特許第6368360号(P6368360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368360炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する方法
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  • 特許6368360-炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368360
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 55/04 20060101AFI20180723BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20180723BHJP
   C10G 21/00 20060101ALI20180723BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20180723BHJP
   C10G 69/14 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C10G55/04
   C10G47/00
   C10G21/00
   C10G9/36
   C10G69/14
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-522564(P2016-522564)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公表番号】特表2016-526595(P2016-526595A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014063854
(87)【国際公開番号】WO2015000846
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】13174775.0
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502132128
【氏名又は名称】サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,アンドリュー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマンス,トーマス ヒューベルテュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】オプリンス,アルノ ヨハネス マリア
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275550(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/019512(WO,A1)
【文献】 米国特許第02374102(US,A)
【文献】 特表2007−527937(JP,A)
【文献】 特表2003−531922(JP,A)
【文献】 特表平05−502052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する方法であって、
(a)炭化水素原料に溶媒抽出ユニット内で溶媒抽出プロセスを行う工程、
(b)工程(a)で得た、溶媒抽出された炭化水素原料から、パラフィンを含むラフィネート分画および芳香族化合物とナフテンを含む分画を分離する工程、
(c)前記芳香族化合物とナフテンを含む分画を水素化分解ユニット内で転化させ、芳香族化合物の含有量の多い分画と軽質パラフィンの多い流れとに分離する工程、および
(d)前記ラフィネート分画を水蒸気分解ユニット内で軽質オレフィンに転化する工程、
を有してなり、
工程(c)を実施する前に、前記芳香族化合物とナフテンを含む分画を、溶媒の存在下での相対的な揮発度の差に基づくストリッピングプロセスによりさらに分別して、その芳香族化合物とナフテンの含有量を増加させ、
前記芳香族化合物とナフテンを含む分画から前記ストリッピングプロセスによる分別で除去された材料を、工程(d)の水蒸気分解ユニットに送る、
方法。
【請求項2】
前記芳香族化合物とナフテンを含む分画から前記ストリッピングプロセスによる分別で除去された材料が、工程(a)の溶媒抽出プロセスに戻される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水素化分解された芳香族化合物の含有量の多い分画からLPG分画を回収する工程、および該LPG分画を前記水蒸気分解ユニットに戻す工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
水素化分解された芳香族化合物の含有量の多い分画からLPG分画を回収する工程、および該LPG分画を、該LPG分画から水素、メタンおよびもしあればH2Sを除去した後、脱水素化ユニットに供給する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記LPG分画を、該LPG分画から水素、メタンおよびもしあればH2Sを除去した後、脱水素化ユニットに供給する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記回収する工程が蒸留ユニットにより行われる、請求項3から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する方法であって、
(a)炭化水素原料に溶媒抽出ユニット内で溶媒抽出プロセスを行う工程、
(b)工程(a)で得た、溶媒抽出された炭化水素原料から、パラフィンを含むラフィネート分画および芳香族化合物とナフテンを含む分画を分離する工程、
(c)前記芳香族化合物とナフテンを含む分画を水素化分解ユニット内で転化させ、芳香族化合物の含有量の多い分画と軽質パラフィンの多い流れとに分離する工程、および
(d)前記ラフィネート分画を水蒸気分解ユニット内で軽質オレフィンに転化する工程、
を有してなり、
水素化分解された芳香族化合物の含有量の多い分画からLPG分画を回収する工程、および該LPG分画を前記水蒸気分解ユニットに戻す工程をさらに含む、
方法。
【請求項8】
前記LPG分画を、該LPG分画から水素、メタンおよびもしあればH2Sを除去した後、脱水素化ユニットに供給する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記回収する工程が蒸留ユニットにより行われる、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
工程(c)を実施する前に、前記芳香族化合物とナフテンを含む分画を、溶媒の存在下での相対的な揮発度の差に基づくストリッピングプロセスによりさらに分別して、その芳香族化合物とナフテンの含有量を増加させる、請求項7から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記芳香族化合物とナフテンを含む分画から前記ストリッピングプロセスによる分別で除去された材料が、工程(a)の溶媒抽出プロセスに戻される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記水蒸気分解ユニットからパイガス含有副生成物を回収する工程、およびその回収したパイガス含有副生成物を前記溶媒抽出プロセスに戻す工程をさらに含む、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記水蒸気分解ユニットからパイガス含有副生成物を回収する工程、および該パイガス含有副生成物を前記水素化分解ユニットに供給する工程をさらに含む、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記回収したパイガス含有副生成物を前記水素化分解ユニットに供給する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記炭化水素原料を、前記溶媒抽出ユニットにおける、前記回収したパイガス含有副生成物の入口の地点より高い位置で前記溶媒抽出プロセスに供給する工程をさらに含む、請求項12から14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
工程(c)を実施する前に、前記溶媒抽出プロセスから溶媒を回収し、その回収した溶媒を工程(a)の溶媒抽出プロセスに戻すことによって、前記芳香族化合物とナフテンを含む分画を、沸点の差に基づいてさらに分別する、請求項1から15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程(c)を実施する前に、前記溶媒抽出プロセスから溶媒を回収し、その回収した溶媒を工程(a)の溶媒抽出プロセスに戻すことによって、前記芳香族化合物とナフテンを含む分画を、沸点の差に基づいてさらに分別し、
