(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の自動車やスノーモービルなどの乗り物においては、加速時および減速時や、進行方向を変えるときにも車体の姿勢が安定していることが望ましい。加速時および減速時には、いわゆるピッチングが生じ、進行方向を変えるときには、いわゆるローリングが生じる。ピッチングとは、車体が左右方向に延びる軸線を中心にして傾斜することにより車体の前部と後部とが上下逆方向に変位する姿勢変化である。ローリングとは、車体が前後方向に延びる軸線を中心にして傾斜して車体左側と車体右側とが上下逆方向に変位する姿勢変化である。
従来のこの種の乗り物は、車体の振動を抑制したり姿勢が安定するように油圧式緩衝装置を備えている。
【0003】
車体の姿勢が安定する従来の油圧式緩衝装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているものがある。
特許文献1に記載されている油圧式緩衝装置は、4輪車に用いられるもので、車体の前後方向や左右方向に対をなす少なくとも2個の油圧緩衝器と、これらの油圧緩衝器の油室に連通された調圧装置とを備えている。
油圧緩衝器は、シリンダ本体と、ピストンおよびピストンロッドと、下部オイル室および上部オイル室と、ピストンに設けられた連通路および絞りなどを備えている。この油圧緩衝器は車体と車輪との間に設けられている。
【0004】
調圧装置は、段付きフリーピストンと、この段付きフリーピストンが移動自在に嵌合する2段式のシリンダとを備えている。段付きフリーピストンは、軸線方向から見て外周側に位置する円環状の基部と、この基部の軸心部に位置する突部とによって形成されている。突部は、基部から軸線方向に突出している。
2段式のシリンダは、フリーピストンの基部が移動自在に嵌合する基部側オイル室と、フリーピストンの突部が移動自在に嵌合する突部側オイル室と、これらのオイル室とはフリーピストンによって仕切られた高圧ガス室とを備えている。この調圧装置においては、フリーピストンが移動すると、基部側オイル室の容積と、突部側オイル室の容積とが互いに等しい容積だけ変化する。
【0005】
基部側オイル室は、一対の油圧緩衝器のうち一方の油圧緩衝器の下部オイル室または上部オイル室に連通されている。突部側オイル室は、他方の油圧緩衝器の下部オイル室または上部オイル室に連通されている。また、基部側オイル室と突部側オイル室とは、調圧装置内で連通路によって互いに連通されている。この連通路には絞りが設けられている。
【0006】
特許文献1に示す油圧式緩衝装置においては、一対の油圧緩衝器が同方向に同一量だけ動作する場合は、調圧装置の基部側オイル室と突部側オイル室とに対して作動油が同一量ずつ流入または流出し、フリーピストンが移動する。この場合は、作動油が主にピストンの絞りを通ることによって減衰力が発生する。
【0007】
一方、一対の油圧緩衝器が互いに逆方向に動作し、たとえば調圧装置の基部側オイル室に作動油が流入するとともに突部側オイル室から作動油が流出する場合は、フリーピストンの移動が抑えられ、作動油が調圧装置の絞りにも流れるようになる。この場合は、作動油がピストンの絞りと調圧装置の絞りとの両方を通ることにより減衰力が発生する。この場合の減衰力は、一対の油圧緩衝器が同一方向に動作する場合の減衰力より大きい。
このため、特許文献1に示す油圧式緩衝装置を使用して車体のピッチングを抑えるためには、一方の油圧緩衝器を車体前側に配置し、他方の油圧緩衝器を車体後側に配置することによって実現可能である。また、この油圧式緩衝装置を使用してローリングを抑えるためには、一方の油圧緩衝器を車体左側に配置し、他方の油圧緩衝器を車体右側に配置することによって実現可能である。
【0008】
特許文献2に記載されている油圧式緩衝装置は、4輪車に用いられるもので、車輪と車体との間に介装された4個の油圧緩衝器と、これらの油圧緩衝器の油室に連通された2つのリザーブタンクとを備えている。油圧緩衝器は、作動油が充填されたシリンダ本体と、このシリンダ本体内に移動自在に嵌合したピストンと、このピストンと一体に移動するピストンロッドなどによって構成されている。
【0009】
ピストンは、シリンダ本体内を下部オイル室と上部オイル室とに仕切っている。このピストンには、下部オイル室と上部オイル室とを連通する連通路と、絞りを構成するピストンバルブとが設けられている。ピストンロッドは、上部オイル室を貫通してシリンダ本体から上方に突出している。
【0010】
車体左側の前輪に連結された油圧緩衝器の下部オイル室と、車体左側の後輪に連結された油圧緩衝器の下部オイル室とは、車体左側の作動油通路によって互いに連通されている。車体右側の前輪に連結された油圧緩衝器の下部オイル室と、車体右側の後輪に連結された油圧緩衝器の下部オイル室とは、車体右側の作動油通路によって互いに連通されている。
【0011】
車体左側の作動油通路と車体右側の作動油通路の途中には、それぞれリザーブタンクが接続されている。このリザーブタンクは、車体左側の作動油通路または車体右側の作動油通路に絞りを構成するベースバルブを介して連通された油室と、この油室とはフリーピストンを介して仕切られたガス室とを有している。
【0012】
この特許文献2に記載されている油圧式緩衝装置によれば、油圧緩衝器が伸長したり収縮することにより作動油がピストンバルブを通り、減衰力が発生する。油圧緩衝器が伸びるときは、作動油が車体左側または車体右側の作動油通路から下部オイル室内に流入する。油圧緩衝器が縮むときは、作動油が下部オイル室内から車体左側または車体右側の作動油通路側へ流出する。
【0013】
ローリングにより前輪側の油圧緩衝器と後輪側の油圧緩衝器とが同方向に動作するときは、両方の油圧緩衝器から作動油が流出したり、両方の油圧緩衝器に作動油が流入する。両方の油圧緩衝器から作動油が流出するときは、作動油が車体左側または車体右側の作動油通路からベースバルブを通ってリザーブタンクに流入する。両方の油圧緩衝器に作動油が流入するときは、作動油がリザーブタンクからベースバルブを通って車体左側または車体右側の作動油通路に流出する。
【0014】
すなわち、ローリング時は、作動油がピストンバルブと、リザーブタンクのベースバルブとを通過するために、相対的に大きな減衰力が発生する。一方、ピッチングにより前輪側の油圧緩衝器と後輪側の油圧緩衝器とが互いに逆方向に動作するときは、作動油が車体左側および車体右側の作動油通路を通り、リザーブタンクをバイパスして収縮側の油圧緩衝器から伸張側の油圧緩衝器に向けて流れるようになる。この場合は、ローリング時と較べてベースバルブを通過する作動油が減少するから、発生する減衰力の大きさは相対的に小さくなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の
参考例)
先ず、本発明の前提となる技術を
図1〜
図7によって詳細に説明する。この
参考例においては、一対の油圧緩衝器が車体の左右方向に対をなす形態について説明する。ここでは先ず、この
参考例による乗り物用油圧式緩衝装置の概略の構成を
図1および
図2によって説明する。
図1は、油圧式緩衝装置を車体の後方から見た状態で描いてある。
図2は、車体を上方から見た平面図であるが、便宜上、油圧式緩衝装置を車体の後方から見た状態で描いてある。この
参考例による乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の請求項1と
請求項4および請求項5に記載した発明の前提となる乗り物用油圧式緩衝装置である。
【0023】
図1に示す乗り物用油圧式緩衝装置1は、自動車2(
図2参照)に用いるもので、車体3の左右方向に対をなす一対の油圧緩衝器4,5と、これらの油圧緩衝器4,5に接続されたリザーブタンク6とを備えている。ここでいう自動車2とは、
