特許第6368507号(P6368507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368507
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】剥離シート付熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-51165(P2014-51165)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-176953(P2015-176953A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 章浩
(72)【発明者】
【氏名】石畝 千啓
(72)【発明者】
【氏名】牧田 博之
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/126711(WO,A1)
【文献】 特開2013−138087(JP,A)
【文献】 特開2012−151222(JP,A)
【文献】 特開2011−238643(JP,A)
【文献】 特開平07−149365(JP,A)
【文献】 特開2013−089843(JP,A)
【文献】 特開2009−130251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性シートと、該熱伝導性シートに積層された剥離シートとを有する、剥離シート付熱伝導性シートであって、
半導体素子を樹脂モールドしたモジュール本体と、前記半導体素子が発する熱を放熱すべく外部露出した金属製の放熱用部材と、前記モジュール本体及び前記放熱用部材の間に介装された前記熱伝導性シートとを備える半導体モジュールの形成に用いられ、
前記熱伝導性シートは、無機フィラー、及び、熱硬化性樹脂を含有する絶縁層を備えており、
前記剥離シートは、外周縁が前記熱伝導性シートの外周縁と略同じ形状である剥離シート本体を有し、該剥離シート本体の外周縁が前記熱伝導性シートの外周縁と一致するように前記熱伝導性シートに積層され、前記剥離シート本体の外周縁から外方に延出した延出部を更に有し、
前記モジュール本体又は前記放熱用部材に前記熱伝導性シートを貼り付ける際に、前記延出部は、前記モジュール本体又は前記放熱用部材に対する前記熱伝導性シートの位置決めに用いられる、剥離シート付熱伝導性シート。
【請求項2】
前記熱伝導性シートは、該熱伝導性シートの外周縁の形状が2回回転対称となるように形成されており、更に、前記剥離シートは、該剥離シートの外周縁の形状が2回回転対称となるように形成されている、請求項に記載の剥離シート付熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シート付熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂中に無機フィラー(無機化合物粒子)を分散させることにより、樹脂単体に比べて熱伝導性を向上させた熱伝導性シートが用いられている。
なかでも、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と無機フィラーとを含有し前記熱硬化性樹脂を半硬化状態にさせたタイプの熱伝導性シートは、被着体に接着させて熱硬化させることで優れた接着性を発揮させ得るとともに接着後には熱が加わっても接着性が低下し難いことから広く用いられている。
このような熱伝導性シートの製造方法は、例えば下記特許文献1に開示されている。
具体的には、従来の熱伝導性シートは、図6に示されているように、無機フィラー103とポリマー成分104とを含むポリマーシート102a、102a’を、支持層101が形成された面と反対側の面が向い合うように重ね合わせ、熱プレスによって2層のポリマー層102b、102b’を積層して積層体102cを形成させる方法により作製されたりしている。
【0003】
この特許文献1に記載の熱伝導性シートは、ポリマー層を被着体に接着させて用いられることから使用時においては前記支持層の少なくとも一方を剥離させて用いられる。
即ち、このような熱伝導性シートにおいては、一般的な接着シートにおいて接着面を保護すべく用いられている剥離シートとしての機能を前記支持層に発揮させている。
なお、剥離シート付の熱伝導性シートは、この特許文献1に記載の方法以外にも各種の方法で作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−94887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の剥離シート付熱伝導性シートでは、熱伝導性シートから剥離シートを剥離し難いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、熱伝導性シートから剥離シートを剥離しやすい剥離シート付熱伝導性シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱伝導性シートと、該熱伝導性シートに積層された剥離シートとを有する、剥離シート付熱伝導性シートであって、
