特許第6368325号(P6368325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368325流体を貯蔵するためのタンク用のシールされた断熱壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368325
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】流体を貯蔵するためのタンク用のシールされた断熱壁
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20180723BHJP
   B63B 3/20 20060101ALI20180723BHJP
   B63B 3/68 20060101ALI20180723BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20180723BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F17C3/04 A
   B63B3/20
   B63B3/68
   B63B25/16 F
   B63B27/24 A
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-557490(P2015-557490)
(86)(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公表番号】特表2016-511815(P2016-511815A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】FR2014050169
(87)【国際公開番号】WO2014125186
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】1351263
(32)【優先日】2013年2月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デレトレ ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ブゴー ジョアン
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−079987(JP,A)
【文献】 特公昭48−034268(JP,B1)
【文献】 特開2002−181288(JP,A)
【文献】 特表2010−528241(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
B63B 3/20
B63B 3/68
B63B 25/16
B63B 27/24
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を貯蔵するためのタンク用のシールされた断熱壁であって、
・内面および周囲を有する熱絶縁パネル(1)と、
・前記タンク内に含まれた前記流体と接触するように設計された内面と、複数の固着領域(14)の区域内で前記パネル(1)の前記内面に固着された外面とを有するシーリングプレート(7)であって、前記シーリングプレート(7)の前記内面の側部から突起し、方向d(x;y)に延びる少なくとも1つの波形(8;9)を備える、シーリングプレート(7)とを備え、
・前記熱絶縁パネル(1)の前記内面が、2つの隣接する固着領域(14)間に配置された応力緩和スロット(15;16)を備え、前記2つの隣接する固着領域は前記波形(8;9)のいずれの側にも配置され、前記応力緩和スロットは、前記方向d(x、y)に延びる軸を有し、それによって前記方向d(x、y)に対して横断方向の前記波形の変形を可能にし、
・前記応力緩和スロット(15;16)が、前記応力緩和スロット(15;16)の前記軸に沿って前記熱絶縁パネル(1)の寸法より小さく、前記熱絶縁パネル(1)の前記周囲までは延びない長さを有し、
前記熱絶縁パネルの前記内面は、前記応力緩和スロットの第1の端部と前記熱絶縁パネルの第1の側の周囲との間に方向dに延びる第1の非スロット部分と、前記応力緩和スロットの第2の端部と前記熱絶縁パネルの第2の側の周囲との間に方向dに延びる第2の非スロット部分とを備える、シールされた断熱壁。