前記回収した溶媒を、前記溶媒抽出ユニットにおける、前記回収したパイガス含有副生成物および前記炭化水素原料の両方の入口の地点より高い位置で前記溶媒抽出プロセスに供給する工程をさらに含む、請求項12から15いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記パラフィンを含むラフィネート分画から溶媒を回収する工程、および回収された溶媒を前記溶媒抽出プロセスに戻す工程をさらに含む、請求項1から1いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慣習的に、原油は、蒸留によって、ナフサ、軽油および残油などの数多くの留分(cuts)に処理される。これらの留分の各々には、ガソリン、ディーゼル燃料および灯油などの輸送燃料の製造またはいくつかの石油化学製品および他の処理ユニットへの供給物としてなどの数多くの潜在的な用途がある。
【0003】
約20℃と約200℃の間の沸点を有する、直鎖パラフィン、イソパラフィン、ナフテンおよび芳香族化合物を含む炭化水素の混合物であるナフサは、水蒸気分解により処理して、軽質オレフィン、芳香族種(特に、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン、C8−芳香族化合物と称される)および他の高価値の化学物質を製造することができる。この技術により、9以上の炭素原子を有する置換芳香族化合物種(C9+芳香族化合物)およびしばしば2つ以上の芳香環が炭素を共有している、複数の芳香環のタイプの構造を有する種(縮合芳香族化合物)を含む数多くのより価値の低い副生成物も生成される。これらの後者の種は、ナフサ供給物中に存在するか、またはナフサ供給物中のナフテンから形成されたかの芳香族種から形成されると考えられる。
【0004】
同じような沸点を有する、パラフィン種、オレフィンジエン種およびスチレン種、並びにチオフェンなどの硫黄含有有機種も含有する混合物中に、C8芳香族化合物が生成される。この材料は、分解ガソリンと呼ばれ、略してパイガス(Pygas)と称される。パイガスから純粋な芳香族化合物を製造することが望ましい場合、パイガスを、二段階の水素化処理(いくつかのオレフィン分子と共に非常に反応性であるジエン分子およびスチレン分子を飽和させる第一段階およびオレフィンの飽和を完了し、有機硫黄種を水素化脱硫する第二段階)により、次いで、溶媒抽出により処理して、純粋な芳香族抽出物および非芳香族種を含有するラフィネート流を生成することができる。
【0005】
液体炭化水素流の従来の水蒸気分解の特徴は、価値の低い副生成物であるC9+芳香族化合物および縮合芳香族化合物の生産と、パイガス副生成物の水素化処理および溶媒抽出処理の二段階を必要とすることである。
【0006】
溶媒抽出を必要とせずに純粋な芳香族化合物を生成するためのナフサの水素化分解の特徴は、非常の多量の水素を必要とすることである。何故ならば、ナフサは、典型的に、芳香族種よりも、著しく大多数のパラフィン種(単純な分留により分離を促進するために、より沸点の低い分子に水素化分解しなければならない)を有するからである。水素要件は、供給物中に存在するパラフィン種の量に比例し、そのため、ナフサ流などの大半がパラフィンである流れについて、非常の多量の水素が必要とされる。さらに、水素化分解反応により生じる熱を管理しなければならない。典型的なナフサなどのまさにパラフィンである供給流について、これには、反応装置および熱交換器の複雑な配置が必要であろうし、これにより資本コストが増してしまう。
【0007】
典型的なナフサから純粋な芳香族種を製造するために溶媒抽出技術を使用する結果、芳香族化合物の抽出に選択的な溶媒は、軽質の非芳香族化合物およびナフテン種を溶解させることにもいくぶん選択的であり、それゆえ、溶媒抽出塔の基部から出る溶媒流は、これらの非芳香族化合物種を高レベルで含有することとなる。これは、溶解種を蒸留により溶媒から分離する場合、最後の蒸留塔(抽出塔と呼ばれることがある)において生成される芳香族流が非芳香族種を実質的に含まないことを確実にするために、溶媒抽出ユニット(ストリッピング塔と呼ばれることがある)の最初の蒸留区域において溶媒からこれらの種を蒸発によりストリッピングする上で相当なエネルギーが消費されることを意味する。抽出装置への供給物中に存在したナフテン種は、非芳香族ラフィネート流中に抽出装置を最終的に出て、それゆえ、脱芳香族化流中に存在するような様式で、溶媒からストリッピングされ、抽出塔に戻るように供給される。その脱芳香族化流は、水蒸気分解装置に供給され、そこで、芳香族種に部分的に転化され、その芳香族種のいくらかは、さらに反応させられて、C9+芳香族化合物および縮合芳香族種などの価値の低い副生成物を生成するであろう。
【0008】
さらに、芳香族化合物を溶解させるのに選択的な溶媒は、チオフェンなどの特定の有機硫黄種を吸着するのにも選択的である。その結果、相当なレベルの有機硫黄種を含有する典型的なナフサなどの供給物に、従来の溶媒抽出技術を使用することによって、有機硫黄化合物による汚染のない芳香族抽出物材料を製造することは難しいであろう。その結果として、そのようなユニットへの供給物には、溶媒抽出工程の前に有機硫黄種を除去するための処理の前に、水素化脱硫が必要であろう。これにより、そのプロセスに著しいコストと複雑さが加わるであろう。
【0009】
水蒸気分解のための直鎖パラフィン流および第2の混合流を生成するための分子篩技術によりナフサを処理する効果に、ナフサ中の直鎖パラフィン種(典型的に、ナフサの約30%)からオレフィンのみが生成され、その結果、供給物の単位当たりのオレフィンの収率は、従来の水蒸気分解よりもずっと低いという事実がある。これは、純粋な芳香族化合物を、水蒸気分解装置に送られない混合炭化水素流から製造できるようにするために、いくつかの追加の処理工程(水素化脱硫、接触改質および溶媒抽出)を必要とすることを意味する。さらに、ナフサ中に存在するイソパラフィン材料の多くは、未転化のままであり、このプロセスからの有用な化学物質の収率がさらに低下してしまう。
【0010】
ナフサおよびいくつかの軽油などの軽質原油留分は、炭化水素供給流を蒸発させ、水蒸気で希釈し、次いで、炉(反応装置)管内で短い滞留時間(1秒未満)、非常に高温(800℃から860℃)に曝す、水蒸気分解などのプロセスによって、軽質オレフィンおよび単環芳香族化合物の製造に使用できる。そのようなプロセスにおいて、供給流中の炭化水素分子は、供給分子と比べて(平均で)より短い分子および水素対炭素比がより低い分子(オレフィンなど)に転換される。このプロセスにより、有用な副生成物としての水素並びにメタンおよびC9+芳香族化合物と縮合芳香族種などの大量の価値の低い副産物が生成される。
【0011】
典型的に、残油などのより重質の(または沸点のより高い)芳香族種は、原油からのより軽質(蒸留可能な)生成物の収率を最大にするために原油精製所内でさらに処理される。この処理は、水素化分解(それにより、水素化分解供給物は、水素の同時添加により、供給分子のある分画をより短い炭化水素分子に分解する条件下で、適切な触媒に曝露される)などのプロセスによって行うことができる。重質精製流の水素化分解は、典型的に、高圧かつ高温で行われ、それゆえ、資本コストが高く付く。
【0012】
残油などの重質精製流の従来の水素化分解の別の側面は、これらは、所望の全体の転化率を達成するために選択された妥協条件下で行われることである。供給流は、分解の容易さが様々である種の混合物を含んでいるので、これにより、比較的水素化分解が容易な種の水素化分解によって形成された蒸留可能な生成物のいくらかが、水素化分解がより難しい種を水素化分解するのに必要な条件下でさらに転化されることになる。これにより、水素の消費量およびそのプロセスに関連する熱管理の難しさが増し、またより価値のある種を犠牲にして、メタンなどの軽質分子の収率が増してしまう。
【0013】
特許文献1は、オレフィンおよび芳香族化合物などの付加価値材料を製造しながら、元の重質炭化水素原油原料よりも、密度が低いまたは軽質であり、より少ない硫黄しか含有しない油に重質炭化水素原油原料をアップグレードするプロセスであって、特に、その重質炭化水素原油原料の一部を油溶性触媒と混ぜ合わせて、反応体混合物を形成する工程、前処理した原料を比較的低い水素圧下で反応させて、第1の部分が軽油を含み、第2の部分が重質原油残留物を含み、第3の部分が軽質炭化水素ガスを含む生成物流を形成する工程、および軽質炭化水素ガスの一部を分解ユニットに導入して、水素および少なくとも1種類のオレフィンを含有する流れを生成する工程を有してなるプロセスに関する。
【0014】