図2に示すように、左右一対の前輪7,8と左右一対の後輪9,10とを有する4輪車である。なお、4輪車としては、自動車に限らず鞍乗り型のATV(All Terrain Vehicle)やゴルフカーのような開放型の車両など、あらゆるタイプの4輪車を含む。これらの車輪7〜10は、車重を支えて路面上を回転して走行する。この
参考例においては、車体左側の前輪7および
後輪9が「第1の走行部材」に相当し、車体右側の前輪8および
後輪10が「第2の走行部材」に相当する。
【0024】
油圧緩衝器4,5は、4個の車輪毎に設けられている。すなわち、この
参考例による自動車2は、車体前部と車体後部とにそれぞれ左右一対の油圧緩衝器4,5およびリザーブタンク6を備えている。
これらの2組の左右一対の油圧緩衝器4,5およびリザーブタンク6は、互いに同一の構成が採られている。このため、以下においては、車体前部に位置する左右一対の油圧緩衝器4,5およびリザーブタンク6について説明し、車体後部に位置する左右一対の油圧緩衝器4,5およびリザーブタンク6については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図1は、車体前部の油圧緩衝器4,5およびリザーブタンク6を車体3の後側から見た状態で描いてある。
【0025】
左右一対の油圧緩衝器4,5のうち、車体左側に位置する油圧緩衝器4は、
図1に示すように、車体3の左側下部に設けられた左側アーム11と、車体3の左側上部との間に設けられている。車体右側に位置する油圧緩衝器5は、車体3の右側下部に設けられた右側アーム12と、車体3の右側上部との間に設けられている。
左側アーム11は、車体3の左側下部に連結軸13を介して揺動可能に連結されており、この連結部から車体3の左側方に向けて延びている。右側アーム12は、車体3の右側下部に連結軸14を介して揺動可能に連結されており、この連結部から車体3の右側方に向けて延びている。連結軸13,14の軸線は車体3の前後方向と平行である。
【0026】
左側アーム11の揺動端部には、車体左側の前輪7または後輪9が回転自在に設けられている。右側アーム12の揺動端部には、車体右側の前輪8または後輪10が回転自在に設けられている。すなわち、左側アーム11は、車体左側の前輪7または後輪9を車体3に対して上下方向へ移動可能に連結している。右側アーム12は、車体右側の前輪8または後輪10を車体3に対して上下方向へ移動可能に連結している。
この
参考例においては、
左側アーム11によって、「第1の連結部材」が構成され、
右側アーム12によって、「第2の連結部材」が構成されている。
【0027】
油圧緩衝器4,5は、シリンダ本体15とピストンロッド16とを有する油圧シリンダによって構成されている。この油圧緩衝器4,5の一端部は、シリンダ本体15によって構成され、他端部は、ピストンロッド16によって構成されている。
シリンダ本体15は、左側アーム11または右側アーム12に車輪側連結部材17を介して揺動自在に連結されている。ピストンロッド16は、車体3の左側上部または右側上部に車体側連結部材18を介して取付けられている。また、ピストンロッド16は、シリンダ本体15内を第1の油室21と第2の油室22とに仕切るピストン23に接続されている。第1の油室21は、シリンダ本体15における左側アーム11または右側アーム12に連結される一端側に形成されている。第2の油室22は、シリンダ本体15におけるピストンロッド16が貫通する他端側に形成されている。
【0028】
シリンダ本体15は、
図3に示すように、
図3において上下方向に延びる円筒24と、ピストンロッド16が貫通する状態で円筒24の一端部を閉塞する支持部材25と、円筒24の他端部を閉塞する蓋部材26とを備えている。円筒24の外周部には、緩衝用ばね27(
図1参照)の下端部を支えるばね受け部材28が取付けられている。緩衝用ばね27は、このばね受け部材28と車体側連結部材18との間に圧縮された状態で装着されている。なお、緩衝用ばね27は、油圧緩衝器4,5とは独立に設けてもよい。
【0029】
支持部材25は、円環状に形成されており、中空部内にピストンロッド16が通された状態で円筒24の内周部に嵌合している。この支持部材25は、円筒24の内周部に固定されたサークリップ29と、円筒24の外端面に当接するキャップ30とによって、円筒24に対して移動することができない状態に固定されている。キャップ30は、図示していない固定用ボルトによって支持部材25に取付けられている。
【0030】
支持部材25の外周部には、円筒24との間をシールするためのOリング31が装着されている。支持部材25の内周部には、複数の部材が軸線方向に並ぶ状態で取付けられている。これらの複数の部材とは、
図3において上から順に、ダストシール32と、軸受33と、オイルシール34と、ワッシャ35と、ストッパーゴム36である。ダストシール32は、塵埃や水などの異物が支持部材25とピストンロッド16との間の隙間を通って円筒24内に入ることを防ぐためのものである。
【0031】
軸受33は、ピストンロッド16を摺動自在に支持するもので、支持部材25に圧入されている。すなわち、ピストンロッド16は、この軸受33を介して支持部材25に移動自在に支持されている。
オイルシール34は、円筒24内(第2の油室22内)の作動油が支持部材25とピストンロッド16との間の隙間を通って外に漏洩することを防ぐためのものである。ワッシャ35は、ストッパーゴム36を支えるためのものである。ストッパーゴム36は、この油圧緩衝器4,5のいわゆる伸びきり時の衝撃を緩和するためのもので、ピストンロッド16の一端部に取付けられたプレート37が伸びきり時に当接する。
【0032】
蓋部材26は、円筒24の他端部に嵌合された蓋本体38と、この蓋本体38の下端に設けられたU字型の取付板39とを備えている。蓋本体38は、円筒24にねじあるいは溶接によって固定されている。この蓋本体38と円筒24との嵌合部分は、作動油が漏洩することがない構成が採られている。
【0033】
蓋本体38における円筒24の中に挿入される部分には、凹部40が形成されている。この凹部40は、円筒24内に開口しており、第1の油室21の一部を構成している。
蓋本体38における円筒24の外に露出する部分には、
図4に示すように、第1のオイルホース51や第2のオイルホース52の緩衝器側接続金具55が通路形成用ボルト56によって取付けられている。これらの第1のオイルホース51と第2のオイルホース52は、シリンダ本体15内の第1の油室21と、後述するリザーブタンク6の第3の油室57(
図6参照)とを連通するためのものである。
【0034】
第1のオイルホース51は、車体左側に位置する油圧緩衝器4とリザーブタンク6を接続している。
図2に示す油圧式緩衝装置1においては、左側前輪用の油圧緩衝器4と車体前側のリザーブタンク6とが第1のオイルホース51によって接続されている。また、左側後輪用の油圧緩衝器4と車体後側のリザーブタンク6とが第1のオイルホース51によって接続されている。
第2のオイルホース52は、車体右側に位置する油圧緩衝器5とリザーブタンク6を接続している。
図2に示す油圧式緩衝装置1においては、右側前輪用の油圧緩衝器5と車体前側のリザーブタンク6とが第2のオイルホース52によって接続されている。また、右側後輪用の油圧緩衝器5と車体後側のリザーブタンク6とが第2のオイルホース52によって接続されている。
【0035】
第1および第2のオイルホース51,52は、
図4に示すように、ホース本体58と、緩衝器側接続金具55と、リザーブタンク側接続金具59(
図6参照)とによって構成されている。ホース本体58は、可撓性を有するゴムによって形成されている。緩衝器側接続金具55は、ホース本体58の油圧緩衝器側端部に取付けられている。リザーブタンク側接続金具59は、ホース本体58のリザーブタンク側端部に設けられている。緩衝器側接続金具55は、ホース本体58に固着されたパイプ55aと、このパイプ55aの先端に取付けられた環状部材55bとによって構成されている。この環状部材55bの中空部に通路形成用ボルト56が通されている。
