(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、ナノピラー表面を製造する方法の実施の形態を詳しく参照する。最初に、例示の実施の形態において、そのような方法を、
図1A〜5Bを参照して、手短に記載する。次いで、その方法に関連する特別な特徴、その方法の実施に関与する構成部材および装置、その方法の最中に行われる工程、およびその方法を使用して達成できる結果を強調するために、ナノピラー表面を製造する方法の様々な実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
図1Aを参照すると、ナノピラー基体表面を複製するためのここに記載された方法は、レプリカ基体200のレプリカ−基体表面210にナノピラー形成材料を塗布して、レプリカ−基体表面210上に前駆体層220を形成する工程を含むことができる。その前駆体層へのナノマスク5の鋳型表面25。ナノマスク5は、ナノマスク基体10のナノマスク−基体表面15に自己組織化ポリマー層20を備えることができる。この鋳型表面25は、ナノマスク−基体表面15と反対の自己組織化ポリマー層20内に画成することができる。自己組織化ポリマー層20は、鋳型表面25の開口により複数の細孔30を中に画成することができる。
【0013】
図1Aおよび1Bを参照すると、鋳型表面25が前駆体層220と接触したままである間に、例えば、熱または紫外線などの硬化エネルギー300を印加することによって、前駆体層220を硬化させて、鋳型表面25とレプリカ基体200のレプリカ−基体表面210との間に硬化した前駆体層225を形成することができる。
【0014】
図1Bおよび1Cを参照すると、ナノマスク5を取り外して、レプリカ−基体表面210上に複数のナノピラー230を有するナノピラー表面215を露出することができる。ナノピラー表面215の複数のナノピラー230は、自己組織化ポリマー層20の鋳型表面25内の複数の細孔30に対応するであろう。この対応の実例として、
図2Aの走査型電子顕微鏡写真は、
図1A〜1Cに概略示されたナノマスク5などのナノマスクの鋳型表面を示しており、
図2Bの走査型電子顕微鏡写真は、
図1A〜1Cに概略示された方法の実施の形態と類似に、ナノマスクからのナノピラー表面を示している。
【0015】
図3A〜3Cを参照すると、レプリカ基体200の反対の表面210a、210b上にナノピラー表面215a、215bを複製する方法の実施の形態が概略示されている。
図3Aの概略図は、第1のレプリカ−基体表面210a上に第1の前駆体層220aを形成するために、レプリカ基体200の第1のレプリカ−基体表面210aに塗布された第1のナノピラー形成材料を示している。第2のレプリカ−基体表面210b上に第2の前駆体層220bを形成するために、第2のナノピラー形成材料が、第1のレプリカ−基体表面210aと反対のレプリカ基体200の第2のレプリカ−基体表面210bに塗布されている。
図3Aに第1のナノマスク5aも示されており、このナノマスクは、第1のナノマスク基体10aの第1のナノマスク−基体表面15a上に第1の自己組織化ポリマー層20aを備えることができる。第1の鋳型表面25aは、第1のナノマスク−基体表面15aの反対に第1の自己組織化ポリマー層20aに画成することができる。第1の自己組織化ポリマー層20aは、第1の鋳型表面25aの開口により複数の細孔30aを中に画成することができる。
図3Aに第2のナノマスク5bも示されており、このナノマスクは、第2のナノマスク基体10bの第2のナノマスク−基体表面15b上に第2の自己組織化ポリマー層20bを備えることができる。第2の鋳型表面25bは、第2のナノマスク−基体表面15bの反対に第2の自己組織化ポリマー層20bに画成することができる。第2の自己組織化ポリマー層20bは、第2の鋳型表面25bの開口により複数の細孔30bを中に画成することができる。
【0016】
図3Aおよび3Bを参照すると、第1のナノマスク5aの第1の鋳型表面25aを第1の前駆体層220aに接触させることができる。同様に、第2のナノマスク5bの第2の鋳型表面25bを第2の前駆体層220bに接触させることができる。
図3Bの実施の形態において、第1のナノマスク5aと第2のナノマスク5bは、それぞれ、第1の前駆体層220aと第2の前駆体層220bに同時に接触させられている。他の実施の形態において、第1のナノマスク5aを最初に施し、次に第1の前駆体層220bの硬化を行い、次いで、第2のナノマスク5bを施し、次に第2の前駆体層220bの硬化を行うことができる。さらに他の実施の形態において、第1のナノマスク5aを最初に施し、次に第1の前駆体層220bの硬化を行い、次いで、第1のナノマスク5aを第2のナノマスクとして再利用し、次に第2の前駆体層220bの硬化を行ってもよい。
【0017】
第1の鋳型表面25aが第1の前駆体層220aと接触したままである間に第1の前駆体層220aを硬化させて、第1の鋳型表面25aと第1のレプリカ−基体表面210aとの間に第1の硬化した前駆体層225aを形成することができる。同様に、第2の鋳型表面25bが第2の前駆体層220bと接触したままである間に第2の前駆体層220bを硬化させて、第2の鋳型表面25bと第2のレプリカ−基体表面210bとの間に第2の硬化した前駆体層225bを形成することができる。例示の実施の形態において、前駆体層220a、220bは、例えば、熱または紫外線の印加により硬化させることができる。
【0018】
図3Bおよび3Cを参照すると、第1のナノマスク5aを取り外して、第1のレプリカ−基体表面210a上に複数のナノピラー230を備えた第1のナノピラー表面215aを露出し、第2のナノマスク5bを取り外して、第2のレプリカ−基体表面210b上に複数のナノピラー230を備えた第2のナノピラー表面215bを露出することができる。第1のレプリカ−基体表面210a上の複数のナノピラー230は第1の鋳型表面25a内の複数の細孔30aに対応し(
図3A)、第2のレプリカ−基体表面210b上の複数のナノピラー230は第2の鋳型表面25b内の複数の細孔30bに対応するであろう(
図3A)。
【0019】
図4A〜4Cに概略示された実施の形態を参照すると、ナノピラー表面を複製するためのここの記載された方法は、ナノマスク5を調製する工程をさらに含むことができる。
図4Aに示されるように、ナノマスク5を調製する工程は、ナノマスク基体10のナノマスク−基体表面15にポリマー溶液100を塗布する工程を含むことができる。ポリマー溶液100は、疎水性ブロック112と親水性ブロック114とを有する両親媒性ブロックコポリマー110;両親媒性ブロックコポリマー110の親水性ブロック114と化学的に適合性である親水性ホモポリマー120;および塗布溶媒130を含有することができる。ポリマー溶液100中の両親媒性ブロックコポリマー110と親水性ホモポリマー120は、ナノマスク−基体表面15上で自己組織化して、自己組織化ポリマー層20を形成することができる。自己組織化は、塗布溶媒130が、例えば、蒸発によって除去されたときに、生じることができる。
【0020】
両親媒性ブロックコポリマー110と親水性ホモポリマー120の自己組織化が、
図4Bに示されている。自己組織化ポリマー層20は、ナノマスク−基体表面15に隣接した疎水性領域22およびナノマスク−基体表面15と反対の自己組織化ポリマー層20の鋳型表面25から自己組織化ポリマー層中に延在している親水性領域24を備えることができる。それによって、自己組織化過程により、疎水性領域22と親水性領域24との間に移行領域を形成することができ、この移行領域は、両親媒性ブロックコポリマー110の親水性ブロック114から製造されている。
