特許第6368380号(P6368380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368380ソルダーレジスト組成物及び被覆プリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368380
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ソルダーレジスト組成物及び被覆プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/029 20060101AFI20180723BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20180723BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180723BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G03F7/029
   G03F7/031
   G03F7/004 502
   G03F7/004 505
   H05K3/28 D
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-563293(P2016-563293)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2014006160
(87)【国際公開番号】WO2016092598
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 善夫
(72)【発明者】
【氏名】濱田 亘人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 得山
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−107511(JP,A)
【文献】 特開2011−227343(JP,A)
【文献】 特開2013−028729(JP,A)
【文献】 特開2009−014936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、
(B)光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される光重合性化合物、
(C)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤とを含有する光重合開始剤、
(D)蛍光染料、及び
(F)着色顔料
を含有するソルダーレジスト組成物であって、
前記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドであり、
前記α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤が、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンであり、
前記ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドと、前記2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの質量比が、2:1〜1:10であり、
前記(F)着色顔料が、白色顔料又は黒色顔料であることを特徴とするソルダーレジスト組成物。
【請求項2】
さらに(E)酸化防止剤を含有する請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、(A2)光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂である請求項1又は2に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
プリント配線板と、前記プリント配線板を被覆するソルダーレジスト層とを備え、前記ソルダーレジスト層が請求項1乃至のいずれか一項に記載のソルダーレジスト組成物から形成されていることを特徴とする被覆プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジスト組成物及び被覆プリント配線板に関し、詳しくは光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能なソルダーレジスト組成物、及びこのソルダーレジスト組成物から形成されたソルダーレジスト層を備える被覆プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、民生用及び産業用のプリント配線板におけるソルダーレジスト層の形成方法として、印刷配線板の高配線密度化に対応するため、スクリーン印刷法に代わって、解像性及び寸法精度等に優れた現像可能なソルダーレジスト組成物を用いる方法が大きな位置を占めてきている。
【0003】
また、近年、携帯端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン等の液晶ディスプレイのバックライト、照明器具の光源などに用いられる発光ダイオード等の光学素子を、ソルダーレジスト層が被覆形成されたプリント配線板に直接実装することが増えてきている。更に、光学素子が実装されているプリント配線板におけるソルダーレジスト層に酸化チタンを含有させてソルダーレジスト層を白色化させることで、発光素子から発せられた光をソルダーレジスト層で効率良く反射させることもおこなわれている(日本国特許公報第5513965号参照)。
【0004】
しかし、ソルダーレジスト組成物に酸化チタンを含有させると、このソルダーレジスト組成物を露光させて硬化させる際に、酸化チタンが光を反射或いは吸収することで、ソルダーレジスト組成物が硬化しにくいことがある。特にソルダーレジスト組成物が大量の酸化チタンを含有すると、ソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層を深部まで硬化させることが困難となる。ソルダーレジスト層の深部が充分に硬化しないと、現像時の解像性が悪化したり、ソルダーレジスト層の深部と表層との間の硬化収縮の相違によってソルダーレジスト層にしわが発生したり、ソルダーレジスト層が加熱された場合に深部と表層との熱膨張係数の相違によって部分的に応力が集中してクラックが発生したりするという、不良を招きやすい。また、ソルダーレジスト組成物には、保存安定性が良いことも要求される。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、保存安定性が良く、塗膜を露光した場合に表層から深部にわたって充分に硬化させることができるソルダーレジスト組成物、及びこのソルダーレジスト組成物から形成されたソルダーレジスト層を備える被覆プリント配線板を提供することを目的とする。