【請求項2】
前記応力緩和スロット(15;16)が、前記熱絶縁パネル(1)の前記外面内に開く貫通スロットである、請求項1に記載の壁。
【請求項3】
前記応力緩和スロット(15;16)が、前記パネルの前記外面内に開かない盲目スロットであり、半径状にされた端部(17、18)を備える、請求項1または2に記載の壁。
【請求項4】
前記応力緩和スロット(15;16)が、前記波形(8;9)の向かい側を延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の壁。
【請求項5】
前記シーリングプレート(7)が、前記方向d(x;y)に対して垂直の方向d(y;x)に延びる波形(9;8)を備え、前記熱絶縁パネル(1)の前記内面は、2つの隣接する固着領域(14)間に配置された応力緩和スロット(16;15)を備え、前記2つの隣接する固着領域は、前記方向d(y;x)に延びる前記波形(9;8)のいずれの側にも延び、前記応力緩和スロットは、前記方向d(y;x)に延びる軸を有し、前記応力緩和スロット(16;15)の前記軸に沿って前記熱絶縁パネルの寸法より小さい長さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の壁。
【請求項6】
前記シーリングプレート(7)が、前記方向d(x;y)に延びる第1の一続きの波形(15;16)と、前記方向d(y;x)に延びる第2の一続きの波形(16;15)とを備え、前記シーリングプレート(7)の前記外面は、前記第1の一続きの波形(15、16)と第2の一続きの波形(15、16)との間に配置された複数の固着領域(14)の区域内で前記熱絶縁パネル(1)の前記内面に固着され、前記熱絶縁パネル(1)の前記内面は、波形(15、16)のいずれの側にも延びる隣接する固着領域(14)の各々の隣接する対間に、応力緩和スロット(8、9)を備え、前記応力緩和スロットは、前記波形の前記方向d(x;y)、またはd(y;x)に延びる軸を有し、前記応力緩和スロット(8、9)の前記軸に沿って前記熱絶縁パネル(1)の寸法より小さい長さを有する、請求項5に記載の壁。
【請求項7】
応力緩和スロット(15、16)が、前記応力緩和スロット(15、16)の前記方向d(x;y)またはd(y;x)の、波形(8、9)の2つの交差部(10)間の距離に対応する長さを有する、請求項6に記載の壁。
【請求項8】
前記隣接する固着領域(14)が、前記シーリングプレート(7)の2つの割り線縁(12、13)に沿って位置合わせされる、請求項5から7のいずれか一項に記載の壁。
【請求項9】
固着領域(14)の位置合わせ間の交差部に隣接する応力緩和スロット(15、16)が、前記方向d(x;y)またはd(y;x)に対して中央方向dに延びる追加の部分(17、18)を有する、請求項8に記載の壁。
【請求項10】
前記シーリングプレート(7)が金属プレートであり、前記熱絶縁パネル(1)の前記内面が、前記固着領域(14)の区域内に、前記シーリングプレート(7)の前記熱絶縁パネル(1)に対する溶接を可能にする金属固着プレートを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の壁。
【請求項11】
前記熱絶縁パネル(1)が、合板の2つのシート(3、4)間に挟まれた絶縁ポリマー発泡体(2)の層を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の壁。
【請求項12】
前記熱絶縁パネル(1)が、前記壁の一次絶縁障壁を構成し、前記壁は、さらに、二次のシールされた絶縁障壁を備え、前記熱絶縁パネル(1)は、前記パネル(1)の縁から遠隔の、前記パネル(1)の中央領域と共働する締結部材によって前記二次のシールされた絶縁障壁に締め付けられる、請求項1から11のいずれか一項に記載の壁。
【請求項13】
前記熱絶縁パネル(1)が、中央領域内に、負荷支承構造体に固定するための部材を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の壁。
【請求項14】