【0021】
図4Bおよび4Cを参照すると、ナノマスク5を調製する工程は、親水性領域24の少なくとも一部を除去して、自己組織化ポリマー層20の鋳型表面25に複数の細孔30を形成する工程をさらに含むことができる。
図4Cに示されたものなどの多孔質表面構造の例が、
図5Aおよび5BのSEM顕微鏡写真に与えられている。次いで、
図4A〜4Cの実施の形態にしたがって調製されたナノマスク5の鋳型表面25は、
図1A〜1Cを参照して先に概略記載した方法にしたがって、レプリカ基体上の前駆体層と接触させることができる。あるいは、
図3A〜3Cを参照して先に概略記載した方法にしたがって、
図4A〜4Cの実施の形態にしたがって調製した多数のナノマスクを、レプリカ基体の両反対面の前駆体層に接触させることができる。
【0022】
ナノピラー基体表面を複製する方法の例示の実施の形態を手短に説明してきたが、ここで、例示の実施の形態に対する様々な実施の形態および改変をより詳しく説明する。特に、レプリカ基体の片面にナノピラー表面を複製する方法を記載する。しかしながら、ただ1つのレプリカ基体の両反対面のナノピラー表面の複製は、同時に、レプリカ基体の各面に複製を単に行うことにより(
図3A〜3Cにおけるように)、または上述したように、2つの異なるナノマスクを連続して使用するか、またはただ1つのナノマスクを連続して2回使用することにより、同様の方法を使用して行うことができる。
【0023】
いくつかの実施の形態によれば、ナノピラー基体表面を複製する方法は、レプリカ基体の少なくとも1つのレプリカ−基体表面にナノピラー形成材料を塗布して、そのレプリカ−基体表面上に前駆体層を形成する工程を含むことができる。レプリカ基体または少なくとも1つのレプリカ−基体表面は、以下に限られないが、金属、金属酸化物、ポリマー、シリカ、ガラスセラミック、セラミック、およびガラスを含む、ここに具体化した方法によりパターンを形成できるどの材料であってもよい。例示のガラスとしては、制限するものではないが、例えば、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、およびGorilla(商標)ガラス(ナトリウムのカリウムによるイオン交換によって強化されたアルカリ金属アルミノケイ酸ガラス)が挙げられる。いくつかの実施の形態において、レプリカ基体は、ガラス、ガラスセラミック、金属または金属酸化物を含むまたはそれからなることがある。いくつかの実施の形態において、レプリカ基体は、ガラスを含むか、またはガラス表面で被覆された非ガラス材料を含むことがある。いくつかの実施の形態において、レプリカ基体はガラスからなる。他の実施の形態において、レプリカ基体は、金属または金属酸化物を含むことがある。
【0024】
いくつかの実施の形態において、ナノピラー形成材料は、前駆体層として加熱されたもしくは硬化または反応させられたときに、レプリカ基体またはレプリカ−基体表面に結合できる材料を形成するどの化合物であってもよい。いくつかの実施の形態において、ナノピラー形成材料により形成された材料は、レプリカ基体または少なくとも1つのレプリカ−基体表面と同じ材料であってよい。他の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、ナノピラー形成材料により形成された材料が、レプリカ−基体表面から容易に分離しないナノピラーを生じるという条件で、レプリカ基体と同じ材料を形成する必要はない。他の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、固相または液相において、レプリカ基体またはレプリカ−基体表面自体と同じ材料であってもよい。例えば、ナノピラー形成材料が液相である場合、前駆体が自己組織化ポリマー層の鋳型表面に接触する前に、ナノピラー形成材料がレプリカ−基体表面から流れ去るのを防ぐために、その液体が十分に高い粘度を有することが有益であろう。例えば、ナノピラー形成材料が固相である場合、その材料が鋳型表面内の細孔に対して押し付けられたときにその材料を成形できるように、ナノピラー形成材料が十分に軟質であることが有益であろう。
【0025】
実施の形態において、例えば、基体または基体表面がケイ酸ガラスである場合、ナノピラー形成材料は、反応するかまたは物理的形状を変化させて、ケイ酸ガラスになれるポリシロキサンなどのどの液体または固体の化合物であってもよい。いくつかの実施の形態において、ナノピラー形成材料は、ポリシロキサンまたはシルセスキオキサンなどのケイ素含有有機化合物を含んでもよい。例えば、1つの実施の形態において、ナノピラー形成材料はポリジメチルシロキサン(PDMS)を含んでよく、これは、必要に応じて、適切な硬化剤と組み合わせてよい。他の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、アクリレート、アシルアミド、エポキシ、ポリウレタン、エステル、またはポリイミドなどの紫外線硬化性ポリマーまたは紫外線硬化性樹脂であってよい。例えば、1つの実施の形態において、ナノピラー形成材料は、ペルフルオロエーテルテトラアクリレート(PFETA)などのペルフルオロエーテルアクリレートを含んでよく、これは、紫外線照射を使用してPFETAを硬化させることのできる光開始剤と必要に応じて組み合わされる。さらに他の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、ケイ酸塩またはゾルゲル化学前駆体などの無機化合物を含んでもよい。実施の形態において、レプリカ基体はガラスであってよく、ナノピラー形成材料はポリジメチルシロキサンまたはペルフルオロエーテルテトラアクリレートであってよい。他の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、金属、金属酸化物、またはガラスの1種類以上の固相または液相有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、ナノピラー形成材料は、気相堆積によって堆積させることができる。他の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、例えば、スピンコーティングまたは浸漬被覆などの液相堆積によって堆積させてもよい。
【0026】
いくつかの実施の形態によれば、ナノピラー基体表面を複製する方法は、ナノマスクの鋳型表面を前駆体層に接触させる工程をさらに含むことができる。このナノマスクは、ナノマスク基体のナノマスク−基体表面上に自己組織化ポリマー層を備えることができる。この鋳型表面は、ナノマスク−基体表面と反対の自己組織化ポリマー層内に画成することができる。この自己組織化ポリマー層は、鋳型表面の開口により複数の細孔を中に画成することができる。鋳型表面を前駆体層に接触させる最中に、ナノマスクは、レプリカ−基体表面上にナノピラーを製造するためのナノ複製マスクとして使用される。いくつかの実施の形態において、鋳型表面は、前駆体層の材料がナノマスクの鋳型表面内の空隙領域または細孔を満たすほど十分な印加圧力で、ポリマー前駆体に押し付けることができる。いくつかの実施の形態において、鋳型表面内の複数の細孔は、約100nmから約200nmの平均細孔直径を有することがある。
【0027】
自己組織化ポリマー層の特徴および自己組織化ポリマー層として使用するのに適した材料が、ナノマスクを調製するための実施の形態に関して下記に記載されており、
