【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
図1に示すように当該実施例に係るガスケット(ガスケット成形品)11は、ラバーオンリータイプのガスケット本体21と、このガスケット本体21を非接着状態で保持する樹脂フィルムよりなるフィルムキャリア31との組み合わせにより構成されている。ガスケット本体21は、燃料電池用ガスケットとして用いられる。
【0023】
ガスケット本体21は、所定のゴム状弾性体(例えばVMQ、PIB、EPDM、FKMなど)によって平面状(平板状)に成形されており、その構成要素として、燃料電池の反応面の周りを全周に亙ってシールするための枠状の外周シール部22と、燃料電池の反応面と各マニホールド部の仕切り部をシールするための内側シール部23とを一体に有している。ガスケット本体21の断面形状は
図1(B)に示すように、断面円形とされている。符号24は、ガスケット本体21をその厚み方向に貫通する貫通部(空間部)を示している。ガスケット本体21は、平面長方形状に成形され、その平面の大きさを外形略400mm(縦)×略300mm(横)とされ、その厚みすなわち線径を略1mmとされている。ゴム材料は、樹脂フィルムを熱変形させることから、安価なフィルムが使えるように、低温成形可能な材料であれば、なお良い。
【0024】
ガスケット本体21の断面形状は、特に限定されず、断面円形(真円形、楕円形またはは長円形)のほか、断面長方形、台形、三角形や、片面リップ形状(断面長方形のガスケット本体21の上面に断面円弧形(半円形)もしくは断面山形のシールリップを一体成形したもの)、または両面リップ形状(断面長方形のガスケット本体21の上下両面にそれぞれ断面円弧形(半円形)もしくは断面山形のシールリップを一体成形したもの)などであっても良い。
【0025】
フィルムキャリア31は、所定の樹脂フィルムによって平面状(平板状)に成形され、ガスケット本体21よりも一回り大きな平面長方形状に成形されている。樹脂フィルムとしては例えば、厚さ200μmのポリプロピレンフィルムを使用し、これを上記した大きさの平面形状に裁断して使用する。樹脂フィルムとしてはポリプロピレンの他に、ポリエチレン、ポリスチレンなど一般樹脂材が使用可能である。フィルムの厚さについては、ガスケット本体21の線径や断面形状にもよるが、50μm〜300μm程度とするのが好ましい。フィルム材料は、ゴムの成形温度に対する耐熱性(溶けない)と金型形状へ熱変形可能なものであれば特に限定はしないが、フィルムキャリア31が搬送および取り扱い性の機能となることから、安価なフィルムが選定できるのがより良く、上記したようにポリプロピレンやポリエチレン等が好適である。
【0026】
フィルムキャリア31はその平面上一部に、ガスケット本体21を保持するためのガスケット保持部32を有している。このガスケット保持部32は、樹脂フィルムの平面上一部がガスケット本体21の外形形状(ガスケット本体21の断面形状における外郭線)に沿って変形した立体形状として設けられるとともに、ガスケット本体21と同一の平面形状を備えるものとして成形されており、このガスケット保持部32にガスケット本体21の一部(厚み方向の一部)が非接着で収められている。当該実施例では上記したようにガスケット本体21の断面形状が断面円形とされているので、これに対応してガスケット保持部32の断面形状は断面円弧形(半円形)とされ、このように断面円弧形のガスケット保持部32を設けることによってその裏面側に設けられる溝状の空間部33内に、ガスケット本体21の厚み方向片方の、下半分の部位が収められている。
【0027】
ガスケット本体21はフィルムキャリア31に対し非接着とされるため、スタッキングに際しフィルムキャリア31から取り外すことが可能とされている。但し、後記するようにガスケット本体21を成形する金型41にフィルムキャリア31をインサートした状態でガスケット本体21を成形すると、成形したガスケット本体21が粘着性を備えている場合には、この粘着性によってガスケット本体21はフィルムキャリア31に対し粘着された状態とされる。粘着は、チャッキング装置による取り外しができるほどに粘着力が小さいものである。したがってこの場合、ラバーオンリータイプのガスケット本体21は樹脂フィルムよりなるフィルムキャリア31に対し非接着ではあるが、剥離可能に粘着していることになる。
【0028】
また加えて、フィルムキャリア31は、ガスケット本体21を当該フィルムキャリア31に対して仮止めするための仮止め部34を有している。この仮止め部34は、樹脂フィルムの平面上一部に接着処理や表面改質(プラズマ処理、コロナ放電処理)等の表面処理を施すことによりガスケット本体21のゴムが密着(粘着)しやすくなるものとして設けられている。当該実施例では
図2(A)に示すように、フィルムキャリア31の長手側辺部にそれぞれ仮止め部34が帯状のものとして設けられているが、
図2(B)に示すように点在状のものとして設けられても良い。
【0029】
また、フィルムキャリア31に仮止め部34が設けられるのに対応して
図1(A)および(C)に示すように、ガスケット本体21に、仮止め部34に仮止めされる被仮止め部25が設けられており、当該実施例ではガスケット本体21の長手側辺部にそれぞれ被仮止め部25が舌片状のものとして複数設けられている。
【0030】
上記構成のガスケット11においては、ラバーオンリータイプのガスケット本体21が樹脂フィルムよりなるフィルムキャリア31によって保持されるため、ガスケット11の搬送などに際してガスケット本体21に捩れが生じにくく、搬送しやすい。また、ガスケット本体21がフィルムキャリア31に対し非接着とされるため、スタッキングに際してガスケット本体21をフィルムキャリア31から容易に取り外すことが可能とされる。したがってガスケット11の取扱い作業性を向上することができる。
【0031】
