レーダや前方カメラなど、ダンプ20−1の走行方向(進行方向)前方の障害物を検知するためのセンサでありその種類は問わない。
【0048】
位置算出装置29は、航法衛星50−1、50−2、50−3(
図1参照)からの測位電波を基に自車両の現在位置を算出する。算出された自車両の現在位置は、ダンプ端末装置26から管制サーバ31に対して送信される。
【0049】
図4に示すように、有人車両端末装置76もダンプ端末装置26と同様、端末側制御装置761、端末側入力装置762、端末側表示装置763、端末側通信装置764、及び通信バス765を含み、ダンプトラック20に搭載された位置算出装置79に接続される。これらの各構成要素はダンプ端末装置26の構成と同様であるので重複説明を省略する。
【0050】
次に
図6及び
図7を参照して、
図1の管制サーバ31、ダンプ端末装置26、及び有人車両端末装置76の機能構成について説明する。
図6は、交通管制サーバ及び端末装置の主な機能を示す機能ブロック図である。
図7は、有人車両端末装置の主な機能を示す機能ブロック図である。
【0051】
図6に示すように、管制サーバ31のサーバ側制御装置311は、配車管理部311a、走行許可区間設定部311b、動的パス生成部311c、干渉制御部311d、及びサーバ側通信制御部311eを備える。走行許可区間設定部311b及び動的パス生成部311cは、ダンプトラック20の走行を許可する走行経路(走行許可区間及び動的パス)を設定することでダンプトラック20の走行許可を付与するのでこれらを総称して走行許可付与部311fという。
【0052】
配車管理部311aは、ダンプトラック20の目的地を設定し、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照して現在位置から目的地に至る走行経路を決定する。ここでいう目的地は、予めマスタ地図情報DB316に格納された地図情報で規定された範囲である。従って、配車管理部311aは、各作業エリアの入口または出口を目的地と設定するが、積込点、放土点は目的地として設定しない。
【0053】
走行許可区間設定部311bは、ダンプトラック20に対し、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照し、搬送路60上の走行経路の部分区間をダンプトラック20の走行を許可する走行許可区間として設定し、当該走行許可区間の位置を示す区間情報を生成する。なお、上記で決定された走行経路には、例えば積込点から積込場61の出口までに生成された動的パス、放土点から放土場62、又は63の出口までに生成された動的パスを含んでもよい。
【0054】
走行許可区間設定部311bは、区間情報DB317に格納された区間情報に対し、新たに生成した区間情報を上書きして更新する。区間情報には、走行許可区間の最前端のノードである前方境界点のノードID、及び最後端のノードである後方境界点のノードIDが含まれる。区間情報には、各ダンプトラック20に対して設定された走行許可区間が含まれるので、区間情報を参照すると、ある作業エリアに隣接して設けられた走行許可区間にダンプトラックが存在するか、また地図情報を参照することでそのダンプトラック20の走行方向がわかる。走行許可区間設定部311bは、ダンプ端末装置26から新たな走行許可区間の設定を要求する情報(以下「区間要求情報」という)を受信すると、これに応じて走行許可区間の設定処理を行う。走行許可区間設定部311bは、新たな走行許可区間を設定した際にはその走行許可区間を示す区間応答情報を生成し、出来なかった場合には走行不許可を示す不許可応答情報を生成する。
【0055】
動的パス生成部311cは、実存する作業エリア内の停車位置が設定されたら、当該作業エリアの入口から当該作業エリア内の停車位置までの動的パス、又は停車位置から当該作業エリアの出口までの動的パスを生成する。ここでいう「停車位置」とは、例えば積込場61の場合は、ショベル10から得た積込点の位置情報であり、放土場62、63の場合は放土位置が相当する。動的パス生成部311cは、作業エリアが閉塞されている場合には動的パスを生成しないものとしてもよい。これにより、作業エリアが閉塞状態にあるときはダンプトラックが作業エリアに進入できないので、閉塞状態中におけるダンプトラックと有人車両との干渉が回避できる。
【0056】
干渉制御部311dは、作業エリアデータに対し、無人車両が実在の作業エリアに進入することを禁止する閉塞状態、又は進入することを許可する開放状態を設定する。
【0057】
