(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368436
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】低温乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 3/30 20060101AFI20180723BHJP
H01G 2/24 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
F26B3/30
!H01G2/24
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-545970(P2017-545970)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2017010404
(87)【国際公開番号】WO2017169784
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2017年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-63626(P2016-63626)
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
(72)【発明者】
【氏名】金南 大樹
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/111511(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/073289(WO,A1)
【文献】
特許第5721897(JP,B2)
【文献】
特開2010−101595(JP,A)
【文献】
特開2013−057438(JP,A)
【文献】
特開2014−181889(JP,A)
【文献】
特開昭55−158485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 3/30、13/10
B05D 3/02
F27B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体と、
被乾燥物が前記炉体の内部に配置されるように前記被乾燥物を保持する被乾燥物保持部材と、
前記炉体のうち前記被乾燥物保持部材と対向する面に設けられた赤外線透過板と、
前記被乾燥物保持部材に保持される前記被乾燥物と前記赤外線透過板との間に冷却風を流通させる冷却風流通手段と、
前記炉体の外側の開放空間において前記赤外線透過板と対向するように配置され、冷媒が流通可能な冷媒流路を備えた赤外線ヒーターと、
前記炉体の外側の開放空間において前記赤外線ヒーターの外側で且つ前記赤外線透過板のうち前記複数の赤外線ヒーターが配置された側に前記冷媒流路とは別に設けられ、前記赤外線ヒーターの周囲を低温にする低温化手段と、
を備えた低温乾燥装置。
【請求項2】
前記冷却風流通手段は、前記冷却風の供給口及び排出口を有し、
前記供給口及び前記排出口は、前記赤外線透過板の板面に沿って細長く延びるスリットである、
請求項1に記載の低温乾燥装置。
【請求項3】
前記炉体の少なくとも側面は、断熱材を有さない金属面である、
請求項1又は2に記載の低温乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾燥装置としては、炉体と、被乾燥物を載せた状態で炉体の内部空間を移動する移動体と、炉体の内部空間の上方に配置された赤外線ヒーターと、炉体の内部空間に温度及び湿度が調節された気体を供給する気体供給手段とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。また、この種の乾燥装置において、炉体の内部空間のうち移動体を含む第1空間と、赤外線ヒーターを含む第2空間とを仕切る赤外線透過板を備え、第1空間に温度及び湿度が調節された気体を通過させるものも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3897456号公報
【特許文献2】国際公開第2014/132952号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれの乾燥装置も、炉体の内部空間に赤外線ヒーターが配置されているため、被乾燥物を乾燥するのに不要な波長が炉壁に吸収されて炉壁の温度が上がり、炉内雰囲気温度が高くなってしまうことがあった。被乾燥物によっては許容される上限温度が低いことがあるが、そのような場合には炉内雰囲気温度がその上限温度を超えるおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、許容される上限温度が低い被乾燥物を乾燥する場合であってもその上限温度を超えることなく効率よく乾燥することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の低温乾燥装置は、
