(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
座席フレーム(7)の下部に接地可能なベルト移動機構(9)が設けられ、このベルト移動機構(9)は、前後方向に長いベルトフレーム(43)と、ベルトフレーム(43)の前後にそれぞれ支持軸(59,62)廻りに回転自在に支持された前後のプーリ(41,42)と、前後プーリ(41,42)間に巻装されていて接地可能な無端ベルト(44)とを備え、ベルト移動機構(9)による移動を止める停車機構(81)が具備された車椅子であって、
前記停車機構(81)は、無端ベルト(44)前部の接地面(a)よりも下方に出退移動自在の停車ストッパー(82)と、停車ストッパー(82)を出退移動させる操作手段(83)とを備えており、
前記停車ストッパー(82)は、ベルトフレーム(43)の前部側に、無端ベルト(44)前部の接地面(a)よりも下方に突出する停車姿勢(X1)と無端ベルト(44)前部の接地面(a)よりも上方に後退する収納姿勢(X2)とに移動自在に支持され、
前記操作手段(83)は、ベルトフレーム(43)の後部側に停車操作位置(Y1)と解除操作位置(Y2)とに揺動自在に設けられた操作レバー(97)と、操作レバー(97)を停車操作位置(Y1)に揺動したときに停車ストッパー(82)が停車姿勢(X1)になると共に操作レバー(97)を解除操作位置(Y2)に揺動したときに停車ストッパー(82)が収納姿勢(X2)になるように、操作レバー(97)と停車ストッパー(82)とを連結する連結リンク(98)とを備えており、
ベルトフレーム(43)側に、停車ストッパー(82)が停車姿勢(X1)になったときに該停車ストッパー(82)の停車姿勢(X1)側への移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする車椅子。
座席フレーム(7)の下部に階段(75)の踏面(75a)の先端に接地可能なベルト移動機構(9)が設けられ、このベルト移動機構(9)は、前後方向に長いベルトフレーム(43)と、ベルトフレーム(43)の前後にそれぞれ支持軸(59,62)廻りに回転自在に支持された前後のプーリ(41,42)と、前後プーリ(41,42)間に巻装されていて接地可能な無端ベルト(44)とを備え、ベルト移動機構(9)による移動を止める停車機構(81)が具備された車椅子であって、
前記停車機構(81)は、無端ベルト(44)前部の接地面(a)よりも下方に出退移動自在に突出して階段(75)の踏面(75a)に接地する停車ストッパー(82)と、停車ストッパー(82)を出退移動させる操作手段(83)とを備えており、
前記停車ストッパー(82)は、ベルトフレーム(43)の前部側に、無端ベルト(44)前部の接地面(a)よりも下方に突出する停車姿勢(X1)と無端ベルト(44)前部の接地面(a)よりも上方に後退する収納姿勢(X2)とに移動自在に支持され、
前記操作手段(83)は、ベルトフレーム(43)の後部側に停車操作位置(Y1)と解除操作位置(Y2)とに揺動自在に設けられた操作レバー(97)と、操作レバー(97)を停車操作位置(Y1)に揺動したときに停車ストッパー(82)が停車姿勢(X1)になると共に操作レバー(97)を解除操作位置(Y2)に揺動したときに停車ストッパー(82)が収納姿勢(X2)になるように、操作レバー(97)と停車ストッパー(82)の上部とを連結する連結リンク(98)とを備えており、
前記停車ストッパー(82)は、階段(75)を下降する方向に滑るときに停車姿勢(X1)側に向かう方向の摩擦力を受けるように左右方向の支軸(91)廻りに揺動自在に支持されており、
前記停車ストッパー(82)の下部の接地面(b)は前記支軸(91)を中心とした円弧面に形成されていることを特徴とする車椅子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の場合、無端ベルトと階段との間に大きな摩擦抵抗がないため、無端ベルトの回走を止めても、無端ベルトが階段を滑って下降するおそれがあり、車椅子の下降を階段の途中で確実に止めることは困難であった。
本発明は上記問題点に鑑み、階段の途中で車椅子の下降を簡単かつ確実に止めることができるようにした車椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、座席フレーム7の下部に接地可能なベルト移動機構9が設けられ、このベルト移動機構9は、前後方向に長いベルトフレーム43と、ベルトフレーム43の前後にそれぞれ支持軸59,62廻りに回転自在に支持された前後のプーリ41,42と、前後プーリ41,42間に巻装されていて接地可能な無端ベルト44とを備え、ベルト移動機構9による移動を止める停車機構81が具備された車椅子であって、