【0006】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される光重合性化合物、(C)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を含有する光重合開始剤、及び(D)蛍光染料を含有するソルダーレジスト組成物であって、前記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドであり、前記α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤が、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンであり、前記ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドと、前記2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの質量比が、2:1〜1:10であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る被覆プリント配線板は、プリント配線板と、前記プリント配線板を被覆するソルダーレジスト層とを備え、前記ソルダーレジスト層が前記ソルダーレジスト組成物から形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態について説明する。尚、本明細書においては、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す。また、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。また、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0009】
[(A)カルボキシル基含有樹脂について]
本実施形態では、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂を含有する。カルボキシル基含有樹脂は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜に、アルカリ性溶液による現像性、すなわちアルカリ現像性を付与することができる。
【0010】
[(A1)カルボキシル基有し、光重合性官能基を有さないカルボキシル基含有樹脂について]
カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基を有し光重合性を有さない化合物(以下、(A1)成分という)を含有することができる。
【0011】
(A1)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。エチレン性不飽和単量体には更にカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0012】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができ、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0013】
カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0014】
芳香環を有する化合物は、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及び4−ビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0015】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物はソルダーレジスト層の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0016】
(A1)成分を得るために用いられる化合物の種類、比率等は、(A1)成分の酸価が適当な値となるように適宜選択される。(A1)成分の酸価は20〜180mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、35〜165mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
【0017】
[(A2)カルボキシル基及び光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂について]
カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基及び光重合性官能基を有する光重合性カルボキシル基含有樹脂(以下、(A2)成分という)を含有することもできる。光重合性官能基は、例えばエチレン性不飽和基である。
【0018】
(A2)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物(a3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(a)という)を、含有することができる。
【0019】
エポキシ化合物(a1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、及び脂環式エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することができる。
【0020】
エポキシ化合物(a1)が、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。この重合体の合成に供されるエチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
【0021】
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーから選択される化合物を含有することができる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、及びβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0022】
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であればよい。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族又は脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN−置換マレイミド類(例えばN−シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0023】
エポキシ基を備えない化合物(p2)が、更に一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、ソルダーレジスト層の硬度及び油性が容易に調整される。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0024】
エチレン性不飽和化合物(p)が、例えば溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法により重合することで、重合体が得られる。溶液重合法の具体例として、エチレン性不飽和化合物(p)を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法並びに共沸重合法が、挙げられる。
【0025】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0026】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0027】
エチレン性不飽和化合物(a2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有することができる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を複数個備える化合物を更に含有することができる。エチレン性不飽和基を複数個備える化合物は、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0028】