【0036】
通路形成用ボルト56にはオイル孔56aが形成されている。このオイル孔56aは、環状部材55bとパイプ55aの中に形成されたオイル通路60を介して第1のオイルホース51内の第1の作動油通路61(
図6参照)と、第2のオイルホース52内の第2の作動油通路62に接続されている。この通路形成用ボルト56は、オイル孔56aが蓋本体38内の凹部40に連通する状態で蓋本体38のねじ孔38aに螺着され、環状部材55bを蓋部材26に固定している。
【0037】
蓋部材26のU字型の取付板39には、
図3に示すように、貫通穴63が形成されている。貫通穴63には車輪側連結部材17の連結軸64(
図1参照)が通される。車輪側連結部材17は、詳細には図示してはいないが、左側アーム11または右側アーム12と連結軸64とが緩衝用ゴムによって連結される構造のものである。
【0038】
油圧緩衝器4,5のピストンロッド16は、一本の棒体によって形成されている。このピストンロッド16におけるシリンダ本体15とは反対側に位置する上端部には、
図3に示すように、雄ねじ65が形成されているとともにアダプタ66が設けられている。雄ねじ65は、ピストンロッド16に車体連結部材18を取付けるために形成されている。車体連結部材18は、詳細には図示してはいないが、車体3の左側上部または右側上部とピストンロッド16の上端部とが緩衝用ゴムによって連結される構造のものである。
ピストンロッド16におけるシリンダ本体15内に位置する下端部には、ピストン23を取付けるために、雄ねじ67が形成されているとともに段差部68が形成されている。
【0039】
ピストン23は、
図5に示すように、円環状に形成されたピストン本体71と、このピストン本体71の外周部に設けられた円環状の軸受72およびOリング73などによって構成されている。軸受72は、ピストン本体71とシリンダ本体15の円筒24との摺動を円滑にするためのものである。Oリング73は、軸受72の内周面とピストン本体71との間をシールするとともに軸受72を径方向外方に拡げるためのものである。
【0040】
ピストン本体71には、ピストンロッド16が嵌合する貫通穴71aと、後述する複数の油孔とが形成されている。貫通穴71aは、ピストン本体71の軸心部に位置付けられている。複数の油孔とは、
図5においてピストン本体71の左側を軸方向に貫通する収縮側油孔71bと、
図5においてピストン本体71の右側を軸方向に貫通する伸長側油孔71cなどである。収縮側油孔71bと伸長側油孔71cは、ピストン本体71の周方向に適当な間隔をあけて交互に複数ずつ設けられている。
収縮側油孔71bの一端部(第1の油室21側の端部)は、第1の油室21に開放されている。伸長側油孔71cの一端部(第2の油室22側の端部)は、第2の油室22に開放されている。
【0041】
この
参考例によるピストン本体71は、ピストンロッド16の下端部の雄ねじ67に螺着された固定用ナット74とピストンロッド16の段差部68との間に、後述する複数の部材とともに挟まれて固定されている。
ピストン本体71と段差部68との間には、円環状のプレート75と、複数のディスク状の第1の板ばね76とが挟まれている。ピストン本体71と固定用ナット74との間には、複数のディスク状の第2の板ばね77と、シム78と、ワッシャ79とが挟まれている。
【0042】
第1の板ばね76は、ピストン本体71に形成された収縮側油孔71bにおける第2の油室22側の開口部を閉塞している。この第1の板ばね76は、作動油が収縮側油孔71b内を第1の油室21側から第2の油室22側に向けて流れることのみを許容する逆止弁80を構成するものである。
第2の板ばね77は、伸長側油孔71cにおける第1の油室21側の開口部を閉塞している。この第2の板ばね77は、作動油が伸長側油孔71c内を第2の油室22側から第1の油室21側に向けて流れることのみを許容する逆止弁81を構成するものである。
この
参考例においては、収縮側油孔71bおよび伸長側油孔71cと、第1および第2の
板ばね76,77とによって、「絞り」が構成されている。
【0043】
リザーブタンク6は、
図6に示すように、ベース部材82と、有底円筒状のシリンダ83と、フリーピストン84とを備えている。ベース部材82には、第1および第2のオイルホース51,52のリザーブタンク側接続金具59が取付けられている。シリンダ83は、このベース部材82に支持されている。フリーピストン84は、シリンダ83内に設けられている。この
参考例によるリザーブタンク6は、車体3の左右方向の中央に配置されている。
【0044】
ベース部材82は、2個のリザーブタンク側接続金具59が取付けられた板状部82aと、シリンダ83に接続された筒状部82bとによって構成されている。板状部82aには、2つの貫通孔85が形成されている。これらの貫通孔85には、リザーブタンク6を車体3に対して固定するための固定用ボルト(図示せず)が挿通される。
2個の接続金具59のうち
図6において左側に位置する接続金具59Lには、第1のオイルホース51が接続されている。右側に位置する接続金具59Rには、第2のオイルホース52が接続されている。
【0045】
これらの接続金具59L,59Rは、ベース部材82のねじ孔86に螺着されたニップル87と、ホース本体58に固着されたパイプ87を有するナット部材88とによって構成されている。ねじ孔86は、ベース部材82の板状部82aを貫通し、筒状部82bの内と外とを連通している。このねじ孔86の外側の開口端部とニップル87との間には、シール用のOリング89が装着されている。
【0046】
ニップル87は、貫通孔87aを有する筒状に形成されている。ニップル87の先端部には、雄ねじ87bが形成されている。
ナット部材88は、ニップル87の雄ねじ87bに螺着している。このようにニップル87にナット部材88が接続されることによって、筒状部82b内とホース本体58内の第1および第2の作動油通路61,62とが接続金具59L,59Rを介して連通される。
【0047】
ベース部材82の筒状部82bは、シリンダ83の開口部に嵌合する大径部91と、この大径部91と板状部82aとを接続する小径部92とを有している。大径部91には、シリンダ83との間をシールするためのOリング93が装着されている。筒状部82bの内側の空間は、シリンダ83内に開放されている。
シリンダ83の開口部には、ベース部材82がシリンダ84の外に出ることを規制するサークリップ94が取付けられている。シリンダ83の底部には栓部材95が設けられている。この栓部材95は、シリンダ内にN
2 ガスを注入するときにガス注入用の針(図示せず)を刺すためのものである。
【0048】
シリンダ83内に設けられたフリーピストン84は、シリンダ83の内周面に移動自在に嵌合している。また、フリーピストン84は、シリンダ83内をベース部材82側の第3の油室57と反対側のガス室96とに仕切っている。ガス室96内には予め定めた圧力のN
2 ガスが充填されている。
この
参考例によるフリーピストン84は、円板状のピストン本体84aと、このピストン本体84aの外周部に設けられた円環状の軸受97および第1のOリング98と、軸受97の内周面とピストン本体71との間に設けられた第2のOリング99とによって構成されている。軸受97は、ピストン本体71とシリンダ73との摺動を円滑にするためのものである。第1のOリング98は、ピストン本体71とシリンダ83との間をシールするためのものである。第2のOリング99は、軸受97の内周面とピストン本体71との間をシールするとともに軸受97を径方向外方に拡げるためのものである。
【0049】