前記停車機構81は、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に出退移動自在の停車ストッパー82と、停車ストッパー82を出退移動させる操作手段83とを備えている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、前記停車ストッパー82は、ベルトフレーム43の前部側に、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に突出する停車姿勢X1と無端ベルト44前部の接地面aよりも上方に後退する収納姿勢X2とに移動自在に支持され、
前記操作手段83は、ベルトフレーム43の後部側に停車操作位置Y1と解除操作位置Y2とに揺動自在に設けられた操作レバー97と、操作レバー97を停車操作位置Y1に揺動したときに停車ストッパー82が停車姿勢X1になると共に操作レバー97を解除操作位置Y2に揺動したときに停車ストッパー82が収納姿勢X2になるように、操作レバー97と停車ストッパー82とを連結する連結リンク98とを備えている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、
座席フレーム7の下部に階段75の踏面75aの先端に接地可能なベルト移動機構9が設けられ、このベルト移動機構9は、前後方向に長いベルトフレーム43と、ベルトフレーム43の前後にそれぞれ支持軸59,62廻りに回転自在に支持された前後のプーリ41,42と、前後プーリ41,42間に巻装されていて接地可能な無端ベルト44とを備え、ベルト移動機構9による移動を止める停車機構81が具備された車椅子であって、
前記停車機構81は、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に出退移動自在に突出して階段75の踏面75aに接地する停車ストッパー82と、停車ストッパー82を出退移動させる操作手段83とを備えており、
前記停車ストッパー82は、ベルトフレーム43の前部側に、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に突出する停車姿勢X1と無端ベルト44前部の接地面aよりも上方に後退する収納姿勢X2とに移動自在に支持され、
前記操作手段83は、ベルトフレーム43の後部側に停車操作位置Y1と解除操作位置Y2とに揺動自在に設けられた操作レバー97と、操作レバー97を停車操作位置Y1に揺動したときに停車ストッパー82が停車姿勢X1になると共に操作レバー97を解除操作位置Y2に揺動したときに停車ストッパー82が収納姿勢X2になるように、操作レバー97と停車ストッパー82の上部とを連結する連結リンク98とを備えており、
前記停車ストッパー82は、階段75を下降する方向に滑るときに停車姿勢X1側に向かう方向の摩擦力を受けるように左右方向の支軸91廻りに揺動自在に支持されて
おり、
前記停車ストッパー82
の下部の接地面bは前記支軸91を中心とした円弧面に形成されている点にある。
【0009】
また、本発明の他の技術的手段は、ベルトフレーム43側に、停車ストッパー82が停車姿勢X1になったときに該停車ストッパー82の停車姿勢X1側への移動を規制する規制部材が設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記ベルト移動機構9は、座席フレーム7の下部に左右一対設けられ、前記停車ストッパー82は、左右のベルト移動機構9に対応して左右一対設けられ、
操作レバー97は、左右の停車ストッパー82が互いに連動して停車姿勢X1及び収納姿勢X2になるように連結リンク98を介して左右の停車ストッパー82にそれぞれ連結されている点にある。
【0010】
また、本発明の他の技術的手段は、座席フレーム7は、前下がりに傾斜した左右の背凭れ縦杆3aを有する背凭れフレーム3と、前上がりに傾斜した左右の座縦杆4aを有する座フレーム4とで構成され、左右背凭れ縦杆3aの下部間に横軸15が連結され、この横軸15に前輪17が回転自在に支持され、左右のベルトフレーム43の後部側は左右方向の連結軸45により連結され、この連結軸45に、後輪39を有する後輪スタンド6が揺動自在に支持されて、ベルト移動機構9から後輪39が下方に突出して車椅子を前輪17と後輪39とを介して接地できると共に、ベルト移動機構9よりも後輪39が上方に後退して車椅子をベルト移動機構9を介して接地できるように構成されており、