炉体と、
被乾燥物が前記炉体の内部に配置されるように前記被乾燥物を保持する被乾燥物保持部材と、
前記炉体のうち前記被乾燥物保持部材と対向する面に設けられた赤外線透過板と、
前記被乾燥物保持部材に保持される前記被乾燥物と前記赤外線透過板との間に冷却風を流通させる冷却風流通手段と、
前記炉体の外側の開放空間において前記赤外線透過板と対向するように配置された赤外線ヒーターと、
を備えたものである。
【0007】
この低温乾燥装置では、赤外線ヒーターの周囲には炉壁が存在しないため、被乾燥物を乾燥するのに不要な波長を炉壁が吸収して高温になることがない。そのため、炉内雰囲気温度が上がり過ぎるのを防止することができる。また、被乾燥物と赤外線透過板との間に冷却風が流通するため、被乾燥物やその保持部材を比較的低温に維持することができるし、赤外線透過板も低温に維持することができる。以上のことから、許容される上限温度が低い被乾燥物を乾燥する場合であっても、その上限温度を超えることなく効率よく乾燥することができる。
【0008】
本発明の低温乾燥装置は、前記赤外線ヒーターの周囲を低温にする低温化手段を備えていてもよい。赤外線ヒーターの周囲は赤外線ヒーターによって温められるものの、低温化手段によって低温化される。赤外線ヒーターの周囲の気体は赤外線透過板と接しているが、その気体の温度が低温化されるため、赤外線透過板を確実に低温に維持することができる。
【0009】
本発明の低温乾燥装置において、前記冷却風流通手段は、前記冷却風の給気口及び排気口を有し、前記給気口及び前記排気口は、前記赤外線透過板の板面に沿って細長く延びるスリットに形成されていてもよい。こうすれば、冷却風は赤外線透過板の板面に沿って流れやすくなるため、赤外線透過板を効率よく冷却することができる。
【0010】
本発明の低温乾燥装置において、前記炉体の少なくとも側面は、断熱材を有さない金属面であってもよい。こうすれば、炉内雰囲気温度が上がりかけたとしても、断熱材を有さない金属面を介して容易に放熱されるため、炉内雰囲気温度を低く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】低温乾燥装置10の概略構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態である低温乾燥装置10の概略構成を示す縦断面図、
図2は
図1のA−A断面図である。説明の便宜上、低温乾燥装置10の前後方向、上下方向は
図1に示すとおりとし、低温乾燥装置10の左右方向は紙面と垂直な方向(紙面の奥が左、手前が右)とする。
【0013】
低温乾燥装置10は、炉体12と、シート20と、赤外線透過板30と、給気装置40と、排気装置45と、赤外線ヒーター50と、ヒーター用ダクト60と、コントローラー70とを備えている。また、低温乾燥装置10は、炉体12の前方に設けられたロール17と、炉体12の後方に設けられたロール18とを備えている。この低温乾燥装置10は、塗膜22が上面に形成されたシート20を、ロール17,18により連続的に搬送して乾燥を行う、ロールトゥロール方式の乾燥装置として構成されている。
【0014】
炉体12は、塗膜の乾燥を行うためのものである。炉体12は、略直方体に形成された構造体であり、前面13や後面14、左右側面(図示せず)は断熱材を有さない金属面となっている。金属面は、伝熱性の高いものであればよく、例えばステンレス鋼やアルマイト加工済みのアルミニウムなどが挙げられる。この金属面には、構造的な強度を持たせるための柱や梁が設けられていてもよい。炉体12の上面には、シート20と対向する位置に赤外線透過板30が嵌め込まれている。炉体12の前面13及び後面14には、それぞれ開口15,16が設けられている。開口15,16は、炉体12の内部への出入口となる。この炉体12は、前面13から後面14までの長さが例えば2〜10mである。炉体12は、開口15から開口16に至る搬送通路19を備えている。搬送通路19は、炉体12を水平方向に貫通している。片面に塗膜22が塗布されたシート20は、この搬送通路19を通過していく。
【0015】