第3の油室57は、シリンダ83内におけるフリーピストン84より開口部側に位置する空間と、筒状部82b内の空間とによって構成されている。この第3の油室57は、作動油で満たされている。フリーピストン84は、第3の油室57の壁の一部を構成しており、作動油が第1のオイルホース51や第2のオイルホース52から第3の油室57にガス室96内のガスの圧力に抗して送り込まれることによって、ベース部材82から離間する方向に移動する。また、フリーピストン84は、第3の油室57から作動油が第1のオイルホース51や第2のオイルホース52に流出することによって、ベース部材82に接近する方向へ移動する。
【0050】
リザーブタンク6に接続された第1のオイルホース51は、車体左側に位置する油圧緩衝器4の第1の油室21とリザーブタンク6の第3の油室57とを接続している。第2のオイルホース52は、車体右側に位置する油圧緩衝器5の第1の油室21とリザーブタンク6の第3の油室57とを接続している。これらの第1および第2のオイルホース51,52の内部は作動油で満たされている。
【0051】
第1のオイルホース51の中の第1の作動油通路61と、第2のオイルホース52の中の第2の作動油通路62は、それぞれ独立して第3の油室57に接続されている。第1の作動油通路61と、第2の作動油通路62は、
図6に示すように、互いに平行に延びる状態で第3の油室57に接続されている。これらの第1および第2の作動油通路61,62における第3の油室57との境界となる開口部は、それぞれフリーピストン84を指向している。
【0052】
このように構成された乗り物用油圧式緩衝装置1を備えた車体3において、走行中に例えば右方向へハンドル操作が行われた場合は、
図7に示すように、車体3は左側へローリングしようとする。このとき、対をなす2つの油圧緩衝器4,5が互いに逆方向に動作しようとする。この場合、収縮する車体左側の油圧緩衝器4から作動油が押し出され、この作動油の流出に連動してリザーブタンク6内のフリーピストン84が作動油によって押されてガス室96側へ移動する。
【0053】
この
参考例では第1の作動油通路61と第2の作動油通路62とがそれぞれ独立して第3の油室57に接続されており、押し出された分の作動油は独立した作動油通路61,62を介して全量が第3の油室57に流入する。このように作動油が第3の油室57に流入することにより、リザーブタンク6内のフリーピストン84が作動油によって押されてガス室96側へ移動する。このため、特許文献2のように作動油が他方の油圧緩衝器に瞬時に流れ込んで車体の傾斜を助長することがなく、車体3の姿勢変化を抑制できる。
【0054】
このときにフリーピストン84を押す油圧の大きさは、車体3の姿勢変化の速度や変化量と対応した大きさになる。車体3の姿勢が急速に変化すると、フリーピストン84が大きな油圧で押されて高速で移動する。このような場合は、作動油が他方の油圧緩衝器(油圧緩衝器5)側からもリザーブタンク6内に吸引され、他方の油圧緩衝器に収縮する方向へ油圧が作用することも期待できる。他方の油圧緩衝器に収縮する方向へ油圧が作用する場合は、よりいっそう車体3の姿勢変化を抑制できる。なお、リザーブタンク6内に流入した作動油は時間が経過するとガス反力を受けて他方の油圧緩衝器側へ押し出される。このように作動油が他方の油圧緩衝器側へ押し出されることにより、この油圧緩衝器が伸長する。しかし、車体3の姿勢変化の開始から終了までの所要時間は短時間であるので、このように他方の油圧緩衝器が伸長する以前に姿勢変化は終了しており何ら問題はない。
【0055】
この
参考例によるリザーブタンク6は、単純な形状のフリーピストン84を使用して形成されており、構造が簡単なものである。
したがって、この
参考例によれば、容易に製造できる構成を採りながら、対をなす油圧緩衝器4,5が互いに逆方向に動作するローリング時に車体3の傾斜を助長することなく車体3の姿勢変化を抑制できる乗り物用油圧式緩衝装置を提供することができる。
【0056】
また、この
参考例によるリザーブタンク6は、車体3の左右方向の中央に配置されている。この構成を採ることにより、車体左側の油圧緩衝器4に作動油を介して作用するガス圧と、車体右側の油圧緩衝器5に作動油を介して作用するガス圧とを均等化することができる。このため、この油圧式緩衝装置1を装備することによって、車両の乗り心地がより一層向上する。
【0057】
この
参考例による乗り物は、左右一対の前輪7,8と、左右一対の後輪9,10とを有する4輪車である。この
参考例による第1の走行部材は、車体左側に位置する前輪7および後輪9であり、第2の走行部材は、車体右側の前輪8および後輪10である。この
参考例において、一対の油圧緩衝器4,5は、車体前側と車体後側とに設けられている。車体前側に位置する一対の油圧緩衝器4,5は、前輪用の左側アーム11および前輪用の右側アーム12(車体前側に位置する第1および第2の連結部材)と車体3との間に設けられている。車体後側に位置する一対の油圧緩衝器4,5は、後輪用の左側アーム11および後輪用の右側アーム12(車体後側に位置する第1および第2の連結部材)と車体3との間に設けられている。
このため、この
参考例によれば、簡単な構造で4輪車のローリングを抑制可能な乗り物用油圧式緩衝装置を提供することができる。
【0058】
この
参考例による乗り物用油圧式緩衝装置1を装備した車両においては、例えば左右方向の一方の車輪が路上の突起を乗り越えたとしても、油圧変動が他方の車輪側の油圧緩衝器に伝達されることがない。この理由は、この車輪に連結された油圧緩衝器から押し出された分の作動油をリザーブタンク6で一時的に吸収することが可能だからである。このため、この
参考例によれば、このような車体の姿勢変化に大きく影響しないような外乱をも吸収できるから、車両の乗り心地がより一層高くなる。
【0059】
(第1の
参考例の変形例1)
乗り物用油圧式緩衝装置は、
図8〜
図10に示すように構成することができる。
図8と
図9に示す乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の
請求項5に記載した油圧式緩衝装置
に関するものである。
図8に示す乗り物用油圧式緩衝装置1は、左側前輪用の油圧緩衝器4と、右側前輪用の油圧緩衝器5と、これらの油圧緩衝器4,5に接続されたリザーブタンク6とによって構成されている。後輪用の油圧緩衝器は、図示してはいないが、他の油圧緩衝器とは接続されていない独立式のものが用いられている。
【0060】
図9に示す乗り物用油圧式緩衝装置1は、左側後輪用の油圧緩衝器4と、右側後輪用の油圧緩衝器5と、これらの油圧緩衝器4,5に接続されたリザーブタンク6とによって構成されている。前輪用の油圧緩衝器は、図示してはいないが、他の油圧緩衝器とは接続されていない独立式のものが用いられている。
【0061】
図8と
図9に示す乗り物用油圧式緩衝装置1においても、
図1〜
図7に示す
参考例で示した場合と同様に、簡単な構造を採りながら、自動車2のローリングを抑制することができる。
【0062】
図10に示す乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の
請求項6に記載した油圧式緩衝装置
に関するものである。
この
参考例において対をなす第1および第2の走行部材は、2組ある。1組目の第1および第2の走行部材は、車体左側の前輪7と車体右側の後輪10とからなる一対の走行部材である。2組目の第1および第2の走行部材は、車体右側の前輪8と車体左側の後輪9とからなる一対の走行部材である。
また、この
参考例においては、対をなす油圧緩衝器も2組ある。1組目の一対の油圧緩衝器は、車体左側の前輪7用の油圧緩衝器4と車体右側の後輪10用の油圧緩衝器5である。2組目の油圧緩衝器は、車体右側の前輪8用の油圧緩衝器5と車体左側の後輪9用の油圧緩衝器4である。このため、左側前輪7用の油圧緩衝器4が第1のオイルホース51(第1の作動油通路61)を介して一方のリザーブタンク6に接続されている。これとともに、右側後輪10用の油圧緩衝器5が第2のオイルホース52(第2の作動油通路62)を介して一方のリザーブタンク6に接続されている。