管制サーバ31が閉塞要求信号を受信すると、干渉制御部311dはその信号の発信元となる車載端末装置を搭載した有人車両識別情報に対応する閉塞要求フラグの値を「0」から「1」へ書き換える。そして、ダンプトラック20が実在の作業エリア外にいることを第一閉塞条件とし、当該第一閉塞条件を充足している場合に干渉制御部311dは実存する作業エリアを閉塞する、すなわち作業エリアデータを閉塞状態に設定する。また第一閉塞条件に加えて実在の作業エリアに隣接する走行許可区間に当該作業エリアに向かって走行するダンプトラックがいないか(第二閉塞条件)を判断条件として課してもよい。
【0058】
閉塞要求フラグの値を用いた閉塞状態の判断処理の一例として、干渉制御部311dは、作業エリア内に複数の有人車両がいる場合は、少なくとも一つ値が「1」の場合、即ち、上記有人車両の閉塞フラグの値を用いてOR処理を行い、その演算結果が「1」であれば、上記第一閉塞条件及び第二閉塞条件を充足すると判断してもよい。
【0059】
干渉制御部311dは、作業エリアを開放状態から閉塞状態に切り替えると、閉塞要求フラグの記録を削除、すなわち閉塞要求フラグの値を「1」から「0」に書き換える。また、作業エリアを閉塞したことを示す「閉塞状態通知信号」を閉塞要求信号の発信元となる有人車両の車両端末装置に対して送信する。閉塞状態に切り替えると、干渉制御部311dは作業エリア地図情報(
図5(c))の「状態」レコードを「開放」から「閉塞」に書き換え、当該作業エリア内に走行許可が与えられないように制御する。あるいは、新たに動的パスが生成されないように制御してもよい。この場合、ダンプトラック20が作業エリアに進入できない。その結果、有人車両が作業エリア内を走行してもダンプトラックとの干渉が生じない。
【0060】
一方、管制サーバ31が開放要求信号を受信すると、干渉制御部311dは、その信号の発信元となる車載端末装置を搭載した有人車両識別情報に対応する開放要求フラグの値を「0」から「1」へ書き換える。そして、有人車両70が作業エリア外にいることを開放条件とし、当該開放条件を充足している場合に実存する作業エリアを開放する、すなわち作業エリアデータを開放状態に設定する。
【0061】
開放要求フラグの値を用いた開放状態の判断処理の一例として、干渉制御部311dは開放するか否かの判定対象となる作業エリア内の全ての有人車両の開放要求フラグの値が「1」の場合、即ち、上記有人車両の開放要求フラグの値を用いてAND処理を行い、その演算結果が「1」であれば開放条件を充足すると判断してもよい。
【0062】
干渉制御部311dは、作業エリアを閉塞状態から開放状態に切り替えると、開放要求フラグの記録を削除、すなわち開放要求フラグの値を「1」から「0」に書き換える。また、作業エリアを開放したことを示す「開放状態通知信号」を当該作業エリア内の各有人車両に対して送信する。開放状態に切り替えると、干渉制御部311dは作業エリア地図情報(
図5(c))の「状態」レコードを「閉塞」から「開放」に書き換え、当該作業エリアに走行許可が与えられるようになる。また新たな動的パスが生成されるようにしてもよい。ダンプトラック20が作業エリアに進入する。このとき、有人車両が作業エリア外にいるので、ダンプトラックとの干渉を回避することができる。
【0063】
サーバ側通信制御部311eは、ダンプ端末装置26及び有人車両端末装置76との間の無線通信制御を行う。ダンプ端末装置26との間で区間要求情報、区間応答情報及び不許可応答情報を送受信したり、有人車両端末装置76との間で閉塞要求情報、開放要求情報、閉塞通知情報、及び開放通知情報の送受信のための制御を行う。
【0064】
次にダンプ端末装置26について説明する。ダンプ端末装置26の端末側制御装置261は、自律走行制御部261a、端末側通信制御部261b、及び要求情報処理部261cを備える。
【0065】
自律走行制御部261aは、位置算出装置29から自車両の現在位置を取得し、端末側地図情報DB266の地図情報を参照して、区間情報に含まれる走行許可区間に従って自車両を走行させるための制御を車両制御装置27に対して行う。また、自律走行制御部261aは、外界センサ装置28の検知結果に基づいて前方障害物の有無を判定し、障害物との干渉、衝突の回避動作の有無も判定し、必要があれば制動動作のための制御を行う。
【0066】
端末側通信制御部261bは、管制サーバ31との間で行う無線通信の制御を行う。端末側通信制御部261bは区間要求情報の送信と、区間応答情報及び不許可応答情報の受信と、を行う。
【0067】
要求情報処理部261cは、端末側地図情報DB266に格納された地図情報及び位置算出装置29が算出した現在位置を基に、ダンプトラック20が区間要求情報を送信する地点に到達したかを判断し、要求地点に到達すると区間要求情報を生成して端末側通信制御部261bを介して管制サーバ31に対して区間要求情報を送信する。
