(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る搬送装置を、
図1〜6を用いて説明する。
図1は、本実施形態の搬送装置20を有する検体処理システム10の一部を示す平面図である。
図1に示すように、検体処理システム10は、後述される検体ホルダ30を搬送する搬送装置20と、検体ホルダ30が保持する検体11に処理を施す処理装置90と、搬送装置20の搬送路50上に検体ホルダ30を選択的に停止させるストッパ装置100と、搬送装置20と処理装置90の動作を制御する制御装置110を有している。
【0013】
図2は、
図1に示すF2−F2線に沿って示す検体処理システム10の断面図である。
図2は、後述される搬送路50上に検体ホルダ30が設置される状態を、搬送路50の延びる方向に沿って示している。なお、
図2では、検体ホルダ30は、切断されていない。
【0014】
図2に示すように、検体11は、例えば血液であり、例えば試験管12に収容されている。試験管12は、被搬送物の一例である。処理装置90は、検体11に処理を施す。処理とは、例えば、分注である。なお、処理装置で行われる処理は、分注に限定されるものではない。また、検体11に対する処理だけでなく、試験管12に必要な処理を施す処理装置が設けられてもよい。
図1は、検体処理システム10において処理装置90の近傍を示している。
【0015】
図3は、
図2に示すF3−F3線に沿って示す検体処理システム10の断面図である。
図3は、搬送路50に設置される検体ホルダ30の正面を示している。
図2,3に示すように、搬送装置20は、検体ホルダ30と、搬送路50と、回転部材60と、螺旋部材駆動装置70とを有している。
【0016】
図3に示すように、検体ホルダ(ホルダ)30は、検体11を収容可能に構成されている。検体ホルダ30は、試験管保持部31と、試験管保持部31の一端に形成されて後述される走行壁部53に保持される被保持部32と、被保持部32の上端縁部に形成される上フランジ部33と、被保持部32の下端縁部に形成される下フランジ部34を有している。
【0017】
試験管保持部31は、基部35と、基部35に設けられる複数の腕部36を有している。基部35は、例えば円柱形状である。複数の腕部36は、基部35の上端部に固定されており、上方に延びている。複数の腕部36は、基部35の上端において、基部35の中心線を中心とする円に沿って、並んで配置されている。各腕部36は、例えば金属部材で形成されており、弾性を有する。各腕部36の上端部には、挟持部37が形成されている。
【0018】
挟持部37は、各腕部36が内側に湾曲することによって形成されている。各腕部36の挟持部37間は、他の部位の間に対して狭まっている。各腕部36の挟持部37間は、試験管12より細く設けられている。試験管12が試験管保持部31に挿入されると、試験管12は、各挟持部37を押し広げる。押し広げられた腕部36は、弾性により内側に戻ろうとする。試験管12は、この各腕部36の弾性力により、挟持され、保持される。
【0019】
被保持部32は、基部35の下端部に設けられており、基部35に対して下方に突出している。被保持部32は、その軸線に対して垂直方向に切断した場合に、その断面が基部35の下端面内に収まる大きさを有している。被保持部32は、一例として、円柱形状であり、その軸線が基部35の軸線と同一直線状に配置されている。このため、被保持部32は、基部35に対して縮径した形状となる
上フランジ部33は、被保持部32の上端縁部に設けられており、被保持部32に対して径方向外側に突出している。下フランジ部34は、被保持部32の下端縁部に設けられており、被保持部32に対して径方向外側に突出している。下フランジ部34の下端部には磁石(ホルダ側部材)38が収容されている。磁石38は、下フランジ部34の中央に配置されている。
【0020】
図4は、搬送路50の長手方向一端部を示す平面図である。
図2,3,4に示すように、搬送路50は、一対の側壁部52と、走行壁部53と、底壁部54とを有している。側壁部52は、底壁部54に固定されている。両側壁部52は、互い対向して上下方向に延びている。両側壁部52は、間に検体ホルダ30が収容可能な隙間を有して離間して配置されている。
【0021】
走行壁部53は、両側壁部52の上下方向中央部に設けられており、幅方向に延びている。より具体的には、
図3に示すように、一方の側壁部52に設けられる走行壁部53は、他方の側壁部52に向かって突出している。他方の側壁部52に設けられる走行壁部53は、一方の側壁部52に向かって突出している。両
走行壁部
53の先端53aは互いに接触しておらず、先端53aに隙間(連通溝部)S1が形成される。
【0022】
隙間S1は、検体ホルダ30の被保持部32を収容可能に形成されている。より具体的には、両先端53a間の距離は、被保持部32の直径よりも若干大きい。また、両先端53a間の距離は、上フランジ部33及び下フランジ部34の直径よりも小さい。このため、被保持部32は、両先端53a間に収容可能である。そして、被保持部32が両先端53a間に収容されると、上フランジ部33が走行壁部53の上端面に接触する。