図4A〜4Cを参照して先に要約して記載されている。一般に、ナノマスクの自己組織化ポリマー層は、自己組織化ポリマー層から親水性領域を除去することによって形成された細孔を有する鋳型表面を備えている。その親水性領域は、ナノマスク−基体表面上の両親媒性ブロックコポリマーと親水性ホモポリマーとの間の規則化(ordering)の結果として、自己組織化ポリマー層の自己組織化中に形成されたであろう。
【0028】
理論により拘束する意図はないが、自己組織化中に、両親媒性ブロックコポリマーが、個々のポリマー分子の疎水性端部が集まって疎水性領域を形成し、かつ個々のポリマー分子の親水性端部が方向を合わせ、それによって、親水性ホモポリマーに対して親和性の大きい親水性領域を形成するように、それ自体で整列すると考えられる。それゆえ、親水性ホモポリマーが、例えば、水またはアルコールなどの適切なエッチング液で選択的に除去されると、親水性ホモポリマーにより以前に占められていた自己組織化ポリマー層内の空間が、複数の細孔になる。親水性ホモポリマーは、鋳型表面にまたはその近くによりエネルギー的に有利に配置されることができるので、その親水性ホモポリマーを除去することによって形成された複数の細孔は、鋳型表面自体に開口を有することができる。実施の形態において、自己組織化ポリマー層中の複数の細孔は、自己組織化ポリマー層から親水性領域を除去することによって形成することができ、その親水性領域は、ナノマスク−基体表面上でポリスチレン−ブロック−ポリエチレンオキシド(PS−b−PEO)ブロックコポリマーとポリ(アクリル酸)とのポリマー混合物を自己組織化することによって生じさせることができる。そのような実施の形態において、自己組織化ポリマー層は、ブロックコポリマーの親水性ポリエチレンオキシド端部が複数の細孔の表面に集中するように配列されたPS−b−PEOブロックコポリマーから実質的になることがある。
【0029】
いくつかの実施の形態によれば、ナノピラー基体表面を複製する方法は、鋳型表面が前駆体層と接触したままである間に前駆体層を硬化させて、鋳型表面とレプリカ−基体表面との間に硬化した前駆体層を形成する工程をさらに含むことができる。この硬化工程により、前駆体層が、レプリカ−基体表面に結合する硬化した前駆体層であって、レプリカ基体またはレプリカ−基体表面のものと類似のまたは同一の材料特徴を有することがある硬化した前駆体層に転化される。例えば、1つの実施の形態において、レプリカ基体またはレプリカ−基体表面がガラスである場合、硬化した前駆体層もガラスであってよい。
【0030】
いくつかの実施の形態において、前駆体層を硬化させる工程は、前駆体層を、使用されるナノピラー形成材料に応じた硬化温度に加熱する工程を含むことができる。例えば、1つの実施の形態において、ナノピラー形成材料はPDMSであり、レプリカ−基体表面上のPDMSの前駆体層を硬化させる工程は、PDMSを硬化させ、PDMSをレプリカ−基体表面に結合できるほど十分な硬化時間に亘り、約40℃から約80℃、例えば、約50℃の硬化温度に前駆体層を加熱する工程を含むことができる。PDMSについて、50℃での適切な硬化時間は、例えば、前駆体層の厚さに応じて、約6時間から約24時間であろう。
【0031】
他の実施の形態において、前駆体層を硬化させる工程は、前駆体層を紫外線放射に曝露する工程を含むことができる。例えば、いくつかの実施の形態において、ナノピラー形成材料は紫外線硬化性ポリマーであってよい。この紫外線硬化性ポリマーを硬化させる工程は、紫外線硬化性ポリマーを硬化させ、紫外線硬化性ポリマーをレプリカ−基体表面に結合させることのできるように適切な波長と強度の紫外線放射に紫外線硬化性ポリマーを曝露する工程を含むことができる。例示の実施の形態において、ナノピラー形成材料は、必要に応じて光開始剤と混合されたPFETAであってよく、よって、PFETAと光開始剤を紫外線放射に曝露して、PFETAを硬化させ、レプリカ−基体表面に結合させる。実施の形態において、ガラスなどのレプリカ−基体表面上にPFETAを硬化させるための適切な条件は、PFETAを、例えば、1分から2時間に亘り、約1500mJ/cm
2のエネルギーを有する紫外線放射に曝露する工程を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施の形態によれば、ナノピラー基体表面を複製する方法は、ナノマスクを除去して、レプリカ−基体表面上に複数のナノピラーを備えたナノピラー表面を露出する工程をさらに含むことができる。レプリカ−基体表面上の複数のナノピラーは、鋳型表面内の複数の細孔に対応するであろう。それによって、ナノマスクの鋳型表面の細孔構造は、レプリカ−基体表面上のナノピラー表面構造としてネガに複製される。
【0033】
前駆体層が一旦硬化されたら、ナノマスクは、ナノマスク基体上の自己組織化ポリマー層の鋳型表面から、その上の硬化した前駆体層と共にレプリカ基体を剥がすことによって、除去することができる。複数のナノピラーは、ここの実施の形態による方法中に使用される加工パラメータに応じて異なる高さを有するであろう。いくつかの実施の形態において、複数のナノピラーは、例えば、約50nmから約150nmに及ぶナノピラー高さを有することができる。いくつかの実施の形態において、ナノピラー基体表面は、疎水性であってよく、例えば、110°より大きい水接触角を示すことがある。
【0034】
いくつかの実施の形態において、ナノピラー基体表面に、可視光に対する反射防止特性または疎水性などの性質を高めることがある後処理を1つ以上施してもよい。ナノピラー基体表面の高められた疎水性は、指紋による汚れなどの汚れに対する表面の耐性を増加させるであろう。いくつかの実施の形態において、その後処理は、ナノピラー基体表面の酸素プラズマによる処理を含むことができる。酸素プラズマ中での後処理により、ナノピラーの高さの均一性が増し、ナノピラー基体表面の反射防止特性および防汚特性の両方が増すであろう。いくつかの実施の形態において、特にガラス基体に適用できる、後処理としては、ナノピラー基体表面の疎水性を増すための、ナノピラー基体表面のフルオロシラン化合物による被覆を含むことができる。
【0035】
いくつかの実施の形態によれば、ナノピラー基体表面を複製する方法は、複製に使用されるナノマスクを調製する工程も含むことができる。ナノマスクを調製する工程は、ナノマスク基体のナノマスク−基体表面にポリマー溶液を塗布する工程を含むことができる。このナノマスク基体は、下記に記載されるポリマー溶液に化学的に適合した表面を有するどの基体であってもよく、それにより、ポリマー溶液がナノマスク基体の表面に塗布されたときに、そのポリマー溶液の成分が自己組織化して、ナノマスク−基体表面上に表面構造を形成するために別々に独立して処理または操作できる疎水性領域と親水性領域を形成する。
【0036】
いくつかの実施の形態において、ナノマスク基体は、以下に限られないが、金属、金属酸化物、ポリマー、シリカ、ガラスセラミック、セラミック、およびガラスを含む、ここに具体化された方法によってパターンを形成できる材料から選択することができる。例示のガラスとしては、制限するものではなく、例えば、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、および「Gorilla」ガラス(ナトリウムのカリウムによるイオン交換によって強化されたアルカリ金属アルミノケイ酸ガラス)が挙げられる。いくつかの実施の形態において、ナノマスク基体は、ガラス、ガラスセラミック、金属または金属酸化物を含むまたはそれからなることがある。いくつかの実施の形態において、ナノマスク基体は、ガラスまたはガラス表面を含むことがある。いくつかの実施の形態において、ナノマスク基体はガラスからなる。他の実施の形態において、ナノマスク基体は、金属または金属酸化物を含むことがある。
