(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
放射キャビティーを有する放射キャビティー基板と、給電導波路を有する給電導波路基板とが、金属層を介して積層された積層構造を有するアンテナ装置の製造方法であって、
前記放射キャビティーの内部を構成する誘電体基板と、前記誘電体基板の両面の導体層と、前記放射キャビティーの面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記誘電体基板の両面の導体層のうち、前記給電導波路側の導体層は、前記放射キャビティー側の開口となる第1の開口を有する放射キャビティー基板を準備する工程と、
前記給電導波路の内部を構成するガラス基板と、前記ガラス基板の両面の導体層と、前記給電導波路の面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記ガラス基板の両面の導体層のうち、前記放射キャビティー側の導体層は、前記給電導波路側の開口となる第2の開口を有する給電導波路基板を準備する工程と、
前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、前記第1の開口及び前記第2の開口と重なり合う領域に、前記第1の開口及び前記第2の開口よりも広く形成された第3の開口を有する金属層を介して、積層する工程と、
を有することを特徴とするアンテナ装置の製造方法。
前記第1の開口と、前記第2の開口とを、それぞれ誘電体材料で充填した後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、前記金属層を介して、積層することを特徴とする請求項8に記載のアンテナ装置の製造方法。
前記第1の開口と、前記第2の開口とのいずれか一方に、前記第1の開口及び前記第2の開口を充填可能な誘電体材料を設けた後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、前記金属層を介して、積層することを特徴とする請求項8に記載のアンテナ装置の製造方法。
前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のアンテナ装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術には、次の問題があった。
(1)空洞(開口部)を利用しているため、誘電体基板の穴あけ工程等が必要となり、工程が煩雑になる。
(2)複数の誘電体層を積層する工程が煩雑になる。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決すべく案出されたものであり、製造工程が簡便、低コストで、且つ広帯域な入力インピーダンス特性を実現し、大規模なアンテナアレーにも応用可能なアンテナ装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、放射キャビティーを有する放射キャビティー基板と、給電導波路を有する給電導波路基板とが、金属層を介して積層された積層構造を有し、前記放射キャビティー基板は、前記放射キャビティーの内部を構成する誘電体基板と、前記誘電体基板の両面の導体層と、前記放射キャビティーの面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記給電導波路基板は、前記給電導波路の内部を構成するガラス基板と、前記ガラス基板の両面の導体層と、前記給電導波路の面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記誘電体基板の両面の導体層のうち、前記給電導波路側の導体層は、前記放射キャビティー側の開口となる第1の開口を有し、前記ガラス基板の両面の導体層のうち、前記放射キャビティー側の導体層は、前記給電導波路側の開口となる第2の開口を有し、前記金属層は、前記第1の開口及び前記第2の開口と重なり合う領域に、前記第1の開口及び前記第2の開口よりも広く形成された第3の開口を有することを特徴とするアンテナ装置を提供する。
【0007】