【0023】
両側壁部52の上端部には、内側に突出する突部55が形成される。突部55と走行壁部53との間には、上フランジ部33の厚みよりも大きい隙間が規定されている。
【0024】
突部55は、検体ホルダ30が走行壁部53上に載置された状態において、検体ホルダ30の上フランジ部33の上方に位置し、かつ、上フランジ部33に上下方向に重なる位置まで突出している。
【0025】
なお、両突部55は、被保持部32が走行壁部53の両先端53a間に保持された状態において試験管保持部31に接触しない位置まで延びている。より具体的には、両突部55の間の距離は、試験管保持部31の基部35の直径よりも大きい。
【0026】
このため、検体ホルダ30が走行壁部53上を走行する際には、上フランジ部33は、突部55に接触しない。検体ホルダ30を上方に引き抜こうとすると、上フランジ部33が突部55に接触することによって、検体ホルダ30が搬送路50から抜けることが防止される。
【0027】
両側壁部52間のスペースは、走行壁部53によって、上下方向に2分される。走行壁部53の上方は、検体ホルダ30が走行する走行スペースである。走行壁部53の下方は、回転部材収容スペースである。回転部材収容スペースは、回転部材60と、螺旋部材駆動装置70の一部を収容可能に形成されている。
【0028】
図5は、回転部材60を示す斜視図である。
図5に示すように、回転部材60は、円柱形状の本体61と、本体61の周面部に設けられる螺旋部材62を有している。螺旋部材62は、主材料が鉄であり、磁石38の磁力によって、磁石38に引き寄せられる性質を有している。
【0029】
本体61は、例えば樹脂で形成されており、円柱形状の部材である。本体61の周面部には、内側に向かって凹む溝部63が形成されている。溝部63は、本体61の軸線を中心とする螺旋形状であり、本体61の一端から他端まで延びている。螺旋部材62は、溝部63内に収容されている。螺旋部材62は、溝部63に固定されている。螺旋部材62の軸線は、本体61の軸線上に配置されている。
【0030】
回転部材60は、その軸線が搬送路50の幅方向中心に位置している。本体61の径方向の大きさ及び螺旋部材62の径方向の大きさは、本体61及び螺旋部材62が検体ホルダ30の下フランジ部34及び磁石38に接触しない大きさを有している。
【0031】
図4に示すように、螺旋部材駆動装置(回転手段)70は、駆動用電動モータ71と、駆動用電動モータ71の出力軸に一体に回転可能に固定される第1のプーリ72と、回転部材60に一体に回転可能に固定される第2のプーリ73と、プーリ72,73に回し掛けられるベルト部材74を有している。
【0032】
駆動用電動モータ71は、搬送路50の外側において、搬送路50の一端の近傍に配置されている。第2のプーリ73の軸線は、回転部材60の本体61の軸線上に配置されている。搬送路50から出ており、第1のプーリ72に隣接している。ベルト部材74は、第1のプーリ72の回転を第2のプーリ73に伝達可能に形成されている。
【0033】
図1に示すように、ストッパ装置100は、検体ホルダ30を、処理装置90が検体11に処理を施す位置に停止可能に形成されている。具体的には、ストッパ装置100は、ストッパ101と、ストッパ駆動装置102を有している。ストッパ101は、搬送路50内にて検体ホルダ30に接触可能な位置と、検体ホルダ30に接触しない位置との間で移動可能に形成されている。ストッパ駆動装置102は、ストッパ101を駆動可能に形成されている。ここで言う駆動は、ストッパ101を、検体ホルダ30に接触可能な位置と接触しない位置との間で移動させることである。
【0034】
制御装置110は、処理装置90の動作と、駆動用電動モータ71の動作と、ストッパ駆動装置102の動作を制御可能に形成されている。
【0035】
次に、検体処理システム10の動作を説明する。まず、例えば作業者によって、搬送路50に設置された検体ホルダ30に、試験管12が収容される。制御装置110は、検体ホルダ30に試験管12が収容されると、駆動用電動モータ71を駆動する。
【0036】
駆動用電動モータ71が回転されると、第1のプーリ72が回転する。第1のプーリ72の回転は、ベルト部材74によって、第2のプーリ73に伝達される。第2のプーリ73は、ベルト部材74によって回転される。第2のプーリ73が回転することによって、回転部材60がその軸線回りに回転する。
【0037】
回転部材60が回転することによって、螺旋部材62が回転する。螺旋部材62が軸線回りに回転すると、
図4に示すように、螺旋部材62において両先端53a間に対向する上端部65が、見掛け上、搬送方向Aに沿って進む。なお、螺旋部材62は、実際には軸線回りに回転しているのみであるので、上端部65は、搬送方向Aに沿って進まない。