特にエチレン性不飽和化合物(a2)が、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性が高くなる。
【0029】
エチレン性不飽和化合物(a2)の使用量は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物(a2)のカルボキシル基が0.4〜1.2モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.5〜1.1モルの範囲内となる量であることが好ましい。
【0030】
多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される化合物(a3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0031】
化合物(a3)は、第一の樹脂(a)に酸価を与えることで、ソルダーレジスト組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
【0032】
第一の樹脂(a)が合成される際に、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応、並びにこの付加反応による生成物(付加反応生成物)と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応にあたっては、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
【0033】
付加反応生成物と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、付加反応生成物の溶剤溶液に化合物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により反応させることで、第一の樹脂(a)が得られる。反応条件はエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応の場合と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒としては、エポキシ化合物(a1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応時に使用された化合物をそのまま使用することができる。
【0034】
(A2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重体樹脂(第二の樹脂(b)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物も含まれていてもよい。
【0035】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0036】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0037】
芳香環を有する化合物は、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及び4−ビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0038】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物はソルダーレジスト層の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0039】
第二の樹脂(b)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例として、アクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特に、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートが用いられることが好ましい。
【0040】
(A2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるヒドロキシル基の一部又は全部にエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を付加して得られる樹脂(以下、第三の樹脂(c)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基及びヒドロキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0041】
第三の樹脂(c)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば上述の第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と同じでよい。
【0042】
第三の樹脂(c)を得るためのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0043】
第三の樹脂(c)を得るためのエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズAOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI一BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−BP」)、及び1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズBEI」)が挙げられる。
【0044】
(A2)成分全体の重量平均分子量は、800〜100000の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、ソルダーレジスト組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
【0045】
(A2)成分全体の酸価は30mgKOH/g以上であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物に良好な現像性が付与される。この酸価は60mgKOH/g以上であれば更に好ましい。また、(A2)成分全体の酸価は160mgKOH/g以下であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中のカルボキシル基の残留量が低減し、被膜の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。この酸価は130mgKOH/g以下であれば更に好ましい。
【0046】
[(B)光重合性化合物について]
本実施形態では、(B)成分の光重合性化合物として、光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、ソルダーレジスト組成物に光硬化性を付与する。光重合性化合物は、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。
【0047】
光重合性モノマーは、例えばエチレン性不飽和基を有する。光重合性モノマーは、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0048】
光重合性モノマーが、リン含有化合物(リン含有光重合性化合物)を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有光重合性化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0049】