【0063】
また、右側前輪8用の油圧緩衝器5が第1のオイルホース51(第1の作動油通路61)を介して他方のリザーブタンク6に接続されている。これとともに、左側後輪9用の油圧緩衝器4が第2のオイルホース52(第2の作動油通路62)を介して他方のリザーブタンク6に接続されている。
【0064】
図10に示す
参考例においては、車体3にローリングが生じたときと、車体3にピッチングが生じたときとの両方において、
図1〜
図9に示す
参考例と同様に、車体3の姿勢変化が抑制される。すなわち、収縮する一方の油圧緩衝器から押し出された分の作動油の全量が、独立した作動油通路61,62を介して第3の油室57に流入し、リザーブタンク6内のフリーピストン84が作動油によって押されてガス室96側へ移動する。このため、特許文献2のように作動油が他方の油圧緩衝器に瞬時に流れ込んで車体の傾斜を助長することがなく、車体3の姿勢変化を抑制できる。
【0065】
また、車体3の姿勢が急速に変化した場合は、作動油が他方の油圧緩衝器側からもリザーブタンク6内に吸引され、他方の油圧緩衝器に収縮する方向へ油圧が作用することも期待できる。その場合は、よりいっそう車体3の姿勢変化を抑制できる。なお、リザーブタンク6内に流入した作動油は、時間が経過するとガス反力を受けて他方の油圧緩衝器側へ押し出される。このように作動油が他方の油圧緩衝器側へ押し出されることにより、この油圧緩衝器が伸長する。しかし、車体3の姿勢変化の開始から終了までの所要時間は短時間であるので、このように他方の油圧緩衝器が伸長する以前に姿勢変化は終了しており何ら問題はない。
したがって、
図10に示す
参考例によれば、4輪車においてローリングとピッチングとが同時に発生する場合であっても、簡単な構造で車体3の姿勢変化を抑制できる。
【0066】
(第1の
参考例の変形例2)
乗り物用油圧式緩衝装置は、
図11に示すようにスノーモビルの車体前側の懸架装置に適用することができる。
図11において、
図1〜
図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。この参考例による乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の
請求項7に関するものである。
【0067】
図11に示すスノーモビル101は、乗員(図示せず)がシート102に跨がって着座し、ハンドルバー103を把持して走行するものである。このスノーモビル101の車体前部の車重は、車体左側の操舵用スキー104と、車体右側の操舵用スキー105とによって支えられる。
これらの操舵用スキー104,105は、左右一対のロアアーム106,107およびアッパーアーム108,109を有する懸架装置を介してそれぞれ車体3に上下方向へ移動自在に連結されている。また、これらの操舵用スキー104,105は、ハンドルバー103が左右方向に操作されることによって、左方または右方に操舵される。この
参考例においては、車体左側の
操舵用スキー104が「第1の走行部材」に相当し、車体右側の
操舵用スキー105が「第2の走行部材」に相当する。
【0068】
車体左側のロアアーム106の揺動端部と車体3の左側上部との間には、車体左側の油圧緩衝器4が設けられている。車体右側のロアアーム107の揺動端部と車体3の右側上部との間には車体右側の油圧緩衝器5が設けられている。この
参考例においては、車体左側の
ロアアーム106が「第1の連結部材」に相当し、車体右側の
ロアアーム107が「第2の連結部材」に相当する。
この
参考例による油圧緩衝器4,5は、第1の
参考例とは異なり、シリンダ本体15が車体3に連結されている。また、これらの油圧緩衝器4,5は、車体3がローリングすることによって収縮あるいは伸長する。油圧緩衝器4,5のシリンダ本体15とロアアーム106,107側のブラケット110との間には、図示してはいないが、緩衝ばねが設けられている。
【0069】
車体左側の油圧緩衝器4の第1の油室(図示せず)は、第1のオイルホース51を介してリザーブタンク6の第3の油室57に接続されている。車体右側の油圧緩衝器5の第1の油室(図示せず)は、第2のオイルホース52を介してリザーブタンク6の第3の油室57に接続されている。これらの油圧緩衝器4,5とリザーブタンク6は、第1の
参考例の構成を採るときに用いたものと同一のものである。この
参考例によるリザーブタンク6も車体3の左右方向の中央に配置されている。
【0070】
この
参考例によれば、スノーモビル101の車体3がローリングするときに
図1〜
図9に示す
参考例と同様に、簡単な構造で車体3の姿勢変化が抑制される。
また、この
参考例によるリザーブタンク6は、車体3の左右方向の中央に配置されている。この構成を採ることにより、車体左側の油圧緩衝器4に作動油を介して作用するガス圧と、車体右側の油圧緩衝器5に作動油を介して作用するガス圧とを均等化することができる。このため、この油圧式緩衝装置を装備することによって、スノーモビル101の乗り心地がより一層向上する。
【0071】
(第2の
参考例)
乗り物用油圧式緩衝装置は、
図12に示すように構成することができる。
図12において、
図1〜
図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図12に示す乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の請求項9に記載した油圧式緩衝装置
に関するものである。
この
参考例による乗り物は、左右一対の前輪7,8と、左右一対の後輪9,10とを有する4輪車である。また、この
参考例において対をなす第1および第2の走行部材は、車体左側の前輪7と後輪9とからなる一対の走行部材と、車体右側の前輪8と後輪10とからなる一対の走行部材である。さらに、この
参考例による対をなす第1および第2の連結部材は、車体左側で車体3の前後方向に対をなす2つの左側アーム11,12であり、車体右側で車体3の前後方向に対をなす2つの右側アーム11,12である。
この
参考例においては、対をなす油圧緩衝器も2組ある。1組目の一対の油圧緩衝器は、車体左側の前輪7用の油圧緩衝器4と車体左側の後輪9用の油圧緩衝器5である。2組目の油圧緩衝器は、車体右側の前輪8用の油圧緩衝器4と車体右側の後輪10用の油圧緩衝器5である。
【0072】
すなわち、車体左側の前輪7用の油圧緩衝器4が第1のオイルホース51(第1の作動油通路61)を介して一方のリザーブタンク6に接続されている。これとともに、車体左側の後輪9用の油圧緩衝器5が第2のオイルホース52(第2の作動油通路62)を介して一方のリザーブタンク6に接続されている。
【0073】
また、車体右側の前輪8用の油圧緩衝器4が第1のオイルホース51(第1の作動油通路61)を介して他方のリザーブタンク6に接続されている。これとともに、車体右側の後輪10用の油圧緩衝器5が第2のオイルホース52(第2の作動油通路62)を介して他方のリザーブタンク6に接続されている。
【0074】
図12に示す
参考例によれば、車体3の前部と後部とが上下方向に互いに逆方向に変位するピッチングが発生したときに車体3の姿勢変化が抑制される。例えば、収縮する車体前側の油圧緩衝器から押し出された分の作動油の全量が、独立した作動油通路61,62を介して第3の油室57に流入し、リザーブタンク6内のフリーピストン84が作動油によって押されてガス室96側へ移動する。このため、特許文献2のように他方の油圧緩衝器に瞬時に流れ込んで車体の傾斜を助長することがなく、車体3の姿勢変化を抑制できる。
【0075】