【0037】
ナノマスク−基体表面に塗布されるポリマー溶液は、疎水性ブロックと親水性ブロックとを有する両親媒性ブロックコポリマー、その両親媒性ブロックコポリマーの親水性ブロックと化学的に適合性である親水性ホモポリマー、および塗布溶媒を含有することができる。
【0038】
いくつかの実施の形態による両親媒性ブロックコポリマーは、ポリマーブロックから形成される。各両親媒性ブロックコポリマーのポリマーブロックは、疎水性ブロックと親水性ブロックを含む。それゆえ、ここに具体化されたブロックコポリマーは、疎水性区域と親水性区域を含むことができる。疎水性区域は、以下に限られないが、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリアルキレン、またはポリブタジエンなどの疎水性部分を含む。いくつかの実施の形態において、疎水性ブロックはポリスチレンを含むことができる。親水性区域は、以下に限られないが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、またはポリエチレンオキシド等のポリアルキレンオキシドなどの親水性部分またはオリゴマーを含むことができる。いくつかの実施の形態において、親水性区域はポリエチレンオキシドを含む。1つの実施の形態において、疎水性区域はポリスチレンを含むことができ、親水性区域はポリエチレンオキシドを含むことができる。
【0039】
基体表面上に自己組織化ポリマー層を形成するために使用できる両親媒性ブロックコポリマーの特定の非限定的例としては、ポリスチレン−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PS−b−PMMA)、ポリスチレン−ブロック−ポリイソプレン(PS−b−PI)、ポリスチレン−ブロック−ポリブタジエン(PS−b−PBD)、ポリスチレン−ブロック−ポリビニルピリジン(PS−b−PVP)、ポリスチレン−ブロック−ポリエチレンオキシド(PS−b−PEO)、ポリスチレン−ブロック−ポリエチレン(PS−b−PE)、ポリスチレン−ブロック−ポリ有機シリケート(PS−b−POS)、ポリスチレン−ブロック−ポリフェロセニルジメチルシラン(PS−b−PFS)、ポリエチレンオキシド−ブロック−ポリイソプレン(PEO−b−PI)、ポリエチレンオキシド−ブロック−ポリブタジエン(PEO−b−PBD)、ポリエチレンオキシド−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PEO−b−PMMA)、ポリエチレンオキシド−ブロック−ポリエチルエチレン(PEO−b−PEE)、ポリブタジエン−ブロック−ポリビニルピリジン(PBD−b−PVP)、ポリビニルピリジン−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PVP−b−PMMA)、ポリスチレン−ブロック−ポリブタジエン(PS−b−PBD)、およびポリイソプレン−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PI−b−PMMA)が挙げられる。実施の形態において、両親媒性ブロックコポリマーは、ポリスチレン疎水性ブロックおよびポリエチレンオキシド親水性区域を有するポリスチレン−ブロック−ポリエチレンオキシド(PS−b−PEO)ブロックコポリマーを含むことができる。
【0040】
ここでの実施の形態に使用するのに適した両親媒性ブロックコポリマーの例示の部類としては、以下に限られないが、直線ジブロック、トリブロック、およびマルチブロックコポリマー、星型コポリマー、およびグラフトコポリマーが挙げられる。理論により拘束する意図はないが、所定のブロックコポリマー系において、ブロックの相対鎖長により、ナノマスク−基体表面上に形成されるであろう自己組織化ポリマー層の結果としてのモルホロジーが決まると考えられる。いくつかの実施の形態において、両親媒性ブロックコポリマーは実質的に単分散であってよい。特に、そのような実施の形態において、両親媒性ブロックコポリマーは、1.00から約1.20、または約1.02から約1.15、または約1.02から約1.10の多分散性指数を有することができる。両親媒性ブロックコポリマーの多分散性指数は、両親媒性ブロックコポリマーの比M
W/M
Nを指し、ここで、M
Wは両親媒性ブロックコポリマーの重量平均分子量であり、M
Nは両親媒性ブロックコポリマーの数平均分子量である。
【0041】
いくつかの実施の形態において、疎水性ブロックは、両親媒性ブロックコポリマーの総質量に基づいて、両親媒性ブロックコポリマーの約60質量%から約98質量%、または約75質量%から約98質量%を構成することができる。いくつかの実施の形態において、両親媒性ブロックコポリマーは、約100,000ダルトンから約500,000ダルトンの数平均分子量(M
N)を有することができる。両親媒性ブロックコポリマーの非限定的実例の組成物は、例えば、105,000−b−3,000;150,000−b−35,000;225,000−b−26,000;または384,000−b−8,000のM
Nを有するPS−b−PEOを含むことができる。これらの実例の組成物は、さらに、実質的に単分散であってよく、多分散性指数は、例えば、約1.00から約1.20である。
【0042】
前記ポリマー溶液は、両親媒性ブロックコポリマーの親水性ブロックと化学的に適合した親水性ホモポリマーをさらに含む。両親媒性ブロックコポリマーの親水性ブロックとの親水性ホモポリマーの化学的適合性により、自己組織化ポリマー層において親水性ホモポリマーの親水性領域が形成されることがある。何故ならば、親水性ホモポリマーは、両親媒性ブロックコポリマーの親水性ブロックに対する化学的親和性を維持し、それによって、自己組織化ポリマー層のモルホロジーに影響することがあるからである。
【0043】
非限定的実施の形態において、親水性ホモポリマーは、例えば、ポリ(アクリル酸)を含むことができる。特に、両親媒性ブロックコポリマーの親水性ブロックがポリエチレンオキシドである実施の形態において、ポリ(アクリル酸)親水性ホモポリマーは、ポリエチレンオキシドとの高レベルの化学的親和性を有すると考えられ、よって、親水性ホモポリマーの親水性領域が自己組織化ポリマー層内で容易に形成する。
【0044】
いくつかの実施の形態において、親水性ホモポリマーは、約2000ダルトンから約30,000ダルトンの数平均分子量(M
N)を有することができる。それにもかかわらず、親水性ホモポリマーは、2000ダルトン未満または30,000ダルトン超の数平均分子量(M
N)を有することもあると考えられる。いくつかの実施の形態において、親水性ホモポリマーは、実質的に単分散であってよい。特に、そのような実施の形態において、親水性ホモポリマーは、1.00から約1.20、または約1.02から約1.15、または約1.02から約1.10の多分散性指数を有することができる。非限定的実施の形態において、親水性ホモポリマーは、約2000ダルトンから約30,000ダルトンまたは約5000ダルトンから約27,000ダルトンの数平均分子量を有し、約1.05から約1.15の多分散性指数を有するポリ(アクリル酸)を含むことができる。
【0045】