光重合性プレポリマーとしては、光重合性モノマーを重合させて得られるプレポリマーに、エチレン性不飽和基を付加したプレポリマーや、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類等が挙げられる。
【0050】
[(C)光重合開始剤について]
本実施形態では、(C)成分の光重合開始剤として、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤とを含有する。このため、本実施形態では高感度化、すなわち、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜を紫外線硬化させて得られるソルダーレジスト層を、表層から深部にわたって充分に硬化させることができる。その理由は次の通りであると考えられる。
【0051】
ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、紫外線に含まれる比較的長波長の成分で反応する。このような比較的長波長の成分は、ソルダーレジスト組成物から形成された塗膜の深部まで到達しやすい。このため、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、塗膜の深部における光硬化反応効率を向上させることができる。
【0052】
一方、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤は、紫外線に含まれる比較的短波長の成分で反応する。このような比較的短波長の成分は塗膜の深部まで到達しにくい。但し、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤は、酸素障害を受けにくいため、光反応性が高い。このため、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤は、塗膜の表層における光硬化反応効率を向上させることができる。
【0053】
また、ソルダーレジスト層が表層から深部にわたって充分に硬化すると、ソルダーレジスト層の硬化の程度にムラが生じにくくなり、このため、ソルダーレジスト層に硬化収縮によるしわが生じにくくなる。これにより、ソルダーレジスト層の平滑性が高くなる。
【0054】
また、ソルダーレジスト層が表層から深部にわたって充分に硬化すると、ソルダーレジスト層の均質性が高くなる。このため、はんだ付け工程、リフロー工程等でソルダーレジスト層が熱により変形して応力が生じても、ソルダーレジスト層内で応力が分散されやすくなり、このためソルダーレジスト層にクラックが生じにくくなる。
【0055】
また、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤は、光硬化反応時にベンジルラジカルを生成しないため、ソルダーレジスト層に着色を生じさせにくい。更に、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、元々は着色しているが、光硬化反応時に分解することでブリーチングが起こり、ソルダーレジスト層に着色を生じさせにくい。このため、ソルダーレジスト層の黄変を抑制して、ソルダーレジスト層の白色性を向上し、ソルダーレジスト層の良好な光反射性を維持することができる。
【0056】
また、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、本来、結晶化しやすく、ソルダーレジスト組成物中でビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の結晶が析出するとソルダーレジスト組成物の均一な紫外線硬化が困難になる。しかし、本実施形態のソルダーレジスト組成物では、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を含有することで、ソルダーレジスト組成物が長期間保存されてもビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の結晶の析出が抑制される。これにより、ソルダーレジスト組成物の保存安定性が高くなる。
【0057】
本実施形態では、高感度化と保存安定性の向上のために、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(以下、(C1)成分ということがある)が用いられ、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(別名:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)(以下、(C2)成分ということがある)が用いられる。
【0058】
本実施形態では、高感度化と保存安定性の向上とソルダーレジスト層の着色抑制のために、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドと、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの質量比((C1)成分と(C2)成分との質量比)が、(C1)成分:(C2)成分=2:1〜1:10の範囲内である。(C1)成分の質量2に対して(C2)成分の質量が1以上となる質量比であることで、ソルダーレジスト組成物中での(C1)成分の結晶化が特に抑制され、ソルダーレジスト組成物の保存安定性が特に高くなる。また、(C1)成分の質量1に対して(C2)成分の質量が10以下となる質量比であることで、ソルダーレジスト層の深部の硬化性が向上する。(C1)成分と(C2)成分との質量比が1:1〜1:5の範囲内であれば更に好ましい。
【0059】
本実施形態では、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、(C1)成分のみを含有することが好ましいが、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、(C1)成分以外のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することも可能である。(C1)成分以外のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、及び(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
【0060】
本実施形態では、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤として、(C2)成分のみを含有することが好ましいが、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、(C2)成分以外のα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を含有することも可能である。(C2)成分以外のα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、及び2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
【0061】