特許文献2は、接触水素化前処理プロセスを使用した、特に、それに続く熱分解装置(coker refinery)の効率を改善するために水素化脱金属化(HDM)触媒と水素化脱硫(HDS)触媒の連続使用による、原油、減圧残油、タールサンド、ビチューメンおよび真空軽油を含む重油を処理するプロセスに関する。
【0015】
特許文献3は、芳香族化合物を含有するナフサ流を水蒸気分解するオレフィンプロセスであって、水蒸気分解炉の流出物からオレフィン流および分解ガソリン流を回収する工程、分解ガソリン流を水素化し、そこからC6〜C8流を回収する工程、芳香族化合物を含有するナフサ流を水素化処理して、ナフサ供給物を得る工程、一般的な芳香族化合物抽出ユニット内でC6〜C8流をナフサ供給流で脱芳香族化して、ラフィネート流を得る工程、およびそのラフィネート流を水蒸気分解炉に供給する工程を有してなるプロセスに関する。
【0016】
特許文献4は、全範囲ナフサ原料である、石油、天然ガスコンデンセート、または石油化学原料などの原料から化学成分を抽出するプロセスであって、その全範囲ナフサ原料に脱硫プロセスを行う工程、脱硫された全範囲ナフサ原料からC6からC11炭化水素分画を分離する工程、芳香族化合物抽出ユニット内で、そのC6からC11炭化水素分画から、芳香族化合物分画、芳香族化合物前駆体分画およびラフィネート分画を回収する工程、その芳香族化合物前駆体分画中の芳香族化合物前駆体を芳香族化合物に転化させる工程、および芳香族化合物抽出ユニットにおける工程から芳香族化合物を回収する工程を有してなるプロセスに関する。
【0017】
特許文献5は、炭化水素原料から、オクタン価が高く、硫黄含有量が少ない炭化水素分画を製造するプロセスであって、少なくとも以下の段階:炭化水素原料の水素化脱硫段階、その水素化脱硫段階から得られる流出物の全てまたは一部より芳香族化合物を抽出するための少なくとも1つの段階を含み、その抽出により、原料に対してパラフィンの豊富なラフィネートおよびガソリンプールに送られる芳香族化合物の豊富な抽出物が生じ、そのパラフィンの豊富なラフィネートの一部が、水蒸気分解ユニットに送られて、軽質オレフィンがそこで生成されるか、または接触改質ユニットに送られて、芳香族化合物がそこで生成される、プロセスに関する。
【0018】
特許文献6は、管状反応区域内で、エチレンまたはプロピレンに対する選択率が高いように、炭化水素を分解するプロセスであって、(a)軽油範囲内で沸騰する石油蒸留物を処理して、その蒸留物から芳香族化合物を選択的に分離する工程、(b)その処理された供給物のラフィネート炭化水素を希釈蒸気と混合する工程、(c)その混合物を管状反応区域に供給する工程、(d)その混合物を加熱して、処理された供給物を、エチレンまたはプロピレンに対する選択率が高いように、分解し、その反応区域からの流出物を急冷し、エチレンまたはプロピレンを分離し、回収する工程を有するプロセスに関する。
【0019】
特許文献7は、エチルベンゼンがあまり含まれないキシレンとベンゼンを製造するプロセスであって、トルエン、C7〜C9パラフィン、オレフィン、ナフテン、エチルベンゼンおよびキシレンを含む、分別された分解ガソリン芳香族化合物流が、水素と混合され、600°Fから約1000°F(約320℃から約540℃)の範囲内の温度、ゲージ圧で約100から1000psi(約0.69から約6.9MPa)の範囲の圧力、約1:1から50:1の水素対炭化水素のモル比、1から20秒の範囲内の接触時間、および触媒を含む条件下で水素化脱アルキル化/トランスアルキル化反応に施されるプロセスに関する。
【0020】
特許文献8は、芳香族炭化水素を製造するプロセスであって、炭化水素のナフサに、改質ガソリン反応生成物においてナフテンを芳香族炭化水素に転化する条件下で、接触改質を行う工程、その改質ガソリンを蒸留して、重質改質ガソリンから8以下の炭素の化合物を分離する工程、その重質改質ガソリンをゼオライト触媒と接触させ、それによって、エチルベンゼンおよび9以上の炭素原子のアルキルベンゼンをベンゼン、トルエンおよびキシレンに転化する工程、その接触の生成物を蒸留して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを分離する工程を含むプロセスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2006/122275号
【特許文献2】国際公開第2011/005476号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/194900号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/092232号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/300932号明細書
【特許文献6】英国特許第1248814号明細書
【特許文献7】米国特許第4150061号明細書
【特許文献8】米国特許第4341622号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、ナフサを芳香族化合物および水蒸気分解装置の原料にアップグレードする方法を提供することにある。
【0023】
本発明の課題は、ナフサを芳香族化合物および脱水素化ユニットの原料にアップグレードする方法を提供することにある。
【0024】
本発明の別の課題は、ナフテンおよび芳香族化合物がより重質の生成物を生成するのを防ぐことによって、典型的なナフサおよび他の液体炭化水素分解装置の供給物からの高価値の生成物の収率を最大にすることにある。
【0025】
本発明の別の課題は、ナフテンがメタンを生成するのを防ぐことによって、典型的なナフサおよび他の液体炭化水素分解装置の供給物からの高価値の生成物の収率を最大にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを回収する方法であって、
(a)炭化水素原料に溶媒抽出ユニット内で溶媒抽出プロセスを行う工程、
(b)工程(a)で得た、溶媒抽出された炭化水素原料から、パラフィンを含むラフィネート分画および芳香族化合物とナフテンを含む分画を分離する工程、
(c)この芳香族化合物とナフテンを含む分画を水素化分解ユニット内で転化させ、芳香族化合物の含有量の多い分画と軽質パラフィンの多い流れとに分離する工程、および
(d)そのラフィネート分画を水蒸気分解ユニット内で軽質オレフィンに転化する工程、
を有してなる方法に関する。
【0027】
そのような方法に基づいて、本発明の課題の1つ以上が達成される。
【0028】
そのような方法、すなわち、溶媒抽出ユニット(3つの主要な炭化水素処理塔:溶媒抽出塔、ストリッピング塔および抽出塔を含む)の、水蒸気分解装置と共に「抽出水素化分解/HDSユニット」との組合せによれば、典型的なナフサおよび他の液体炭化水素分解装置の供給物からの高価値生成物の収率を最大にすることができる。本発明の方法において、溶媒抽出プロセスは、ナフサを、パラフィン(イソおよび直鎖の両方)のみ(またはほぼパラフィンのみ)を含有するものと、芳香族分子とナフテン分子の両方を含有するものの2つの流れに分離するために使用される。ストリッピング塔および溶媒抽出塔を正しく作動させることによって、ナフテンのラフィネートへの損失をかなり避けることができる。
【0029】
本発明によれば、芳香族化合物およびナフテン化合物の両方が抽出され、次いで、水素化分解ユニットにより処理される。そのような水素化分解ユニットが、硫黄化合物をH2Sに転化できることが好ましく、ナフテンの相当な部分を芳香族化合物に転化し、残りのナフテンを抽出物中に存在する任意のパラフィンと共に水素化分解(LPGに)する。これは、本発明によれば、抽出プロセスより先に、水素化脱硫(HDS)の必要がないことを意味する。本発明の方法によれば、本発明の水素化分解ユニットは、単純な除去のために、硫黄種をH2Sに転化することができるので、硫黄化合物が、抽出装置に入り、芳香族分画とナフテン分画により(ある程度または完全に)抽出することができる。このように、本発明の方法は、ナフテンの芳香族化合物と一緒の共抽出および水素化分解ユニットにおける、これらの材料の芳香族化合物への転化、すなわち、これらを芳香族化合物に転化するように水素化分解ユニットを設計し、作動させることを言及する。工程(b)および(c)の表現に基づいて、抽出物がナフテンを含有することが明白であり、ナフテンの半分超が抽出物中にあることが好ましい。
【0030】
溶媒抽出プロセスに由来するラフィネート分画は、芳香族化合物を実質的に含まず、その溶媒抽出プロセスの炭化水素原料よりも著しくナフテンが少ない。
【0031】