左右のベルトフレーム43の前部が前記横軸15の左右両端部にそれぞれ連結され、左右の停車ストッパー82は、左右のベルトフレーム43の前部の内側方にそれぞれ配置され、左右の停車ストッパー82の停車姿勢X1側への移動を規制する前記規制部材が横軸15によって兼用されている点にある。
【0011】
また、本発明の他の技術的手段は、操作レバー97は、左右一対のレバー縦杆101とレバー縦杆101を左右に連結する連結横杆102とを有し、左右のレバー縦杆101の基部が前記連結軸45廻りに揺動自在に支持され、左右のレバー縦杆101の遊端側は互いに離反するように外側方に屈曲されてそれぞれ左右のベルトフレーム43よりも外側方に突出されている点にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、階段の途中で停車する場合、操作手段を操作することによって、停車ストッパーを無端ベルト前部の接地面よりも下方に突出させることができ、これにより、ベルト移動機構の前部で停車ストッパーを階段の踏面に接地させ、無端ベルトが階段を滑って下降するのを防いで、階段の途中で確実に停車することができる。
また、階段を下降する場合には、操作手段を操作することによって、停車ストッパーを無端ベルト前部の接地面よりも後退させることができ、停車ストッパーによる停車を解除してベルト移動機構の回送により階段をスムーズに下降することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図8は本発明の一実施形態を示している。
図6〜
図8において、車椅子1は、背凭れフレーム3と座フレーム4と手摺フレーム5と後輪スタンド6とを備え、背凭れフレーム3と座フレーム4とで座席フレーム7が構成され、座席フレーム7の下部に接地可能なベルト移動機構9が左右一対設けられている。また、車椅子1には、ベルト移動機構9による移動を止める停車機構81が具備されている。
【0015】
背凭れフレーム3はアルミニウム合金製のパイプ材をU字状に屈曲してなり、前下がりに傾斜した左右一対の背凭れ縦杆3aと背凭れ縦杆3aの下部間に連結された背凭れ横杆3bとを一体に有し、左右背凭れ縦杆3aの上部間に連結フレーム13が固着されている。
左右背凭れ縦杆3aの下部間に横軸15が連結固定され、左右背凭れ縦杆3aの下部に取付金具16がそれぞれ横軸15廻りに揺動自在に支持されている。横軸15の左右両側に左右一対の前輪17が横軸15廻りに回転自在に支持されている。
【0016】
左右背凭れ縦杆3aの長手方向の中途部にアルミニウム合金製の摺動筒体18がそれぞれ外嵌されている。
座フレーム4はアルミニウム合金製のパイプ材をU字状に屈曲してなり、前上がりに傾斜した左右一対の座縦杆4aと座縦杆4aの前部(上部)間に連結された座横杆4bとを一体に有している。
【0017】
左右の座縦杆4aは、左右の背凭れ縦杆3aの左右方向の外側に配置されている。左右座縦杆4aの長手方向の中途部にアルミニウム合金製の摺動筒体19がそれぞれ外嵌されている。左右座縦杆4aの長手方向の中途部は、ボルトナット等の固定具によって対応する背凭れ縦杆3aの中途部にそれぞれ摺動筒体18,19を介して左右方向の支軸21廻りに揺動自在に連結されている。
【0018】
座横杆4bに円筒状のクッション部材23が外嵌保持されている。左右座縦杆4aの後部に摺動ピン25が左右方向内方に突設されている。
連結フレーム13は、アルミニウム合金により構成され、左右一対の固定筒27と、固定筒27の前側に連設された左右一対の連結筒28と、左右の固定筒27間に連結されたパイプ状の横連結杆29とを一体に備える。横連結杆29に円筒状のクッション部材30が外嵌保持されている。左右の固定筒27及び連結筒28間にシートベルト31が取り付けられている。
【0019】
布又は合成樹脂シートにより構成した座席シート32が背凭れフレーム3と座フレーム4との間に設けられている。座席シート32の両端部に前連結筒部32aと後連結筒部32bとが形成されており、前連結筒部32aが座横杆4bにクッション部材23上から外嵌され、後連結筒部32bが横連結杆29にクッション部材30上から外嵌され、座席シート32の中途部は座横杆4b及び横連結杆29から円弧状に垂下されている。