【0068】
また有人車両端末装置76の端末側制御装置761は、
図7に示すように、作業エリア情報処理部761a及び端末側通信制御部761bを備える。端末側通信制御部761bは、ダンプ端末装置26の構成と同様であるので重複説明を省略する。なお、有人車両70に搭載される位置算出装置79が算出した自車両の現在位置を示す位置情報は、端末側通信制御部761bを介して管制サーバ31に送信される。
【0069】
作業エリア情報処理部761aは、オペレータが端末側入力装置768において作業エリアを開放状態又は閉塞状態に遷移させる要求操作を行うと開放要求信号又は閉塞要求信号を生成し、端末側通信制御部761bに出力する。端末側通信制御部761bは端末側通信装置764を介して管制サーバ31に開放要求信号又は閉塞要求信号を送信する。また、作業エリア情報処理部761aは、端末側表示装置763に上記要求操作を行うための操作画面を表示させるための制御、及び閉塞状態通知信号又は開放状態通知信号を受信した際に、上記操作画面にその信号に従った表示をさせるための制御を行う。
【0070】
管制サーバ31が備える配車管理部311a、走行許可区間設定部311b、動的パス生成部311c、干渉制御部311d、及びサーバ側通信制御部311eは、これらの機能を実現するプログラムが
図3に示すサーバ側制御装置311(ハードウェア)により実行されることにより実現する。
【0071】
同様に、ダンプ端末装置26に備えられる自律走行制御部261a、端末側通信制御部261b、及び要求情報処理部261cは、これらの機能を実現するプログラムが
図3に示す端末側制御装置261(ハードウェア)により実行されることにより実現する。
【0072】
更に有人車両端末装置76に備えられる作業エリア情報処理部761a及び端末側通信制御部761bは、これらの機能を実現するプログラムが
図4に示す端末側制御装置761(ハードウェア)により実行されることにより実現する。
【0073】
次に、
図8を参照して、管制サーバ31による走行許可設定処理について説明する。
図8は、走行許可区間設定処理を示す図であって、(a)は各ダンプトラックに対して設定された走行許可区間を示し、(b)は、ダンプトラックに対して新たに設定された走行許可区間を示し、(c)は、開放区間を示す。管制サーバ31は、排他的に走行許可区間を設定するので走行許可区間処理の説明は、ダンプトラック同士の干渉を回避するための処理の説明も兼ねる。
【0074】
図8の(a)に示すダンプトラック20−1、20−2は、矢印A方向に向かって走行中のダンプトラックである。走行許可区間83aはダンプトラック20−1に対して設定された走行許可区間である。走行許可区間83bはダンプトラック20−2に対して設定された走行許可区間である。D1は、ダンプトラック20の現在位置から走行許可区間83aの前方境界点(終端)までの走行経路に沿った距離を示す走行許可残存距離である。D2は、区間要求情報の送信を開始する走行許可要求開始距離である。以下においてダンプトラック20−1、20−2を区別しない場合は、ダンプトラック20と記載する。
【0075】
走行許可要求開始距離D2は、ダンプトラック20が停止可能な距離(以下「停止可能距離」といい、UVSLで表す)よりも長い距離であり、例えばUVSLに所定のオフセット距離mを加えた距離として定義される。この場合、走行許可要求開始距離D2は下式(1)で表せる。また、UVSLは、ダンプトラック20の現在の速度から停止できる距離を基に算出され、例えば下式(2)により表せる。
【数1】
但し m:マージン
【数2】
但し c
u:無人ダンプの停止可能距離を求めるために定められた係数
M
u:無人ダンプの積荷を含めた質量
v
u:無人ダンプの現在速度
f
u:無人ダンプの制動力
【0076】
所定のオフセット距離mの値は、例えば無線通信にかかる時間や無線通信の障害の発生度合いなどを考慮して設定する。ダンプトラック20の速度vは、ダンプトラック20の現在速度を車輪の回転数などから測定したものであってもよく、また、ダンプトラック20の現在の走行位置に対してマスタ地図情報DB316及び端末側地図情報DB266に格納された地図情報に設定されている最大許容速度を用いてもよい。
【0077】
ダンプトラック20の走行許可残存距離D1が走行許可要求開始距離D2以下となったとき、ダンプトラック20は、管制サーバ31に対して区間要求情報を送信する。区間要求情報はダンプトラック20の現在位置情報を含む。
【0078】