本実施形態において、光重合開始剤は、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤のみを含有することが好ましい。但し、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、光重合開始剤は前記二種の成分以外の成分を含有することもできる。例えば、光重合開始剤は、前記二種の成分に加えて、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート(SPEEDCURE TPO−L)等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE 01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)(IRGACURE OXE 02)からなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。
【0062】
[(D)蛍光染料について]
本実施形態では、(D)成分の蛍光染料を含有する。このため、本実施形態では高感度化、すなわち、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜を紫外線硬化させて得られるソルダーレジスト層を、表層から深部にわたって充分に硬化させることができる。すなわち、蛍光染料と、400nmより長波長領域に吸収をもつビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とを含有すると、蛍光染料は光重合開始剤の増感剤として働く。本実施形態のソルダーレジスト組成物が白色顔料を含有する場合、露光時に白色顔料が光を反射するため、蛍光染料の増感剤としての効果は大きい。また、蛍光染料は、紫外波長領域の光を吸収し、青色波長領域の光を発するため、ソルダーレジスト組成物が蛍光染料を含有すると、ソルダーレジスト層の青色波長領域の反射率が向上する。
【0063】
蛍光染料は、波長200〜400nmの光を吸収し、波長400〜500nmの光を放出するものが好ましい。このような蛍光染料として、ナフタレンを置換基にもつベンゾキサゾイル誘導体、チオフェンを置換基としてもつベンゾキサゾイル誘導体、スチルベンを置換基としてもつベンゾキサゾイル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体、などが挙げられる。
【0064】
[(E)酸化防止剤について]
本実施形態では、(E)成分の酸化防止剤を含有することが好ましい。これにより、本実施形態のソルダーレジスト組成物は、露光時にUV硬化抑制の原因となる酸素ラジカルの発生が抑えられ、高解像化が可能となる。また、酸化防止剤は、ソルダーレジスト層が形成されたプリント配線板(後述の被覆プリント配線板)の熱処理時にソルダーレジスト層の変色を促進する原因となる酸素を除去する働きがあり、ソルダーレジスト層の熱黄変を軽減することができる。
【0065】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
【0066】
[(F)着色顔料について]
本実施形態では、(F)成分の着色顔料を含有することが好ましい。これにより、本実施形態のソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層の光反射性や隠蔽性を向上させることができる。光反射性を有する白色のソルダーレジスト層が形成可能な着色顔料としては白色顔料が用いられる。隠蔽性を有する黒色のソルダーレジスト層が形成可能な着色顔料としては黒色顔料が用いられる。
【0067】
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、これらのうちの一種類以上が用いられる。これらの中でも、酸化チタンが好ましく、これにより、光反射性の高い白色のソルダーレジスト層が形成可能である。酸化チタンとしては、例えば、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンのうち、一方又は両方を含有することができる。特に、酸化チタンがルチル型酸化チタンを含有することが好ましい。ルチル型酸化チタンは工業的には塩素法又は硫酸法で製造される。本実施形態では、ルチル型酸化チタンは、塩素法で製造されたルチル型酸化チタンと硫酸法で製造されたルチル型酸化チタンとのうち一方又は両方を含有することができる。尚、酸化チタンとしては、ラムスデライト型の構造であってもよい。ラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li0.5TiOに化学酸化によるリチウム脱離処理が施されることで得られる。酸化チタンは上記の一種のみ含有してもよく、二種以上を含有してもよい。
【0068】
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、2種以上の顔料を混合して擬似黒色化した混色有機顔料等が挙げられ、これらのうちの一種類以上が用いられる。これらの中でも、特に、カーボンブラック、ペリレンブラック、チタンブラックが好ましく、これにより、隠蔽性の高い黒色のソルダーレジスト層が形成可能である。
【0069】
そして、本実施形態では、(C1)成分:(C2)成分=2:1〜1:10の範囲内であり、蛍光染料を含有しているため、白色顔料や黒色顔料を含有していても、ソルダーレジスト層が表層から深部にわたって充分に硬化される。
【0070】
[その他の成分について]
ソルダーレジスト組成物は、熱硬化性成分を含有してもよい。熱硬化性成分は、ソルダーレジスト組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0071】
熱硬化性成分は、環状エーテル骨格を有する化合物を含有することが好ましい。環状エーテル骨格を有する化合物は、特にエポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0072】
エポキシ化合物は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ化合物は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物の種類は特に限定されないが、特にエポキシ化合物はフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ハイドロキノン型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学社製の品番YDC−1312)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
【0073】
エポキシ化合物がトリグリシジルイソシアヌレートを含有することも好ましい。トリグリシジルイソシアヌレートとしては、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体が好ましく、或いはこのβ体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物が好ましい。
【0074】
エポキシ化合物がリン含有エポキシ樹脂を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂としては、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICRON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305等が挙げられる。
【0075】
ソルダーレジスト組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、ソルダーレジスト組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0076】
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0077】
