特許第6368382号(P6368382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368382
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】水素化処理触媒を活性化する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/051 20060101AFI20180723BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20180723BHJP
   C01C 1/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B01J27/051 M
   B01J37/20
   C01C1/08
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-572621(P2016-572621)
(86)(22)【出願日】2015年6月15日
(65)【公表番号】特表2017-520396(P2017-520396A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】FR2015051576
(87)【国際公開番号】WO2015193598
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】1455590
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユンブロ,フランシス
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06093309(US,A)
【文献】 特表2003−500187(JP,A)
【文献】 特開2012−143751(JP,A)
【文献】 特開平11−092772(JP,A)
【文献】 特開2014−034030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化処理触媒のインサイチュ活性化のための方法における、以下の特徴
a) 窒素化合物の総重量に対する15から35重量%の範囲の窒素の重量含有率;
b) 分子当たり2から20個の範囲の窒素原子数の窒素原子;
c) 140℃から300℃の範囲の沸点;および
d) 窒素化合物は、室温および大気圧で液体形態であること、
の少なくとも2つを有する少なくとも1つの窒素化合物の使用であって、
窒素化合物は、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン(DEAPA)、テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N−(3−ジメチルアミノプロピル)プロパン−1,3−ジアミン(DMAPAPA)、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−1,2−エタンジイル−ビス−1,3−プロパンジアミン、N−(アミノプロピル)ジエタノールアミン(APDEA)、およびそれらの混合物から選択される
使用
【請求項2】
窒素化合物はさらに、e)80g.mol−1から300g.mol−1の範囲の分子量、という特徴を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
窒素化合物はさらにf)芳香族基または環式基を含まないという特徴を有する請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも1つの窒素化合物は、必ず特徴b)を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
少なくとも1つの水素化処理触媒の活性を制御するための、請求項1からのいずれか一項に定義された1つ以上の窒素化合物の使用。
【請求項6】
水素化処理触媒の酸性部位を不動態化するための、請求項1から4のいずれか一項に定義された1つ以上の窒素化合物の使用。
【請求項7】
インサイチュ活性化のための方法における、以下の特徴
a) 窒素化合物の総重量に対する15から35重量%の範囲の窒素の重量含有率;
b) 分子当たり2から20個の範囲の窒素原子数;
c) 140℃から300℃の範囲の沸点;および
d) 窒素化合物は、室温および大気圧で液体形態であること、
の少なくとも2つを有する少なくとも1つの窒素化合物の、請求項1からのいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの窒素化合物は、必ず特徴b)を有する請求項に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも
1) 前記水素化処理触媒を硫化剤の存在下で硫化する工程;および
2) 請求項1から4のいずれか一項で定義した少なくとも1つの窒素化合物の存在下で、前記水素化処理触媒を不動態化する工程
を含む少なくとも1つの水素化処理触媒のインサイチュ活性化方法。
【請求項10】
硫化工程と不動態化工程は同時に行われる請求項に記載の方法。
【請求項11】
窒素化合物は、液相または気相で注入される請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
窒素化合物は、水素化処理触媒の総重量に対して、0.01から20重量%の範囲の含有率で注入される請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
硫化工程において、硫化剤は、硫化水素、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、ジメチルスルフィド、メルカプタン、チオフェンおよび誘導体、アルキルポリスルフィド、ジアルキルポリスルフィドならびに水素化処理触媒の金属酸化物を硫化することができる全てのスルフィド化合物から選択される請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも
1) 水素化分解触媒を硫化剤の存在下で硫化する工程;および
2) 請求項1から5のいずれか一項で定義した少なくとも1つの窒素化合物の存在下で、前記水素化分解触媒を不動態化する工程、
を含む少なくとも1つの水素化分解触媒の請求項から13のいずれか一項に記載のインサイチュ活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化処理反応に関する。特に、石油留分の水素化分解中およびバイオマスの変換の間に使用される水素化処理反応に関する。従って、本発明は、水素化処理触媒の活性化が行われる、石油精製の分野およびバイオ燃料の製造の分野の両方に関連する。より詳細には、本発明は、以下に「水素化処理触媒」と称する、これらの水素化処理操作中に使用される触媒の活性化に関する。さらにより具体的には、本発明は、水素化処理触媒のインサイチュ活性化のための方法、および水素化処理触媒の活性を制御する前記方法の間の特定の窒素化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化処理は、水素を用いた処理により、特に、生成物または生成物の混合物中に存在する硫化物化合物、窒素化合物、含酸素化合物等の化合物または金属の量を減少させることを可能にする処理である。この水素化処理方法は、多くの分野、特に石油留分の精製のための石油精製の分野のみならず、バイオ燃料の製造分野でも使用されている。
【0003】
バイオ燃料の中で、第1世代であると言われるもの、例えば、糖料植物(甜菜、サトウキビ等)の発酵または穀物(トウモロコシ、小麦等)のでんぷんの酵素加水分解から得られるエタノールと、メタノールを用いた植物油のエステル交換によって得られるバイオディーゼルとの間は区別されている。一般に、当業者によく知られているこれらの方法は水素を使用せず、水素化処理方法を使用しない。
【0004】
これら第1世代のバイオ燃料の開発は、特にその起源のために論争を引き起こした。実際、これらのバイオ燃料に必要な原料は、食品目的のための農業生産と競合する集約的な作物栽培を必要とする。この問題を克服するために、非食物植物油、廃棄植物油または動物油、例えば、使用済揚げ油、動物性脂肪等の他の天然原料を利用するために、第2世代のバイオ燃料を開発するためのかなりの研究努力が展開されている。
【0005】
これらの第2世代のバイオ燃料の中には、木材、わら、農業廃棄物、林業残留物、またはミスカンサス(Miscanthus)(力芝)もしくはスイッチグラスのような特化した種のようなリグノセルロース系バイオマスから得られるものもある。このリグノセルロース系バイオマスは、例えば、400℃から700℃の間の高温での熱分解により変換される。この温度では、セルロース、リグニンおよびヘミセルロース等のバイオマスの構成要素は解重合し、蒸発するより軽い分子に分解する。冷却すると、蒸気は凝縮し、水、フェノール、ケトン、アルデヒド、アルコール、カルボン酸、および炭水化物を主成分とする熱分解油と呼ばれる液体生成物を形成する。
【0006】
バイオ燃料の前駆体としての熱分解油または脂肪族鎖を含む天然起源の他の化合物の使用は、ほとんどの場合、変換および精製を必要とする。実際、これらの天然化合物は全て高濃度の不純物、例えば、燃料として直接使用することができない含酸素化合物および構造を有する。また、熱分解油は化学的に不安定であり、この不安定性は温度と共に増加し、これは燃料にとって大問題である。
【0007】
このため、天然起源のこれらの化合物、例えば、熱分解油は、従来技術に開示されている付加的な方法、特に水素化処理を用いて改良される。
【0008】
水素化処理は、バイオ燃料の分野に限定されず、この処理は、多くの他の分野、特に製油所の分野、より具体的には重質留分を軽質留分に変換(いわゆる「クラッキング」)する際にも使用される。実際、石油精製の間に、クラッキングは、複雑な有機分子を低分子量の化合物に変換することからなる操作である。特に接触分解および水素化分解を含む種々の技術を用いることができる。
【0009】
接触分解は主として燃料(ガソリンおよび軽油等)および軽質オレフィン(例えば、プロピレン、ブチレン等)を生成するための吸熱反応である。この処理は、高温、例えば、450℃から550℃で、大気圧に近い圧力、例えば、1から5バール(すなわち1.10Paから5.10Pa)の圧力で、炭化水素を分解することから本質的になり、炭素の形成を伴い、この炭素は触媒上に堆積される。触媒は、空気による炭素の燃焼によって連続的に再生されるように流動床装置内で動いている。
【0010】
水素化分解は主として軽油、灯油およびガソリンを得ることを可能にする。この処理は、より低い温度、例えば、250℃から450℃で、高水素圧、例えば、50から200バール(または50.10から200.10Pa)の下で炭化水素を分解することから本質的になる。この反応は、不飽和化合物および/または、例えば、硫化物および窒素のような不純物の水素化の他の反応を伴う。これらの水素化不純物は炭化水素留分から容易に分離することができ、該炭化水素留分は市販燃料の仕様に合致する。特に、水素化分解は触媒の存在下で固定床中で行われ、触媒の硫化によって触媒を再活性化するために処理を定期的に停止させる必要がある。
【0011】
従って、本発明は、水素化分解に関し、接触分解には関しない。
【0012】
本明細書で使用される「水素化処理」という用語は、燃料、特に精製された燃料を製造するために加圧下での供給原料の水素化の触媒プロセスを説明する。この用語は、ヘテロ原子(主に酸素、窒素および硫化物)と炭素原子との間の結合を破壊することを目的とし、水素を用いる通常の反応と、鎖長を減少させ、より分岐した骨格を得るための炭素−炭素結合の分解および異性化の反応の両方を含む用語「水素化分解」の両方を含む。
【0013】