また、車体3の姿勢が急速に変化した場合は、作動油が他方の油圧緩衝器側からもリザーブタンク6内に吸引され、他方の油圧緩衝器に収縮する方向へ油圧が作用することも期待できる。その場合は、よりいっそう車体3の姿勢変化を抑制できる。なお、リザーブタンク6内に流入した作動油は、時間が経過するとガス反力を受けて他方の油圧緩衝器側へ押し出される。このように作動油が他方の油圧緩衝器側へ押し出されることにより、この油圧緩衝器が伸長する。しかし、車体3の姿勢変化の開始から終了までの所要時間は短時間であるので、このように他方の油圧緩衝器が伸長する以前に姿勢変化は終了しており何ら問題はない。
したがって、
図12に示す
参考例によれば、4輪車においてピッチングが発生する場合に、簡単な構造で車体3の姿勢変化を抑制できる。
【0076】
(
第1の実施の形態)
乗り物用油圧式緩衝装置は、
図13に示すようにスノーモビルの車体後側の懸架装置に適用することができる。
図13において、
図1〜
図12によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。この実施の形態による乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の
請求項9に記載したものである。
【0077】
この実施の形態による乗り物は、
図11に示したようなスノーモビル101である。このスノーモビル101の車体3の後部には、
図13に示す駆動装置121が設けられている。この駆動装置121は、一本の駆動用トラックベルト122を回転するように駆動する構造のものである。この実施の形態による駆動装置121は、トラックベルト122が添接する複数のホイール123〜125およびガイドプーリ126〜128と、トラックベルト122の下端部の内面上に配置されたスライドレール131とを備えている。複数のホイール123〜125のうち最も車体前側(
図13においては左側)に位置する駆動用ホイール123は、図示していないエンジンによって駆動されて回転する。駆動用ホイール123と、車体後側に位置する上ガイドホイール124および下ガイドホイール125は、それぞれ車体3の左右方向に2個設けられている。
【0078】
駆動用ホイール123は、このスノーモビル101の車体3に設けられた車体フレーム132に上下方向や前後方向および左右方向への移動が規制された状態で回転自在に支持されている。上ガイドホイール124は、車体3の左右方向に延びる上部ホイール軸133を介して車体フレーム132に上下方向や前後方向および左右方向への移動が規制された状態で回転自在に支持されている。
下ガイドホイール125は、後述するスライドレール131の後端部に車体の左右方向に延びる下部ホイール軸134を介して回転自在に支持されている。
複数のガイドプーリ126〜128は、後述するスライドレール131にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0079】
スライドレール131は、トラックベルト122を雪面に押圧しつつ案内するものである。この実施の形態によるスライドレール131は、左右一対のサイドレール141(一方は不図示)と、これらのサイドレール141どうしを前後方向の複数の位置で互いに接続する複数の軸などによって上方から見て梯子状に形成されている。ここでいう複数の軸とは、クロス軸142〜144および下アーム軸145と、下部ホイール軸134である。このスライドレール131の前部は、車体前側のアーム146を介して車体フレーム132に上下方向へ移動可能に連結されている。スライドレール131の後部は、車体後側のアーム147を介して車体フレーム132に上下方向へ移動可能に連結されている。このため、スライドレール131に車重の一部が作用するから、トラックベルト122は、回転することによって車重を支えて走行することになる。
【0080】
車体前側のアーム146と車体後側のアーム147は、それぞれ側方から見て車体前側が車体後側より高くなる状態に傾斜している。また、車体前側のアーム146と車体後側のアーム147は、それぞれ車体の左右方向に対をなす状態で2つずつ設けられている。左右一対の車体前側のアーム146の前端部は、左右方向に延びる上アーム軸148にそれぞれ接続されており、この上アーム軸148を介して車体フレーム132に回動自在に連結されている。上アーム軸148の軸方向の中央部には、ブラケット149が固着されており、このブラケット149を介して車体前側の油圧緩衝器4の上端部が回動可能に連結されている。
【0081】
この車体前側の油圧緩衝器4の下端部は、中央のクロス軸143に回動自在に支持された第1リンク151の一端部に回動可能に連結されている。すなわち、車体前側の油圧緩衝器4は、実質的に車体フレーム132とスライドレール131の中央のクロス軸143との間に設けられることになる。
この実施の形態による車体前側の油圧緩衝器4は、シリンダ本体15が下に位置するとともにピストンロッド16が上に位置する状態で車体フレーム132とスライドレール131との間に設けられている。また、この車体前側の油圧緩衝器4の上端部と下端部との間には、緩衝用ばね27が設けられている。
【0082】
車体前側のアーム146の後端部には、左右方向に延びる下アーム軸145が一体に形成されている。車体前側のアーム146の後端部は、この下アーム軸145を介してサイドレール141に回動自在に連結されている。下アーム軸145の軸方向の中央部には、第2リンク152が固着されている。第2リンク152には第3リンク153が回動自在に連結されている。下アーム軸145の軸方向の中央部は、第3リンク153を介して後述する車体後側の油圧緩衝器5の下端部に連結されている。この油圧緩衝器5の下端部は、第3リンク153に回動可能に連結されている。この第3リンク153には、上述した第1リンク151の他端部が回動自在に連結されている。
【0083】
左右一対の車体後側のアーム147の前端部は、上述した上部ホイール軸133に回動自在に連結されている。また、これらの車体後側のアーム147の後端部は、それぞれ第4リンク154を介してサイドレール141に回動可能に連結されている。これらの車体後側のアーム147には、上方に延びる支持ブラケット155が設けられている。この支持ブラケット155の上端部には、車体後側の油圧緩衝器5の上端部が回動可能に連結されている。
【0084】
このため、車体後側の油圧緩衝器5は、実質的に車体フレーム132とスライドレール131の下アーム軸145との間に設けられることになる。この下アーム軸145は、上述した中央のクロス軸143より車体後側に離れて位置している。このため、この実施の形態による一対の油圧緩衝器4,5は、スライドレール131の前後方向2箇所と車体フレーム132との間にそれぞれ架け渡されることになる。
車体後側の油圧緩衝器5の近傍には、トーションばね156が配置されている。このトーションばね156は、車体フレーム132と左右のサイドレール141との間に配設されており、スライドレール131を車体フレーム132から離間する方向に付勢している。
【0085】
車体前側の油圧緩衝器4の第1の油室(図示せず)は、第1のオイルホース51を介してリザーブタンク6の第3の油室57に接続されている。また、車体後側の油圧緩衝器5の第1の油室(図示せず)は、第2のオイルホース52を介してリザーブタンク6の第3の油室57に接続されている。これらの油圧緩衝器4,5とリザーブタンク6は、第1の
参考例の構成を採るときに用いたものと同一のものである。この実施の形態によるリザーブタンク6は、トラックベルト122に囲まれた位置に配置されており、図示していないブラケットを介して車体フレーム132に支持されている。
【0086】
