【実施例1】
【0030】
図6は、実施例1に用いられるチップの平面図である。
図7(a)および
図7(b)は、
図6のA−A断面図である。
図7(a)は、支持基板が設けられていない例であり、
図7(b)は、支持基板28上に圧電基板10が貼り付けられた例である。
図6および
図7(a)に示すように、チップ11において、圧電基板10上に1または複数の直列共振器S1からS4、1または複数の並列共振器P1からP3、配線34および1または複数のバンプ22が設けられている。各共振器は、IDT30とIDT30の両側に設けられた反射器32を備えている。バンプ22は、入力バンプT1、出力バンプT2、グランドバンプTg、バンプ22aおよび22bを含む。チップ11はバンプ22を用い実装基板20にフリップチップ実装(またはフェースダウン実装)されている。これにより、入力バンプT1、出力バンプT2およびグランドバンプTgは、実装基板20上に形成された電極パッド等に電気的に接続される。配線34は、各共振器間、および各共振器とバンプ22間を電気的に接続する。配線34は、Cu(銅)膜、Al(アルミニウム)膜またはAu(金)膜等の金属膜であり、金属膜18(
図8(b)参照)を含んでもよい。突起電極であるバンプ22はスタッドAuバンプ、めっき法により形成されたCuピラー、またはAuSn、SnAgCuもしくはSnAg等のはんだボール等でもよい
【0031】
直列共振器S1からS4は、入力バンプT1(すなわち入力端子)と出力バンプT2(すなわち出力端子)との間に、配線34を介し直列に接続されている。並列共振器P1からP3は、入力バンプT1と出力バンプT2との間の線路に対し、配線34を介し並列に接続されている。このように、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3はラダー型フィルタとして機能する。直列共振器S3および並列共振器P2のX方向(弾性波の伝搬方向)の両側にバンプ22aおよび22bが形成されている。
【0032】
図8(a)は、実施例1で用いる共振器の平面図、
図8(b)は、
図8(a)のA−A断面図である。
図8(a)および
図8(b)に示すように、1ポート共振器では、圧電基板10上にIDT30および反射器32が形成されている。圧電基板10は、例えばニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板である。IDT30および反射器32は、圧電基板10に形成された金属膜18により形成される。金属膜18は例えばCu(銅)膜またはAl(アルミニウム)膜である。IDT30は、対向する一対の櫛型電極16を備える。櫛型電極16は、複数の電極指12と、複数の電極指12が接続されたバスバー14を備える。一対の櫛型電極16は、電極指12がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。IDT30は主に電極指12の配列方向(X方向)に伝搬する弾性波を励振する。弾性波は反射器32により反射される。櫛型電極16における電極指12のピッチは櫛型電極16が励振する弾性波の波長λにほぼ相当する。
【0033】
図9は、実施例1における各共振器の減衰特性を示す図である。
図9に示すように、ラダー型フィルタの通過帯域の高周波側の減衰極は、直列共振器S1からS4の反共振点により形成される。通過帯域の低周波側の減衰極は、並列共振器P1からP3の共振点により形成される。通過帯域の高周波側のスカート特性に最も影響するのは直列共振器のうち反共振周波数の最も高い直列共振器S3である。通過帯域の低周波側のスカート特性に最も影響するのは並列共振器のうち共振周波数の最も低い並列共振器P2である。通過帯域の温度依存性を抑制するためには、直列共振器S3および並列共振器P2の温度依存性を小さくすることが有効である。
【0034】
そこで、
図6のように、直列共振器S3および並列共振器P2のそれぞれのX方向の両側にバンプ22aおよび22bを設ける。これにより、サンプルA7およびB7と同様に、直列共振器S3および並列共振器P2における線熱膨張係数が小さくなる。直列共振器S3および並列共振器P2のTCFが抑制される。よって、通過特性のスカート特性の温度依存が小さくなり、通過地域の温度依存が小さくなる。
【0035】
反共振周波数と共振周波数との間隔は共振器によって変わらない。よって、直列共振器S3は直列共振器S1からS4のうち共振周波数の最も高い直列共振器ともいえる。また、並列共振器P2は並列共振器P1からP3のうち反共振周波数の最も低い並列共振器ともいえる。
【0036】