これらの2つの方法は共通の触媒を使用する。従って、以後、水素化処理という用語は、特に、水素化、水素化異性化、水素化脱窒素化、水素化脱硫化、水素化脱酸素化、脱芳香族化、水素化転化という用語、特に、水素化分解、より具体的には水素を含む全ての反応を含む。
【0014】
水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の活性化または再活性化の操作の間に、クラッキング反応を抑制するために何も行われなければ、この反応の激しい発熱のため反応の暴走が生じることがある。これは、触媒の活性の損失および劣化、または工業設備への損傷さえもたらす可能性がある。この現象は、バイオ燃料、特にリグノセルロース系バイオマスから得られるバイオ燃料の製造中にも起こり得る。
【0015】
この問題を回避する公知の方法は、窒素化合物、一般にアンモニアまたはアニリンを使用することであり、アニリンはアンモニア前駆体として使用される。実際に、導入されたまたはインサイチュで生成されたアンモニアは、水素化処理活性または水素化分解活性とそれぞれ呼ばれる水素化処理、特に水素化分解のその活性の原因となる酸性部位と反応することによって触媒を不動態化する。こうしてこれらの酸性部位が失活されると、水素化処理、特に水素化分解の反応が阻害され、触媒の硫化が完全な安全性のもとで起こり得る。
【0016】
硫化は、硫化剤、例えば、硫化水素または硫化水素の前駆体を水素化処理触媒、特に水素化分解触媒と接触させることからなる。高温で水素下で硫化を行うと、それにより触媒中に存在する金属が金属硫化物に完全に変換される。これにより水素化処理触媒、特に水素化分解触媒が活性化される。
【0017】
水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の活性化は、水素化処理反応器、特に水素化分解反応器の外でエクスサイチュ、または水素化処理反応器、特に水素化分解反応器の内部でインサイチュのいずれかで実施される。これらの2つの方法は、当業者に知られている。
【0018】
移動床で実施されるエクスサイチュ方法の間に、硫化剤を触媒と接触させる。触媒は、場合により、大気圧に等しいかまたは大気圧に近い圧力で水素の非存在下または存在下で熱的に処理される。このように、触媒は、それぞれ予備硫化または予備硫化および活性化される。
【0019】
また、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の水素化処理活性、特に水素化分解活性をそれぞれ制御するために、窒素化合物を、一般に水素化処理触媒、特に水素化分解触媒とエクスサイチュで接触させる。得られた触媒は、一般に、エクサイチュで乾燥される。一般に、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒は、そのまま使用する準備ができておらず、高水素圧力下および高温下で触媒を不動態化することが望ましい場合があり、さらにそれが必要なときもある。
【0020】
通常は固定床で実施されるこのインサイチュ方法の間、硫化剤は水素化処理反応器、特に水素化分解反応器に高水素圧下および高温で導入される。この硫化工程により、触媒が活性化される。
【0021】
また、窒素化合物が水素化処理反応器、特に水素化分解反応器に高水素圧力下および高温下で導入され、それにより水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の酸性部位の不動態化が可能になる。
【0022】
そのような方法は、当業者によく知られており、科学文献および特許に広く記載されている。このように、国際出願WO2014/001633号は、水素化処理工程および異性化工程を含む、バイオ燃料への木材副産物の水素化転化方法を記載する。この最後に述べた工程は、分子篩またはゼオライトに担持された金属触媒を使用する。
【0023】
文献US2009/0308790号は、水素化触媒、および有機窒素化合物、硫化剤および有機溶媒の存在下でエクスシチュでこの触媒を調製する方法を記載する。文献US2009/0308790号の有機窒素化合物は、好ましくは窒素および酸素を同時に含む。
【0024】
特許出願FR2778349号は、少なくとも1つの硫化物化合物および少なくとも1つの窒素化合物を用いて水素化転化触媒を活性化する方法を記載する。
【0025】
文献FR2668951号は、水素化分解触媒の活性化の2つの方法を記載しており、1つはインサイチュで、もう1つはエクスシチュであり、触媒の酸性部位を不動態化する工程を含む。この文献によれば、この工程は、第1級、第2級または第3級アミン、第4級アンモニウムを含む化合物、アニリン系化合物のようなアリールアミン、ピロールおよびその同族体、ピリジン、ニトリル化物、尿素およびチオ尿素、ニトロ化誘導体、亜硝酸誘導体もしくはニトロソ誘導体、もしくは任意の他の塩基性化合物または水素圧下で、高温で、触媒の存在下、塩基性化合物、特にアンモニアに転化することができる化合物から選択される窒素化合物の存在下で実施することができる。
【0026】
しかし、これらの窒素化合物は、触媒の活性に悪影響を及ぼさずに、操作者の暴露の危険性、操作および貯蔵に関する制約、臭気および触媒の抑制効果に関し良好な妥協を提供するものではない。例えば、アンモニアは悪臭があり、取扱いに細心の注意を払う必要がある。アニリンは現在、欧州CLP(「Classification, Labelling, Packaging」)の規則に従ってCMR(発癌性、変異原性、生殖毒性)とみなされている。
【0027】
さらに、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を活性化する方法は、特にそれがエクスサイチュで行われる場合、以下の欠点を示す:
− 高水素圧下での触媒の不動態化は、一般に水素化処理の前、特に水素化分解前にインサイチュで実施されるので、水素化処理法、特に水素化分解法に追加工程を必要とする。
− 窒素化合物および硫化剤は、触媒が水素化処理反応器、特に水素化分解反応器に供給される前に、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒から脱着されるおそれがある。