シート20は、特に限定するものではないが、例えば樹脂製のシートであり、本実施形態ではPETフィルムからなるものとした。シート20は、特に限定するものではないが、例えば厚さ10〜100μm,幅(左右方向の長さ)200〜1000mmであり、炉内のシート20の前後方向の長さは1000〜1500mmである。また、塗膜22は、シート20の上面に塗布されたものであり、例えば乾燥後にMLCC(積層セラミックコンデンサ)用の薄膜として用いられるものである。塗膜22は、例えばセラミック粉末又は金属粉末と、有機バインダーと、有機溶剤とを含むものである。塗膜22の厚みは、特に限定するものではないが、例えば20〜1000μmである。
【0016】
赤外線透過板30は、炉体12の上面に設けられた開口12aを覆うように取り付けられ、塗膜22が保持されたシート20と対向している。赤外線透過板30は、石英ガラスやホウ珪酸クラウンガラスなどで作製されており、3.5μm以下の波長の赤外線を通過し、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するフィルタとして機能する。この赤外線透過板30の材質は、後述する赤外線ヒーター50の内管53や外管55と同じ材質にするのが好ましい。また、赤外線透過板は3.5μm以下の波長の赤外線を透過するものに限定されず、6μm等の長波長の赤外線を透過するものとしてもよい。
【0017】
給気装置40は、流体をシート20の表面側に供給(送風)して炉体12内を通過する塗膜22やシート20、赤外線透過板30を冷却させる装置である。給気装置40は、給気ファン41と、パイプ構造体42と、給気口43とを備えている。給気ファン41は、パイプ構造体42に取り付けられており、流体をパイプ構造体42の内部へ供給するものである。流体は、シート20を冷却可能な冷風であり、例えば常温や50℃以下の空気である。給気ファン41は、流体の流量や温度の調節が可能となっている。パイプ構造体42は、給気ファン41からの流体の通路となるものである。パイプ構造体42は、給気ファン41から炉体12の天井を貫通して炉体12の内部までの通路を形成している。給気口43は、給気ファン41からの流体の炉体12への供給口となるものである。この給気口43は、炉体12のうちシート20の搬出側である開口16側に設けられ、搬入側である開口15側に向けて開口している。給気口43は、
図2に示すように、赤外線透過板の板面に沿って前後方向に細長く延びるスリットに形成されている。給気装置40は、シート20の搬送方向とは反対方向に(
図1の左方向に)流体を供給する。
【0018】
排気装置45は、炉体12内の雰囲気ガスを排出する装置である。排気装置45は、排気ファン46と、パイプ構造体47と、排気口48と、を備えている。排気口48は、炉体12のうちシート20の搬入側である開口15側に設けられ、搬出側である開口16側に向けて開口している。この排気口48も、給気口43と同様、赤外線透過板の板面に沿って前後方向に細長く延びるスリットに形成されている。排気口48はパイプ構造体47に取り付けられており、炉体12内の雰囲気ガス(主に塗膜22の表面に沿って流れた後の給気装置40からの送風)を吸引してパイプ構造体47内に導く。パイプ構造体47は、排気口48から排気ファン46への雰囲気ガスの流路となるものである。パイプ構造体47は、排気口48から炉体12の天井を貫通して排気ファン46までの通路を形成している。排気ファン46は、パイプ構造体47に取り付けられており、パイプ構造体47内部の雰囲気ガスを排気する。
【0019】
赤外線ヒーター50は、炉体12の外側から赤外線透過板30を介して炉体12内を通過する塗膜22に赤外線を照射する装置であり、炉体12の外部の開放空間OPに設けられたフレーム51に複数吊り下げられている。これらの赤外線ヒーター50は、赤外線透過板30に対向している。本実施形態では、開放空間OPは、炉体12が設置された屋舎内の空間である。本実施形態では、赤外線ヒーター50は赤外線透過板30の前部から後部にわたって略均等に複数本(本実施形態では6本)配置されている。この複数の赤外線ヒーター50は、いずれも同様の構成をしており、その長手方向と塗膜22の搬送方向とが直交するように取り付けられている。以下、1つの赤外線ヒーター50の構成について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は赤外線ヒーター50の縦断面図、
図4は
図3のB−B断面図である。
【0020】