走行許可区間設定部311bは、ダンプトラック20−1から区間要求情報を受信すると、送られてきた区間要求情報に含まれる位置情報に基づいてダンプトラック20−1の存在する区間(隣接するノード間の走行経路に相当する)を特定する。そして、ダンプトラック20−1の進行方向前方に向かって、ダンプトラック20−1の存在する区間の終端から走行許可付与長さ以上となる区間について走行許可を与える。但し、他の車両に許可が与えられている区間がある場合には、その手前までについて走行許可区間を与える。
【0079】
図8の(b)に示す例では、ダンプトラック20−1の存在する区間は90であり、その終端から走行許可付与長さ95に含まれる区間は、区間91、92、93、94となる。但し、区間93、94は、既にダンプトラック20−2に走行許可区間83bとして与えられている。そこでダンプトラック20−1に対して新たに設定できる走行許可区間の候補は、区間91、92となるが、区間91は既にダンプトラック20−1に対して設定されている走行許可区間83aに含まれている。従って、走行許可区間設定部311bは、区間92のみを新たな走行許可区間として設定する。
【0080】
走行許可区間設定部311bは、走行許可を与えられた区間のうちダンプトラック20が通過した区間を所定のタイミングで解除する。具体的には、
図8の(c)に示すように、走行許可区間設定部311bは、解除対象となる区間の終端からダンプトラック20−2の位置までの距離D4が、予め定められた走行許可解除距離D3以上となったときに解除する。解除された区間は、後続のダンプトラック20−1の走行許可区間として設定可能になる。
【0081】
ダンプトラック20−1、20−2同士は以上のような走行許可区間の割り当てによって相互に干渉することを防止することができる。しかし、有人車両70の場合は、運転者による表示や指示の見落としによって、他の車両の走行許可区間に誤って進入してしまう恐れがあるので、それに対する対策が必要である。特に掘削現場や放土場では、積込位置や放土位置に後進で位置決めするため、ダンプトラックが複雑な動きをすること、また搬送路のように明確にダンプトラックの走行領域が見分けられないことなどにより、有人車両が誤ってダンプトラックの走行許可区間に入ってしまう可能性が高い。そのため、これらの場所においては、従来の閉塞制御に加えて有人車両のための新たな干渉制御が必要になる。
【0082】
図9、
図10を用いて本実施形態に係る作業エリアにおける有人車両干渉制御の概念を説明する。
図9は、開放状態にある作業エリアの例を示す図である。
図10は、閉塞状態にある作業エリアの例を示す図である。
【0083】
積込場61には、掘削・積み込み作業を行うショベル10と、掘削によって散乱する土砂を片付けたり、ダンプトラックから積込場内に荷こぼれした土砂を片付けるためのドーザ71と、掘削の進行による地形の変化を計測するための測量車72とが存在する。ショベル10、ドーサ71、及び測量車72はいずれも有人車両であり人が運転する車両である。
【0084】
積込場61の内側には、ドーザ71や測量車72が作業を行う作業エリア100と、積込場61内の領域であるが作業エリア外、すなわちダンプトラック20が進入しない安全エリア110と、作業エリア100から安全エリア110を隔離するために安全エリア110の境界に設けた盛土120とが存在する。本実施形態では、ショベル10、ドーサ71、及び測量車72の3つの有人車両のうち、ドーサ71及び測量車72が作業エリア100から安全エリア110に退避した場合に、ダンプトラック20の作業エリア100への進入を許可する。すなわち、作業エリア100内に存在する有人車両(
図9ではショベル10、ドーサ71、及び測量車72)の内、予め退避させる有人車両(
図9ではドーサ71、及び測量車72)を決めておき、それら決められた有人車両が安全エリア110に退避した場合にダンプトラック20の作業エリア100への進入が許可される。よって、作業エリア100内の全ての有人車両が退避することはダンプトラック20の開放条件にしなくてもよい。
【0085】
ショベル10のオペレータが、ショベル10のバケット10aを積込点102に位置させて積込点102の設定操作(例えばボタン押し)を行うと、積込点102の位置情報が管制サーバ31に送信される。動的パス生成部311cは、作業エリア管理情報を参照し、切り返し点101を備えた走行経路(動的パス)140を生成する。管制サーバ31は、走行経路140をダンプトラック20に送信する。ダンプトラック20はこの走行経路140に沿って走行し、積込点102に停車する。このように、ダンプトラック20の走行経路140は積込点102の位置の変化に追従して変化し、かつ走行経路140の境界を判別できるような目印がないため、有人車両(ドーサ71、測量車72)の運転者はダンプトラック20が走行する場所を特定することが困難である。
