(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つの透明導電膜、または透明導電膜とカバー材とを備え、前記2つの透明導電膜の間、または前記透明導電膜とカバー材との間に位置する粘着剤層をさらに備える静電容量方式のタッチパネルであって、
前記粘着剤層は、
屈折率が、1.47〜1.54であり、
80℃における貯蔵弾性率が、0.02〜0.10MPaであり、
カルボキシル基を有する成分を含有しない
粘着剤からなるものであることを特徴とするタッチパネル。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマー5〜30質量%と、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上の芳香族環を有しないハードモノマー5〜40質量%とを含有することを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位である前記ハードモノマーとして、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、屈折率が1.45〜1.54であり、80℃における貯蔵弾性率が0.02〜0.10MPaであり、カルボキシル基を有する成分を含有しないものである。この粘着剤は、静電容量方式のタッチパネルにおいて、2つの透明導電膜の間、または透明導電膜とカバー材との間に使用される。
【0023】
本実施形態に係る粘着剤は、屈折率および80℃における貯蔵弾性率が上記の範囲にあることにより、静電容量方式のタッチパネルにおいて透明導電膜の回路パターンを見難くする(視認されにくくする)ことができ、特にタッチパネルが80℃等の高温下におかれたときにも、その効果が発揮される。また、本実施形態に係る粘着剤は、屈折率および80℃における貯蔵弾性率が上記の範囲にあることにより、段差追従性にも優れる。したがって、当該粘着剤からなる粘着剤層を、印刷層等による段差を有するカバー材に貼付しても、段差と粘着剤層との間に空隙または気泡ができ難い。また、その積層体が80℃等の高温下におかれたときにも、段差近傍に気泡等が発生することが防止される。さらに、本実施形態に係る粘着剤は、カルボキシル基を有する成分を含有しないため、透明導電膜を腐食させたり、透明導電膜の抵抗値を変化させることを抑制することができる。
【0024】
粘着剤の屈折率が1.45未満であると、透明導電膜の回路パターンが見え易くなる。一方、粘着剤の屈折率が1.54超であると、段差追従性に劣るものとなる。また、80℃における貯蔵弾性率が0.02MPa未満であると、透明導電膜の回路パターンが見え易くなり、特に80℃等の高温下におかれたときに、見え易さが顕著になる。一方、粘着剤の80℃における貯蔵弾性率が0.10MPaを超えると、段差追従性に劣るものとなる。
【0025】
上記の観点から、粘着剤の屈折率は、1.46〜1.52であることが好ましく、特に1.47〜1.50であることが好ましい。また、粘着剤の80℃における貯蔵弾性率は、0.015〜0.09MPaであることが好ましく、特に0.02〜0.07MPaであることが好ましい。
【0026】
なお、本明細書における屈折率は、アッベ屈折計を使用して、JIS K0062−1992に準じて測定した値である。また、80℃における貯蔵弾性率は、後述する試験例に示すねじりせん断法によって測定した値とする。
【0027】
本実施形態に係る粘着剤は、上記の物性を満たすものであればよいが、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)5〜30質量%と、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が70℃以上の芳香族環を有しないハードモノマー5〜40質量%とを含有し、カルボキシル基を有するモノマーを含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、架橋剤(B)と、好ましくはさらにシランカップリング剤(C)とを含む粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤が好ましい。この粘着剤によれば、上記の物性(屈折率および貯蔵弾性率)を満たすことができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0028】
(1)(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を粘着主剤として含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において、水酸基含有モノマーおよび上記ハードモノマーの含有量が前述した範囲にあることで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含有する粘着性組成物Pから得られる粘着剤が前述した屈折率および貯蔵弾性率を満たし易くなる。
【0029】
また、水酸基含有モノマーの含有量が上記の範囲にある(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含有する粘着性組成物Pから得られた粘着剤は、高温高湿条件(例えば、85℃、85%RHの条件下にて72時間)を施した後、常温常湿に戻したときの白化が抑制され、すなわち、耐湿熱白化性に優れたものとなる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)がモノマー単位として上記の量で水酸基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤中に、所定量の水酸基が残存することとなる。水酸基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分との相溶性が良く、その結果、粘着剤の白化が抑制されることとなる。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)におけるモノマー単位としての水酸基含有モノマーの含有量が5質量%未満であると、耐湿熱白化性が低下するおそれがあり、一方、水酸基含有モノマーの含有量が30質量%を超えると、被着体への密着性が低下し、耐久性が低下したり、所望の粘着力が得られないおそれがある。
【0031】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)におけるモノマー単位としての上記ハードモノマーの含有量が5質量%未満であると、粘着剤の屈折率および貯蔵弾性率が上記範囲よりも低くなるおそれがあり、一方、ハードモノマーの含有量が40質量%を超えると、段差追従性が低下したり、所望の粘着力が得られないおそれがある。
【0032】