− 追加の乾燥工程が一般に必要であり、エクスサイチュ法の持続時間を増加させる。
− 不動態化が一般的にエクスサイチュで行われないので、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の活性を制御ことはより困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】国際公開第2014/001633号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0308790号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2778349号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第2668951号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従って、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための改良された方法が依然として必要とされている。実際、触媒の硫化中に、クラッキングまたは異性化の反応は面倒である。これらの反応は非常に発熱的であり、触媒の最終活性に悪影響を及ぼすことがあり、または活性化操作を制御不能にすることさえある。特に、触媒を水素化処理、特に水素化分解に使用する場合にその有効性に悪影響を及ぼすことなく、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の活性化の間に触媒の活性を一時的に抑制することが可能であり、操作者の暴露の危険性を制御すること、および取扱い、貯蔵および/または臭気に関連する制約について良好な妥協を提供することができる化合物または化合物の混合物が特に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この技術的課題は、本発明によって完全にまたは少なくとも部分的に解決される。さらに別の利点は、以下に示す本発明の説明から明らかになるであろう。
【0031】
本発明は、少なくとも1つの水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための方法における、以下の特徴の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つを有する、少なくとも1つの窒素化合物の使用に関する。
a) 窒素化合物の総重量に対する15から35重量%の範囲、好ましくは20から35重量%の範囲、より好ましくは20から30重量%の範囲、より有利には20から25重量%の範囲の窒素の重量含有率;
b) 分子当たり2から20個の範囲、好ましくは2から15個の範囲、より好ましくは2から10個の範囲、さらにより好ましくは2から5個の範囲の窒素原子数、有利には分子当たり2個の窒素原子;
c) 140℃から300℃の範囲、好ましくは140℃から250℃の範囲、より好ましくは140℃から200℃の範囲、さらにより好ましくは140℃から175℃の範囲の沸点;および
d) 前記窒素化合物は、室温および大気圧で液体形態であること。
【0032】
本発明は、少なくとも1つの水素化処理触媒、特に少なくとも1つの水素化分解触媒の活性を制御するための、上記定義の少なくとも1つの窒素化合物の使用にも関する。
【0033】
本発明は、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の酸性部位を不動態化するための、上記定義の少なくとも1つの窒素化合物の使用にも関する。
【0034】
本発明は、最終的には、少なくとも1つの水素化処理触媒、特に1つの水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための方法であって、少なくとも
1) 前記水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を硫化剤の存在下で硫化する工程;および
2) 本発明で定義した少なくとも1つの窒素化合物の存在下で、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を不動態化する工程、
を含む該方法に関する。
【0035】
本発明は、使用が容易な水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を活性化する方法を提案することにより、従来技術の欠点を克服することを可能にし、この方法は、水素化処理触媒の活性化、特に水素化分解触媒の活性化に有効であり、操作者の暴露の危険性の制御、ならびに取り扱い、貯蔵および/または臭気に関する制約について良好な妥協を提供する。有利には、インサイチュで実施されるこの方法に用いられる本発明の窒素化合物は、欧州CLP規則によるCMR(発癌性、変異原性、生殖毒性)ではない。
【0036】
本発明の使用および方法は、リグノセルロース系バイオマス由来のバイオ燃料の製造および石油留分の水素化分解に極めて適している。
【0037】
定義
特に明記しない限り、記載された百分率は重量百分率である。
【0038】
「窒素の重量含有率」は、窒素化合物の総重量に対する重量で表される、分子当たりの窒素原子の百分率を意味する。
【0039】
「室温」とは、20℃の温度を意味する。
【0040】
「大気圧」は、1.013バールまたは101325パスカル(Pa)の圧力を意味する。
【0041】
「アルキルポリスルフィド」は、分子当たり少なくとも2つのスルフィド官能基を含む全てのアルキルスルフィドを意味する。
【0042】
「ジアルキルポリスルフィド」は、分子当たり少なくとも2つのスルフィド官能基を含む全てのジアルキルスルフィドを意味する。
【0043】
「ポリアミン」は、分子当たり少なくとも2つの、置換または無置換のアミン官能基を含む任意のアミン化合物を意味する。