【0020】
手摺フレーム5は、アルミニウム合金製のパイプ材をU字状に屈曲してなり、左右一対の手摺縦杆5aと手摺縦杆5aの上部(前部)間に連結された手摺横杆5bとを一体に有している。
左右の手摺縦杆5aの上部間に、布又は合成樹脂シートにより構成したヘッドレスト34が連結されている。
【0021】
左右の手摺縦杆5aの下部側が連結フレーム13の左右の連結筒28に長手方向(上下方向)に摺動自在に挿通保持されていて、手摺フレーム5を背凭れフレーム3の背凭れ縦杆3aに沿うように収納することができると共に、手摺フレーム5を背凭れフレーム3から上方に突出させた上方突出状態に保持できるように構成されている。
後輪スタンド6は、アルミニウム合金により構成され、左右一対のスタンド縦杆6aとスタンド縦杆6aの下部間を連結したスタンド横杆6bとを一体に備えている。左右スタンド縦杆6aの上部に、後述する左右ベルトフレーム43の後部側を連結する連結軸45が挿通されていて、後輪スタンド6は連結軸45廻りに揺動自在に支持されている。
【0022】
左右スタンド縦杆6aの中途部間にスタンド連結杆38が連結され、スタンド横杆6bに縦軸廻りに揺動自在に支持された左右一対の後輪39が下方突設されている。
前記横軸15とスタンド連結杆38との間にダンパー40が連結されており、後輪スタンド6を連結軸45廻りに後方(
図7に示す矢印e方向)に揺動したとき、
図7に示すように、後輪スタンド6がベルト移動機構9から下方に突出して、車椅子1を前輪17と後輪39とを介して接地できるように構成され、後輪スタンド6を連結軸45廻りに前方(
図7に示す矢印f方向)に揺動したとき、
図6に示すように後輪スタンド6がベルト移動機構9よりもやや上方に後退して、車椅子1をベルト移動機構9を介して接地できるように構成されている。
【0023】
左右のベルト移動機構9は、前後方向に長いベルトフレーム43と、ベルトフレーム43に支持された前プーリ41及び後プーリ42と、前後プーリ41,42間に巻装された無端ベルト44とをそれぞれ備える。
左右のベルトフレーム43の前部はそれぞれ取付金具16に
図1及び
図2に示すボルトナット等の固定具47で固定されており、左右のベルトフレーム43の前部が取付金具16を介して横軸15の左右両端部にそれぞれ横軸15廻りに揺動自在に連結されている。左右のベルトフレーム43の後部側は連結軸45により互いに連結されている。座フレーム4の摺動ピン25が左右のベルトフレーム43にそれぞれ長手方向に摺動自在に係合保持されている。
【0024】
而して、座フレーム4を背凭れフレーム3に対して支軸21廻りに
図7に示す矢印a方向に揺動すると、座フレーム4が背凭れフレーム3に沿うと共に、左右のベルト移動機構9が横軸15廻りに矢印c方向に揺動して背凭れフレーム3に沿うようになり、これにより背凭れフレーム3と座フレーム4と左右のベルト移動機構9とを重合させてコンパクトに折り畳むことができるようになっている。
【0025】
また、折り畳んだ状態から、座フレーム4を背凭れフレーム3に対して支軸21廻りに
図7に示す矢印b方向に揺動すると、
図6及び
図7に示すように、座フレーム4が背凭れフレーム3から前後方向に突出して、座席シート32が前後に広がり患者等を座席シート32に着座させることが可能になると共に、左右のベルト移動機構9が横軸15廻りに矢印d方向に揺動し、座席フレーム7の下部で、前下がりに緩やかに傾斜した状態になる。
【0026】
図1〜
図5において、左右ベルト移動機構9のベルトフレーム43は、アルミニウム合金等により構成され、左右一対の側壁部51,52と左右側壁部51,52の下部間を連結する底壁部53と底壁部53に対向する上壁部54とを一体に有している。
左右側壁部51,52のうちの左右方向内方側の側壁部51は外方側の側壁部52よりも高く形成されており、内方側の側壁部51の上端から上壁部54が左右方向外方に突出され、外方側の側壁部52と上壁部54との間に開口窓55が設けられている。開口窓55はベルトフレーム43の長手方向の全長に亘って形成されており、この開口窓55から無端ベルト44の上部側44aをベルトフレーム43内に挿入できるようになっている。
【0027】
底壁部53の左右両側に左右一対の規制片57が下方突設され、規制片57間がベルト回走溝53aとなっており、これら規制片57及びベルト回走溝53aは底壁部53の長手方向全長に亘っている。
