【実施例】
【0041】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。ここに示された実施例は、本発明の実施態様の一例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1.合成シリカゲルを用いたSGPの精製―1>
脱脂卵黄粉(キユーピー(株))500gに水5Lを添加し、15分間よく撹拌した後、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
【0042】
得られた水抽出液にSYLOPUTE403(富士シリシア化学(株))250gを添加し、15分間よく攪拌した後、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
得られたろ液は1M−NaOHでpH9に調整し、よく攪拌した。30分間放置した後、セライト545(Imerys Minerals California,Inc.) 100gを添加し、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
【0043】
合成吸着樹脂としてSEPABEADS SP207SS(三菱化学(株))207mL(35Φx215mm)をカラムに充填し、該樹脂をアセトン、続いて水で洗浄後、20mM−Na
2HPO
4で平衡化した。
【0044】
上記で得られたろ液を平衡化した該樹脂に、流速50mL/分で付した。ろ液を付した該樹脂を、水2L流速50mL/分で洗浄後、2%アセトン水(v/v)流速25mL/分で展開し、溶出液を25mL毎に分画した。(溶出画分1乃至40)
溶出画分18乃至26を合わせて、凍結乾燥することで、764.4mgの糖ペプチドを得た。
【0045】
得られた糖ペプチドと標品(東京化成工業(株)製SGP)について
1H−NMR測定、LC/MS測定及び以下の条件によるHPLC分析を行った。標品のHPLC、LC/MS及び
1H−NMRによる測定結果を、それぞれ
図1、
図2及び
図3に示す。得られた糖ペプチドのHPLC、LC/MS及び
1H−NMRによる測定結果をそれぞれ
図4、
図5および
図6に示す。
【0046】
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、標品と同様のマススペクトル及び
1H−NMRスペクトルが得られたことから、上記式(I)及び式(II)で表されるSGPであることが確認された。また、HPLCの結果において、得られたSGPと標品との、SGPに帰属するピークの相対面積値比により、得られたSGPの純度は104%であった。
【0047】
[HPLC測定]
HPLC:1260 Infinity LC(Agilent Technologies,Inc.)
カラム:L−Column2 ODS 3μm φ3.0×50mm(科学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
移動相A:0.1%HCOOHを含むH
2O溶液(v/v)
移動相B:0.1%HCOOHを含むMeCN溶液(v/v)
グラジエント(移動相B%):0%(0分)、10%(5分)、30%(7分)、30%(8分)
流速:0.6ml/分
検出波長:210nm。
【0048】
[LC/MS測定]
MS:6130 Quadrupole LC/MS(Agilent Technologies,Inc.)
イオン化:ESI
モード:Positive
HPLC:1260 Infinity LC(Agilent Technologies,Inc.)
カラム:L−Column2 ODS 3μm φ3.0×50mm(科学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
移動相A:0.1%HCOOHを含むH
2O溶液(v/v)
移動相B:0.1%HCOOHを含むMeCN溶液(v/v)
グラジエント(移動相B%):0%(0分)、10%(5分)、30%(7分)、30%(8分)
流速:0.6ml/分
検出波長:210nm。
【0049】
[
1H−NMR測定]
NMR:AVANCE500(500MHz、ブルカー・バイオスピン(株))
溶媒:DEUTERIUM OXIDE+0.1%TMSP(euriso−top)。
【0050】
<実施例2.合成シリカゲルを用いたSGPの精製―2>
実施例1と同様の操作により、脱脂卵黄粉から糖ペプチドの精製を行ない、カラム溶出画分20乃至30を合わせて凍結乾燥することで、694.1mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、SGPであることが確認された。