本発明の方法において、パラフィン流が典型的な水蒸気分解装置に供給され、そこで、軽質オレフィンおよび他の高価値の化学物質が高収率で生成される。パイガス副生成物(未分離のナフサに関するよりもずっと低い収率)を溶媒抽出ユニットに送って、水蒸気分解ユニット内で生成された芳香族化合物およびナフテンを除去することが好ましい。溶媒抽出ユニットからの抽出物流は、選択的水素化分解装置/HDSユニットにより処理されて、純粋な芳香族生成物および(少量の)LPG流を生成し、このLPG流は、オレフィンを生成するために分解炉に供給することができる。
【0032】
本発明の方法の結果として、本願の発明者等は、芳香族化合物およびナフテン種は、水蒸気分解の前に供給物から除去されるので、これらの材料をC9+および縮合芳香族化合物種にダウングレードすることが、大幅に防がれることを発見した。
【0033】
本発明の方法によれば、多量の水素の消費およびパイガスとナフサの供給物中に存在する(分解の価値のより高い)非芳香族炭化水素のLPG種へのダウングレードが、パイガスを溶媒抽出塔内の適所に供給して、パイガスとナフサの供給物中の芳香族種とナフテン種を抽出しながら、存在するパラフィン種の大半を分離し、水蒸気分解装置に供給できるラフィネート流中で蒸留塔から出させることによって避けることができる。このようにして、水素化分解される(それゆえ、水素を消費し、LPGにダウングレードされる)パイガスとナフサの供給物中のパラフィン種の量が大幅に減少する。
【0034】
さらに、本発明によれば、所望の芳香族の純度を達成できるために水素化分解されなければならないパラフィン種の量が大幅に減少する。このことは、ナフサを溶媒抽出塔の適所に供給して、芳香族種とナフテン種を溶媒中に溶解させながら、ナフサ中に存在するパラフィン種の大半を分離し、水蒸気分解装置に供給できるラフィネート流中で蒸留塔から出させることによって達成される。このことにより、水素化分解されなければならないこれらの種の量が大幅に減少し、それゆえ、水素消費量、分解の価値のいずれのダウングレードによる損失およびそれに続く水素化分解ユニットのサイズと複雑さが最小になる。
【0035】
本発明の方法において、ナフサなどの液体炭化水素供給物は、溶媒抽出工程において、適切な溶媒抽出塔内で芳香族化合物の分離に選択的な不混和性溶媒と最初に接触させられる。芳香族化合物の分離に選択的な不混和性溶媒の沸点は、分離すべき成分、すなわち、芳香族化合物とナフテンを含有する抽出物の沸点よりも高くなければならない。不混和性溶媒と抽出物との間の好ましい温度差は10から20℃の範囲にある。その上、不混和性溶媒は、適用温度で分解しないものとする、すなわち、不混和性溶媒は、特定の工程温度で温度安定性でなければならない。溶媒の例に、スルホラン、テトラエチレングリコールまたはN−メチルピロリドンがある。これらの種は、大抵、水および/またはアルコールなどの、他の溶媒または他の化学物質(共溶媒と呼ばれることもある)との組合せで使用される。本発明の方法において水素化分解触媒を損傷する危険を最小にするために、スルホランなどの非窒素含有溶媒を使用することが好ましい。その溶媒(多量の溶解炭化水素を含有する場合でさえ)は、炭化水素種よりも密度が高いので、抽出塔の基部とは別である傾向にあり、そこから引き出される。この「富化溶媒(rich solvent)」(すなわち、溶解した炭化水素を含有する溶媒)は、供給物の液体中に存在した芳香族種、並びに軽質パラフィン、ナフテン種および供給物中に存在する有機硫黄種のいくつかなどの、溶媒中にいくぶん可溶性である他の種を含有している。従来の技術では、非芳香族炭化水素種の存在により、これらの種を蒸留塔中の「富化溶媒」からストリッピングし(沸点がより低い芳香族化合物のいくつかと共に)、溶媒抽出塔に戻すことを必要とする難点が生じる。芳香族生成物流が非芳香族化合物の汚染物を実質的に含まないことを確実にするために、たとえ微量でもこれらの種を溶媒からストリッピングしつくすのにかなりの量のエネルギーを費やす必要がある。
【0036】
本発明の方法において、時間当たりの新しい供給物速度(ナフサと任意のパイガスの合計)に対する溶媒の時間当たりの循環速度の比は、1:1から10:1(質量:質量基準)の範囲にあるであろう。好ましい溶媒:供給物の比は、2:1から5:1の範囲にある。
【0037】
溶媒および供給物の両方とも、20℃と約90℃の間に加熱されてよく(例えば、熱交換器または蒸気加熱装置の使用により)、好ましい予熱の程度は、溶媒容量(溶媒の温度と共に増加する)と選択率(溶媒の温度と共に減少する)との間の最適なバランスとなるように、またラフィネート流中の著しい蒸気圧の生成を避けるように、選択される。供給物および溶媒の好ましい温度(それゆえ、溶媒抽出塔に一般的な温度)は、30から60℃の範囲にある。
【0038】
本発明による方法において、ストリッピング塔内の溶媒から非芳香族種の全てを除去する必要はそれほどなく、抽出物流は水素化分解ユニットに供給され、このユニットは、パラフィン種を、ベンゼンと共沸(co-boil)しないLPG分子に転化するのに効率的である。好ましい実施の形態において、ナフテン種は、溶媒中に維持され、ストリッピング塔を出る。何故ならば、これらの種は、それに続く水素化分解反応装置内で芳香族種に転化されるからである。
【0039】
本願の発明者等は、本発明による方法において、溶媒抽出ユニットからの芳香族抽出物が選択的な水素化分解および水素化脱硫ユニットにおいてさらに処理されるので、溶媒抽出ユニットから販売品質の芳香族化合物抽出物を直接生成する必要がないことを発見した。この選択的なユニットは、供給物中の芳香族種を保護すると同時に、ナフテン種の一部を芳香族種に脱水素化し、非芳香族種(残りのナフテン種およびパラフィン種を含む)をLPG種(単純な蒸留によって、芳香族化合物種から容易に分離できる)に水素化分解し、その流れ中に存在するどのような有機硫黄種も水素化脱硫するのに適している。それゆえ、「富化溶媒」からナフテン種をストリッピングしつくすことは必要でも、さらに望ましくもない。何故ならば、これら(の少なくとも一部)は、後で、続く処理ユニットにおいて芳香族化合物に転化されるからである。さらに、「富化溶媒」から低レベルのパラフィン種を除去する必要はない。何故ならば、これらは、後で、水素化分解されて、単純な蒸留によって芳香族化合物から分離できる軽質パラフィンを生成し、所望であれば、供給流としてその分解装置に送られるからである。それゆえ、軽質非芳香族炭化水素のストリッピングの程度は、富化溶媒のストリッピングに必要なエネルギーの価値と、溶媒からストリッピングしつくされた場合にラフィネート流中に含まれるであろう軽質非芳香族種の分解価値と比べた、続く水素化分解ユニットにおいて生成されるLPG種の分解価値の差と共に、後での水素化分解工程において消費される水素の価値とについて、経済的に最適化される。「富化溶媒」のストリッピングの程度を低下させることによって、本発明は、従来の溶媒抽出プロセスと比べて著しくエネルギーを節約し、また、ナフサ流からの芳香族化合物の全収率を増加させながら(ナフテン種は、水蒸気分解装置において転化されるであろうよりも、水素化分解ユニットにおいて、有用な芳香族化合物により効率的に転化されるので)、溶媒抽出ユニットの資本コストも減少させるであろう(ストリッピング塔および関連設備のサイズを減少させることができるので)。その上、前記選択的な水素化分解ユニットは水素化脱硫を行うので、溶媒抽出の前に供給物を脱硫する必要がない。
【0040】
本発明の方法に基づいて、ナフテン種(直鎖とイソの両方)の大半は、水蒸気分解装置に供給されるラフィネート流中に存在し、それゆえ、供給物のナフサから生成することができる軽質オレフィン生成物および他の価値のある生成物の収率の百分率が大幅に増加する。さらに、抽出物流(芳香族化合物、ナフテン種並びに低レベルの他の軽質炭化水素および有機硫黄を含有する)から高純度の芳香族化合物の生成物を生成するのに必要な工程が大幅に減少する。何故ならば、単一工程により、単純な蒸留によって純粋な芳香族化合物を生成できるように、芳香族種が保護され、ナフテン種が追加の芳香族化合物に転化され、非芳香族炭化水素が水素化分解され、有機硫黄種が水素化脱硫されるからである。
【0041】
上述したように、本発明の方法において、抽出塔の基部を出る分画であって、溶媒中に溶解したいくつかの軽質パラフィン種と共に芳香族化合物およびナフテンを含む分画を、ストリッピングプロセスによってさらに分別して、芳香族化合物とナフテンの含有量を増加させる。このストリッピングプロセスは、相対的な揮発度の差に基づく。次いで、溶媒抽出装置の基部を出る富化溶媒流は、ストリッピング塔内で処理されて、溶媒中に溶解したパラフィン種の量を減少させ、それゆえ、水素化分解装置に供給される抽出物流中に存在するであろう。この第2の塔は、単純な沸点ではなく、溶媒の存在下での相対的な揮発度に基づいて、各種を分離する働きをする。
【0042】
好ましい実施の形態において、前記芳香族化合物とナフテンを含む分画は、溶媒抽出プロセスから溶媒を回収し、その回収した溶媒を工程(a)の溶媒抽出プロセスに戻すことによって、さらに分別される。この分別は相対的な揮発度の差に基づく。