半導体素子を樹脂モールドしたモジュール本体と、前記半導体素子が発する熱を放熱すべく外部露出した金属製の放熱用部材と、前記モジュール本体及び前記放熱用部材の間に介装された前記熱伝導性シートとを備える半導体モジュールの形成に用いられ、
前記熱伝導性シートは、無機フィラー、及び、熱硬化性樹脂を含有する絶縁層を備えており、
前記剥離シートは、外周縁が前記熱伝導性シートの外周縁と略同じ形状である剥離シート本体を有し、該剥離シート本体の外周縁が前記熱伝導性シートの外周縁と一致するように前記熱伝導性シートに積層され、前記剥離シート本体の外周縁から外方に延出した延出部を更に有する、剥離シート付熱伝導性シートにある。
【0008】
斯かる発明によれば、剥離シートを熱伝導性シートから剥離させる際に、延出部により剥離シートを把持しやすくなるので、剥離シートを剥離しやすいという利点がある。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、熱伝導性シートから剥離シートを剥離しやすい剥離シート付熱伝導性シートを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の剥離シート付熱伝導性シートの概略平面図。
図2】一実施形態の剥離シート付熱伝導性シートの断面構造を示した概略断面図。
図3】熱伝導性シートの使用状態を模式的に示した半導体モジュールの概略断面図。
図4】一実施形態の剥離シート付熱伝導性シートを用いて、熱伝導性シートを半導体モジュール本体に接着させるために用いる台の概略平面図。
図5】他実施形態の熱伝導性シートの使用状態を模式的に示した半導体モジュールの概略断面図。
図6】特許文献1に開示の熱伝導性シートの製造方法を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態の剥離シート付熱伝導性シートは、熱伝導性シートと、該熱伝導性シートに積層された剥離シートとを有する。また、本実施形態の剥離シート付熱伝導性シートは、半導体モジュールの形成に用いられる。該半導体モジュールは、半導体素子を樹脂モールドしたモジュール本体と、前記半導体素子が発する熱を放熱すべく外部露出した金属製の放熱用部材と、前記モジュール本体及び前記放熱用部材の間に介装された前記熱伝導性シートとを備える。前記熱伝導性シートは、無機フィラー、及び、熱硬化性樹脂を含有する絶縁層を備えている。前記剥離シートは、外周縁が前記熱伝導性シートの外周縁と略同じ形状である剥離シート本体を有する。該剥離シートは、前記剥離シート本体の外周縁が前記熱伝導性シートの外周縁と一致するように前記熱伝導性シートに積層されている。前記剥離シートは、更に、該剥離シート本体の外周縁から外方に延出した延出部を有する。
【0013】
まず、熱伝導性シートについて説明する。
熱伝導性シートの絶縁層は、前記のように熱硬化性樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物によって形成されている。
前記樹脂組成物のベース樹脂となる前記熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を単独または2種以上併用して採用することができる。
【0015】
フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が用いられる。
なかでも、トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、耐熱性において有利であり、フェノールアラルキル樹脂は、放熱用部材との間に良好なる接着性を示す点において好ましく用いられる。
【0016】
なお、前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を採用する場合には、熱硬化性樹脂に当該エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤をさらに加えて熱硬化性を調整してもよい。
硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
また、前記ノボラック型フェノール樹脂などもエポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として前記熱硬化性樹脂に含有させることができる。
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類や、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。