【0051】
得られたSGPについて、実施例1と同じ条件でHPLC分析を行った(
図7)。このHPLCの結果から、実施例1と同様に純度を算出したところ、得られたSGPの純度は102%であった。
【0052】
<実施例3.多様な除タンパク剤のSGP精製への適用検討>
次に、様々な除タンパク剤、様々な一般的なろ過助剤、様々な添加剤のSGP精製への適用可能性について検討した。
本発明の精製方法においては、カラムクロマトグラフィーに供する溶液において、不純物、特に不要なタンパク質が除去され、且つ、SGPが残存していることが重要であるため、除タンパク剤等で処理した後の溶液中のタンパク質含量及びSGP回収率を指標とした検討を行った。
【0053】
脱脂卵黄粉中のタンパク質除去性能及びSGP回収率の検証
合成シリカゲル、合成シリカコロイド、一般的なろ過助剤、タンパク質凝固作用を持つ添加剤、及び、タンパク分解作用を持つ添加剤について、脱脂卵黄粉中のタンパク質に対するタンパク質除去性能を評価し、また、脱脂卵黄粉中のSGPに対する回収率を評価した。
【0054】
[添加剤]
合成シリカゲルとして、SYLOPUTE202(富士シリシア化学(株))、SYLOPUTE303(富士シリシア化学(株))、SYLOPUTE403(富士シリシア化学(株))、ミズカソーブA751C(水澤化学工業(株))、ミズカソーブC1(水澤化学工業(株))、ミズカソーブC6(水澤化学工業(株))、カープレックスBS−303(DSL.ジャパン(株))、カープレックスBS−306(DSL.ジャパン(株))、マイクロドKM−386P(KD Corporation)を使用した。
合成シリカコロイドとして、コポロック200(大塚食品(株))、コポロック300(大塚食品(株))、コポロック306(大塚食品(株))を使用した。
【0055】
一般的なろ過助剤として、セライト545(Imerys Minerals California,Inc.)、ファイブラセルBH−40(Imerys Minerals California,Inc.)、トプコパーライトNo.31(東興パーライト工業(株))、トプコパーライトNo.31(東興パーライト工業(株))を使用した。
タンパク質凝固作用を持つ添加剤として、タンニン酸(東京化成工業(株))を使用した。タンパク分解作用を持つ添加剤としてパパイン(和光純薬工業(株))を使用した。
【0056】
[方法]
脱脂卵黄粉(キユーピー(株))に対して10倍量の水を添加し(濃度100mg/mL)、15分間よく撹拌した後、FILTER PAPER No.2(東洋濾紙(株))でろ過を行なった。得られた脱脂卵黄水溶液はpH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8に調整した後、それぞれ10mLを分注した。
合成シリカゲル及び一般的なろ過助剤については、分注液に5%(w/v)添加し、室温で15分及び60分攪拌接触させた。
シリカコロイドについては、分注液に5%(v/v)添加し、室温で15分及び60分攪拌接触させた。
【0057】
タンニン酸については、分注液に1%(w/v)添加し、室温で15分及び60分攪拌接触させた。
パパインについては、分注液に1%(w/v)添加し、室温で15分及び60分攪拌接触、50度で20時間攪拌接触させた。
実験における攪拌は、全てレシプロ(往復)式シェーカーで行なった。
各処理試料は10,000rpm回転で5分遠心分離し、得られた上澄み液を回収し、以下の方法でタンパク質含有量の測定及びSGP回収率の測定を行った。結果を
図8〜
図13に示す。
【0058】
a)Bradford法[Bradford, M. M.,Anal. Biochem. 72:248-254 (1976)]によるタンパク質含量の測定
スタンダードと上澄み液をそれぞれ15μL分注し、発色液1.5mLをそれぞれに添加して、攪拌後、室温で10分以上保持して、測定した。なお、発色液にはCoomassie Protein Assay Reagent(Thermo Fisher Scientific,Inc.)を使用し、スタンダードには、BSA(牛血清アルブミン、Thermo Fisher Scientific,Inc.)を使用して、測定波長は吸光度595nmとした。結果は、脱脂卵黄水溶液のタンパク質濃度を100%としたときの相対タンパク質濃度(%)を図内に表示した。
【0059】
b)HPLCによるSGP回収率の測定
実施例1のHPLC条件により分析を行い、SGPのピーク面積値を測定した。同様に、脱脂卵黄水溶液及び各上澄み液各5μLをHPLCへ注入し、実施例1のHPLC条件により分析を行い、SGPのピーク面積値を測定した。SGPの回収率は、同様に、脱脂卵黄水溶液のSGPのピーク面積値を100%としたときの相対ピーク面積値(%)を図内に表示した。