理論により拘束することを意図しないが、ポリマー溶液中の両親媒性ブロックコポリマー対親水性ホモポリマーの質量比は、自己組織化ポリマー層のモルホロジー、親水性領域を除去することによって形成されるであろう細孔のサイズ、または自己組織化ポリマー層の鋳型表面上の細孔の面積分率の1つ以上に影響するであろうと考えられる。いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液中の両親媒性ブロックコポリマー対親水性ホモポリマーの質量比は、約1:1から約10:1、例えば、約1.5:1から約10:1、約2:1から約9:1、または約2:1から約5:1、または約2:1から約4:1である。いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液中の両親媒性ブロックコポリマー対親水性ホモポリマーの質量比を増加させると、より小さく、自己組織化ポリマー層の鋳型表面のより小さい面積分率を示す親水性領域を形成することができる。
【0046】
ポリマー溶液は塗布溶媒をさらに含むことができる。いくつかの実施の形態において、塗布溶媒は、両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマーの両方を少なくともある程度溶解させるどの溶媒であってもよい。いくつかの実施の形態において、塗布溶媒は、両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマーの両方をポリマー溶液へと完全に溶解させるように、十分な量で使用されるどの溶媒であってもよい。特に、スピンコーティングまたは浸漬被覆などの堆積技法を用いた場合、両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマーの溶解レベルは、ポリマー溶液の塗布厚における均一性に関連するであろうと考えられる。ここでの実施の形態における例示の塗布溶媒としては、制限するものではなく、トルエン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アセトン、またはベンゼンなどの有機溶媒が挙げられる。実施の形態において、塗布溶媒は、テトラヒドロフランを含むか、またはそれからなることができる。
【0047】
いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液の質量パーセントとしての塗布溶媒の量は、ポリマーの分子量に依存するであろう。いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液は、ポリマー溶液の総質量に基づいて、約0.02質量%から約4質量%の全ポリマー(両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマー)を含有することができ、残りの96質量%から99.98質量%は塗布溶媒である。
【0048】
例示の実施の形態において、ポリマー溶液は、基体をポリマー溶液で被覆するためのどの適切な方法によって、ナノマスク−基体表面に塗布されてもよい。例えば、ポリマー溶液は、スピンコーティングまたは浸漬被覆によって、ナノマスク−基体表面に塗布することができる。他の実施の形態において、ポリマー溶液は、吹き付け塗装、ロール塗布により、またはスクリーン印刷などの印刷プロセスによって塗布してもよい。いくつかの実施の形態において、ポリマー溶液は、例えば、塗布より前に、両親媒性ブロックコポリマー、親水性ホモポリマーおよび塗布溶媒を一緒に混合して、混合物を形成することによって、調製することができ、よって、その混合物がナノマスク−基体表面に塗布される。他の実施の形態において、両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマーは、1種類以上の塗布溶媒中に別々に溶解させて、2つの別個の溶液を形成することができる。次いで、別個の溶液の各々を、以下に限られないが、上述したものを含む任意の適切な技法によって、任意の順序でナノマスク−基体表面に塗布してもよい。
【0049】
ポリマー溶液中の両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマーは、ナノマスク−基体表面上で自己組織化して、自己組織化ポリマー層を形成することができる。いくつかの実施の形態において、塗布溶媒は、穏やかな加熱の有無にかかわらずに、蒸発により除去されるので、自己組織化は補助なしに生じる。両親媒性ブロックコポリマーおよび親水性ホモポリマーの組合せにより、ナノマスク基体上に二成分高分子構造が形成される。いくつかの実施の形態において、その二成分高分子構造は、一成分の連続相および他成分の分散相を含む。いくつかの実施の形態において、分散相は、ブロックコポリマーまたはホモポリマーいずれかを含む柱状構造などの1つ以上の三次元構造を含む。いくつかの実施の形態において、分散相は1種類以上の均質ポリマーを含むことができ、連続相はブロックコポリマーを含むことができる。他の実施の形態において、分散相は1種類以上のブロックコポリマーを含むことができ、連続相はホモポリマーを含むことができる。いくつかの実施の形態において、分散相は、ブロックコポリマーの疎水性領域を含むことができ、親水性基は、疎水性領域に近接した親水性領域中に集中しており、よって、ブロックコポリマーの親水性端部は、親水性領域に面するように並んでいる。いくつかの実施の形態において、1つ以上の親水性領域は、前記高分子構造によって形成された膜の表面に集中している。いくつかの実施の形態において、1つ以上の親水性領域は、ナノマスク−基体表面に集中している。
【0050】
いくつかの実施の形態において、前記二相は非混和性である。いくつかの実施の形態において、それらの二相はエマルションを形成する。いくつかの実施の形態において、そのエマルションは不安定エマルションである。いくつかの実施の形態において、その不安定エマルションは、前記高分子構造により形成される膜の表面に分散相を集中させる。いくつかの実施の形態において、その不安定エマルションは、ナノマスク基体上に分散相を集中させる。
【0051】
前記分散相に形成された親水性領域の領域サイズは、約50nmから約400nm、または約100nmから約300nm、または約100nmから約250nmまで様々であってよい。いくつかの実施の形態において、その親水性領域は、約120nmから約250nmの平均直径を有することができる。それらの親水性領域は、連続相中に均一に分散されることも、もしくは自己組織化ポリマー層の鋳型表面またはナノマスク−基体表面上かその近くに集中することもある。いくつかの実施の形態において、親水性領域は、自己組織化ポリマー層の鋳型表面に集中することがある、自己組織化ポリマー層の鋳型表面のある面積分率を示すであことがある。いくつかの実施の形態において、自己組織化ポリマー層は、ナノマスク−基体表面に隣接した疎水性領域およびナノマスク−基体表面と反対の自己組織化ポリマー層の鋳型表面から自己組織化ポリマー層中に延在する親水性領域を備えることができる。前記面積分率は、鋳型表面の総表面積に基づいて、親水性領域からなる面積を有する鋳型表面の分率を記載することができる。実施の形態において、自己組織化ポリマー層の鋳型表面は、約5%から約60%、または約10%から約50%、または約10%から約40%、または約20%から約40%、または約20%から約30%の親水性領域の面積分率を有することができる。
【0052】