前記アンテナ装置において、前記第1の開口及び前記第2の開口は、誘電体材料で充填されている構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記第1の開口と、前記第2の開口とが、それぞれ異なる誘電体材料で充填されている構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記第1の開口と、前記第2の開口とが、同一の誘電体材料で充填されている構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなる構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記金属層が、半田層である構成を採用することも可能である。
【0008】
また、本発明は、放射キャビティーを有する放射キャビティー基板と、給電導波路を有する給電導波路基板とが、金属層を介して積層された積層構造を有するアンテナ装置の製造方法であって、前記放射キャビティーの内部を構成する誘電体基板と、前記誘電体基板の両面の導体層と、前記放射キャビティーの面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記誘電体基板の両面の導体層のうち、前記給電導波路側の導体層は、前記放射キャビティー側の開口となる第1の開口を有する放射キャビティー基板を準備する工程と、前記給電導波路の内部を構成するガラス基板と、前記ガラス基板の両面の導体層と、前記給電導波路の面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記ガラス基板の両面の導体層のうち、前記放射キャビティー側の導体層は、前記給電導波路側の開口となる第2の開口を有する給電導波路基板を準備する工程と、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、前記第1の開口及び前記第2の開口と重なり合う領域に、前記第1の開口及び前記第2の開口よりも広く形成された第3の開口を有する金属層を介して、積層する工程と、を有することを特徴とするアンテナ装置の製造方法を提供する。
【0009】
前記アンテナ装置の製造方法において、前記第1の開口及び前記第2の開口を誘電体材料で充填する構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記第1の開口と、前記第2の開口とを、それぞれ誘電体材料で充填した後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、前記金属層を介して、積層する構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記第1の開口と、前記第2の開口とのいずれか一方に、前記第1の開口及び前記第2の開口を充填可能な誘電体材料を設けた後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、前記金属層を介して、積層する構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなる構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記アンテナ装置において、前記金属層が、半田層である構成を採用することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の開口を有する放射キャビティー基板と、第2の開口を有する給電導波路基板とを、第1の開口及び第2の開口よりも広く形成された第3の開口を有する金属層を介して、積層させることにより、積層ずれの影響を抑制でき、製造工程が簡便、低コストで、且つ広帯域な入力インピーダンス特性を実現することができ、大規模なアンテナアレーにも応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本実施形態のアンテナ装置を模式的に例示する断面図である。また、
図2は、
図1の断面構造を有するアンテナ装置の斜視図の一例である。また、
図3は、金属層に設けられた第3の開口を示すため、アンテナ装置から放射キャビティー基板の図示を省略した斜視図である。
図2又は
図3のXY面内(Z軸に垂直な方向)は、基板の面に沿った面内方向である。
【0013】
本実施形態のアンテナ装置は、放射キャビティー基板10と、給電導波路基板20とが、金属層32を介して積層された積層構造30を有する。上部の放射キャビティー基板10には、放射キャビティー15が形成されている。また、下部の給電導波路基板20には、給電導波路25が形成されている。給電導波路25の上部には、放射キャビティー15が開口31を介して配置されている。開口31の形状は、例えば、長辺(X方向)と短辺(Y方向)を有するスロット状である。