【0086】
そこで、本実施形態では作業エリア100に対して閉塞状態と開放状態の二つの状態を設け、作業エリア100が閉塞状態である場合はダンプトラック20の進入を禁止し、開放状態である場合は進入を許可するようにする。
【0087】
有人車両(ドーサ71、測量車72)の運転者は、作業エリア100で作業をする場合は、まず作業エリア100の閉塞を管制サーバ31に要求し、管制サーバ31が閉塞を許可した段階で作業エリア100に進入して作業を行う(
図10参照)。その間、作業エリアに進入しようとするダンプトラック20は、作業エリア100の入り口64aで待機させる。そして、作業が完了したら、有人車両は安全エリア110に退避して、作業エリア100の開放を管制サーバ31に要求する。管制サーバ31が作業エリア100を開放した段階で、ダンプトラック20の進入が可能となる(
図9参照)。
【0088】
ここで、安全エリア110については、その境界に盛土120を設けて、その一部に出入り口を設けるような構造としておくことにより、ダンプトラック20が走行し得るエリアと安全エリア110の境界が明確となり、有人車両70の運転者が誤ってダンプトラック20の走行許可区間に入ってしまうことを防ぐことができる。また、このような盛土120を設けておくことにより、ダンプトラック20が走行経路140を逸脱して安全エリア110に進入することを防ぐことができる。
【0089】
また、
図9の仮想走行経路141は、ダンプトラック20が最大舵角を切った時に走行する経路の一例を示すものであるが、このような最大舵角を切った場合にも到達し得ないような場所に安全エリア110の出入り口を設けることにより、ダンプトラック20の操舵システムの予期せぬ異常などにより経路逸脱が起きた場合に、ダンプトラック20が安全エリア110に進入する可能性を軽減することができる。
【0090】
本実施形態では、盛土120により安全エリア110と作業エリア100とを隔離したが、安全エリア110と作業エリア100との高低差を設けることで、ダンプトラック20が安全エリア110に進入しないように構成してもよい。
【0091】
次に、本実施形態に係る管制制御装置の処理の流れを
図11から
図14を用いて説明する。
図11は、有人車両端末装置の操作画面(端末側入力装置768に相当する)の例を示す図である。操作画面200には、作業エリアの閉塞を要求するための「CLOSE AREA」ボタン201、作業エリアの閉塞が許可されたことを示す「APPROVED」ライト202、作業エリアの開放を要求するための「OPEN AREA」ボタン203が設けられている。オペレータが「CLOSE AREA」ボタン201を操作すると、閉塞要求信号が、「OPEN AREA」ボタン203を操作すると開放要求信号が生成され、各信号が管制サーバ31に送信される。
【0092】
図12は、有人車両端末装置で実行される作業エリア閉塞処理の流れを示すフローチャートである。
【0093】
有人車両の運転者によって「CLOSE AREA」ボタン201が押されたら(S101/Yes)、作業エリア情報処理部761aが閉塞要求信号を生成し、管制サーバ31に送信すると共に、管制サーバ31から作業エリア100の現在の状態を示す閉塞状態通知信号又は開放状態通知信号(これらを総称して「エリア状態信号」という)を管制サーバ31から取得する(S102)。「CLOSE AREA」ボタン201が押されるまでは作業エリア閉塞処理は開始しない(S101/No)。
【0094】
閉塞状態通知信号を取得しない場合(開放状態通知信号を受信した場合及びいずれの信号も受信しない場合を含む)(S103/No)は、作業エリア情報処理部761aは「CLOSE AREA」ボタン201を点滅状態(例えば、白色と灰色を交互に表示など)とし(S104)、タイムアウトとなるまでの間、管制サーバ31への閉塞要求信号とエリア状態信号の取得処理を繰り返す(S105/No)。
【0095】
所定の時間経過しても閉塞状態とならない場合(S105/Yes)は、「CLOSE AREA」ボタン201を消灯状態(例えば、灰色表示状態など)とする(S106)。
【0096】
一方、閉塞状態通知信号を受信した場合(S103/Yes)は、「CLOSE AREA」ボタン201を点灯状態(例えば、白色表示状態など)とし、「APPROVED」ライト202も点灯状態とする(S107)。有人車両の運転者は、「APPROVED」ライト202が点灯したことを確認して、安全エリア110から作業エリア100へ出ることができる。
【0097】