【0017】
一方で熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を採用する場合には、ヘキサメチレンテトラミン、各種の2官能以上のエポキシ化合物、イソシアネート類、トリオキサン及び環状ホルマール等を前記フェノール樹脂の硬化剤として含有させても良い。
【0018】
前記無機フィラーは、熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が高ければ特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化珪素、酸化マグネシウム、ダイヤモンドなどの粒子が挙げられる。
【0019】
前記剥離シートは、ポリマーフィルム、金属箔、繊維シートなどによって形成させることができる。
【0020】
前記ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂;ポリテトラフロロエチレン、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、テトラフロロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂などからなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0021】
前記金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などの金属やその合金からなる金属箔が挙げられる。
該金属箔としては、異種金属が貼り合わされてなるクラッド箔や異種金属をメッキしたメッキ箔であってもよい。
【0022】
前記繊維シートとしては、例えば、ポリエステル繊維不織布、パルプシート、ガラスマット、カーボン繊維シートなどが挙げられる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態における剥離シート付熱伝導性シート10は、平面視において長方形状となるように形成されている。
なお、以下の説明は、熱伝導性シートの平面視における長辺方向を左右方向(図1では、左方向をLで、右方向をRで、それぞれ示している。)とも称し、熱伝導性シートの短辺方向を前後方向(図1では、前方向をFで、後方向をBで、それぞれ示している。)とも称する。
【0024】
前記熱伝導性シート14は、平面視において長方形状となるように形成されている。前記熱伝導性シート14の外周縁14aは、右外周縁14a1、左外周縁14a2、前外周縁14a4、及び、後外周縁14a3で構成されている。右外周縁14a1、及び、左外周縁14a2は、左右方向で互いに対向している。前外周縁14a4、及び、後外周縁14a3は、前後方向で互いに対向している。
左右外周縁14a1、14a2と前後外周縁14a4、14a3との境界部分は、丸みを有している。すなわち、前記熱伝導性シート14の平面視における形状は、厳密には四隅に丸みを持たせた長方形状となっている。
【0025】
前記剥離シート本体13bは、平面視において熱伝導性シート14と同形状に形成されている。
【0026】
前記剥離シート13は、前記剥離シート本体13bの右外周縁及び左外周縁の前後方向中心部から外方に延出した長方形状の延出部13aを左右に1つずつ有している。また、前記剥離シート13は、前記剥離シート本体13bの前外周縁から外方に延出した長方形状の延出部13aを左右方向中心部よりも左側部分及び右側部分に1つずつ有している。さらに、前記剥離シート13は、前記剥離シート本体13bの後外周縁から外方に延出した長方形状の延出部13aを左右方向中心部よりも左側部分及び右側部分に1つずつ有している。すなわち、前記剥離シート13は、延出部13aを合計6つ有している。
【0027】
前記熱伝導性シート14は、該熱伝導性シート14の外周縁14aの形状が2回回転対称となるように形成されており、更に、前記剥離シート13は、該剥離シート13の外周縁の形状が2回回転対称となるように形成されている。本実施形態における剥離シート付熱伝導性シート14は、斯かる構成を有することにより、剥離シート付熱伝導性シート10を180℃回転しても、半導体モジュール本体又は放熱用部材に貼り付けることができるという利点を有する。
なお、2回回転対称とは、偶数回回転対称を意味し、4回回転対称、6回回転対称なども含む。
【0028】
以下に、本実施形態における剥離シート付熱伝導性シートの一つの実施態様を示す事例として、電気絶縁性に優れ絶縁シートとしても利用可能な熱伝導性シート及び剥離シートを有する剥離シート付熱伝導性シートについて図2を参照しつつ説明する。
【0029】
この電気絶縁性に優れた熱伝導性シート14(以下、「絶縁シート14」ともいう)は、図2にその断面構造を示すように、2層の絶縁層11,12を有する。