サンプルA1からA7およびB1からB7を用いた実験では実装基板20の線熱膨張係数を0と仮定した。実施例1では、圧電基板10のX方向の線熱膨張係数より小さい線熱膨張係数を有する実装基板20を用いる。例えば、タンタル酸リチウム基板のX方向の線熱膨張係数は16.1ppm/℃である。そこで、実装基板20としてセラミックスを用いる。例えばアルミナを用いたファインセラミックスの線熱膨張係数は7.2ppm/℃である。これにより、共振器における線熱膨張係数を小さくすることができる。実装基板20として、樹脂等の有機材料を用いてもよい。
【0037】
図7(b)の例では、圧電基板10が支持基板28に接合されている。その他の構成は
図7(a)と同じであり説明を省略する。支持基板28上に圧電基板10を貼り付けた場合、実装基板20の線熱膨張係数は圧電基板10の線熱膨張係数より小さければ効果があるが、支持基板28の線熱膨張係数より小さいことが好ましい。
【0038】
実施例1によれば、圧電基板10上であって、複数の直列共振器S1からS4のうち最も反共振周波数の高い直列共振器S3(第1共振器)の弾性波の伝搬方向にバンプ22aおよび22bを設ける。複数の並列共振器P1からP3のうち最も共振周波数の低い並列共振器P2(第1共振器)の弾性波の伝搬方向にバンプ22aおよび22bを設ける。これにより、通過帯域の温度特性を抑制できる。バンプ22aおよび22bは、直列共振器S3および並列共振器P2の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0039】
直列共振器S1からS4の反共振周波数は全て同じでもよい。この場合、バンプ22aおよび22bは直列共振器S1からS4の少なくとも1つのX方向に設けられていればよい。また、並列共振器P1からP3の共振周波数は全て同じでもよい。この場合、バンプ22aおよび22bは並列共振器P1からP3の少なくとも1つのX方向に設けられていればよい。
【0040】
直列共振器S1からS4のうち少なくとも1つは他の直列共振器と反共振周波数が異なっていてもよい。この場合、バンプ22aおよび22bは最も反共振周波数の高い直列共振器S3のX方向に設けられていればよい。並列共振器P1からP3のうち少なくとも1つは他の並列共振器と共振周波数が異なっていてもよい。この場合、バンプ22aおよび22bは最も共振周波数の低い並列共振器P2のX方向に設けられていればよい。
【0041】
直列共振器S1からS4のうち一部の直列共振器S1、S2またはS4のX方向にはバンプ22aおよび22bは設けなくてもよい。並列共振器P1からP3のうち一部の並列共振器P1およびP2のX方向にはバンプ22aおよび22bは設けなくてもよい。これらにより、バンプ22の数を減らすことができる。よって、チップ11の面積を小さくできる。
【0042】
反共振周波数の高い直列共振器S3と最も共振周波数の低い並列共振器P2との両方にバンプ22aおよび22bが設けられている場合、直列共振器S3以外の直列共振器S1、S2およびS4の弾性波の伝搬方向にはバンプ22aおよび22bを設けず、並列共振器P2以外の並列共振器P1およびP3の弾性波の伝搬方向にはバンプ22aおよび22bを設けないことが好ましい。これにより、通過地域の温度依存が小さくなり、かつチップ11の面積を小さくできる。
【0043】
サンプルA3、A4、B3およびB4のように、バンプ22aおよび22bはいずれか一方のみが設けられていてもよい。サンプルA7およびB7のように、より線熱膨張係数を小さくするため、バンプ22aおよび22bは直列共振器S3および並列共振器P2のX方向の両側に設けられていることが好ましい。
【0044】
バンプ22aおよび22bは、並列共振器P2に対応するバンプ22bのようにグランドバンプでもよい。バンプ22aおよび22bは、他のバンプ22aおよび22bのようにダミーバンプでもよい。グランドバンプはグランドに電気的に接続されるバンプである。グランドバンプとグランドとの間にグランド配線が設けられている。熱は配線を介し伝導しやすい。そこで、バンプ22aおよび22bの少なくとも1つをグランドバンプとすることで、放熱性を高めることができる。ダミーバンプは、グランド配線または信号配線と接続されておらず、電気的にフローティングである。よって、バンプ22aおよび22bの少なくとも1つをダミーとすることで、バンプと共振器等の干渉を抑制できる。
【0045】
(実施例1の変形例1)
図10は、実施例1の変形例1に用いられるチップの平面図である。