流体の貯蔵のためのタンクであって、負荷支承構造体と、前記負荷支承構造体に固定された請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの壁とを備える、タンク。
【請求項15】
流体の輸送のための船(70)であって、前記負荷支承構造体を形成する二重船殻(72)と、前記二重船殻内に配置された請求項14に記載のタンク(71)とを備える、船(70)。
【請求項16】
請求項15に記載された船(70)の使用であって、流体が、前記船に積む、または前記船から抜き取るために、断熱された配管(73、79、76、81)を通って、浮遊式または地面配備の貯蔵設備(77)から前記船の前記タンク(71)に向かって、また、前記浮遊式または地面配備の貯蔵設備に向かって前記船の前記タンク(71)から導かれる、請求項15に記載の船(70)の使用。
【請求項17】
流体の移送のためのシステムであって、請求項15に記載の船(70)と、前記船の二重船殻内に設置された前記タンク(71)を、浮遊式または地面配備の貯蔵設備(77)に連結させるように配置された絶縁された配管(73、79、76、81)と、流体の流れを、絶縁された配管を通って、前記浮遊式または地面配備の貯蔵設備から前記船の前記タンクに向かって、また、前記浮遊式または地面配備の貯蔵設備に向かって前記船の前記タンクから押し出すためのポンプとを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温流体などの流体を貯蔵しおよび/または輸送するためのシールされた断熱タンクに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、タンクの分野に関し、そのシール作用が、波形を有する金属膜によって実施され、この波形は、前記金属膜に、可撓性と、平面の1つまたは複数の方向に延長する能力とをもたらす。
【0003】
そのようなタンクは、特に、大気圧において約−162℃で貯蔵される液化天然ガス(LNG)の輸送または貯蔵のために使用される。
【背景技術】
【0004】
低温流体を輸送しおよび/または貯蔵するためのシールされた断熱タンクは、特許文献1から知られており、前記タンクは、波形のシール膜によって覆われた熱絶縁パネルを備える。シーリング膜は、タンク内に含まれた流体と接触するように設計された内面と、熱絶縁パネルの内面に固着された外面とを備える。シーリング膜は、複数の金属プレートからなり、その金属プレートは、ステンレス鋼から作製され、力を吸収することができる一続きの垂直波形を有する。波形にされたプレートは、その縁に沿って互いに溶接され、プレートの縁をストリップに溶接することによってパネルに固着され、このストリップもまた、ステンレス鋼から作製され、前記熱絶縁パネルにリベット止めされる。
【0005】
熱絶縁パネルの内面は、容器の長さに対して横断方向に、熱絶縁パネルの長さ全体にわたって延びるスロットを有する。そのようなスロットは、タンクが低温にかけられたときに熱絶縁パネルが割れることなく、波形が変形するのを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2861060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が基づく1つの着想は、低温に対する耐性を有し、低温にかけられたときに限定された屈曲を有する波形膜を有する、シールされた断熱壁を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施形態によれば、本発明は、流体を貯蔵するためのタンク用のシールされた断熱壁であって、
・内面を有する熱絶縁パネルと、
・タンク内に含まれた流体と接触するように設計された内面と、複数の固着領域内の区域内でパネルの内面に固着された外面とを有するシーリングプレートであって、シーリングプレートの内面の側部から突起し、方向dに延びる少なくとも1つの波形を備える、シーリングプレートとを備え、
・熱絶縁パネルの内面が、前記波形のいずれの側にも配置された2つの隣接する固着領域の間に応力緩和スロットを備え、前記応力緩和スロットは、方向dに延びる軸を有し、それによって方向dに対して横断方向の波形の変形を可能にし、