なお、以下の明細書では、放射キャビティー基板10及び給電導波路基板20を総称して、「両基板10,20」という場合がある。
【0014】
放射キャビティー基板10は、誘電体基板11と、誘電体基板11の両面の導体層12,13と、放射キャビティー15の面内方向の周囲を囲むポスト壁14を備える。誘電体基板11としては、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板、樹脂−ガラス等の複合材料基板が挙げられる。導体層12,13は、金属箔等の導体から構成することができる。放射キャビティー15が誘電体基板11で構成(充填)されているため、従来技術のような空洞(開口部)が不要であり、空洞を形成するための穴あけ工程等を省略することができる。また、空洞が空気(比誘電率=1)で充填される場合と比べて、放射キャビティー15と給電導波路25との比誘電率の差を小さくすることができる。
【0015】
放射キャビティー基板10のポスト壁14は、誘電体基板11に埋設された導体から構成することができる。具体的には、誘電体基板11の厚さ方向を貫通するスルーホール(孔)の内面に導体を成膜し、又はスルーホールの内部に導体を充填して形成される貫通導体の列から、ポスト壁14を構成することができる。ポスト壁14の上下両端がそれぞれ導体層12,13に電気的に接続されることにより、放射キャビティー15の内部が導体層12,13及びポスト壁14に囲まれる。放射キャビティー15が基板の厚さ方向で単層の誘電体層から構成されることにより、放射キャビティー基板10の構造が単純になり、低コスト化に寄与できる。
【0016】
給電導波路基板20は、ガラス基板21と、ガラス基板21の両面の導体層22,23と、給電導波路25の面内方向の周囲を囲むポスト壁24を備える。給電導波路基板20の誘電体基板として、ガラス基板21を採用することにより、給電導波路25の損失を低減することができる。導体層22,23は、金属箔等の導体から構成することができる。ガラス基板21を構成するガラス材料の誘電正接は、例えば給電導波路25により伝送される電気信号の周波数において、10
−4台であることが好ましい。ガラス基板21の構成材料としては、例えば、シリカガラス、合成石英等が挙げられる。なお、
図2中、ポスト壁14と重なり合う箇所において、ポスト壁24の一部の図示は省略されている。
【0017】
給電導波路基板20のポスト壁24は、ガラス基板21に埋設された導体から構成することができる。具体的には、ガラス基板21の厚さ方向を貫通するスルーホール(孔)の内面に導体を成膜し、又はスルーホールの内部に導体を充填して形成される貫通導体の列から、ポスト壁24を構成することができる。ポスト壁24の上下両端がそれぞれ導体層22,23に電気的に接続されることにより、給電導波路25の内部が導体層22,23及びポスト壁24に囲まれる。給電導波路25が基板の厚さ方向で単層の誘電体層から構成されることにより、給電導波路基板20の構造が単純になり、低コスト化に寄与できる。
【0018】
導体層12,13,22,23及びポスト壁14,24を構成する導体は、電気抵抗の低い金属であることが好ましく、具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、これらの1種以上を含む合金等が好ましい。これらの導体と誘電体基板11、ガラス基板21との密着性を高めるため、間に密着層としてチタン(Ti)やクロム(Cr)等の膜を設けてもよい。
ポスト壁14,24の貫通導体が形成されるスルーホール(孔)の断面形状は特に限定されず、円形孔、矩形孔、長孔、スリット孔等が挙げられる。ポスト壁14,24に沿った貫通導体の間隔は、電気信号を外部に漏洩しないように適宜設定される。
【0019】
放射キャビティー基板10と給電導波路基板20の接合のため、例えば導体層13と導体層22との間に金属層32が設けられる。これにより、導体層13と導体層22とを電気的に接続することができる。放射キャビティー基板10の導体層12,13及び給電導波路基板20の導体層22,23を接地する場合には、基板ごとに導体を接地してもよく、一方の基板を接地電位に、他方の基板を一方の基板に直列的に接続してもよい。
【0020】