図13は、有人車両端末装置で実行される作業エリア開放処理の流れを示すフローチャートである。
【0098】
有人車両の運転者によって「OPEN AREA」ボタン203が押されたら(S111/Yes)、作業エリア情報処理部761aが開放要求信号を生成し、管制サーバ31に送信する共に、管制サーバ31からエリア状態信号を取得する(S112)。「OPEN AREA」ボタン201が押されるまでは作業エリア開放処理は開始しない(S111/No)。
【0099】
開放状態通知信号を取得しない場合(閉塞状態通知信号を受信した場合及びいずれの信号も受信しない場合を含む)(S113/No)は、作業エリア情報処理部761aは「OPEN AREA」ボタン203を点滅状態(例えば、白色と灰色を交互に表示など)とし(S114)、タイムアウトとなるまでの間、管制サーバ31への開放要求と状態取得を繰り返す(S115/No)。
【0100】
所定の時間経過しても開放状態とならない場合(S115/Yes)は、「OPEN AREA」ボタン203を消灯状態(例えば、灰色表示状態など)とする(S116)。
【0101】
一方、開放状態通知信号を取得した場合(S113/Yes)は、「OPEN AREA」ボタン203を点灯状態(例えば、白色表示状態など)とし、「APPROVED」ライト202を消灯状態とする(S117)。
【0102】
以上の処理において、有人車両の運転者は「APPROVED」ライト202がなくても「CLOSE AREA」ボタン201や「OPEN AREA」ボタン203の点灯状態を見ることで作業エリア100が閉塞されたことや開放されたことを知ることができるが、「APPROVED」ライト202があることにより、作業エリア100が閉塞状態であること、すなわち作業エリア100に入れることを確実に認識することができる。
【0103】
なお、以上の処理において管制サーバ31との交信の際には、有人車両の位置算出装置79により所得した有人車両の位置情報も併せて管制サーバ31に送信するものとする。
【0104】
図14は、有人車両端末装置の処理に対応した管制サーバ側の処理の流れを示すフローチャートである。実際の処理は、管制サーバ31内の干渉制御部311dによって行われる。
【0105】
作業エリア100には単一の有人車両だけでなく、ドーザ71や測量車72など複数の有人車両70が作業をしていることが考えられる。本実施形態では、ドーサ71及び測量車72の両方が安全エリア110に退避した状態で作業エリア100を開放する必要がある。このため、本実施形態では、予め規定された有人車両70の全て(ドーサ71及び測量車72)が安全エリア110に退避して、作業エリア100を開放してもよいという要求があった段階で作業エリア100を開放する。以下、
図14の各ステップ順に沿って管制サーバ31の処理について説明する。
【0106】
管制サーバ31が有人車両端末装置76から作業エリア100の閉塞要求信号を受信したときに(S201/Yes)、干渉制御部311dは、ダンプトラック(無人車両)が作業エリア100内にいる場合、あるいは作業エリア100に隣接する走行許可区間内にあって、作業エリア100に向かって走行しているダンプトラックがまだ走行中の場合(S202/No)は、作業エリア100がまだ開放状態であることを示すために、閉塞要求信号を送信した有人車両端末装置76に対して開放状態通知信号を送信し(S203)、作業エリア管理情報にその有人車両が存在する作業エリアの閉塞要求があったことを記録しておく(S204)。具体的には、その有人車両の閉塞要求フラグの値を「0」から「1」へ書き換える。
【0107】
閉塞要求があった作業エリア100内にダンプトラックが1台も存在しておらず、かつ作業エリア100に隣接する走行許可区間内にあって、作業エリア100に向かって走行しているダンプトラック20が停止しているか、隣接する走行許可間にダンプトラック20が存在しない場合(S202/Yes)には、作業エリア100を閉塞状態とし、その旨を示す閉塞状態通知信号を有人車両端末装置76に送信する(S205)とともに、作業エリア100の閉塞要求の記録を削除する(S206)。
【0108】
ここで、動的パス生成部311cは、作業エリア管理情報に作業エリア100の閉塞要求の記録がある場合は、先行するダンプトラック20による走行経路の閉塞が解除されても、後続するダンプトラック20に走行許可を与えないようにする。
【0109】
一方、干渉制御部311dは、有人車両端末装置76から作業エリア100の開放要求信号を受信した場合(S201/No、S207/Yes)、開放要求信号を送信した有人車両が安全エリア110内にいない場合(S208/No)は、作業エリア100が閉塞状態であることを示す閉塞状態通知信号を有人車両70に通知する(S209)。