上記の観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを5〜30質量%含有することが好ましく、特に10〜25質量%含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを5〜50質量%含有することが好ましく、特に10〜30質量%含有することが好ましい。
【0033】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記ハードモノマーは、芳香族環を含有しないモノマーであって、当該ハードモノマーのみを重合して得たホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上、好ましくは75〜200℃、特に好ましくは80〜180℃のモノマーである。
【0035】
上記ハードモノマーは、アクリル系のモノマーであることが好ましく、例えば、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg89℃)、アクリルアミド(Tg165℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ハードモノマーの中でも、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位である上記ハードモノマーとして、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しない。これにより、得られる粘着剤が透明導電膜に貼付されても、酸によるそれらの不具合を抑制することができる。例えば、透明導電膜を腐食させたり、透明導電膜の抵抗値を変化させることを抑制することができる。
【0038】
ここで、「カルボキシル基を有する成分を含有しない」「カルボキシル基を有するモノマーを含有しない」とは、カルボキシル基を有する成分又はモノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシル基含有成分又はモノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜の腐食が生じない程度にカルボキシル基含有成分又はモノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(前述したハードモノマーを除く)を含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。
【0040】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が2〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が2〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜90質量%含有することが好ましく、特に20〜85質量%含有することが好ましく、さらには30〜80質量%含有することが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、得られる粘着剤の屈折率を高くすることのできるモノマー(以下「高屈折率モノマー」という場合がある。)を含有してもよい。
【0043】
高屈折率モノマーとしては、芳香族環を含有するモノマーが好ましく、例えば、芳香族環を1個以上含む芳香族モノマー、多環芳香族骨格を有するモノマー等が挙げられる。芳香族環を1個含む芳香族モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−フェノキシエチル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、(メタ)アクリル酸スチリル等が挙げられる。
【0044】
芳香族環を2個以上含む芳香族モノマーとしては、ビフェニル基含有モノマー、ビスフェノールA型モノマー等が挙げられ、取り扱いの点からは、ビフェニル基含有モノマーが好ましい。ビフェニル基含有モノマーとしては、ビフェニル基含有単官能アクリレートが好ましい。このようなビフェニル基含有モノマーとしては、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
多環芳香族骨格を有するモノマーとしては、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラフェン骨格、テトラセン骨格、クリセン骨格、ピレン骨格、ペンタセン骨格、ヘキサセン骨格、ヘプタセン骨格、コロネン骨格、ケクレン骨格等を有するモノマーが挙げられる。取り扱いの点からは、多環芳香族骨格としてナフタレン骨格やアントラセン骨格を有するモノマーが好ましく、中でもナフタレン骨格を有するモノマーがより好ましい。
【0046】
ナフタレン骨格を有するモノマーとしては、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、(4−メトキシナフチレン)−1−アクリレート、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0047】
上記の高屈折率モノマーの中でも、高い屈折率を示し、かつ所望の貼付適性およびハンドリング性が得られるという観点から、(メタ)アクリル酸ベンジルおよびエトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートが特に好ましい。なお、上記高屈折率モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が当該重合体を構成するモノマー単位として高屈折率モノマーを含有する場合、その含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、特に2〜20質量%であることが好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、水酸基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は20万〜100万であることが好ましく、特に30万〜90万であることが好ましく、さらには40万〜80万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が上記の範囲内にあることにより、得られる粘着剤が前述した貯蔵弾性率を満たし易くなる。
【0053】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(2)架橋剤(B)
粘着性組成物Pを架橋すると、架橋剤(B)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成する水酸基含有モノマー由来の水酸基と反応する。これにより、架橋剤(B)によって(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が架橋された構造が形成される。