【0038】
上端部65が、見掛け上、搬送方向に沿って進むことによって、検体ホルダ30は、磁石38の磁力によって、上端部65に引き寄せられる。この結果、検体ホルダ30は、搬送路50に沿って搬送される。
【0039】
制御装置110は、検体ホルダ30が処理装置90に到達すると、ストッパ駆動装置102を駆動させて、ストッパ101を、検体ホルダ30に接触可能な位置に移動する。ストッパ101が、検体ホルダ30に接触可能な位置に移動されることによって、検体ホルダ30は、ストッパ101に接触することによって走行が停止される。なお、搬送路50に、検体ホルダ30が処理装置90に到達したことを検出するセンサを設けてもよい。そして、このセンサの検出結果に基づいて、ストッパ駆動装置102を駆動してもよい。
【0040】
また、制御装置110は、検体ホルダ30に収容される試験管12内の検体11に処理を施すべく、処理装置90を制御する。処理装置90が処理を行っている最中であっても、駆動用電動モータ71は駆動されており、回転部材60は回転を続けている。検体11に対する処理が終了すると、制御装置110は、ストッパ駆動装置102を制御して、ストッパ101を、検体ホルダ30に接触しない位置に移動する。
【0041】
ストッパ101が、検体ホルダ30に接触しない位置に移動すると、検体ホルダ30は、磁石38が螺旋部材62の上端部65に引き寄せられることによって、再び走行を開始する。
【0042】
このように構成される検体の処理装置では、検体ホルダ30と回転部材60とは、互いに接触しない。このため、回転部材60が摩耗することが防止される。
【0043】
また、螺旋部材62を、磁石に対してコストが安くかつ加工が比較的容易な、主材料を鉄とする金属材料で形成することにより、搬送装置20を比較的簡単に作成できる。
【0044】
また、両走行壁部53の先端53a間を通して螺旋部材62の上端部65が磁石38に対向することによって、磁石38の磁力を、効率よく用いることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、検体ホルダ30と回転部材60の螺旋部材62の間で、互いに引き寄せる手段の一例として、螺旋部材62が鉄を主材料として形成され、検体ホルダ30に磁石38が設けられた。
【0046】
このように、磁石38と、当該磁石に引き寄せられる金属とが用いられた。他の例としては、螺旋部材62が磁石を主材料として形成され、検体ホルダ30に、螺旋部材62に引き寄せられる材料、例えば金属材料を設けてもよい。
【0047】
または、螺旋部材62が磁石で形成され、かつ、検体ホルダ30に螺旋部材62に引き寄せられる磁石を設けてもよい。または、螺旋部材62を磁石で形成してもよい。このように、螺旋部材62は、全てを磁石で形成してもよいし、部分的に磁石が設けられてもよい。
【0048】
要するに、螺旋部材62の移動に合わせて検体ホルダ30が移動するように、互いに引きよされる性質を有する材料の一方で螺旋部材を形成しまたは当該一方を部分的に螺旋部材に設け、他方を検体ホルダ30に設ければよい。
【0049】
または、互いに反発する性質を有する2つの材料の一方を検体ホルダ30に設け、他方で螺旋部材62を形成してもよい、または他方を部分的に螺旋部材62に設けてもよい。この構造の一例としては、互いに反発する一対の磁石である。この構造によって、螺旋部材62の上端部65が見掛け上移動すると、磁石間に作用する反発力によって、検体ホルダ30が移動する。
【0050】
本実施形態では、1つの回転部材60が用いられているが、これに限定されない。例えば、複数の回転部材60を搬送路50に沿って並べて配置してもよい。また、本実施形態では、一例として、検体処理システム10の制御装置110が、搬送装置20の動作を制御している。つまり、制御装置110は、搬送装置20の動作を制御する制御装置として機能している。他の例としては、例えば、搬送装置20の動作を制御する、専用の制御装置が設けられてもよい。
【0051】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
以下に、本願出願の当初の特許請求範囲に記載された発明を付記する。
[1]
被搬送物を収容し、かつ、ホルダ側部材を具備するホルダと、
前記ホルダの移動を案内する搬送路と、
前記ホルダ側部材に対して離れる方向の第1の力または前記ホルダ側部材を引き寄せる第2の力を前記ホルダ側部材との間に生じ、かつ、前記搬送路に沿って配置される螺旋形状の螺旋部材と、
前記螺旋部材を回転する回転手段と
を具備することを特徴とする搬送装置。
[2]
前記搬送路は、前記ホルダが走行する走行壁部を具備し、
前記螺旋部材は、前記走行壁部を挟んで前記ホルダに対して反対側に配置される
ことを特徴とする[1]に記載の搬送装置。
[3]
前記走行壁部の幅方向中央部に、前記ホルダ側と前記回転部材側とを連通する連通溝部を具備する
ことを特徴とする[2]に記載の搬送装置。