本実施形態の剥離シート付熱伝導性シート(以下、「剥離シート付絶縁シート」ともいう。)は、絶縁シート14と、この絶縁シート14を支持するための剥離シート13たる基材層13とを備えている。
即ち、本実施形態の剥離シート付熱伝導性シート10は、3層の積層構造を有するシート体であり、2層の絶縁層11,12の内の第一の絶縁層11(以下、「第一絶縁層11」ともいう)によって一面側が構成され、他面側が前記基材層13によって構成されているとともに該基材層13と前記第一絶縁層11との間の中間層が第二の絶縁層12(以下、「第二絶縁層12」ともいう)によって構成されている。
【0030】
第一絶縁層11及び第二絶縁層12は、本実施形態の樹脂組成物からなり、Bステージ化(半硬化)させた前記樹脂組成物からなるものである。
本実施形態の前記絶縁層11,12は、無機フィラーを含有する前記樹脂組成物によって形成されており、優れた熱伝導性を発揮するように形成されている。
【0031】
なお、無機フィラーを高充填させようとすると絶縁層11,12にピンホールやボイドなどの欠陥が形成され易くなるが、本実施形態の絶縁シート10は、絶縁層を2層積層することで仮に欠陥箇所が形成された場合でも当該欠陥が絶縁シートの厚み方向に連続的なものとなることを防いでいる。
【0032】
該第一絶縁層11及び第二絶縁層12は、絶縁シート14に優れた電気絶縁性を発揮させ得る上において、トータルでの体積抵抗率が1×1013Ω・cm以上であることが好ましく、1×1014Ω・cm以上であることがより好ましい。
また、第一絶縁層11及び第二絶縁層12は、個々の体積抵抗率も1×1013Ω・cm以上であることが好ましく、1×1014Ω・cm以上であることがより好ましい。
【0033】
また、前記第一絶縁層11及び第二絶縁層12は、絶縁シート14に優れた熱伝導性を発揮させる上において、前記樹脂組成物を十分に硬化(Cステージ化)させた際の熱伝導率が5W/m・K以上となるように前記無機フィラーの種類や配合量の調整がなされていることが好ましく、14W/m・K以上となるように前記無機フィラーの種類や配合量の調整がなされていることが好ましい。
なお、樹脂組成物によって形成させた成形体の熱伝導率については、通常、キセノンフラッシュアナライザー(例えば、NETZSCH社製、「LFA−447型」)によって測定することができる。
この熱伝導率については、キセノンフラッシュアナライザーによらず、他のレーザーフラッシュ法やTWA法により測定することができ、例えば、レーザーフラッシュ法では、アルバック理工社製の「TC−9000」を用いて測定することができる。
そして、TWA法では、アイフェイズ社製の「ai−Phase mobile」を用いて測定することができる。
【0034】
なお、第一絶縁層11と第二絶縁層12とは、同じ樹脂組成物によって形成させる必要性はなく無機フィラーの含有量などを異ならせていても良い。
さらに、第一絶縁層11と第二絶縁層12とは、それぞれの厚みも共通させる必要はない。
この第一絶縁層11及び第二絶縁層12のそれぞれの厚みは、通常、25μm〜300μmとすることができる。
【0035】
前記基材層13の厚みは、通常、5μm〜500μmとすることができる。
【0036】
続いて、本実施形態の剥離シート付熱伝導性シートの製造方法について説明する。
【0037】
まず、基材シートを準備する。
この基材シートとしては、剥離シート付熱伝導性シート10を連続的に効率良く製造する上において長尺帯状のものを準備することが好ましい。
【0038】
次いで、熱硬化性樹脂を溶解可能な有機溶媒に熱硬化性樹脂を溶解させるとともに、この樹脂溶液に窒化ホウ素粒子、金属酸化物粒子などの熱硬化性樹脂よりも熱伝導率の高い無機フィラーを分散させてコーティング液を作製する。
この工程では、例えば、ボールミル、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、三本ロールミル等の攪拌装置を用いることができる。
【0039】
次に、基材シート上に、上記コーティング液をコーティングする。
この工程は、長尺帯状の剥離シートを巻き取った剥離シートロールを、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター等のコーティング装置に装着して連続的に実施させることができる。
【0040】
次に、コーティング液がコーティングされた基材シートを乾燥炉に導入して、有機溶媒を除去し、コーティング液の乾燥被膜を基材シート上に形成する。
この工程は、例えば、コーティング液がコーティングされた帯状の基材シートを一般的な加熱乾燥炉中を所定の時間を掛けて通過させることで実施することができる。
【0041】
次に、この片面に乾燥被膜の形成された基材シートを2枚用意し、この乾燥被膜の形成された基材シートを乾燥被膜が対向するように重ね合わせて熱プレスして2層の乾燥被膜を積層一体化させる。