ソルダーレジスト組成物中の有機溶剤の割合は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、ソルダーレジスト組成物全体に対して、有機溶剤が5〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜80質量%の範囲内であれば更に好ましい。尚、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
【0078】
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、ソルダーレジスト組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0079】
例えば、ソルダーレジスト組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
【0080】
ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合、ソルダーレジスト組成物は、更にエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0081】
ソルダーレジスト組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が、挙げられる。
【0082】
ソルダーレジスト組成物は、硬化促進剤;白色以外の着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;高分子分散剤;並びに硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーからなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。
【0083】
ソルダーレジスト組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えばソルダーレジスト組成物は、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等を含有してもよい。
【0084】
[各成分の配合量及び調製方法について]
ソルダーレジスト組成物中の成分の量は、ソルダーレジスト組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0085】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して5〜85質量%の範囲内であれば好ましく、10〜80質量%の範囲内であればより好ましく、15〜50質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0086】
(B)光重合性化合物は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して1〜45質量%の範囲内であれば好ましく、2〜40質量%の範囲内であればより好ましく、10〜30質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0087】
また、ソルダーレジスト組成物が熱硬化性成分を含有する場合、熱硬化性成分は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して1.5〜65質量%の範囲内であることが好ましく、2.0〜60質量%の範囲内であればより好ましく、3.0〜35質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0088】
(C)光重合開始剤は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、4〜20質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0089】
(D)蛍光染料は、ソルダーレジスト組成物中の光重合性開始剤の量に対して、0.0001〜80質量%の範囲であることが好ましい。この蛍光染料の量は、特に光重合性開始剤の量に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましく、またソルダーレジスト組成物全量に対しては0.04〜2質量%の範囲であることが好ましい。
【0090】
(E)酸化防止剤は、カルボキシル基含有樹脂量に対して0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.3〜10質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0091】
(F)着色顔料は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して0.05〜80質量%の範囲内であることが好ましく、0.2〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。また、酸化チタンは、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して3〜80質量%の範囲内であることが好ましく、25〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。この範囲であればソルダーレジスト層が高い隠蔽性や光反射性を発揮し、また耐熱性、鉛筆硬度等のレジストに必要とされる物性が高い水準で維持されるようになる。
【0092】
尚、固形分量とは、ソルダーレジスト組成物からソルダーレジスト層を形成する過程で揮発する溶剤など成分を除いた、全成分の合計量のことである。また樹脂分量とは、ソルダーレジスト組成物中のカルボキシル基含有樹脂、光重合性化合物及び熱硬化性成分の合計量のことである。
【0093】
上記のようなソルダーレジスト組成物の成分となる原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、ソルダーレジスト組成物が調製され得る。
【0094】
保存安定性等を考慮して、ソルダーレジスト組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、ソルダーレジスト組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。例えば、原料のうち光重合性化合物及び有機溶剤の一部及び熱硬化性成分を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合し混合液を調製し、この混合液からソルダーレジスト層を形成することができる。
【0095】
[被覆プリント配線板について]
本実施形態によるソルダーレジスト組成物は、例えばプリント配線板にソルダーレジスト層を形成するために適用される。これにより、被覆プリント配線板が製造される。
【0096】
以下に、本実施形態によるソルダーレジスト組成物を用いてプリント配線板上にソルダーレジスト層を形成する方法の一例を示す。本例では、光硬化性と熱硬化性とを兼ね備えるソルダーレジスト組成物からソルダーレジスト層を形成する。
【0097】
まず、プリント配線板を用意し、このプリント配線板上にソルダーレジスト組成物から塗膜を形成する。例えばプリント配線板の表面上にソルダーレジスト組成物を塗布して湿潤状態の塗膜(湿潤塗膜)を形成する。ソルダーレジスト組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、必要に応じてソルダーレジスト組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、乾燥後の塗膜(乾燥塗膜)を得る
【0098】