【0055】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性基(モノマー単位である水酸基含有モノマーの水酸基)と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0057】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、特に0.05〜1質量部であることが好ましく、さらには0.1〜0.5質量部であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲内であると、得られる粘着剤が前述した屈折率および貯蔵弾性率を満たし易くなる。
【0058】
(3)シランカップリング剤(C)
粘着性組成物Pは、得られる粘着剤の粘着力を改善する観点から、シランカップリング剤(C)を含有することが好ましい。シランカップリング剤(C)としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0059】
かかるシランカップリング剤(C)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量部であることが好ましく、さらには0.1〜0.3質量部であることが好ましい。
【0061】
(4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
【0062】
屈折率調整剤としては、例えば、安息香酸ベンジル、硫化ジフェニル、リン酸トリフェニル、フタル酸ベンジル−n−ブチル、フタル酸ジフェニル、ジフェニル、ジフェニルメタン、リン酸トリクレジル、ジフェニルスルホキシド等が挙げられる。
【0063】
粘着性組成物Pが屈折率調整剤を含有する場合、その含有量は、アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、特に5〜20質量部であることが好ましい。
【0064】
(5)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に、架橋剤(B)、および所望により、シランカップリング剤(C)、添加剤を加えることで製造することができる。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0067】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0068】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、および所望によりシランカップリング剤(C)、希釈溶剤、添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0070】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0071】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0072】
(6)粘着剤の製造
本実施形態に係る粘着剤は、粘着性組成物Pを架橋してなるものであることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0073】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0074】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が良好に架橋され、前述した物性を発揮することができる。
【0075】
〔粘着シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0076】
(1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した粘着剤から構成され、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
【0077】
粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、段差の高さにもよるが、10〜400μmであることが好ましく、特に20〜300μmであることが好ましく、さらには25〜250μmであることが好ましい。粘着剤層11の厚さが10μm以上であることにより、良好な段差追従性が発揮され、粘着剤層11の厚さが400μm以下であることにより、加工性が良好になる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0078】
(2)剥離シート
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0079】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0080】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0081】
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0082】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0083】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0084】
(4)粘着力
粘着剤層11を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材上に積層した積層体の粘着剤層11側の面を、スズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられた透明導電性フィルムの当該透明導電膜に貼付した場合における、当該積層体の透明導電性フィルムに対する粘着力は、5〜80N/25mmであることが好ましく、特に10〜70N/25mmであることが好ましく、さらには15〜50N/25mmであることが好ましい。粘着力が上記範囲にあることにより、タッチパネルの構成部材が確実に接着される。
【0085】
なお、ここでいう粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に対し0.5MPa、50℃で20分加圧して貼付した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0086】
(5)粘着シートの使用
上記粘着シート1を使用することにより、例えば、