・応力緩和スロットが、応力緩和スロットの軸に沿って熱絶縁パネルの寸法より小さい長さを有する、シールされた断熱壁を提供する。
【0009】
したがって、波形は、シーリング膜に、特に、熱絶縁パネルの屈曲の作用およびシーリング膜の熱収縮の下で変形することができる可撓性をもたらす。
【0010】
さらに、応力緩和スロットは、この波形を十分に活用することを可能にするが、その理由は、これが、熱絶縁パネル上に大きすぎる機械的応力を課すことなくシーリング膜の変形を可能にするためである。
【0011】
さらに、タンクが液化天然ガスなどの低温流体で充填されたとき、タンクの外側と内側との間の温度差が、熱絶縁パネル内に熱こう配を生成する。この熱こう配は、熱絶縁パネルの屈曲、したがってシーリング膜の屈曲を引き起こすことがある。熱絶縁パネルのいずれの側にも延びるスロットとは対照的に、パネルの全体の幅または長さにわたって延びない応力緩和スロットは、パネルが、特定の程度の剛性を温存し、したがって、熱負荷の下、熱絶縁パネルの可撓性に対する応力緩和スロットの影響を抑えることを可能にする。
【0012】
この実施形態によれば、そのようなシールされた断熱壁は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる:
・応力緩和スロットは、熱絶縁パネルの周囲までは延びない。
・応力緩和スロットは、熱絶縁パネルの外面内に開く貫通スロットである。
・応力緩和スロットは、パネルの外面内に開かない盲目スロットであり、半径状にされた端部を備える。
・応力緩和スロットは、波形の向かい側を延びる。
・シーリングプレートは、方向d1に対して垂直である方向d2に延びる波形を備え、熱絶縁パネルの内面は、方向d2に延びる前記波形のいずれの側にも延びる2つの隣接する固着領域間に、応力緩和スロットを備え、前記応力緩和スロットは、方向d2に延びる軸を有し、前記応力緩和スロットの軸に沿って熱絶縁パネルの寸法より小さい長さを有する。
・シーリングプレートは、方向dに延びる第1の一続きの波形と、方向dに延びる第2の一続きの波形とを備え、シーリングプレートの外面は、第1の一続きの波形と第2の一続きの波形との間に配置された複数の固着領域の区域内で熱絶縁パネルの内面に固着され、熱絶縁パネルの内面は、波形のいずれの側にも延びる隣接する固着領域の各々の対間に、応力緩和スロットを備え、前記応力緩和スロットは、前記波形の方向d、またはdに延びる軸を有し、前記応力緩和スロットの軸に沿って熱絶縁パネルの寸法より小さい長さを有する。
・応力緩和スロットは、応力緩和スロットの方向d1またはd2の、波形の2つの交差部間の距離に対応する長さを有する。
・固着領域は、金属プレートの2つの割線縁に沿って位置合わせされる。
・固着領域の位置合わせ間の交差部に隣接する応力緩和スロットは、方向d1またはd2に対して中央方向d3に延びる追加の部分を有する。
・シーリングプレートは金属プレートであり、熱絶縁パネルの内面は、固着領域の区域内に、熱絶縁パネルに対するシーリングプレートの溶接を可能にする金属固着プレートを備える。
・熱絶縁パネルは、合板の2つのシート間に挟まれた絶縁ポリマー発泡体の層を備える。
・熱絶縁パネルは、壁の一次絶縁障壁を構成し、壁は、さらに、二次のシールされた絶縁障壁を備え、熱絶縁パネルは、パネルの縁から遠隔の、パネルの中央領域と共働する締結部材によって二次のシールされた絶縁障壁に締め付けられる。
・熱絶縁パネルは、中央領域内に、負荷支承構造体に固定するための部材を備える。
【0013】
1つの実施形態によれば、本発明はまた、負荷支承構造体と、上記で述べられた、負荷支承構造体に固定された少なくとも1つの壁とを備える流体貯蔵タンクも提供する。
【0014】
そのようなタンクは、たとえばLNGを貯蔵するための地上配備の貯蔵設備の一部を形成することができ、または、沿岸または沖合にある浮遊式構造体、特に、LNGキャリア、浮遊式貯蔵再ガス化ユニット(FSRU)、浮遊式生産貯蔵出荷設備(FPSO)などに設置され得る。
【0015】
1つの実施形態によれば、流体の輸送のための船は、負荷支承構造体を形成する二重船殻と、上記で述べられ二重船殻内に配置されたタンクとを備える。