【0044】
「AAA」はアルキルアルカノールアミンを意味する。
【0045】
「水素化処理活性」は、化合物の水素化処理のための触媒の作用を意味する。
【0046】
「水素化分解活性」は、炭化水素の水素化分解のための触媒の作用を意味する。
【0047】
「Tm」は融点を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための方法における、上記の特徴の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つを有する、少なくとも1つの窒素化合物の使用に関する。
【0049】
本発明による窒素化合物を使用することにより、以下の利点の少なくとも1つ、有利にはいくつかを得ることが可能である。
− 水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の、水素化処理活性、特に水素化分解活性は、触媒の硫化操作の間中抑制される;
− 水素化処理操作、特に水素化分解操作の間の触媒の水素化処理活性、特に水素化分解活性は、触媒の硫化操作中、本発明の窒素化合物の作用に起因して低下しない;
− 本発明による窒素化合物の使用が容易である、即ち、本発明の窒素化合物は、より少ないアンモニアを生成する公知の窒素化合物と比較して、注入のために重い装置を必要としない;
− アニリンを使用する溶液のような公知の溶液に対して、本発明の窒素化合物を取り扱う操作者の曝露の危険性が低減される;
− 有利には、本発明による窒素化合物は、欧州CLP規則に従うCMR(発癌性、変異原性、生殖毒性)ではない。
【0050】
上記のように、本発明の窒素化合物は、上で定義されたa)、b)、c)、d)の特徴の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つを有する。全ての組み合わせ、例えば、ab、abc、ac、acd、ad、abd、bc、bcd、cd、bd、abcdが考えられる。
【0051】
一実施形態によれば、さらに、本発明による窒素化合物は、80g.mol−1から300g.mol−1の範囲、好ましくは100g.mol−1から250g.mol−1の範囲、さらにより好ましくは100g.mol−1から200g.mol−1の範囲、有利には120g.mol−1から150g.mol−1の範囲の分子量を有し、これは以下、特徴e)として指定される。
【0052】
この実施形態によれば、窒素化合物は、特徴e)の他に、上で定義された特徴a)、b)、c)、d)の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4を有する。全ての組み合わせ、例えば、ae、abe、abce、ace、acde、ade、abde、be、bce、ade、bcde、cde、de、およびabcdeが考えられる。
【0053】
有利には、本発明による窒素化合物は、2から20個の窒素原子を含む窒素化合物;特に、ポリアミン;AAA;およびそれらの混合物から選択される。例えば、ジアミン、トリアミン等。好ましくは、本発明による窒素化合物は、尿素ならびにニトロ化化合物、亜硝酸化合物、またはニトロソ化合物から誘導される化合物を含まない。
【0054】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の窒素化合物は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基またはアルコキシ基等の酸素原子を含む官能基を含まない。
【0055】
一実施形態によれば、本発明の窒素化合物は、芳香族基または環式基を含まず、これは以下、特徴f)として指定される。
【0056】
この実施形態によれば、窒素化合物は、特徴f)の他に、上で定義された特徴a)、b)、c)、d)、e)の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つを有する。全ての組み合わせ、例えば、af、abf、abcf、abcdf、acf、acdf、acdef、adf、adef、aef、abef、abdef、acef、abef、bf、bcf、bcdf、bcdef、bdf、bdef、bef、bcef、cf、cdf、cdef、cdf、df、def、およびabcdefが考えられる。
【0057】
好ましい実施形態によれば、特徴b)が特に好ましい。従って、好ましい実施形態では、少なくとも1つの窒素化合物は、必然的に特徴b)を有し、即ち、前記少なくとも1つの窒素化合物は、分子当たり、2から20個の範囲、好ましくは2から15個の範囲、より好ましくは2から10個の範囲、さらにより好ましくは2から5個の範囲の窒素原子数を有し、有利には分子あたり2個の窒素原子を有する。
【0058】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの窒素化合物は、特徴b)、および上で定義した特徴a)、c)、d)の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、ならびに場合によりさらに特徴e)および/または特徴f)を有する。
【0059】
本発明で使用することができる窒素化合物の例は、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン(DEAPA)(T=−50℃)、テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)(T=−82℃)、N−メチル−1,3−プロパンジアミン(T=−72℃)、N,N’−ジブチル−1,3−プロパンジアミン(T=−50℃)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)プロパン−1,3−ジアミン(DMAPAPA)(T=−60℃)、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン(T=−16℃)、N,N’−1,2−エタンジイル−ビス−1,3−プロパンジアミン(T=−1.5℃)、N−(アミノプロピル)ジエタノールアミン(APDEA)(T=−20℃)、およびそれらの混合物である。