図2に示す静電容量方式のタッチパネル2を製造することができる。タッチパネル2は、表示体モジュール3と、その上に粘着剤層4を介して積層された第1のフィルムセンサー5aと、その上に粘着剤層11を介して積層された第2のフィルムセンサー5bと、その上に粘着剤層11を介して積層されたカバー材6とを備えて構成される。
【0087】
上記のタッチパネル2における2つの粘着剤層11は、上記粘着シート1の粘着剤層11である。
【0088】
上記表示体モジュール3としては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等が挙げられる。
【0089】
粘着剤層4は、上記粘着シート1の粘着剤層11によって形成してもよいし、他の粘着剤または粘着シートによって形成してもよい。後者の場合、粘着剤層4を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられるが、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
【0090】
第1のフィルムセンサー5aおよび第2のフィルムセンサー5bは、通常、それぞれ基材フィルム51と、パターニングされた透明導電膜52とから構成される。基材フィルム51としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等が使用される。
【0091】
透明導電膜52としては、例えば、白金、金、銀、銅等の金属、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などからなるものが挙げられ、中でもスズドープ酸化インジウム(ITO)からなるものが好ましい。
【0092】
第1のフィルムセンサー5aの透明導電膜52および第2のフィルムセンサー5bの透明導電膜52は、通常、一方がX軸方向の回路パターンを構成し、他方がY軸方向の回路パターンを構成する。
【0093】
本実施形態における第1のフィルムセンサー5aの透明導電膜52は、
図2中、第1のフィルムセンサー5aの上側(カバー材6側)に位置しているが、これに限定されるものではなく、第1のフィルムセンサー5aの下側(表示モジュール3側)に位置してもよい。また、第2のフィルムセンサー5bの透明導電膜52は、
図2中、第2のフィルムセンサー5bの下側に位置しているが、これに限定されるものではなく、第2のフィルムセンサー5bの上側に位置してもよい。
【0094】
カバー材6は、通常、ガラス板またはプラスチック板を主体とする。ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等からなるアクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられる。
【0095】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の機能層が設けられていてもよいし、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等の光学部材が積層されていてもよい。
【0096】
本実施形態において、上記カバー材6は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層7の有無による段差を有している。印刷層7は、カバー材6における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0097】
印刷層7を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層7の厚さ、すなわち段差の高さは、3〜45μmであることが好ましく、5〜35μmであることがより好ましく、7〜25μmであることが特に好ましく、7〜15μmであることがさらに好ましい。
【0098】
また、印刷層7の厚さ(段差の高さ)は、粘着剤層11の厚さの3〜30%であることが好ましく、特に3.2〜20%であることが好ましく、さらには3.5〜15%であることが好ましい。これにより、粘着剤層11は、印刷層7による段差に良好追従し、段差近傍に浮きや気泡等が発生することが抑制される。
【0099】
上記タッチパネル2の製造方法の一例を、以下に説明する。
粘着シート1から一方の剥離シート12a(又は12b)を剥離し、露出した粘着剤層11を、フィルムセンサー5aのパターニングされた透明導電膜52と接するように、当該フィルムセンサー5aと貼合する。次いで、上記粘着シート1から他方の剥離シート12b(又は12a)を剥離し、露出した粘着剤層11を、フィルムセンサー5bのパターニングされた透明導電膜52と接するように、当該フィルムセンサー5bと貼合する。これにより、フィルムセンサー5a、粘着剤層11およびフィルムセンサー5bが順次積層されてなる積層体が得られる。
【0100】
次に、上記積層体のフィルムセンサー5a側の面(フィルムセンサー5aの基材フィルム51の露出面)に、剥離シート上に設けられた粘着剤層4を貼合する。また、上記粘着シート1とは別の粘着シート1を用意し、当該粘着シート1から一方の剥離シート12a(又は12b)を剥離し、露出した粘着剤層11を、上記積層体にて粘着剤層4が積層された側とは反対側の面(フィルムセンサー5bの基材フィルム51の露出面)に貼合する。
【0101】
その後、上記別の粘着シート1から他方の剥離シート12b(又は12a)を剥離し、露出した粘着剤層11に対して、カバー材6の印刷層7側が当該粘着剤層11に接するように、当該カバー材6を貼合する。これにより、カバー材6、粘着剤層11、フィルムセンサー5b、粘着剤層11、フィルムセンサー5a、粘着剤層4および剥離シートが順次積層されてなる構成体が得られる。
【0102】
最後に、上記構成体から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層4が表示モジュール3に接するように、当該構成体を表示モジュール3に貼合する。これにより、
図2に示されるタッチパネル2が製造される。
【0103】
上記工程において粘着剤層11とカバー材6とを貼合するとき、粘着剤層11は段差追従性に優れるため、印刷層7による段差と粘着剤層11との間に空隙ができ難く、粘着剤層11が当該段差を埋めることができる。
【0104】