【0060】
[結果]
図8〜10に示されるように、各種合成シリカゲルで処理した溶液においては、タンパク質濃度が低く、合成シリカが高い除タンパク効果を有することが示された。一方で、当該処理後溶液中のSGPの回収率は高く、SGPは合成シリカには吸着せず、溶液中に溶解していることが示された。また、これらの効果は、処理時の溶液のpHにより若干の影響を受け、酸性よりの条件において、除タンパク効果及びSGP回収率共に高い傾向がある。しかし、いずれの条件においても、処理後の溶液から高純度のSGPが精製できるものと考えられる。
【0061】
合成シリカコロイドによる処理の場合、
図11に示されるように、種類によって異なる傾向が示された。コポロック200では、一定の除タンパク効果とSGP回収率が示されており、いずれのpHにおいても高純度のSGPが精製できると考えられる。一方で、コポロック300、及び306では、pH3又は4付近では、十分な除タンパク効果とSGPの回収率が示されているが、pH6以上では、処理後溶液のタンパク質濃度が高いという結果であった。コロイド状の合成シリカにおいても、高い除タンパク効果を有することが示された。
【0062】
セライト545、ファイブラセルBH−40、各種パーライト等の一般的なろ過助剤では、
図12に示されるとおり、除タンパク効果が無いことが判明した。このことから、ろ過助剤として一般的なシリカの中でも、セライトのような天然シリカには除タンパク効果が無く、合成シリカを採用することにより、本発明の方法に用いられる添加剤において重要な性質である除タンパク効果が得られることが示された。
【0063】
合成シリカ以外の除タンパク効果が知られている、タンニン酸やパパインについては、
図13に示されるように、タンニン酸についてはpHによらず、一定の除タンパク効果とSGP回収率が示された。パパイン処理した場合、除タンパク効果、SGP回収率共にpHにより大きく変動し、酸性よりの条件が適切であることが示された。また、20時間のパパイン処理では、SGPの回収率が低下するため、処理時間は、数時間以下にすべきであり、15分〜60分程度が適切であると考えられる。
【0064】
<実施例4.合成シリカゲルを用いたSGPの精製―3>
脱脂卵黄粉(キユーピー(株))500gに水5Lを添加し、15分間よく撹拌した後、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
得られた水抽出液にミズカソーブA751C(水澤化学工業(株))250gを添加し、15分間よく攪拌した後、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
得られたろ液は1M−NaOHでpH9に調整し、よく攪拌した。30分間放置した後、セライト545(Imerys Minerals California,Inc.) 100gを添加し、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
【0065】
合成吸着樹脂としてSEPABEADS SP207SS(三菱化学(株))207mL(35Φx215mm)をカラムに充填し、該樹脂をアセトン、続いて水で洗浄後、20mM−Na
2HPO
4で平衡化した。
上記で得られたろ液を平衡化した該樹脂に、流速50mL/分で付した。ろ液を付した該樹脂を、水2L流速50mL/分で洗浄後、2%アセトン水(v/v)流速25mL/分で展開し、溶出液を25mL毎に分画した。(溶出画分1乃至40)
溶出画分17乃至22を合わせて、凍結乾燥することで、733.8mgの糖ペプチドを得た。
【0066】
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、SGPであることが確認された。得られたSGPについて、実施例1と同じ条件でHPLC分析を行い、純度を算出した(
図14、純度:98%)。
【0067】
<実施例5.合成シリカゲルを用いたSGPの精製―4>
実施例4と同様の操作により、脱脂卵黄粉から糖ペプチドの精製を行ない、カラム溶出画分17乃至22を合せて凍結乾燥することで、784.1mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、SGPであることが確認された。得られたSGPについて、実施例1と同じ条件でHPLC分析を行い、純度を算出した(
図15、純度:99%)。
【0068】
<実施例6.ODS系逆相樹脂を用いたSGPの精製>