【0110】
有人車両70が安全エリア110内にいる場合(S208/Yes)は、作業エリア開放要求の記録を確認して作業エリア100に予め関連付けられた有人車両の全て(ドーサ71、測量車72)から開放要求信号を受信していなければ(S210/No)、作業エリア100が閉塞状態であること示す閉塞状態通知信号を有人車両端末装置76に通知する(S211)と同時に、当該有人車両から作業エリアの開放要求信号を受信したことを記録しておく(S212)。
【0111】
上記有人車両70が安全エリア110内にいるかの確認は、有人車両のオペレータが安全エリアに退避してから開放要求の操作を行うことで実現できる。また、開放要求信号に有人車両の現在位置情報を含めておくとともに、予め管制サーバ31に安全エリアの位置情報を規定した安全エリア地図情報も更に備えておき、干渉制御部311dが安全エリア地図情報内に有人車両の現在位置情報が含まれるかを検証して確認処理を実行してもよい。
【0112】
作業エリアに関連付けられた有人車両の全てから、開放要求信号を受信した記録がある場合(S210/Yes)は、干渉制御部311dは作業エリア100を開放状態とし、開放要求信号の送信元である有人車両端末装置76に対して開放状態信号を通知する(S213)と同時に、作業エリアの開放要求の記録を削除する(S214)。
【0113】
本実施形態によれば、有人車両からの要求に従って作業エリアを閉塞又は開放する。従って、有人車両が安全エリアに退避してから作業エリアを開放し、作業エリアを閉塞してから有人車両が作業エリア内に進入することにより、作業エリア内における無人車両と有人車両の干渉を回避できる。特に、作業場内においても、作業エリアが開放されているときにのみ走行許可が与えられることで、作業場内における干渉を回避することができる。
【0114】
また、複数の有人車両が作業エリア内にいる場合にも予め閉塞、開放要求を行う有人車両を定めておくことで、ショベルのように有人車両であっても本発明に係る干渉回避の制御の対象外となる車両が存在していても、干渉回避が特に重要となる車両、例えばライトビークルなどの干渉を回避することできる。
【0115】
更に、第一閉塞条件の作業エリア内の無人車両の有無に加え、第二閉塞条件である隣接走行許可区間に作業エリアに向って走行する無人車両の有無を加えることにより、例えば、作業エリアを開放した時点で無人車両に対して作業エリアの入口で急停止をさせるといった緊急動作を回避できる。
【0116】
<第二実施形態>
第二実施形態は、有人車両端末装置を有人車両の車両制御装置に接続し、開放状態に有人車両が誤って作業エリア内を走行することを回避する実施形態である。以下、
図15を参照して第二実施形態について説明する。
図15は、第二実施形態に係る有人車両端末装置のハードウェア構成図である。第二実施形態に係る有人車両は、第一実施形態の構成において、車両制御装置77を追加したものである。車両制御装置77は、端末側制御装置761の指令に基づいて、有人車両の走行を抑制するものである。
【0117】
端末側制御装置761は、
図12及び
図13に示す処理フローに基づいてAPPROVEDライト202が消灯状態である場合は、車両制御装置77に走行抑制の指令を送る。具体的には、パーキングブレーキが解除されない、あるいはエンジン動力を車軸に伝えるトランスミッションがアイドル状態から接続状態にならないなど、有人車両が停車状態から走行状態へ移行することを抑制するような制御を行う。
【0118】
本実施形態によれば、作業エリアが開放状態にある場合に、有人車両のオペレータが誤って作業エリア内に進入しようとしても、有人車両が移動できないことにより、ダンプトラックとの干渉を回避することができる。
【0119】
<第三実施形態>
第三実施形態は、搬送路上に作業エリアを設定する実施形態である。第一実施形態では、作業エリアを作業場に設定したが、搬送路上についても同様の交通管制システムを適用することができる。本実施形態では、有人車両として道路面を整備するグレーダを想定し、作業エリアとしては、搬送路上の区間を想定する。以下、
図16及び
図17を参照して第三実施形態について説明する。
図16は、第三実施形態における作業エリアの例を示す図である。
図17は、搬送路の幹線に枝線が合流しているときの作業エリアの設定例を示す図であって、(a)はオペレータの入力操作による作業エリアの位置を示し、(b)は、干渉制御部が実際に設定する作業エリアの位置を示し、(c)は、干渉制御部が実際に設定する作業エリアの他の例を示す。
【0120】