以上のタッチパネル2においては、粘着剤層11が所定の屈折率および貯蔵弾性率を有することで、透明導電膜52の回路パターンが見難いものとなっており、特にタッチパネル2が80℃等の高温下におかれたときにも、その効果が発揮される。また、上記タッチパネル2においては、粘着剤層11が段差追従性に優れるため、印刷層7による段差と粘着剤層11との間に空隙または気泡ができ難く、さらにタッチパネル2が高温高湿条件におかれた場合でも、段差近傍に気泡等が発生することが防止される。また、上記タッチパネル2においては、粘着剤層11がカルボキシル基を有する成分を含有しないため、粘着剤層11が接触する透明導電膜52を腐食させたり、透明導電膜52の抵抗値を変化させることが抑制されている。さらに、粘着剤層11が粘着性組成物Pを架橋して形成される場合、当該粘着剤層11は耐湿熱白化性に優れ、タッチパネル2が高温高湿条件におかれた後、常温に戻ったときの白化が抑制される。また、カバー材6がプラスチック板の場合、粘着剤層11が、前述した貯蔵弾性率を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中のハードモノマー由来の凝集力を有することで、カバー材6から発生するアウトガス等による粘着剤層11の発泡や気泡混入(ブリスター)が抑制される。
【0105】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0106】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製
アクリル酸ブチル30質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル30質量部、メタクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0109】
2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「L−45」)0.25質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度40質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0110】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)]
BA:アクリル酸n−ブチル
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル(ハードモノマー)
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル(ハードモノマー)
ACMO:アクリロイルモルホリン(ハードモノマー)
A−LEN:エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(新中村化学工業社製)
BzA:アクリル酸ベンジル
AA:アクリル酸
V−3F:2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート
[架橋剤(B)]
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「L−45」)
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「TD−75」)
エポキシ:1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD−C」)
【0111】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、100℃で4分間加熱処理して塗布層を形成した。同様に、得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、100℃で4分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0112】
次いで、上記で得られた塗布層付きの重剥離型剥離シートと、上記で得られた塗布層付きの軽剥離型剥離シートとを、両塗布層が互いに接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
【0113】
〔実施例2〜24,比較例1〜4〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成する各モノマーの種類、割合および重合平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の種類および配合量、ならびにシランカップリング剤(C)の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、実施例7〜9については、粘着性組成物に、さらに屈折率調整剤としての安息香酸ベンジル(東京化成工業社製)を配合した。配合量は表1に示す通りである。
【0114】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0115】
〔試験例1〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PETA4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。
【0116】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜(ITO膜)が設けられた透明導電性フィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)を、PETフィルム側がガラス板に接するように、当該ガラス板に固定した。
【0117】
上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、上記透明導電膜に貼付した。この貼付は、50℃の温度条件下、0.5MPaの圧力にて、20分間加圧することにより行った。
【0118】
その後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0119】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着剤層を厚さ3mmになるように複数層積層した。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0120】
上記サンプルについて、JIS K7244−6に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,DYNAMIC ANALAYZER)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:80℃
【0121】
〔試験例3〕(屈折率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層の屈折率を、アッベ屈折計(アタゴ社製,品名「アッベ屈折計DR−M2」,Na光源,波長:589nm)を使用して、JIS K0062−1992に準じて測定した。結果を表2に示す。
【0122】
〔試験例4〕(パターン視認性の評価)