【0043】
本発明による方法の分離区域の最後の塔において、溶媒中に溶解した芳香族化合物は、(所望の)ナフテンおよび任意の(不要の)パラフィン炭化水素と共に、蒸留によって溶媒から除去される。溶媒回収塔における基準温度は、溶解した炭化水素種の実質的に全てを蒸発させることを確実にしながら、溶媒の蒸発を最小にするように設定される。その結果、好ましい基準温度は、使用される特定の溶媒に応じて異なる。抽出物を実質的に完全に蒸発させるのに必要な温度を最小にし、それゆえ、溶媒に対する熱的に誘起されるどのような劣化も減少させるために、この蒸留は、大気圧より低い圧力で行ってもよい。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態によれば、炭化水素原料中のパラフィンのほとんどが分離され、水蒸気分解ユニットに送られるが、これらのパラフィンの一部、例えば、10%は、水素化分解ユニットに供給される抽出物中にまだ存在する。さらに、これらのパラフィンのいくらかは、単純な蒸留によって芳香族種から分離するのが難しい。したがって、水素化分解ユニットの目的は、これらのパラフィンを、例えば、C5流およびBTX流を生成する分離ユニットにおいて、単純な蒸留によって、BTX芳香族化合物から分離するのが容易であり、水蒸気分解ユニットの適切な供給物である、より小さい種(LPG)水素化分解することである。これに加え、水素化分解ユニットは、その供給物中のナフテン種の少なくとも一部をBTX芳香族化合物に転化させるような様式で作動され、その残りは、LPG種に水素化分解される。
【0045】
本発明の方法は、水蒸気分解ユニットからパイガス含有副生成物を回収する工程、およびその回収したパイガス含有副生成物を前記溶媒抽出塔に戻す工程をさら含む。
【0046】
上述したように、回収された溶媒は、前記溶媒抽出塔における、回収したパイガス含有副生成物および炭化水素原料の両方の入口の地点より高い位置でこの溶媒抽出塔に供給される。
【0047】
本発明の方法は、前記炭化水素原料を、前記溶媒抽出塔における、回収したパイガス含有副生成物の入口の地点より高い位置でこの溶媒抽出塔に供給する工程をさらに含む。
【0048】
好ましい実施の形態によれば、前記方法は、水素化分解された芳香族化合物の含有量の多い分画からLPG分画を回収する工程、およびそのLPG分画を水蒸気分解ユニットに戻す工程をさらに含み、その回収は蒸留ユニットにより行われることが好ましい。
【0049】
本発明の好ましい実施の形態によれば、水蒸気分解ユニットの入口への供給流は、溶媒抽出プロセスからの合流ラフィネートを含む。それゆえ、そのような供給流は、炭化水素原料中のパラフィンの大部分に加え、炭化水素原料中に存在したよりも著しく少量のナフテンおよび炭化水素原料中に存在する非常にわずかな芳香族種も同様に含む。
【0050】
本発明の好ましい実施の形態によれば、溶媒抽出プロセスからの抽出物が水素化分解ユニットに供給される。それゆえ、そのような抽出物は、炭化水素原料中に存在する実質的に全ての芳香族化合物種に加え、その炭化水素原料中に存在したナフテンの大半と、さらにその炭化水素原料中に存在した著しく少量のパラフィンを含む。
【0051】
本発明の好ましい実施の形態によれば、水素化分解ユニットからの軽質生成物は、主にエタン、プロパンおよびブタンを含み、6以上の炭素原子を有する種を実質的に含まない。
【0052】
溶媒効率の観点から、パラフィンを含むラフィネート分画から溶媒を回収し、その回収した溶媒を溶媒抽出プロセスに戻すことが好ましい。
【0053】
上述したように、LPG分画、特に、そのC3〜C4分画を水素化ユニットに供給することができる。
【0054】
本発明の方法において処理すべき適切な炭化水素原料の例は、全範囲ナフサ、200℃未満の沸点を有する炭化水素蒸留物および灯油の群から選択される。
【0055】
20℃ほど低い初期沸点を有する供給物が本発明の方法に適しているが、好ましい原料は、沸点が最低の所望の抽出生成物であるベンゼンおよびシクロヘキサンの沸点より極わずかに低い沸点を有する炭化水素混合物であろう。本願の発明者等は、これは、沸点の低いパラフィンは、芳香族選択的溶媒中に適度に可溶であり、それゆえ、抽出され、ストリッピング塔中の溶媒からの分離を必要とするであろうからであると推測する。そのストリッピング塔の頭頂流が水蒸気分解装置に直接送られる場合、抽出塔の前にこれらの軽質種を除去するために供給物を予め蒸留することには本当の利点はないが、ストリッピング塔の頭頂流を抽出塔に戻す(芳香族の損失を最小にするために)場合、ストリッピング塔において分離された軽質パラフィン種の一部(多く)は、溶媒中に再び溶解し、それゆえ、抽出塔とストリッピング塔との間で一周し、著しいエネルギーを消費する傾向にある。
【0056】
水素化分解ユニットにおける工程条件および触媒は、好ましくは、水素化脱硫反応も行われるようなものである。抽出塔からの抽出物は水素化分解/水素化脱硫ユニットに供給され、そこで、非芳香族化合物種は、水素化分解される(パラフィン種の場合)か、芳香族種に転化される(主に、ナフテン種の場合)。このユニットにおいて、硫黄含有種は、H2Sおよび軽質炭化水素に転化され、抽出物を効果的に脱硫する。窒素含有化合物は、このユニットにおいてアンモニアを生成し、アンモニアはこのプロセスに使用される触媒の毒として働くことが予測されるであろうから、抽出工程に非窒素含有溶媒(上述したように、スルホランなど)が使用されること、または水素化分解プロセスの区域における処理の前に、抽出物が酸性粘土床(窒素含有種を吸収する)により処理されることが好ましい。
【0057】
水素化分解/HDSプロセス工程に好ましい作動条件は、0.5H-1-1の間のWHSV、2:1と4:1の間のH2:炭化水素比、ゲージ圧で100psiと400psi(689,475Pa(約690kPa2,757,902Pa(約2800kPa)の間の圧力、および470℃と550℃の間の反応装置の入口温度である。この水素化分解/水素化脱硫処理工程に適切な触媒としては、アルミナおよびHZSM−5等の酸性形態ゼオライトなどの担持材料上に担持されたPtおよびPdなどの貴金属を含む触媒が挙げられる。これらの作動条件が、未抽出パイガスに関する所定の好ましい結果を有するものに基づくことが好ましい。
【0058】
抽出塔における芳香族化合物と非芳香族種の分離は、選択した溶媒中のこれらの部類の分子の異なる相対的溶解度に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する本発明の方法の実施の形態を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0060】
ここに用いた「原油」という用語は、地層から抽出された未精製形態の石油を称する。アラビアン・ヘビー原油、アラビアン・ライト原油、他の湾岸国の原油、ブレント原油、北海原油、北および西アフリカ産原油、インドネシア産原油、中国産原油、およびそれらの混合物だけでなく、シェール油、タールサンドおよびバイオ油を含むどんな原油も、本発明の方法のための原料物質として適している。原油が、ASTM D287標準により測定して、20°APIを超えるAPI比重を有する従来の石油であることが好ましい。使用する原油が、30°APIを超えるAPI比重を有する軽質原油であることがより好ましい。その原油がアラビアン・ライト原油を含むことが最も好ましい。アラビアン・ライト原油は、典型的に、32〜36°APIの間のAPI比重および1.5〜4.5質量%の間の硫黄含有量を有する。
【0061】
ここに用いた石油化学製品("petrochemicals"および"petrochemical products")という用語は、燃料として使用されない、原油に由来する化学製品に関する。石油化学製品は、化学製品および高分子を製造するための基礎原料として使用されるオレフィン類および芳香族化合物を含む。高価値の石油化学製品としては、オレフィン類および芳香族化合物が挙げられる。典型的な高価値のオレフィンとしては、以下に限られないが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン−1、イソブチレン、イソプレン、シクロペンタジエンおよびスチレンが挙げられる。典型的な高価値の芳香族化合物としては、以下に限られないが、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンが挙げられる。
【0062】
ここに用いた「燃料」という用語は、エネルギー担体として使用される原油に由来する生成物に関する。明確な化合物の一群である石油化学製品とは異なり、燃料は、典型的に、様々な炭化水素化合物の複合混合物である。石油精製所で通常製造される燃料としては、以下に限られないが、ガソリン、ジェット燃料、ディーゼル燃料、重油燃料、および石油コークスが挙げられる。