この工程は、例えば、乾燥被膜の形成された帯状の基材シートを熱板一面分の長さ分ずつ熱プレスに供給して順次熱プレスさせるような方法により実施することができる。
【0042】
そして、積層体を本実施形態の剥離シート付熱伝導性シートの所定形状に切り出す。この切り出し方法は、特に限定されないが、例えば、トムソン刃型などによる打ち抜き方法を採用することができる。
【0043】
次に、積層体から一面側の基材シートを剥離し、延出部に該当する箇所からロータリーカッターなどを用いて2層の乾燥被膜を切り出すことにより延出部を形成する。これにより、本実施形態の剥離シート付熱伝導性シートを形成することができる。
【0044】
次に、本実施形態の半導体モジュールについて説明する。例えば、本実施形態の半導体モジュールは、図3示すように半導体モジュールが挙げられる。
まず、図3に基づいて、本実施形態の半導体モジュール100を説明する。
この図3は、半導体モジュールの断面を示した概略図である。
本実施形態の半導体モジュール100は、半導体素子30を樹脂モールドしたモジュール本体100xと、前記半導体素子30が発する熱を放熱すべく外部露出した金属製の放熱用部材20と、前記モジュール本体100x及び前記放熱用部材20の間に介装された熱伝導性シート14とを備える。
【0045】
前記モジュール本体100xは、前記半導体素子30と、該半導体素子30のヒートシンクとして機能する金属板40とを有し、平置き配置された前記金属板40の上面側にハンダ50によって固定された状態で前記半導体素子30を有している。
前記半導体素子30は、前記金属板40の上面の面積に比べて小さなものであり、本実施形態においては、ベアチップの状態で金属板上に搭載されている。
【0046】
本実施形態のモジュール本体100xは、その外殻をなす角筒状のケース60を有し、該ケース60は、平面視における形状が前記金属板40よりも一回り大きく、且つ、正面視における形状が、絶縁シート14、金属板40、及び、半導体素子30の厚みを足し合わせた高さよりも高く形成されている。
即ち、前記ケース60は、絶縁シート14、金属板40、及び、半導体素子30の全てを内包可能な大きさを有している。
そして、モジュール本体100xは、前記金属板40を包囲するように前記ケース60を配置させており、該ケース60の側壁を貫通してケースの内外に延びるリードフレーム70をさらに備えている。
【0047】
また、該モジュール本体100xは、前記リードフレーム70のケース内における端部と前記半導体素子30とがボンディングワイヤ80によって電気的に接続され、且つ、前記ケース内の空きスペースに封止樹脂が充填されてなるモールド部90が形成されている。
本実施形態における該モールド部90は、半導体素子30、及び、金属板40を埋設させている。
そして、前記絶縁シート14は、前記半導体素子30が搭載されている側とは逆側となる金属板40の下面に配されている。
本実施形態の絶縁シート14は、平面視における形状が金属板40の下面に相当する形状となっており、金属板40の下面外縁40eと第一絶縁層11の外縁とを揃えた状態で当該金属板40の下面に接着されている。
【0048】
また、本実施形態の絶縁シート14は、前記モールド部90に上面側を埋設させ且つ前記放熱用部材20が無い状態においては、その下面側が露出するように半導体モジュール100の形成に用いられている。
即ち、本実施形態の半導体モジュール100は、モールド部90の下面が絶縁シート14の前記第二絶縁層12の下面と略面一な状態となるように形成されている。
【0049】
なお、本実施形態においては、前記放熱用部材20として、上面が前記金属板40の下面よりも大きな平坦面となった板状の基板部21と該基板部21の下面から複数のフィンを垂下させてなるフィン部22とを有する放熱フィンが採用されている。
【0050】
なお、本実施形態の半導体モジュール100は、Bステージ化された第一絶縁層11を前記金属板40の下面に接着させる。
絶縁シートを金属板の下面に接着させるために、本実施形態の剥離シート付熱伝導性シートを用いる。
具体的には、まず、金属板が上側になるようにモジュール本体を水平な上面を有する台の上に置く。図4に示すように、該台210の周囲には、モジュール本体に対する剥離シート付熱伝導性シートの位置を決めるための位置決め部220が設けられている。この位置決め部220は、台210の上で、モジュール本体の上に剥離シート付熱伝導性シート10を重ねた際に剥離シート付熱伝導性シート10の位置を定めるように構成されている。前記位置決め部220は、複数の垂直方向に伸びる棒状部材220aを有している。該位置決め部220は、前記台210の上に剥離シート付熱伝導性シート10が配された際に、延出部ごとに延出部を2つの棒状部材で挟んだ状態になるように構成されている。各延出部を挟む2つの棒状部材の距離は、延出部の幅と同じ長さになっている。これにより、台上に配された剥離シート付熱伝導性シートの位置が定まるようになっている。