左右側壁部51,52の長手方向の両端部(前部及び後部)は、底壁部53の長手方向両端よりも長手方向外方に突出している。従って、左右側壁部51,52の両端部の下部間は開口しており、この両端部に後述の如く前プーリ41と後プーリ42とがそれぞれ支持軸59,62廻りに回転自在に支持されている。
【0028】
左右側壁部51,52の前部間に、円筒状の筒体等により構成した支持軸59が左右方向に架設されており、前プーリ41が支持軸59に外嵌した状態で左右側壁部51,52の前部間に配置されて、支持軸59廻りに回転自在に支持されている。
左右側壁部51,52の後部間に、円筒状の筒体等により構成した支持軸62が左右方向に架設されており、後プーリ42が支持軸62に外嵌した状態で左右側壁部51,52の後部間に配置されて、支持軸62廻りに回転自在に支持されている。
【0029】
無端ベルト44の上部側44aはベルトフレーム43内に長手方向に配置され、下部側44bは底壁部53の下面に沿って長手方向に配置されている。また、無端ベルト44の下部側44bは左右の規制片57間のベルト回走溝53aに嵌合されていて、左右の規制
片57によって無端ベルト44の左右移動が規制され、無端ベルト44の下部側44bの下面が階段75の踏面75aの先端等に接触する接地面aとされている。
【0030】
図1〜
図5及び
図8において、停車機構81は、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に出退移動自在の停車ストッパー82と、停車ストッパー82を出退移動させる操作手段83とを備えている。
停車ストッパー82は、左右のベルト移動機構9に対応して左右一対設けられ、左右のベルトフレーム43の前部の内側方であって、取付金具16と前輪17との間にそれぞれ配置されている。
【0031】
停車ストッパー82は、扇形の板状に形成されたストッパー板部85とストッパー板部85から上方又は後方に突出した連結板部86とを有し、ストッパー板部85の外側面側には前側の固定具47のナット47a等を避けるための凹溝88が後述する支軸91を中心とする円弧状に形成されている。
ストッパー板部85と取付金具16とベルトフレーム43とに亘ってボルトナット等の締結具90が左右方向に挿通されて締め付け固定され、これにより停車ストッパー82が左右方向の支軸91(締結具90の軸)廻りに揺動自在に支持され、支軸91はストッパー板部85の扇形の円弧状外周面の中心部に配置されている。
【0032】
而して、左右の停車ストッパー82は、ベルトフレーム43の前部側に、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に突出する停車姿勢X1と無端ベルト44前部の接地面aよりも上方に後退する収納姿勢X2とに揺動自在(移動自在)に支持され、停車ストッパー82の接地面bは支軸91を中心とした円弧面に形成されている。また、停車姿勢X1にした停車ストッパー82は、階段75を下降する方向に滑るときに停車姿勢X1側に向かう方向の摩擦力を受けるように左右方向の支軸91廻りに揺動自在に支持されている。
【0033】
ストッパー板部85の連結板部86側に接当凹部94が形成されており、停車ストッパー82が停車姿勢X1になったときに接当凹部94が後側から横軸15に接当して停車ストッパー82の停車姿勢X1側への移動を規制するように構成されている。従って、本実施形態の場合、停車ストッパー82が停車姿勢X1になったときに該停車ストッパー82の停車姿勢X1側への移動を規制する規制部材が横軸15によって兼用されている。なお、上記規制部材は横軸15で兼用することなくベルトフレーム43側に別途設けるようにしてもよい。
【0034】
停車機構81の操作手段83は、ベルトフレーム43の後部側に設けられた操作レバー97と、操作レバー97と左右の停車ストッパー82とを連結する左右一対の連結リンク98とを備えている。
操作レバー97は、左右一対のレバー縦杆101とレバー縦杆101を左右に連結する連結横杆102とを有し、左右のレバー縦杆101は左右のベルトフレーム43の後部の左右内側方に配置されている。
【0035】
左右のレバー縦杆101の基部が連結軸45廻りに揺動自在に支持され、左右のレバー縦杆101の遊端側は互いに離反するように外側方に屈曲されてそれぞれ左右のベルトフレーム43よりも外側方に突出されている。左右のレバー縦杆101の遊端部に保護キャップ103が外嵌固定されている。