【0063】
「芳香族炭化水素」または「芳香族化合物」という用語は、当該技術分野で非常によく知られている。したがって、「芳香族炭化水素」という用語は、仮想的局在構造(ケクレ構造)の安定性より著しく大きい安定性(非局在化のために)を有する環状共役炭化水素に関する。所定の炭化水素の芳香族性を決定するための最も一般的な方法は、1H NMRスペクトルにおけるジアトロピシティー(diatropicity)、例えば、ベンゼン環のプロトンについて7.2から7.3ppmの範囲にある化学シフトの存在の観察である。
【0064】
「ナフテン炭化水素」または「ナフテン」もしくは「シクロアルカン」という用語は、ここでは、既定の意味を有するものとして使用され、したがって、その分子の化学構造中に炭素原子の環を1つ以上有するタイプのアルカンに関する。
【0065】
「オレフィン」という用語は、ここでは、既定の意味を有するものとして使用される。したがって、オレフィンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素化合物に関する。「オレフィン」という用語が、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン−1、イソブチレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの2つ以上を含む混合物に関することが好ましい。
【0066】
ここに用いた「LPG」という用語は、「液化石油ガス」という用語の既定の頭字語を指す。LGPは、概して、C2〜C4炭化水素のブレンド、すなわち、C2、C3、およびC4炭化水素の混合物からなる。
【0067】
ここに用いた「BTX」という用語は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物に関する。
【0068】
ここに用いたように、「#」が正の整数である、「C#炭化水素」という用語は、#個の炭素原子を有する全ての炭化水素を記述することを意味する。さらに、「C#+炭化水素」という用語は、#以上の炭素原子を有する全ての炭化水素分子を記述することを意味する。したがって、「C5+炭化水素」という用語は、5以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を記述することを意味する。したがって、「C5+アルカン」という用語は、5以上の炭素原子を有するアルカンに関する。
【0069】
ここに用いたように、「水素化分解ユニット」または「水素化分解装置」という用語は、水素化分解プロセス、すなわち、高い水素分圧の存在により支援される触媒分解プロセスがその中で行われる精製ユニットに関する;例えば、Alfke et al. (2007) loc.citを参照のこと。このプロセスの生成物は、飽和炭化水素および、温度、圧力、空間速度および触媒活性などの反応条件に応じて、BTXを含む芳香族炭化水素である。水素化分解に使用される工程条件は、一般に、200〜600℃の工程温度、0.2〜20MPaの高圧、0.1〜10h-1の間の空間速度を含む。
【0070】
水素化分解反応は二機能性機構により進み、この機構は酸性機能と水素化機能を必要とし、酸機能は、分解と異性化を与え、供給物中に含まれる炭化水素化合物に含まれる炭素−炭素結合の破壊および/または再配置をもたらす。水素化分解プロセスに使用される多くの触媒は、様々な遷移金属、または金属硫化物をアルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、マグネシアおよびゼオライトなどの固体担体と混合することによって形成される。
【0071】
ここに用いたように、水素化分解装置という用語は「ガソリン水素化分解ユニット」または「GHC」を称することがあり、これは、以下に限られないが、改質ガソリン、FCCガソリンおよび分解ガソリン(パイガス)を含む精製ユニット由来軽質蒸留物などの芳香族炭化水素化合物が比較的豊富な複合炭化水素供給物をLPGおよびBTXに転化させるのに適した水素化分解プロセスであって、GHC原料中に含まれる芳香族化合物の1つの芳香環を完全なままに維持するが、その芳香環から側鎖のほとんどを除去するように最適化されたプロセスを実施するための精製ユニットを称する。したがって、ガソリン水素化分解により生じる主要な生成物はBTXであり、そのプロセスは、化学用BTXを提供するために最適化することができる。ガソリン水素化分解が行われる炭化水素供給物が精製ユニット由来軽質蒸留物を含むことが好ましい。ガソリン水素化分解が行われる炭化水素供給物が、複数の芳香環を有する炭化水素を1質量%以下しか含まないことがより好ましい。ガソリン水素化分解条件が、好ましくは、300〜580℃、より好ましくは450〜580℃、さらにより好ましくは470〜550℃の温度を含む。芳香環の水素化が有力になるので、それより低い温度は避けなければならない。しかしながら、触媒が、スズ、鉛またはビスマスなどの、触媒の水素化活性を低減させるさらに別の元素を含む場合、ガソリン水素化分解のためにより低い温度を選択してもよい;例えば、国際公開第02/44306A1号および同第2007/055488号を参照のこと。反応温度が高すぎる場合、LPG(特に、プロパンおよびブタン)の収率が低下し、メタンの収率が上昇してしまう。触媒活性は、触媒の寿命に亘り低下するであろうから、水素化分解の転化率を維持するために、触媒の寿命に亘り反応装置の温度を徐々に上昇させることが都合良い。このことは、作動サイクルの開始時の最適温度が、水素化分解温度範囲の下端であることを意味する。その最適反応装置温度は、好ましくは、サイクルの終わり(触媒が交換されるまたは再生される直前)に、その温度が水素化分解温度範囲の上端であるように選択されるように、触媒が失活するにつれて、上昇する。
【0072】
炭化水素供給流のガソリン水素化分解は、好ましくは、0.3〜5MPaのゲージ圧、より好ましくは0.6〜3MPaのゲージ圧、特に好ましくは1〜2MPaのゲージ圧、最も好ましくは1.2〜1.6MPaのゲージ圧で行われる。反応装置の圧力を上昇させることにより、C5+非芳香族化合物の転化率を増加させることができるが、これにより、メタンの収率および芳香環のシクロヘキサン種(LPG種に分解することができる)への水素化も増加する。これにより、圧力が上昇するにつれて芳香族類の収率が減少し、いくつかのシクロヘキサンおよびその異性体のメチルシクロペンタンは、完全には水素化分解されないので、1.2〜1.6MPaの圧力で結果として生じたベンゼンの純度が最適である。
【0073】
炭化水素供給流のガソリン水素化分解は、好ましくは、0.1〜10h-1の重量空間速度(WHSV)、より好ましくは0.2〜6h-1の重量空間速度、最も好ましくは0.4〜2h-1の重量空間速度で行われる。空間速度が速すぎると、BTX共沸パラフィン成分の全てが水素化分解されるわけでなく、それゆえ、反応装置生成物の単純な蒸留によって、BTX仕様を達成することはできなくなる。低すぎる空間速度では、プロパンとブタンを犠牲にして、メタンの収率が上昇してしまう。意外なことに、最適な重量空間速度を選択することによって、ベンゼン共沸物の十分に完全な反応が達成されて、液体を再循環する必要なく、仕様を満たすBTXが生じることが分かった。
【0074】
したがって、好ましいガソリン水素化分解条件は、450〜580℃の温度、0.3〜5MPaのゲージ圧、および0.1〜10h-1の重量空間速度を含む。より好ましいガソリン水素化分解条件は、470〜550℃の温度、0.6〜3MPaのゲージ圧、および0.2〜6h-1の重量空間速度を含む。特に好ましいガソリン水素化分解条件は、470〜550℃の温度、1〜2MPaのゲージ圧、および0.4〜2h-1の重量空間速度を含む。
【0075】
ここに用いたように、水素化分解装置という用語は、「供給物水素化分解ユニット」または「FHC」を称することがあり、これは、以下に限られないが、ナフサを含む、直留留分などの、ナフテンおよびパラフィン炭化水素化合物が比較的豊富な複合炭化水素供給物をLPGおよびアルカンに転化させるのに適した水素化分解プロセスを実施するための精製ユニットに関する。供給物水素化分解が行われる炭化水素供給物がナフサを含むことが好ましい。したがって、供給物水素化分解により生成される主要生成物は、オレフィンに転化すべき(すなわち、アルカンのオレフィンへの転化のために供給物として使用すべき)LPGである。このFHCプロセスを、FHC供給流に含まれる芳香族化合物の1つの芳香環を完全なままに維持するが、その芳香環から側鎖のほとんどを除去するように最適化してもよい。そのような場合、FHCに使用すべき工程条件は、先に記載したようなGHCプロセスに使用すべき工程条件に匹敵する。あるいは、FHCプロセスは、FHC供給流中に含まれる芳香族炭化水素の芳香環を開環するために最適化しても差し支えない。このことは、必要に応じてより低い工程温度と組み合わせて、必要に応じて減少した空間速度と組み合わせて、触媒の水素化活性を増加させることによって、ここに記載されたようなGHCプロセスを改良することによって行うことができる。そのような場合、それゆえ、好ましい供給物水素化分解条件は、300〜550℃の温度、300〜5000kPaのゲージ圧、および0.1〜10h-1の重量空間速度を含む。より好ましい供給流水素化分解条件は、300〜450℃の温度、300〜5000kPaのゲージ圧、および0.1〜10h-1の重量空間速度を含む。芳香族炭化水素の開環のために最適化されたさらにより好ましいFHC条件は、300〜400℃の温度、600〜3000kPaのゲージ圧、および0.2〜2h-1の重量空間速度を含む。