尚、プリント配線板上に塗膜を形成するにあたっては、予め適宜の支持体上にソルダーレジスト組成物を塗布してから乾燥することで乾燥塗膜を形成し、この乾燥塗膜をプリント配線板に重ねてから、乾燥塗膜とプリント配線板に圧力をかけることで、プリント配線板上に乾燥塗膜を設けてもよい(ドライフィルム法)。
【0099】
続いて、プリント配線板上の乾燥塗膜にネガマスクを直接又は間接的に当てがってから、ネガマスクへ向けて活性エネルギー線を照射することで、ネガマスクを介して塗膜を露光する。ネガマスクは、活性エネルギー線を透過させる露光部と活性エネルギー線を遮蔽する非露光部とを備え、露光部はソルダーレジスト層のパターン形状と合致する形状を有する。ネガマスクとして、例えばマスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。活性エネルギー線は、ソルダーレジスト組成物の組成に応じて選択されるが、本実施形態では紫外線である。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
【0100】
尚、露光方法として、ネガマスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えばレーザ露光等による直接描画法が採用されてもよい。
【0101】
本実施形態では、このように乾燥塗膜を紫外線で露光すると、上述の通り、乾燥塗膜の表層から深部にわたって効率良く光硬化反応が進む。
【0102】
乾燥塗膜の露光後、プリント配線板からネガマスクを取り外してから、乾燥塗膜に現像処理を施すことで、乾燥塗膜における露光されていない部分を除去する。そうすると、プリント配線板の第一の表面上及び第二の表面上に乾燥塗膜の露光された部分が、ソルダーレジスト層として残存する。
【0103】
現像処理では、ソルダーレジスト組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ性溶液が挙げられる。現像液として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することもできる。これらの現像液のうち、一種のみが用いられても、複数種が併用されてもよい。現像液がアルカリ性溶液である場合、その溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。
【0104】
ソルダーレジスト組成物が熱硬化性成分を含有する場合には、必要に応じ、ソルダーレジスト層に加熱処理を施すことでソルダーレジスト層を熱硬化させてもよい。加熱処理の条件は、例えば加熱温度120〜180℃の範囲内、加熱時間30〜90分間の範囲内である。これにより、ソルダーレジスト層の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
【0105】
また、必要に応じ、ソルダーレジスト層に加熱処理を施した後、更にソルダーレジスト層に紫外線を照射してもよい。この場合、ソルダーレジスト層の光硬化反応を更に進行させることができる。これにより、ソルダーレジスト層のマイグレーション耐性が更に向上する。
【0106】
以上により、プリント配線板とこのプリント配線板を部分的に被覆するソルダーレジスト層とを備える被覆プリント配線板が得られる。本実施形態では、ソルダーレジスト層は、表層から深部にわたって充分に硬化されている。
【0107】
以上に説明した本実施形態は以下の特徴を有する。
【0108】
本実施形態に係るソルダーレジスト組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される光重合性化合物、(C)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤とを含有する光重合開始剤、及び(D)蛍光染料を含有するソルダーレジスト組成物である。前記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。前記α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤が、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンである。前記ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドと、前記2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの質量比が、2:1〜1:10である。
【0109】
これにより、本実施形態に係るソルダーレジスト組成物では、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の結晶が析出しにくく、このためソルダーレジスト組成物の保存安定性が良好である。また、この塗膜を紫外線で露光すると、塗膜の表層から深部にわたって光硬化反応が効率良く進行する。
【0110】
本実施形態は、上記構成に加えて、さらに(E)酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0111】
これにより、本実施形態に係るソルダーレジスト組成物は、露光時にUV硬化抑制の原因となる酸素ラジカルの発生が抑えられ、高解像化が可能となる。また、酸化防止剤は、ソルダーレジスト層が形成されたプリント配線板(後述の被覆プリント配線板)の熱処理時にソルダーレジスト層の変色を促進する原因となる酸素を除去する働きがあり、ソルダーレジスト層の熱黄変を軽減することができる。
【0112】
本実施形態は、上記構成に加えて、前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、(A2)光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0113】
これにより、(A)カルボキシル基含有樹脂が光重合と熱重合の両方で重合可能となり、高感度化を図ることができる。
【0114】
本実施形態は、上記構成に加えて、さらに(F)着色顔料を含有することが好ましい。
【0115】
これにより、ソルダーレジスト層の光反射性や隠蔽性を向上させることができる。
【0116】
本実施形態は、上記構成に加えて、前記(F)着色顔料が、白色顔料又は黒色顔料であることが好ましい。
【0117】
これにより、ソルダーレジスト層の光反射性や隠蔽性をさらに向上させることができる。
【0118】
本実施形態に係る被覆プリント配線板は、プリント配線板と、前記プリント配線板を被覆するソルダーレジスト層とを備える。前記ソルダーレジスト層が上記いずれかに記載のソルダーレジスト組成物から形成されていることを特徴とする。
【0119】
これにより、本実施形態に係る被覆プリント配線板では、ソルダーレジスト層が表層から深部にわたって充分に硬化されている。
【実施例】
【0120】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに制限されることはない。
【0121】
[カルボキシル基含有樹脂溶液の調製]
(合成例1)
還流冷却器、温度計、窒素置換基用ガラス管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ中に、メタクリル酸48質量部、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(東亞合成株式会社製のアロニックスM−5300)50質量部、メチルメタクリレート92質量部、スチレン10質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル430質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル3.5質量部を加えた。この四つ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させることで、濃度32%の共重合体溶液を得た。