厚さ125μmのPETフィルムの片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜(ITO膜)が設けられた透明導電性フィルム(尾池工業社製,ITOフィルム)のITO膜上に、複数のポリイミド粘着テープ(幅1cm)を、1cm間隔でそれぞれ平行に配列されるように貼り合わせた。
【0123】
得られた積層体を、1mol/lに調整された塩酸に2分間浸漬して、上記ポリイミド粘着テープが貼付されていないITO膜部分をエッチングした。続いて、積層体をイオン交換水で充分に洗浄した後、120℃で10分間乾燥させてから、透明導電性フィルムからポリイミド粘着テープを剥がした。これにより、幅1cmのITO膜部分と幅1cmのITO膜非存在部分とが交互に繰り返されるようにITO膜がパターニングされた透明導電性フィルムを得た。
【0124】
次いで、上記のようにITO膜がパターニングされた透明導電性フィルムに対し、150℃で90分間のアニール処理を施して、パターニングされたITO膜を結晶化させた。
【0125】
一方、実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、厚さ100μmのPETフィルムに積層した。そして、そのPETフィルム(厚さ100μm)に積層した粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、上記で得られた透明導電性フィルムのパターニングされたITO膜(結晶化)に貼り合わせた。これにより、PETフィルム(厚さ125μm)/パターニングされたITO膜/粘着剤層/PETフィルム(厚さ100μm)の構成からなる評価サンプルを得た。
【0126】
得られた評価サンプルの透明導電性フィルム側、すなわち厚さ125μmのPETフィルム側から、蛍光灯下で、パターニングされたITO膜を目視することにより、以下の基準で粘着剤層によるパターン視認性(透明導電膜のパターンの見難さ)を評価した。結果を表2に示す。
◎:パターンが見えない。
○:パターンがうっすら見える。
×:パターンが見える。
【0127】
〔試験例5〕(段差追従性評価)
(a)評価用サンプルの作製
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が5μm、10μm、15μm及び20μmとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm
2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μm及び20μm)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0128】
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET100A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付ガラス板にラミネートし、オ−トクレーブ処理(50℃,0.5MPa,30分)することにより、評価用サンプルを得た。
【0129】
(b)評価用サンプルの評価
上記評価用サンプルについて、最初に、評価用サンプルが得られた段階での段差追従性を「初期」として評価した。段差追従性は、粘着剤層により印刷段差が完全に埋められたか否かで判断し、印刷段差と粘着剤層との界面で隙間や気泡などが観察された場合は、印刷段差に追従できなかったと判断される。ここでは、段差追従性は、下記の基準にしたがって段差追従率(%)として評価した。
【0130】
次に、上記評価用サンプルを、85℃、85%RHの環境下に72時間投入した。その後、23℃、50%RHの常温常湿に戻し、当該評価用サンプルの段差追従性を「耐久後」として、上記と同様に評価した。それぞれの評価結果を表2に示す。
【0131】
段差追従率%={(隙間や気泡無く埋められた印刷段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み:50μm)}×100
◎:段差追従率40%
○:段差追従率10%〜30%
×:段差追従率10%未満
【0132】
〔試験例6〕(耐湿熱白化評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、2枚のソーダライムガラス(厚さ:1.1mm)で挟み、積層体を得た。その積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。
【0133】
次に、上記積層体を、85℃、85%RHの湿熱条件下にて72時間保管した。その後、23℃、50%RHの常温常湿に戻し、当該積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。なお、当該ヘイズ値は、積層体を常温常湿に戻してから30分以内に測定した。
【0134】
上記の結果に基づき、湿熱条件後のヘイズ値から湿熱条件前のヘイズ値を差し引いて、湿熱条件後のヘイズ値上昇(ポイント)を算出した。湿熱条件後のヘイズ値上昇が1.0ポイント未満のものを耐湿熱白化性良好(◎)、湿熱条件後のヘイズ値上昇が1.0ポイント以上5.0ポイント未満のものを耐湿熱白化性適性値内(○)、湿熱条件後のヘイズ値上昇が5.0ポイント以上のものを耐湿熱白化性不良(×)と評価した。結果を表2に示す。
【0135】
〔試験例7〕(耐ブリスター性評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、PETフィルムの片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられた透明導電性フィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリカーボネート板(三菱ガス化学社製,ユーピロン・シート MR58,厚さ:1mm)とで挟み、積層体を得た。
【0136】
得られた積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、15時間放置した。次いで、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層に気泡、浮きまたは剥がれがないか否か、目視により確認した。その結果、気泡、浮きおよび剥がれが全くなかったものを◎、直径0.2mm以下の気泡のみが発生したものを○、直径0.2mm超の気泡、浮きまたは剥がれが発生したものを×と評価した(耐ブリスター性の評価)。結果を表2に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
表2から分かるように、実施例で得られた粘着シートによれば、透明導電膜のパターンが見難く、また優れた段差追従性および耐ブリスター性が達成された。特に、実施例1〜23で得られた粘着シートは、耐湿熱白化性にも優れており、実施例1〜22および24で得られた粘着シートは、優れた粘着力をも有していた。