ナノマスクを調製する工程は、親水性領域の少なくとも一部を除去して、自己組織化ポリマー層の鋳型表面に複数の細孔を形成する工程をさらに含むことができる。いくつかの実施の形態において、複数の細孔を形成するために除去される親水性領域は、自己組織化ポリマー層の鋳型表面またはその近くに集中してよい。いくつかの実施の形態において、親水性領域は、反応性イオンエッチングなどの物理的技法によって除去することができる。他の実施の形態において、親水性領域は、水またはメタノール、エタノール、プロパノール、またはイソプロパノール等のアルコールなどの極性溶媒中の選択的エッチングまたは洗浄などの湿式化学技法によって除去してもよい。実施の形態において、親水性領域は、例えば、2分から10分のエッチング期間に亘り、水またはエタノール中で自己組織化ポリマー層を選択的にエッチングすることによって、除去することができる。
【0053】
1つ以上のブロックコポリマー成分を化学修飾して、そのエッチング速度を変えるために、選択的化学的性質も使用してよい。1つ以上のブロックコポリマーを選択的に、化学修飾するための様々な手段が公知である。例えば、PI−PSまたはPB−PSのポリイソプレン(IP)またはポリブタジエン(PB)成分は、ジエン炭素−炭素二重結合に四酸化オスミウムを置く強い汚染剤である、四酸化オスミウムの蒸気により選択的に修飾することができる。この重金属は、10:1のCF
4:O
2プラズマにおいてジエン成分のエッチング速度を減少させる。それによって、PSは、PBまたはPI成分の2倍の速さでエッチングされ、そのパターンがナノマスク基体に転写される。このように、いくつかの実施の形態において、親水性領域、両親媒性ブロックコポリマーの親水性ブロック、両親媒性ブロックコポリマーの疎水性ブロック、または自己組織化ポリマー層の任意の疎水性領域の1つ以上を選択的に除去するために、選択的なエッチング化学的性質を使用してもよいと考えられる。
【0054】
いくつかの実施の形態において、複数の細孔は、両親媒性ブロックコポリマー、親水性ホモポリマー、塗布溶媒、または自己組織化ポリマー層の親水性領域を除去するために使用されるエッチング液の1つ以上の選択に基づいて、サイズまたは直径、密度(気孔率)、深さ、または細孔間の距離が様々であってよい。例えば、いくつかの実施の形態において、複数の細孔は、約50nmから約500nmの細孔サイズ、約50nmから約200nmの細孔深さ、約50nmから約500nmの細孔間の距離を有するように形成することができる。いくつかの実施の形態において、鋳型表面の複数の細孔は、約100nmから約200nmの平均細孔直径を有する。いくつかの実施の形態において、鋳型表面の複数の細孔は、50%未満、例えば、約10%から約40%、約15%から約35%、または約20%から約35%の鋳型表面の細孔の表面積分率を画成する。複数の細孔が一旦形成されたら、自己組織化ポリマー層は、例えば、約5%から約50%の気孔率を有することができる。いくつかの実施の形態において、親水性領域は、自己組織化ポリマー層において実質的に円柱状のモルホロジーを有することができ、よって、親水性領域を除去することによって形成された複数の細孔は、実質的に円柱状であり、ナノマスク−基体表面に対して垂直またはほぼ垂直に向けることもできる。
【0055】
このように、ナノピラー表面を複製する方法の実施の形態を記載してきた。様々な実施の形態による方法では、基体表面上にナノピラー構造を形成するためのナノマスクとして自己組織化ポリマー層を使用する。ここに具体化されは方法では、使用される材料が最小であり、高処理量で高速であり、加工費が安い。ガラス基体上にナノピラー基体表面を形成できるここでのいくつかの実施の形態において、大きい窓硝子または大面積テレビスクリーンを被覆するために必要なことがあるように、高品質、均質、欠陥のないナノピラー表面を形成することができる。さらに、ここに記載したように、ナノピラーの表面密度および直径は、様々な商業用途にとって、そのいずれも望ましいであろう、抗湿潤特性、防汚特性、反射防止特性、および光散乱特性を達成するために、最適化することができる。
【実施例】
【0056】
ここに記載した実施の形態を、以下の実施例によって、さらに明白にする。
【0057】
実施例1
ポリマー材料
ナノマスク製造プロセスに使用したポリマー材料が表1に列挙されている。これらの材料は、加国、モントリオール所在のPolymer Source Incorporationより購入した。略語PS−b−PEOは、ポリスチレンとポリエチレンオキシドのブロックコポリマーを指す。略語PAAは、ポリ(アクリル酸)を指す。全てのポリマーは、リビングアニオン重合により形成した。このPS−b−PEOブロックコポリマーの数平均分子量は、「X−b−Y」の形態で与えられ、ここで、Xは分子量に対するポリスチレンブロックの寄与を指し、Yは分子量に対するポリエチレンオキシドブロックの寄与を指し、X+Yは合計の数平均分子量を指す。例えば、105−b−3の数平均分子量は、108,000ダルトンの合計の数平均分子量を有するPS−b−PEOブロックコポリマーを指し、この内の105,000ダルトンはポリスチレンブロックにより与えられ、3,000ダルトンはポリエチレンオキシドブロックにより与えられる。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2
ポリマー溶液
ポリマー溶液は、PS−b−PEOをPAAと混合し、これらのポリマーをTHF溶液中に溶解させることによって調製する。必要に応じて、ポリマーを溶解させるために、サンプルを60℃に加熱してもよい。ポリマーの分子量および所望の膜厚に応じて、合計ポリマー濃度は約0.02質量%から約4質量%である。次いで、ガラス表面への堆積の準備をするために、ポリマー溶液を0.2μmのシリンジフィルタで濾過してもよい。
【0060】
実施例3
ポリマー膜
実施例2で調製したポリマー溶液を塗布する前に、2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)のガラス基体をアセトンとイソプロピルアルコールで洗浄する。このガラス表面は、この迅速な自己組織化と配向膜プロセスのためにどのような前処理も必要ない。ポリマーナノマスク膜は、約40秒の合計時間で200rpm/sから1000rpm/sの加速度で、1000rpmから3000rpmのスピンコーティングプロセスによって、指定の室温(25℃±3℃)で調製する。あるいは、浸漬被覆を使用してもよい。
【0061】
実施例4
ポリマーナノマスクの形成
ポリマー膜が一旦塗布されたら、ポリマー溶液は自己組織化して、ポリ(アクリル酸)の円柱状親水性領域を有する表面を形成する。ポリマーナノマスクは、例えば、2分間から10分間に亘りポリマー膜の円柱形態を水またはエタノールなどの極性溶媒で選択的にエッチングし、それに続いて、例えば、強制空気流によりポリマー膜を乾燥させることによって、製造することができる。
【0062】
例示の系において、ポリスチレン−ブロック−ポリエチレンオキシドPS−b−PEOが両親媒性ブロックコポリマーとして使用され、ポリ(アクリル酸)(PAA)が親水性モノマーとして使用される。両親媒性ブロックコポリマーPS−b−PEOは、一連の2つのタイプのブロック:疎水性ポリスチレンブロックおよび親水性ポリエチレンオキシドブロックを含有する。ポリアクリル酸は、親水性と水溶性の両方である。塗布溶媒としてのTHF中でPS−b−PEOとPAAを混合して、ポリマー溶液を形成した後、このポリマー溶液を、スピンコーティングまたは浸漬被覆して、塗布溶媒の除去後にポリマー薄膜を形成することができる。溶媒除去プロセス中、そのポリマー系は、疎水性PS領域と親水性PAA領域に相分離することがあり、一方で、PEO領域はPSとPAAとの間に挟まれたままであり、これらの2つの不適合区域の非混和性を増す。PAAは水溶性であるので、PAAは、水またはエタノール浸漬によって、容易に溶解させて、PAA領域を除去することができる。PAAが一旦除去されたら、多孔質ポリマーナノマスクが残る。