金属層32を構成する金属としては、導体層13,22と同種又は異種の金属が挙げられる。導体層13,22と同種の金属の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、これらの1種以上を含む合金等が好ましい。金属層32は、半田層であってもよい。半田層を構成する半田としては、Sn,Pb,Zn,Ga,In,Bi等の低融点金属、又はこれらの1種以上を含む合金が挙げられる。金属層32は、導体層であれば、半田層であっても、半田以外の金属層であってもよい。
【0021】
給電導波路25と放射キャビティー15との間には、開口31が形成されている。この開口31により、電磁波(信号)を給電導波路25から放射キャビティー15に伝搬させることができる。この開口31は、放射キャビティー15側の開口である第1の開口16と、給電導波路25側の開口である第2の開口26と、金属層32の開口である第3の開口33とから構成されている。
【0022】
給電導波路25の上流側には、給電ポート27が設けられている。給電ポート27に信号を伝搬させるための構造(図示せず)としては、例えば導体ピン、マイクロストリップ線路、導波管、ポスト壁導波路等を有してもよい。電気信号(電磁波)を給電ポート27から開口26まで伝搬させる際は、1つの給電ポート27から1つの開口26に連絡してもよく、1つの給電ポート27から2つ以上の開口26に連絡してもよい。給電導波路25は、1段階又は2段階以上の分岐構造(図示せず)を有してもよい。
【0023】
放射キャビティー基板10の上部(外部空間側)の導体層12は、開口16に対向した放射開口面17を有する。放射開口面17を有する放射キャビティー15により、開口面アンテナが構成される。このアンテナは、送信用、受信用いずれにも使用可能である。
放射開口面17の面積は、ポスト壁14で囲まれる放射キャビティー15の断面積と同等又はそれ以下であればよいが、放射開口面17の面積が開口16の面積よりも広いと、電磁波(信号)を外部空間に放射しやすく(又は外部空間から入射させやすく)なり、好ましい。
【0024】
第1の開口16は、ポスト壁14で囲まれる放射キャビティー15の領域内において、放射キャビティー基板10の下部(給電導波路25側)の導体層13に形成されている。
また、第2の開口26は、ポスト壁24で囲まれる給電導波路25の領域内において、給電導波路基板20の上部(放射キャビティー15側)の導体層22に形成されている。
また、第3の開口33は、第1の開口16及び第2の開口26よりも広く形成され、第3の開口33が、第1の開口16及び第2の開口26の両方と重なり合う領域に設けられている。
【0025】
第3の開口33が、面内方向において、第1の開口16及び第2の開口26の両方を含む範囲に広がっている。すなわち、面内方向における第1の開口16の範囲は第3の開口33の範囲内に含まれ、また、第2の開口26の範囲も第3の開口33の範囲内に含まれている。これにより、
図4に示すように、第1の開口16と第2の開口26との位置(例えば中心位置又は周縁位置)が面内方向にずれた場合にも、第3の開口33を通じて第1の開口16と第2の開口26とが連絡(接続)される。また、両基板10,20の面内方向のずれに対して、アンテナ装置の入力特性への影響を低減することができる。
【0026】
第3の開口33の周囲に金属層32が形成される幅は特に限定されず、金属層32が放射キャビティー15及び給電導波路25の領域を含む、面内方向の全面的に形成されてもよい。また、
図5に示すように、第3の開口33の周囲に形成された金属層32が、金属層32が放射キャビティー15及び給電導波路25の領域の一部にのみ形成されてもよい。両基板10,20間の導体層13,22の間で、金属層32の周囲には、金属層32が形成されない空隙部34が設けられてもよい。第3の開口33の形状及び機能に関与しない領域では、金属層32が、縞状、帯状、島状など、所望のパターン状又は不規則形状であってもよい。
【0027】
放射キャビティー基板10は、例えばプリント基板(PCB)から構成することができる。放射キャビティー15を構成する誘電体基板11の比誘電率は、給電導波路25を構成するガラス基板21の比誘電率と近いことが好ましい。放射キャビティー15の誘電体基板11を構成する材料の比誘電率が、給電導波路25のガラス基板21を構成する材料の比誘電率に対して、例えば±1以内、±0.5以内などであることが好ましい。ガラスに近い誘電率を有する樹脂材料として、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂又はこれらの樹脂に無機フィラーを配合した組成物が挙げられる。具体例として、パナソニック社の商品名MEGTRON(登録商標)が挙げられる。