【0122】
この共重合体溶液に、ハイドロキノン0.1質量部、グリシジルメタクリレート64質量部、及びジメチルベンジルアミン0.8質量部を加え、80℃で24時間加熱することで付加反応を進行させた。これにより、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物の38%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A)を得た。
【0123】
(合成例2)
還流冷却器、温度計、窒素置換基用ガラス管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ中に、メタクリル酸60質量部、N−フェニルマレイミド20質量部、メチルメタクリレート80質量部、t−ブチルメタクリレート20質量部、スチレン20質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル300質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル3.5質量部を加えた。この四つ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させた。これにより、カルボキシル基を有する化合物の40%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液B)を得た。
【0124】
[ソルダーレジスト組成物の調製]
後掲の表に示す成分を配合して得られる混合物を3本ロールで混練することで、ソルダーレジスト組成物を得た。尚、表に示される成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物;イソシアヌル酸トリグリシジル(日産化学工業株式会社製、品番TEPIC−HP)
・光重合性化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA)
・酸化チタンA;硫酸法で製造されたルチル型酸化チタン、堺化学工業株式会社製、品番R−79。
・酸化チタンB;塩素法で製造されたルチル型酸化チタン、石原産業株式会社製、品番CR−90。
・カーボンブラック;三菱化学株式会社製、品番MA−7。
・硫酸バリウム;堺化学株式会社製、品番バリエースB30。
・光重合開始剤A;ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure819。
・光重合開始剤B;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF社製、品番IrgacureTPO。
・光重合開始剤C;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、BASF社製、品番Irgacure1173。
・光重合開始剤D;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番Irgacure184。
・酸化防止剤;2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン、BASF社製、品番IRGANOX1330。
・メラミン;日産化学工業株式会社製、微粉メラミン。
・消泡剤:信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・蛍光染料A;ナフタレンベンゾキサゾイル誘導体、クラリアントジャパン株式会社製、品番Hostalux KCB。
・蛍光染料B;2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、BASF社製、TINOPAL OB。
【0125】
[評価試験]
(1)テストピースの作製
厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にエッチングを施して導体配線を形成することで、プリント配線基板を得た。このプリント配線板の一面全体にソルダーレジスト用樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、塗膜を形成した。この塗膜を80℃で20分加熱することで乾燥させた。乾燥後の塗膜(乾燥塗膜)の厚みは20μmであった。この乾燥塗膜の表面上にネガマスクを直接当てた状態で、ネガマスクに向けて紫外線を照射することで、露光量400mJ/cm2の条件で乾燥塗膜を選択的に露光した。続いて、乾燥塗膜からネガマスクを取り外してから、乾燥塗膜に濃度1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて60秒現像処理を施すことで、乾燥塗膜のうち露光により硬化した部分を、プリント配線板上にソルダーレジスト層として残存させた。このソルダーレジスト層を更に150℃で60分間加熱して熱硬化させた。これによりソルダーレジスト層を備えるテストピースを得た。
【0126】
このテストピースに対して、次の評価試験をおこなった。
【0127】
(2)感光性評価(残存ステップ段)
各実施例及び比較例におけるソルダーレジスト組成物から形成された乾燥塗膜に、露光用テストマスク(日立化成工業社製のステップタブレットPHOTEC21段)を直接当てがい、減圧密着させた。続いて、オーク社製の減圧密着型両面露光機(型番ORC HMW680GW)を用い、露光用テストマスクを介して乾燥塗膜に照射エネルギー密度400mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。続いて現像液(濃度1質量%の炭酸ナトリウム水溶液)を用いて乾燥塗膜を現像した。この場合の残存ステップ段数で、乾燥塗膜の感光性を評価した。
【0128】
(3)深部硬化性評価(ダム残り評価)
線幅/線間が0.2mm/0.3mm、厚みが40μmの銅製の導体配線を備えるプリント配線板を用意した。また、幅50μm、75μm、90μm及び100μmのソルダーダムを形成するためのマスクパターンを有するネガマスクを使用した。これらのプリント配線板とネガマスクとを用いる以外は、テストピースを作製する場合と同じ条件で、プリント配線板上に厚み60μmのソルダーダムを形成した。
【0129】
このソルダーダムに対してセロハン粘着テープ剥離試験を行うことで、剥離せずにプリント配線板上に残存するソルダーダムの最小幅を調査した。この最小幅が小さい程、ソルダーダムの深部の硬化の程度が高いと評価できる。
【0130】
(4)耐熱黄変性評価
作製した直後のテストピースにおけるソルダーレジスト層の、L***表色系におけるb*値を、コニカミノルタセンシング株式会社製の分光測色計(型番CM−600d)を用いて測定した。続いて、テストピースを250℃、5分の条件で熱処理した後、再びソルダーレジスト層のb*値を測定した。熱処理後のソルダーレジスト層のb*値から熱処理前のソルダーレジスト層のb*値を減じて得られる値(Δb*)を算出し、その結果を次に示すように評価した。
A:Δb*値が1.4以下。
B:Δb*値が1.5〜1.9。
C:Δb*値が2.0〜2.4。
D:Δb*値が2.5以上。
【0131】
(5)保存安定性評価
ソルダーレジスト組成物を冷蔵庫内で、4℃で一週間保存した。続いて、ソルダーレジスト組成物をガラス板上に膜厚20μmで塗布し、塗膜を目視で観察し、次のように評価した。
○:塗膜中にブツ(微小粒子)が見られない。
×:塗膜中にブツ(微小粒子)が見られる。
【0132】
【表1】