【0060】
好ましくは、窒素化合物は、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン(DEAPA)、テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N−(3−ジメチルアミノプロピル)プロパン−1,3−ジアミン(DMAPAPA)、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−1,2−エタンジイル−ビス−1,3−プロパンジアミン、およびそれらの混合物から選択されるアルキルアミンである。
【0061】
より好ましくは、窒素化合物は、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン(DEAPA)およびテトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、ならびにDEAPAとTMPDAとの混合物から選択される。
【0062】
一実施形態によれば、少なくとも2つの窒素化合物の混合物が使用される。2つの窒素化合物の混合物において、混合物中の窒素の重量含有率は、上記で定義したような単一の窒素化合物の含有率に相当する。換言すれば、この含有率は、窒素化合物の混合物の総重量に対して、15から35重量%、好ましくは20から35%、より好ましくは20から30%、より有利には20から25%である。
【0063】
より正確には、混合物の窒素重量含有率が本発明に従うように使用される窒素化合物の相対量を決定するために、以下の等式を使用することができる。2つの窒素化合物AとAとの混合物については、それらの相対量QA1およびQA2が以下に表される。
【0064】
【数1】
【0065】
これらの等式中、
− AおよびAは2つの窒素化合物を表し、それらは同一でも異なってもよい;
− QA1は、窒素化合物の混合物の総重量に対する重量%で表される窒素化合物Aの量を表す;
− QA2は、窒素化合物の混合物の総重量に対する重量で表される窒素化合物Aの量を表す;
− %NA1は、窒素化合物Aの重量に対する重量%で表される窒素化合物Aにおける窒素の重量含有率を表す;
− %NA2は、窒素化合物Aの重量に対する重量%で表される窒素化合物Aにおける窒素の重量含有率を表す;
− %NA1+A2は、混合物の重量に対する重量%で表される本発明の2つの窒素化合物AおよびAの混合物の窒素の重量含有率を表す。
【0066】
例えば、窒素化合物Aにおける窒素の重量含有率が%NA1=15%であり、窒素化合物Aにおける窒素の重量含有率が%NA2=30%であり、本発明に従って、A+Aの混合物に対する目標窒素重量含有率が%NA1+A2=20%である場合、混合物に使用される窒素化合物Aの相対量は、窒素化合物の混合物の総重量に対し、QA1=66.67重量%に等しく、混合物に使用される窒素化合物Aの相対量は、窒素化合物の混合物の総重量に対し、QA2=33.33重量%である。
【0067】
混合物が、本発明に従って、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5または6つ以上の窒素化合物を含む場合、混合物の窒素重量含有率が本発明に従うように使用される窒素化合物の相対量を決定するために、上記と同様の等式を確立することができる。
【0068】
上記のように、本発明は、最終的に、少なくとも1つの水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための方法に関する。
【0069】
有利には、少なくとも1つの水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための前記方法は、
1) 前記水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を硫化剤の存在下で硫化する工程;および
2) 前記水素化処理触媒、特に前記水素化分解触媒の不動態化を、上で定義した少なくとも1つの窒素化合物の存在下で行う工程
からなる。
【0070】
不動態化工程の間に、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を本発明の窒素化合物と接触させることは、当業者に公知の任意の方法、特に少なくとも1つの水素化分解触媒、特に少なくとも1つの水素化分解触媒を含む反応器への本発明の窒素化合物の液相または気相注入によって実施することができる。気相注入を用いる場合、窒素化合物は、注入中または注入前に気化される。好ましくは、液相注入が用いられる。
【0071】
本発明の窒素化合物の注入は、計量ポンプ、注入ポンプ、または供給ポンプのような当業者に公知の任意の手段によって行うことができる。
【0072】
不動態化工程は有利には120から350℃の範囲の温度で実施される。
【0073】
不動態化工程は、有利には水素雰囲気下で実施される。水素圧力は、水素化処理反応器、特に水素化分解反応器の通常の操作圧力に対応する。それは好ましくは1バールから200バール(または1.10Paから200.10Pa)、好ましくは15バールから100バール(または15.10Paから100.10Pa)の範囲である。
【0074】
不動態化工程の間、窒素化合物は、有利には、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の総重量に対して、0.01から20重量%、好ましくは0.01から10重量%、より好ましくは0.01から5重量%の範囲の含有率で注入される。
【0075】
不動態化工程の間に、生成されるアンモニア含有率が、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の総重量に対して、0.01から40重量%、好ましくは0.01から20重量%、より好ましくは0.01から10重量%、さらにより好ましくは0.01から5重量%になるよう、窒素化合物の含有率が有利に調節される。