【0016】
1つの実施形態によれば、本発明はまた、上記で述べられた船の使用も提供し、ここでは、流体が、船に積む、または船から抜き取るために、絶縁された配管を通って、浮遊式または地面配備の貯蔵設備から船のタンクに向かって、または浮遊式または地面配備の貯蔵設備に向かって船のタンクから導かれる。
【0017】
1つの実施形態によれば、本発明はまた、流体の移送のためのシステムであって、上述された船と、船の船体内に設置されたタンクを、浮遊式または地面配備の貯蔵設備に連結するように配置された絶縁された配管と、流体の流れを、絶縁された配管を通って、浮遊式または地面配備の貯蔵設備から船のタンクに向かって、または浮遊式または地面配備の貯蔵設備に向かって船のタンクから押し出すためのポンプとを備える、システムも提供する。
【0018】
1つの実施形態によれば、熱絶縁パネルを負荷支承構造体に締め付けるための手段が、熱絶縁要素の屈曲応力を吸収することができない場合、たとえば、熱絶縁パネルがその周囲領域内に固定されず、その外部表面の中央領域の区域内にだけ固定される場合、本発明は、特に有利である。
【0019】
1つの実施形態によれば、本発明はまた、熱絶縁パネルの絶縁発泡体の経年劣化に対する改良された挙動を得ることも可能にする。より詳細には、応力緩和スロットは、熱絶縁パネルの全体の長さまたは幅にわたって延びず、絶縁発泡体と、周囲空気の間の交換表面が制限され、それにより、発泡体のセル外部への膨張ガスの拡散およびその中での空気の移動が、抑えられる。
【0020】
本発明は、添付の図を参照することによって、例示および非限定的な例としてのみ提供された本発明のいくつかの特定の実施形態の以下の説明から、理解され、そのさらなる目的、詳細、特徴、および利点が、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】熱絶縁パネルの斜視図である。
図2】金属プレートのコーナを受け入れる領域内の、熱絶縁パネルの変形形態による詳細図である。
図3】金属プレートのコーナを受け入れる領域内の、熱絶縁パネルの変形形態による詳細図である。
図4】金属プレートのコーナを受け入れる領域内の、熱絶縁パネルの変形形態による詳細図である。
図5】応力緩和スロットを通り抜ける、シールされた断熱壁の断面図である。
図6】別の実施形態による、応力緩和スロットを備えた、図5のものに類似する図である。
図7】シーリング膜の波形にされた金属プレートの斜視図である。
図8】熱絶縁パネルに対する、シーリング膜の金属プレートの相対位置決めを示す平面図である。
図9】負荷支承構造体にその中央領域内で固定された熱絶縁パネルの斜視図である。
図10図9の熱絶縁パネルの負荷支承構造体に固定するための部材の詳細な斜視図である。
図11】負荷支承構造体に固定するための部材の区域内の、図9および10の熱絶縁パネルの長手方向断面図である。
図12】LNGキャリアタンク、および前記タンクの供給/排出用のターミナルの概略切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
従来、用語「外部」および「内部」は、タンクの内側および外側を参照して1つの要素の別のものに対する相対位置を定めるために使用される。
【0023】
各々のタンク壁は、厚さ方向に、連続的にタンクの内側から外側にかけて、タンク内に含まれた流体と接触する少なくとも1つのシーリング部材と、断熱障壁と、図示されない負荷支承構造体とを有する。図示されない1つの特定の実施形態では、壁はまた、2つのレベルのシーリング作用および断熱を含むこともできる。
【0024】
図1は、熱絶縁パネル1を示す。この場合のパネル1は、ほぼ矩形の平行6面体の形状を有する。これは、内部剛性プレート3と外部剛性プレート4との間に挟まれた絶縁ポリマー発泡体2の層を備える。内部剛性プレート3および外部剛性プレート4は、たとえば、前記発泡体層2に結合された合板のシートである。絶縁ポリマー発泡体は、特に、ポリウレタンベースの発泡体でよい。ポリマー発泡体は、有利には、その熱収縮を低減することに寄与するガラス繊維によって補強され得る。
【0025】