【0028】
本実施形態のアンテナ装置によれば、放射キャビティー基板10及び給電導波路基板20からなる基板計2層の積層構造30により、製造工程が簡便、低コストで、且つ広帯域な入力インピーダンス特性を実現することが可能である。
【0029】
給電導波路25がガラス基板21から構成されることにより、大規模なアンテナアレーシステムを構成する場合でも、給電ロスを極力抑えることができる。一方、放射キャビティー15を構成する誘電体基板11は、誘電正接が2×10
−2程度など、比較的損失の大きい材料を用いても、アンテナの放射効率を90%超とすることができる。従って、給電導波路25には低損失な誘電体材料、放射キャビティー15には比較的損失が大きい低価格な誘電体材料を用いても、高性能で、構造が簡便、安価なアンテナ装置を実現することが可能である。
【0030】
図1に示す積層構造30においては、開口31が空気等の気体で充填されてもよいが、比誘電率が1より大きい誘電体材料が開口31に充填されてもよい。開口31を誘電体材料で充填する工程は、特に限定されないが、両基板10,20を積層する際に、第1の開口16又は第2の開口26の一方又は両方に、誘電体材料が配置されてもよい。この誘電体材料が、金属層32内の第3の開口33の一部又は全部に充填されてもよい。
【0031】
第1の例として、
図6に、放射キャビティー基板10側の開口16には誘電体材料18が充填され、給電導波路基板20側の開口26には誘電体材料28が充填された例を示す。両方の開口16,26を対向させ、金属層32(図示略)を介在させて、両基板10,20を積層することにより、基板間の隙間40が閉じて、
図1、
図4、
図5等と同様な積層構造30が得られる。
【0032】
放射キャビティー基板10側の誘電体材料18を導体層13より厚膜にするか、給電導波路基板20側の誘電体材料28を導体層22より厚膜にすることにより、誘電体材料18,28の一方又は両方が、金属層32の第3の開口33内に突出していてもよい。誘電体材料18,28は、金属層32の開口33の一部又は全部に充填されてもよい。
積層後の積層構造30において、誘電体材料18,28が互いに接触していてもよく、誘電体材料18,28の間に隙間が生じていてもよい。
放射キャビティー基板10側の誘電体材料18と、給電導波路基板20側の誘電体材料28とは、同一の材料でもよく、異なる材料でもよい。
【0033】
放射キャビティー基板10側の誘電体材料18としては、ソルダーレジスト等のレジスト材料を利用することが好ましい。なぜなら、放射キャビティー基板10をプリント基板の製造技術に基づいて製作する際に、レジスト材料を容易に利用することができ、誘電体材料18の準備及び充填工程を別途用意する必要がないためである。例えば、開口16を有する導体層13を形成する際に、開口16の位置に設けるレジスト材料を残して、誘電体材料18とすることもできる。
【0034】
給電導波路基板20側の誘電体材料28としては、樹脂材料等のパッシベーション材料を利用することが好ましい。なぜなら、給電導波路基板20をガラス基板21の加工技術に基づいて製作する際に、パッシベーション材料を容易に利用することができ、誘電体材料28の準備及び充填工程を別途用意する必要がないためである。パッシベーション材料としては、ポリイミド等の樹脂材料、酸化物等の無機材料が挙げられる。
【0035】
第2の例として、
図7には、放射キャビティー基板10側の開口16に、導体層13より厚膜で、給電導波路基板20側の開口26の充填も可能な誘電体材料38を充填する例を示す。開口16,26を対向させ、金属層32(図示略)を介在させて、両基板10,20を積層することにより、基板間の隙間40が閉じて、
図1、
図4、
図5等と同様な積層構造30が得られる。
【0036】
なお、
図7では、導体層13より厚膜の誘電体材料38を放射キャビティー基板10側の開口16に配置した例を示したが、これとは逆に、導体層22より厚膜の誘電体材料38を給電導波路基板20側の開口26に配置することも可能である。いずれの場合も、放射キャビティー基板10側の開口16と、給電導波路基板20側の開口26とを、同一の材料で充填することができる。この誘電体材料38は、金属層32の開口33の一部又は全部に充填されてもよい。