図16に示す例では、一つの積込場61に対して二つの放土場62、63が搬送路60により結ばれている。ここで、交差点69から放土場62への分岐路の路面整備を行う場合には、搬送路60の形状に沿った作業エリア200を設定し、安全エリア210を搬送路60の脇に設定する。グレーダ73が作業エリア200の路面整備作業を行っている場合は、作業エリア200を閉塞状態とし、ダンプトラック20は積込場61と放土場63の間を往復する。グレーダ73が安全エリア210に退避して作業エリア200が開放状態となっている場合は、ダンプトラック20は放土場62へも走行することができる。同様に、交差点69から放土場63への分岐路に対して作業エリア220、安全エリア230を設定することにより同様の閉塞制御を行うことができる。
【0121】
図17は、搬送路の幹線320に枝線330が合流しているときの作業エリアの設定例を示す図であって、(a)はオペレータの入力操作による作業エリアの位置を示し、(b)は、干渉制御部311dが実際に設定する作業エリアの位置を示し、(c)は、干渉制御部311dが実際に設定する作業エリアの他の例を示す。
【0122】
幹線上のノード300は、幹線320と枝線330とのそれぞれに設定された走行経路の合流点である。この場合、ノード300に幹線320上において隣接するノード302、302と、枝線330上において隣接するノード301と、を関連付けてマスタ地図情報DB316に格納しておく。
【0123】
オペレータが幹線
310にノード300を含む作業エリアを設定する入力操作を実行すると(
図17の(a)参照)、干渉制御部311dは、マスタ地図情報DB316を参照し、ノード300に関連付けられたノードをすべて含むように作業エリアを最終設定する。その結果、
図17の(b)では、幹線310上の作業エリアが枝線330のノード301まで延長される。これにより、枝線上にのみユーザが作業エリアを設定する操作をした場合には、干渉制御部311dはノード300に幹線上において隣接するノード301、302まで作業エリアを拡大する。
【0124】
本実施形態によれば、搬送路上にも作業エリアを設定しこれを閉塞・開放することにより、搬送路上における有人車両とダンプトラックとの干渉を回避することができる。更に、合流点がある場合には、作業エリアを合流する線に拡大して設定することで、合流する線からの無人車両の進入を抑止することができる。
【0125】
上記実施形態は、本発明の一実施形態を例示したものに過ぎず、本発明を限定するものではない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、さまざまな変更態様がありうる。
【0126】
例えば、第一実施形態で作業エリアは積込場を例としていたが、放土場においても同様の管制サーバを適用することができる。放土場においては、土砂の積込を行うショベルは存在しないが、積込場と同様にドーザや測量車などの有人車両が作業を行う必要がある。また、ダンプトラックは、ドーザや管制サーバからの指示で設定された放土位置に基づいて生成された走行経路を走行するので、それらの走行経路を含む作業エリアと、走行経路から隔離できる安全エリアを設けることにより、積込場と同様の作業エリアの閉塞・開放制御を行うことができる。
【0127】
また、上記実施形態では無人車両としてダンプトラックを例に挙げて説明したが、ダンプトラックに限らず、タンクローリーなどの運搬車両でもよく、無人車両及び有人車両の車両用途は上記に限定されない。また、有人車両、無人車両は車両に限定する意図ではなく、走行体であればよい。従って、有人車両には車輪を有さない有人作業機械を含み、無人車両も車輪を有さない無人作業機械を含む。
【0128】
更に第三実施形態では、合流点のノードに隣接するノードまで作業エリアを拡大したが、隣接するノードに限らず、それよりも更に合流点から離れたノードまで作業エリアを拡大してもよい。
【0129】
また第三実施形態で搬送路上に作業エリアを設定する他の処理例として、走行許可区間設定部311bが有人車両に対して走行許可区間を設定すると、干渉制御部311dがその走行許可区間に作業エリアを設定すると共に、その有人車両が走行する走行車線の対向車線のうち、設定された走行許可区間と平行な部分区間と上記設定された走行許可区間に上記作業エリアを拡大してもよい。
【0130】
また、上記実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。また上記実施形態に含まれる構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではなく、適宜省略できる場合がある。