例として、パネル1は、長さ3メータ×幅1メータを有する。合板3の内部シートは、12mmの厚さを有することができ、合板4の外部シートは9mmの厚さであり、絶縁発泡体2の層は、200mmの厚さである。当然ながら、寸法および厚さは、示度として提供され、所望の用途および断熱性能によって変化する。
【0026】
パネル1の内部表面は、金属プレート7を固着するように設計された金属固着プレート5、6を備え、金属プレート7の1つの例は、図7に示されており、シーリング膜を形成する。金属固着プレート5は、パネル1の内部プレート3上に長手方向に延び、金属アンカープレート6は、横断方向に延びる。金属固着プレート5、6は、たとえば、パネル1の内部プレート3にリベット止めされる。金属固着プレート5、6は、特に、ステンレス鋼またはInvar(登録商標)、すなわち鉄およびニッケルの合金から生み出されてよく、その主な特性は、これが、非常に低い膨張係数を有することである。金属固着プレート5、6の厚さは、たとえば、2mm程度である。図示されないが、熱保護ストリップが、金属固着プレート5、6の下方に置かれ得る。金属プレート7と金属固着プレート5、6の間の固着は、タック溶接によって実施される。
【0027】
シーリング膜は、縁に沿って互いに溶接された複数の金属プレート7を組み立てることによって得られる。図7に示されるように、金属プレート7は、方向yに延びる、下側波形8と呼ばれる、第1の一続きの平行な波形と、方向xに延びる、上側波形9と呼ばれる第2の一続きの平行な波形とを備える。一続きの波形8、9の方向xおよびyは、垂直である。波形8、9は、金属プレート7の内面の側から突起する。金属プレート7の縁は、この場合、波形8、9に対して平行である。金属プレート7は、波形8、9の間に、複数の平面表面11を備える。用語「上側」および「下側」は、相対的意味を有し、第1の一続きの波形8が、第2の一続きの波形9より低い高さを有することは、注目に値することである。下側波形8と上側波形9の間の交差部10の区域内では、下側波形は、不連続のものであり、すなわち、これは、下側波形8の上縁の上方に突起する上側波形9の上縁を延ばす折り畳み部によって遮られる。波形8、9は、シーリング膜が、応力の効果の下、特に、タンク内に貯蔵された流体によって生成された熱応力の下で変形することができるように、ほぼ可撓性であることを可能にする。
【0028】
金属プレート7は、折り畳みまたはスタンピングによって成形された、ステンレス鋼またはアルミニウムシートから生み出される。さらなる金属または合金もまた可能である。例として、金属プレート7は、凡そ1.2mmの厚さを有する。金属プレート7を厚くした結果、コストの増大が生じ、全般的には波形の剛性が増大することを考慮して、別の厚さもまた、想定可能である。
【0029】
2つの横断方向縁13の1つの区域内、および2つの長手方向縁12の1つの区域内では、金属プレート7は、図示しないがスタンピングされたストリップを有し、このストリップは、隣接する金属プレート7の縁を覆うために、プレート7の平面に対して厚さ方向に内方向にずらされる。
【0030】
熱絶縁パネル1に対する金属プレート7の相対位置が、図8に示される。金属プレート7は、この場合、熱絶縁パネル1に対して長さの半分および幅の半分だけずらされて配置される。壁は、したがって、複数の熱絶縁パネル1および複数の金属プレート7を備え、前記金属プレート7の各々は、4つの隣接する熱絶縁パネル1にわたって延びる。
【0031】
金属プレート7の長手方向縁12の1つは、前記長手方向縁12を金属固着プレート5に溶接することによって熱絶縁パネル1に固着される。同様に、横断方向縁13の1つは、前記横断方向縁13を金属固着プレート6に溶接することによって熱絶縁パネル1に固着される。金属プレート7と熱絶縁パネル1との間の固着領域14は、波形8、9のいずれの側にも位置する。換言すれば、固着領域14は、波形8、9のいずれの側にも延びる金属プレート7の縁12、13の平坦部分11と、金属固着プレート5、6との間の界面に形成される。
【0032】
一続きの波形8、9の各々の中央波形が、有利には、2つの隣接する熱絶縁パネル1の間接合部の向かい側に延びることが注目に値すべきことである。
【0033】