左右のレバー縦杆101の中途部にそれぞれ連動板105が突設され、これら連動板105と左右の停車ストッパー82の連結板部86との間にそれぞれ連結リンク98が連結されている。
【0036】
図5に示すように、停車ストッパー82の連結板部86に支持筒104がボルトナット等の締結具106により締め付け固定され、この支持筒104に連結リンク98の前部が揺動自在に外嵌され、これにより、連結リンク98の前部は停車ストッパー82の連結板部86に支持筒104廻りに揺動自在に連結されている。また、連結リンク98の後部は、前部と同様に連動板105に支持筒廻りに揺動自在に連結されている。
【0037】
而して、操作レバー97は、連結軸45廻りに停車操作位置Y1と解除操作位置Y2とに揺動自在に支持され、操作レバー97は、左右の停車ストッパー82が互いに連動して停車姿勢X1及び収納姿勢X2になるように連結リンク98を介して左右の停車ストッパ
ー82にそれぞれ連結されており、操作レバー97を停車操作位置Y1に揺動したときに左右の停車ストッパー82が停車姿勢X1になると共に操作レバー97を解除操作位置Y2に揺動したときに左右の停車ストッパー82が収納姿勢X2になるように構成されている。
【0038】
左右のレバー縦杆101の遊端側の屈曲部分に接当板107が固設されており、操作レバー97が解除操作位置Y2に回動したときに左右の接当板107が前側からベルトフレーム43の後部に接当し、操作レバー97が解除操作位置Y2で解除操作方向への揺動を規制するようになっている。また、左右のレバー縦杆101と連結横杆102との間に左右一対の補強板108が連結されている。
【0039】
前記実施形態によれば、患者等を車椅子1に載せて移動する際には、
図7に示すように、操作レバー97を停車操作位置Y1にセットして、左右の停車ストッパー82を収納姿勢X2にしておき、また、手摺フレーム5を背凭れフレーム3から上方に突出させると共に、座フレーム4を背凭れフレーム3から前後方向に突出させ、車椅子1を前輪17と後輪39とを介して接地する。この状態で、座席シート32に患者等を座らせて、手摺フレーム5を押すことにより、患者等を簡単に移動させることができる。
【0040】
また、患者等を階段75から降ろす場合には、
図2に実線で示すように、操作レバー97を解除操作位置Y2にセットして、左右の停車ストッパー82を収納姿勢X2にしておき、また、
図7に示す状態から
図6に示すように、後輪スタンド6を連結軸45廻りに前方(矢印f方向)に揺動して、車椅子1をベルト移動機構9を介して接地できるようにし、患者等を座席シート32に着座させた状態で、無端ベルト44の下部側44bの接地面aを階段75における複数段の踏面75aの先端に接触させながら回走させればよく、階段75を楽に降下することができ、患者等を階下に簡単に避難させることができる。
【0041】
また、階段75を下降する途中で停車する場合には、まず、例えば、
図2に示すように、ベルト移動機構9(無端ベルト44)の前部が階段75の踏面75aから浮いた状態になったときに、
図2に実線で示すように解除操作位置Y2にある操作レバー97のレバー縦杆101の遊端部や連結横杆102等を足で前方に蹴ることにより、操作レバー97を解除操作位置Y2から停車操作位置Y1に揺動操作する。すると、左右の停車ストッパー82が支軸91廻りに揺動して収納姿勢X2から停車姿勢X1に姿勢変更し、無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に突出する。
【0042】
その後、ベルト移動機構9を階段75の踏面75aの先端を滑らせて車椅子1をやや下降させ、
図1及び
図6に示すように停車ストッパー82を階段75の踏面75aに接地させる。すると、停車ストッパー82が階段75の踏面75aに接地することにより、停車ストッパー82と階段75との間に大きな滑り抵抗が生じるため、無端ベルト44が階段75を滑って下降するのを防いで、階段75の途中で車椅子1を確実かつ簡単に停車させることができる。実験結果によれば、階段75の傾斜角度αが28度〜40度の範囲であっても車椅子1を階段75の途中で確実に停車させることができるようになった。
【0043】
階段75の途中で停車した状態から階段75の下降を再開する場合には、まず、
図1に実線で示すように、左右の停車ストッパー82が階段75の踏面75aに接地した状態から、停車操作位置Y1にある操作レバー97のレバー縦杆101の遊端部や連結横杆102等を足で引っ掛けて後方に引っ張り上げることにより、操作レバー97を停車操作位置Y1から解除操作位置Y2に揺動操作する。すると、左右の停車ストッパー82が支軸91廻りに揺動して停車姿勢X1から収納姿勢X2に姿勢変更し、停車ストッパー82が無端ベルト44前部の接地面aよりも上方に後退する。