脱脂卵黄粉(キユーピー(株))500gに水5Lを添加し、15分間よく撹拌した後、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
得られた水抽出液にミズカソーブA751C(水澤化学工業(株))250gを添加し、15分間よく攪拌した後、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
得られたろ液は1M−NaOHでpH6.5に調整し、よく攪拌した。30分間放置した後、セライト545(Imerys Minerals California,Inc.) 100gを添加し、フィルタープレス(薮田機械(株))でろ過を行なった。
ODS系逆相樹脂としてWakogel 100C18(和光純薬工業(株))192mL(35Φx200mm)をカラムに充填し、該樹脂をアセトニトリル、続いて水で洗浄後、20mM−HCOONH
4で平衡化した。
【0069】
上記で得られたろ液を平衡化した該樹脂に、流速50mL/分で付した。ろ液を付した該樹脂を、水2L流速50mL/分で洗浄後、1%アセト二トリル水(v/v)流速25mL/分で展開し、溶出液を25mL毎に分画した。(溶出画分1乃至14)さらに2%アセト二トリル水(v/v)流速25mL/分で展開し、溶出液を25mL毎に分画した。(溶出画分15乃至40)
溶出画分8乃至24を合わせて、凍結乾燥することで、565.6mgの糖ペプチドを得た。
【0070】
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、SGPであることが確認された。得られたSGPについて、実施例1と同じ条件でHPLC分析を行い、純度を算出した(
図16、純度:98%)。
【0071】
<実施例7.乾燥卵黄粉を用いたSGPの精製>
乾燥卵黄粉No.1(キユーピー(株))500gに水5Lを添加し、15分間よく撹拌した後、セライト545(Imerys Minerals California,Inc.) 1kgを添加し、吸引ろ過缶((株)スギヤマゲン)でろ過を行なった。
得られた水抽出液にミズカソーブA751C(水澤化学工業(株))250gを添加し、15分間よく攪拌した後、吸引ろ過缶((株)スギヤマゲン)でろ過を行なった。
得られたろ液は1M−NaOHでpH9に調整し、よく攪拌した。30分間放置した後、セライト545(Imerys Minerals California,Inc.) 100gを添加し、吸引ろ過缶((株)スギヤマゲン)でろ過を行なった。
【0072】
合成吸着樹脂としてSEPABEADS SP207SS(三菱化学(株))207mL(35Φx215mm)をカラムに充填し、該樹脂をアセトン、続いて水で洗浄後、20mM−Na
2HPO
4で平衡化した。
上記で得られたろ液を平衡化した該樹脂に、流速50mL/分で付した。ろ液を付した該樹脂を、水2L流速50mL/分で洗浄後、2%アセトン水(v/v)流速25mL/分で展開し、溶出液を25mL毎に分画した。(溶出画分1乃至40)
溶出画分18乃至21を合わせて、凍結乾燥することで、212.2mgの糖ペプチドを得た。
【0073】
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、SGPであることが確認された。得られたSGPについて、実施例1と同じ条件でHPLC分析を行ない、純度を算出した(
図17、純度:93%)。
【0074】
<参考例1.一般的なろ過助剤を用いたSGPの精製>
実施例4と同様の方法において、合成シリカゲル(ミズカソーブA751C)の代わりに、一般的なろ過助剤であるセライト545(Imerys Minerals California,Inc.)250gを用いて、カラム溶出画分14乃至24を合わせて、凍結乾燥することで、955.0mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドは
1H−NMR測定及びLC/MS測定による標品との比較により、SGPであることが確認された。得られたSGPについて、実施例1と同じ条件でHPLC分析を行い、純度を算出した(
図18、純度:83%)。
【0075】
実施例3に示されたように、セライト545は除タンパク効果を持たないため、本参考例においては、溶液中の不要なタンパク質が十分に除去されず、結果として、合成吸着剤による分離操作後であっても、除タンパク剤を用いた他の実施例と比較して、得られたSGPの純度が十分ではなかった。このことからも、高純度のSGPを得るためには、卵黄成分含有溶液を、除タンパク効果を有するろ過助剤と混合・分離することで、溶解液部の不要なタンパク質を十分に除去することが重要であることが示された。