また、別の例として、両基板10,20の一方に配置する誘電体材料38を、2種以上の誘電体材料から構成した後、両基板10,20を積層することも可能である。
【0037】
開口16,26,31,33を充填するための誘電体材料18,28,38は、比誘電率が1より大きい誘電体材料であることが好ましい。空気の比誘電率は約1(約1.000585)であるが、開口充填用の誘電体材料の比誘電率として、例えば1.5〜15程度が挙げられる。開口16,26,31,33に2種類又は3種類以上の誘電体材料が配置されてもよい。
【0038】
放射キャビティー基板10の誘電体基板11を構成する材料の比誘電率をε
1、給電導波路基板20のガラス基板21を構成する材料の比誘電率をε
2とするとき、誘電体材料18,28,38の比誘電率ε
3としては、ε
1−1≦ε
3≦ε
1+1、ε
2−1≦ε
3≦ε
2+1、min(ε
1,ε
2)≦ε
3≦max(ε
1,ε
2)、min(ε
1,ε
2)−1≦ε
3≦max(ε
1,ε
2)+1等の範囲内であることが好ましい。これにより、低損失の帯域を広げることができる。ここで、min(a,b)はa及びbの最小値を表し、max(a,b)はa及びbの最大値を表す。
【0039】
第1の開口16を有する放射キャビティー基板10と、第2の開口26を有する給電導波路基板20とを、第3の開口33を有する金属層32を介して、積層するための方法としては、拡散接合等による固体金属間の接合、半田等の溶融金属を用いた接合が挙げられる。
【0040】
拡散接合等を用いる場合は、開口を有する金属箔などにより、第3の開口33を有する金属層32を構成し、両基板10,20間の導体層13,22の間に、開口33を有する金属層32を挟み込み、導体層13と金属層32と導体層22とを直接接合させる方法が挙げられる。
【0041】
半田を用いる場合は、両基板10,20間の導体層13,22の一方又は両方の上に、あらかじめ半田を設けてから両基板10,20間を閉じて加熱し、半田を溶融させ、その後、冷却により半田を固化させる方法が挙げられる。また、両基板10,20間を閉じる際に、両基板10,20間に溶融半田、粒状半田等の半田を供給してもよい。半田を供給する前には、あらかじめ第3の開口33となる領域にソルダーレジスト等の誘電体材料を設けてもよい。金属層32の形成範囲は、ソルダーレジストの有無に限らず、半田の供給量、フラックス(塗布)の有無等によっても調整可能である。
【0042】
金属層32の厚さは、特に限定されないが、例えば10〜100μmが挙げられる。開口16,26,33の寸法(例えば、
図2〜3のx3,y3,x4,y4等)や寸法比(例えばx3:y3、x4:y4、x3:x4、y3:y4等)は適宜調整可能である。放射キャビティー15側と給電導波路25側の導体層13,22の開口16,26の寸法は、同一であるとは限らず、異ならせることも可能である。開口16,26の寸法が異なる場合も、各寸法や寸法比は適宜調整可能である。
【0043】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0044】
上述の実施形態において、対向する放射キャビティー基板10の導体層13と、給電導波路基板20の導体層22と、これらの間の金属層32とは、それぞれ別の層として図示したが、これらを1層としてもよい。例えば、2つの基板の接合後に、導体層13,22及び金属層32が一体化して界面が不明瞭であっても、製造物の構造及び機能としては異なることはない。
【0045】
すなわち、本実施形態のアンテナ装置は、放射キャビティー15と給電導波路25とが、基板の厚さ方向に積層された積層構造30を有し、放射キャビティー15及び給電導波路25の間に開口31を有する1層又は2層以上の導体層(上述の実施形態における導体層13,22,32に相当)と、放射キャビティー15の内部を構成する誘電体基板11と、誘電体基板11の開口31とは反対側の面を覆う導体層12と、放射キャビティー15の面内方向の周囲を囲むポスト壁14と、給電導波路25の内部を構成するガラス基板21と、ガラス基板21の開口31とは反対側の面を覆う導体層23と、給電導波路25の面内方向の周囲を囲むポスト壁24とを備え、開口31が、基板の厚さ方向の中間部において、基板に接する側よりも広く形成された構造であってもよい。
【0046】
第3の開口が、第1の開口及び第2の開口よりも広くされる方向は、面内方向の全周であってもよく、開口の長手方向(長辺に沿う方向)等、特定の方向であってもよい。