【0063】
7部の化合物A2対3部の化合物B1の混合質量比でTHF中に化合部A2およびB1の2質量%ポリマー溶液をスピンコーティングすることによって、ナノマスクサンプルを作製した。スピンコーティングと相分離の直後に、PAAが、約40nmのわずかに窪んだ浅い構造の円形領域を形成した。親水性領域のサイズは50nmから300nmに及び、160nmが平均細孔径であった。円柱状領域の面積分率は30.8%であり、これは、ポリマー溶液中のPAAの質量比に近かった。エタノール浸漬でPAAをエッチングにより除去した後、より大きい深さ(約90nm)の円柱状孔が形成され、その領域のサイズは50nmから350nmに及んだ。エッチング後の平均細孔径は214nmに増加した。
【0064】
図5Aおよび5Bは、PAA除去後のポリマーマスクの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。これらの画像に示されたサンプルは、7部の化合物A4対3部の化合物B3の混合質量比でTHF中に化合物A4およびB3の2質量%ポリマー溶液をスピンコーティングすることによって、作製した。そのSEM画像から、円柱状孔領域が、欠陥なく均一に分布したことが明白である。円柱状領域が、自己組織化ポリマー層の露出された上面から底部のガラス表面まで及ばなかったこと、並びに上層の円柱状孔の下に他の層状構造が存在したことに留意した。
【0065】
ナノマスクの外形は、所望の反射防止特性および防汚特性を達成するために調整することができる。それでも、ポリマーの混合比およびポリマーの分子量を調節することによって、細孔径と細孔面積分率の制御により、ナノマスク技法を調整することができることが示された。
【0066】
例えば、表2は、両親媒性ブロックコポリマーと親水性ホモポリマーの混合比の影響を示している。表2に示されたサンプルの各々は、4つの異なる混合質量比で、すなわち、9:1、8:2、7:3、および6:4で、THF中の化合物A2(M
Nが150,000−b−35,000のPS−b−PEO)および化合物B1(M
Nが5,700のPAA)の2質量%ポリマー溶液をスピンコーティングすることによって作製した。PAA組成分率が10%から40%に増えるにつれて、平均細孔径が141nmから277nmに増加し、PAA領域の面積分率が12.8%から39.8%に増加したのが観察された。
【0067】
【表2】
【0068】
親水性ホモポリマーの分子量の影響が、表3のデータから明白である。両親媒性ブロックコポリマーは化合物A4(M
Nが375,000−b−8,000のPS−b−PEO)であり、親水性ホモポリマーが化合物B1(M
Nが5,700のPAA)および化合物B3(M
Nが14,000のPAA)であった。これらのサンプルは、7:3のブロックポリマー対ホモポリマーの混合比でのTHF溶液中の2質量%ポリマー溶液から作製した。そのデータは、ホモポリマーPAAの分子量が14,000から5,700に減少したときに、平均細孔径は495nmから241nmに減少し、一方で、面積分率は同様のままであったことを示している。
【0069】
【表3】
【0070】
実施例5
レプリカ成形マスクとしてのポリマーナノマスク
上述したように製造したポリマーナノマスクを、ガラス表面上にナノピラー構造を製造するためのレプリカ成形マスクとして使用した。ナノピラー構造は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはペルフルオロエーテルテトラアクリレート(PFETA)から選択されるピラー形成材料を使用して形成した。レプリカ−基体表面上にナノピラーを複製するための一般工程段階が、
図1A〜1C(基体の片面上のナノピラーの複製)および
図3A〜3C(基体の2つの反対面上のナノピラーの複製)の略図を参照して先に記載されている。
【0071】
PDMS複製を使用してナノピラーを形成するために、30gのPDMSプレポリマーおよび3gの硬化剤(RTV615、GE Siliconesから入手できる透明液体シリコーンゴム)を10:1の質量比で完全に混合し、真空中で脱気して、気泡を除去する。次いで、PDMSプレポリマー混合物の0.5g分を、ナノマスクパターンを転写する用意のために、2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)のコーニング2318ガラス表面上に注ぐ。裏板としてガラス基体を使用して、先の実施例4に記載したように調製したポリマーナノマスクをプレポリマーに施し、そのプレポリマーを12時間に亘り50℃のオーブン内で硬化させる。硬化後、ポリマーナノマスクを、架橋したPDMSから剥がす。
【0072】
コーニング2318ガラスの両面にPDMSピラーを形成するために、コーニング2318ガラスを、2つのポリマーナノマスクの間に挟んでもよく、それによって、コーニング2318ガラスとナノマスクとの間の空間にPDMSプレポリマーが満たされる。それによって、ポリマーナノマスクの熱硬化と除去後、PDMSピラーのナノピラーが、コーニング2318ガラスの両面に存在する。
【0073】
PFETA複製を使用してナノピラーを形成するために、ペルフルオロエーテルテトラアクリレート(M
W=2600、Clariantから入手できる)および1質量%の光開始剤(Darocur(登録商標)D1173、Ciba Specialty Chemicalsから入手できる、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を完全に混合する。次いで、PFETA前駆体混合物の0.5g分を、ナノマスクパターンを転写する用意のために、2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)のコーニング2318ガラス表面上に施す。裏板としてガラス基体を使用して、先の実施例4に記載したように調製したポリマーナノマスクをプレポリマーに施し、そのプレポリマーを、1522mJ/cm
2の出力を有するキセノンパルス式紫外線ランプからの紫外線放射に曝露する。このポリマーを、1522mJ/cm
2の出力でUVフュージョンベルトでさらに紫外線硬化させる。この紫外線硬化は、窒素パージ下で行う。硬化が完了したときに、ポリマーナノマスクを、架橋したPFETAから剥がす。
【0074】
コーニング2318ガラスの両面にPFETAピラーを形成するために、コーニング2318ガラスを、2つのポリマーナノマスクの間に挟んでもよく、それによって、コーニング2318ガラスとナノマスクとの間の空間にペルフルオロエーテルアクリレートプレポリマーが満たされる。ポリマーナノマスクの紫外線硬化と除去後、PFETAが、コーニング2318ガラスの両面に存在する。
【0075】
図6Aは、
図6Bに示されるPDMSナノピラーのナノピラー表面を形成するために使用したポリマーナノマスクの三次元AFM画像である。
図6Aに示されたポリマーナノマスクの組成物は、70質量%の化合物A2(M
Nが150,000−b−35,000のPS−b−PEO)および30質量%の化合物B1(M
Nが5,700のPAA)のポリマー溶液から形成した。
図6BのAFM画像は、蛾の目のようなPDMSナノピラー構造の形成を示しており、これは、
図6Aの対応するポリマーナノマスクから忠実に複製されている。
【0076】
図7Aおよび8Aは、それぞれ、
図7Bおよび8Bに示されたPFETAナノピラーのナノピラー表面を形成するために使用したポリマーナノマスクの三次元AFM画像である。