【0076】
本発明で使用される水素化処理触媒、特に水素化分解触媒は、好ましくは酸性官能性および水素化官能性を有する二官能性である。当業者に知られているこの種の触媒は、一般に担持された金属の形態である。酸性官能性は、担体(例えば、アルミナまたは非晶質および/もしくは結晶性シリコアルミン酸塩)または、例えば、フッ素等のハロゲン化ドーパントによって供給され、水素化官能性は硫化工程で操作可能にされる金属酸化物または金属硫化物によって供給される。
【0077】
一実施形態によれば、担体は、一般に、多孔質耐火性酸化物である。多孔質耐火性酸化物は、好ましくはゼオライト、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ならびにベリリウム、クロム、チタン、マグネシウムおよびトリウムの酸化物、ならびにシリコアルミン酸塩およびシリカ−酸化チタンのようなそれらの組合せから選択される。
【0078】
水素化処理、特に水素化分解の分野で最も使用される担体は、ゼオライトと呼ばれる結晶性シリコアルミン酸塩である。使用されるゼオライトは交換可能なカチオン、一般に金属カチオンまたはヒドロニウムイオン、好ましくはヒドロニウムイオンを有する。
【0079】
ゼオライトは、好ましくは、天然ゼオライト、例えば、フェリエライト、人工ゼオライトおよび合成ゼオライト、例えば、非限定的に、ゼオライトZSM、例えば、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38およびそれらの類似体、ゼオライトSAPO、例えば、SAPO−11、SAPO−31、ゼオライトベータおよびゼオライトYから選択される。
【0080】
多孔質耐火性酸化物は、場合により、ゼオライトと組み合わせてもよく、例えば、ゼオライトと、シリカ、ジルコニアまたはアルミナとの組み合わせが挙げられる。
【0081】
本発明で使用される水素化処理触媒、特に水素化分解触媒は、好ましくは、IUPACの元素の周期律表の第5、6、8、9および10欄から選択される遷移金属を含む。
【0082】
水素化処理触媒、特に水素化分解触媒は、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、および全ての比率におけるこれら2つ以上の混合物から選択される1つ以上の遷移金属を含むことが好ましい。
【0083】
金属の好ましい組み合わせは、ニッケル−タングステン、コバルト−モリブデン、ニッケル−バナジウム、ニッケル−モリブデン、モリブデン−タングステンおよびニッケル−コバルトである。特に、ニッケル/タングステン触媒は、それらが化石起源(石油由来の炭化水素)であるか、または動物もしくは植物起源であるかにかかわらず、水素化脱酸素反応および他の水素化処理反応、特に有機原料の水素化分解の反応を行う能力を示す一方で、優れた異性化および脱芳香族化性を有する。
【0084】
これらの金属は、一般に、上で定義した担体上に存在する。ニッケル/タングステン触媒については、シリコアルミン酸塩およびシリカ−酸化チタン担体は非常に特に適している。これらの金属は、アルミナまたは非晶質または結晶性シリコアルミン酸塩等の担体上に酸化形態で存在する。好ましくは、金属酸化物は、ゼオライト系担体上に存在する。
【0085】
触媒は、非限定的例として、Pt/SAPO−11/Al、 Pt/ZSM−22/Al、Pt/ZSM−23/Al、NiW/Al、NiW/ゼオライト/AlおよびPt/SAPO−11/SiOである。好ましくは、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒は、NiW/AlおよびNiW/ゼオライト/Alから選択される。
【0086】
水素化処理触媒を水素化脱酸素触媒と一緒にまたは混合して使用することが特に望ましい。何故ならば、両方とも硫化工程を必要とするからである。従って、水素化脱窒素、水素化脱硫、脱芳香族化、水素化転化、水素化、水素化異性化、水素化脱酸素化、脱芳香族化および水素化分解を同時に、逐次的にまたは交互に行うことができる。
【0087】
本発明による水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための方法は、硫化剤が水素化処理反応器、特に水素化分解反応器に導入される少なくとも1つの硫化工程を含む。
【0088】
有利には、硫化剤は、硫化水素、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、ジメチルスルフィド、メルカプタン、チオフェンおよび誘導体、アルキルポリスルフィド、ジアルキルポリスルフィドならびに水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の金属酸化物を硫化することができる全てのスルフィド化合物から選択される。好ましくは、硫化剤はDMDSであり、特にアルケマ社によって、例えば、DMDS Evolution(R)およびDMDS Evolution(R) E2の商標名で市販されている。
【0089】
硫化工程は、気相または液相のいずれかで実施することができる。好ましくは、硫化工程は、120から350℃の間の温度で1バールから200バール(または1.10Paから200.10Pa)までの範囲の水素圧で灯油または軽油等の軽質留分を含む液体供給物を接触させることによって液相中で行われる。好ましくは、水素圧は、15バールから100バール(または15.10Paから100.10Pa)までの範囲である。
【0090】
より詳細には、本発明による水素化処理触媒、特に水素化分解触媒のインサイチュ活性化のための方法の間に、1つ以上の水素化処理反応器、特に水素化分解反応器に少なくとも1つの水素化処理触媒、特に水素化分解触媒を充填した後で、液体供給物をその後、好ましくは120℃から350℃の温度で注入する。液体供給物は、供給物の総重量に対して、好ましくは0.01から20重量%、好ましくは0.01から5重量%の硫化物含有率を有する。