また、フィルムキャリア31に立体形状のガスケット保持部32が設けられて、このガスケット保持部32内にガスケット本体21の厚み方向一部が収められているため、ガスケット本体21はフィルムキャリア31に対し平面上位置決めされている。したがってガスケット11の搬送などに際してガスケット本体21がフィルムキャリア31に対しずれることがないため、ガスケット本体21をフィルムキャリア31によってしっかりと保持することができる。
【0032】
また加えて、樹脂フィルムよりなるフィルムキャリア31に、ガスケット本体21を保持するためのガスケット保持部32のほかに、ガスケット本体21を当該フィルムキャリア31に対し仮止めするための表面処理による仮止め部34が設けられるとともに、ガスケット本体21に、仮止め部34に仮止めされる被仮止め部25が設けられ、仮止め部34に対し被仮止め部25が仮止めされているため、金型の型開き時またはその後の離型時にガスケット本体21がフィルムキャリア31から脱落してしまうのを防止することができる。
【0033】
尚、仮止め部34および被仮止め部25は、ガスケット本体21およびフィルムキャリア31の組み合わせよりなるガスケット11の成形後(成形後であって出荷前、または出荷後であってスタック組立て前)に切断除去される。当該実施例では上記したようにフィルムキャリア31の長手側辺部にそれぞれ仮止め部34が帯状に設けられているので、この仮止め部34を切断除去すべくガスケット成形品11を
図1(A)にG−G線をもって示す切断線にて切断し、これにより
図3(A)(B)および(C)に示すような形状とする。したがってガスケット本体21はガスケット保持部32のみによって保持された状態とされる。
【0034】
ガスケット本体21の断面形状やこれに対応するガスケット保持部32の断面形状については、ガスケット本体21の使用条件等に応じて様々なものが考えられる。
【0035】
つぎに、上記ガスケット本体11の製造方法を説明する。製造には、ラバーオンリータイプのガスケット本体21を射出成形する金型を用いる。
【0036】
工程としては先ず、フィルムキャリア31を用意し、このフィルムキャリア31の平面上一部に表面処理を施すことにより仮止め部34を設ける(例えば
図2(A)参照)。表面処理としては上記したように、接着処理や表面改質(プラズマ処理、コロナ放電処理)等を実施する。
【0037】
次いで、
図4(A)に示すように、フィルムキャリア31を金型41のパーティング部44に挟み込んだ状態で金型41を型締めする。金型41は上型(一方の分割型)42および下型(他方の分割型)43の組み合わせを有し、両型42,43のパーティング部44にそれぞれキャビティ部45が半分ずつ対応して設けられている。キャビティ部45には、ガスケット本体21を成形するガスケット成形用キャビティ部45aのほかに、舌片状の被仮止め部25を成形するための被仮止め部成形用キャビティ部45bが設けられている。フィルムキャリア31は当初その全面が平面状であるため、キャビティ部45内を横切る状態とされる。
【0038】
次いで、
図4(B)に示すように、キャビティ部45へガスケット本体21を成形するための成形材料(ゴム材料)を充填し、加熱加圧する等して、ガスケット本体21を被仮止め部25とともに成形する。キャビティ部45へ成形材料を充填したとき、フィルムキャリア31はその平面上一部が成形材料充填圧力によってキャビティ45の内面に押し付けられ、キャビティ45の内面に沿ったかたちに変形(塑性変形)し、これにより立体形状のガスケット保持部32が形成される。また、被仮止め部25が仮止め部34に密着し、これによりガスケット本体21がフィルムキャリア31に仮止めされる。
【0039】
次いで、
図4(C)に示すように、ガスケット本体21の成形後、型開きし、
図4(D)に示すように、ガスケット本体21およびフィルムキャリア31を同時に金型41から取り出し、ガスケット成形品11の製造工程を終了する。
【0040】
尚、金型41に対しフィルムキャリア31を供給する際には、
図5(A)に示すように、フィルムキャリア31をガスケット多数個分1列に連続成形した樹脂フィルムのロール体31Aを用意して、このロール体31Aによってフィルムキャリア31を金型41に対し連続供給することが考えられる。ロール体31Aには、予め仮止め部34を設けても良く、
図5(B)に示すようにロール体31Aの状態のままでフィルムキャリア31の平面上にガスケット本体21を成形するようにしても良い。また、平面長方形状を呈するガスケット本体21の長手側辺に被仮止め部25を設ける場合は、ロール体31Aに対するガスケット本体21の向きが
図5(B)に示す向きとなるが、平面長方形状を呈するガスケット本体21の短手側辺に被仮止め部25を設ける場合には、ロール体31Aに対するガスケット本体21の向きが
図6に示す向きとなるので、前者の場合はガスケット本体21の短手幅、後者の場合はガスケット本体21の長手幅に応じてロール体31Aの幅寸法が定められる。
【0041】
フィルムキャリア31は、これを上記したようにロール供給とし、金型41への供給からガスケット本体21の成形後の回収までロールにて実施し、燃料電池スタック等の組立て時についてもロール供給としても良い。またこの場合は、フィルムキャリア31の平面上にガスケット本体21を成形してからフィルムキャリア31を再度ロール状に巻回することになるので、
図7(A)に示すように被仮止め部25の高さ寸法h
1をガスケット本体21の高さ寸法(フィルムキャリア31平面上からの高さ寸法)h
2よりも大きく設定し、これにより
図7(B)に示すように再度ロール状に巻回したときにガスケット本体21がその外周側に巻回されるフィルムキャリア31の裏面に接触しないようにすると、ガスケット本体21が巻回力によって、いびつに変形してしまうなどの不具合を防止することができる。このとき被仮止め部25は、仮止め機能のみでなく、巻回積層方向(ロール体31Aの径方向)のスペーサーとしても機能する。