赤外線ヒーター50は、発熱体52を内管53が囲むように形成されたヒーター本体54と、このヒーター本体54を囲むように形成された外管55と、外管55の両端に気密に嵌め込まれた有底筒状のキャップ56と、ヒーター本体54と外管55との間に形成され冷媒が流通可能な流路57とを備えている。発熱体52は、700〜1200℃に通電加熱され、波長が3μm付近にピークを持つ赤外線を放射する。内管53は、石英ガラスやホウ珪酸クラウンガラスなどで作製されており、3.5μm以下の波長の赤外線を通過し、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するフィルタとして機能する。ヒーター本体54は、両端がキャップ56の内部に配置されたホルダー58に支持されている。外管55は、内管53と同様、石英ガラスやホウ珪酸クラウンガラスなどで作製されており、3.5μm以下の波長の赤外線を通過し、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するフィルタとして機能する。流路57は、一方のキャップ56に設けた供給口から他方のキャップ56に設けた排出口へ冷媒が流れるようになっている。流路57を流れる冷媒は、例えば空気や不活性ガスなどであり、内管53と外管55に接触して熱を奪うことにより各管53,55を冷却する。こうした赤外線ヒーター50は、発熱体52から波長が3μm付近にピークを持つ赤外線が放射されると、そのうち3.5μm以下の波長の赤外線は内管53や外管55を通過して加熱対象物に照射される。この波長の赤外線は、有機溶剤の水素結合を切断する能力に優れるといわれており、効率的に有機溶剤を蒸発させることができる。一方、内管53や外管55は、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するが、流路57を流れる冷媒によって冷却される。そのため、赤外線ヒーター50の外面を200℃以下に維持することができる。
【0021】
ヒーター用ダクト60は、炉体12の外側の開放空間OPに配置された赤外線ヒーター50の周囲の気体を低温乾燥装置10が設置された屋舎の外へ排出して換気するためのものである。このため、赤外線ヒーター50の周囲の温度を低く維持することができる。
【0022】
コントローラー70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されている。このコントローラー70は、給気ファン41や排気ファン46に制御信号を出力して、給気口43から送風される流体の温度及び風量を制御したり、排気口48からの排気量を制御したりする。また、コントローラー70は、ロール17,ロール18の回転速度を制御することで、炉体12内のシート20及び塗膜22の通過時間やシート20及び塗膜22にかかる張力を調整することができる。このコントローラー70は、各赤外線ヒーター50の出力制御も行う。
【0023】
次に、こうして構成された低温乾燥装置10を用いて塗膜22を乾燥する処理の一例を説明する。まず、コントローラー70がロール17,ロール18を回転させ、シート20の搬送を開始する。これにより、低温乾燥装置10の左端に配置されたロール17からシート20が巻き外されていく。また、シート20は開口15から炉体12内に搬入される直前に図示しないコーターによって上面に塗膜22が塗布される。そして、塗膜22が塗布されたシート20は、炉体12内に搬送される。このとき、コントローラー70は、給気ファン41や排気ファン46、赤外線ヒーター50等を制御する。これにより、シート20が炉体12の内部を通過する間に、シート20の上面に形成された塗膜22は、赤外線ヒーター50から赤外線透過板30を介して赤外線が照射されることによって乾燥される。これと同時に、給気装置40からの冷風により塗膜22やシート20、赤外線透過板30は冷却され、塗膜22から蒸発した溶剤は排気装置45から排出される。この間、ヒーター用ダクト60は、赤外線ヒーター50の周囲の暖気を排出し換気する。これらのことが統合された結果、炉内雰囲気温度が低く(例えば40℃とか35℃)保たれたまま塗膜22が乾燥されて薄膜となり、開口16から搬出される。そして、この薄膜(塗膜22)は、炉体12の右端に設置されたロール18にシート20とともに巻き取られる。その後、薄膜はシート20から剥離され、所定形状に切断されて積層され、MLCCが製造される。
【0024】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の低温乾燥装置10が本発明の低温乾燥装置に相当し、炉体12が炉体に相当し、シート20が被乾燥物保持部材に相当し、赤外線透過板30が赤外線透過板に相当し、給気装置40及び排気装置45が冷却風流通手段に相当し、赤外線ヒーター50が赤外線ヒーターに相当し、ヒーター用ダクト60が低温化手段に相当する。
【0025】