この実施の形態によるスノーモビル101が凹凸のある雪面を走行すると、上アーム軸148を中心として車体前側のアーム146が揺動するとともに、上部ホイール軸133を中心として車体後側のアーム147が揺動する。そして、この揺動に伴って一対の油圧緩衝器4,5が同方向または逆方向に動作する。このスノーモビル101にピッチングが生じるような場合は、車体前側の油圧緩衝器4と車体後側の油圧緩衝器5とが互いに逆方向に動作し、
図12に示す
参考例と同様に、簡単な構造で車体の姿勢変化が抑制される。
【0087】
(
第2の実施の形態)
本発明に係る乗り物用油圧式緩衝装置は、
図14〜
図17に示すように構成することができる。これらの図において、
図1〜
図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材は、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施の形態による乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の
請求項1、請求項2、請求項10および請求項11に記載したものである。
【0088】
図14に示す油圧式緩衝装置1は、岩場や悪路を走破するための4輪駆動車(図示せず)や、
図11や
図13に示したようなスノーモビル101に搭載されるものである。
図14は、スノーモビル101に搭載される形態で描いてある。すなわち、油圧緩衝器4,5のシリンダ本体15が上に位置し、ピストンロッド16がシリンダ本体15から下方に突出している。
【0089】
車体左側の油圧緩衝器4の中に形成された第1の油室21は、第1の作動油通路201によってリザーブタンク6の第3の油室57に連通されている。車体右側の油圧緩衝器5の中に形成されている第1の油室21は、第2の作動油通路202によってリザーブタンク6の第3の油室57に連通されている。第1および第2の作動油通路201,202は、第1および第2の
参考例の構成を採るときと同様に、第1および第2のオイルホース51,52と接続金具55,59などによって構成することができる
【0090】
この実施の形態による油圧式緩衝装置1は、第1の作動油通路201と第2の作動油通路202どうしを互いに連通する連通路203と、この連通路203を開閉する開閉バルブ204とを備えている。連通路203は、第1の作動油通路201の中間部と、第2の作動油通路202の中間部とを連通している。
第1の作動油通路201と第2の作動油通路202とにおける連通路203よりリザーブタンク6の第3の油室57に近接する部位には、ベースバルブ205がそれぞれ設けられている。このベースバルブ205は、詳細は後述するが、可変絞りによって構成されている。
【0091】
これらの連通路203および開閉バルブ204と、ベースバルブ205は、
図15に示すように、リザーブタンク6のベース部材82に設けられている。
連通路203は、ベース部材82に取付けられた2つのニップル87の近傍に設けられている。すなわち、連通路203は、
図16に示すように、
図16において左下部に位置するニップル87がねじ込まれるねじ孔86に接続され、
図17に示すように、2つのニップル用ねじ孔86どうしを連通している。連通路203の一端側は、ベース部材82内を一側部に向けて延長されており、ベース部材82の一側面に開口している。
【0092】
連通路203を開閉する開閉バルブ204は、この連通路203の途中に設けられたテーパ面からなる弁座206と、この弁座206に接離する円柱状の弁体207とによって構成されている。弁体207は、ベース部材82に螺合部208において螺合している。弁体207の先端部(
図17においては右側の端部)は、弁座206に嵌合して着座する形状に形成されている。弁体207の他端部には、工具(図示せず)が係合する6角穴207aが形成されている。弁体207の中間部には、ベース部材82との間をシールするためのOリング209が装着されている。
【0093】
開閉バルブ204は、弁体207が螺合部208においてねじ込まれる方向に回され、この弁体207の先端部が弁座206に当接することによって閉じる。また、開閉バルブ204は、螺合部208が緩む方向に弁体207が回されることによって開く。
【0094】
ベースバルブ205は、
図16に示すように、ベース部材82のバルブ孔211に装着されている。バルブ孔211は、ベース部材82の一側部に開口する非貫通孔で、リザーブタンク6のシリンダ83の軸線C1とは直交する方向に延びる形状に形成されている。バルブ孔211の底には、開口側と較べて孔径が小さい凹陥部212が形成されている。凹陥部212と開口側との境界は、段部213によって形成されている。凹陥部212は、連通孔214によってニップル用ねじ孔86に接続されている。
【0095】
この実施の形態によるベースバルブ205は、バルブ孔211に挿入された円筒状のバルブハウジング215と、このバルブハウジング215の中空部内に螺合した弁体216とを備えている。
バルブハウジング215の外周部には、バルブ孔211の内周壁に形成された雌ねじ217に螺合する雄ねじ218が形成されているとともに、バルブ孔211の孔壁面との間をシールするためのOリング219が装着されている。このバルブハウジング215は、バルブ孔211の段部213との間に複数の部材が挟み込まれる状態でバルブ孔211内にねじ込まれて固定されている。
【0096】
バルブハウジング215と段部213との間に位置する複数の部材とは、段部213に嵌合した円筒状の第1の筒体221と、この第1の筒体221の円筒221a内に嵌合した円板状の弁座部材222と、この弁座部材222の外周部とバルブハウジング215との間に挟まれた第2の筒体223である。
第1の筒体221は、バルブ孔211に嵌合した円筒221aと、段部213に沿う内フランジ221bとによって構成されている。この第1の筒体221内には、内径が異なる複数の円環状の板224が軸線方向に移動自在に嵌合している。これらの板224は、内径が小さいものほどバルブ孔211の底側に位置する状態に並べられている。
【0097】
弁座部材222は、このベースバルブ205の弁座となるものである。この弁座部材222は、複数の機能部を有している。この複数の機能部とは、円板状の弁座部材222の軸心部に位置するバルブシート231と、このバルブシート231の周囲に設けられた複数の貫通孔からなるバイパス通路232である。バルブシート231は、バルブ孔211の底と対向する第1のシート面231aと、バルブ孔211の開口側を指向する第2のシート面231bとを有している。また、バルブシート231の中心部には、第1のシート面231aと第2のシート面231bとに開口する貫通孔233が穿設されている。
【0098】
上述した複数の円環状の板224のうち、最も内径が小さい板224の内周部は、第1のシート面231aと対向している。この円環状の板224は、バルブ孔211の凹陥部212内から作動油が弁座部材222のバイパス通路232に流れるときに作動油によって押されて第1のシート面231aに当接し、この作動油の流動を規制する。また、この円環状の板224は、バイパス通路232から凹陥部212内に向けて作動油が流れるときに作動油によって押されて第1のシート面231aから離れ、作動油の流動を許容する。すなわち、この円環状の板224は、逆止弁として機能する。第1のシート面231aに開口する貫通孔233の一端部は、この円環状の板224が第1のシート面231aに密着している状態であっても開口状態に保たれる。すなわち、貫通孔233の一端部は、常にバルブ孔211の底部に向けて開口している。
【0099】
第2の筒体223は、円筒状に形成されている。上述したバイパス通路232の一端は、第2の筒体223の内側に形成されている作動油室234に開口している。