熱絶縁パネル1の内部表面には、複数の応力緩和スロット15、16が設けられる。第1の一続きの応力緩和スロット15は、波形8の方向yに延びる。第2の一続きの応力緩和スロット16は、波形9の方向xに延びる。
【0034】
図8では、熱絶縁パネル1は、波形8、9のいずれの側にも延びる隣接する固着領域14の各々の対間に、応力緩和スロット15、16を有する。応力緩和スロット15、16は、この場合、そのそれぞれの波形8、9の向かい側を延びる。応力緩和スロット15、16は、したがって、そのそれぞれの波形8、9の、その方向に対して横断する方向にしたがった変形を可能にするように配置される。より詳細には、応力緩和スロット15、16がない場合、固着領域14によって境界付けられた波形8、9はいずれも、熱絶縁パネル1上に大きな機械的応力を課すことなく変形することはできない。
【0035】
応力緩和スロット15、16は、その軸に沿って熱絶縁パネル1の寸法より短い長さを有する。換言すれば、応力緩和スロット15、16は、熱絶縁パネル1の周囲までは延びない。有利には、応力緩和スロット15、16の長さは、スロット15、16の方向の、波形の2つの交差部10間の間隔にほぼ対応する。
【0036】
図5に示される1つの実施形態では、応力緩和スロット15は、熱絶縁パネルの全体厚さにわたって延び、その結果パネル1の外面内に開く貫通スロットである。そのような応力緩和スロット15は、熱絶縁パネル1の変形に対して高度な可撓性をシーリング膜に与えながら、内部剛性プレート3のその特定の領域内の連続性を温存することを可能にする。この連続性は、熱絶縁パネル1の可撓性が、熱負荷の下で限定されることを可能にする。これはまた、剛性プレート3、4と発泡体2の層との結合を容易にし、その結果、初期の破砕を抑えることも可能にする。
【0037】
図6に示される別の実施形態では、応力緩和スロット15は、パネルの外面内に開かない盲目スロットである。そのような応力緩和スロット15は、熱絶縁パネル1の厚さのほぼ半分まで延びる。スロット15の端部17、18の底部の区域内の応力の集中を抑えるために、応力緩和スロット15の端部17、18は、半径状にされる。これらの半径状の部分を生み出すために、応力緩和スロット15は、通常、丸鋸によって生み出される。
【0038】
図2から4は、パネル1に対して長手方向に延びる金属固着プレート5の位置合わせの軸と、横断方向に延びる金属固着プレート6の位置合わせの軸との間の交差領域を詳細に示す。この交差領域は、金属プレート7のコーナを固定するための領域に対応する。
【0039】
図2および4の実施形態では、金属固着プレート5、6の位置合わせ間の交差部のいずれの側にも配置された応力緩和スロット15、16は、方向xおよびyに対して中央方向に延びる追加の部分17、18によって延ばされる。換言すれば、方向xおよびyは、ここでは垂直であり、追加の部分17、18は、方向xおよびyに対して45°の角度を形成する。
【0040】
図3の実施形態では、横断方向の応力緩和スロット15が長手方向の応力緩和スロット16と交差しないように、横断方向の応力緩和スロット15の長さを低減する決定がなされている。
【0041】
熱絶縁パネル1の製造は、さまざまな実施形態によって実施され得る。1つの実施形態によれば、内部プレート3および外部プレート4は、たとえば、絶縁ポリマー発泡体2の層のいずれの側にも結合され、次いで、応力緩和スロット15、16が、切断される。最後に、応力緩和スロット15、16が切断されたとき、金属固着プレート5、6は、たとえば、内部剛性プレート3にリベット止めすることによって固定される。
【0042】
あるいは、内部剛性プレート3、絶縁ポリマー発泡体2の層、および任意選択で外部剛性プレート4を事前に切断し、内部剛性プレート3および外部剛性プレート4を、内部プレート3内および絶縁ポリマー発泡体2の層内に形成されたスロットを調整することによって絶縁ポリマー発泡体2の層に結合させることも可能である。
【0043】
スロット15、16は、スロット切り機械タイプの装置、または水噴射、レーザ切断、ジグゾー、糸のこ、フライス削り、丸のこなどによるなどの任意の他の適切な装置によって切断され得る。
【0044】