次に、剥離シート付熱伝導性シート10の第一絶縁層11をBステージ化させ、剥離シートが上側になるように、剥離シート付熱伝導性シートを該モジュール本体の上に置き、金属板にBステージ化された第一絶縁層11を接着させ、剥離シートを剥離する。
また、Bステージ化された第二絶縁層12を放熱用部材の基板部に接着させる。
そして、熱伝導性シート14を加熱し絶縁層11、12をCステージ化させる。
なお、ここでは、熱伝導性シート14をモジュール本体に接着させた後に熱伝導性シート14を放熱用部材に接着させるが、熱伝導性シート14を放熱用部材に接着させた後に熱伝導性シート14をモジュール本体に接着させても良い。
【0051】
前記のように本実施形態の半導体モジュール100は、この金属板40に半導体素子30が直接搭載されており、半導体素子30と金属板40とが略同電位となっている。
従って、前記絶縁シート14は、金属板40から前記放熱用部材20までの間に良好なる伝熱経路を形成させるとともに金属板40と放熱用部材20とを電気的な接続が遮断された状態となすべく半導体モジュール100に備えられている。
【0052】
本実施形態の絶縁シート14は、優れた電気絶縁性と熱伝導性を有することから半導体モジュール100の動作時における半導体素子30のジャンクション温度が過度に上昇することを抑制させることができ、半導体モジュール100の故障を防いで耐用期間を長期化させ得る。
【0053】
このような効果を発揮するのは、必ずしも図3に例示した態様のみならず、図5に例示するような半導体モジュールにおいても同じである。
このことを図5を参照しつつ説明する。
なお、図5図3と同様に半導体モジュールの断面を示した概略図であり、図5において図3と同じ数値の符号が付されている構成部分は図3と同様であるため、ここでは必要以上に繰り返して説明は行わない。
【0054】
この図5に示した半導体モジュール100’は、絶縁シート14’が積層構造を有しておらず、無機フィラーを含有する樹脂組成物をBステージ化させてなる絶縁層単層のシート体である点において図3の半導体モジュール100と異なっている。
【0055】
また、該半導体モジュール100’は、絶縁シート14’がケース60’の平面形状と同等に形成されており、且つ、前記モールド部90’が金属板40’の下面と略面一となるように形成されている点においても図3の半導体モジュール100と異なっている。
【0056】
そして、前記絶縁シート10’は、当該絶縁シート14’を除いた半導体モジュール100’の主要部分たるモジュール本体100x’の下面に接着させて用いられ、前記金属板40’に対する絶縁を施して半導体モジュール100’を構成させるべく用いられる。
【0057】
また、該絶縁シート10’は、図5に示すように、前記モジュール本体100x’と放熱用部材20’との間に介装させて用いられている。
【0058】
なお、該絶縁シート14’を用いて図5に示すような半導体モジュール100’を形成させる場合は、該絶縁シート14’をモジュール本体側に先に接着させた後に前記絶縁シート14’を使ってさらに放熱用部材20’を接着させるようにしても良く、逆に一旦絶縁シート14’を放熱用部材20’の基板部21’の上面に接着させて絶縁層付放熱用部材を作製した後で、該絶縁層付放熱用部材をモジュール本体100x’に接着させるようにしてもよい。
さらには、モジュール本体100x’と放熱用部材20’との間に絶縁シート14’を挟んで熱プレスするなどして絶縁シート14’をモジュール本体部100x’と放熱用部材20’とに同時に接着させるようにしてもよい。
【0059】
このような場合も、Cステージ化された絶縁シート14’が優れた電気絶縁性と熱伝導性を発揮することから該絶縁シート14’を構成部材として備えた半導体モジュール100’は、その耐用期間を長期化させ得る。
【0060】
なお、ここではこれ以上に詳細な説明を繰り返すことは行わないが、例えば、図5に例示した態様において、絶縁シート14’を図2、3での例示と同様に2層以上の絶縁層を有するものとしたり、絶縁層以外に基材層を有するものとしたりすることも可能である。
また、本発明においては、絶縁シートの形成材料としたエポキシ組成物は、前記モールド部90,90’や前記ケース60,60’などの形成にも利用可能なものである。
さらに、本発明の剥離シート付熱伝導性シートについては、従来公知の技術事項を本発明の効果が著しく損なわれない範囲において適宜採用することが可能なものである。
【符号の説明】
【0061】
10:剥離シート付熱伝導性シート(剥離シート付絶縁シート)、11:第一絶縁層、12:第二絶縁層、14:熱伝導性シート、15:延出部、
20:放熱用部材、30:半導体素子、40:金属板、100:半導体モジュール、100x:モジュール本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6