以上詳述した本実施形態の低温乾燥装置10によれば、赤外線ヒーター50の周囲には炉壁が存在しないため、塗膜22を乾燥するのに不要な波長を炉壁が吸収して高温になることがない。そのため、炉体12の内部の雰囲気温度が上がり過ぎるのを防止することができる。また、塗膜22と赤外線透過板30との間に冷却風が流通するため、塗膜22やシート20を比較的低温に維持することができるし、赤外線透過板30も低温に維持することができる。以上のことから、許容される上限温度が低い塗膜22を乾燥する場合であっても、その上限温度を超えることなく効率よく乾燥することができる。また、赤外線ヒーター50を炉外に配置したため、炉内容積を小さくすることができる。更に、赤外線ヒーター50の温度が高くなったとしても炉内はその影響をほとんど受けないため、赤外線ヒーター50の出力を高くして短時間で乾燥することができる。
【0026】
また、赤外線ヒーター50の周囲は赤外線ヒーター50によって温められるものの、ヒーター用ダクト60によって換気されて温度の低い新たな気体に入れ替わる。赤外線ヒーター50の周囲の気体は赤外線透過板30と接しているが、その気体の温度が低温化されるため、赤外線透過板30を確実に低温に維持することができる。
【0027】
更に、冷却風の給気口43及び排気口48は、赤外線透過板30の板面に沿って細長く延びるスリットに形成されているため、冷却風は赤外線透過板30の板面に沿って流れやすく、赤外線透過板30の板面を効率よく冷却することができる。
【0028】
更にまた、炉体12の側面は、断熱材を有さない金属面であるため、炉内雰囲気温度が上がりかけたとしても、断熱材を有さない金属面を介して容易に放熱される。したがって、炉内雰囲気温度を低く維持することができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、二つのロール17,18にシート20を架け渡すロールトゥロール方式を例示したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、炉体12に蓋を設けその蓋を開けて被乾燥物を炉体12内に配置したあと蓋を閉めて乾燥処理を実施し、その後蓋を開けて被乾燥物を取り出すというバッチ方式を採用してもよい。あるいは、入口から出口へ送られるコンベアベルトの上面に被乾燥物を直に又は容器に入れて載置する方式を採用してもよい。
【0031】
上述した実施形態では、開放空間OPにヒーター用ダクト60を設けたが、ヒーター用ダクト60の代わりに、開放空間OPの温度や湿度をコントロールするエアコンを取り付けてもよい。このようにしても、赤外線ヒーター50の周囲の気体を低温化することができる。
【0032】
上述した実施形態では、赤外線ヒーター50として3.5μm以下の波長の赤外線を放射するものを採用したが、特にこれに限定されるものではなく、0.7〜1000μmの範囲で適宜の波長域をもつものを採用することができる。
【0033】
上述した実施形態では、塗膜22はMLCC用の薄膜として用いられるものとしたが、これに限られない。例えば、LTCC(低温焼成セラミックス)やその他のグリーンシート用の薄膜として用いるものとしてもよい。あるいは、塗膜22がリチウムイオン二次電池などの電池用の電極となる塗膜として用いられるものとしてもよい。この場合、塗膜22は、例えば、電極材(正極活物質又は負極活物質)とバインダーと導電材と溶剤とを共に混練した電極材ペーストを、シート20上に塗布したものとしてもよい。塗膜22が電池用の電極となる塗膜である場合、シート20は、アルミニウムや銅等の金属シートとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、給気装置40の給気口43の位置関係を特に指定していないが、塗膜22が処理もしくは加熱されたことにより塗膜22から対流熱が上昇するのを防ぐために、塗膜22と赤外線透過板30の距離の中間地点(真ん中の地点)よりも赤外線透過板30に近い側に給気口43の上部43a(
図2参照)が位置していると、より本発明の効果が達成されやすい。
【0035】
本出願は、2016年3月28日に出願された日本国特許出願第2016−063626号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、塗膜などの乾燥対象の乾燥が必要な産業、例えばMLCCやLTCC等を製造するセラミックス産業、リチウムイオン二次電池の電極塗膜を製造する電池産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 低温乾燥装置、12 炉体、12a 開口、13 前面、14 後面、15,16 開口、17,18 ロール、19 搬送通路、20 シート、22 塗膜、30 赤外線透過板、40 給気装置、41 給気ファン、42 パイプ構造体、43 給気口、43a 上部、45 排気装置、46 排気ファン、47 パイプ構造体、48 排気口、50 赤外線ヒーター、51 フレーム、52 発熱体、53 内管、54 ヒーター本体、55 外管、56 キャップ、57 流路、58 ホルダー、60 ヒーター用ダクト、70 コントローラー。