図9から11は、負荷支承構造体に固定するための部材を、その中央領域内に備える熱絶縁パネル1を示す。熱絶縁パネル1は、その中央領域内に、負荷支承構造体または二次のシールされた断熱障壁に固定されたピン20を受け入れるオリフィス19を備え、二次のシールされた断熱障壁は、さらに、タンクが2レベルのシーリング作用および断熱を有する場合、負荷支承構造体に固定される。ピン20は、ナット21と共働するねじ切りされた部分を備える。オリフィス19は、ショルダ22を備える。1つまたは複数の平ワッシャおよび/またはベルビルワッシャ23が、ナット21とショルダ22との間に挿入される。この場合のハウジング22は、シーリングディスク24によってシールされる。
【0045】
シールされた断熱タンクは、上記で開示されたように1つまたは複数の壁を備えることができる。そのようなタンクは、たとえばLNGを貯蔵するための地上配備の貯蔵設備の一部を形成することができ、または、沿岸または沖合の浮遊式構造体、特に、LNGキャリア、浮遊式貯蔵再ガス化ユニット(FSRU)、浮遊式生産貯蔵出荷設備(FPSO)などに設置され得る。
【0046】
図12を参照すれば、LNGキャリア70の破断図は、船の二重船殻72内に装着されたほぼ角柱形状のシールされ断熱されたタンク71を示す。タンク71の壁は、タンク内に含まれたLNGと接触するように設計された一次のシールされた障壁と、一次のシールされた障壁と船の二重船殻72との間に配置された二次のシールされた障壁と、一次のシールされた障壁と二次のシールされた障壁との間、および二次のシールされた障壁と二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの断熱障壁とを備える。
【0047】
それ自体知られている方法で、船の上側ブリッジ上に配置された供給/排出配管73が、LNGカーゴをタンク71からまたはタンク71に向かって移送するために、適切なコネクタによって海上ターミナルまたは港ターミナルに連結され得る。
【0048】
図12は、供給および排出ステーション75と、水中管76と、地上配備の設備77とを備える海上ターミナルの例を示す。供給および排出ステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備える固定された沖合設備である。可動アーム74は、1束の絶縁された可撓性管79を担持し、これらの管は、供給/排出配管73に連結することができる。配向させることができる可動アーム74は、すべてのタイプのLNGキャリアに適合される。図示しないが連結管は、タワー78の内側を延びる。供給および排出ステーション75は、地上配備の設備77からのまたはこれに向かうLNGキャリア70の供給および排出を可能にする。前記地上配備の設備は、液化ガス80を貯蔵するためのタンクと、水中管76によって供給または排出ステーション75に連結された連結管81とを備える。水中管76は、供給または排出ステーション75と、地面配備設備77との間の、たとえば5kmの長距離にわたる液化ガスの移送を可能にし、それによって、LNGキャリア70が供給および排出運転中、湾岸から長い距離を保つことを可能にする。
【0049】
液化ガスの移送に必要な圧力を創出するために、船70に搭載されて装着されたポンプおよび/または地上配備の設備77上に設けられたポンプおよび/または供給および排出ステーション75に設けられたポンプが、使用される。
【0050】
本発明は、いくつかの特定の実施形態に関連して説明されてきたが、これは、それによっていかなる点においても限定されず、開示された手段のすべての技術的等価物、本発明の範囲に入る場合はその組み合わせも加えて含むことが明白である。
【0051】
動詞「からなる」、「備える」、または「含む」、およびそれらの関連形態の動詞は、他の要素または他のステップの存在を特許請求の範囲において引用されたものから排除しない。1つの要素または1つのステップに対する不定冠詞「1つ」または「1つ」の使用は、その反対が明示されない限り、複数のそのような要素またはステップの存在を排除しない。
【0052】
特許請求の範囲において、括弧内のいかなる参照番号も、特許請求の範囲に対する限定として解釈されてはならない。
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図12