【0091】
一実施形態によれば、触媒を装填し、装填操作の間に吸着された水を除去するために、窒素または水素を用いて120℃から200℃の間で乾燥させる任意の工程の後で、装置の圧力は、装置の通常操作圧力に対応する圧力、好ましくは1バールから200バールの間(または1.10Paから200.10Paの間)、より好ましくは15バールから100バールの間(または15.10Paから100.10Paの間)にされる。次いで触媒反応器の温度を、水素化処理触媒、特に水素化分解触媒の硫化および不動態化の反応を実施するために200℃から350℃へ連続段階で上昇させる。
【0092】
硫化工程の過程で、硫化剤は、当業者に知られている任意の手段、例えば、ピストン型計量ポンプ、多段式容積式ポンプ、または注入流量の制御を提供する任意の他のポンプシステムに従って、水素化処理反応器、特に水素化分解反応器に供給される液体供給物または水素に注入される。
【0093】
好ましい実施形態によれば、硫化工程および不動態化工程は同時に行われる。この実施形態では、硫化剤および窒素化合物は、水素化処理反応器(単数または複数)、特に水素化分解反応器に同時に注入される。少なくとも1つの硫化剤および上記で定義した少なくとも1つの窒素化合物を含む混合物も含まれる。
【0094】
別の実施形態によれば、硫化工程および触媒の酸性部位の不動態化工程は断続的に、即ち、単数または複数の水素化処理反応器、特に水素化分解反応器中で、硫化剤が注入され、次に本発明による少なくとも1つの窒素化合物が、またはその逆順で注入され、この操作は1回以上繰り返される。
【0095】
一実施形態によれば、水素化処理触媒を活性化した後、水素化処理反応器内において温度を徐々に上昇させて、例えば、350℃から450℃の間の水素化処理反応器の通常操作温度、いわゆる生産モードに達する。水素化処理される化合物は、例えば、50バールから200バール(または50.10Paから200.10Pa)の範囲の水素圧下で水素化処理反応器に導入することができる。存在する水素は、水素化処理触媒からアンモニアを脱着し、そのため触媒がバイオマス由来の化合物を変換するための全ての水素化処理活性を回復することが可能になる。有利には、脱着は徐々に行われ、それにより水素化処理反応の発熱性を制御することが可能となる。
【0096】
一実施形態によれば、水素化分解触媒を活性化した後、水素化分解反応器内において温度を徐々に上昇させて、好ましくは350℃から450℃の間の水素化分解反応器の通常操作温度、いわゆる生産モードに達する。分解される重質炭化水素鎖を有する留分は、50バールから200バール(または50.10Paから200.10Pa)の範囲の水素圧下で水素化分解反応器に導入される。存在する水素は、水素化分解触媒からアンモニアを脱着し、そのため触媒が重質留分を変換するための全ての水素化分解活性を回復することが可能になる。有利には、脱着は徐々に行われ、それにより水素化分解反応の発熱性を制御することが可能となる。
【0097】
本発明は、純粋に説明の目的のために与えられており、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない以下の非限定的な実施例に照らしてより深く理解されるであろう
【実施例】
【0098】
この試験の目的は、水素化処理触媒上のアミンのアンモニアへの分解を比較することである。比較は、本発明によるアミンと、従来技術に既に記載され、市場でトリn−ブチルアミンおよびアニリンとして知られているアミンとの間で行う。
【0099】
この試験に用いた触媒は、γアルミナ上に担持された酸化モリブデン17重量%、酸化ニッケル3.5重量%を含む。この試験に使用したDMDS(ジメチルジスルフィド)およびDEAPA(ジエチルアミノプロピルアミン)は、アルケマ社から供給されている。
【0100】
アンモニアへのアミンの転化は、この触媒を含む反応器の出口で得られる。触媒は、ニッケルおよびモリブデン金属酸化物を対応する金属硫化物に転化する「硫化」処理によって活性化されなければならない。ドデカン中1.5重量%に希釈したジメチルジスルフィドの溶液を以下のように使用する。
− 4mlの触媒を触媒反応器に入れ、0.5MPaの窒素(10NL/時)の下、150℃で1時間乾燥させた後、窒素を1NL/時の水素で置換し、反応器内の圧力6MPaにする。
− DMDSをドープしたドデカン(1.5重量%)4ml/時を水素の流入流に導入し、反応器の温度を25℃/時の温度勾配に従って230℃にし、次いでこの温度で6時間(この期間は、0.5mol%を超える、反応器出口での水素中の硫化水素の濃度を観察するのに十分な時間である)安定化させる。この硫化水素濃度をガスクロマトグラフィーによりオンラインで測定した。
− 次に、反応器の温度を25℃/時の勾配に従って350℃に上昇させ、次いでこの温度で少なくとも10時間維持する。
【0101】
次いで、このようにして活性化された触媒を、ドデカン中で希釈されたアミンの種々の溶液と接触させる。同じガスクロマトグラフィー装置を用いて出口の水素中のアンモニア濃度を測定する。試験条件は以下の通りであった。
− アミンドープしたドデカン(窒素0.5重量%)の流量:4ml/時
− 水素圧力:6MPa
− 水素の流量:1NL/時。
【0102】
触媒反応器の温度を、アンモニアへのアミンの50%転化率に相当する予想アンモニアの50%の形成に必要な温度を決定するために、連続的な工程で200から300℃の間に調節した。使用したアミンに依存して、以下の温度値が得られた。
− アニリン:256℃
− トリ−n−ブチルアミン:254℃
− ジエチルアミノプロピルアミン:245℃。
【0103】
これらの試験は、従来技術で使用されているアミンと比較して、本発明のアミンにより、より低温でのアンモニアの生成を示す。本発明の基準に対応するアミンでは、従来技術において通常使用されるアミンと比較して、ニッケル系およびモリブデン系触媒と接触してアンモニアを形成する傾向がより大きい。