【0076】
ここに用いたように、「脱芳香族化ユニット」という用語は、混合炭化水素供給物からのBTXなどの芳香族炭化水素の分離のために精製ユニットに関する。そのような脱芳香族化プロセスは、Folkins (2000) Benzene, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistryに記載されている。したがって、プロセスは、混合炭化水素流を、芳香族化合物が豊富な第1の流れと、パラフィンおよびナフテンが豊富な第2の流れとに分離するために存在する。芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素の混合物から芳香族炭化水素を分離する好ましい方法は溶媒抽出である;例えば、国際公開第2012/135111A2号を参照のこと。芳香族溶媒抽出に使用される好ましい溶媒は、工業的芳香族化合物抽出プロセスに一般に使用される溶媒であるスルホラン、テトラエチレングリコールおよびN−メチルピロリドンである。これらの種は、しばしば、水および/またはアルコールなどの他の溶媒または他の化学物質(共溶媒と呼ばれることもある)と組み合わせて使用される。スルホランなどの窒素不含有溶媒が特に好ましい。そのような溶媒抽出に使用される溶媒の沸点は、抽出すべき芳香族化合物の沸点よりも低い必要があるので、250℃、好ましくは200℃を超える沸点範囲を有する炭化水素混合物の脱芳香族化には、工業的に適用されている脱芳香族化プロセスはそれほど好ましくない。重質芳香族化合物の溶媒抽出が当該技術分野に記載されている;例えば、米国特許第5880325号明細書を参照のこと。あるいは、分子篩分離または沸点に基づく分離などの、溶媒抽出以外の他の公知の方法を、脱芳香族化プロセスにおける重質芳香族化合物の分離に適用することができる。
【0077】
混合炭化水素流を、主にパラフィンを含む流れおよび主に芳香族化合物とナフテンを含む第2の流れに分離するプロセスは、3つの主要な炭化水素処理塔:溶媒抽出塔、ストリッピング塔および抽出塔を備えた溶媒抽出ユニット内でその混合炭化水素流を処理する工程を有してなる。芳香族化合物の抽出に選択的な従来の溶媒は、軽質ナフテン種およびより少ない程度で、パラフィン種を溶解させるのにも選択的であり、それゆえ、溶媒抽出塔の基部を出る流れは、溶解した芳香族種、ナフテン種および軽質パラフィン種と共に溶媒を含む。溶媒抽出塔の頂部から出る流れ(ラフィネート流としばしば称される)は、選択された溶媒に対して比較的不溶性のパラフィン種を含む。溶媒抽出塔の基部を出る流れは、次いで、蒸留塔において、蒸発ストリッピングに施される。ここでは、各種は、溶媒の存在下での相対的な揮発度に基づいて分離される。溶媒の存在下では、軽質パラフィン種は、同じ炭素原子数のナフテン種および特に芳香族種よりも高い相対的な揮発度を有し、それゆえ、軽質パラフィン種の大半は、蒸発ストリッピング塔からの塔頂流に濃縮されるであろう。この流れは、溶媒抽出塔からのラフィネート流と組み合わされても、または別個の軽質炭化水素流として収集されてもよい。ナフテン種および特に芳香族種の大半は、それらの比較的低い揮発度のために、この塔の基部から出る溶媒と溶解炭化水素の混合流中に維持される。抽出ユニットの最終的な炭化水素処理塔において、溶媒は、蒸留によって、溶解炭化水素種から分離される。この工程において、比較的沸点の高い溶媒は、その塔から基部流として回収され、一方で、主に芳香族種およびナフテン種を含む溶解炭化水素は、この塔の頂部から出る蒸気流として回収される。この後者の流れは、しばしば、抽出物と称される。
【0078】
本発明の方法は、接触改質または流動接触分解などの、下流の精製プロセスにおける触媒の失活を防ぐために、特定の原油分画から硫黄を除去する必要があることがある。そのような水素化脱硫プロセスは、「HDSユニット」または「水素化処理機(hydrotreater)」内で行われる;Alfke (2007) loc. citを参照のこと。一般に、水素化脱硫反応は、促進剤の有無にかかわらず、アルミナ上に担持された、Ni、Mo、Co、WおよびPtからなる群より選択される元素を含む触媒の存在下で、200〜425℃、好ましくは300〜400℃の高温およびゲージ圧で1〜20MPa、好ましくは1〜13MPaの高圧で、固定床反応装置内で行われ、ここで、触媒は硫化物形態にある。
【0079】
ここに用いたように、「気体分離ユニット」という用語は、原油蒸留ユニットにより生成される気体および/または精製ユニット由来の気体中に含まれる様々な化合物を分離する精製ユニットに関する。気体分離ユニットにおいて別個の流れに分離されるであろう化合物は、エタン、プロパン、ブタン、水素および主にメタンを含む燃料ガスを含む。その気体の分離に適したどの従来の方法を使用してもよい。したがって、その気体は、多数の圧縮段階に施されることがあり、ここで、CO2およびH2Sなどの酸性気体が圧縮段階の間で除去されるであろう。それに続く工程において、生成された気体は、カスケード冷凍システムの各段階に亘り、気相中にほぼ水素しか残っていない状態まで部分的に凝縮されるであろう。
【0080】
アルカンのオレフィンへの転化のためのプロセスは、「水蒸気分解」または「熱分解」を含む。ここに用いたように、「水蒸気分解」という用語は、飽和炭化水素が、エチレンおよびプロピレンなどのより小さい、しばしば不飽和の炭化水素に分解される石油化学プロセスに関する。水蒸気分解において、エタン、プロパンおよびブタンなどのガス状炭化水素供給物、またはそれらの混合物(気体熱分解)、もしくはナフサまたは軽油などの液体炭化水素供給物(液体熱分解)は、水蒸気で希釈され、酸素の不在下で炉内において手短に加熱される。典型的に、反応温度は750〜900℃であるが、その反応は、非常に手短に、通常は50〜1000ミリ秒の滞留時間でしか行われない。好ましくは、比較的低い工程圧力は、大気圧から175kPaのゲージ圧であるように選択されるべきである。最適条件での分解を確実にするために、炭化水素化合物であるエタン、プロパンおよびブタンがそれぞれの専用の炉内で別々に分解されることが好ましい。分解温度に達した後、気体が急冷されて、移送ラインの熱交換器内で、または冷却油を使用した急冷ヘッダの内部で反応を停止させる。水蒸気分解により、反応装置の壁上に、炭素の一形態であるコークスがゆっくりと堆積する。デコーキングには、炉をプロセスから隔離する必要があり、次いで、水蒸気流または水蒸気/空気混合物を炉のコイルに通過させる。これにより、硬い固体の炭素層が一酸化炭素と二酸化炭素に転化される。この反応が一旦完了したら、炉をラインに戻す。水蒸気分解により生成される生成物は、供給物の組成、炭化水素対水蒸気の比率および分解温度と炉内の滞留時間に依存する。エタン、プロパン、ブタンまたは軽質ナフサなどの軽質炭化水素供給物により、エチレン、プロピレン、およびブタジエンを含む、より軽質の高分子等級のオレフィンが多い生成物流が生じる。より重質の炭化水素(全範囲および重質ナフサおよび軽油分画)も、芳香族炭化水素の多い生成物を生じる。
【0081】
水蒸気分解により生じた様々な炭化水素化合物を分離するために、その分解ガスは分別ユニットに施される。そのような分別ユニットは、当該技術分野で周知であり、重質蒸留物(「カーボンブラックオイル」)および中間蒸留物(「分解蒸留物」)が軽質蒸留物および気体から分離される、いわゆるガソリン分留装置を含むことがある。それに続く随意的な急冷塔において、水蒸気分解により生成される軽質蒸留物(「分解ガソリン」または「パイガス」)のほとんどは、軽質蒸留物を凝縮することによって、気体から分離されるであろう。それに続いて、気体に多数の圧縮段階が施されてもよく、ここで、軽質蒸留物の残りが、圧縮段階の間で気体から分離される。酸性気体(CO2およびH2S)も圧縮段階の間で除去されるであろう。続く工程において、熱分解により生成された気体は、カスケード冷凍システムの各段階で、気相中にほぼ水素しか残っていない状態に部分的に凝縮されるであろう。様々な炭化水素化合物は、続いて、単純な蒸留により分離してよく、ここで、エチレン、プロピレンおよびC4オレフィンが、水蒸気分解により生成される最も重要な高価値の化学物質である。水蒸気分解により生成されるメタンは、一般に、燃料ガスとして使用され、水素は、分離され、水素化分解プロセスなどの、水素を消費するプロセスに再循環されてもよい。水蒸気分解により生成されるアセチレンは、エチレンに選択的に水素化されることが好ましい。分解ガス中に含まれるアルカンを、オレフィン合成のためのプロセスに再循環してもよい。