【0044】
その結果、無端ベルト44前部の接地面aが階段75の踏面75aの先端に接地できるようになり、左右の停車ストッパー82が邪魔になることもなく、左右のベルト移動機構9全体を接地させながら回走することができて、階段75を楽に降下することができるようになる。
また、本実施形態では、停車ストッパー82は階段75を下降する方向に滑るときに停車姿勢X1に向かう方向の摩擦力を受けるようになっているので、停車ストッパー82を停車姿勢X1にしておけば、停車ストッパー82が階段75を下降する方向に滑るときの
摩擦力によって、停車ストッパー82が不測に収納姿勢X2側に揺動したり支軸91廻りにガタ付いたりするのを確実に防ぐことができ、この点からも階段75の途中で車椅子1を停車ストッパー82で確実かつ安定に停車することが可能になる。
【0045】
また、停車ストッパー82の接地面bは支軸91を中心とした円弧面に形成されているので、例えば、階段75の途中で停車している場合に、停車ストッパー82が停車姿勢X1になって階段75の踏面75aに接地していても、停車ストッパー82を停車姿勢X1から収納姿勢X2に大きな摩擦抵抗もなくスムーズに姿勢変更することができるし、また、同様に、停車ストッパー82を階段75の途中で収納姿勢X2から停車姿勢X1に姿勢変更する際にも、停車ストッパー82が階段75の踏面75aに接触することがあっても、停車ストッパー82を大きな摩擦抵抗もなくスムーズに停車姿勢X1に姿勢変更することが可能になる。
【0046】
また、ベルトフレーム43側に、停車ストッパー82が停車姿勢X1になったときに該停車ストッパー82の停車姿勢X1側への移動を規制する規制部材(横軸15)が設けられているので、規制部材によって停車ストッパー82が停車姿勢X1を超えて過度に支軸91廻りに揺動するのを防止でき、また、操作レバー97が停車操作位置Y1を超えて過度に連結軸45廻りに揺動するのを防ぐことができる。
【0047】
また、左右のベルト移動機構9に対応して停車ストッパー82が左右一対設けられているにも拘わらず、1つの操作レバー97の揺動操作によって、左右の停車ストッパー82を互いに連動して同時に姿勢変更させることができ、この点からも姿勢変更操作がより簡単にできるようになる。
また、停車ストッパー82の停車姿勢X1側への移動を規制する係止部材が横軸15によって兼用されているので、係止部材を別途設ける必要がなくなり、停車機構81の構成部材が少なくて済み、停車機構81を容易かつ安価に製造することができるようになる。
【0048】
なお、前記実施形態では、座席フレーム7の下部にベルト移動機構9が左右一対設けられているが、これに代え、座席フレーム7の下部にベルト移動機構9を1つのみ設けるようにしてもよいし、3つ以上設けるようにしもてよい。
また、座席シート32は、布又は合成樹脂シートにより構成したものに限らず、合成樹脂製や木製の板部材その他で構成するようにしてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、車椅子1の座席フレーム7は背凭れフレーム3と座フレーム4とで折り畳み自在に構成されているが、これに代え、座席フレーム7を折り畳むことができないように構成してもよい。また、車椅子1は座席フレーム7の他に手摺フレーム5と後輪スタンド6とを備えているが、これに代え、手摺フレーム5や後輪スタンド6を省略するようにしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、停車ストッパー82は、左右のベルト移動機構9に対応して左右一対設けられているが、これに代え、停車ストッパー82を左右のベルト移動機構9の一方に対応して1つのみ設けるようにしてもよい。また、ベルト移動機構9を3つ以上設ける場合には、これに対応して停車ストッパー82を3つ以上設けるようにしてもよい。
【0051】
また、停車ストッパー82は直線的な往復移動によって無端ベルト44前部の接地面aよりも下方に出退移動するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、操作レバー82を足で操作するようにしているが、これに代え、手で操作するようにしてもよいことは勿論である。