この第2の筒体223には、作動油を径方向に通すために、複数の切り欠き223aおよび貫通穴223bが形成されている。この第2の筒体223の外径は、バルブ孔211の内径より小さい。このため、第2の筒体223とバルブ孔211の孔壁面との間には環状の作動油通路235が形成されている。この作動油通路235を形成するバルブ孔211の孔壁面には、リザーブタンク6の第3の油室57と作動油通路235とを連通する連通孔236が開口している。このため、第3の油室57は、連通孔236と、環状の作動油通路235と、切り欠き223aおよび貫通穴223bとを介して第2の筒体223内の作動油室234に連通されている。
【0100】
弁体216は、円柱状に形成されている。この弁体216におけるバルブ孔211の底部側となる一端部は、バルブシート231の第2のシート面231bに接触する平坦な端面216aと、この端面216aから突出するニードル216bとによって構成されている。このニードル216bは、先端に向かうにしたがって次第に細くなる円錐状に形成されており、上述したバルブシート231の貫通孔233内に挿入されている。
【0101】
弁体216の外周部には、バルブハウジング215の雌ねじ241に螺合する雄ねじ242と、ボール243と、Oリング244とが設けられている。ボール243は、弁体216内に収容された圧縮コイルばね245によって押されており、バルブハウジング215の凹溝246に係合している。凹溝246は、バルブハウジング215の内周部にセレーション状に形成されている。すなわち、凹溝246は、バルブハウジング215の軸線方向に延びる形状に形成されており、バルブハウジング215の内周部の周方向に並ぶ状態で多数形成されている。弁体216がその軸線C2を中心として回転すると、ボール243が凹溝246間の突条部分を乗り越えるから、回転に節度をもたせることができる。
【0102】
Oリング244は、バルブハウジング215の内周部と弁体216との間をシールするためのものである。
弁体216の他端部には、操作用のハンドル247が取付用ねじ248によって取付けられている。作業者(図示せず)がこのハンドル247を回すことによって、弁体216がねじの作用によりバルブハウジング215内を回転しながら軸線C2に沿って移動する。弁体216がバルブシート231に向けて前進し、一端部の端面216aが第2のシート面231bに当接することによって、このベースバルブ205が全閉状態になる。
【0103】
弁体216が全閉状態から後退すると、端面216aと第2のシート面231bとの間に隙間が形成されるとともに、ニードル216bがバルブシート231の貫通孔233から抜かれてベースバルブ205が開き、貫通孔233内と第2の筒体223内の作動油室234とが連通される。このように開くベースバルブ205は、実質的に可変絞りとして機能する。
【0104】
弁体216は、雄ねじ242あるいはボール243がバルブハウジング215に当接して回転が規制されるまで後退可能である。弁体216がこのように後退した状態でベースバルブ205が全開状態になる。弁体216の開度は、ボール243が凹溝246間の突条部分を乗り越えた回数に基づいて簡単に設定することが可能である。この回数は、ハンドル247を回すときの抵抗が増減するから、容易に数えることができる。
【0105】
ベースバルブ205が開いている状態においては、第1および第2の作動油通路201,202と第3の油室57とがベースバルブ205からなる絞りを介して連通するから、第3の油室57に対して作動油が出入りすることによって減衰力が生じる。
【0106】
この実施の形態による乗り物用油圧式緩衝装置1は、4輪駆動車で岩場や悪路を走破するときや、スノーモビルで新雪の上を走行するときに、開閉バルブ204を開いた状態として使用される。開閉バルブ204が開くと、第1の作動油通路201と第2の作動油通路202とが連通路203および開閉バルブ204を介して連通されるから、車体左側の油圧緩衝器4と車体右側の油圧緩衝器5との間で作動油が円滑に流れることが可能になる。すなわち、一方の油圧緩衝器が収縮して押し出される分の作動油は瞬時に他方の油圧緩衝器に流れ込み、この結果、この他方の油圧緩衝器が伸長する。このため、例えばロッククローリングと呼ばれるスポーツにおいて、大きな岩が不規則に並ぶ岩場を4輪駆動車が走るときに、車体3の左右方向の一方の車輪が大きな岩に乗り上げた場合、車体は大きくローリングしようとする。しかし、この実施の形態によれば、乗り上げた側の油圧緩衝器が収縮すると、他方の油圧緩衝器が瞬時に伸長してローリングを抑制する。
【0107】
スノーモビルで新雪の上を走行するときは、ハンドルバーを回しただけでは旋回方向外側のスキーが遠心力で新雪に埋まり、走行方向を正しく変えることができなくなるおそれがある。このような場合は、先ず、乗員が旋回方向内側に身体を寄せて体重移動を行う。そして、車体が旋回方向内側に傾斜し、旋回方向外側のスキーが浮くように、乗員がいわゆる逆ハンドル操作を行う。開閉バルブ204が開いている状態であると、車体を容易に旋回方向内側に傾けることができるから、新雪の上で急旋回する状況であっても容易に走破することができる。
【0108】
この実施の形態においては、第1および第2の作動油通路201,202における連通路203より第3の油室57に近接する部位に絞りからなるベースバルブ205が設けられている。第1および第2の作動油通路201,202と第3の油室57との間で出入りする作動油は、ベースバルブ205によって流量が規制される。すなわち、この実施の形態によれば、開閉バルブ204を閉じた状態において、第3の油室57に流入する作動油の流量あるいは第3の油室57から流出する作動油の流量を調整し易くなる。このため、この実施の形態によれば、応答性等を調整可能な乗り物用油圧式緩衝装置を提供することができる。
【0109】
(
第3の実施の形態)
ベースバルブは、
図18に示すように油圧緩衝器に設けることができる。
図18において、
図1〜
図17によって説明したものと同一もしくは同等の部材は、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施の形態による乗り物用油圧式緩衝装置は、
特許請求の範囲の
請求項3および
請求項12に記載したものである。
【0110】
図18に示す油圧緩衝器4,5は、自動車や、
図11や
図13に示したようなスノーモビル101に搭載されるものである。
図18に示すベースバルブ205は、油圧緩衝器4,5の蓋部材26に形成されたバルブ孔251内に装着されている。すなわち、ベースバルブ205は、一対の油圧緩衝器4,5にそれぞれ設けられている。バルブ孔251は、蓋部材26の一側部に開口しているともに、蓋部材26の凹部40に接続されている。バルブ孔251におけるベースバルブ205の環状の作動油室235と対応する孔壁面には、緩衝器側接続金具55を取付けるためのねじ孔38aの一端が開口している。このため、ベースバルブ205が開くことによって、油圧緩衝器4,5の第1の油室21と、第1または第2の作動油通路61,62,201,202とがベースバルブ205からなる絞りを介して接続される。この絞りは、円環状の板224がバイパス通路232を開閉するために、主に油圧緩衝器4,5が収縮するときに機能する。
したがって、この実施の形態によれば、油圧緩衝器4,5内の作動油の圧力がベースバルブ205に直接作用する。すなわち、油圧緩衝器4,5とベースバルブとの間にオイルホースが存在している場合と較べて、油圧緩衝器4,5内の作動油の圧力が途中で低下することなくベースバルブ205に伝達される。このため、ベースバルブ205で効率よく減衰力が発生し、ローリングやピッチングなどによる車体の傾斜をさらに確実に抑制することが可能な乗り物用油圧式緩衝器を提供することができる。
【0111】
上述した各実施の形態においては、油圧緩衝器4,5の第1の油室21が第3の油室57に接続される例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、第2の油室22が第3の油室57に接続される構成を採ることができる。