図10に示すように、直列共振器S3および並列共振器P2に加え、並列共振器P3のX方向にもバンプ22bが設けられている。直列共振器S3と並列共振器P3はバンプ22bを共有している。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0046】
実施例1の変形例1のよう、バンプ22aおよび22bは、並列共振器P1からP3のうち複数の並列共振器P2およびP3に設けられていてもよい。直列共振器においても複数の直列共振器にバンプ22aおよび22bが設けられていてもよい。また、複数の共振器でバンプ22aまたは22bを共有してもよい。
【0047】
(実施例1の変形例2)
図11は、実施例1の変形例2に用いられるチップの平面図である。
図11に示すように、直列共振器S3および並列共振器P2のX方向に延伸する中線54に対しバンプ22aおよび22bが−Y方向にシフトして設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0048】
サンプルA5、A6、B5およびB6のように、バンプ22aおよび22bは、共振器の中心線からY方向にずれていてもよい。平面視においてバンプ22aおよび22bの少なくとも一部はX方向からみて共振器と重なることが好ましい。また、バンプ22aおよび22bの少なくとも一部はX方向からみて共振器の開口(IDTにおいて電極指が重なる領域)と重なることがより好ましい。さらに、バンプ22aおよび22bの少なくとも一部は共振器のX方向に延伸する中心線と重なることがさらに好ましい。
【0049】
(実施例1の変形例3)
図12は、実施例1の変形例3に用いられるチップの平面図である。
図12に示すように、直列共振器S3のX方向に位置するバンプ22aおよび22bの平面視形状は楕円形である。並列共振器P2のX方向に位置するバンプ22aおよび22bの平面視形状は矩形である。その他の構成は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0050】
実施例1の変形例3のように、バンプの形状は任意に設定できる。バンプ22aおよび22bをスタッドバンプすると、平面視形状は円状となる。はんだボールを用いると、バンプ22aおよび22bは球状となる。メッキバンプを用いると、平面視の形状を任意にすることができる。
【0051】
(実施例1の変形例4)
図13は、実施例1の変形例4に用いられるチップの平面図である。
図13に示すように、並列共振器P3の弾性波の伝搬方向はY方向である。並列共振器P3のY方向にバンプ22aおよび22bが設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0052】
実施例1の変形例4のように、共振器の少なくとも1つは弾性波の伝搬方向が異なっていてもよい。YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板を用いると、圧電基板10の上面のうちX方向(X軸方向)の線熱膨張係数が最も大きい。例えば、並列共振器P3が並列共振器P1からP3のうち最も共振周波数が低いとき、並列共振器P3の弾性波の伝搬方向をY方向とすると、線熱膨張係数が小さくなる。さらに、共振器のY方向にバンプ22aおよび22bを設ける。これにより、線熱膨張係数がより小さくなる。このように、より周波数の温度依存性を小さくする共振器(例えば並列共振器P3)の弾性波の伝搬方向を、直列共振器S1からS4および並列共振器P1およびP3のうち並列共振器P3以外の共振器(第2共振器)と異ならせ、かつバンプ22aおよび22bを設けてもよい。
【0053】
バンプ22aおよび22bは、温度依存性を抑制する共振器に最も近いことが好ましい。すなわち、反共振周波数の最も高い直列共振器S3に最も近いバンプ22aおよび22bと直列共振器S3との距離は、直列共振器S3以外の直列共振器S1、S2またはS4(第2共振器)に最も近いバンプ22(第2バンプ)と直列共振器S1、S2またはS4との距離より小さい。また、共振周波数の最も低い並列共振器P2に最も近いバンプ22aおよび22bと並列共振器P2との距離は、並列共振器P2以外の並列共振器P1またはP3(第2共振器)に最も近いバンプ22(第2バンプ)と並列共振器P1またはP3との距離より小さい。これにより、通過帯域の温度依存性に最も影響する共振器の線熱膨張係数を低減できる。
【0054】
実施例1およびその変形例における直列共振器および並列共振器の個数は適宜設定できる。チップ11に1つのフィルタを形成する例を説明したが、チップ11に複数のフィルタを形成してもよい。弾性波として弾性表面波を用いる例を説明したが、弾性境界波またはラブ波を用いてもよい。