図7Aおよび8Aのポリマーナノマスクは、自己組織化ポリマー層を形成するために使用した親水性ホモポリマーの様々な分子量から生じた異なる細孔径を有する自己組織化ポリマー層を含んだ。
図7Aに明白なより大きい細孔を有するポリマーナノマスクは、70質量%の化合物A4(M
Nが384,000−b−8,000のPS−b−PEO)および30質量%の化合物B3(M
Nが14,000のPAA)のポリマー溶液から形成した。
図8Aに明白なより小さい細孔を有するポリマーナノマスクは、70質量%の化合物A4および30質量%の化合物B1(M
Nが5,700のPAA)のポリマー溶液から形成した。重ねて、ポリマーナノマスクは、PFETAピラーに忠実に複製されている。同様に、より大きい分子量を有するPAAを使用した場合、より大きい細孔を有するナノマスクが形成され、細孔を複製する対応するPFETAナノピラーは、より小さい細孔を有するナノマスクを使用して形成したものより大きい直径を有する。
【0077】
図2Bは、多孔質ポリマーナノマスクから複製されたPFETAナノピラーアレイのSEM画像である。この多孔質ポリマーナノマスクは、70質量%の化合物A4(M
Nが384,000−b−8,000のPS−b−PEO)および30質量%の化合物B3(M
Nが14,000のPAA)のポリマー溶液から形成した。
図2BのSEMは、レプリカ基体上のナノピラー表面に対するナノマスクの細孔構造の複製の忠実性を裏付けている。
【0078】
実施した全ての複製実験について、ポリマーナノマスクを剥がした後、目視検査は、マスクの劣化の兆候を示さず、マスクは、さらなる複製のために再利用する準備ができている。
【0079】
実施例6
反射防止特性および防汚特性
対照サンプルを、PDMSナノピラーまたはPFETAナノピラーのいずれかを備えた試験サンプルと比較するために、市販の薄膜表面スペクトル測定機器(F10−RT、米国、Filmetrics社製)を使用して、反射率スペクトルを得た。防汚特徴付けのために、Kruss DSA30側角器で水接触角を測定した。各サンプルにおいて、レプリカ基体はガラスであった。
【0080】
対照サンプルの反射率値と、上述したレプリカ成形手法により製造されたPDMSナノピラー表面を有するサンプルの反射率値が、入射光、特に、可視スペクトルの入射光の波長の関数として
図9に与えられている。同じサンプルの全反射率/透過スペクトルが
図10に与えられている。全反射率/透過スペクトルにおいて、100%未満の値は、散乱現象、もしくは基体またはナノピラーアレイ中の不純物による光の吸収のための光の損失を表す。
図9および10におけるデータに、表4に列挙されたサンプルに関する参照番号が振られている。表4におけるナノマスクポリマー溶液の成分は、先の表1の識別子を指す。
【0081】
【表4】
【0082】
図9および10に列挙された各サンプルにおけるレプリカ基体として、コーニング2318(「Gorilla」ガラス)を使用した。
図9の反射率スペクトルにおいて、裸のコーニング2318ガラスの対照サンプル(X1)は、両面からの約8%の全反射率を有し、これは、コーニング2318ガラスをPDMSの平らな薄層で被覆する(X2)ことによって、約7%にわずかに減少した。片面のみに様々なPDMSナノピラーを備えたコーニング2318ガラス(C1、D1、E1、F1)について、反射率は約4.5%〜約6%に減少した。ナノピラーをコーニング2318ガラスの両面に加えると(C2、D2、E2、F2)、反射率は約1.6%ほど低くまでさらに減少した。
図10の全反射率/透過スペクトルは、PDMSからの著しい吸着と一致していない。より大きいピラー構造を有するいくつかのサンプルだけが、ある程度の散乱効果を示した。最小のピラー直径を有するサンプル(例えば、M
Nが150,000−b−35,000のPS−b−PEOを80質量%、M
Nが5,700のPAAを20質量%含むポリマー溶液から調製したナノマスクから製造したサンプルF1およびF2)において、散乱による損失は比較的少なかった。
【0083】
対照サンプルの反射率値と、上述したレプリカ成形手法により製造されたPFETAナノピラー表面を有するサンプルの反射率値が、入射光、特に、可視スペクトルの入射光の波長の関数として
図11に与えられている。同じサンプルの全反射率/透過スペクトルが
図12に与えられている。
図11および12におけるデータに、表5に列挙されたサンプルに関する参照番号が振られている。
【0084】
【表5】
【0085】
図11および12に列挙された各サンプルにおけるレプリカ基体として、コーニング2318(「Gorilla」ガラス)を使用した。
図11の反射率スペクトルにおいて、ナノピラー表面の反射率のみを表すために、スペクトルは処理されている。この反射率スペクトルにおいて、裸のコーニング2318ガラスの対照サンプル(X1)は、約4%未満の反射率を有し、これは、コーニング2318ガラスをPFETAの平らな薄層で被覆した(X4)後に、約2%から2.5%に減少した。この反射率の減少は、PFETAの低い屈折率によると考えられる。様々なPFETAナノピラー被覆を備えたコーニング2318ガラス(G1、H1、およびJ1)について、反射率は約0.6%〜約1.8%にさらに減少した。このPFETAナノピラーによる反射率の減少は、ナノピラー構造からのモスアイ(moth-eye)効果に関連すると考えられる。Sony社によるテレビのスクリーンに使用されている市販のDNP反射防止被覆である比較例(X3)として、反射率は2%未満であった。
図12の全反射率/透過スペクトルは、ナノピラーを形成するために使用したPFETA組成物が、より短い波長で強力な吸着を有する不純物を含有しているであろうことを示している。最大のナノピラーを有するサンプルにおいて、散乱効果は著しかった。
【0086】
疎水性および防汚特徴を評価するために、PFETAナノピラーを有するナノピラー表面上で水接触角を測定した。PFETAは本質的に低い表面エネルギーを有するので、水接触角を測定するために、追加の化学修飾は必要ない。対照サンプルは、PFETAで被覆された平らなガラスであった。この対照サンプルの静止水接触角は、約106.2°であった。水接触角は、70質量%の化合物A4(M
Nが384,000−b−8,000のPS−b−PEO)および30質量%の化合物B3(M
Nが14,000のPAA)のポリマー溶液から形成された大きい細孔のナノマスクから形成したPFETAナノピラーのナノピラー表面について、約118.4°に増加することが分かった。70質量%の化合物A4(M
Nが384,000−b−8,000のPS−b−PEO)および30質量%の化合物B1(M
Nが5,700のPAA)のポリマー溶液から形成された小さい細孔のナノマスクから形成したPFETAナノピラーのナノピラー表面について、水接触角は115.1°であり、これは、大きい細孔のナノマスクほど疎水性ではないが、対照サンプルよりは疎水性であった。水接触角データは、そうでなければ実質的に平らな表面にナノピラー構造を導入すると、その表面の表面疎水性をさらに増加させられるという結論と合致した。
【0087】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変と変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変と変更を、そのような改変と変更が、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に入るという条件で、範囲に含むことが意図されている。