また、本発明により設計した各実施例のアンテナ装置は、例えば、E−band(71〜86GHz)等、所望の帯域をすべてカバーするように設計することが可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
図8の実施例1,2のグラフは、
図1〜3に記載の構成を電磁波解析し、アンテナの入力インピーダンス特性を計算した結果である。
放射開口面17の寸法は、x1=1800μm、y1=2000μmと設定した。
給電導波路25の幅寸法x2は、1700μmと設定した。
放射キャビティー15と給電導波路25との間において、導体層13,22の開口31(第1の開口16及び第2の開口26)の寸法は、x3=875μm、y3=424μmと設定した。また、金属層32の開口(第3の開口33)の寸法は、x4=624μm、y4=1075μmと設定した。
【0049】
誘電体基板11は、厚さ600μmで、比誘電率3.7、誘電正接0.004の誘電材料から構成されていると設定した。
ガラス基板21は、厚さ536μmで、比誘電率3.82、誘電正接0.000336のガラス材料から構成されていると設定した。
給電導波路25と放射キャビティー15との間において、放射キャビティー15側の導体層13の厚さは20μm、給電導波路25側の導体層22の厚さは10μm、金属層32の厚さは30μmと設定した。実施例1,2では、開口16,26,33全体が空気(比誘電率1、誘電正接0)で満たされている。
【0050】
図8の実施例1は、
図1に示すように、面内方向における第1の開口16と第2の開口26との間に変位がない場合である。
図8の実施例2は、
図4に示すように、第1の開口16と第2の開口26との間の変位がX方向に50μmの場合である。
実施例1,2の結果を比べると、|S11|≦−20dBとなる周波数の帯域幅は、変位により劣化する(帯域幅が狭くなる)ものの、反射レベルは、変位により改善している。後述する比較例2の結果でみられた大きな特性の劣化は、実施例2には認められない。これは、給電導波路25と放射キャビティー15との間に、導体層13,22の開口16,26よりも一回り大きい寸法の開口33を有する金属層32が挿入されていることにより、構造変動に対する特性感度が小さくなったためと考えられる。
【0051】
図8の実施例3では、X方向の変位50μm、放射キャビティー15側の導体層13の厚さ20μm、給電導波路25側の導体層22の厚さ10μm、金属層32の厚さ30μmと設定されている点は、実施例2と同様であるが、加えて、放射キャビティー15側の開口16には、厚さ40μmのソルダーレジスト(比誘電率3.5、誘電正接0.04)が配置されている。ソルダーレジストの一部は、導体層13の厚さを超えて、金属層32の開口33内まで突出している。実施例3によれば、変位による特性変動が抑制されている。なお、レジスト等の誘電体材料を開口16,26,33に導入する形態は、様々考えられ、給電導波路25側の開口26に誘電体材料を導入してもよく、放射キャビティー15側と給電導波路25側の両方の開口16,26に誘電体材料を導入してもよい。
【0052】
図9の実施例4には、金属層32の開口33の寸法は、x4=1424μm、y4=1875μmと設定し、それ以外は実施例1と同様にした場合の結果を示す。実施例4でも、実施例1、2と同様に、広帯域で優れた特性を有することが分かる。なお、同様な解析をx4=624〜1424μm、y4=1075〜1875μmの範囲で複数実施したところ、同様に優れた特性を示すことが計算結果から分かっている。金属層32の開口33の寸法は、1424μm×1875μmより大きくすることができる。金属層32の開口33を大きくすると、実施例1,2に比べて格段と特性が改善し、別の効果を有することが明らかになった。
【0053】
図9及び
図10の比較例1は、金属層32とその開口33を省略し、給電導波路25と放射キャビティー15との間において、導体層13,22を拡散接合等により直接接合した場合を示す。また、
図10の比較例2,3は、比較例1と同様にして導体層13,22を拡散接合等により直接接合した際、開口16,26間に変位が生じた場合を示す。比較例2の変位はX方向に50μm、比較例3の変位はY方向に50μmと設定した。
比較例1〜3の結果から、金属層32及びその開口33を省略した場合には、変位により特性変動(劣化)がみられた。特にX方向の変位(比較例2)は、特性に大きく影響(劣化)を及ぼすことが分かる。