【0082】
ここに用いた「プロパン脱水素化ユニット」という用語は、プロパン供給流が、プロピレンおよび水素を含む生成物に転化される石油化学プロセスユニットに関する。したがって、「ブタン脱水素化ユニット」という用語は、ブタン供給流をC4オレフィンに転化するためのプロセスユニットに関する。プロパンおよびブタンなどの低級アルカンの脱水素化のためのプロセスは共に、低級アルカン脱水素化プロセスと記載される。低級アルカンの脱水素化のためのプロセスは、当該技術分野に周知であり、酸化的脱水素化プロセスおよび非酸化的脱水素化プロセスを含む。酸化的脱水素化プロセスにおいて、プロセス加熱は、供給物中の低級アルカンの部分酸化により与えられる。本発明の文脈において好ましい、非酸化的脱水素化プロセスにおいて、吸熱脱水素化反応のためのプロセス加熱は、燃料ガスの燃焼により得られる高温燃焼排ガスまたは水蒸気などの外部熱源により与えられる。非酸化的脱水素化プロセスにおいて、その工程条件は、一般に、540〜700℃の温度および25〜500kPaの絶対圧を含む。例えば、このUOP Oleflexプロセスは、移動床反応装置内においてアルミナ上に担持された白金含有触媒の存在下で、プロパンの脱水素化によりプロピレンを、(イソ)ブタンの脱水素化により(イソ)ブチレン(またはその混合物)を形成することを可能にする;例えば、米国特許第4827072号明細書を参照のこと。このUhde STARプロセスは、亜鉛−アルミナスピネル上に担持された促進白金触媒の存在下で、プロパンの脱水素化によりプロピレンを、またはブタンの脱水素化によりブチレンを形成することを可能にする;例えば、米国特許第4926005号明細書を参照のこと。このSTARプロセスは、オキシ脱水素化の原理を適用することによって、最近改良された。反応装置の補助断熱区域において、中間生成物からの水素の一部が、添加酸素により選択的に転化されて、水を形成する。これにより、熱力学的平衡がより高い転化率にシフトし、より高い収率が達成される。吸熱脱水素化反応に必要な外部熱も、発熱水素転化によりある程度供給される。Lummus Catofinプロセスは、循環基準で作動する数多くの固定床反応装置を利用する。その触媒は、18〜20質量%のクロムが含浸された活性化アルミナである;例えば、欧州特許出願公開第0192059A1号および英国特許出願公開第2162082A号の各明細書を参照のこと。このCatofinプロセスには、このプロセスがロバスト性であり、白金触媒を汚染するであろう不純物を取り扱うことができるという利点がある。ブタンの脱水素化プロセスにより生成される生成物は、ブタン供給物の性質および使用されるブタン脱水素化プロセスに依存する。Catofinプロセスは、ブタンの脱水素化により、ブチレンを形成することも可能にする;例えば、米国特許第7622623号明細書を参照のこと。
【0083】
本発明を次の実施例において論じるが、その実施例は、保護の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0084】
唯一の図面は、炭化水素原料から芳香族化合物および軽質オレフィンを製造する本発明の方法の実施の形態である。
【実施例】
【0085】
工程スキームが唯一の図面に見つけられる。原料11としてナフサが溶媒抽出ユニット2に送られ、芳香族化合物、ナフテン、軽質パラフィンおよび溶媒を含む底部流15と、直鎖パラフィン、イソパラフィンおよび溶媒を含むラフィネート24とに分離される。溶媒の損失を最小にするために、溶媒は、ラフィネート流24を水で洗浄することによってラフィネート24から分離してもよく、これにより、溶媒を実質的に含まないラフィネート流と、ある程度溶媒を含有する水流とが生成される。次いで、この水流を蒸留して、水を蒸発させてもよく、ラフィネート流24は水蒸気分解ユニット1に送られる。このように回収された溶媒は、溶媒の豊富な流れ17と組み合わせても差し支えない。それゆえ、流れ24は、どのような溶媒も回収し、水蒸気分解ユニット1に送るべき、溶媒を実質的に含まないラフィネート流を生成するために、精製してもよい。
【0086】
底部流15は、ストリッピング塔3に送られ、芳香族化合物とナフテンが豊富な溶媒流16、およびストリッピングされた軽質パラフィンを含む流れ12に分離される。流れ12は、溶媒抽出ユニット2に戻されても、水蒸気分解ユニット1への流れ22として送られても差し支えない。流れ7、すなわち、ラフィネート24、および直鎖パラフィンとイソパラフィンを含む流れ22の組合せが、水蒸気分解ユニット1に送られる。
【0087】
芳香族化合物とナフテンが豊富な溶媒流16は、蒸留塔4に送られ、芳香族化合物とナフテンを含む抽出物13、および溶媒の豊富な流れ17に分離され、その流れ17は溶媒抽出ユニット2に戻される。抽出物13は水素化分解ユニット5においてさらに処理される。そのように水素化分解された流れ18は、分離装置6、例えば、蒸留塔6に送られる。蒸留塔6からの上部流21は、流れ10として水蒸気分解ユニット1に送られる。その上、上部流21を脱水素化ユニット25に送ることも可能である。上部流21は、LPG種、未使用の水素、メタンおよび水素化分解ユニット5において水素化脱硫プロセスにより生成された任意のH2Sの混合物を含有する。このLPG種は、水素、メタンおよびH2Sを除去するための適切な処理後に、水蒸気分解ユニット1または脱水素化ユニット25のいずれに送られてもよい。この分離を行うのに適した方法に、低温蒸留がある。蒸留塔6からの底部流14は、さらに別のプロセスに使用しても差し支えない。水蒸気分解ユニット1において、パイガス含有流23が溶媒抽出ユニット2に送られることが好ましい。別の実施の形態において、パイガス含有流26が水素化分解ユニット5に送られる。
【0088】
ここに与えられた実験データは、Aspen Plusにおける工程図モデル化により得た。水蒸気分解反応速度論を厳格に考慮した(水蒸気分解生成物分量の計算のためのソフトウェア)。
【0089】
適用した水蒸気分解炉の条件:
エタンおよびプロパン炉:COT(コイル出口温度)=845℃、水蒸気対油比=0.37、C4炉および液体炉:コイル出口温度=820℃、水蒸気対油比=0.37。脱芳香族化ユニットは、一方の流れが芳香族成分とナフテン成分の全てを含有し、他方の流れが直鎖パラフィン成分とイソパラフィン成分の全てを含有する、2つの流れに分割するスプリッタとしてモデル化された。
【0090】
ガソリンの水素化分解について、実験データに基づく反応スキームを使用した。
【0091】
原料11として、ナフサを使用した(表1)。
【0092】
【表1】
【0093】
n−パラフィン、i−パラフィン、ナフテンおよび芳香族化合物の特異的分布が表2に見つけられる。
【0094】
【表2】
【0095】
ここに開示された実施例は、ナフサが水蒸気分解ユニットにより処理されるプロセス(ケース1)と、唯一の図面による本発明のプロセス(ケース2)とを区別している。ケース1は比較例である。ケース2は本発明による実施例である。
【0096】
装置の境界内生成物分量(供給物の質量%)が表3に見られる。
【0097】
表3から、ナフサのナフテン分を水蒸気分解ユニットに送ることにより、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)が増加するのが分かる。本願の発明者等は、水素化分解ユニットがナフテン類を芳香族化合物に転化させると推測する。
【0098】
本願の発明者等は、ナフテンおよび芳香族化合物が水蒸気分解されるのを防ぐことによって、より重質の生成物(C9樹脂供給物、分解蒸留物およびカーボンブラックオイル)の生産が8.5%から2.6%に減少することも発見した。
【0099】
さらに、おそらく、ナフテン類が水蒸気分解されておらず、水素化分解ユニットに送られるので、メタンの生産が減少する。
【0100】
その上、全体の高価値化学物質の含有量が75.3%から80.5%に増加する。
【0101】
ケース1(比較例)とケース2(本発明による実施例)との間の比較に基づいて、本発明の方法によれば、典型的なナフサからの高価値生成物の収率は、ナフテンと芳香族化合物が、水蒸気分解装置内でより重質の生成物を生成するのを防ぐことによって、最大にできると結論付けることができる。
【0102】
【表3】
【符号の説明】
【0103】
1 水蒸気分解ユニット
2 溶媒抽出ユニット
3 ストリッピング塔
4 蒸留塔
5 水素化分解ユニット
6 分離装置
25 脱水素化ユニット
図1